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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094223
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】交通信号機制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/08 20060101AFI20230628BHJP
   G08G 1/04 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
G08G1/08
G08G1/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209575
(22)【出願日】2021-12-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年10月15日に交通信号機制御装置に関する書面を警察庁に提供
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高柳 雄一
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB15
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181JJ01
5H181JJ05
5H181JJ15
(57)【要約】
【課題】右折車線に渋滞が発生している場合に、その右折車線の渋滞を改善するための信号制御の精度を十分に高めることができ、また、歩行者の横断待ちや左折車両の滞留が発生している場合に、その歩行者の横断待ちや左折車両の滞留を改善するための信号制御の精度を十分に高めることができるようにする。
【解決手段】カメラ画像に対する画像解析処理により、監視エリアにおける渋滞車列の末尾の位置に関する情報を含む交通状況情報を取得し、その交通状況情報に基づき信号制御を行う。また、カメラ画像に対する画像解析処理により、左折車両を対象とした監視エリアにおける左折車両の通行状況に関する情報と、横断歩行者を対象とした監視エリアにおける横断歩行者の通行状況に関する情報と、横断待ち歩行者を対象とした監視エリアにおける横断待ち歩行者の待機状況に関する情報とを含む交通状況情報を取得し、その交通状況情報に基づき信号制御を行う。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の交差点の周辺における交通状況情報に基づいて、交差点に設置された交通信号機を制御する信号制御情報を生成する処理を実行するプロセッサを有する交通信号機制御装置であって、
前記プロセッサは、
道路上の物体を検出するセンサの検出結果を取得し、
前記センサの検出結果に対する解析処理により、監視エリアにおける渋滞車列の末尾の位置に関する情報を含む交通状況情報を取得し、
その交通状況情報に基づいて信号制御情報を生成することを特徴とする交通信号機制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
右折車線を対象とした前記監視エリアに関する前記センサの検出結果に基づいて、前記右折車線における前記渋滞車列の末尾の位置に関する情報を取得し、その情報に基づいて、右折車両の通行を許可する信号時間を調整することを特徴とする請求項1に記載の交通信号機制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
直進車線を対象とした前記監視エリアに関する前記センサの検出結果に基づいて、直進車両の速度に関する情報を取得し、その情報に基づいて、直進車両の通行を許可する信号時間を調整することを特徴とする請求項1に記載の交通信号機制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記監視エリア内に設定された複数の観測位置における路面上の物体の占有状況に基づいて、渋滞車列の末尾の位置に関する情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の交通信号機制御装置。
【請求項5】
道路の交差点の周辺における交通状況情報に基づいて、交差点に設置された交通信号機を制御する信号制御情報を生成する処理を実行するプロセッサを有する交通信号機制御装置であって、
前記プロセッサは、
道路上の物体を検出するセンサの検出結果を取得し、
前記センサの検出結果に対する解析処理により、左折車両を対象とした監視エリアにおける左折車両の通行状況に関する情報と、横断歩行者を対象とした監視エリアにおける横断歩行者の通行状況に関する情報と、横断待ち歩行者を対象とした監視エリアにおける横断待ち歩行者の待機状況に関する情報とを含む交通状況情報を取得し、
その交通状況情報に基づいて信号制御情報を生成することを特徴とする交通信号機制御装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
左折車両の通行状況と横断歩行者の通行状況とに応じて場合分けして、左折車両の通行を許可する信号時間および歩行者の横断を許可する信号時間を調整することを特徴とする請求項5に記載の交通信号機制御装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
過去の各時点での交通状況情報と、その時点で用いられた信号制御情報と、その時点の制御結果とを用いた学習により構築された信号制御モデルを用いて、現在の交通状況情報から、車両および歩行者の通行を円滑化する信号制御情報を生成することを特徴とする請求項1または請求項5に記載の交通信号機制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の交差点に設置された交通信号機を制御する交通信号機制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交通管制システム(交通信号機制御システム)では、交通管制センターに設置された中央制御装置が、道路に設置された車両感知器を用いて交通状況情報を収集して、その交通状況情報に基づいて、交差点における車両や歩行者の通行を円滑化するように信号制御情報を生成して、その信号制御情報に基づいて、交差点に設置された交通信号機を制御する。
【0003】
このような交通管制システムでは、車両感知器が設置された地点の交通状況情報しか収集できないため、最適な信号制御を行うのに限界がある。例えば、右折車両の交通量が多いために右折車線に渋滞が発生している場合に、その渋滞車列の末尾の位置、すなわち渋滞長が不明であるため、右折車線の渋滞を改善するための信号制御の精度を十分に高めることができない。また、歩行者の交通量が多いために歩行者の横断待ちや左折車両の滞留が発生している場合に、歩行者の通行人数(横断した人数)や待機人数(横断待ちの人数)、左折車両の通行台数や平均速度が不明であるため、歩行者の横断待ちや左折車両の滞留を改善するための信号制御の精度を十分に高めることができない。
【0004】
このような問題に関連して、従来、交差点の周辺を撮影するように設置されたカメラから撮影画像を取得し、その撮影画像に対する画像解析処理により、交差点に進入する車両(移動体)を検知し、その検出結果に基づいて、交差点に進入する交通量を計測し、その計測結果に基づいて、信号制御情報を生成する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-82362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術では、交差点に進入する移動体を検知することができる。しかしながら、右折車線に渋滞が発生している場合に、その渋滞車列の末尾の位置、すなわち渋滞長を計測することに関しては何の考慮もなく、右折車線の渋滞を改善するための信号制御の精度を十分に高めることができないという問題があった。また、歩行者の横断待ちや左折車両の滞留が発生している場合に、歩行者の通行人数や待機人数、左折車両の通行台数や平均速度を計測することに関しては何の考慮もなく、歩行者の横断待ちや左折車両の滞留を改善するための信号制御の精度を十分に高めることができないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、右折車線に渋滞が発生している場合に、その右折車線の渋滞を改善するための信号制御の精度を十分に高めることができ、また、歩行者の横断待ちや左折車両の滞留が発生している場合に、その歩行者の横断待ちや左折車両の滞留を改善するための信号制御の精度を十分に高めることができる交通信号機制御装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の交通信号機制御装置は、道路の交差点の周辺における交通状況情報に基づいて、交差点に設置された交通信号機を制御する信号制御情報を生成する処理を実行するプロセッサを有する交通信号機制御装置であって、前記プロセッサは、道路上の物体を検出するセンサの検出結果を取得し、前記センサの検出結果に対する解析処理により、監視エリアにおける渋滞車列の末尾の位置に関する情報を含む交通状況情報を取得し、その交通状況情報に基づいて信号制御情報を生成する構成とする。
【0009】
また、本発明の交通信号機制御装置は、道路の交差点の周辺における交通状況情報に基づいて、交差点に設置された交通信号機を制御する信号制御情報を生成する処理を実行するプロセッサを有する交通信号機制御装置であって、前記プロセッサは、道路上の物体を検出するセンサの検出結果を取得し、前記センサの検出結果に対する解析処理により、左折車両を対象とした監視エリアにおける左折車両の通行状況に関する情報と、横断歩行者を対象とした監視エリアにおける横断歩行者の通行状況に関する情報と、横断待ち歩行者を対象とした監視エリアにおける横断待ち歩行者の待機状況に関する情報とを含む交通状況情報を取得し、その交通状況情報に基づいて信号制御情報を生成する構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対象車線に渋滞が発生している場合に、その渋滞車列の末尾の位置、すなわち渋滞長に関する情報を取得するため、対象車線の渋滞を改善するための信号制御の精度を十分に高めることができる。また、歩行者の横断待ちや左折車両の滞留が発生している場合に、左折車両の通行状況に関する情報と、横断歩行者の通行状況に関する情報と、横断待ち歩行者の待機状況に関する情報とを取得するため、歩行者の横断待ちや左折車両の滞留を改善するための信号制御の精度を十分に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る信号制御システムの全体構成図
図2】右折車両に関する支障の状況を示す説明図
図3】直進車両に関する支障の状況を示す説明図
図4】左折車両および横断歩行者に関する支障の状況を示す説明図
図5】交差点におけるカメラの設置状況を示す説明図
図6】カメラにより交差点の周辺を撮影したカメラ画像を示す説明図
図7】信号制御サーバで行われる画像解析処理により取得される交通状況情報の内容を示す説明図
図8】信号制御サーバの概略構成を示すブロック図
図9】信号制御サーバで行われる処理の手順を示すフロー図
図10】信号制御サーバで行われる右折改善処理の手順を示すフロー図
図11】信号制御サーバで行われる直進改善処理の手順を示すフロー図
図12】信号制御サーバで行われる左折横断改善処理の手順を示すフロー図
図13】信号制御の状況を表す現示階梯表を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、道路の交差点の周辺における交通状況情報に基づいて、交差点に設置された交通信号機を制御する信号制御情報を生成する処理を実行するプロセッサを有する交通信号機制御装置であって、前記プロセッサは、道路上の物体を検出するセンサの検出結果を取得し、前記センサの検出結果に対する解析処理により、監視エリアにおける渋滞車列の末尾の位置に関する情報を含む交通状況情報を取得し、その交通状況情報に基づいて信号制御情報を生成する構成とする。
【0013】
これによると、対象車線に渋滞が発生している場合に、その渋滞車列の末尾の位置、すなわち渋滞長に関する情報を取得するため、対象車線の渋滞を改善するための信号制御の精度を十分に高めることができる。なお、センサは、カメラであってもよく、また、その他のセンサ、例えばライダー、レーダーであってもよい。
【0014】
また、第2の発明は、前記プロセッサは、右折車線を対象とした前記監視エリアに関する前記センサの検出結果に基づいて、前記右折車線における前記渋滞車列の末尾の位置に関する情報を取得し、その情報に基づいて、右折車両の通行を許可する信号時間を調整する構成とする。
【0015】
これによると、右折車線に渋滞が発生している場合に、右折車両の通行を許可する信号時間を調整することで、右折車線の渋滞を適切に改善することができる。この場合、渋滞車列の長さに応じて、右折車両の通行を許可する信号時間を延長する時間を変更するものとしてもよい。
【0016】
また、第3の発明は、前記プロセッサは、直進車線を対象とした前記監視エリアに関する前記センサの検出結果に基づいて、直進車両の速度に関する情報を取得し、その情報に基づいて、直進車両の通行を許可する信号時間を調整する構成とする。
【0017】
これによると、直進車両の通行が円滑でない場合に、直進車両の通行を許可する信号時間を調整することで、直進車両の通行の円滑化を図ることができる。この場合、直進車両の平均速度を取得し、その直進車両の平均速度が所定のしきい値以下である場合に、直進車両の通行を許可する信号時間を延長するものとしてもよい。
【0018】
また、第4の発明は、前記プロセッサは、前記監視エリア内に設定された複数の観測位置における路面上の物体の占有状況に基づいて、渋滞車列の末尾の位置に関する情報を取得する構成とする。
【0019】
これによると、暗くなる夜間の時間帯においても、渋滞車列の末尾の位置を精度よく取得することができる。
【0020】
また、第5の発明は、道路の交差点の周辺における交通状況情報に基づいて、交差点に設置された交通信号機を制御する信号制御情報を生成する処理を実行するプロセッサを有する交通信号機制御装置であって、前記プロセッサは、道路上の物体を検出するセンサの検出結果を取得し、前記センサの検出結果に対する解析処理により、左折車両を対象とした監視エリアにおける左折車両の通行状況に関する情報と、横断歩行者を対象とした監視エリアにおける横断歩行者の通行状況に関する情報と、横断待ち歩行者を対象とした監視エリアにおける横断待ち歩行者の待機状況に関する情報とを含む交通状況情報を取得し、その交通状況情報に基づいて信号制御情報を生成する構成とする。
【0021】
これによると、歩行者の横断待ちや左折車両の滞留が発生している場合に、左折車両の通行状況に関する情報と、横断歩行者の通行状況に関する情報と、横断待ち歩行者の待機状況に関する情報とを取得するため、歩行者の横断待ちや左折車両の滞留を改善するための信号制御の精度を十分に高めることができる。なお、この他に、横断自転車の通行状況に関する情報と、横断待ち自転車の待機状況に関する情報とを取得するとよい。なお、センサは、カメラであってもよく、また、その他のセンサ、例えばライダー、レーダーであってもよい。
【0022】
また、第6の発明は、前記プロセッサは、左折車両の通行状況と横断歩行者の通行状況とに応じて場合分けして、左折車両の通行を許可する信号時間および歩行者の横断を許可する信号時間を調整する構成とする。
【0023】
これによると、歩行者の横断待ちや左折車両の滞留を改善するための信号制御の精度を向上させることができる。
【0024】
また、第7の発明は、前記プロセッサは、過去の各時点での交通状況情報と、その時点で用いられた信号制御情報と、その時点の制御結果とを用いた学習により構築された信号制御モデルを用いて、現在の交通状況情報から、車両および歩行者の通行を円滑化する信号制御情報を生成する構成とする。
【0025】
これによると、右折車線の渋滞を改善するための信号制御や、歩行者の横断待ちや左折車両の滞留を改善するための信号制御を、より適切に実施することができる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る交通信号機制御システムの全体構成図である。
【0028】
交通信号機制御システムは、交差点における移動体(車両、歩行者、自転車)の通行の円滑化を図るものである。交通信号機システムは、カメラ1と、信号制御サーバ2(交通信号機制御装置)と、交通信号機3とを備えている。カメラ1および交通信号機3は、各交差点に設置され、ネットワークを介して信号制御サーバ2と接続されている。
【0029】
カメラ1は、交差点の周辺を撮影する。カメラ1は、撮影画像(カメラ画像)を信号制御サーバ2に送信する。
【0030】
信号制御サーバ2は、交通管制システムの中央装置を構成する。信号制御サーバ2は、カメラ画像に対する画像解析処理により、交差点の周辺の交通状況に関する交通状況情報を生成して、その交通状況情報に基づいて、交通信号機3を制御する信号制御情報を生成する。信号制御サーバ2は、信号制御情報を交通信号機3に送信する。
【0031】
交通信号機3は、信号制御機31と、車両用信号灯器32と、歩行者用信号灯器33とで構成される。信号制御機31は、信号制御サーバ2から受信した信号制御情報(指令情報)に基づいて、車両用信号灯器32および歩行者用信号灯器33を制御する。信号制御機31は、信号動作情報(実績情報)を信号制御サーバ2に送信する。
【0032】
なお、本実施形態では、道路上の物体を検出するセンサとしてカメラ1が設けられているが、道路上の物体を検出するセンサはカメラ1に限定されない。例えば、道路上の物体を検出するセンサがライダーやレーダーであってもよい。また、信号制御サーバ2では、カメラ1の検出結果としてのカメラ画像に対する画像解析処理が行われるが、カメラ1以外のセンサの場合も同様に、センサの検出結果に対する解析処理が行われる。
【0033】
また、本実施形態では、車両が道路の左側を通行する場合(左側通行)について説明するが、車両が道路の右側を通行する場合(右側通行)でもよい。この場合、右折および左折は逆になる。すなわち、左側通行における右折(対向車両と交錯する進路変更)は右側通行では左折となり、左側通行における左折(対向車両と交錯しない進路変更)は右側通行では右折となる。
【0034】
次に、交差点における車両の通行および歩行者の横断に関する支障について説明する。図2は、右折車両に関する支障の状況を示す説明図である。図3は、直進車両に関する支障の状況を示す説明図である。図4は、左折車両および横断歩行者に関する支障の状況を示す説明図である。
【0035】
図2に示すように、交差点では、右折車両が多すぎると、車両用信号灯器32の右折用矢印の青信号時間(右折青矢時間)において右折車両が交差点を通過できないため、右折車線で車両が停滞し、右折車線に渋滞が発生する。また、右折車線の渋滞により右折車線に進入できない車両が直進左折車線を塞ぐことで、直進車両や左折車両が交差点を通過できなくなり、右折車線の渋滞が直進左折車線の渋滞を引き起こす。
【0036】
ここで、例えば右折車線に車両感知器が設置されていると、右折車線に渋滞が発生していることがわかるが、右折車線での右折車両の滞留状況、特に渋滞車列の末尾の位置、すなわち渋滞長がわからない。
【0037】
そこで、本実施形態では、カメラ1により交差点の周辺を撮影したカメラ画像に対する画像解析処理により、右折車両の滞留状況に関する情報、例えば渋滞車列の末尾の位置や、右折車両の通行状況に関する情報、例えば右折車両の通行台数および平均速度が取得され、これらの情報に基づいて、右折車両に関する支障を改善する信号制御、特に右折車両の渋滞を軽減する信号制御(例えばMODERATO制御)が行われる。
【0038】
また、図3に示すように、交差点では、直進車両が多すぎると、車両用信号灯器32の青信号時間(車両青時間)において直進車両が交差点を通過できないため、直進左折車線で車両が停滞し、直進左折車線に渋滞が発生する。
【0039】
そこで、本実施形態では、カメラ1により交差点の周辺を撮影したカメラ画像に対する画像解析処理により、直進車両の滞留状況に関する情報、例えば渋滞車列の末尾の位置や、直進車両の通行状況に関する情報、例えば直進車両の通行台数および平均速度が取得され、これらの情報に基づいて、直進車両に関する支障を改善する信号制御が行われる。
【0040】
また、図4に示すように、交差点では、横断歩道を渡る歩行者(横断歩行者)と左折車両とが交錯するが、横断歩行者が左折車両より優先されることから、左折車両は、横断歩行者が途切れたところで横断歩道を横切って通行することができる。ところが、横断歩行者が多く、横断歩行者が途切れないと、左折車両が交差点を通過できないため、直進左折車線で車両が停滞し、これに伴って直進車両も交差点を通過できないため、直進左折車線に渋滞が発生する。また、横断歩行者が多すぎると、歩行者用信号灯器33の青時間(歩行者青時間)において歩行者が渡り切れないため、横断歩道の手前で待つ歩行者(横断待ち歩行者)が滞留する。
【0041】
ここで、例えば直進左折車線に車両感知器が設置されていると、直進左折車線に渋滞が発生していることがわかるが、その原因である横断歩行者が多いことはわからない。また、横断歩行者の状況や、左折車両の滞留度合いもわからない。また、横断歩行者が多いことが原因であると推察して歩行者青時間を延長する信号制御も可能であるが、横断待ち歩行者の混み具合がわからないと、歩行者青時間を最適な値に設定できない。
【0042】
そこで、本実施形態では、カメラ1により交差点の周辺を撮影したカメラ画像に対する画像解析処理により、左折車両の通行状況に関する情報、例えば左折車両の通行台数および平均速度と、歩行者の横断状況に関する情報、例えば歩行者の通行人数および平均速度と、横断待ち歩行者の滞留に関する情報、例えば歩行者の待機人数(横断待ち歩行者数)とが取得され、これらの情報に基づいて、左折車両および横断歩行者に関する支障を改善する信号制御(例えばマトリクス制御)が行われる。
【0043】
次に、カメラ1により撮影されたカメラ画像と、カメラ画像上に設定される監視エリアおよび観測位置とについて説明する。図5は、交差点におけるカメラ1の設置状況を示す説明図である。図6は、カメラ1により交差点の周辺を撮影したカメラ画像を示す説明図である。
【0044】
図5に示すように、カメラ1は交差点に設置される。図6に示すように、カメラ1により交差点の周辺を撮影したカメラ画像が得られる。信号制御サーバ2は、カメラ画像に対する画像解析処理により交通状況情報を取得する。このとき、カメラ画像には監視エリアが設定されているため、監視エリアごとに交通状況情報が取得される。
【0045】
図6に示す例では、カメラ画像上に、第1の監視エリア(直進左折車線エリア)と第2の監視エリア(右折車線エリア)と第3の監視エリア(左折待ちエリア)と第4の監視エリア(横断歩道エリア)と第5の監視エリア(横断待ちエリア)とが設定されている。
【0046】
第2の監視エリア(右折車線エリア)は、カメラ画像内の右折車線の領域に設定される。第2の監視エリアは、右折車両の滞留(渋滞)状況に関する交通状況情報を取得するものである。具体的には、第2の監視エリアに、複数の観測位置に対応する複数の検出枠が設定される。図6に示す例では、第2の監視エリアに、第1~第5の各観測位置に対応する矩形の検出枠が設定されている。この複数の検出枠内の物体(車両)の占有状況に基づいて、右折車線における渋滞車列の末尾の位置、すなわち渋滞長(末尾車両距離)が取得される。また、複数の検出枠内の物体(車両)の占有状況に基づいて、右折車両の通行台数および平均速度が取得される。
【0047】
このとき、カメラ画像から各観測位置の検出枠内の画像が抽出され、その画像に基づいて、検出枠内の道路の路面上に何らかの物体(通常は車両)が存在するか否かが判定され、その検出枠内での物体の有無に基づいて、各観測位置での物体(車両)の占有状況、具体的には空間占有率が取得される。そして、各観測位置での空間占有率の変化状況に基づいて、右折車線における渋滞車列の末尾が検知され、また、右折車線の上の車両の通行状況(滞留状況)が推定される。
【0048】
また、検出枠内での物体の有無の判別は、暗くなる夜間の時間帯でも十分な制度を確保することができる。このため、夜間の時間帯においても、渋滞車列の末尾を精度よく検知することができ、また、右折車線の車両の通行状況を推定することができる。
【0049】
第1の監視エリア(直進左折車線エリア)は、カメラ画像内の直進左折車線の領域に設定される。第1の監視エリアは、直進左折車線上の車両の通行状況に関する交通状況情報を取得するものである。具体的には、第2の監視エリアと同様に、複数の観測位置に対応する複数の検出枠が設定され、各観測位置の検出枠内の物体の占有状況に基づいて、直進左折車線における渋滞長(末尾車両距離)が取得され、また、直進左折車線上の車両の通行台数および平均速度が取得される。
【0050】
なお、検出枠の位置(観測位置)は、対象とする車線において想定される最大の渋滞長や、信号制御により改善可能な最大の渋滞長に基づいて設定されてもよい。また、カメラ画像において、カメラ1から被写体までの距離が大きくなることで検出限界を越えると、検出枠内の物体の占有状況に関する検出精度を確保できないため、カメラ画像の検出限界に基づいて検出枠の位置が設定されてもよい。
【0051】
また、検出枠内の物体の占有状況に基づいて、右折車線における渋滞車列の末尾を検知する処理では、車両の大きさ(小型車、大型車など)が判別されるようにしてもよい。これにより、渋滞車列を構成する車両の台数および大きさが特定され、その情報に基づいて渋滞長がより精度よく推定される。
【0052】
第3の監視エリア(左折待ちエリア)は、左折車両が横断歩道の手前で待機する場所に設定される。第3の監視エリアは、左折車両の滞留状況に関する交通状況情報を取得するものである。具体的には、物体認識技術を用いた車両検知が行われる。検知された車両をカウントすることで、左折車両の通行台数が取得される。また、検知された各車両の速度を計測することで、左折車両の平均速度が取得される。なお、検知した車両を追跡する処理が行われると、交差道路の直進車線を左折車両と混同することを避けることができる。
【0053】
第4の監視エリア(横断歩道エリア)は、カメラ画像内の横断歩道の領域に設定される。第4の監視エリアは、歩行者の横断状況に関する交通状況情報を取得するものである。具体的には、物体認識技術を用いた人物検知が行われる。検知された人物をカウントすることで、歩行者の通行人数が取得される。また、検知された各人物の速度を計測することで、歩行者の平均速度が取得される。また、第4の監視エリアでは、物体認識技術を用いた自転車検知が行われる。検知された自転車をカウントすることで、自転車の通行台数が取得される。また、検知された各自転車の速度を計測することで、自転車の平均速度が取得される。
【0054】
第5の監視エリア(横断待ちエリア)は、カメラ画像内の横断歩道に隣接する歩道の領域に設定される。第5の監視エリアは、横断待ち歩行者の滞留状況に関する交通状況情報を取得するものである。具体的には、物体認識技術を用いた人物検知が行われ、検知された人物をカウントすることで、歩行者の滞留人数が取得される。また、第5の監視エリアを対象にして自転車を検知する処理が行われ、検知された自転車をカウントすることで、自転車の滞留台数が取得される。
【0055】
なお、第3の監視エリアでは、物体認識技術を用いた車両検知が行われ、第4,第5の監視エリアでは、物体認識技術を用いた人物検知および自転車検知が行われるが、第2の監視エリアと同様に、複数の観測位置ごとに設定された検出枠内の物体の占有状況に基づいて交通状況情報が取得されるものとしてもよい。
【0056】
第3,第4,第5の監視エリアはカメラ1に近いため、車両や人物や自転車が大きく写るため、精度の高い物体認識が可能である。一方、第1,第2の監視エリアはカメラ1から遠いため、精度の高い物体認識が難しい。また、第1,第2の監視エリアでは、車列の最も手前側の車両は、物体認識により車両を検知できるが、それ以外の車両は、前の車両に隠れて一部しか写らないため、物体認識により車両を検知することが難しい。このため、複数の観測位置ごとに設定された検出枠内の物体の占有状況に基づく処理が大きな効果を奏する。
【0057】
なお、物体認識技術を用いた車両検知や人物検知や自転車検知では、ディープラーニングなどの機械学習により構築される画像認識モデル(機械学習モデル)が用いられてもよい。この場合、カメラ画像から抽出された監視エリアの画像(エリア画像)が画像認識モデルに入力され、画像認識モデルから検知結果が出力される。
【0058】
ところで、カメラ画像上での監視エリアの位置および観測位置(検出枠の位置)は、管理者の操作により設定される。例えば、管理者が操作する端末にカメラ画像が表示され、そのカメラ画像上で、管理者が監視エリアの位置および観測位置(検出枠の位置)を指定するものとしてもよい。
【0059】
また、カメラ1は交差点の周辺を撮影するように設置されるが、必要に応じてカメラ1の撮影方向および撮影範囲(画角)が変更される場合がある。この場合、カメラ画像上での監視エリアの位置が変化するため、カメラ1の撮影方向および撮影範囲の変更に応じて、カメラ画像上での監視エリアの位置および観測位置(検出枠の位置)が、管理者の操作により再設定されるものとしてもよい。
【0060】
次に、信号制御サーバ2で行われる画像解析処理により取得される交通状況情報について説明する。図7は、交通状況情報の内容を示す説明図である。
【0061】
信号制御サーバ2では、カメラ画像に対して画像解析処理が行われ、この画像解析処理により、交差点内の車両および歩行者の通行状況に関する交通状況情報が取得される。
【0062】
図7に示す例では、日時、エリア数、車線番号、末尾車両距離(渋滞車列の長さ)の各情報が取得される。また、車両に関する情報として、通行台数、平均速度、時間占有率、および空間占有率の各情報が取得される。また、歩行者に関する情報として、通行人数、停滞人数(待機人数)、平均速度、時間占有率、および空間占有率の各情報が取得される。また、自転車に関する情報として、通行台数、停滞台数(待機台数)、平均速度、時間占有率、および空間占有率の各情報が取得される。
【0063】
なお、図7に示す例は、第1の監視エリア(直進左折車線エリア)に関するものであり、車両の通行状況に関する情報が含まれる。また、空間占有率は、観測時点において観測エリア内に移動体(車両、歩行者、自転車)が占有した空間の割合である。時間占有率は、観測地点において観測時間内に移動体が存在した時間の割合である。
【0064】
次に、信号制御サーバ2の概略構成について説明する。図8は、信号制御サーバ2の概略構成を示すブロック図である。
【0065】
信号制御サーバ2は、通信部21と、記憶部22と、プロセッサ23と、を備えている。
【0066】
通信部21は、カメラ1および信号制御機31との間で通信を行う。
【0067】
記憶部22は、プロセッサ23で実行されるプログラムなどを記憶する。
【0068】
プロセッサ23は、記憶部22に記憶されたプログラムを実行することで各種の処理を行う。本実施形態では、プロセッサ23が、画像解析処理、および信号制御処理などを行う。
【0069】
画像解析処理では、プロセッサ23が、カメラ1から取得したカメラ画像から監視エリアの画像を抽出して、そのエリア画像に基づいて、各監視エリアに関する交通状況情報(交通流リアルタイム計測情報)を取得する。
【0070】
具体的には、第1の監視エリア(直進左折車線エリア)に関して、直進左折車線における渋滞車列の末尾の位置、すなわち渋滞長(末尾車両距離)や、直進車両の通行台数および平均速度などが取得される。第2の監視エリア(右折車線エリア)に関して、右折車線における渋滞車列の末尾の位置、すなわち渋滞長(末尾車両距離)や、右折車両の通行台数および平均速度などが取得される。第3の監視エリア(左折待ちエリア)に関して、左折車両の通行台数および平均速度が取得される。第4の監視エリア(横断歩道エリア)に関して、歩行者の通行人数および平均速度と、自転車の通行台数および平均速度とが取得される。第5の監視エリア(横断待ちエリア)に関して、歩行者の滞留人数と自転車の滞留台数とが取得される。
【0071】
信号制御処理では、プロセッサ23が、画像解析処理で取得した各監視エリアに関する交通状況情報に基づいて、信号制御情報を生成する。また、本実施形態では、右折車両に関する支障(図2参照)、直進車両に関する支障(図3参照)、および左折車両および横断歩行者に関する支障(図4参照)のいずれが最も優先して改善すべき課題(優先課題)かを特定し、特定した優先課題を個別に改善するように信号制御情報を生成する。
【0072】
ここで、交通状況情報から信号制御情報を生成するにあたっては、過去の制御実績を用いた学習により構築された信号制御モデルを用いられてもよい。この場合、過去の各時点での交通状況情報と、その時点で用いられた信号制御情報と、その時点の制御結果とを用いた学習により、車両および歩行者の通行を円滑化する最適な信号制御情報を、現在の信号制御情報から導き出す信号制御モデルが構築される。また、信号制御モデルは時間帯ごとに構築されてもよい。
【0073】
具体的には、過去の交通状況情報に基づく交通状況を複数のパターンに類型化し、パターンごとに、車両および歩行者の通行を円滑化する最適な信号制御情報を設定した信号制御モデルを構築し、その信号制御モデルを用いて、現在の交通状況に該当するパターンに設定された信号制御情報を最適な信号制御情報として取得する。また、ディープラーニングなどの機械学習により信号制御モデル(機械学習モデル)を構築して、その信号制御モデルを用いて、現在の交通状況情報から最適な信号制御情報を導出する。
【0074】
なお、本実施形態では、信号制御サーバ2が画像解析処理と信号制御処理とを行うものとしたが、画像解析処理を行う画像解析サーバが、信号制御処理を行う信号制御サーバ2とは別に設けられた構成も可能である。
【0075】
また、本実施形態では、信号制御サーバ2において、撮影画像から各監視エリアの画像を抽出する処理が行われるが、カメラ1において、撮影画像から各監視エリアの画像を抽出する処理が行われて、その各監視エリアの画像が信号制御サーバ2に送信される構成でもよい。
【0076】
また、信号制御サーバ2では、画像解析処理で取得した交通状況情報が、信号制御処理に提供されるが、このとき、交通状況情報が仮想的な感知器情報として信号制御処理に提供されるようにすると、感知器情報に基づく従来の信号制御処理の構成を大きく改変する必要がなくなる。
【0077】
次に、信号制御サーバ2で行われる処理の手順について説明する。図9は、信号制御サーバ2で行われる処理の手順を示すフロー図である。
【0078】
信号制御サーバ2は、まず、所定の制御周期(例えば1分、2.5分、5分、15分など)で、カメラ画像に対する画像解析により、監視エリアごとの交通状況情報を取得する(ST101)。ここで、交通状況情報は、車両の通行台数および平均速度や、歩行者の通行人数および待機人数などである(図7参照)。
【0079】
次に、信号制御サーバ2は、交差点における交通流のバランス(安定度)を計算する(ST102)。このとき、車線および横断歩道ごとの交通流のバランスを計算する。
【0080】
次に、信号制御サーバ2は、交通流のバランスに基づいて、交差点における交通流が安定しているか否かを判定する(ST103)。ここで、交通流が安定している場合には(ST103でYes)、ST101に戻る。
【0081】
一方、交通流が安定していない場合には(ST103でNo)、次に、信号制御サーバ2は、所要の情報を収集して、優先課題(優先的に改善すべき課題)を特定する(ST104)。具体的には、優先課題が、右折車両に関する支障と、直進車両に関する支障と、左折車両および横断歩行者に関する支障とのいずれであるかが判定される。
【0082】
ここで、優先課題が右折車両に関する支障である場合には(ST105で「右折」)、右折改善処理に進む(ST106)(図10参照)。また、優先課題が直進車両に関する支障である場合には(ST105で「直進」)、直進改善処理に進む(ST107)(図11参照)。また、優先課題が左折車両および横断歩行者に関する支障である場合には(ST105で「左折横断」)、左折横断改善処理に進む(ST108)(図12参照)。
【0083】
なお、図9に示す例では、処理が所定の制御周期で実行されるが、信号制御の1サイクルが終了するタイミングで処理が実行されてもよい。
【0084】
また、本実施形態では、優先課題(優先的に改善すべき課題)が特定されて、その優先課題を個別に改善する制御が実施されるが、優先課題を特定せずに、改善すべき課題、すなわち、右折車両に関する支障と、直進車両に関する支障と、左折車両および横断歩行者に関する支障とを総合的に改善する制御が実施されてもよい。また、優先課題を個別に改善する制御と、複数の課題を総合的に改善する制御とが組み合わせて実施されてもよい。この場合、優先課題を特定する判定と、全体的な交通状況の評価とが適宜に行われてもよい。
【0085】
次に、信号制御サーバ2で行われる右折改善処理(図9のST106)の手順について説明する。図10は、右折改善処理の手順を示すフロー図である。
【0086】
信号制御サーバ2は、優先課題(優先的に改善すべき課題)が右折車両に関する支障(右折車線の渋滞など)である場合には、右折改善処理を実行する。
【0087】
右折改善処理では、信号制御サーバ2は、まず、渋滞車列の末尾が第1から第5の各観測位置のいずれであるかを判定する(ST201)。
【0088】
ここで、渋滞車列の末尾が第1の観測位置である場合には(ST201で「第1の観測位置」)、支障の程度が低いため、信号制御サーバ2は、標準的な信号制御情報を生成する(ST202)。
【0089】
また、渋滞車列の末尾が第2の観測位置である場合には(ST201で「第2の観測位置」)、支障の程度が低いため、信号制御サーバ2は、標準的な信号制御情報を生成する(ST203)。
【0090】
一方、渋滞車列の末尾が第3の観測位置である場合には(ST201で「第3の観測位置」)、信号制御サーバ2は、車両青時間(直進車両の進行を許可する信号時間)を短縮し、右折青矢時間(右折車両のみの進行を許可する信号時間)を比較的短く延長するように、信号制御情報を生成する(ST204)。具体的には、右折青矢時間を、標準時間に延長可能時間の1/2を加算した時間に設定する。
【0091】
また、渋滞車列の末尾が第4の観測位置である場合には(ST201で「第4の観測位置」)、信号制御サーバ2は、車両青時間を短縮し、右折青矢時間を比較的長く延長するように、信号制御情報を生成する(ST205)。具体的には、右折青矢時間を、標準時間に延長可能時間の2/3を加算した時間に設定する。
【0092】
また、渋滞車列の末尾が第5の観測位置である場合には(ST201で「第5の観測位置」)、信号制御サーバ2は、車両青時間を短縮し、右折青矢時間を最大限延長するように、信号制御情報を生成する(ST206)。具体的には、右折青矢時間を、標準時間に延長可能時間を加算した時間に設定する。
【0093】
なお、図10に示す右折改善処理において、渋滞車列の末尾に関する判定、すなわち、渋滞車列の末尾が第1から第5の各観測位置のいずれかが判定されるが、図9に示す優先課題を特定する処理(ST104)において、渋滞車列の末尾に関する判定が行われて、渋滞車列の末尾が第3,第4,第5の各観測位置のいずれかである場合に、右折車線の渋滞が顕著であることから、優先課題が右折車両に関する支障であると判定されてもよい。
【0094】
また、標準時間に加算される延長時間については、過去の交通状況情報(右折車両の通行台数、平均速度など)に基づいて、交通状況を複数のパターンに類型化し、パターンごとに最適な延長時間を設定して、現在の交通状況に該当するパターンに設定された延長時間が採用されるものとしてもよい。
【0095】
次に、信号制御サーバ2で行われる直進改善処理(図9のST107)の手順について説明する。図11は、直進改善処理の手順を示すフロー図である。
【0096】
信号制御サーバ2は、優先課題(優先的に改善すべき課題)が直進車両に関する支障(直進車両の滞留など)である場合には、直進改善処理を実行する。
【0097】
直進改善処理では、信号制御サーバ2は、まず、直進車両速度(直進車両の平均速度)が所定のしきい値(例えば20km/h)以下か否かを判定する(ST301)。
【0098】
ここで、直進車両速度がしきい値以下である場合には(ST301でYes)、信号制御サーバ2は、右折青矢時間(右折車両のみの進行を許可する信号時間)を短縮するとともに、車両青時間(直進車両の進行を許可する信号時間)を最大限延長するように、信号制御情報を生成する(ST302)。これにより、直進車両の通行が円滑化して直進車両の滞留が改善される。
【0099】
一方、直進車両速度がしきい値を越える場合には(ST301でNo)、支障の程度が低いため、信号制御サーバ2は、標準的な信号制御情報を生成する(ST303)。
【0100】
なお、図11に示す直進改善処理において、直進車両速度に関する判定、すなわち、直進車両速度がしきい値以下か否かの判定が行われるが、図9に示す優先課題を特定する処理(ST104)において、直進車両速度に関する判定が行われて、直進車両速度がしきい値以下である場合に、直進車両の通行が円滑でないことから、優先課題が直進車両に関する支障であると判定されてもよい。
【0101】
次に、信号制御サーバ2で行われる左折横断改善処理(図9のST108)の手順について説明する。図12は、左折横断改善処理の手順を示すフロー図である。
【0102】
信号制御サーバ2は、優先課題(優先的に改善すべき課題)が、左折車両および横断歩行者に関する支障である場合には、左折横断改善処理を実行する。
【0103】
左折横断改善処理では、信号制御サーバ2は、まず、横断歩行者数(歩行者の通行人数)、および左折車両速度(左折車両の平均速度)に基づいて、現在の交通状況が第1~第4の事象のいずれに該当するかを判定する(ST401)。ここで、第1の事象は、横断歩行者数が多く、且つ、左折車両速度が高い場合である。また、第2の事象は、横断歩行者数が少なく、且つ、左折車両速度が高い場合である。また、第3の事象は、横断歩行者数が多く、且つ、左折車両速度が低い場合である。また、第4の事象は、横断歩行者数が少なく、且つ、左折車両速度が低い場合である。
【0104】
ここで、第1の事象に該当する場合、すなわち、横断歩行者数が多く、且つ、左折車両速度が高い場合には(ST401で「第1の事象」)、信号制御サーバ2は、歩行者青時間(歩行者の横断を許可する信号時間)を延長するように信号制御情報を生成する(ST402)。これにより、横断歩行者が優先され、横断待ちエリアでの歩行者の滞留が改善される。
【0105】
また、第2の事象に該当する場合、すなわち、横断歩行者数が少なく、且つ、左折車両速度が高い場合には(ST401で「第2の事象」)、支障の程度が低いため、信号制御サーバ2は、標準的な信号制御情報を生成する(ST403)。
【0106】
また、第3の事象に該当する場合、すなわち、横断歩行者数が多く、且つ、左折車両速度が低い場合には(ST401で「第3の事象」)、信号制御サーバ2は、車両青時間(左折車両の通行を許可する信号時間)を延長するとともに歩行者青時間を延長するように信号制御情報を生成する(ST404)。これにより、車両青時間を延長することで、左折車両の速度低下が改善され、左折車両の通行が円滑化される。また、歩行者青時間を延長することで、横断待ちエリアでの歩行者の滞留が改善される。
【0107】
なお、第3の事象に該当する場合、すなわち、横断歩行者数が多く、且つ、左折車両速度が低い場合でも、横断歩行者数が極めて多い場合には、左折車両よりも横断歩行者が優先され、車両青時間を延長せずに歩行者青時間を延長するように信号制御情報を生成するものとしてもよい。
【0108】
また、第4の事象に該当する場合、すなわち、横断歩行者数が少なく、且つ、左折車両速度が低い場合には(ST401で「第4の事象」)、信号制御サーバ2は、車両青時間を延長するように信号制御情報を生成する(ST405)。これにより、左折車両が優先され、左折車両の通行が円滑化される。
【0109】
また、図12に示す例では、左折車両の通行状況、具体的には横断歩行者の通行人数の多少と、横断歩行者の通行状況、具体的には左折車両の平均速度の高低とに応じて場合分けして、信号制御が行われるが、左折車両の通行状況および横断歩行者の通行状況の他に、横断待ち歩行者の待機状況、具体的には待機人数の多少に応じた場合分けを加えて、信号制御が行われるものとしてもよい。
【0110】
次に、信号制御サーバ2で行われる信号制御の概要について説明する。図13は、信号制御の状況を表す現示階梯表を示す説明図である。
【0111】
図13(A)は、2方向の道路が交差する交差点における基本的な現示構成である。ここで、例えば車両青時間(1G,2G)を延長することで、車両の通行を促進して車両の滞留を軽減することができる。また、例えば歩行者青時間(1PG,2PG)を延長することで、歩行者の横断を促進して横断待ち歩行者の滞留を軽減することができる。
【0112】
また、例えば、図13(B)に示すように、第1現示1φを、歩行者の横断を許可する現示と、歩行者の横断を許可しない現示とに分割することで、左折車両の通行を円滑化することができる。また、例えば、図13(C)に示すように、右折車両にのみ通行を許可する現示を追加することで、右折車両の通行を円滑化することができる。また、例えば、図13(D)に示すように、歩行者の横断のみを許可する現示を追加することで、歩行者の横断を促進して横断待ち歩行者の滞留を軽減することができる。
【0113】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記の実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明に係る交通信号機制御装置は、右折車線に渋滞が発生している場合に、その右折車線の渋滞を改善するための制御の精度を十分に高めることができ、また、歩行者の横断待ちや左折車両の滞留が発生している場合に、その歩行者の横断待ちや左折車両の滞留を改善するための制御の精度を十分に高めることができる効果を有し、道路の交差点に設置された交通信号機を制御する交通信号機制御装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0115】
1 カメラ
2 信号制御サーバ(交通信号機制御装置)
3 交通信号機
21 通信部
22 記憶部
23 プロセッサ
31 信号制御機
32 車両用信号灯器
33 歩行者用信号灯器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13