(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000942
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】ポリマーと銅の接合体のための銅表面処理方法
(51)【国際特許分類】
C25D 11/34 20060101AFI20221222BHJP
C23F 1/18 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
C25D11/34 302
C23F1/18
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102058
(22)【出願日】2021-06-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】519400575
【氏名又は名称】ドングァン ディーエスピー テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グオ,ティア ロング
(72)【発明者】
【氏名】タン,ヨン ガング
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,グオ シン
【テーマコード(参考)】
4K057
【Fターム(参考)】
4K057WA07
4K057WB04
4K057WE02
4K057WE03
4K057WG01
4K057WG03
4K057WG07
(57)【要約】
【課題】優れた接合強度を持つポリマーと銅との金属接合体の製造のための銅表面処理方法を提供する。
【解決手段】ポリマーと銅との複合材の接着結合のための銅の表面処理方法として、
(a)銅の表面を電気エッチングするエッチング処理段階
(b)銅表面を酸化アノダイジング処理する1次アノダイジング処理段階
(c)1次アノダイジング処理された銅を再度酸化アノダイジング処理する2次アノダイジング処理段階、
前記2次アノダイジング処理された銅を超音波処理した後、再度酸化処理を行う銅表面処理方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーと銅の複合材の接着結合のための銅の表面処理方法として、
(a)銅の表面を電気エッチングするエッチング処理段階
(b)銅表面を酸化アノダイジング処理する1次アノダイジング処理段階
(c)前記1次アノダイジング処理された銅を再度酸化アノダイジング処理する2次アノダイジング処理段階とを含むことを特徴とする銅表面処理方法。
【請求項2】
前記(b)段階は、電解質0.01~0.05%のNaNO2、補助剤0.1~1%のNH4F、添加剤0.01~0.1%のC2H4(OH)2等の混合溶液に30~90℃で500msパルス整流器を使用し、0.01~5Aの電流密度において1~15分間行うことを特徴とする請求項1記載の銅表面処理方法。
【請求項3】
前記(c)段階における、前記2次アノダイジング処理は、電解質0.1~2%のC2K2O4、補助剤0.1~0.5%のNa2O3Si、補助剤0.01~0.1%のC3H8O3、補助剤0.001~0.01%のC20H24Na2O10S2等の混合溶液において、30~70℃の温度で500msパルス整流器を使用し、0.01~1Aの電流密度において1~10分間行うことを特徴とする請求項1記載の銅表面処理方法。
【請求項4】
前記(c)段階で、使用される電解質は、 C2K2O4、NaHCO3、NaOH、Na2CO3、Na2SO4、K2SO3、Na2SO3、NaNO2、KNO2、NaNO3、NaClO4、CH3COONa、Na2B2O7、NaH2PO2、(NaPO3)6、 Na2MoO4、 Na3SiO3、及びNa2HPO3のいずれか1つを用いて行うことを特徴とする請求項1記載の銅表面処理方法。
【請求項5】
前記(c)段階での、前記混合溶液に添加剤である0.01~1%のシランカップリング添加剤を添加することを特徴とする請求項3記載の銅表面処理方法。
【請求項6】
前記(c)段階での、前記添加剤であるシランカップリング添加剤は(RO)3Si-(CH2)3-NH2、(RO)3Si-(CH2)2-Si(OC2H5)3、(RO)3Si-(CH2)3-SH、(RO)3Si-CH=CH2、(RO)3Si-(CH3)3-OOC(CH3)C=CH2、(RO)3Si-(CH3)3-O- CHCH2O、R2-Si-R’-N3、及び(RO)3Si-(CH2)15CH3のいずれか1つを用いて行うことを特徴とする請求項5記載の銅表面処理方法。
【請求項7】
前記(c)段階後に、前記2次アノダイジング処理された銅を超音波処理することを特徴とする請求項1記載の銅表面処理方法。
【請求項8】
前記超音波処理は、0.001~0.01%のH2SO4溶液に添加剤である0.001~0.01%のC2H4(OH)2を添加後、30~60℃で100~24KHZ400Wで1~3分間行うことを特徴とする請求項7記載の銅表面処理方法。
【請求項9】
前記超音波処理された銅を酸化処理することを特徴とする請求項7記載の銅表面処理方法。
【請求項10】
前記酸化処理は、0.1~3%のH2O2溶液に添加剤0.001~0.01%のNa2S2O3を添加後、30~60℃で10秒~5分間行うことを特徴とする請求項9記載の銅表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマーと銅の接合体の接着結合のための銅表面処理方法に係り、より詳しくは、銅表面を1次、2次アノダイジングを通じて銅表面とポリマーの接合体の接合を極大化するポリマーと銅の接合体のための銅表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーと銅の接合体は防水性が必要な電子部品及びスマートフォンや電気自動車のリチウムイオンバッテリーに多用されているが、ポリマーと銅の接合強度に対する信頼性が低いことが問題点として挙げられている。
【0003】
そこで、銅をアノダージングを通じて銅表面の活性度および摩擦力を高め、ポリマーとの強力な接着ができるような製造に使用されている。しかし、1次アノダイジング処理だけでポリマーとの十分な接着力と密閉性を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の問題を解決するための銅表面処理方法で、優れた接合強度と密閉性を持つ銅とポリマーの金属接合体を製造するための銅表面処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、ポリマーと銅の複合材の接着結合のための銅の表面処理方法として、
(a) 銅表面を電気エッチングするエッチング処理段階
(b) 銅表面を酸化アノダイジング処理する1次アノダイジング処理段階
(c) 前記1次アノダイジング処理された銅を再度酸化アノダイジング処理する2次アノダイジング処理段階を含むことを特徴とする。
【0007】
前記(b)段階は、電解質0.01~0.05%のNaNO2、補助剤0.1~1%のNH4F、添加剤0.01~0.1%のC2H4(OH)2等の混合溶液に30~90℃で500msパルス整流器を使用し、0.01~5Aの電流密度において1~15分間行うことを特徴とする。
【0008】
前記(c)段階における、前記2次アノダイジング処理は、電解質0.1~2%のC2K2O4、補助剤0.1~0.5%のNa2O3Si、補助剤0.01~0.1%のC3H8O3、補助剤0.001~0.01%のC20H24Na2O10S2等の混合溶液において、30~70℃の温度で500msパルス整流器を使用し、0.01~1Aの電流密度において1~10分間行うことを特徴とする。
【0009】
前記(c)段階での、使用される電解質は、C2K2O4、NaHCO3、NaOH、Na2CO3、Na2SO4、K2SO3、Na2SO3、NaNO2、KNO2、NaNO3、NaClO4、CH3COONa、Na2B2O7、NaH2PO2、(NaPO3)6、 Na2MoO4、 Na3SiO3、及びNa2HPO3のいずれか1つを用いて行うことを特徴とする。
【0010】
前記(c)段階での、前記混合溶液に添加剤である0.01~1%のシランカップリング添加剤を添加することを特徴とする。
前記(c)段階での、前記添加剤であるシランカップリング添加剤は(RO)3Si-(CH2)3-NH2、(RO)3Si-(CH2)2-Si(OC2H5)3、(RO)3Si-(CH2)3-SH、(RO)3Si-CH=CH2、(RO)3Si-(CH3)3-OOC(CH3)C=CH2、(RO)3Si-(CH3)3-O- CHCH2O、R2-Si-R’-N3、及び(RO)3Si-(CH2)15CH3のいずれか1つを用いて行うことを特徴とする
【0011】
前記(c) 段階後に、前記2次アノダイジング処理された銅に超音波処理を施すことを特徴とする。
【0012】
前記超音波処理は、0.001~0.01%のH2SO4溶液に添加剤である0.001~0.01%のC2H4(OH)2を添加後、30~60℃で100~24KHZ400Wで1~3分間行うことを特徴とする。
【0013】
前記超音波処理された銅を酸化処理することを特徴とする。
【0014】
前記酸化処理は、0.1~3%のH2O2溶液に添加剤0.001~0.01%のNa2S2O3を添加後、30~60℃で10秒~5分間行うことを特徴とする。
【0015】
前記酸化処理後、70~80℃で5~10分間乾燥を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、本発明の銅の表面処理方法は、銅表面に対する1次アノダイジングの際に酸化皮膜の突起を形成し、2次アノダイジングを通じて針状の酸化皮膜の突起を再び形成し、接触面積を最大化し、2次アノダイジングの際にシランカップリング添加剤を追加して針状の酸化皮膜の突起にシラン重合体を形成してポリマーと銅の接合力を極大化する効果がある。
また、2次アノダイジング後、超音波処理を行い、針状の酸化皮膜に微細なクラックを形成し、その後、酸化処理を行うことで微細なクラック部分に微細な酸化皮膜の可視形の突起を再度形成し、ポリマーと銅の接合力をさらに極大化する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による銅表面処理のそれぞれの工程による酸化膜の変化を示す図である。
【
図3】1次、2次アノダイジング装置及びコンディションを示す図である。
【
図5】ポリマーと銅の間のシランカップリング剤の反応構造を示す図である。
【
図6】(A)は各工程別の銅酸化膜の表面写真である。(B)は各工程別の銅酸化膜の断面写真である。
【
図7】従来の製品と本発明品をそれぞれの恒温恒湿テスト後のT-Bend test方法の図及び破断面写真である。
【
図8】1次、2次アノダイジング及び添加剤添加後それぞれの恒温恒湿テスト後の引張実験方法である。
【
図9】1次、2次アノダイジング及び添加剤添加後それぞれの恒温恒湿テスト後の引張実験結果である。
【
図10】1次、2次アノダイジング及び添加剤添加後それぞれの恒温恒湿テスト後の引張実験後試片の破断面写真である。
【
図11】1次、2次アノダイジング及び添加剤添加後それぞれの放置時間による引張実験の比較グラフである。
【
図12】恒温恒湿テスト測定機械及び試験片である。
【
図13】恒温恒湿テストの結果、1次、2次アノダイジング及び添加剤を添加した後のそれぞれの密閉比較グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面を参照して、本発明によるポリマー銅接合体の製造方法を説明する。
本発明は、ポリマー複合材との接着結合を極大化するための銅の表面処理方法として、
(a) 銅の表面を電気エッチングするエッチング処理段階
(b) 銅表面を酸化アノダイジング処理する1次アノダイジング処理段階
(c) 前記1次アノダイジング処理された銅を再度酸化アノダイジング処理する2次アノダイジング処理段階を含む。
【0019】
(a)段階では、銅表面を混合溶液5%のH2SO2、10%のHNO3、0.1%の付加的な界面活性剤等の混合溶液に30~70で500msパルス整流器を使用し,1~10Aの電流密度で5~15分間電気エッチング処理を行う。
電気エッチングは銅の表面に不規則なエッチングの跡を形成する。
【0020】
(b)段階は、電解質0.01~0.05%のNaNO2、補助剤0.1~1%のNH4F、添加剤0.01~0.1%のC2H4(OH)2等の混合溶液に30~90℃で500msパルス整流器を使用し、0.01~5Aの電流密度において1~15分間行う。
前記1次アノダイジングは、エッチングされた銅の表面を電気酸化させ、表面に微細な突起のような銅酸化被膜を作る。
【0021】
(c)段階は、前記の1次アノダイジング処理された微細な突起のような銅酸化皮膜が生成された銅を再び酸化アノダイジング処理する2次アノダイジング処理する2次アノダイジング処理した銅を電解質0.1~2%のC2K2O4、補助剤0.1~0.5%のNa2O3Si、補助剤0.01~0.1%のC3H8O3、補助剤0.001~0.01%のC20H24Na2O10S2等の混合溶液において、30~70℃の温度で500msパルス整流器を使用し、0.01~1Aの電流密度において1~10分間行う。
【0022】
(c) 段階での、使われる電解質はC2K2O4、NaHCO3、NaOH、Na2CO3、Na2SO4、K2SO3、Na2SO3、NaNO2、KNO2、NaNO3、NaClO4、CH3COONa、Na2B2O7、NaH2PO2、(NaPO3)6、 Na2MoO4、 Na3SiO3、及びNa2HPO3のいずれか1つを用いて行う。
【0023】
(c) 段階の2次アノダイジングを通じて、銅表面に対する1次アノダイジングの際に形成された突起のような酸化皮膜の間で2次アノダイジングを通じて微細なサボテンのとげのような鋭い突起が再び形成され、表面が非常に粗い複合的な酸化皮膜形態を形成し、接触面積を最大化し、ポリマーと銅の接合力を極大化する効果がある。
【0024】
(c) 段階における、前記混合溶液に添加剤である0.01~1%のシランカップリング添加剤を添加することで、2次アノダイジング完了後に、銅とポリマーとの接合力を最大限に高めることができる。
これは、2次アノダイジング銅酸化膜に残存する添加剤とポリマーの間にバンデリバンス重ね合力が発生して、追加的な接合力を発生することによるものである。
【0025】
(c)段階での、添加剤であるシランカップリング添加剤は(RO)3Si-(CH2)3-NH2、(RO)3Si-(CH2)2-Si(OC2H5)3、(RO)3Si-(CH2)3-SH、(RO)3Si-CH=CH2、(RO)3Si-(CH3)3-OOC(CH3)C=CH2、(RO)3Si-(CH3)3-O- CHCH2O、R2-Si-R’-N3、及び(RO)3Si-(CH2)15CH3のいずれか1つを用いて行う。
【0026】
(c) 段階後に、前記2次アノダイジング処理された銅を0.001~0.01%のH2SO4溶液に添加剤である0.001~0.01%のC2H4(OH)2を添加後、30~60℃で100~24KHZ400Wで1~3分間行う超音波処理を行う。
【0027】
超音波処理を通じて、1次アノダイジング及び2次アノダイジングを通じて銅表面に生成された酸化被膜突起に微細なマイクロクラックが形成され、表面がさらに粗くなり、接触面積をさらに最大化し、ポリマーと銅の接合力を極大化する効果がある。
【0028】
最終的に超音波処理された銅を0.1~3%のH2O2溶液に添加剤0.001~0.01%のNa2S2O3を添加後、30~60℃で10秒~5分間酸化処理する。
【0029】
最終酸化処理を通じて、超音波処理後に、銅表面の酸化皮膜突起に発生した微細なマイクロクラックを通じて酸化が発生し、マイクロクラックから微細な酸化皮膜突起が追加で発生する。これによって銅の表面に接触面積が最大化されることで、銅とポリマーの接合力を極大化する。
【0030】
図1には本発明による銅表面処理のそれぞれの工程による酸化膜の構造および変化を図示した。
図2にはそれぞれの工程で生成された酸化膜の具体的な形態を図示した。
以降、具体的な実施例と図面を説明する。
【実施例0031】
(a)段階で、銅表面を混合溶液5%のH2SO2、10%のHNO3、0.1%のAdditive(Surfactant)等の混合溶液に30~70で500msパルス整流器を使用し,1~10Aの電流密度で5~15分間電気エッチング処理を行う。
(b)段階は、電解質0.01~0.05%のNaNO2、補助剤0.1~1%のNH4F、添加剤0.01~0.1%のC2H4(OH)2等の混合溶液に30~90℃で500msパルス整流器を使用し、0.01~5Aの電流密度において1~15分間行う第1次アノダイジングのみを実施した従来の方法で試片を作った。