(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094209
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/225 20060101AFI20230628BHJP
A47C 1/024 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
B60N2/225
A47C1/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209548
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】小川 信彦
(72)【発明者】
【氏名】平松 龍一
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B099AA05
3B099BA04
3B099CA20
3B099CB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外歯歯車の貫通孔ボス部をなくし、剛性の高い外歯歯車の底面部を押圧することによって、貫通孔ボス部が破損することがないリクライニング装置を提供する。
【解決手段】本発明のリクライニング装置100は、外歯歯車10と、軸方向と同軸の円筒ボスと、円筒ボスの周囲に底面部よりも底上げされた底上底面部と、を有する内歯歯車20と、内周面側にくさび状カム収容部を有し、正面側に突起部を有するブッシュ30と、外歯歯車10と内歯歯車20の相対回転を許容する一対のくさび状カム50と、くさび状カムを離間する方向に付勢する付勢部材70と、駆動部材60と、駆動部材60に嵌合して駆動部材60を介してブッシュ30を回転させる回転シャフト40と、を備え。ブッシュは、内歯歯車の底面部の側面と接していることを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯と、軸方向と同軸の円筒ボスと、前記円筒ボスの周囲に形成された底面部よりも底上げされた底上底面部と、を有する内歯歯車と、
前記外歯歯車の前記貫通孔の内周と前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、第1ブッシュ及び第2ブッシュの2つの弓状部材によって環状に形成され、外周面の中心と前記円筒ボスの中心が偏心するように形成されてなり、内周面側にくさび状カム収容部を有し、正面側に突起部を有するブッシュと、
前記ブッシュの前記くさび状カム収容部に配置され、前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周面と前記くさび状カム収容部の内周面に接触することによって前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周面と前記外歯歯車の前記貫通孔の内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
前記くさび状カムを離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記内歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿され、内側に嵌合孔と、外周側に前記ブッシュの前記突起部に係合する突出部と、を有する駆動部材と、
前記駆動部材に嵌合して前記駆動部材を介して前記ブッシュを回転させる回転シャフトと、
を備え、
前記ブッシュは、前記外歯歯車の底面部の側面と接していることを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
前記底上底面部は、少なくとも前記外歯歯車の底面部に相当する位置以上に底上げされていることを特徴とする請求項1に記載のリクライニング装置。
【請求項3】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の円筒ボスが形成され、前記円筒ボスの周囲に形成された底面部よりも底上げされた底上底面部と、を有する外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記貫通孔の内周と前記外歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され第1ブッシュと、第2ブッシュの2つの弓状部材によって環状に形成され、外周面の中心と前記円筒ボスの中心が偏心するように形成されてなり、内周面側にくさび状カム収容部を有し、正面側に突起部を有するブッシュと、
前記ブッシュの前記くさび状カム収容部に配置され、前記外歯歯車の前記円筒ボスの外周面と前記くさび状カム収容部の内周面に接触することによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記外歯歯車の前記円筒ボスの外周面と前記内歯歯車の前記貫通孔の内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
前記くさび状カムを離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記外歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿され、内側に嵌合孔と、外周側に前記ブッシュの前記突起部に係合する突出部と、を有する駆動部材と、
前記駆動部材に嵌合して前記駆動部材を介して前記ブッシュを回転させる回転シャフトと、
を備え、
前記ブッシュは、前記内歯歯車の底面部の側面と接していることを特徴とするたことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項4】
前記底上底面部は、少なくとも前記内歯歯車の底面部に相当する位置以上に底上げされていることを特徴とする請求項3に記載のリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシートクッションに対して、シートバックを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置300は、
図8に示すように、シートバック又はシートクッションのフレームに連結されて外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の貫通孔とこの貫通孔に形成される貫通孔ボス部310aを備える外歯歯車310と、シートクッション又はシートバックに連結されて外周面に外歯に噛合可能な内歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の円筒ボス部320aを備える内歯歯車320と、カム350と、ブッシュ330と、弾性体370と、を有している。
【0003】
ブッシュ330は、外歯歯車10の貫通孔ボス部310aを押圧するが、この外歯歯車10の貫通孔ボス部310aは、バーリング部のように突出した部分であり、剛性が低いため破損しやすいという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、こうした課題を鑑みてなされたものであり、外歯歯車の貫通孔ボス部をなくし、剛性の高い外歯歯車の底面部を押圧することによって、貫通孔ボス部が破損することがないリクライニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0006】
本発明のリクライニング装置は、
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯と、軸方向と同軸の円筒ボスと、円筒ボスの周囲に形成された底面部よりも底上げされた底上底面部と、を有する内歯歯車と、
前記外歯歯車の前記貫通孔の内周と前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、第1ブッシュ及び第2ブッシュの2つの弓状部材によって環状に形成され、外周面の中心と前記円筒ボスの中心が偏心するように形成されてなり、内周面側にくさび状カム収容部を有し、正面側に突起部を有するブッシュと、
前記ブッシュの前記くさび状カム収容部に配置され、前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周面と前記くさび状カム収容部の内周面に接触することによって前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記内歯歯車の前記円筒ボスの前記外周面と前記外歯歯車の前記貫通孔の前記内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
前記くさび状カムを離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記内歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿され、内側に嵌合孔と、外周側に前記ブッシュの前記突起部に係合する突出部と、を有する駆動部材と、
前記駆動部材に嵌合して前記駆動部材を介して前記ブッシュを回転させる回転シャフトと、
を備え、
前記ブッシュは、外歯歯車の底面部の側面と接していることを特徴とする。
【0007】
本発明にかかるリクライニング装置は、ブッシュの配置位置を内歯歯車の底面よりも高い位置に配置することによって、ブッシュが外歯歯車と接触する位置を外歯歯車の底面の側面側と接するようにしたものである。かかる構成を採用することによって、従来のように、倒れる方向に応力に弱い貫通孔ボス部を押圧することなく、剛性の強い底面の側面側を押圧することになるため、外歯歯車が破損することを防止することができる。
【0008】
さらに、本発明にかかるリクライニング装置において、前記底上底面部は、少なくとも外歯歯車の底面部に相当する位置以上に底上げされていることを特徴とするものであってもよい。
【0009】
かかる構成を採用することによって、ブッシュ全体が外歯歯車の底面の側面を押圧することになるので、さらに、外歯歯車が破損することを防止することができる。
【0010】
また、本発明にかかるリクライニング装置において、
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の円筒ボスが形成され、前記円筒ボスの周囲に形成された底面部よりも底上げされた底上底面部と、を有する外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記貫通孔の内周と前記外歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され第1ブッシュと、第2ブッシュの2つの弓状部材によって環状に形成され、外周面の中心と前記円筒ボスの中心が偏心するように形成されてなり、内周面側にくさび状カム収容部を有し、正面側に突起部を有するブッシュと、
前記ブッシュの前記くさび状カム収容部に配置され、前記外歯歯車の前記円筒ボスの外周面と前記くさび状カム収容部の内周面に接触することによって、前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を規制するとともに、前記外歯歯車の前記円筒ボスの前記外周面と前記内歯歯車の前記貫通孔の前記内周面を摺動させて前記外歯歯車と前記内歯歯車の相対回転を許容する一対のくさび状カムと、
前記くさび状カムを離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記外歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿され、内側に嵌合孔と、外周側に前記ブッシュの前記突起部に係合する突出部と、を有する駆動部材と、
前記駆動部材に嵌合して駆動部材を介して前記ブッシュを回転させる回転シャフトと、
を備え、
前記ブッシュは、内歯歯車の底面部の側面と接していることを特徴とする。
【0011】
本発明は、上述した発明に対し、外歯歯車に円筒ボスが設けられ、内歯歯車に貫通孔が形成されている点が異なるが、同様に、ブッシュの配置位置を外歯歯車の底面よりも高い位置に配置することによって、ブッシュが内歯歯車と接触する位置を内歯歯車の底面の側面側と接するようにしたものである。かかる構成を採用することによって、剛性の強い底面の側面側を押圧することになるため、外歯歯車が破損することを防止することができる。
【0012】
また、本発明にかかるリクライニング装置において、前記底上底面部は、少なくとも内歯歯車の底面部に相当する位置以上に底上げされていることを特徴とするものであってもよい。
【0013】
かかる構成を採用することによって、ブッシュ全体が内歯歯車の底面の側面を押圧することになるので、さらに、内歯歯車が破損することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100が取り付けられる車両用シート200の模式図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の内部構造を示す正面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100のA-A断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の外歯歯車10の斜視図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100のブッシュ30と、くさび状カム50の関係を示す正面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図である。
【
図8】
図8は、従来のリクライニング装置300の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態にかかるリクライニング装置100を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、車両用シート200の模式図であり、
図2は、リクライニング装置100の内部構造を示す正面図であり、
図3は、リクライニング装置100の分解斜視図である。
図4は、
図2のA-A断面図である。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。また、
図3において、図中の矢印に示された方向をそれぞれ「正面」、「背面」という。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかるリクライニング装置100は、
図1に示すように、車両用シート200のシートクッション210と、このシートクッション210に対して、傾動可能に取り付けられるシートバック220の傾動の中心位置に取り付けられ、シートバック220に傾動機能を与える装置である。具体的には、シートクッション210の内部に配置されるシートクッションフレームと、シートバック220の内部に配置されるシートバックフレームとの間に直接又は他の取付用プレート230(以下「取付用プレート等」という。)を介して間接的に取り付けられて使用される。
【0017】
本発明にかかるリクライニング装置100は、主として、
図2~
図4に示すように、外歯歯車10、内歯歯車20、第1ブッシュ31、第2ブッシュ32からなるブッシュ30、回転シャフト40、くさび状カム50、駆動部材60、付勢部材としてスプリング70、プレートカバー80、シャフト係止部材90を備えている。なお、
図2では、内部構造を見やすくするため、回転シャフト40及び駆動部材60は省略されている。
【0018】
外歯歯車10は、
図3に示すように、円板状に形成されており、外周面には外歯11が形成され、中央には、貫通孔12が設けられている。外歯歯車10には、突出部13が設けられており、取付用プレート等230に設けられた嵌合孔と嵌合した状態で溶接等によって車両用シートに取り付けられる。外歯歯車10は、
図5に示すように、外周側には、立設部16が形成されているが、内側には、筒状ボス(いわゆる従来例のバーリング部)が形成されていない。
【0019】
内歯歯車20は、外歯歯車10よりも大きな直径を有する円板状に形成されており、外歯歯車10を内側に装着可能となるように凹部10aが形成され、この凹部10aの内周面に内歯21が形成されている。内歯21は、外歯歯車10の外歯11の歯数よりも少なくとも1つ以上多く形成されており、外歯歯車10と内歯歯車20は、
図2に示すように、それぞれ外歯歯車10の中心C
1と内歯歯車20の中心C
2が矢印dのように偏心して内歯21と外歯11に対して噛合している。従って、外歯歯車10と内歯歯車20は差動歯車を形成し、内歯歯車20が外歯11の周りを1周すると、内歯21と外歯11の歯の差分だけ回転が進むことになる。すなわち、例えば、歯が1つだけ異なる場合、外歯歯車10が内歯歯車20の周囲を1周すると歯1つ分回転することになる。内歯歯車20の中心には、
図3に示すように、円筒ボス22が設けられており、この円筒ボス22の周囲は底上げされた底上げ底面部23を有している。この底上げ底面部23は、後述するブッシュ30との接地面となる部分である。この底上げ底面部23は外周が円形となるように形成され、好ましくは、組み上げられた際に外歯歯車10の底面18(
図5参照)に相当する位置以上に底上げされていること、すなわち、
図4に示すように、底上げ底面部23の底上げ量が、外歯歯車10の底面18の位置f以上に底上げされていることが好ましい。このように作製することによって、ブッシュ30の厚さ分すべてで外歯歯車の側面と接触することができるからである。この内歯歯車20には突出部26が設けられており、取付用プレート等230に設けられた嵌合孔と嵌合した状態で溶接等によって車両用シートに取り付けられる。
【0020】
ブッシュ30は、外歯歯車10の貫通孔12の内周面12aと内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22aとの間に配置され、第1ブッシュ31と第2ブッシュ32とを組み合わせて形成されている円環状の部材であり、
図6に示すように、円形に形成された外周面33の中心C
3と円筒ボス22の外周面22aの中心C
4が、外歯歯車10の中心と内歯歯車20の中心の偏心量とほぼ同等になるように偏心して形成されている。ブッシュ30のうち第1ブッシュ31は、外歯歯車10の貫通孔12が偏心されている方向(
図6の矢印の方向)側に配置されている弓状又は三日月状の部材であり、その内周側には、くさび状カム収容部35が形成されていて、
図6に示すように、後述する一対のくさび状カム50のそれぞれ隙間を有するように配置されている。くさび状カム収容部35は、向き合った側から離れるにつれてブッシュ30と円筒ボス22との隙間が狭くなるようにクサビ角が設定してある。ブッシュ30は、外歯歯車10及び内歯歯車20を後述するくさび状カム50によって、偏心方向へ押圧移動させることができるので、ロック状態におけるガタツキの発生を防止することができる。第2ブッシュ32は、外歯歯車10の貫通孔12が偏心されている方向(矢印の方向)と反対側に配置されている弓状又は三日月状の部材であり、第1ブッシュ31の両側端部との間にわずかな隙間が発生する程度に近接して配置される。第1ブッシュ31の端部又は端部近傍には、突起部36が設けられており、後述する回転シャフト40の回転が伝えられる部分となる。
【0021】
くさび状カム50aとくさび状カム50bは、
図3又は
図6に示すように、面対称に形成されており、くさび状カム50の凹面51(内側の面)は、円筒ボス22の外周面22aの曲面と同一の曲面を有し、凸面52(外側の面)は肉厚が互いに向かい合った側から徐々に薄くなるように形成されている。このくさび状カム50aとくさび状カム50bは、肉厚の厚い側である近接側端部53が互いに向き合うように、かつ前述したように、ブッシュ30のくさび状カム収容部35内に、外歯歯車10の貫通孔12の内周面12aに接触するように配設されている。
【0022】
付勢部材としてのスプリング70は、弾性体で作製されており、
図3に示すように、環状部71と、この環状部71から90°折れるように立ち上がった端部72a、72bとを有している。端部72a、72bは、それぞれくさび状カム50の近接側端部53に接しており、一対のくさび状カム50a及びくさび状カム50bが離間する方向に付勢している。
【0023】
回転シャフト40は、内歯歯車20の円筒ボス22に対して同軸上で回転自在に配置されるものである。回転シャフト40は、シートバック220の傾動を調整する際に回転駆動されるものであり、傾動用モータの回転力を受けるために内筒面には、セレーション41が設けられている。回転シャフト40は、後述する駆動部材60に挿入されるように筒状に形成されるシャフト部42を有しており、駆動部材60と同期回転するように複数の係止部43が設けられている。
【0024】
駆動部材60は、内周に回転シャフト40の係止部43と嵌合するように嵌合穴61が設けられており、回転シャフト40の回転に伴って回転させられる。また、ブッシュ30に設けられた突起部36を両側から挟み込むように形成された2箇所の係合部63を有しており、回転シャフト40の回転によって回転させられた駆動部材60は、係合部63によってブッシュ30の突起部36を押圧して回転させることができる。
【0025】
プレートカバー80は、外歯歯車10、内歯歯車20、ブッシュ30、回転シャフト40、ブッシュ30、くさび状カム50、駆動部材60、スプリング70が外れないように固定する部材であり、特にその形態は限定するものではない。
【0026】
シャフト係止部材90は、回転シャフト40を固定する部材である。
【0027】
こうして作製されたリクライニング装置100は、以下のようにして作動する。回転シャフト40に力を加えず、回転させていない状態では、スプリング70によって一対のくさび状カム50a及びくさび状カム50bが離間する方向に付勢され、内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22aと、ブッシュ30のくさび状カム収容部35で押圧し、ブッシュ30を外歯歯車10の貫通孔12の内周面12aに押圧接触させている。このため、内歯歯車20と外歯歯車10の相対運動はロックされており、シートバック220はロック状態にある。
【0028】
このロック状態から、回転シャフト40を、例えば
図2において、反時計方向に回転させると、まず、回転シャフト40に嵌合されている駆動部材60が回転し、駆動部材60の回転力が係合部63から突起部36に伝わってブッシュ30が回転することになる。くさび状カム50bとブッシュ30のくさび状カム収容部35の内壁に対して、クサビ角が設定してあり、クサビ角内壁はくさび状カム50と接触している。ブッシュ30の回転により、このクサビ角内壁とくさび状カム50の間にスキマが発生しクサビが外れる。この結果、ブッシュ30と円筒ボス22及びブッシュ30と内歯歯車20の貫通孔12との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、70の付勢力によってくさび状カム50aがこの隙間を埋めるように、反時計周りに回転する。くさび状カム50は、回転シャフト40、ブッシュ30とともに摺動するように反時計周りに回転することになる。こうして、外歯歯車10、内歯歯車20及び回転シャフト40は、差動歯車機構を構成することになる。なお、時計方向の回転も同様にして回転させることができる。
【0029】
こうして作製されたリクライニング装置100は、ブッシュ30がリング状に形成されているため、内歯歯車20又は外歯歯車10に外力が加わった時、外力方向又は反力方向に内歯歯車20又は外歯歯車10を動かそうとするが、動こうとした方向に対して、内歯歯車20の円筒ボス22の外周面22aと、外歯歯車10の貫通孔12に対して、垂直方法にブッシュ30が挟まり、分力成分を極小に抑えて軸受けとなることができるため、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。
【0030】
また、回転シャフト40を回転させた場合に、ブッシュ30の突起部36の回転方向に対しては隙間のない係合部63で係合させているので、タイムラグがなく直ちに歯車機構を稼働させることができる。この際に、ブッシュ30は、係合部63から突起部36に伝わって回転するので、内歯歯車20と外歯歯車10の偏心方向に追従するように回転し、回転の間、ブッシュ30によって円筒ボス22の外周面22aの大部分と接触させた状態となり、摺動時においては、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。一方で、くさび状カム50によって外歯歯車10を内歯歯車20との偏心方向へ移動するように付勢されているため、ロック状態におけるガタツキの発生を防止することができる。
【0031】
また、第1実施形態にかかるリクライニング装置100は、外歯歯車10の貫通孔12の周囲にボス部を有することなく、ブッシュ30は、内歯歯車20の底上げ底面部23によって底上げされた位置に配置され、外歯歯車10の底面の側面を直接押圧するので、従来のように、ボス部を押圧し、ボス部を破損する可能性がなくなる。また、内歯歯車20の底上げ底面部23によって底上げされているので、内歯歯車20の円筒ボス22の高さを従来と比較して低くすることができるので、円筒ボス部の剛性も高くすることができる。
【0032】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図が
図7に示されている。第2実施形態にかかるリクライニング装置100は、内歯歯車20に貫通孔25が形成されており、外歯歯車10に円筒ボス15が設けられている点が異なるのみでそれ以外の点は同一であるので、説明を省略する。
【0033】
外歯歯車10は、
図7に示すように、円板状に形成されており、外周面には外歯11が形成され、中央には、円筒ボス15が設けられている。円筒ボス15の周囲は底上げされた底上げ底面部17を有している。この底上げ底面部17は、ブッシュ30との接地面となる部分である。この底上げ底面部17は外周が円形となるように形成され、好ましくは、組み上げられた際に内歯歯車20の底面(
図4参照)に相当する位置以上に底上げされていることが好ましい。
【0034】
内歯歯車20は、外歯歯車10よりも大きな直径を有する円板状に形成されており、外歯歯車10を内側に装着可能となるように円筒状の凹部が形成され、この凹部の内周面に内歯21が形成されている。内歯は、外歯歯車10の外歯11の歯数よりも少なくとも1つ以上多く形成されており、外歯歯車10と内歯歯車20は、それぞれ外歯歯車10の中心と内歯歯車20の中心が偏心するように内歯21と外歯11に対して噛合している点は第1実施形態と同様である。内歯歯車20の中心には、
図7に示すように、貫通孔25が設けられている。この貫通孔25には、ボス部は設けられていない。
【0035】
第2実施形態にかかるリクライニング装置100の可動方法は、第1実施形態と同様に、回転シャフト40に力を加えず、回転させていない状態では、一対のくさび状カム50a及びくさび状カム50bが離間する方向にスプリング70によって付勢され、ブッシュ30の内周面と、外歯歯車10の円筒ボス15の外周面15aとに接触している。このため、内歯歯車20と外歯歯車10の相対運動はロックされており、シートバック220はロック状態にある。このロック状態から回転シャフト40を、反時計方向に回転させると、まず、回転シャフト40に嵌合されている駆動部材60が回転し、駆動部材60の回転力が係合部63から突起部36に伝わってブッシュ30が回転することになる。くさび状カム50bとブッシュ30のくさび状カム収容部35の内壁に対して、クサビ角が設定してあり、クサビ角内壁はくさび状カム50と接触している。ブッシュ30の回転により、クサビ角内壁はくさび状カム50の間にスキマが発生しクサビが外れる。この結果、ブッシュ30と外歯歯車10の円筒ボス15及びブッシュ30と内歯歯車20の貫通孔25との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング70の付勢力によってくさび状カム50aがこの隙間を埋めるように、反時計周りに回転する。くさび状カム50は、回転シャフト40、ブッシュ30とともに摺動するように反時計周りに回転することになる。こうして、外歯歯車10、内歯歯車20及び回転シャフト40は、差動歯車機構を構成することになる。なお、時計方向の回転も同様にして回転させることができる。なお、時計方向の回転も同様にして回転させることができる。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
上述した実施の形態で示すように、主として、車両用シートのリクライニング装置として産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
10…外歯歯車、10a…凹部、11…外歯、12…貫通孔、12a…内周面、13…突出部、15…円筒ボス、15a…外周面、16…立設部、17…底上げ底面部、18…底面、20…内歯歯車、21…内歯、22…円筒ボス、22a…外周面、23…底上げ底面部、25…貫通孔、26…突出部、30…ブッシュ、31…第1ブッシュ、32…第2ブッシュ、33…外周面、35…くさび状カム収容部、36…突起部、40…回転シャフト、41…セレーション、42…シャフト部、43…係止部、50…くさび状カム、50a…くさび状カム、50b…くさび状カム、51…凹面、52…凸面、53…近接側端部、60…駆動部材、61…嵌合穴、63…係合部、70…スプリング、71…環状部、72a,72b…端部、80…プレートカバー、90…シャフト係止部材、100…リクライニング装置、200…車両用シート、210…シートクッション、220…シートバック、230…取付用プレート、