(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094192
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20230628BHJP
A47J 27/08 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
A47J27/00 103N
A47J27/08 G
A47J27/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209518
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】野村 周平
(72)【発明者】
【氏名】村上 誠
(72)【発明者】
【氏名】駒木 杏奈
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA02
4B055BA34
4B055CA24
4B055CA69
4B055CA70
(57)【要約】
【課題】加熱調理器の機能を向上させること。
【解決手段】加熱調理器(2)は、調理空間(S)を有する鍋(4)と、鍋(4)を加熱する加熱部(9)と、調理空間(S)を密閉するための内蓋(14)を有する蓋(10)と、を備え、調理空間(S)が所定圧力以下まで減圧される減圧状態に応じて、調理空間(S)と外部空間(O)との圧力差により動作して、調理空間(S)を大気圧に開放する圧力開放手段(18、22)と、を備える。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理空間を有する鍋と、
前記鍋を加熱する加熱部と、
前記調理空間を密閉可能な内蓋を有する蓋と、
前記調理空間が所定圧力以下まで減圧される減圧状態に応じて、前記調理空間と外部空間との圧力差により動作して、前記調理空間を大気圧に開放する圧力開放手段と、を備える、加熱調理器。
【請求項2】
前記圧力開放手段は、前記減圧状態に応じて自発的に動作する、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記内蓋は、前記圧力開放手段としてのパッキンを有し、
前記パッキンは、前記減圧状態に応じて前記調理空間に向けて引き込まれることで、前記鍋との密着状態が一部解除される、請求項1又は2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記パッキンの外周部には、前記鍋と接触する薄肉部が設けられる、請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記薄肉部は、部分的に幅の狭くなった幅狭部を有する、請求項4に記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記パッキンは、部分的に剛性が弱くなった弱剛性部を有する、請求項3から5のいずれか1つに記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記パッキンは、周方向に間隔を空けて配置された複数のリブを有し、
前記弱剛性部は、前記パッキンの前記周方向において前記リブが一部間引かれた箇所に設けられる、請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記弱剛性部は、前記パッキンにおける相対的に厚みが薄い箇所に設けられる、請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記鍋は、前記パッキンに接触するフランジを有し、
前記フランジは、周方向の一部に凹部を有する、請求項3から8のいずれか1つに記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記内蓋は、内蓋本体と、前記パッキンを前記内蓋本体に固定するパッキン固定部とを有し、
前記パッキン固定部は、前記パッキンを前記鍋に向けて押圧する押圧部を有し、前記押圧部は、押圧力が周方向の一部で弱くなるように構成された弱押圧部を有する、請求項3から9のいずれか1つに記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記内蓋は、内蓋本体と、前記パッキンを前記内蓋本体に固定するパッキン固定部とを有し、
前記パッキン固定部は、前記パッキンを前記鍋に向けて押圧する押圧部を有し、前記押圧部は、周方向の一部で幅方向の外側にずれた位置に設けられる、請求項3から9のいずれか1つに記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記内蓋には、前記圧力開放手段としての圧力開放弁と、前記圧力開放弁を封止位置に向けて付勢する付勢部材とが設けられ、
前記圧力開放弁は、前記内蓋を貫通するように配置される弁体を有し、前記弁体は、前記減圧状態に応じて、前記付勢部材の付勢力に反して前記調理空間に引き込まれるように動作する、請求項1から11のいずれか1つに記載の加熱調理器。
【請求項13】
前記内蓋には、前記調理空間の圧力の上昇に応じて前記調理空間を大気圧に開放するように動作する安全弁がさらに設けられる、請求項1から12のいずれか1つに記載の加熱調理器。
【請求項14】
減圧調理機能を有する、請求項1から13のいずれか1つに記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品等の調理物を鍋に収容して加熱調理する加熱調理器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の加熱調理器は、鍋内の圧力を制御するための圧力開放弁を自動で動作させる機能を有し、所定条件を満たした場合に、鍋内の圧力を大気圧に開放するように圧力開放弁を動作させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の加熱調理器では、停電等で非通電となった場合に圧力開放弁を動作させることができなくなり、特に、鍋内の圧力が大気圧よりも低い減圧状態の場合には鍋の蓋が開けられなくなる可能性がある。このため、加熱調理器の機能・利便性の観点で改善の余地があるといえる。
【0006】
従って、本開示の目的は、前記問題を解決することにあって、加熱調理器の機能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本開示の加熱調理器は、調理空間を有する鍋と、前記鍋を加熱する加熱部と、前記調理空間を密閉可能な内蓋を有する蓋と、前記調理空間が所定圧力以下まで減圧される減圧状態に応じて、前記調理空間と外部空間との圧力差により動作して、前記調理空間を大気圧に開放する圧力開放手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、加熱調理器の機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】実施形態の加熱調理器の外蓋を省略した状態の斜視図
【
図6】実施形態の圧力開放弁の周辺構成を示す縦断面図
【
図8】実施形態の手動開放部と自動開放部を示す概略縦断面図
【
図9A】実施形態の手動開放部と自動開放部を示す概略縦断面図(手動開放部が動作した状態)
【
図9B】実施形態の手動開放部と自動開放部を示す概略縦断面図(自動開放部が動作した状態)
【
図11】実施例1におけるパッキンの一部を拡大した縦断面図
【
図12】実施例1におけるパッキンを内蓋本体部に取り付けて固定した固定状態を示す縦断面図
【
図13】実施例1におけるパッキンの動作例を示す縦断面図(加圧状態)
【
図14A】実施例1におけるパッキンの動作例を示す縦断面図(減圧状態1)
【
図14B】実施例1におけるパッキンの動作例を示す縦断面図(減圧状態2)
【
図15】実施例1-1におけるパッキンを示す平面図
【
図17】実施例1-2におけるパッキンを示す平面図
【
図19】実施例1-2におけるリブを含まないエリア(弱剛性部を含む。)におけるパッキンの縦断面図
【
図20】実施例1-2におけるリブを含むエリアにおけるパッキンの縦断面図
【
図21】実施例1-2の変形例におけるリブと弱剛性部の配置パターンを示す平面図
【
図22】実施例1-2の変形例におけるリブと弱剛性部の配置パターンを示す平面図
【
図25】実施例1-3における鍋のフランジの周辺構成を拡大した縦断面図
【
図26】実施例1-4におけるパッキン固定部の平面図
【
図29】実施例1-5におけるパッキン固定部の平面図
【
図32】実施例2における圧力開放弁の周辺構成を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る加熱調理器の例示的な実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成が本開示に含まれる。
【0011】
(実施形態)
まず
図1、
図2を参照して、本開示の一実施形態に係る加熱調理器について説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係る加熱調理器2の斜視図であり、
図2は、加熱調理器2の縦断面図(
図1のA-A断面図)である。
【0013】
図1、
図2に示す加熱調理器2は、食品等の調理物(図示せず)を加熱調理するための調理器具である。本実施形態の加熱調理器2は、調理メニューごとに動作シーケンスが予めプログラムされた自動調理器であり、「オートクッカー」、「マルチクッカー」、「スロークッカー」とも称する。
【0014】
ユーザが加熱調理器2を利用する際は、
図2に示す鍋4の調理空間Sに調理物(図示せず)を配置するとともに、
図1に示す操作表示部6を操作して調理メニューを選択し、加熱調理の実行を決定する。加熱調理器2は、選択された調理メニューの料理(煮物やカレー等)に応じて、予め定められたプログラムに従って調理物を加熱調理するように動作する。
【0015】
本実施形態の加熱調理器2は、調理空間Sを大気圧よりも高い圧力に加圧した状態で調理する「加圧調理機能」と、調理空間Sを大気圧よりも低い圧力まで減圧した状態で調理する「減圧調理機能」を有する。減圧調理を行う際には、例えば、調理空間Sの空気を逆止弁を通じて外部に押し出した後、鍋4を冷却することで減圧状態としてもよく、あるいは、ポンプを用いて調理空間Sの空気を強制排気することで減圧状態としてもよい。
【0016】
図1、
図2に示す加熱調理器2は、鍋4を収容する本体部8と、本体部8を開閉するための蓋10とを備える。
【0017】
本体部8は、鍋4や他の構成要素を収容する部材である。本体部8には加熱調理器2を動作させるための各種部品が内蔵されており、
図2に示すように、鍋4を加熱するためのヒータ9や、加熱調理器2の運転を制御する制御部11を内蔵する。制御部11は、簡略化して図示する。
【0018】
図1に示すように、本体部8は、蓋10を回転可能(矢印R1)に軸支する。
【0019】
蓋10は、本体部8および本体部8に収容された鍋4を開閉するための部材である。
図1、
図2では、蓋10が閉じた状態を示す。
【0020】
蓋10は、外蓋12と、内蓋14(
図2)とを備える。外蓋12は、本体部8の全体を開閉するための蓋であり、内蓋14は、鍋4を開閉するための蓋である。内蓋14は、外蓋12の内側(下面側)に取り付けられる。
【0021】
ここで、
図3、
図4を用いて、内蓋14の構成について説明する。
【0022】
図3は、加熱調理器2において外蓋12を省略した状態を示す斜視図であり、
図4は、内蓋14を単独で示す斜視図である。
【0023】
図3、
図4に示すように、内蓋14は、内蓋本体部16と、パッキン18とを有する。
【0024】
内蓋本体部16は、内蓋14の本体部に相当する部分であり、大略円板状である。内蓋本体部16の外周部にはパッキン18が取り付けられる。パッキン18は、内蓋本体部16の下面側に取り付けられた大略円環状の部材である。蓋10が閉じられると、パッキン18は、鍋4のフランジ部に当接して調理空間Sを密閉する。
【0025】
内蓋本体部16には、安全弁20と、圧力開放弁22とが設けられている。
【0026】
安全弁20は、調理空間Sの圧力が所定圧力以上まで上昇することに応じて、調理空間Sを大気圧に開放するように動作する弁である。安全弁20は、調理空間Sが過圧状態となることを防止する。安全弁20は、「調圧弁」、「逆止弁」と称してもよい。
【0027】
圧力開放弁22は、安全弁20と同様に、調理空間Sを大気圧に開放するように動作する弁である。圧力開放弁22は、安全弁20とは異なり、制御部11の制御によって自動的に、あるいは、ユーザの操作によって手動で、動作することができる。圧力開放弁22は、「圧力解除弁」と称してもよい。
【0028】
本実施形態の圧力開放弁22はさらに、調理空間Sの圧力が所定圧力以下となる減圧状態に応じて、調理空間Sを大気圧に開放するように自発的に動作することも可能である。詳細については、実施例2で説明する。
【0029】
図1、
図2に示すように、蓋10の表面には操作ボタン26が設けられる。操作ボタン26は、前述した圧力開放弁22を手動で動作させるための操作部(押しボタン)であり、
図2に示す手動開放部25を構成する。操作ボタン26は、「圧力開放ボタン」と称してもよい。
【0030】
ここで、安全弁20および圧力開放弁22の構成について、
図5、
図6を用いて説明する。
図5は、安全弁20の周辺構成を示す縦断面図であり、
図6は、圧力開放弁22の周辺構成を示す縦断面図である。
【0031】
図5に示すように、安全弁20は、弁体28と、パッキン30と、バネ32とを備える。
【0032】
弁体28は、調理空間Sを封止する封止位置と開放位置との間を移動する可動部であり、上下方向に延びる棒状の形状を有する。弁体28は、内蓋本体部16に立設された弁受け部33の開口34に挿通される。弁体28は、開口34を介して調理空間Sに露出するとともに、開口34を隔てて調理空間Sの外側にある外部空間O(蓋10の内部空間)にも露出する。外部空間Oは、大気圧に開放されている。
【0033】
弁体28の中央部には拡径部36が設けられ、拡径部36にはパッキン30が取り付けられる。パッキン30は、開口34の周囲における弁受け部33の上面に当接したときに調理空間Sを封止する。
【0034】
バネ32は、弁体28を封止位置に向けて付勢するための付勢部材である。バネ32の付勢力F1は、弁体28に取り付けられたパッキン30を弁受け部33の上面に押し付ける方向(すなわち調理空間Sに向かう方向)に作用する。
【0035】
バネ32の付勢力F1によって安全弁20は封止位置に向けて付勢されるが、調理空間Sが加圧状態になると、調理空間Sの加圧力F2が弁体28に対して上方に作用する。加圧力F2が付勢力F1よりも大きくなると、バネ32が縮みながら、安全弁20が開放位置まで上昇する(矢印M1)。これにより、調理空間Sの封止が解除され、調理空間Sは外部空間Oに連通して大気圧に開放される。
【0036】
図6に示すように、圧力開放弁22は、弁体38と、パッキン40と、バネ42とを備える。
【0037】
弁体38は、調理空間Sを封止する封止位置と開放位置との間を移動する可動部であり、上下方向に延びる形状を有する。弁体38は、内蓋本体部16に立設された弁受け部43の開口44に挿通される。弁体38は、開口44を介して調理空間Sと外部空間Oに配置される。
【0038】
弁体38の上端には、外部空間Oに配置される被押圧部46が設けられる。被押圧部46は、
図2に示した手動開放部25によって下方に押圧される部分である。
【0039】
弁体38の下端には、調理空間Sに配置される拡径部48が設けられる。拡径部48は、封止用のパッキン40を取り付けるための部材である。パッキン40は、開口44の周囲における弁受け部43の下面に当接すると調理空間Sを封止する。
【0040】
バネ42は、弁体38を封止位置に向けて付勢するための付勢部材である。バネ42の付勢力F3は、弁体38に取り付けられたパッキン40を弁受け部43の下面に押し付ける方向(すなわち外部空間Oに向かう方向)に作用する。
【0041】
バネ42の付勢力F3によって圧力開放弁22は封止位置に向けて付勢されるが、前述した手動開放部25によって被押圧部46が押圧されると、下方への押圧力F4が作用する。押圧力F4が付勢力F3よりも大きくなると、バネ42が縮みながら、圧力開放弁22が一体的に下降して開放位置まで移動する(矢印M2)。これにより、調理空間Sの封止が解除され、調理空間Sは大気圧に開放される。
【0042】
図6に示す圧力開放弁22の被押圧部46を押圧して圧力開放弁22を動作させるための構成として、本実施形態の加熱調理器2では、ユーザの手動で動作する手動開放部25(
図2、
図10)と、制御部11の制御により自動で動作する自動開放部50(
図10)を設けている。手動開放部25および自動開放部50の構成について、
図7、
図8、
図9A、
図9Bを用いて説明する。
【0043】
図7は、蓋10の内部構成を概略的に示す縦断面図である。
【0044】
図7に示すように、蓋10の内部には、圧力開放弁22を動作させるための構成として、手動開放部25と、自動開放部50とが設けられる。手動開放部25および自動開放部50はともに蓋10の外蓋12に設けられるとともに、内蓋14に取り付けられた圧力開放弁22の被押圧部46にアクセス可能な位置に配置される。
【0045】
図8は、手動開放部25および自動開放部50の構成を示す概略縦断面図である。
図8では、手動開放部25および自動開放部50が動作しておらず、圧力開放弁22が封止位置にある状態を示す。
【0046】
図8に示すように、手動開放部25は、操作ボタン26に加えて、バネ52と、バネ押さえ54と、可動部56と、押圧部58と、支持部60とを備える。
【0047】
バネ52は、操作ボタン26を上方に付勢する付勢力F5を発生させる付勢部材である。バネ52は、バネ押さえ54によって下方から支持され、バネ押さえ54は、蓋10の内壁部に固定されている。
【0048】
可動部56は、操作ボタン26に取り付けられ、操作ボタン26と一体的に上下動する部材である。可動部56は、軸方向Aに沿って延びる軸部材であり、軸方向Aに上下動する。可動部56の先端には押圧部58が取り付けられる。
【0049】
押圧部58は、圧力開放弁22の被押圧部46を押圧するための部材である。押圧部58は、被押圧部46の上方に配置され、被押圧部46に対向する。押圧部58は支持部60によって支持される。支持部60は、押圧部58を弾性的に支持する部材であり、蓋10の内壁に固定されている。
【0050】
上記構成によれば、
図9Aに示すように、ユーザが操作ボタン26を押下すると、可動部56および押圧部58が一体的に下降して、押圧部58が圧力開放弁22の被押圧部46に接触して下方に押圧する。これにより、圧力開放弁22が封止位置から開放位置へ移動し、調理空間Sが大気圧に開放される。
【0051】
ユーザが操作ボタン26を離せば、バネ52によって操作ボタン26は元の上方位置に戻り、押圧部58は圧力開放弁22から退避して、圧力開放弁22は元の封止位置に戻る。
【0052】
なお可動部56と押圧部58が上下動するとき、押圧部58に接続された可動部68も連動して上下動する。
【0053】
図8に示すように、自動開放部50は、モータ62と、カム部材63と、可動部68と、押下げ部69と、バネ70とを備える。
【0054】
モータ62は、自動開放部50を駆動するための駆動部であり、制御部11から送信される駆動信号に応じて回転駆動する(矢印R2)。モータ62は、正回転と逆回転の両方に可逆的に回転可能である。カム部材63は、モータ62と可動部68の間に接続される部材であり、モータ62の回転力を、軸方向Aに沿った駆動力に変換して可動部68に伝達する。カム部材63は、モータ係合部64と、傾斜部66とを有する。
【0055】
モータ係合部64は、モータ62のギヤに噛み合う部分であり、モータ62の回転によって、傾斜部66とともに横方向Bに移動する。傾斜部66は、水平方向に対して傾斜した部分であり、押下げ部69に係合する。押下げ部69は、可動部68の周囲に配置されるとともに、バネ70を押し下げる機能を有する。押下げ部69が水平方向に延びるのに対して、傾斜部66が水平方向に対して傾斜することで、傾斜部66と押下げ部69の接触位置に応じて、押下げ部69の上下位置が変化する。これにより、バネ70が押圧部58を押し下げる押下げ力F6が変化する。
【0056】
可動部68は、前述した可動部56と同様に軸方向Aに沿って延びる軸部材であり、先端が押圧部58に接続される。可動部68は、可動部56を内側に収容する筒状の形状を有し、可動部56と同軸に配置される。可動部68の周囲にはバネ70が設けられ、押下げ部69と押圧部58の間にバネ70が配置される。
【0057】
上記構成によれば、
図9Bに示すように、モータ62を所定の回転方向R3に回転させると、カム部材63が紙面右側に移動して、カム部材63の傾斜部66が押下げ部69を押し下げる。押し下げられた押下げ部69によってバネ70が圧縮され、バネ70を介して押圧部58および可動部68が下方に押し下げられ、押圧部58が圧力開放弁22の被押圧部46を押圧する。これにより、圧力開放弁22が封止位置から開放位置へ移動し、調理空間Sが大気圧に開放される。
【0058】
モータ62を回転方向R3の逆方向に回転させれば、押圧部58は圧力開放弁22から退避して、圧力開放弁22は元の封止位置に戻る。
【0059】
なお可動部68と押圧部58が上下動するとき、可動部68と同軸に配置された可動部56は移動せず、可動部68は可動部56とは独立して上下動する。
【0060】
上記の通り、圧力開放弁22を動作させる機構として2種類の機構(手動開放部25および自動開放部50)を設けることで、ユーザの手動操作あるいは制御部11の制御による自動操作で調理空間Sを大気圧に開放させることができる。なお、自動開放部50においてモータ62を回転駆動するタイミングや回転方向は、調理コースに応じて予め定められており、制御部11の記憶部(図示せず)に記憶されている。
【0061】
例えば、加熱調理あるいは減圧調理の間は、予め記憶されたプログラムに従って自動開放部50を用いて圧力開放弁22を所定のタイミングで動作させつつ、調理中以外のときは、手動開放部25を用いてユーザが手動で圧力開放弁22を動作させることが可能となる。また、調理中の好きなタイミングでユーザが手動で圧力開放弁22を動作させて蓋10を開けることも可能となる。特に、停電等で加熱調理器2が非通電となった場合は自動開放部50を動作させることができなくなるため、手動開放部25を用いて圧力開放弁22を動作できるようにすることで、停電等の非常時にも、調理空間Sを大気圧に開放させる機能を備えることができる。
【0062】
特に、本実施形態の加熱調理器2は減圧調理機能を有するものであり、調理空間Sの圧力が大気圧よりも低い減圧状態のときに加熱調理器2が非通電になると、蓋10が開けられなくなるおそれがある。これに対して手動開放部25を設けることで、減圧状態で非通電となるような場合でも蓋10が開けられる状態を確保することができ、加熱調理器2の機能・利便性を向上させることができる。また、通電時でも所定以上の圧力がかかった場合は、強制的に圧力開放ができることで、圧力開放弁22を自動で開放する手段が無くても、安定した圧力で減圧調理を繰り返すことが可能となる。
【0063】
本実施形態ではさらに、手動開放部25および自動開放部50(
図10)とは別に、調理空間Sの圧力が所定圧力以下となる減圧状態となることに応じて、調理空間Sを大気圧に開放するように自発的に動作する圧力開放手段(自発的圧力開放手段)を設けている。以下、圧力開放手段の実施例について説明する。
【0064】
(実施例1:パッキン18が圧力開放手段の場合)
実施例1では、内蓋14に設けたパッキン18を圧力開放手段として用いる。実施例1におけるパッキン18の概略構成について、
図10、
図11を用いて説明する。
【0065】
図10は、実施例1のパッキン18の平面図であり、
図11は、パッキン18の一部を拡大した縦断面図である。
【0066】
図10に示すように、パッキン18は、周方向Cに沿って延在する大略円環状の形状を有する。
図10、
図11に示すように、パッキン18は、本体部100と、第1薄肉部102と、第2薄肉部104と、取付部106とを有する。
【0067】
本体部100は、パッキン18の本体を構成する部分であって、パッキン18において厚みが相対的に大きくなっている。本体部100は厚肉部と称してもよい。第1薄肉部102は、本体部100に対して厚みの小さい部分であり、本体部100から外側D1に延びる。第2薄肉部104は、第1薄肉部102と同様に本体部100に対して厚みの小さい部分であり、本体部100から内側D2に延びる。取付部106は、パッキン18を内蓋本体部16に取り付けるための部分であり、本体部100とは逆側に立ち上がる形状を有する。
【0068】
取付部106には、突起部108と、引っ掛け部110とが設けられる。
【0069】
ここで、パッキン18を内蓋本体部16に取り付けて固定した固定状態の縦断面図を
図12に示す。
【0070】
図12に示すように、パッキン18は、パッキン固定部112を介して内蓋本体部16に固定される。パッキン固定部112は、パッキン18を内蓋本体部16に固定するための部材であり、パッキン18の取付部106に係合するとともに、図示しないビス等の固定手段により内蓋本体部16の外周部117に固定される。
【0071】
パッキン固定部112は、パッキン18の引っ掛け部110を引っ掛けるための突起部114を有する。パッキン18の突起部108は、内蓋本体部16の下面に密着する。取付部106から延びる第2薄肉部104は、内蓋本体部16の下面に当接する。
【0072】
図12に示すように、蓋10を閉じてパッキン18を鍋4に密着させると、パッキン固定部112と鍋4のフランジ113との間に、第1薄肉部102が配置される。
【0073】
パッキン固定部112は、第1薄肉部102を鍋4のフランジ113に向けて押圧する押圧部116を有する。押圧部116は、パッキン固定部112において突起部114とは逆側に向かって突出した突起部であり、周方向Cの全周にわたって延在する。押圧部116によって第1薄肉部102をフランジ113に向けて押圧することで、第1薄肉部102がフランジ113に密着して、鍋4の調理空間Sを封止する封止ポイントKが形成される。
【0074】
上記構成において、調理中等に調理空間Sの圧力が変化すると、調理空間Sと外部空間Oの圧力差に応じて、パッキン18の形状が変化してパッキン18が自発的に動作する。
【0075】
ここで、パッキン18の動作例を
図13、
図14A、
図14Bに示す。
図13は、調理空間Sが加圧状態である場合のパッキン18の縦断面図であり、
図14A、
図14Bは、調理空間Sが減圧状態である場合のパッキン18の縦断面図である。
【0076】
図13に示すように、調理空間Sが加圧状態になると、調理空間Sと外部空間Oの圧力差に応じて、調理空間Sに露出するパッキン18の本体部100が鍋4の内壁面に押し付けられ、第2薄肉部104は内蓋本体部16の下面に押し付けられる。本体部100から延びる第1薄肉部102には外部空間Oに向かう外力が働く。第1薄肉部102は狭い側の空間に移動しようとするため、封止ポイントKにおける封止がより強固に形成される。
【0077】
図14Aに示すように、調理空間Sが減圧状態になると、調理空間Sと外部空間Oの圧力差に応じて、パッキン18の本体部100は調理空間Sに向かって引き込まれ、第1薄肉部102も調理空間Sに向かって引き込まれる。調理空間Sと外部空間Oの圧力差が大きくなるほど、第1薄肉部102は調理空間Sに向かってより引き込まれる。
【0078】
図14Bに示すように、調理空間Sの圧力が所定圧力以下となる減圧状態に応じて、第1薄肉部102はフランジ113と押圧部116の間に挟まれる位置よりも内側(紙面右下)に移動する。これにより、封止ポイントKにおける封止が解除され、調理空間Sと外部空間Oが連通して、調理空間Sが大気圧に開放される。
【0079】
実施例1では、
図14Bに示すような所定圧力以下の減圧状態に応じた封止解除がパッキン18における特定の箇所で生じるようにパッキン18の形状等を工夫している。以下、実施例1のバリエーションとして、実施例1-1、1-2、1-3、1-4、1-5について説明する。
【0080】
(実施例1-1)
実施例1-1について、
図15、
図16を用いて説明する。
図15は、実施例1-1におけるパッキン18Aを示す平面図であり、
図16は、
図15のE1部の拡大図である。
【0081】
図15、
図16に示すように、実施例1-1のパッキン18Aは、第1薄肉部102Aを有するとともに、第1薄肉部102Aは、周方向Cの一部に切欠き120Aを形成する。切欠き120Aは、第1薄肉部102Aの外周部の一部に設けられた切欠きであり、切欠き120Aを含む領域において、第1薄肉部102Aの幅方向Dの長さを狭くした幅狭部122A(
図16)が形成される。
【0082】
上記構成によれば、
図14Bに示すように、調理空間Sが減圧状態となって第1薄肉部102Aが調理空間Sに向かって引き込まれるときに、切欠き120Aを形成する幅狭部122Aにおいて封止ポイントKの封止が最初に解除される。このようにして、パッキン18Aの周方向Cの特定箇所において封止を解除することができ、パッキン18Aで調理空間Sを大気圧開放する際の圧力条件も制御しやすい。
【0083】
(実施例1-2)
実施例1-2について、
図17、
図18を用いて説明する。
図17は、実施例1-2におけるパッキン18Bを示す平面図であり、
図18は、
図17のE2部の拡大図である。
【0084】
図17、
図18に示すように、実施例1-2のパッキン18Bは、本体部100Bにおいて、厚みを相対的に大きくした複数のリブ124Bを設けている。リブ124Bを設けることで、本体部100Bの剛性が部分的に高まる。
【0085】
複数のリブ124Bは、周方向Cに沿って概ね等間隔で設けられるところ、周方向Cの一部で間引かれている。
図17、
図18に示す例では、紙面右側の領域においてリブ124Bが1つ分、間引かれている。リブ124Bが間引かれる領域では、リブ124Bが設けられる領域よりも剛性が弱くなり、弱剛性部126Bが構成される。
【0086】
図19は、リブ124Bを含まないエリア(弱剛性部126Bを含む。)におけるパッキン18Bの縦断面図であり、
図20は、リブ124Bを含むパッキン18Bの縦断面図である。
【0087】
図19に示すように、リブ124Bを含まない断面において、第1薄肉部102と第2薄肉部104の間に位置する本体部100Bは、厚みT1を有する。
図20に示すように、リブ124Bを含む断面において、第1薄肉部102と第2薄肉部104の間に位置する本体部100Bは、厚みT1よりも大きい厚みT2を有する。
【0088】
上記構成によれば、
図14Bに示すように、調理空間Sが減圧状態となって本体部100Bと第1薄肉部102が調理空間Sに向かって引き込まれるところ、相対的に剛性の弱い弱剛性部126Bおよび弱剛性部126Bに近い第1薄肉部102ほど、より引き込まれやすい。このため、弱剛性部126Bの近傍において封止ポイントKの封止が最初に解除される。このようにして、パッキン18Bの周方向Cの特定箇所において封止を解除することができ、パッキン18Bで調理空間Sを大気圧開放する際の圧力条件も制御しやすい。
【0089】
なお、複数のリブ124Bを設ける際のピッチは、封止解除の圧力条件に応じて適宜調整すればよい。例えば、
図21、
図22に示す変形例のようなリブ124Bと弱剛性部126Bの配置を採用してもよい。
【0090】
また、
図17~
図20に示すようにリブ124Bを設けてパッキン18Bの厚みを局所的に大きくする場合に限らず、パッキン18Bにおける周方向Cの一部の厚みを局所的に小さくすることで、弱剛性部を形成してもよい。
【0091】
(実施例1-3)
実施例1-3について、
図23~
図25を用いて説明する。
図23は、実施例1-3における鍋4Cの縦断面図であり、
図24は、鍋4Cの平面図であり、
図25は、鍋4Cのフランジ113Cの周辺構成を拡大した縦断面図である。
【0092】
図23、
図24に示すように、実施例1-3の鍋4Cは、図示しないパッキン18に当接するフランジ113Cを有する。
図24に示すように、フランジ113Cは、鍋4Cにおいて周方向Cに間隔を空けて複数設けられる。
図24に示す例では、フランジ113Cが3か所設けられ、そのうちの1つのフランジ113Cに凹部128Cが形成される。
【0093】
図25は、凹部128Cを形成するフランジ113Cを拡大して示す縦断面図(
図24のE3部の拡大図)である。
図25に示すように、凹部128Cは、フランジ113Cの根元部分を部分的に凹ませて形成される。
【0094】
上記構成によれば、
図14Bに示すように、調理空間Sが減圧状態となって第1薄肉部102が調理空間Sに向かって引き込まれるときに、凹部128Cが形成される箇所のフランジ113Cとパッキン18の間において、封止ポイントKの封止が最初に解除される。このようにして、パッキン18の周方向Cの特定箇所(凹部128Cに対向する箇所)において封止を解除することができ、パッキン18で調理空間Sを大気圧開放する際の圧力条件も制御しやすい。
【0095】
(実施例1-4)
実施例1-4について、
図26~
図28を用いて説明する。
図26は、実施例1-4におけるパッキン固定部112Dの縦断面図であり、
図27は、
図26のE4部を拡大した縦断面図であり、
図28は、
図26のE5部を拡大した縦断面図である。
【0096】
図26に示すように、実施例1-4のパッキン固定部112Dは、下面130Dにおいて押圧部116Dを有する。押圧部116Dは、周方向Cに延在するように設けられ、紙面右側の一部の領域で間引かれている。押圧部116Dが設けられない箇所では、第1薄肉部102を押圧する押圧力が相対的に弱い弱押圧部132Dが構成される。
【0097】
図27に示すように、パッキン固定部112Dの下面130Dは、押圧部116Dによって凸形状を有するのに対して、
図28に示すように、弱押圧部132Dを構成する下面130Dは押圧部116Dが設けられないことで、平坦となる。
【0098】
上記構成によれば、
図14Bに示すように、調理空間Sが減圧状態となって第1薄肉部102が調理空間Sに向かって引き込まれるときに、パッキン固定部112Dの弱押圧部132Dとパッキン18の間において、封止ポイントKの封止が最初に解除される。このようにして、パッキン18の周方向Cの特定箇所(弱押圧部132Dに対向する箇所)において封止を解除することができ、パッキン18で調理空間Sを大気圧開放する際の圧力条件も制御しやすい。
【0099】
(実施例1-5)
図29は、実施例1-5におけるパッキン固定部112Eの縦断面図であり、
図30は、
図29のE6部を拡大した縦断面図であり、
図31は、
図29のE7部を拡大した縦断面図である。
【0100】
図29に示すように、実施例1-5のパッキン固定部112Eは、下面130Eにおいて押圧部116Eを有する。押圧部116Eは、周方向Cに延在するとともに、紙面右側の一部の領域で、幅方向Dの位置をずらして配置される。
【0101】
図29~
図31に示す例では、E7部における押圧部116E(132E)は、E6部を含む、E7部とは異なる場所における押圧部116Eに対して、幅方向Dの外側D1にずれた位置に設けられる。
【0102】
上記構成によれば、
図14Bに示すように、調理空間Sが減圧状態となって第1薄肉部102が調理空間Sに向かって引き込まれるときに、外側D1に位置する押圧部132Eとパッキン18の間において、封止ポイントKの封止が最初に解除される。このようにして、パッキン18の周方向Cの特定箇所(押圧部132Eに対向する箇所)において封止を解除することができ、パッキン18で調理空間Sを大気圧開放する際の圧力条件も制御しやすい。
【0103】
(実施例2:圧力開放弁22が自発的圧力開放手段の場合)
実施例1では、パッキン18を自発的圧力開放手段として用いたのに対して、実施例2では、
図3、
図4等に示した圧力開放弁22を自発的圧力開放手段として用いる。
【0104】
図32は、実施例2における圧力開放弁22Fの周辺構成を示す縦断面図である。
【0105】
図32に示すように、圧力開放弁22Fのバネ42Fは、弁体38Fを封止位置に向けて付勢する付勢力F3を発生させる。調理空間Sが加圧状態のときは、弁体38Fは付勢力F3と同方向の加圧力を受けて、封止状態がより強固に維持されるのに対して、調理空間Sが減圧状態のときは、付勢力F3とは逆向きに、調理空間Sに向かって引き込まれる減圧力F9を受ける。減圧力F9は調理空間Sの圧力が低くなるほど大きくなり、付勢力F3よりも大きくなると、弁体38Fが下降して封止が解除される。
【0106】
実施例2では、調理空間Sの圧力が目標の所定圧力まで低下した減圧状態に応じて、減圧力F9が付勢力F3を上回って封止が解除されるように、付勢力F3の大きさ等を設定している。
【0107】
上記構成によれば、調理空間Sの圧力が所定圧力以下となる減圧状態になることに応じて、圧力開放弁22Fの弁体38Fを封止位置から開放位置へと自発的に移動させて、調理空間Sを大気圧に開放することができる。
【0108】
(作用・効果)
上述したように、本実施形態の加熱調理器2は、調理空間Sを有する鍋4と、鍋4を加熱するヒータ9(加熱部)と、調理空間Sを密閉可能な内蓋14を有する蓋10と、調理空間Sが所定圧力以下まで減圧される減圧状態に応じて、調理空間Sと外部空間Oとの圧力差により動作して、調理空間Sを大気圧に開放するパッキン18あるいは圧力開放弁22(圧力開放手段)と、を備える。
【0109】
このような加熱調理器2によれば、調理空間Sが減圧状態になったときに圧力開放手段が調理空間Sの圧力を開放することで、例えば非通電時に調理空間Sの圧力が低下した場合でも、調理空間Sの圧力を開放して蓋10が開けられる状態を確保することができる。これにより、加熱調理器2の機能を向上させることができる。
【0110】
また、本実施形態の加熱調理器2では、パッキン18あるいは圧力開放弁22(圧力開放手段)は、減圧状態に応じて自発的に動作する。このような加熱調理器2によれば、非通電時に調理空間Sの圧力が低下した場合でも圧力開放手段が自発的に動作することで、蓋10が開けられる状態を確保することができる。
【0111】
また、本実施形態(実施例1)の加熱調理器2では、内蓋14は、圧力開放手段としてのパッキン18を有し、パッキン18は、減圧状態に応じて調理空間Sに向けて引き込まれることで、鍋4との密着状態が一部解除される。このような加熱調理器2によれば、パッキン18を利用して調理空間Sの圧力を開放して、蓋10が開けられる状態を確保することができる。
【0112】
また、本実施形態(実施例1)の加熱調理器2では、パッキン18の外周部には、鍋4と接触する第1薄肉部102が設けられる。このような加熱調理器2によれば、第1薄肉部102を利用して調理空間Sの圧力を開放する設計が可能となる。
【0113】
また、本実施形態(実施例1-1)の加熱調理器2では、第1薄肉部102Aは、部分的に幅の狭くなった幅狭部122Aを有する。このような加熱調理器2によれば、減圧状態でパッキン18Aの第1薄肉部102Aが引き込まれたときに、幅狭部122Aを介して調理空間Sの圧力を開放することができる。
【0114】
また、本実施形態(実施例1-2)の加熱調理器2では、パッキン18Bは、部分的に剛性が弱くなった弱剛性部126Bを有する。このような加熱調理器2によれば、減圧状態でパッキン18Bが引き込まれたときに、弱剛性部126Bを介して調理空間Sの圧力を開放することができる。
【0115】
また、本実施形態(実施例1-2)の加熱調理器2では、パッキン18Bは、周方向Cに間隔を空けて配置された複数のリブ124Bを有し、弱剛性部126Bは、パッキン18Bの周方向Cにおいてリブ124Bが一部間引かれた箇所に設けられる。このような加熱調理器2によれば、簡単な構成で弱剛性部126Bを実現することができる。
【0116】
また、本実施形態(実施例1-2の変形例)の加熱調理器2では、弱剛性部126Bは、パッキン18Bにおける相対的に厚みが薄い箇所に設けられる。このような加熱調理器2によれば、簡単な構成で弱剛性部を実現することができる。
【0117】
また、本実施形態(実施例1-3)の加熱調理器2では、鍋4Cは、パッキン18に接触するフランジ113Cを有し、フランジ113Cは、周方向Cの一部に凹部128Cを有する。このような加熱調理器2によれば、減圧状態でパッキン18が引き込まれたときに、フランジ113Cの凹部128Cを介して調理空間Sの圧力を開放することができる。
【0118】
また、本実施形態(実施例1-4)の加熱調理器2では、内蓋14は、内蓋本体部16と、パッキン18を内蓋本体部16に固定するパッキン固定部112Dとを有し、パッキン固定部112Dは、パッキン18を鍋4に向けて押圧する押圧部116Dを有し、押圧部116Dは、押圧力が周方向Cの一部で弱くなるように構成された弱押圧部132Dを有する。このような加熱調理器2によれば、減圧状態でパッキン18が引き込まれたときに、弱押圧部132Dを介して調理空間Sの圧力を開放することができる。
【0119】
また、本実施形態の加熱調理器2(実施例1-5)では、内蓋14は、内蓋本体部16と、パッキン18を内蓋本体部16に固定するパッキン固定部112とを有し、パッキン固定部112Eは、パッキン18を鍋4に向けて押圧する押圧部116E、132Eを有し、押圧部132Eは、周方向Cの一部で幅方向Dの外側D1にずれた位置に設けられる。このような加熱調理器2によれば、減圧状態でパッキン18が引き込まれたときに、押圧部132Eを介して調理空間Sの圧力を開放することができる。
【0120】
また、本実施形態の加熱調理器2(実施例2)では、内蓋14には、圧力開放手段としての圧力開放弁22Fと、圧力開放弁22Fを封止位置に向けて付勢するバネ42F(付勢部材)とが設けられ、圧力開放弁22Fは、内蓋14を貫通するように配置される弁体38Fを有し、弁体38Fは、調理空間Sが所定圧力以下まで減圧される減圧状態に応じて、バネ42Fの付勢力F3に反して調理空間Sに引き込まれるように動作する。このような加熱調理器2によれば、圧力開放弁22Fの弁体38Fが所定の減圧状態に応じて調理空間Sに引き込まれることで、調理空間Sの圧力を開放することができる。
【0121】
また、本実施形態の加熱調理器2では、内蓋14には、調理空間Sの圧力の上昇に応じて、調理空間Sを大気圧に開放するように動作する安全弁20がさらに設けられる。このような加熱調理器2によれば、調理空間Sが加圧状態になった場合に安全弁20が動作することで、調理空間Sの圧力が過剰に大きくなることを防止することができ、安全性を向上させることができる。
【0122】
また、本実施形態の加熱調理器2は、減圧調理機能を有する。このような加熱調理器2によれば、調理空間Sが減圧状態になった場合でもパッキン18あるいは圧力開放弁22(圧力開放手段)により圧力を開放して、蓋10が開けられる状態を確保することができる。
【0123】
以上、上述の実施形態を挙げて本開示の発明を説明したが、本開示の発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、実施形態では、圧力開放弁22を動作させるための機構として手動開放部25と自動開放部50を設ける場合について説明したが、このような場合に限らず、手動開放部25と自動開放部50のいずれかあるいは両方を設けない場合であってもよい。このような場合でも、パッキン18、安全弁20および圧力開放弁22を用いて、過度な加圧状態/過度な減圧状態を防止しながら調理することも可能である。
【0124】
また実施形態では、圧力開放弁22がバネ式の弁である場合について説明したが、このような場合に限らず例えば、ボール式の弁であってもよい。ただし、バネ式の弁であれば、ボール式の弁のように弁の動作圧力を高くするために弁の重量を重くする必要がなく、内蓋14の重量やサイズを大きく変更することなく弁の動作圧力を調整しやすい。
【0125】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。また、各実施形態における要素の組合せや順序の変化は、本開示の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【0126】
前記実施形態の様々な変形例のうち、任意の変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本開示は、食品等の調理物を加熱調理する加熱調理器であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0128】
2 加熱調理器
4 鍋
9 ヒータ(加熱部)
10 蓋
14 内蓋
18 パッキン(圧力開放手段)
22 圧力開放弁(圧力開放手段)
S 調理空間
O 外部空間