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特開2023-94214ハルバッハ界磁子およびこれを備える回転電機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094214
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ハルバッハ界磁子およびこれを備える回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/2783 20220101AFI20230628BHJP
【FI】
H02K1/2783
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209554
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】519315578
【氏名又は名称】株式会社マグネイチャー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】畑谷 成郎
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA05
5H622CB02
5H622CB04
5H622QB02
(57)【要約】
【課題】単位永久磁石の種類を可及的に少なくし得るハルバッハ界磁子を提供する。
【解決手段】ハルバッハ界磁子2は、円環状のハルバッハ配列に配置された複数の単位永久磁石10を備えるハルバッハ界磁子であって、界磁子での磁極の位置が、隣接する単位永久磁石10相互の境界に位置する。複数の単位永久磁石10は、着磁方向の対称軸が隣接する単位永久磁石10相互の境界に位置するように着磁されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のハルバッハ配列に配置された複数の単位永久磁石を備えるハルバッハ界磁子であって、
界磁子での全ての磁極が、隣接する前記単位永久磁石相互の境界に位置することを特徴とするハルバッハ界磁子。
【請求項2】
前記磁極は、前記磁極を挟んで隣接する単位永久磁石が、それら単位永久磁石相互の境界に相互の着磁方向の対称軸が位置するように着磁されることで生成されている請求項1に記載のハルバッハ界磁子。
【請求項3】
前記磁極は、前記磁極を挟んで隣接する単位永久磁石相互の着磁方向が、それら単位永久磁石相互により生成される磁極に対して、周方向で隣り合う単位永久磁石間の着磁方向の相対角度の半分の角度ずつずれて着磁されることで生成されている請求項1または2に記載のハルバッハ界磁子。
【請求項4】
前記磁極は、前記磁極挟んで隣接する単位永久磁石相互の着磁方向が、それら単位永久磁石相互により生成される磁極に対して、周方向で隣り合う単位永久磁石間の着磁方向の相対角度が45°のときは22.5°、また、周方向で隣り合う単位永久磁石間の着磁方向の相対角度が18°のときは9°ずつずれて着磁されることで生成されている請求項3に記載のハルバッハ界磁子。
【請求項5】
前記単位永久磁石は、軸方向両端の2つの面が相互に平行で且つ合同な矩形若しくは扇形またはこれらを組み合わせた形状であって、軸方向に沿った他の4つの面が前記2つの面相互の対向する輪郭線に沿った平面または湾曲面になっている六面形状をなしている請求項1~4のいずれか一項に記載のハルバッハ界磁子。
【請求項6】
前記複数の単位永久磁石は、複数の単位永久磁石の並びの内径を下側とした展開方向での左側から右側に順に見たときに、複数の単位永久磁石の並びでのN極の向きが、順に反時計まわりに回転する並びとされて、ハルバッハ配列による径方向での強い磁界が発生する側が界磁子の円筒外周側となっている請求項1~5のいずれか一項に記載のハルバッハ界磁子。
【請求項7】
前記複数の単位永久磁石は、複数の単位永久磁石の並びの内径を下側とした展開方向での左側から右側に順に見たときに、複数の単位永久磁石の並びでのN極の向きが、順に時計まわりに回転する並びとされて、ハルバッハ配列による径方向での強い磁界が発生する側が界磁子の円筒内周側となっている請求項1~5のいずれか一項に記載のハルバッハ界磁子。
【請求項8】
前記磁極で隣接する複数の単位永久磁石相互が接着されて一体化された複数のブロックと、該複数のブロックをハルバッハ配列に配置した状態で少なくともその外周から拘束する円筒状の拘束部材と、を有する請求項1~7のいずれか一項に記載のハルバッハ界磁子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のハルバッハ界磁子を備えることを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単位永久磁石を円環状のハルバッハ配列に配置してなるハルバッハ界磁子に関する。
【背景技術】
【0002】
ハルバッハ界磁子として、例えば特許文献1に記載の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-121153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示される技術では、単位永久磁石の配列例として、9種類の単位永久磁石を40本要して4極のハルバッハ界磁子を構成している。そのため、界磁子を構成する単位永久磁石の種類が多いことから、部品管理が煩雑となり、また、生産過程で正しい配列に配置するための品質管理も難しくなるという問題がある。
【0005】
このように、ハルバッハ界磁子用単位永久磁石自体の管理や、複雑なハルバッハ界磁子の組み立て工程での品質管理を行う上で、従来のような、N極とS極とが交互に配列された界磁(N-S配列界磁)が用いられた単位永久磁石の管理や、組み立て工程での品質管理を単にそのまま水平展開することができず、実際にハルバッハ界磁子を製造する上では、ハルバッハ界磁子特有の、未だ解決すべき課題が残されている。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、単位永久磁石の種類を可及的に少なくし得るハルバッハ界磁子およびこれを備える回転電機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るハルバッハ界磁子は、円環状のハルバッハ配列に配置された複数の単位永久磁石を備えるハルバッハ界磁子であって、界磁子での全ての磁極が、隣接する前記単位永久磁石相互の境界に位置することを特徴とする。
【0008】
ここで、本発明の一態様に係るハルバッハ界磁子において、前記磁極は、前記磁極を挟んで隣接する単位永久磁石が、それら単位永久磁石相互の境界に相互の着磁方向の対称軸が位置するように着磁されることで生成できる。
【0009】
また、本発明の一態様に係るハルバッハ界磁子において、前記磁極は、前記磁極挟んで隣接する単位永久磁石相互の着磁方向が、それら単位永久磁石相互により生成される磁極に対して、周方向で隣り合う単位永久磁石間の着磁方向の相対角度の半分の角度ずつずれて着磁されることで生成できる。
例えば、前記磁極は、前記磁極挟んで隣接する単位永久磁石相互の着磁方向が、それら単位永久磁石相互により生成される磁極に対して、周方向で隣り合う単位永久磁石間の着磁方向の相対角度が45°のときは22.5°、また、周方向で隣り合う単位永久磁石間の着磁方向の相対角度が18°のときは9°ずつずれて着磁されることで生成されることは好ましい。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る回転電機は、本発明の一態様に係るハルバッハ界磁子を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、単位永久磁石の種類を可及的に少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るハルバッハ界磁子を備える回転電機の一実施形態であるハルバッハモータの要部を示す模式的斜視図である。なお、ロータとステータ以外の構成部材の図示は省略している。
図2】本発明に係るハルバッハ界磁子の一実施形態を示す説明図であって、同図(a)は中心位置での横断面を模式的に示し、(b)は(a)での極の部分を拡大図示している。
図3】本発明に係るハルバッハ界磁子の一実施形態(外周側強磁界仕様)を示す説明図であって、同図は周方向に展開したイメージを示している。
図4】本発明に係るハルバッハ界磁子の一実施形態(内周側強磁界仕様)を示す説明図であって、同図は周方向に展開したイメージを示している。
図5】本発明に係るハルバッハ界磁子に対する比較例を示す説明図であって、同図(a)は中心位置での横断面を模式的に示し、(b)は(a)での極の部分を拡大図示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0014】
[ハルバッハモータ]
図1に要部の模式的斜視図を示すように、本実施形態のハルバッハモータ1は、複数の単位永久磁石10を円環状(中空円筒状)に配列した構造を含んで構成される界磁子2を有するロータと、このロータの外周面に径方向で対向配置するように、6つの電機子巻線20を保持して電機子が構成されるステータ30と、を有する。
【0015】
ステータ30の外周面には、外周面を囲繞するように電磁鋼板製のヨーク5が同軸に配置されている。ロータの中心には、例えば特許文献1に開示される構成と同様に、回転電機の入力または出力軸となるシャフト(不図示)が同軸に固定され、その軸方向前後に離隔して一対のシャフトフランジ(不図示)がロータ端面に固定されて界磁子2と一体化される。
【0016】
本実施形態では、6つの電機子巻線20は、平面視が小判型をなす空芯コイルであり、周方向に沿って湾曲形成されている。電機子巻線20の中心部は、不図示のコイルホルダの外面にはめ込まれることで、電機子巻線20が所期の装着位置に保持される。
3つの電機子巻線20は、各電機子巻線20の巻き初めの端子が相互に繋がれて中性点とされる。なお、中性点には測定用の配線が接続され機外まで延設される。そして、各電機子巻線20の巻き終わりの各端子に三相交流がそれぞれ印加されるようになっている。
【0017】
本実施形態のハルバッハモータ1は、6つの電機子巻線20に対して時間的に120°遅れたU相、V相、W相の交流を順に流すことで、その移動磁界に8極の界磁子2のN・S磁界が引かれることで界磁子2が同期して、三相交流電流の周波数に応じた回転数で回転することができる。
【0018】
[界磁子]
次に、本実施形態の界磁子2について詳しく説明する。
本実施形態の界磁子2の例では、図2に示すように、上記単位永久磁石10を周方向に複数個(この例では32個)を円筒状に組み合わせてハルバッハ配列された8極のN・S磁界構造を有するものである。なお、複数の単位永久磁石相互を特に区別しないで呼称するときには、代表符号10として標記する。
【0019】
ハルバッハ配列は、3の倍数に2を加えた数の何れか一つが電気角1周期の分割数とされ、電気角1周期を分割数で除した角度ずつ着磁方向が順に変更されてなる単位永久磁石10が配列されることが好ましい。この場合、すべての単位永久磁石10の着磁方向に平行な断面積形状が同一である。本実施形態の界磁子2は、「分割数が8」の例であり、周方向で隣り合う単位永久磁石10間での着磁方向の相対角度が45°になっている。
【0020】
本実施形態の界磁子2では、複数の単位永久磁石10は、所定の六面形状をなしている。本実施形態の界磁子2では、複数の単位永久磁石10として、4種類の単位永久磁石10a~50dのみで一の界磁子を構成している。
各単位永久磁石10a~50dの所定の六面形状は、軸方向両端の2つの面が相互に平行で且つ合同な矩形若しくは扇形またはこれらを組み合わせた形状であって軸方向に沿った他の4つの面が、上記2つの面相互の対向する輪郭線に沿った平面または湾曲面になっている立体形状を採用できる。
【0021】
本実施形態の界磁子2では、4種類の単位永久磁石10a~50dは、六面形状の態様が、軸方向両端の2つの面が相互に平行で且つ合同な台形形状であり、他の面は、すべて軸方向に沿った平行四辺形形状をなす四角柱状である。
複数の単位永久磁石10は、所定のハルバッハ配列となるように、隣り合う単位永久磁石10相互の着磁方向を異ならせたものが組み合わされる。なお、各図において、各単位永久磁石10の端面に示す矢印は、それぞれのもつ着磁方向のイメージを示しており、矢印基端側がS極、先端側がN極である。
【0022】
本明細書では、ハルバッハ配列された界磁子2での8極の相対関係を説明する便宜の必要に応じ、一のN極を上に位置させたときに、当該N極の位置を符号Nnと呼び、その反対側に位置するN極を符号Nsと呼び、右側に位置するN極を符号Neと呼び、左側に位置するN極を符号Nwと呼ぶこととする。
【0023】
また、8極のうち、斜め右上に位置するS極を符号Sneと呼び、斜め右下に位置するN極を符号Sseと呼び、斜め左下に位置するN極を符号Sswと呼び、斜め左上に位置するS極を符号Snwと呼ぶこととする。
【0024】
また、本明細書では、図3に示すように、これら8極の磁極間に位置する所定のハルバッハ配列となる4つの単位永久磁石10の組を遷移部10tと称し、各遷移部10tにおいて、円筒の並びの内径を下側とした展開した状態において、左側から右側に向けてN極の向きが内向きから外向きへと反時計回りに順に遷移する4種類の単位永久磁石10について、それぞれ左側から順に10a~10dと呼称することとする。
【0025】
さらに、本実施形態の界磁子2では、ハルバッハ配列を構成するに際し、上記4種類の単位永久磁石10a~50dを軸方向で反転させて用いることから、軸方向で反転させた姿勢については、同図に示すように、適宜、(Rev)と付記することで区別することとする。
【0026】
さらに、本実施形態の界磁子2は、図1に示すように、複数の単位永久磁石10による円環状列が、径方向内側に薄肉円筒状の界磁子内ホルダ3がはめ込まれるととともに、径方向外側に薄肉円筒状の界磁子外ホルダ4がはめ込まれて構成されている。内外の界磁子ホルダ3、4はCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製である。これにより、ハルバッハ界磁子2を構成する複数の単位永久磁石10の円筒状組み合わせ状態が保持されている。
【0027】
ここで、本実施形態のハルバッハ界磁子2では、図2および図3に示すように、4種類の単位永久磁石10a~50dは、円環状のハルバッハ配列に配置された並び状態において、界磁子での全ての磁極が、隣接する単位永久磁石10相互の境界に位置するように配置されている(発明1)。
【0028】
本実施形態のハルバッハ界磁子2では、各磁極は、各磁極挟んで隣接する単位永久磁石10が、各磁極で隣接するそれら単位永久磁石10相互の境界に、相互の着磁方向の対称軸が位置するように着磁されることで生成されている(発明2)。
【0029】
また、本実施形態のハルバッハ界磁子2では、各磁極は、その磁極を挟んで隣接する単位永久磁石10相互の着磁方向が、それら単位永久磁石10相互により生成される磁極に対して、周方向で隣り合う単位永久磁石間の着磁方向の相対角度の半分の角度ずつずれて着磁されることで生成されている(発明3)。
【0030】
ハルバッハ配列は、複数の単位永久磁石の磁極を、所定角度(本実施形態では例えば45°)ずつ回転させながら所定の配置となるように順に配列する。これにより、磁石配列の一方の側の磁場が弱まり、他方の側では磁場が強くなって、磁石配列の片側に強い磁場を発生させることができる。
【0031】
すなわち、本実施形態のハルバッハ界磁子2では、隣り合う単位永久磁石10相互の着磁方向の相対角度が45°となるため、図2(b)に示すように、相互の着磁方向の対称軸に対し(つまり、それら単位永久磁石10相互により生成される磁極に対し)、着磁方向が22.5°だけ傾くように着磁されてなる4種類の単位永久磁石10a~10dによる所定の配置によって一の界磁子2が構成される(発明4)。
このような構成により、本実施形態の界磁子2では、上記4種類の単位永久磁石10a~10dによる所定の配置によって、界磁子2での全ての磁極が、各磁極で隣接する単位永久磁石10相互の境界に位置する。
【0032】
ここで、本実施形態では、上述したように、各単位永久磁石10a~50dの所定の六面形状は、軸方向両端の2つの面が相互に平行で且つ合同な矩形若しくは扇形またはこれらを組み合わせた形状であって軸方向に沿った他の4つの面が、上記2つの面相互の対向する輪郭線に沿った平面または湾曲面になっている立体形状を採用できるところ(発明5)、上記4種類の単位永久磁石10a~10dによる所定の配置として、図3に示す配置順と図4に示す配置順の二種類の配置が可能である。
以下、図3に示す配置を「CCW配置」ともよび、図4に示す配置を「CW配置」ともよぶ。本実施形態では、図3に示すCCW配置が採用されている。
【0033】
詳しくは、いま、複数の単位永久磁石10での磁極の向き(N極へ向かう矢印の向き)が遷移する方向に着目すると、図3に示すように、複数の単位永久磁石10の並びの内径を下側とした展開方向での左側から右側に順に見たときに、複数の単位永久磁石10の並びでのN極へ向かう磁極の向きを反時計まわりに回転させる配置の場合には、ハルバッハ配列による径方向での強い磁界が発生する側は、図3の上側(つまり、円筒での外周側)となる(発明6)。
【0034】
換言すれば、外周強磁界用のハルバッハ界磁子2を構成する場合、複数の単位永久磁石10は、複数の単位永久磁石10の並びでのN極へ向かう磁極の向きが周方向に沿って反時計まわりに回転する並びとされて、ハルバッハ配列による径方向での強い磁界が発生する側が円筒の外周側となる。
【0035】
このように、CCW配置では、複数の単位永久磁石10a~10dないし10d(Rev)~50a(Rev)は、複数の単位永久磁石10a~10dないし10d(Rev)~50a(Rev)の並びの内径を下側とした展開方向で左側から右側に順に見たときに、複数の単位永久磁石10a~10dないし10d(Rev)~50a(Rev)の並びでのN極の向きが、順に反時計まわりに回転する並びとされ、ハルバッハ配列による径方向での強い磁界が発生する側が界磁子2での円筒外周側となっている。よって、上記実施形態のハルバッハモータ1のように、電機子が界磁子2の径方向外側に配置される回転電機用として好適である。
【0036】
これに対し、図4に示すように、複数の単位永久磁石10の並びでのN極へ向かう磁極の向きを周方向に沿って時計まわりに回転させる配置の場合には、ハルバッハ配列による径方向での強い磁界が発生する側は、図4の下側(つまり、円筒での内周側)となる。
【0037】
換言すれば、内周強磁界用のハルバッハ界磁子2を構成する場合、複数の単位永久磁石10は、複数の単位永久磁石10の並びでのN極へ向かう磁極の向きが周方向に沿って時計まわりに回転する並びとされて、ハルバッハ配列による径方向での強い磁界が発生する側が円筒の内周側となる(発明7)。
【0038】
このように、CW配置では、複数の単位永久磁石10a(Rev)~10d(Rev)ないし10d~50aは、複数の単位永久磁石10a(Rev)~10d(Rev)ないし10d~50aの並びの内径を下側とした展開方向で左側から右側に順に見たときに、複数の単位永久磁石10a(Rev)~10d(Rev)ないし10d~50aの並びでのN極の向きが、順に時計まわりに回転する並びとされ、ハルバッハ配列による径方向での強い磁界が発生する側が界磁子2での円筒内周側となっている。
【0039】
よって、電機子が界磁子2の径方向内側に配置される回転電機用として好適である。なお、電機子の内外に二つの界磁子が配置されるデュアルハルバッハ型の回転電機であれば、電機子の内周側にCCW配置の界磁子を設けるとともに、電機子の外周側にCW配置の界磁子を設けるとよい。
【0040】
ここで、図3および図4に示すように、各遷移部10tを構成する複数の単位永久磁石10a~50d若しくは10d(Rev)~50a(Rev)は、円筒状に組み上げられた状態で相互に吸着する傾向を示す(以下、「親和部」ともいう)。
これに対し、隣り合う遷移部50t相互の間、つまり、本実施形態でのN極部およびS極部では、隣接する遷移部50tの単位永久磁石10相互間で反発を生じる(以下、「反発部」ともいう)。
この問題は、円筒状に組み上げる際の組付け性や、組み上げられた界磁子2での軸回りの質量バランスにずれを生む要因ともなる。なお、図3および図4では、「親和部」のイメージを網掛け表示で示し、「反発部」のイメージを太い実線表示で示している。
【0041】
この問題に対し、本実施形態の界磁子2では、CCW配置では、図3に示すように、反発を生じる磁極部で隣接する4つの単位永久磁石10c、10d、10a、10b相互を、N極の着磁方向が径方向で内向きのグループ(BLin)と、N極の着磁方向が径方向で外向きのグループ(BLout)と、に分けて管理する。
【0042】
そして、それぞれのグループについて、予め金属接着剤で接着したブロックBLin、BLoutとしてこれを用意し、その後に、これら「反発部」を含めて接着された二種類のブロックBLin、BLoutを周方向に交互に配置し、これらを「親和部」で隣接させて円筒状に組み立てることで界磁子2を製造する製造方法を採用している。
【0043】
これにより、本実施形態の界磁子2は、磁極で隣接する複数の単位永久磁石相互が接着されて一体化された複数のブロックBLin、BLoutと、該複数のブロックBLin、BLoutをハルバッハ配列に配置した状態で少なくともその外周から拘束する円筒状の界磁子外ホルダ4(拘束部材)と、を有する構成となる(発明8)。なお、図4に示すCW配置においても同様の考えに基づく製造方法を採用できることは勿論である。
【0044】
[作用効果]
次に、本実施形態のハルバッハ界磁子2の作用効果について説明する。
ここで、ハルバッハ界磁子を構成する単位永久磁石の種類を可及的に少なくする方策として、複数の単位永久磁石のうち、径方向に対して着磁方向が傾いている単位永久磁石については、外形形状を同一形状とした上で、その単位永久磁石の軸方向を反転させて配置すれば、二通り(二種類)の使い方が可能となる。そのため、構成する単位永久磁石の種類を減らすことができる。
【0045】
但し、円環状(中空円筒状)の配置とする上で、単位永久磁石の軸方向両端の2つの面は台形形状や扇形となる。そのため、図5に示す比較例のように、界磁子の磁極を単位永久磁石自体の磁極と一致する構成を採用する場合、磁極に位置する単位永久磁石が磁極専用(つまり、N極用、S極用)となってしまう。
【0046】
同図では、各単位永久磁石10の配置位置を符号P1~P32で示している。よって、このような構成を採用する場合には、上記実施形態に比べて、P1,P5,P9,P13,P17,P21,P25,P29の8箇所に配置される、磁極専用の単位永久磁石10の分だけ界磁子を構成する単位永久磁石の種類が増えることになる(図5の例では計5種類となる。)。
【0047】
例えば、上記特許文献1に開示される技術では、S極部用として二つの単位永久磁石、N極部用として二つの単位永久磁石、そして、4つのハルバッハ遷移部には、それぞれ9種類の単位永久磁石が4組配置される。
【0048】
そのため、一の界磁子2を組み上げるには、計11種類、40個の単位永久磁石10を要する。上記特許文献1に開示される技術では、9種類の単位永久磁石を40本要して4極のハルバッハ界磁子を構成しているところ、同文献に開示される界磁子での4つの極は、径方向に着磁された単位永久磁石自体に存在する。
【0049】
つまり、各極を構成するシンメトリとなる軸線が、径方向に着磁された単位永久磁石自体に存在するため、各極に位置する単位永久磁石については、単位永久磁石の軸方向両端の2つの面が台形形状や扇形であるので、軸方向で表裏反転しても使用できないことになる。
そのため、上記特許文献1に開示される技術では、界磁子を構成する単位永久磁石の種類が極部専用となる分だけ多くなり、その結果、部品の管理が煩雑となり、また、生産過程で正しい配列に配置するための品質管理も難しくなる。
【0050】
これに対し、本実施形態のハルバッハ界磁子2は、上述したように、複数の単位永久磁石10a~50dは、着磁方向の対称軸が隣接する単位永久磁石相互の境界に位置するように着磁されている。
【0051】
よって、本実施形態のハルバッハ界磁子2では、各極を構成するシンメトリとなる軸線が、隣接する単位永久磁石相互の境界に位置する。そのため、界磁子を構成する全ての単位永久磁石10a~10dを軸方向で表裏反転して使用可能となる。
【0052】
これにより、図2において各単位永久磁石10の配置位置を符号P1~P32で示すように、各極は、各磁極で隣接する単位永久磁石10が、各磁極で隣接する単位永久磁石10相互の境界に、相互の着磁方向の対称軸が位置するように着磁されることで生成される。
そのため、径方向に着磁された極部専用の単位永久磁石を用いることなく、ハルバッハ界磁子2を構成できる。これに対し、上述した図5に示す比較例では、同様の構成とする場合に、極部専用の単位永久磁石を用いることから、5種類の単位永久磁石を要することが判る。
【0053】
さらに、本実施形態のハルバッハ界磁子2では、図3ないし4に示したように、反発部を含む複数の単位永久磁石相互を金属接着剤で予め接着した二種類のブロックBLin、BLoutとし、これらのブロックBLin、BLout相互を周方向に交互に配置して親和部で互いに当接するように組み立てている。
【0054】
これにより、本実施形態のハルバッハ界磁子2は、磁極で隣接する複数の単位永久磁石相互が接着されて一体化された複数のブロックBLin、BLoutと、該複数のブロックBLin、BLoutをハルバッハ配列に配置した状態で少なくともその外周から拘束する円筒状の界磁子外ホルダ4(拘束部材)と、を有する構成となる。そのため、本実施形態のハルバッハ界磁子2およびその製造方法であれば、組立工程や管理する部品数を削減する上でより好適である。
【0055】
以上説明したように、本実施形態のハルバッハ界磁子2によれば、界磁子を構成する単位永久磁石10の種類を可及的に少なくできる。本実施形態のハルバッハ界磁子2は、例えば上記特許文献1に示されるように、回転電機として、三相同期電動機として構成されたハルバッハモータの界磁子に適用できる(発明9)。
【0056】
なお、本発明に係るハルバッハ界磁子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
例えば、上記実施形態では、磁極は、隣接する単位永久磁石の着磁方向が、隣り合う単位永久磁石の着磁方向の相対角度が45°のとき22.5°ずつずれて着磁されることで構成される例を示したが、これに限定されるものではなく、界磁子での全ての磁極が、隣接する前記単位永久磁石相互の境界に位置するものであれば、種々の態様とすることができる。
【0057】
例えば、磁極は、磁極で隣接する単位永久磁石10相互の着磁方向が、周方向で隣り合う単位永久磁石10の着磁方向の相対角度の半分の角度ずつずれて着磁されることで生成できる。よって、例えば、隣り合う単位永久磁石10の着磁方向の相対角度が18°のときは9°毎にずれて着磁されることで構成できる。
【符号の説明】
【0058】
1 ハルバッハモータ(回転電機)
2 界磁子
3 界磁子内ホルダ(拘束部材)
4 界磁子外ホルダ(拘束部材)
5 ヨーク
10 単位永久磁石
10a~10d 単位永久磁石
10t 遷移部
20 電機子巻線
30 ステータ
50t 遷移部
図1
図2
図3
図4
図5