(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094230
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 1/28 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
E03D1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209590
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】梅野 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】豊福 達也
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 雄介
(72)【発明者】
【氏名】元岡 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸聖
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039BA01
2D039CA01
2D039CC07
(57)【要約】
【課題】清掃等のメンテナンス時の機能部における被水防止カバーが破損するおそれ、電気部品が被水するおそれ、被水防止カバーに被水した水分が飛び散るおそれをより一層低減させつつ、被水防止カバーの周囲の有効スペースを確保することができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器1は、便器本体4と、機能部6と、便器本体及び機能部の上面を覆うように設けられた便座ユニットU1と、を有し、機能部は、便器本体に供給する洗浄水を給止水する給水機能部Tと、この給水機能部を制御する電気部品38と、この少なくとも電気部品の上方に設けられた被水防止カバー42と、を備えており、被水防止カバーは、便座ユニットを持ち上げ操作することにより機能部の少なくとも一部が前方又は側方から露出した際に露出可能な表壁面44を備えており、この表壁面は、鉛直面V0に対して傾斜する傾斜面を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部を備えた便器本体と、
この便器本体のボウル部よりも後方に設けられた機能部と、
上記便器本体及び上記機能部の上面を覆うように設けられた便座ユニットであって、この便座ユニットを持ち上げ操作することにより上記機能部の少なくとも一部を前方又は側方から露出可能にする上記便座ユニットと、を有し、
上記機能部は、上記便器本体に供給する洗浄水を給止水する給水機能部と、この給水機能部を制御する電気部品と、この少なくとも電気部品の上方に設けられた被水防止カバーと、を備えており、
上記被水防止カバーは、上記便座ユニットを持ち上げ操作することにより上記機能部の少なくとも一部が前方又は側方から露出した際に露出可能な表壁面を備えており、この表壁面は、鉛直面に対して傾斜する傾斜面を備えていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記傾斜面は、凹凸状に形成された溝部を備えている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記傾斜面は、上記電気部品に対して上方に離間して設けられている請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記被水防止カバーの表壁面は、さらに、上記傾斜面の端部から水平方向に延びる平坦面を備えている請求項1乃至3の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記溝部は、上記傾斜面よりも内側又は下側に設けられている請求項2記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記平坦面は、上記傾斜面の後端部から後方に延びる後方平坦面を備えており、この後方平坦面は、凹凸状に形成された後方溝部を備えている請求項4記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器として、例えば、特許文献1-3に記載されているように、便器本体の後方に設けられた機能部と、この機能部の上方を覆うように設けられたカバー部材と、を備えているものが知られている。
これらの特許文献1-3に記載されている従来の水洗大便器においては、カバー部材が、機能部に対する外部から衝撃や接触等から保護するために機能していることは当然のことながら、機能部には、湿気等だけでなく清掃等に起因する浸水に脆弱な多くの電気部品が配置されているため、これらの電気部品が被水することを防ぐ機能も担っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-169538号公報
【特許文献2】特開2020-169537号公報
【特許文献3】特開2014-95234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の水洗大便器においては、特に、清掃等の定期的なメンテナンス時において、カバー部材を一時的に取り外したり、便器本体の上面に配置された便座ユニット或いは局部洗浄装置を持ち上げ操作したりすることにより、機能部が露出した状態となる。
これにより、例えば、清掃時に便器本体の上面に向かって噴霧された液体洗剤や便器本体の上面に水拭きされる水分等が機能部の露出面に達すると、機能部の電気部品等が被水してしまうおそれがあるという問題がある。
また、従来の水洗大便器においては、清掃等のメンテナンス時に機能部の電気部品を覆う被水防止カバーの表面に被水した水分を拭き取る際に、被水防止カバーが手指や清掃用具等で押圧されることにより変形する可能性がある。
これにより、被水防止カバーの変形量が大きい程、被水防止カバーが覆っている電気部品に接触するおそれや、電気部品に接続されている配線コード等を設置する十分な周辺スペースが確保できなくなるおそれがある。一方、被水防止カバーの剛性等の強度を高める程、被水防止カバーが被水した際に水分が飛び散りやすくなるという問題がある。
したがって、清掃時等において、機能部の電気部品が被水するおそれをいかに低減させつつ、電気部品を覆う被水防止カバーの強度を適度に保ちながら、手指等により押圧された被水防止カバーが変形することにより電気部品に接触するおそれをいかに低減させ、電気部品の周辺の配線コード等を設置する十分なスペースをいかに確保するかが、近年要請されている課題ともなっている。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点や近年要請されている課題を解決するためになされたものであり、清掃等のメンテナンス時の機能部における被水防止カバーが破損するおそれ、電気部品が被水するおそれ、被水防止カバーに被水した水分が飛び散るおそれをより一層低減させつつ、被水防止カバーの周囲の有効スペースを確保することができる水洗大便器を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、汚物を受けるボウル部を備えた便器本体と、この便器本体のボウル部よりも後方に設けられた機能部と、上記便器本体及び上記機能部の上面を覆うように設けられた便座ユニットであって、この便座ユニットを持ち上げ操作することにより上記機能部の少なくとも一部を前方又は側方から露出可能にする上記便座ユニットと、を有し、上記機能部は、上記便器本体に供給する洗浄水を給止水する給水機能部と、この給水機能部を制御する電気部品と、この少なくとも電気部品の上方に設けられた被水防止カバーと、を備えており、上記被水防止カバーは、上記便座ユニットを持ち上げ操作することにより上記機能部の少なくとも一部が前方又は側方から露出した際に露出可能な表壁面を備えており、この表壁面は、鉛直面に対して傾斜する傾斜面を備えていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、例えば、便器本体の上面を清掃する際には、便器本体及び機能部の上面を覆う便座ユニットを持ち上げ操作した状態で、液体洗剤等を便器本体の上面に向かって噴霧した後、清掃道具等で拭き掃除を行うことになる。
この際、便器本体の上面が露出している以外にも、便器本体のボウル部よりも後方に設けられた機能部の少なくとも一部についても前方又は側方から露出した状態となっているため、便器本体の上面に向かって噴霧された液体洗剤や便器本体の上面に水拭きされる水分等が機能部の露出面に達すると、機能部が被水してしまうおそれがある。
しかしながら、本発明によれば、機能部における給水機能部を制御する電気部品の上方が被水防止カバーにより覆われているため、便器本体の清掃時において、万一、機能部の露出面が液体洗剤や清掃水等により被水したとしても、機能部の電気部品が被水することを防ぐことができる。
また、便座ユニットを持ち上げ操作することにより機能部の少なくとも一部が前方又は側方から露出した際に露出している被水防止カバーの表壁面が鉛直面に対して傾斜する傾斜面を備えていることにより、万一、被水防止カバーの表壁面が液体洗剤や清掃水等により被水したとしても、このような被水を傾斜面に沿って上方から下方に誘導して被水防止カバーの外部へ誘導することができる。
これにより、被水防止カバーの表壁面が鉛直面である場合に比べて、傾斜面に被水した水分が周囲に飛び散ることを抑制することができると共に、傾斜面上に水分が滞留することを抑制することができる。
また、被水防止カバーの表壁面の傾斜面により、被水防止カバーの表壁面が鉛直面である場合に比べて、被水防止カバー自体の剛性等の強度を適度に高めることができる。
これにより、清掃等のメンテナンス時において、便座ユニットを持ち上げ操作することにより機能部の少なくとも一部が前方又は側方から露出した状態で、万一、清掃用具等が機能部の前方又は側方から被水防止カバーの表壁面の傾斜面等に接触したり、押圧したりしたとしても、被水防止カバーの表壁面が鉛直面である場合に比べて、被水防止カバーが破損するおそれを低減させることができる。
さらに、被水防止カバーの表壁面の傾斜面により、被水防止カバーの表壁面が鉛直面である場合に比べて、被水防止カバーの傾斜面よりも外側の周辺スペースを確保することができるため、電気部品に接続されている配線コード等を設置する十分な周辺スペースを確保することができる。
これらの結果、清掃等のメンテナンス時の機能部において、被水防止カバーが破損するおそれ、電気部品が被水するおそれ、被水防止カバーに被水した水分が飛び散るおそれをより一層低減させつつ、被水防止カバーの周囲の有効スペースを確保することができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記傾斜面は、凹凸状に形成された溝部を備えている。
このように構成された本発明においては、被水防止カバーの表壁面の傾斜面が凹凸状に形成された溝部を備えていることにより、飛散水勢を低下させ、かつ、傾斜面に被水した水分を凹凸状に形成された溝部内に流入させて、傾斜面の外部に速やかに排出することができる。
したがって、傾斜面に被水した水分が傾斜面に当たることによって周囲に飛び散ることを凹凸状の溝部により抑制することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記傾斜面は、上記電気部品に対して上方に離間して設けられている。
このように構成された本発明においては、被水防止カバーの表壁面が傾斜面により強度が高められているため、例えば、清掃時において、万一、清掃道具等が被水防止カバーの表壁面の傾斜面に対して誤って接触したり、押圧したりしたとしても、被水防止カバーの表壁面の傾斜面が破損するおそれを低減させることができる。
また、掃道具等が被水防止カバーの表壁面の傾斜面に対して誤って接触したり、押圧したりすることにより、万一、被水防止カバーの表壁面の傾斜面が凹んだとしても、被水防止カバーの表壁面の傾斜面が電気部品に対して上方に離間して設けられているため、凹んだ状態の被水防止カバーの表壁面の傾斜面が電気部品に接触するおそれを低減させることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記被水防止カバーの表壁面は、さらに、上記傾斜面の端部から水平方向に延びる平坦面を備えている。
このように構成された本発明においては、被水防止カバーの表壁面が、さらに、傾斜面の端部から水平方向に延びる平坦面を備えているため、傾斜面に被水した水分を傾斜面の端部から平坦面に誘導することができる。
したがって、被水防止カバーの表壁面の平坦面に誘導された水分を拭き取るだけで、被水防止カバーを清掃することができるため、被水防止カバーの傾斜面を過度に押圧することなく、電気部品を押圧するおそれを低減させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記溝部は、上記傾斜面よりも内側又は下側に設けられている。
このように構成された本発明においては、被水防止カバーの表壁面における溝部が傾斜面よりも内側又は下側に設けられているため、傾斜面に被水した水分を凹凸状に形成された溝部内に流入させて、傾斜面の外部に速やかに排出することができる。
したがって、傾斜面に被水した水分が傾斜面に当たることによって周囲に飛び散ることを凹凸状の溝部により抑制することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記平坦面は、上記傾斜面の後端部から後方に延びる後方平坦面を備えており、この後方平坦面は、凹凸状に形成された後方溝部を備えている。
このように構成された本発明においては、被水防止カバーの表壁面における平坦面が、傾斜面の後端部から後方に延びる後方平坦面を備えており、この後方平坦面が、凹凸状に形成された後方溝部を備えていることにより、万一、傾斜面に当たった被水が傾斜面に沿って上昇し、後方平坦面まで到達したとしても、後方平坦面の凹凸状の後方溝部に沿って被水防止カバーの外部に排出することができる。
したがって、後方平坦面まで到達した被水は凹凸状の後方溝部内に沿って流れるため、周囲に被水が飛び散ることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の水洗大便器によれば、清掃等のメンテナンス時の機能部における被水防止カバーが破損するおそれ、電気部品が被水するおそれ、被水防止カバーに被水した水分が飛び散るおそれをより一層低減させつつ、被水防止カバーの周囲の有効スペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態による水洗大便器の全体構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態による水洗大便器を右前方斜め上方から見た斜視図であり、便座ユニットを便器本体の上面に対して持ち上げ操作した状態を示す。
【
図3】
図2に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の洗浄水供給装置のA部を拡大した拡大斜視図である。
【
図4】
図3に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の上側フロートスイッチの上端部が被水防止カバーにより覆われる前の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器について説明する。
まず、
図1及び
図2により、本発明の一実施形態による水洗大便器の全体構成について概略的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による水洗大便器の全体構成図である。また、
図2は、本発明の一実施形態による水洗大便器を右前方斜め上方から見た斜視図である。
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、水道等の主給水源W0から供給された洗浄水が通水する給水路(主給水路2)と、陶器製の便器本体4と、洗浄水供給装置6と、を備えている。
【0015】
つぎに、
図1に示すように、便器本体4は、汚物を受けるボウル部8と、このボウル部8の上縁に形成されるリム部10と、ボウル部8の底部から延びる排水トラップ部12と、を備えている。
また、
図1及び
図2に示すように、洗浄水供給装置6は、詳細については後述するが、便器本体4のボウル部8よりも後方側に設けられており、主給水路2から供給された洗浄水を便器本体4に供給可能にする機能部である。この機能部は、より具体的には、電力により作動し、便器本体4のボウル部8への洗浄水の吐止水を制御する機能を含む。
【0016】
つぎに、
図1に示すように、便器本体4の左右一方側(便器本体4を前方側から見て右側)のリム部10の内部には、リム導水路14が形成されている。
このリム導水路14は、便器本体4の左右一方側(便器本体4を前方側から見て右側)のリム部10の内部において、便器本体4の後方側から前方に向かって延びた後、その途中から後方側に向かって屈曲する、いわゆる、Uターン形状となっている。また、このリム導水路14の下流端(下流側後端)には、リム吐水口14aが設けられている。
さらに、便器本体4のリム導水路14の上流側には、洗浄水供給装置6のリム側給水路2aが接続されている。このリム側給水路2aからリム吐水口14aに供給された洗浄水は、リム吐水口14aから後方に向けてボウル部8内に吐出され、リム吐水が行われるようになっている。
【0017】
つぎに、
図1に示すように、便器本体4のボウル部8の外側面から底部かけてジェット導水路16が形成されている。このジェット導水路16の下流側は、ボウル部8の底部における排水トラップ部12の入口部12aに向かって指向しており、ジェット導水路16の下流端には、ジェット吐水口16aが設けられている。
また、便器本体4のジェット導水路16の上流側には、洗浄水供給装置6のジェット側給水路2bが設けられている。このジェット側給水路2bから便器本体4のジェット導水路16に供給された洗浄水は、ジェット吐水口16aから排水トラップ部12に向けて吐出され、ジェット吐水が行われるようになっている。
ここで、
図1に示すように、洗浄水供給装置6のリム側給水路2aの上流側は、主給水路2の分岐部Bの切替弁18に接続されている。
一方、
図1に示すように、洗浄水供給装置6のジェット側給水路2bの上流側は、洗浄水供給装置6の貯水タンク20の下流側に設けられた洗浄水供給装置6の加圧ポンプ22に接続されている。
【0018】
つぎに、便器本体4の排水トラップ部12は、ボウル部8の底部に設けられた入口部12aと、この入口部12aから上昇する上昇管12bと、この上昇管12bから下降する下降管12cとからなり、上昇管12bと下降管12cとの間が頂部12dとなっている。
また、
図1に示すように、排水トラップ部12の下降管12cの出口部12eは、便器本体4の後方かつ下方に配置された排水ソケットSの入口部に接続されている。
さらに、
図1に示すように、排水ソケットSの後方側の出口部は、便器本体4の後方の壁(図示せず)側から延びる排水管Dの入口部に接続されている。これにより、便器本体4の排水トラップ部12の出口部12eから排出された排水が排水ソケットSから壁側の排水管Dに排出される、いわゆる、「壁側排水」の排水形態となっている。
なお、本実施形態の水洗大便器1においては、このような「壁側排水」の排水形態に限られず、便器本体4の排水トラップ部12の出口部12eから排出された排水が、排水ソケットSから便器本体4の底面の設置面(床面F)の下側の排水管に排出される、いわゆる、「床側排水」の排水形態に対しても適用可能である。
【0019】
また、
図2に示すように、便器本体4の上方には、便座ユニットU1が覆うように設けられている。この便座ユニットU1は、後方側に設けられた局部洗浄装置U2を含む。
また、便座ユニットU1においては、その後方側の局部洗浄装置U2を含む部分が洗浄水供給装置6の上方を覆うように配置されている。
さらに、便座ユニットU1及び局部洗浄装置U2を持ち上げ操作することにより、洗浄水供給装置6の少なくとも一部(詳細は後述する
図2に示すA部(洗浄水供給装置6の一部)が前方又は側方から露出可能となっている。
ちなみに、
図2に示す便座ユニットU1及び局部洗浄装置U2において、例えば、使用者が便器本体4の上面等を清掃したり、洗浄水供給装置6をメンテナンスしたりする際等に、便座ユニットU1を便器本体4の上面に対して持ち上げ操作した状態を示している。
【0020】
つぎに、
図1により、本実施形態による水洗大便器1の洗浄水供給装置6の各構成について概略的に説明する。
まず、
図1に示すように、洗浄水供給装置6は、主給水路2の上流側から下流側に向かって、止水栓24、分岐金具26、バルブユニット28、及び、切替弁18をそれぞれ備えている。
つぎに、バルブユニット28は、便器本体4に供給する洗浄水を給止水する給水機能部として機能し、具体的には、定流量弁30、ダイヤフラム式の主弁32、及び、ソレノイドバブル等の電磁弁34をそれぞれ備えている。
また、洗浄水供給装置6は、バルブユニット28の作動等を制御する電気部品であるコントローラ36を備えている。このコントローラ36は、バルブユニット28の開閉弁(電磁弁34)の開閉操作、切替弁18の切替操作、及び、加圧ポンプ22の回転数や作動時間等を制御する制御部として機能することができるようになっている。
【0021】
さらに、バルブユニット28の定流量弁30は、主給水路2における止水栓24から分岐金具26を通過した洗浄水について、所定の流量以下に絞るためのものである。
ちなみに、分岐金具26においては、局部洗浄装置U2に洗浄水を供給するための給水管(図示せず)が接続可能にもなっている。
さらに、バルブユニット28においては、電磁弁34がコントローラ36の制御により開弁操作されると、主弁32が開弁し、定流量弁30から主弁32を通過した洗浄水が、主給水路2の下流側の分岐部Bの切替弁18に供給されるようになっている。
ここで、切替弁18は、主給水路2の洗浄水をリム側給水路2aとタンク側給水路2cの双方に同じタイミングで洗浄水を供給可能であり、リム側とタンク側への給水量の割合を任意に変更することができるようになっている。
【0022】
つぎに、洗浄水供給装置6は、主給水路2から供給された洗浄水を便器本体4に供給可能にする給水機能部であるタンク装置Tを備えている。このタンク装置Tは、便器本体4の後方に連結されて主給水路2から供給された洗浄水を貯水する貯水タンク20と、この貯水タンク20内の洗浄水を便器本体4に圧送するポンプ(加圧ポンプ22)と、を備えている。
さらに、主給水路2の下流側の分岐部Bの下流側には、便器本体4のリム導水路14に連通するリム側給水路2a、及び、貯水タンク20に接続されるタンク側給水路2cがそれぞれ設けられている。
これにより、主給水源W0から主給水路2の分岐部Bに供給された洗浄水は、リム側給水路2aへのリム給水及びタンク側給水路2cへのタンク給水の少なくともいずれか一方の給水として利用されるようになっている。
【0023】
また、洗浄水供給装置6には、タンク側給水路2cの下流側から加圧ポンプ22まで延びるポンプ給水路2d、及び、加圧ポンプ22から下流側に延びるジェット側給水路2bがそれぞれ設けられている。
これらにより、本実施形態の水洗大便器1では、主給水路2から供給された水道直圧の洗浄水が、洗浄水供給装置6のリム側給水路2aから便器本体4のリム導水路14を経てリム吐水口14aに供給され、リム吐水口14aからの吐水(いわゆる、「リム吐水」)が可能になっている。
さらに、主給水路2から洗浄水供給装置6に供給された洗浄水は、洗浄水供給装置6のタンク側給水路2c、貯水タンク20、ポンプ給水路2d及び加圧ポンプ22を経た後、ジェット側給水路2bから便器本体4のジェット導水路16を経てジェット吐水口16aに供給され、ジェット吐水口16aからの吐水(いわゆる、「ジェット吐水」)が可能になっている。
すなわち、本実施形態の水洗大便器1は、主給水路2から供給された水道直圧の洗浄水によるリム吐水と、貯水タンク20から加圧ポンプ22により加圧された洗浄水によるジェット吐水とを併用することができる、いわゆる、ハイブリット式の水洗大便器1として機能するようになっている。
【0024】
つぎに、貯水タンク20の内部には、上側フロートスイッチ38及び下側フロートスイッチ40がそれぞれ配置されている。これらのフロートスイッチ38,40は、貯水タンク20内の水位を検出した情報をコントローラ36に送信することができるようになっており、コントローラ36が貯水タンク20から便器本体4への給止水を制御するための電気部品の一部となっている。
例えば、上側フロートスイッチ38は、貯水タンク20内の水位が所定の貯水水位に達するとオンに切り替わり、この上側フロートスイッチ38のオン状態をコントローラ36が検知して、電磁弁34を閉弁させるようになっている。
一方、下側フロートスイッチ40においては、貯水タンク20内の水位が、上側フロートスイッチ38が検知する所定の貯水水位よりも低い所定の水位まで低下するとオンに切り替わり、この下側フロートスイッチ40のオン状態をコントローラ36が検知して、加圧ポンプ22を停止させるようになっている。
また、加圧ポンプ22は、貯水タンク20に貯水された洗浄水をポンプ給水路2dに吸引し、このポンプ給水路2dから洗浄水をジェット側給水路2bに加圧することにより、ジェット吐水口16aから吐出させるためのものである。
【0025】
これらの構造により、通常の便器洗浄時においては、コントローラ36が、使用者による便器洗浄スイッチ(図示せず)の操作等を検知し、電磁弁34、切替弁18、加圧ポンプ22を順次作動させるようになっている。
これにより、リム吐水口14a及びジェット吐水口16aからの吐水が順次開始されて、ボウル部8内を洗浄した洗浄水は、ボウル部8内の汚物と共に排水トラップ部12から排出されるようになっている。
さらに、コントローラ36は、洗浄終了後、電磁弁34を開放し、切替弁18がタンク側給水路2c側に切り替えられ、主給水路2内の洗浄水が貯水タンク20に補給されるようになっている。
そして、貯水タンク20内の水位が上昇し、上側フロートスイッチ38が規定の貯水量を検出すると、コントローラ36が電磁弁34を閉弁させることにより、主弁32が主給水路2を閉鎖し、給水が停止されるようになっている。
【0026】
つぎに、
図3~
図5を参照して、
図2に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の洗浄水供給装置のA部の詳細について説明する。
図3は、
図2に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の洗浄水供給装置のA部を拡大した拡大斜視図である。
図3に示すように、洗浄水供給装置6の貯水タンク20の上面20aにおいて、その前方から見て前方かつ右側の角部付近には、被水防止カバー42が取り外し可能に取り付けられている。この被水防止カバー42は、洗浄水供給装置6の上側フロートスイッチ38の上端部38aの上方を覆うように配置されている。
また、
図4は、
図3に示す本発明の一実施形態による水洗大便器1の上側フロートスイッチ38の上端部38aが被水防止カバー42により覆われる前の状態を示す斜視図である。
図3及び
図4に示すように、貯水タンク20の上面20aの前端部には、フック部20bが設けられている。そして、被水防止カバー42の前端部には、貯水タンク20のフック部20bに係止可能な係止部42aが設けられている。
これらにより、被水防止カバー42を貯水タンク20の上面20aに取り付ける際には、まず、被水防止カバー42の係止部42aを貯水タンク20のフック部20bに引っ掛けて係止させる(
図4参照)。
その後、被水防止カバー42の全体を上側フロートスイッチ38の上端部38aの上方に向かって折り曲げた状態にすることにより、被水防止カバー42の全体が上側フロートスイッチ38の上端部38aの上方を覆う状態となる。
そして、貯水タンク20の上面20aのねじ穴20cと被水防止カバー42のねじ穴42bとを軸方向(鉛直方向)に一致させた状態で、両ねじ穴20c,42bをねじC1で締結することにより、被水防止カバー42が貯水タンク20の上面20aに固定されるようになっている(
図3参照)。
【0027】
つぎに、
図5は、
図3のV-V線に沿った断面図である。
図3~
図5に示すように、被水防止カバー42は、便座ユニットU1を持ち上げ操作することにより洗浄水供給装置6の少なくとも一部が前方又は側方から露出した際に露出可能な表壁面44を備えている。
また、表壁面44は、鉛直面V0(
図5参照)に対して傾斜する傾斜面46を備えている。
さらに、表壁面44は、傾斜面46の前端部46a及び後端部46bのそれぞれから水平前後方向に延びる前方平坦面48及び後方平坦面50をそれぞれ備えている。
【0028】
つぎに、
図5に示すように、傾斜面46及び平坦面48,50のそれぞれは、上側フロートスイッチ38の上端部38aに対して上方に離間して設けられている。
また、上側フロートスイッチ38の上端部38aの最上端面から傾斜面46までの鉛直方向の距離H1は、傾斜面46の前方から後方に向かう程大きくなるように設定されている。
また、
図3~
図5に示すように、傾斜面46は、凹凸状に形成された溝部(傾斜溝部52)を備えている。この傾斜溝部52は、左右に隣接する傾斜面46同士の間(内側)に設けられている共に、各傾斜面46よりも下側に設けられている。
さらに、
図4及び
図5に示すように、後方平坦面50は、凹凸状に形成された後方溝部54を備えている。
【0029】
つぎに、
図1~
図5を参照して、上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1の作用について説明する。
まず、本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、例えば、便器本体4の上面を清掃する際には、便器本体4及び機能部(洗浄水供給装置6)の上面を覆う便座ユニットU1を持ち上げ操作した状態で、液体洗剤等を便器本体4の上面に向かって噴霧した後、清掃道具等で拭き掃除を行うことになる。
この際、便器本体4の上面が露出している以外にも、便器本体4のボウル部8よりも後方に設けられた洗浄水供給装置6の少なくとも一部についても前方又は側方から露出した状態となっている。これにより、便器本体4の上面に向かって噴霧された液体洗剤や便器本体4の上面に水拭きされる水分等が洗浄水供給装置6の露出面に達すると、洗浄水供給装置6が被水してしまうおそれがある。
しかしながら、本実施形態の水洗大便器1によれば、洗浄水供給装置6を制御する電気部品である上側フロートスイッチ38の上端部38aの上方が被水防止カバー42により覆われている。これにより、便器本体4の清掃時において、万一、洗浄水供給装置6の露出面が液体洗剤や清掃水等により被水したとしても、上側フロートスイッチ38の上端部38aやその周辺の電気配線等が被水することを防ぐことができる。
また、便座ユニットU1を持ち上げ操作することにより、洗浄水供給装置6の少なくとも一部が前方又は側方から露出した際に露出している被水防止カバー42の表壁面44が鉛直面V0に対して傾斜する傾斜面46を備えている。これにより、万一、被水防止カバー42の表壁面44が液体洗剤や清掃水等により被水したとしても、このような被水を傾斜面46に沿って上方から下方に誘導して被水防止カバー42の外部へ誘導することができる。
したがって、被水防止カバー42の表壁面44が鉛直面V0である場合に比べて、傾斜面46に被水した水分が周囲に飛び散ることを抑制することができると共に、傾斜面46上に水分が滞留することを抑制することができる。
また、被水防止カバー42の表壁面44の傾斜面46により、被水防止カバー42の表壁面44が鉛直面V0である場合に比べて、被水防止カバー42自体の剛性等の強度を適度に高めることができる。
これにより、清掃等のメンテナンス時において、便座ユニットU1を持ち上げ操作することにより洗浄水供給装置6の少なくとも一部が前方又は側方から露出した状態で、万一、清掃用具等が洗浄水供給装置6の前方又は側方から被水防止カバー42の表壁面44の傾斜面46等に接触したり、押圧したりしたとしても、被水防止カバー42の表壁面44が鉛直面V0である場合に比べて、被水防止カバー42が破損するおそれを低減させることができる。
さらに、被水防止カバー42の表壁面44の傾斜面46により、被水防止カバー42の表壁面44が鉛直面V0である場合に比べて、被水防止カバー42の傾斜面46よりも外側の周辺スペースを確保することができる。
これにより、上側フロートスイッチ38に接続されている配線コード等を設置する十分な周辺スペースを確保することができる。
これらの結果、清掃等のメンテナンス時の洗浄水供給装置6において、被水防止カバー42が破損するおそれ、上側フロートスイッチ38の上端部38aが被水するおそれ、被水防止カバー42に被水した水分が飛び散るおそれをより一層低減させつつ、被水防止カバー42の周囲の有効スペースを確保することができる。
【0030】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、被水防止カバー42の表壁面44の傾斜面46が凹凸状に形成された溝部(傾斜溝部52)を備えている。これにより、飛散水勢を低下させ、かつ、傾斜面46に被水した水分を凹凸状に形成された溝部52内に流入させて、傾斜面の外部に速やかに排出することができる。
したがって、傾斜面46に被水した水分が傾斜面46に当たることによって周囲に飛び散ることを凹凸状の溝部52により抑制することができる。
【0031】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、被水防止カバー42の表壁面44が傾斜面46により強度を高めることができる。これにより、例えば、清掃時において、万一、清掃道具等が被水防止カバー42の表壁面44の傾斜面46に対して誤って接触したり、押圧したりしたとしても、被水防止カバー42の表壁面44の傾斜面46が破損するおそれを低減させることができる。
また、掃道具等が被水防止カバー42の表壁面44の傾斜面46に対して誤って接触したり、押圧したりすることにより、万一、被水防止カバー42の表壁面44の傾斜面46が凹んだとしても、被水防止カバー42の表壁面44の傾斜面46が上側フロートスイッチ38の上端部38aに対して上方に離間して設けられている。
これにより、凹んだ状態の被水防止カバー42の表壁面44の傾斜面46が上側フロートスイッチ38の上端部38aに接触するおそれを低減させることができる。
【0032】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、被水防止カバー42の表壁面44が、傾斜面46の前端部46a及び後端部46bのそれぞれから水平前後方向に延びる前方平坦面48及び後方平坦面50をそれぞれ備えている。
これにより、傾斜面46に被水して傾斜面46の前端部46aまで下降した水分を前方平坦面48に誘導することができ、或いは、傾斜面46に被水して傾斜面46の後端部46bまで上昇した水分を傾斜面46の後端部46bから後方平坦面50に誘導することができる。
したがって、被水防止カバー42の表壁面44の平坦面48,50に誘導された水分を拭き取るだけで、被水防止カバー42を清掃することができる。
これにより、被水防止カバー42の傾斜面46を過度に押圧することなく、上側フロートスイッチ38の上端部38aを押圧するおそれを低減させることができる。
【0033】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、被水防止カバー42の表壁面44における傾斜溝部52が、左右に隣接する傾斜面46同士の間(内側)に設けられている共に、各傾斜面46よりも下側に設けられている。
これにより、傾斜面46に被水した水分を凹凸状に形成された傾斜溝部52内に流入させて、傾斜面46の外部に速やかに排出することができる。
したがって、傾斜面46に被水した水分が傾斜面46に当たることによって周囲に飛び散ることを凹凸状の傾斜溝部52により抑制することができる。
【0034】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、被水防止カバー42の表壁面44における平坦面48,50が、傾斜面46の後端部46bから後方に延びる後方平坦面50を備えている。そして、この後方平坦面50が、凹凸状に形成された後方溝部54を備えている。
これらにより、万一、傾斜面46に当たった被水が傾斜面46に沿って上昇し、後方平坦面50まで到達したとしても、後方平坦面50の凹凸状の後方溝部54に沿って被水防止カバー42の外部に排出することができる。
したがって、後方平坦面50まで到達した被水は凹凸状の後方溝部54内に沿って流れるため、周囲に被水が飛び散ることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 本発明の一実施形態による水洗大便器(ハイブリット式の水洗大便器)
2 主給水路
2a リム側給水路
2b ジェット側給水路
2c タンク側給水路
2d ポンプ給水路
4 便器本体
6 洗浄水供給装置(機能部)
8 ボウル部
10 リム部
12 排水トラップ部
12a 排水トラップ部の入口部
12b 排水トラップ部の上昇管
12c 排水トラップ部の下降管
12d 排水トラップ部の頂部
12e 排水トラップ部の出口部
14 リム導水路
14a リム吐水口
16 ジェット導水路
16a ジェット口
18 切替弁
20 貯水タンク
20a 貯水タンクの上面
20b フック部
20c ねじ穴
22 加圧ポンプ
24 止水栓
26 分岐金具
26a 停電切替弁
28 バルブユニット(給水機能部)
30 定流量弁
32 ダイヤフラム式の主弁
34 電磁弁
36 コントローラ(電気部品)
38 上側フロートスイッチ(電気部品)
38a 上側フロートスイッチの上端部(電気部品)
40 下側フロートスイッチ
42 被水防止カバー
42a 係止部
42b ねじ穴
44 表壁面
46 傾斜面
46a 傾斜面の前端部
46b 傾斜面の後端部
48 前方平坦面(平坦面)
50 後方平坦面(平坦面)
52 傾斜溝部
54 後方溝部
B 分岐部
C1 ねじ
D 排水管
F 床面
H1 上側フロートスイッチの上端部の最上端面から傾斜面までの鉛直方向の距離
S 排水ソケット
T タンク装置(洗浄水供給装置)
U1 便座ユニット
U2 局部洗浄装置
V0 鉛直面
W0 主給水源