(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094217
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】焼却灰循環システム
(51)【国際特許分類】
F23J 1/00 20060101AFI20230628BHJP
F23G 7/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
F23J1/00 A
F23G7/00 102A
F23J1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209557
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細谷 亮太
(72)【発明者】
【氏名】利弘 淳
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼口 友宏
(72)【発明者】
【氏名】中島 詩惟
【テーマコード(参考)】
3K161
【Fターム(参考)】
3K161AA24
3K161CA01
3K161DA02
3K161EA01
3K161EA06
3K161EA12
3K161HA02
3K161HA32
3K161HA55
3K161LA02
3K161LA12
3K161LA29
3K161LA55
3K161LA64
(57)【要約】
【課題】 ストーカ式焼却炉の製造コストの上昇を抑え、火格子の長寿命化を図ることができる焼却灰循環システムを提供する。
【解決手段】 本開示のある態様に係る焼却灰循環システムの一例は、投入口21aを通じて被燃焼物が投入される燃焼室2Aと燃焼室2A内に配設された火格子24とを有するストーカ式焼却炉2と、投入口21aへ投入される被燃焼物の重量に基づいてストーカ式焼却炉2から排出される焼却灰をストーカ式焼却炉2へ返送する焼却灰返送装置AS1とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入口を通じて被燃焼物が投入される燃焼室と前記燃焼室内に配設された火格子とを有するストーカ式焼却炉と、
前記投入口へ投入される被燃焼物の重量に基づいて前記ストーカ式焼却炉から排出される焼却灰を前記ストーカ式焼却炉へ返送する焼却灰返送装置と
を備えた、焼却灰循環システム。
【請求項2】
前記焼却灰返送装置は、
前記ストーカ式焼却炉から排出される焼却灰が供給され、排出方向を第1方向と第2方向とのいずれかに切り替えて前記供給される焼却灰を排出する排出切替装置と、
前記排出切替装置の排出方向が前記第1方向のときに前記排出切替装置から排出される焼却灰が供給され、この供給される焼却灰を前記ストーカ式焼却炉へ返送する返送装置と、
前記排出切替装置の排出方向を切り替える制御器と、を備え、
前記制御器は、
前記ストーカ式焼却炉の前記投入口へ投入される被燃焼物の重量に基づいて前記排出切替装置の排出方向を前記第1方向とする時間を制御する第1制御を行う、
請求項1に記載の焼却灰循環システム。
【請求項3】
前記ストーカ式焼却炉の火格子の表面温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記制御器は、
前記第1制御によって前記排出切替装置の排出方向を前記第2方向としている間に前記温度センサの検出温度が第1の基準温度以上になった場合に、前記第1制御を中止して前記排出切替装置の排出方向を前記第1方向に切り替える第2制御を行う、
請求項2に記載の焼却灰循環システム。
【請求項4】
前記制御器は、
前記第1制御及び前記第2制御のいずれか一方の制御によって前記排出切替装置の排出方向を前記第1方向としている間に前記温度センサの検出温度が前記第1の基準温度よりも低い第2の基準温度以下になった場合に、前記一方の制御を中止して前記排出切替装置の排出方向を前記第2方向に切り替える第3制御を行う、
請求項3に記載の焼却灰循環システム。
【請求項5】
前記焼却灰返送装置は、返送する焼却灰を前記ストーカ式焼却炉の前記投入口へ投入するよう構成された、
請求項1~4のいずれかに記載の焼却灰循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ストーカ式焼却炉から排出される焼却灰の循環システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ごみ、産業廃棄物等の焼却処理を行う廃棄物処理場では、ストーカ式焼却炉が広く利用されている。このような焼却炉には、熱回収を行うためのボイラが備えられていることが多い。そして、ボイラで生成した蒸気は蒸気タービン発電機へ供給され、発電に利用されることも多い。
【0003】
また、近年、廃棄物のエネルギー有効利用の観点から、廃プラスチックを主原料としたRPFやバイオマス等の廃棄物燃料をストーカ式焼却炉の燃料として用い、発電等に利用することが進められている。RPFやバイオマス等の廃棄物燃料は高発熱量であり、焼却炉内が非常に高温となるので、火格子も高温となり劣化の進行が速く、火格子の寿命の短命化が危惧される。
【0004】
前述の廃棄物処理場においても、プラスチック等が多く含まれた発熱量の高い廃棄物を焼却する際には、焼却炉内が非常に高温となるので、同様に、火格子の寿命の短命化が危惧される。
【0005】
特許文献1には、水冷式の火格子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の水冷式の火格子は、高温劣化による短命化を抑制することはできるが、水冷構造を備えることにより製造コストの上昇は避けられない。火格子の製造コストが上昇すると、焼却炉の製造コストの上昇にも繋がるという問題がある。
【0008】
本開示は上記のような課題を解決するためになされたもので、ストーカ式焼却炉の製造コストの上昇を抑え、火格子の長寿命化を図ることができる焼却灰循環システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本開示のある態様に係る焼却灰循環システムは、投入口を通じて被燃焼物が投入される燃焼室と前記燃焼室内に配設された火格子とを有するストーカ式焼却炉と、前記投入口へ投入される被燃焼物の重量に基づいて前記ストーカ式焼却炉から排出される焼却灰を前記ストーカ式焼却炉へ返送する焼却灰返送装置とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、以上に説明した構成を有し、ストーカ式焼却炉の製造コストの上昇を抑え、火格子の長寿命化を図ることができる焼却灰循環システムを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態の焼却灰循環システムの一例の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の焼却灰循環システムの他の例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状及び寸法比等については正確な表示ではない場合がある。
【0013】
(実施形態)
図1は、本実施形態の焼却灰循環システムの一例の概略構成を示す図である。
【0014】
本実施形態の焼却灰循環システムは、ストーカ式焼却炉2と、焼却灰返送装置AS1とを備えている。焼却灰返送装置AS1は、クレーン1に備えられた重量測定器Wsと、落下灰コンベア3と、焼却灰搬送装置4と、排出切替装置5と、返送装置6と、灰ピット7と、制御器11とを備えている。
【0015】
ストーカ式焼却炉2は、燃焼室2A、ホッパ21、供給装置22、複数のストーカ23(23a,23b,23c)、及び主灰の排出シュート25を有する。燃焼室2Aには、各ストーカ23a,23b,23cを通じてその下方から一次空気が供給される。また、燃焼室2Aの壁面に設けられた所定の空気供給口から二次空気が供給される。
【0016】
ストーカ式焼却炉2は、例えば発電設備等に使用され、RPF(Refuse derived paper and plastics densified Fuel)、RDF(Refuse Derived Fuel)、バイオマス等の廃棄物燃料を燃焼する焼却炉であってもよい。また、ストーカ式焼却炉2は、一般廃棄物または産業廃棄物を燃焼する焼却炉であってもよい。よって、ストーカ式焼却炉2で燃焼される被燃焼物として、RPF、RDF、バイオマス等の廃棄物燃料、一般廃棄物または産業廃棄物等を例示できる。また、燃料ストーカ式焼却炉2は、上記の各燃料を混合した燃料を被燃焼物としてもよい。
【0017】
このストーカ式焼却炉2では、例えばクレーン1によって被燃焼物が投入口21aからホッパ21に適宜投入される。クレーン1は、例えばバケット付きの天井クレーンである。クレーン1は、自動または手動操作によって、例えばごみピットなどの被燃焼物の一時貯留場所から被燃焼物を吊り上げてホッパ21へ投入するよう構成されている。クレーン1には、重量測定器Wsが設置されている。重量測定器Wsは、クレーン1がホッパ21の投入口21aへ投入する被燃焼物の重量を測定し、測定重量を制御器11へ送信する。なお、ホッパ21の投入口21aは、ストーカ式焼却炉2の投入口である。
【0018】
クレーン1によって投入口21aに適宜投入される被燃焼物は、ホッパ21内に一時貯留され、例えばプッシャー方式の供給装置22によって燃焼室2Aの入口から乾燥ストーカ23a上へ押し出される。被燃焼物は、乾燥ストーカ23aで搬送されるうちに乾燥して着火する。着火した被燃焼物は、燃焼ストーカ23b上で燃焼し、残りの未燃焼分は後燃焼ストーカ23cで搬送されるうちに燃焼し、燃焼後に残った主灰は排出シュート25から焼却灰搬送装置4へ排出される。
【0019】
ストーカ23は、周知のように固定火格子24aと可動火格子24bとが交互に配設され、可動火格子24bが矢印で示す方向に前後運動することにより、火格子24上の被燃焼物が排出シュート25の方向へ搬送される。固定火格子24a及び可動火格子24bは、
図1の紙面奥行方向である炉幅方向に複数並んで配置されている。
【0020】
なお、上記に述べたストーカ式焼却炉2は一例であり、その他、公知の種々のストーカ式焼却炉を用いることができる。具体的には、ストーカ23の個数は3個に限定されるものではない。また、ストーカ23の設置角度が変更されてもよい。また、供給装置22を備えずに、投入口21aから投入される被燃焼物が勝手に燃焼室2Aへ入っていくようにホッパ21が構成されていてもよい。
【0021】
また、上記では、被燃焼物をホッパ21へ供給する手段としてクレーン1を例示したが、これに限らず、被燃焼物をホッパ21へ供給できるものであればよい。例えば、搬送物の重量を測定するロードセル等の重量測定器を備えた計量コンベアであってもよい。この場合、計量コンベアの重量測定器は、測定した被燃焼物の測定重量を制御器11へ送信する。
【0022】
各ストーカ23から落下する落下灰は、落下灰コンベア3で搬送されて焼却灰搬送装置4へ排出される。つまり、排出シュート25から排出される主灰とストーカ23から落下する落下灰とを含む焼却灰は、焼却灰搬送装置4で搬送される。なお、各ストーカ23から落下する落下灰は、焼却灰搬送装置4とは異なる場所へ搬送されるようにしてもよい。
【0023】
焼却灰搬送装置4には、例えば、スクレーパコンベアを用いることができる。また、スクレーパコンベアのトラフに水を張ったコンベアでもよい。また、焼却灰搬送装置4には、例えば、乾式コンベアを用いることができる。また、焼却灰搬送装置4に代えて、灰押出装置を用いてもよい。この灰押出装置は、水槽と、この水槽下部に灰を外部へ押し出す装置とを備えた公知の装置である。
【0024】
焼却灰搬送装置4で搬送された焼却灰は排出切替装置5へ供給される。排出切替装置5は、排出方向を第1方向と第2方向とのいずれかに切り替えて供給される焼却灰を排出する。排出切替装置5は、例えばシリンダまたはモータの駆動によって排出方向を2方向に切り替える分岐ダンパによって構成することができる。
【0025】
ここでは、排出切替装置5は、排出方向を第1方向とした場合には、返送装置6へ焼却灰が排出され、排出方向を第2方向とした場合には、灰ピット7へ焼却灰が排出される。返送装置6は、排出切替装置5から供給される焼却灰をストーカ式焼却炉2へ搬送する装置であり、バケットコンベア等を用いて構成することができる。この返送装置6で返送される焼却灰は、ホッパ21の投入口21aへ供給される。なお、返送装置6で返送される焼却灰を、ホッパ21を介さずに、燃焼室2Aの壁面に設けられた所定の供給口から燃焼室2Aへ供給するようにしてもよい。
【0026】
制御器11は、CPUおよびメモリ等を有し、ストーカ式焼却炉2及び焼却灰返送装置AS1を制御する。具体的には、制御器11は、供給装置22、可動火格子24bの駆動装置、焼却灰搬送装置4、排出切替装置5及び返送装置6等を制御する。なお、制御器11は、集中制御する単独の制御器によって構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御する複数の制御器によって構成されていてもよい。
【0027】
この焼却灰返送装置AS1では、制御器11が排出切替装置5の排出方向を切り替えることにより、ストーカ式焼却炉2から排出される焼却灰のうち、一部がストーカ式焼却炉2へ返送され、残りが灰ピットへ排出される。
【0028】
次に焼却灰返送装置AS1の動作について説明する。ここでは、ストーカ式焼却炉2の運転中は、落下灰コンベア3、焼却灰搬送装置4及び返送装置6は、それぞれ所定の搬送速度で運転されている。以下では、主に、制御器11による排出切替装置5の排出方向の切り替え方法の一例について説明する。
【0029】
例えば被燃焼物が貯留されたピットからクレーン1によって被燃焼物を取り出してホッパ21へ投入する際に、重量測定器Wsによって取り出された被燃焼物の重量が測定され、その測定重量W1が制御器11へ送信される。
【0030】
制御器11は、重量測定器Wsで測定された被燃焼物の測定重量W1に相当する重量分の被燃焼物が火格子24上を通過するのに要する所要時間t1を算出する。ここでは、例えば、供給装置22による被燃焼物の乾燥ストーカ23aへの供給速度および各ストーカ23a、23b、23cにおける可動火格子24bの前後運動する速度を一定とし、所定重量Waの被燃焼物が火格子24上を通過するのに要する時間taが予め定められている。そして、前述の測定重量W1を用いて、t1=ta×W1/Waとして、所要時間t1を算出するようにしてもよい。なお、所定値taおよびWaに代えて、ta/Waの値tbを予め定めておいて、t1=tb×W1として、所要時間t1を算出するようにしてもよい。
【0031】
さらに制御器11は、上記被燃焼物の測定重量W1に基づいて、排出切替装置5の排出方向を第1方向である返送装置6の方向とする時間である返送時間t2を算出する。返送時間t2は所要時間t1より短い時間である。ここで、返送時間t2の間にストーカ式焼却炉2へ返送される焼却灰の重量W2は、測定重量W1のk倍として定められている。すなわち、W2=k×W1である。kは、例えば、0.01~0.20の範囲内の所定値である。
【0032】
上記の説明をまとめると、重量W1の被燃焼物が火格子24上を通過して燃焼する時間t1内にストーカ式焼却炉2から排出される焼却灰のうち、重量W2の焼却灰が返送装置6へ供給されてストーカ式焼却炉2へ返送される。ここで、重量W2の焼却灰を返送装置6へ供給するために排出切替装置5の排出方向を返送装置6の方向とする時間が返送時間t2である。
【0033】
なお、実験等によって、火格子24上に焼却灰を例えば数mm~10mm程度の所定厚さ堆積することにより、火格子24の熱負荷を90%程度削減できることが判明している。そこで、測定重量W1の被燃焼物がホッパ21に投入される場合に対して、火格子24上に焼却灰を所定厚さ堆積させるために、k×W1の重量の焼却灰を返送してホッパ21へ投入するように決めている。
【0034】
また、ストーカ式焼却炉2から排出される焼却灰の単位時間当たりの重量が所定値Wtと定められているものとする。この所定値Wtは実験値または統計値などを用いてもよい。そして、ストーカ式焼却炉2から排出される焼却灰が、滞りなく排出切替装置5へ供給されるように焼却灰搬送装置4の搬送速度が定められているものとする。よって、焼却灰搬送装置4から排出切替装置5へ供給される焼却灰の単位時間当たりの重量も所定値Wtとなり、排出切替装置5の排出方向を返送装置6の方向とする返送時間t2は次式によって算出することができる。
【0035】
t2=W2/Wt=k×W1/Wt
なお、制御器11のメモリには、上記の所要時間t1の算出式、返送時間t2の算出式、及びこれらに含まれる上記の所定値ta、Wa、k、Wt等が予め記憶されている。
【0036】
また、本例では、所要時間t1より短い返送時間t2内に返送装置6へ供給された焼却灰は、所要時間t1と同時間内に返送装置6からホッパ21へ投入されるように、返送装置6の搬送速度が定められており、返送装置6は一定の搬送速度で動作している。
【0037】
上記では、供給装置22による被燃焼物の乾燥ストーカ23aへの供給速度および各ストーカ23a、23b、23cにおける可動火格子24bの前後運動する速度を一定、すなわち、ストーカ23上の被燃焼物の通過速度が一定とした。ストーカ23上の被燃焼物の通過速度が変動する場合、すなわち、供給装置22の供給速度および各ストーカ23a、23b、23cにおける可動火格子24bの前後運動する速度を変化させる場合には、これら供給速度及び前後運動する速度を変数として加えた所要時間t1の算出式及び返送時間t2の算出式を予め作成しておいて、所要時間t1及び返送時間t2を算出するようにしてもよい。
【0038】
そして、制御器11は、算出した所要時間t1及び返送時間t2を基に、所要時間t1内において排出切替装置5の排出方向を返送装置6の方向とする時間が返送時間t2と一致するように排出切替装置5の排出方向を切り替える。例えば、制御器11は、クレーン1から投入される被燃焼物の測定重量W1を重量測定器Wsから受信した後、所定のタイミングで排出切替装置5の排出方向を返送装置6の方向に切替える。その後、返送時間t2と同時間が経過すると、排出切替装置5の排出方向を灰ピット7の方向へ切り替える。この例では、返送時間t2の間、排出切替装置5の排出方向を連続して返送装置6の方向とするようにしたが、これに限らない。例えば、上記所定のタイミングから所要時間t1内において、排出切替装置5の排出方向を間欠的に返送装置6の方向とし、この返送装置6の方向とした合計時間が返送時間t2と一致するようにしてもよい。
【0039】
上述のように制御器11は、投入口21aへ投入される被燃焼物の測定重量W1に基づいて返送時間t2を算出し、前述の所要時間t1内において排出切替装置5の排出方向を返送装置6の方向とする時間が返送時間t2と一致するように排出切替装置5の排出方向を切り替える第1制御を行う。なお、排出切替装置5の排出方向を第1方向である返送装置6の方向としていない間は、排出切替装置5の排出方向は第2方向である灰ピット7の方向である。よって、排出切替装置5の排出方向を第1方向とする場合は、被燃焼物の排出先が返送装置6となり、排出切替装置5の排出方向を第2方向とする場合は、被燃焼物の排出先が例えば灰ピット7のように返送装置6とは異なる設備となる。
【0040】
上記のように制御器11が第1制御を行うことにより、ストーカ式焼却炉2から排出される焼却灰のうち、総じて所定割合の焼却灰がストーカ式焼却炉2へ返送されることになる。返送装置6によって順次返送される焼却灰は火格子24の表面上に堆積し、火格子24の温度の上昇が抑制される。よって、製造コストの高い水冷式の火格子を用いなくても、火格子24の長寿命化を図ることができる。また、水冷式の火格子を用いないことにより、ストーカ式焼却炉2の製造コストの上昇を抑えることができる。また、水冷式の火格子を用いた場合の漏水の可能性もない。
【0041】
さらに、制御器11は、次の第2制御を行うようにしてもよい。この場合、例えば、燃焼ストーカ23bの火格子24に、当該火格子24の表面温度を検出する温度センサTsを備えており、温度センサTsの検出温度は制御器11へ送信されるよう構成されている。温度センサTsは、例えば熱電対等によって構成できる。
【0042】
そして、制御器11は、上記第1制御によって排出切替装置5の排出方向を第2方向である灰ピット7の方向としている場合に温度センサTsの検出温度が第1の基準温度以上になったときに、第1制御を中止して排出切替装置5の排出方向を第1方向である返送装置6の方向に切り替える第2制御を行う。
【0043】
この第2制御によって、火格子24の表面温度が第1の基準温度以上の高温になったときに、焼却灰がストーカ式焼却炉2へ返送されるように排出切替装置5の排出方向が変更される。よって、火格子24の表面温度が高温状態での継続時間を短くし、火格子24の劣化の進行を抑制できる。なお、第2制御によって排出切替装置5の排出方向を返送装置6の方向に切り替えてから、温度センサTsの検出温度が第1の基準温度未満になると、第1制御を再開するようにしてもよい。
【0044】
さらに、制御器11は、次の第3制御を行うようにしてもよい。この場合、制御器11は、上記第1制御及び第2制御のいずれか一方の制御によって排出切替装置5の排出方向を第1方向である返送装置6の方向としている場合に温度センサTsの検出温度が第1の基準温度よりも低い第2の基準温度以下になったときに、上記一方の制御を中止して排出切替装置5の排出方向を第2方向である灰ピット7の方向に切り替える第3制御を行う。
【0045】
この第3制御によって、火格子24の表面温度が第2の基準温度以下の低温になったときに、焼却灰がストーカ式焼却炉2へ返送されないように排出切替装置5の排出方向が灰ピット7の方向に変更される。よって、ストーカ式焼却炉2内の燃焼効率の低下を抑制できる。なお、第3制御によって排出切替装置5の排出方向を灰ピット7の方向に切り替えてから、温度センサTsの検出温度が第2の基準温度を超えると、第1制御を再開するようにしてもよい。
【0046】
図2は、本実施形態の焼却灰循環システムの他の例の概略構成を示す図である。
図2に示す焼却灰循環システムでは、焼却灰返送装置AS2において、焼却灰搬送装置4と排出切替装置5との間に磁選機8が配設されている点が
図1の焼却灰循環システムとは異なる。この場合、焼却灰搬送装置4から排出される焼却灰から磁選機8によって鉄分等の磁性物が除去された焼却灰が排出切替装置5へ供給される。また、磁選機8によって除去された鉄分等の磁性物は鉄分コンベア9によって鉄分コンテナ10へ搬送される。
【0047】
この
図2に示す焼却灰循環システムにおいても、前述の
図1に示す焼却灰循環システムと同様、制御器11が前述の第1制御を行うことにより同様の効果が得られる。さらに、制御器11が前述の第2制御を行うことにより同様の効果が得られる。さらに、制御器11が前述の第3制御を行うことにより同様の効果が得られる。
【0048】
上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0049】
(まとめ)
本開示のある態様に係る焼却灰循環システムは、投入口を通じて被燃焼物が投入される燃焼室と前記燃焼室内に配設された火格子とを有するストーカ式焼却炉と、前記投入口へ投入される被燃焼物の重量に基づいて前記ストーカ式焼却炉から排出される焼却灰を前記ストーカ式焼却炉へ返送する焼却灰返送装置とを備えている。
【0050】
この構成によれば、ストーカ式焼却炉へ返送される焼却灰は火格子の表面上に堆積し、火格子の温度の上昇が抑制される。よって、製造コストの高い水冷式の火格子を用いなくても、火格子の長寿命化を図ることができる。また、水冷式の火格子を用いないことにより、ストーカ式焼却炉の製造コストの上昇を抑えることができる。また、水冷式の火格子を用いた場合の漏水の可能性もない。
【0051】
前記焼却灰返送装置は、前記ストーカ式焼却炉から排出される焼却灰が供給され、排出方向を第1方向と第2方向とのいずれかに切り替えて前記供給される焼却灰を排出する排出切替装置と、前記排出切替装置の排出方向が前記第1方向のときに前記排出切替装置から排出される焼却灰が供給され、この供給される焼却灰を前記ストーカ式焼却炉へ返送する返送装置と、前記排出切替装置の排出方向を切り替える制御器と、を備え、前記制御器は、前記ストーカ式焼却炉の前記投入口へ投入される被燃焼物の重量に基づいて前記排出切替装置の排出方向を前記第1方向とする時間を制御する第1制御を行うようにしてもよい。
【0052】
この構成によれば、制御器が第1制御を行うことにより、ストーカ式焼却炉から排出される焼却灰のうち、総じて所定割合の焼却灰がストーカ式焼却炉へ返送されることになる。順次返送される焼却灰は火格子の表面上に堆積し、火格子の温度の上昇が抑制される。よって、製造コストの高い水冷式の火格子を用いなくても、火格子の長寿命化を図ることができる。また、水冷式の火格子を用いないことにより、ストーカ式焼却炉の製造コストの上昇を抑えることができる。
【0053】
なお、前記第1制御は、前記ストーカ式焼却炉の前記投入口へ投入される被燃焼物の重量に基づいて前記排出切替装置の排出方向を前記第1方向とする時間である返送時間を算出し、前記返送時間の算出に用いた重量分の被燃焼物が前記火格子上を通過するのに要する所要時間内において前記排出切替装置の排出方向を前記第1方向とする時間が前記返送時間と一致するように前記排出切替装置の排出方向を切り替える制御であってもよい。
【0054】
前記ストーカ式焼却炉の火格子の表面温度を検出する温度センサをさらに備え、前記制御器は、前記第1制御によって前記排出切替装置の排出方向を前記第2方向としている間に前記温度センサの検出温度が第1の基準温度以上になった場合に、前記第1制御を中止して前記排出切替装置の排出方向を前記第1方向に切り替える第2制御を行うようにしてもよい。この第2制御によって、火格子の表面温度が第1の基準温度以上の高温になったときに、焼却灰がストーカ式焼却炉へ返送されるように排出切替装置の排出方向が第1方向に変更される。よって、火格子の表面温度が高温状態での継続時間を短くし、火格子の劣化の進行を抑制できる。
【0055】
前記制御器は、前記第1制御及び前記第2制御のいずれか一方の制御によって前記排出切替装置の排出方向を前記第1方向としている間に前記温度センサの検出温度が前記第1の基準温度よりも低い第2の基準温度以下になった場合に、前記一方の制御を中止して前記排出切替装置の排出方向を前記第2方向に切り替える第3制御を行うようにしてもよい。この第3制御によって、火格子の表面温度が第2の基準温度以下の低温になったときに、焼却灰がストーカ式焼却炉へ返送されないように排出切替装置の排出方向が第2方向に変更される。よって、ストーカ式焼却炉内の燃焼効率の低下を抑制できる。
【0056】
前記返送装置は、返送する焼却灰を前記ストーカ式焼却炉の前記投入口へ投入するよう構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
AS1,AS2 焼却灰返送装置
2 ストーカ式焼却炉
2A 燃焼室
5 排出切替装置
6 返送装置
11 制御器
21a 投入口
24 火格子
Ws 重量測定器
Ts 温度センサ