(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009424
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】印字画像検査装置、及び印字画像検査方法
(51)【国際特許分類】
B41J 29/393 20060101AFI20230113BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20230113BHJP
B41J 2/195 20060101ALI20230113BHJP
B41J 3/407 20060101ALN20230113BHJP
【FI】
B41J29/393 105
G01N21/88 Z
B41J2/195
B41J3/407
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112686
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】會田 航平
(72)【発明者】
【氏名】前島 倫子
(72)【発明者】
【氏名】荻野 雅彦
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
2G051
【Fターム(参考)】
2C056EB27
2C056FA05
2C056FC02
2C061AQ05
2C061HK23
2C061KK26
2C061KK28
2C061KK35
2G051AA34
2G051AB11
2G051CA04
2G051DA06
2G051DA15
2G051EA12
2G051EA17
2G051EB01
2G051EC06
2G051ED04
2G051ED11
2G051ED21
(57)【要約】
【課題】環境変化に基づく色情報が、多様で簡便な検査手法により検査できる印字画像検査装置を提供する。
【解決手段】ドットパターンが配列された認識対象を撮像して得られた画像から、画像のドット部分の色情報を取得し、この色情報に基づいた判定結果を出力する印字画像検査装置であって、ドットパターンを含む認識対象を撮像して得られた画像を取り込む画像入力部と、予め規定した基準のドットパターンとの一致性を判定するドットパターン認識部と、画像のドット部分の画素データから色情報を取得する色情報取得部と、色情報データに対して、予め設定されたインクの基準色情報データとの相関性を算出する相関性計算部と、相関性計算部の相関性から、認識対象のインク状態を判定するインク状態判定部を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドットパターンが配列された認識対象を撮像して得られた画像から、前記画像のドット部分の色情報を取得し、この色情報に基づいた判定結果を出力する印字画像検査装置であって、
前記ドットパターンを含む認識対象を撮像して得られた前記画像を取り込む画像入力部と、
予め規定した基準の前記ドットパターンとの一致性を判定するドットパターン認識部と、
前記画像のドット部分の画素データから色情報を取得する色情報取得部と、
前記色情報の色情報データに対して、予め設定されたインクの基準色情報データとの相関値を算出する相関値計算部と、
前記相関値計算部の前記相関値から、前記認識対象のインクの状態を判定するインク状態判定部とを有する
ことを特徴とする印字画像検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印字画像検査装置であって、
前記ドットパターンは、連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置により形成されたドットパターンである
ことを特徴とする印字画像検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印字画像検査装置であって、
前記ドットパターンは、環境変化に応じて色変化する機能性インクにより形成されたドットパターンである
ことを特徴とする印字画像検査装置。
【請求項4】
請求項2に記載の印字画像検査装置であって、
予め規定された基準の前記ドットパターンのドットは、ドットの直径が100nm~1000nmである
ことを特徴とする印字画像検査装置。
【請求項5】
請求項2に記載の印字画像検査装置であって、
前記ドットパターン認識部は、前記ドットパターンが配列された前記認識対象を撮影する画像撮影装置のレンズ、解像度、焦点距離制御方法の情報を予め記憶し、この記憶された情報から予め規定する前記ドットパターンのドットの面積を認識する
ことを特徴とする印字画像検査装置。
【請求項6】
請求項2に記載の印字画像検査装置であって、
予め規定する基準の前記ドットパターンにおいて、ドットの真円度が0.2以上である
ことを特徴とする印字画像検査装置。
【請求項7】
請求項2に記載の印字画像検査装置であって、
予め規定する基準の前記ドットパターンにおいて、2つのドットの中心間の距離が前記ドットの直径の1~3倍である
ことを特徴とする印字画像検査装置。
【請求項8】
請求項2に記載の印字画像検査装置であって、
予め規定する基準の前記ドットパターンにおいて、少なくとも3個以上のドットが1軸方向に対して周期性を備えている
ことを特徴とする印字画像検査装置。
【請求項9】
請求項2に記載の印字画像検査装置であって、
予め規定する基準の前記ドットパターンにおいて、ドットの数を所定の数に規定する
ことを特徴とする印字画像検査装置。
【請求項10】
請求項2に記載の印字画像検査装置であって、
予め規定する基準の前記ドットパターンにおいて、前記ドットパターンの配列情報を所定の配列情報に規定する
ことを特徴とする印字画像検査装置。
【請求項11】
請求項2に記載の印字画像検査装置であって、
前記色情報取得部は、前記画像の前記ドット部分の画素データから前記色情報を取得することに加え、前記画像の背景部分の画素データから前記色情報を取得し、
前記相関値計算部は、インクの前記色情報データに加え、予め設定された前記ドットパターンの背景色の前記色情報データとの前記相関値を算出する
ことを特徴とする印字画像検査装置。
【請求項12】
請求項2に記載の印字画像検査装置であって、
前記ドットパターンを複数回検査する場合、検査する際に得られた画像データ、画像検査データ、判定データのいずれかのデータを共有し、2回目以降の検査方法、検査結果、判定結果に活用する
ことを特徴とする印字画像検査装置。
【請求項13】
ドットパターンが配列された認識対象を撮像して得られた画像から、前記画像のドット部分の色情報を取得し、この色情報に基づいた判定結果を出力する印字画像検査方法であって、
前記ドットパターンを含む認識対象を撮像して得られた前記画像を取り込む画像入力ステップと、
予め規定した基準の前記ドットパターンとの一致性を判定するドットパターン認識ステップと、
前記画像のドット部分の画素データから色情報を取得する色情報取得ステップと、
前記色情報の色情報データに対して、予め設定されたインクの基準色情報データとの相関値を算出する相関値計算ステップと、
前記相関値計算ステップで求めた前記相関値から、前記認識対象のインクの状態を判定するインク状態判定ステップを実行する
ことを特徴とする印字画像検査方法。
【請求項14】
請求項13に記載の印字画像検査方法であって、
画像検査を実施することで前記ドットパターンの配列情報、及び前記インクの前記色情報データを記憶し、
再び前記画像検査を実施する際に、前記相関値計算ステップにおける予め設定された前記インクの前記色情報データとして、前の前記ドットパターンの配列情報、及び前記インクの前記色情報データとの前記相関値を算出する
ことを特徴とする印字画像検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像検査装置、及び画像検査方法に係り、特にインクジェット記録装置によって印字された画像を検査する印字画像検査装置、及び印字画像検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品に付与する賞味期限、使用期限、製造番号等の印刷のため、食品、電子部品等の幅広い分野で、連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置が用いられている。
【0003】
一般的な連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置は、本体にインクを貯留するインク容器を設けており、そのインク容器のインクをインク供給ポンプによって印字ヘッドへ供給している。
【0004】
印字ヘッドに供給されたインクは、インクノズルから連続的に噴出され、インク液滴化される。インク液滴のうち、印字に使用するインク液滴には、帯電・偏向処理を行い、印字対象物の所望の印字位置へ飛翔させて文字や記号を形成し、印字に使用しないインク液滴には、帯電・偏向処理を行わず、ガターで捕集してインク回収ポンプによりインク容器へ戻す構成とされている。
【0005】
このような連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置は、印刷速度が高速であることから、大量生産品の生産工程に適用しやすい。一方で、連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置による印刷は、印刷速度が高速であることから、印刷が正しく行われているかどうかを検査する場合も、高速に実施することが求められる。そのため、賞味期限、使用期限、製造番号等の印字文字が、設定したデータ通りに印字されているかどうかを検査する印字検査装置が用いられている。
【0006】
連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置による印刷では、ノズルより吐出したインク滴が認識対象物(印刷面)に着滴した際にドットを形成する。このドットを設定したパターン状に配列することにより、印字文字や記号を形成する。このとき、高速での印刷に対応するため、微細なドットを離散的に配列してドットパターンを形成することが多い。
【0007】
印字検査装置では、これらのドットパターンからなる印字文字が正常なドットパターンを形成しているかを高速で検査することが求められる。印字検査装置は、ドットパターンからなる印字文字が配列された認識対象を撮像し、得られた画像について、各ドット位置が正常に印字されているかどうかを画像処理により判定している。
【0008】
画像処理方法として、例えば、予め正常に印字文字を形成したドットパターンの画像データと、実際に印字したドットパターンの画像データの一致度合により判定する手法が用いられている。例えば、特開2008-89379号公報(特許文献1)には、不良印字を撮像手段によって予め画像として取り込み、印字対象物が不良印字として認識したか否かを検査し、その検査結果を記録する印字検査装置が開示されている。また、特開2011-16261号公報(特許文献2)には、インクジェットプリンタのインク滴の着滴位置にずれが生じたかどうかを判断するインク滴の着滴位置の精度検査方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-89379号公報
【特許文献2】特開2011-16261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、近年では、印字用インクに印字目的(例えば、文字としての識別目的)とは異なる機能を持たせ、大量生産品の品質管理に用いることが提案されている。例えば、機能性インクを使用して、製品が経時的な環境下で、熱による悪影響を受けたかどうかを管理することが考えられる。また、この他に長期に亘る紫外線の悪影響を受けたかどうかを管理することが考えられる。
【0011】
このような機能性を有するインクとしては、熱履歴に応じて色変化する示温インクや、紫外線により発光する蛍光インクなど、色が変化するインクが良く使用されている。これらの機能性インクは、何らかの環境変化に応じて色相や色調が変化するため、製品に印刷したインクの色相や色調(以下、色情報と表記する場合もある。)を識別することで、製品が熱や紫外線の悪影響(環境変化の影響)を受けたことを知ることができる。
【0012】
したがって、機能性インクを使用して印刷した場合では、印字検査に加えてドットの色情報を検査することが必要である。機能性インクの場合、製品に印刷されたドットの色情報により、製品が何らかの環境変化に晒されたかどうかを判定することが可能である。
【0013】
印字検査は、上述したように製造工程に良く用いられるのに対し、環境変化に基づく色情報の検査は、流通工程や消費工程等の経時的な環境下で特に求められる。そのため、多様で簡便な検査手法により検査できることが望ましい。しかしながら、特許文献1や特許文献2においては、このような課題について考慮されていなく、ましてやその課題に対する解決策についての開示や示唆も認められない。
【0014】
本発明の目的は、、環境変化に基づく色情報が、多様で簡便な検査手法により検査できる印字画像検査装置、及び印字画像検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、ドットパターンが配列された認識対象を撮像して得られた画像から、画像のドット部分の色情報を取得し、この色情報に基づいた判定結果を出力する印字画像検査装置であって、ドットパターンを含む認識対象を撮像して得られた画像を取り込む画像入力部と、予め規定した基準のドットパターンとの一致性を判定するドットパターン認識部と、画像のドット部分の画素データから色情報を取得する色情報取得部と、色情報データに対して、予め設定されたインクの基準色情報データとの相関性を算出する相関値計算部と、相関値計算部の相関値から、認識対象のインク状態を判定するインク状態判定部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、環境変化に基づく色情報が、多様で簡便な検査手法により検査できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】インクジェット記録装置の大略の構成を示す構成図である。
【
図2】物品の配送ルートとこれに沿った印字画像検査装置と管理サーバのネットワークを説明する説明図である。
【
図3】本発明の実施形態になる印字画像検査装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3に示す印字画像検査装置の処理手順を説明するフローチャートである。
【
図5A】印字された印字ドットパターンの熱を加える前の状態を説明する説明図である。
【
図5B】印字された印字ドットパターンの熱を加えた後の状態を説明する説明図である。
【
図6】ドットパターンの第1の認識方法を説明する説明図である。
【
図7】ドットパターンの第2の認識方法を説明する説明図である。
【
図8】ドットパターンの第3の認識方法を説明する説明図である。
【
図9】ドットパターンの第4の認識方法を説明する説明図である。
【
図10】印字ドットの色の検査方法を説明する説明図である。
【
図11】実際の印字ドットの色の検査を行った状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである
先ず、一般的な連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置の構成と動作について簡単に説明する
図1には、インクジェット記録装置の構成を模式的に示している。
図1において、インク容器10に貯留されているインク液11は、インク供給ポンプ12で加圧されてインクノズル13に供給される。インクノズル13に設置された圧電素子14に、周期的に電圧を加えることで、インクノズル13内のインクが励振される。励振されたインクは、インクノズル13よりインク柱15として噴出された後にインク液滴となる。ここで、本実施形態では、機能性インクとして「示温インク」を使用している。示温ンインクは、温度の影響によって色情報が変化するインクである。
【0019】
印字に使用するインクに対しては、インクの液滴化と同時に、帯電電極16によってインク液滴への帯電が行われる。帯電されたインク液滴17は、偏向電極正極18、及び偏向電極負極19の間の偏向空間に生じる電場によって偏向された後に印字対象物20に着滴する。また、印字に使用しないインク液滴17は帯電されず、偏向が行われないためガター21にて回収される。
【0020】
このようなインクジェット記録装置で印字された物品(製品)は、
図2に示すような流通ルートで顧客まで届けられるが、この流通ルートを品質管理システムで管理している。
【0021】
品質管理システムは、示温インクを印字するインクジェット記録装置(IJP)、物品に印字されたドットパターンの印字情報、及び示温インクの色情報を取得する印字画像検査装置(IMG)(ここでは、印字検査装置(PID)及びスマートフォン(SMT))、及び管理サーバ(MSV)を備えている。インクジェット記録装置(IJP)、印字検査装置(PID)、スマートフォン(SMT)、及び管理サーバ(MSV)は、ネットワーク(NET)を介して通信可能に接続されている。
【0022】
例えば、物品を飲料用のペットボトルとした場合、流通ルートは、飲料用のペットボトルを製造する製造工場、ペットボトルを保管する保管倉庫、ペットボトルを出荷する出荷場、ペットボトルを搬送する搬送車、ペットボトルを販売する店舗(コンビニ等)、及びペットボトルを購入する顧客となる。
【0023】
製造工場、出荷場からは、印字検査装置(PID)によって、印字情報が管理サーバ(MSV)に送られ、店舗、顧客からは、スマートフォン(SMT)によって、色情報が管理サーバ(MSV)に送られている。管理サーバ(MSV)は、送られてきた印字情報、色情報等の管理データを収集する。各場所で、操作者は印字画像検査装置(印字検査装置あるいはスマートフォン)を用いて品質管理データの収集を実行する。
【0024】
管理サーバ(MSV)においては、(1)ドットパターン認識情報、(2)インク状態判定情報、(3)製品情報、(4)生産情報、(5)読取情報、(6)品質情報、(7)流通情報、(8)流通管理情報等がファイルとして管理されている。
【0025】
操作者は、示温インクの色調や色相を確認することで、各過程の温度管理状況や物品の温度負荷状態を視覚的に確認することができる。また、操作者の視覚的な確認のみならず、色調/色相として数値情報を得ることができる。
【0026】
更に操作者は、出荷、搬送、保管など各過程において、ペットボトルとその示温インクの光学的な状態、及びその画像や読取り場所、時間等の品質管理情報を、印字画像検査装置(IMG)を用いて管理サーバ(MSV)に送信する。
【0027】
店舗において操作者は、搬送されたペットボトルについて、示温インクの色相/色調状態を確認することで、製造工場の出荷時から搬送等の過程での温度管理状況や温度負荷状態を視覚的に確認することができる。更に、印字画像検査装置(IMG)を介して管理サーバ(MSV)に接続して、ペットボトルの納品時までの品質管理情報などの情報を確認することができる。
【0028】
印字画像検査装置(IMG)は、示温インクの色情報に基づき、品質が保持されているか否かを判定し、その判定結果を液晶画面等の出力部に表示することができる。したがって、操作者はその結果を容易に確認することができる。尚、その判定結果を含む品質管理データは、管理サーバ(MSV)に送信されて、管理サーバ(MSV)は品質管理情報として記憶する。
【0029】
本実施形態では、品質が保持されているか否かの品質判定を印字画像検査装置(IMG)の側で処理している。これは、多数の物品を対象とするシステムでは、判定処理等の演算処理の集中を分散させるためである。管理サーバ(MCV)の処理能力が高ければ、品質判定を管理サーバ(MSV)の側で実行しても良いことはいうまでもない。
【0030】
次に、本発明の実施形態になるインクジェット記録システムにおける画像検査手法について説明する。
図3は、ドットパターン、及び色情報を検査する印字画像検査装置(IMG)の構成を示している。
【0031】
印字画像検査装置(IMG)は、上述したように、印字検査装置(PID)及びスマートフォン(SMT)を含むものであるが、特に色情報の検査を行う場合はスマートフォン(SMT)で行われる。尚、ここではスマートフォン(SMT)を使用しているが、店舗等では専用の小型携帯端末を使用しても良い。特に、スマートフォン(SMT)や小型携帯端末からなる印字画像検査装置(IMG)を使用することによって、環境変化に基づく色情報を、多様で簡便に検査できるようになる。
【0032】
この印字画像検査装置(IMG)は、少なくとも、ドットパターンを含む認識対象を撮像して得られた画像を取り込む画像入力部と、予め規定した基準のドットパターンとの一致性を判定するドットパターン認識部と、画像のドット部分の画素データから色情報を取得する色情報取得部と、色情報データに対して、予め設定されたインクの基準色情報データとの相関性を算出する相関性計算部と、相関性計算部の相関性から、認識対象のインク状態を判定するインク状態判定部とを有することを特徴としている。
【0033】
次に上述した構成要素の具体的な機能と作用について説明する。
図3における印字画像検査装置(IMG)は、入力部30、画像入力部31、出力部32、通信部33、処理部34、記憶部35等を備えている。処理部34で演算された演算結果は、記憶部35で記憶される。
【0034】
入力部30は、操作者の指示を受け付ける部分であり、ボタン、タッチパネルなどで構成されている。
【0035】
画像入力部31であるカメラ等からなる画像撮影装置によって、物品に印字されたドットパターンを含む画像が撮影されると、ドットパターン認識部34Aにおいて、ドットパターンが存在するかが判定され、記憶部35のドットパターン記憶部35Aにドットパターン情報として記録される。
【0036】
出力部32は、操作者への指示情報、読取画像、検査結果などを出力するものであり、ディスプレイや通信装置で構成されている。この構成は標準的なものであり、入力部30、画像入力装置31、出力部32のいずれか、またはすべてが印字画像検査装置(IMG)の外部に接続される構成でも良い。
【0037】
通信部33は、読取画像、検査結果、物品情報等を、ネットワーク(NET)を介して管理サーバ(MSV)に送信する機能を備えている。。また、管理サーバ(MSV)から、ドットパターン認識や相関値計算やインク状態判定に必要な情報を受信することも可能である。操作者へ提示しない品質情報などは、出力部32に出力せず、記憶部35に記憶し、通信部33を介して管理サーバ(MSV)に送信することができる。
【0038】
印字画像検査装置(IMG)の主たる機能は、処理部34と記憶部35によって実行されるが、先ず処理部34について説明する。
【0039】
処理部34は、入力部30、画像入力部31から入力されるデータを処理し、その結果を出力部32に出力、または記憶部35に記録するものであり、以下の演算部により構成されている。
【0040】
ドットパターン認識部34Aは、ドットパターン認識方法として指定した手法によって、画像入力部31より得られた画像中のドットパターンを認識し、ドットパターン記憶部35Aにドットパターンの画像イメージを記録する機能を有している。このドットパターン認識方法は、後述する手法によって実施することができる。
【0041】
例えば、「ドットサイズの規定」、「カメラのオートフォーカスと画像スケールの規定」、「ドット真円度の規定」、「ドットサイズとドット間距離の規定」、「ドットの周期性の規定」、「ドットの数の規定」、「指定したドットパターンとの一致性による規定」等の手法により認識可能である。また、これらの手法を組み合わせることで、高確率でのドットパターンの認識が可能になる。
【0042】
色情報検査部34Bは、色情報検査方法として指定した手法にて、ドットパターン認識部34Aより得られた画像イメージ中のドットパターン内の色情報データを取得し、色情報記憶部35Bに記録する機能を有している。
【0043】
後述するように、ドットパターン内の色情報データの取得箇所は特に限定されず、数値としては、L*a*b*やL*C*h*などのCIE色空間の他に、RGB色空間、HSV色空間、マンセル色空間などが知られている。
【0044】
相関値計算部34Cは、色情報検査部34Bより得られたドットパターン内の色情報データについて、予め設定された示温インクの基準色情報データとの相関性を算出し、それにより得られた示温インクの品質データを相関値情報記憶部35Cに記録する機能を有している。後述するように、予め設定されたインクの基準色情報データとの相関値の算出方法については、特に限定されない。尚、相関値の算出の際に、ドットパターン近傍の背景の色情報データを使用しても良い。
【0045】
インク状態判定部34Dは、相関値計算部34Cより得られたインクの品質データについて、予め規定した判定基準を用いて判定し、その結果データをインク状態記憶部35Dに記録する機能を有している。
【0046】
後述するように、予め規定する判定基準は、特に限定されない。例えば、インクの品質データが一定の範囲内にあれば正常、一定の範囲を超えると異常と判定すること等が可能である。また、判定基準に相関値計算部34Cより得られたインクの品質データ以外の基準を加えることも可能である。
【0047】
例えば、後述する読取データ取得部34Eによって抽出される、印字情報(ロット番号や製造年月日など)、時間情報、位置情報、気温や湿度などの環境情報などを判定基準に加えることなども可能である。
【0048】
読取データ取得部34Eは、ドットパターン認識部で得られた画像イメージから抽出される品質データ以外の情報を、読取データ記憶部35Eに記録する機能を備えている。取得する情報は、特に限定されず、一例として、印字情報(ロット番号や製造年月日など)、時間情報、位置情報、気温や湿度などの環境情報などが挙げられる。
【0049】
これらの情報の取得方法も特に限定されず、印字情報であれば、通常の印字検査方法のように、ドットパターンを画像認識により取得することなどが挙げられる。場所等は、位置情報を予め入力しても良いし、画像取得装置(IMG)にGPS(Global Positioning System)機能を持たせ、画像取得時に取得するようにしても良い。気温等は、温度計を用いて画像取得時の温度を測定しても良いし、天気予報の気温情報を記録しても良い。
【0050】
出力制御部34Fは、記憶部35に記録されたデータを、出力部32、または通信部33へ出力する機能を備えている。出力先が画面等のときは、読み取り操作が行われる都度、結果が出力されるのが好ましい。出力先が管理サーバ(MSV)等の通信先のときは、出力処理は読み取り操作が行われる都度でも良いし、何回かのデータをまとめる、予め定めた時間毎にまとめるなどして処理しても良い。
【0051】
次に、記憶部35について説明する。記憶部35は、各種の演算データ等を記憶する部分であり、以下の記憶部等により構成されている。これらの記憶部は、RAMやEEROM等から構成されている。
【0052】
ドットパターン記憶部35Aは、画像入力装置から入力され、上述したドットパターン認識部34Aによって抽出される、ドットパターンの画像イメージを記憶する機能を備えている。
【0053】
色情報記憶部35Bは、ドットパターン記憶部35Aに記録された画像イメージから、上述したる色情報検査部34Bによって抽出される、ドットパターン内の色情報データを記憶する機能を備えている。
【0054】
相関値情報記憶部35Cは、色情報記憶部35Bに記録された色情報データから、上述した相関値計算部34Cによって抽出される、ドットパターン内の色情報データから計算されたインクの品質データを記憶する機能を備えている。
【0055】
インク状態記憶部35Dは、相関値情報記憶部35Cに記録されたインクの品質データから、上述したインク状態判定部34Dによって抽出される、インクの品質データを判定した結果データを記憶する機能を備えている。
【0056】
読取データ記憶部35Eは、上述した読取データ取得部34Eによって抽出されるデータを記憶する機能を備えている。この読取データは、ドットパターン内の色情報データから抽出される品質データ以外の情報を記録する機能を備えており、一例として、印字情報(ロット番号や製造年月日など)、時間情報、位置情報、気温や湿度などの環境情報などが挙げられる。
【0057】
次に、印字画像検査装置(IMG)が行う処理のフローの一例を、
図4を用いて説明する。
【0058】
≪ステップS10≫
ステップS10においては、ドットパターン認識部34Aからの指令に基づいて、画像入力部31から画像データが入力される。更に、この画像データはドットパターン記憶部35Aに記憶される。この処理が終了するとステップS11、S12に移行する。
【0059】
≪ステップS11≫、≪ステップS12≫
ステップS11、ステップS12においては、ドットパターン認識部34Aにおいて、ドットパターンの認識を行い、更にドットパターンの有無を判定し、ドットパターンが有りの場合のみ、これ以降の処理を実行する。
【0060】
ドットパターンが無い場合、画像の記録を行わず、ステップS10に戻って再び画像入力部31から画像データの入力を実行する。この処理が終了するとステップS13、S14に移行する。
【0061】
≪ステップS13≫、≪ステップS14≫
ステップS13、ステップS14においては、ドットパターンが存在する場合、ドットパターン記憶部35Aに記録された画像イメージを用い、色情報検査部34Bにおいて、ドットの色情報データを取得する。更に、相関値計算部34Cにおいてインクの品質データに変換する。このインクの品質データを用い、インク状態判定部34Dにおいて、インク品質状態を判定する。インク状態は「異常」、「正常」、「正常/異常の範囲外」の3通りに判定される。この処理が終了するとステップS15~S18に移行する。
【0062】
≪ステップS15≫~≪ステップS18≫
ステップS15、ステップS18においては、インクが異常な状態であれば「異常」である旨を出力部32において表示し、印字情報、読取時刻、読取場所、判定結果などのデータを、出力部32や通信部33を介して管理サーバ(MSV)に送信して処理を終了する。
【0063】
また、ステップS16、ステップS18においては、インクが正常な状態であれば、「正常」である旨を出力部32に表示し、印字情報、読取時刻、読取場所、判定結果などのデータを、出力部32や通信部33を介して管理サーバに送信して処理を終了する。
【0064】
更に、ステップS17、ステップS18においては、インクが正常でも異常でも無い状態であれば、「認識不可」である旨を出力部32に表示し、印字情報、読取時刻、読取場所、判定結果などのデータを、出力部32や通信部33を介して管理サーバ(MSV)に送信し、処理を終了する。
【0065】
以上のような処理を実行することで、印字画像検査装置(IMG)になる印字検査装置(PID)及びスマートフォン(SMT)によって、工場、出荷場、店舗、及び顧客等からアクセスできるので、環境変化に基づく色情報が、多様で簡便な検査手法により検査できるようになる。尚、スマートフォン(SMT)を印字画像検査装置(IMG)とすれば、いかなる時、いかなる場所で簡便に検査を行うことができる。
【0066】
以下では、
図3に示す印字画像検査装置(IMG)を構成する、主たる構成要素の機能や動作について説明を行うが、この説明の前に、先ず機能性インクについて説明する。
【0067】
<機能性インク>
本実施形態に係る機能性インクとしては、何らかの環境変化に応じて色が変化する機序(メカニズム)を有し、連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置で印字可能なインクとして好ましく用いることができる。例えば、温度、湿度、振動、酸素等のガス濃度、及び気圧などの物品の周囲の環境状態によって色が変化する機能性インクが知られている。
【0068】
また、表示する色により物品の周囲の環境状態を示すものを用いることができる。具体的には、熱履歴に応じて色変化する示温インクや、紫外線により発光する蛍光インク等が知られている。更に、機能性インクの変色機序には可逆式と不可逆式がある。可逆式は、温度の上下に応じて何回でも色が変化するものであり、不可逆式は、色が特定の温度で変化すると元に戻らないものである。
【0069】
本実施形態のように、品質管理を目的とする場合、色がいったん変わると元に戻らない不可逆特性を有するものを用いると、流通径路等で物品の周囲の環境状態が変化して元に戻ったとしても、環境状態が管理環境を逸脱したこと知ることができる。
【0070】
また、インクの色が中間色を有するように変化すれば、物品の周囲の環境状態の変化を細かく把握することができる。すなわち、環境状態の変化度合いに応じて、複数の段階に亘って色変化を行うようにすれば、環境変化をトレースすることができる。
【0071】
物品の周囲の環境状態として温度を検知する場合は、例えば、CoCl2等の金属錯塩からなる無機系サーモクロミック材料や、スピロピラン系化合物等の縮合芳香環置換体からなる有機系サーモクロミック材料などの、従来から使われている材料を有したインクを使用することができる。
【0072】
また、インク液が着滴して形成したドットの色の変化により、物品の周囲の温度の変化を検知することができる。機能性インクとしては、これらの材料の種類や構成に限定されるものではなく、環境変化に応じて色変化するものであれば任意のものを用いることができる。
【0073】
次に、
図3に示す印字画像検査装置(IMG)を構成する、主たる構成要素の機能や動作について説明を行う。
【0074】
<画像入力部31>
本実施形態に係る画像入力部31は、カメラ等の画像撮影装置によって、ドットパターンを含む認識対象を撮像して得られた画像を取り込む機能を備えている。画像撮影装置は特に限定されないが、レンズ、解像度の条件として、ドットの面積を画素データとして精度よく認識できることが好ましい。
【0075】
一方で、近年の技術の進歩により、汎用の撮影装置にて十分に検査することが可能である。特に、通信機能付きカメラ端末であれば、ドットパターンの認識条件を規定する際に、通信機能を活用することができるため、好ましく用いることができる。また、印字の品質を検査する印字検査機能を有する画像撮影装置を用いることもできるため、本発明の機構を印字検査装置に備えることも可能である。
【0076】
<ドットパターン認識部34A>
ドットパターン認識部34Aは、連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置により印字したドットパターンを認識する機能を備えている。
【0077】
図5A、及び
図5Bは、認識対象である印字面の背景(back)に印字されたドットパターン(dot)の配列の一例を示したものである。連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置では、多様な文字や記号、コードなどの印字情報を印刷可能であるが、それらはすべてドットパターンの配列により形成される。
【0078】
そして、ドットパターン(dot)を形成するインクが、温度の変化に応じて色が変化する示温インクの場合、
図5A、及び
図5Bに示すように、温度変化によりドットの色が変化する。本実施形態では、このような示温インクにより形成したドットパターン(dot)について、ドットの色情報を検査することで、物品(認識対象物)が温度による環境変化に晒されたかどうかを判定することができる。尚、本実施例では示温インクを使用してドットの色情報を検査するものであるが、これ以外の機能性インクを使用することも可能であり、実施例に限定されるものではない。
【0079】
尚、ドットパターンの形成方法として、連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置を使用したが、同様の形態のドットパターンであれば、ドットパターンの形成方法は本実施形態に限定されるものではない。
【0080】
ドットパターンを含む認識対象を撮像して得られた画像は、
図5Aに示すようにドット(dot)部分とドットのない背景(back)部分により構成される。ドットパターン認識部34Aでは、画像撮影装置によって
図5Aに示すような画像を撮像した際、ドット(dot)部分とドットのない背景(back)部分の画素の色の差を判別する必要がある。
【0081】
この判定方法は特に限定されないが、画素の色の強弱について、或る閾値で二値化し、ドット(dot)部分とドットのない背景(back)部分を区別する手法が良く用いられる。このとき、二値の色の一方の色の画素について、ドット部分の画素データとして認識することができる。
【0082】
ドット(dot)部分とドットのない背景(back)部分を鮮明に二値化する際、ドット(dot)部分とドットのない背景(back)部分の色の差が大きいほど、色の差の判別は容易になる。二値化の閾値の自動判定も容易である。そのため、例えば、白地の背景に黒色インクのドットパターンを形成し、それらのみにより構成された画像を撮像することができれば、画像内のドットが占める部分の画素の認識は容易である。
【0083】
しかしながら、ドットパターン以外の文字情報など、背景色に複数の色を用いる場合等では、ドットパターン以外の画素をドット部分の画素データとして認識してしまう可能性がある。また、二値化の閾値の自動判定も難しく、熟練者による補正が必要になる。
【0084】
このため、ドットパターン認識部34Aにおいては、特徴的なドットパターンを画像データより認識し、ドットが占める部分の画素を判定することができれば、ドット部分の画素データの認識の精度を高めることが可能になる。また、二値化の閾値の設定において、特徴的なドットパターンを認識した際、その閾値を採用するように、自動判定を補正することも可能である。
【0085】
このように、ドットパターン認識部34は、認識対象を撮像して得られた画像から印字文字を切り出して、印字文字の品質を判定する機能を備えている。更に、印字文字から得られた印字情報を判定結果の判定基準に用いることこともできる。
【0086】
次に、実際の印字画像検査装置(IMG)を使用した検査の一例を具体的に説明する。
【0087】
以下の説明において、ドット部分の画素データの認識精度向上のための手法を述べているが、これは代表的なものであり、ドット部分の画素データの認識方法はこれらに限定されるものではない。
【0088】
(A).ドットサイズの規定によるドットパターンの認識方法:
連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置により印字したドットパターンは、ドットの面積がある程度限定される。これは、連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置のノズルの口径が数10μm~数100μmに限定されるため、インク液滴の体積が限定されることに起因する。
【0089】
そのため、インク液滴が認識対象物に着滴することで形成されるドットの面積は、認識対象物の表面張力に依存するが、ある程度限定されることになる。具体的には、ドットの直径が100μm~1000μm程度の直径のドットが形成される。
【0090】
したがって、この程度の面積のドットを画像内にて認識することができれば、ドットパターンの配列情報に依らず、ドット部分の画素データを認識することができる。
【0091】
(B).ドットサイズとドット間距離の規定によるドットパターンの認識方法(
図6):
多様な画像撮影装置を適用する場合、画像内において、ドットの面積を正確に認識できない可能性がある。、
図6に示すように、連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置により印字したドットパターンは、ドットの面積の他にドット間に距離があり、ある程度離散的に並んでいる。
【0092】
ドットを隣接して印刷することも可能であるが、ドット間の距離が短いと、印刷速度が遅くなることや、インク同士が接触することでインクが飛散し、印刷品質が悪化することなどが問題になる。
【0093】
具体的には、ドットパターンにおいて、2つのドットの中心間の距離がドットの直径の1~5倍程度の関係であることが多い。そのため、画像内において、2つのドット間におけるドットの中心間の距離とドットの直径が、この関係性になる部分を認識することで、ドット部分の画素データを認識することが可能になる。
【0094】
また、ドットの色を読み取る場合、ドット同士が隣接してドットの重なりが生じると、ドットの色が濃くなってしまうため、色を正確に読み取れない可能性がある。そのため、ドットの色を認識する際、ドットの印刷方法として、ドット間の距離をある程度だけ離して印刷する設定に限定する手法を好ましく用いることができる。これにより、ドットサイズとドット間距離の規定が容易になり、ドット部分の画素データの認識精度を向上することが可能である。
【0095】
(C).カメラのレンズ、解像度、焦点距離制御によるドットの画素数の規定(
図7):
カメラのような画像撮影装置によって、画像内でのドットの面積を正確に認識できないことが課題になるが、画像撮影装置のレンズ、解像度、焦点距離制御方法が分かる場合、1つのドットを形成するための画素数をある程度規定することが可能になる。
【0096】
図7に示すように、画像撮影装置のレンズ、解像度、焦点距離制御方法が決まれば、画像撮影時に、自動、或いは手動にて、ドットに焦点距離を調整した際、画像内の画素の長さがある程度定まるため、任意の画素数の面積をドットの面積として規定することが可能である。
【0097】
(D).ドットの真円度の規定(
図8):
連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置による印刷では、形成したドットが比較的にきれいな円形である。この特徴を踏まえ、画像処理において、ドットの真円度を規定することにより、ドット部分の画素データを認識することが可能である。
【0098】
図8に示すように、真円度は「4π×ドットの面積÷(ドットの周囲長の二乗)」により定義され、1.0に近いほど真円に近いという値になる。連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置により印字したドットであれば、具体的には、0.8~1.0の値などに規定することで、ドットを認識することができる。
【0099】
尚、画像の背景内において、ドット以外に比較的に円形を示す画素データが存在しないのであれば、0.2~1.0の値など、ある程度広い範囲で規定しても、ドット以外の画素をドット部分の画素データとして認識してしまう可能性は低い。
【0100】
ある程度広い範囲にて真円度を規定することで、画像内にて、ドット同士が繋がってしまっており、ドットの真円度が低いドットパターンにおいても、ドット部分の画素データとして認識することができる。
【0101】
(E).ドットの周期性の規定(
図9):
連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置による印刷では、ドットサイズとドット間距離がある程度決まっていることから、ドットの周期性を規定する手法も用いることができる。
【0102】
図9の(a)に示すように、少なくとも3個以上のドットが1列に並んでいる文字や記号を印字する場合、画像処理にて、2次元画像内の1軸方向(白線で表示)に対し、色の強弱に周期性が見られる箇所が発生する。周期性の評価方法については特に限定されないが、例えば、(b)に示すように、2次元画像内において、フーリエ変換を実施することで得られたパワースペクトルの周期と強度を評価することにより、高周期での相関が見られる1軸方向に対し、ドットが並んだ配列が存在すると認識することが可能である。
【0103】
更に、(c)に示すように、ドットが並んだ配列が存在する軸について、色の強弱を評価することで、ドット部分の画素データとして認識することができる。パワースペクトルの周期と強度の規定値については、ドットの色の強弱や検査するドット数などにより値が変わるため、予め任意に設定する必要がある。
【0104】
(F).ドットの数の規定:
ドットパターンを含む認識対象を撮像して得られた画像について、画像処理によりドット部分の画素データを認識する際、認識条件としてドットの数を規定することで、認識精度を高めることができる。
【0105】
連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置でドットパターンを形成するにあたり、多様な文字や記号、コードなどの印字情報の設定する際に、印字されるドットの数が決まる。そのドットの数を含む規定条件を設定することで、そのドットの数を画像処理時に認識した場合、ドットパターンが存在すると判断することができ、そのドット部分の画素データを認識することできる。
【0106】
連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置では、通常、何らかの文字や記号を印字することになるため、1個や2個のドットを印字することはほとんどなく、少なくとも10個以上のドットを形成する可能性が高い。そのため、ドットの数として、10個以上を規定条件にすることで、あらかじめ条件を規定することなく、あらゆる文字や記号の印字ドットパターンを検査することができる。
【0107】
しかしながら、画像撮影装置による撮影精度の問題や、認識対象物からのドットの剥離などの問題などにより、10個以上のドットを認識できない可能性もあるため、5個以上のドット数など、もっと少ない数を規定しても問題ない。
【0108】
予め印字するドット数に近いドット数を規定条件として設定しておくことで、検査対象のドットパターンに近いドット数の条件のみを認識することができるため、より高精度に検査対象となるドットパターンを認識することが可能である。
【0109】
(G).ドットパターンの規定:
上述した方法の他に、連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置で印字する文字や記号などのドットパターンを規定することも可能である。印字検査装置と同様に、予め正常に印字文字を形成したドットパターンの画像データを記憶し、そのデータとの一致の度合より、ドットパターンを認識する手法も用いることができる。
【0110】
画像撮影装置が印字検査機能を備える場合は、色の評価と印字検査を同時に実施することができる。印字検査を実行する場合、あらかじめドットパターンを規定することになるため、この規定条件を好ましく用いることができる。
【0111】
<色情報検査部34B>
本実施形態の特徴である色情報検査部34Bは、画像入力部31で得られた画像について、ドット部分の画素データから色情報を取得する機能を備えている。
【0112】
ドット部分の画素データから色情報を取得する方法として、ドットパターン認識部34Aで認識した、ドット部分の画素データの色情報を読み取る手法であれば、画像処理方法は特に限定されない。
【0113】
例えば、読み取ったドットパターンのドッド部分の中央部分の画素の色を評価しても良いし、読み取ったドットパターンのドッド部分において、最も背景色との色の差が大きい値で評価しても良いし、読み取ったドッド部分の色情報をドット部分の全画素で平均し、その値を評価しても良い。
【0114】
また、少なくともドット部分を含んでいれば良く、ドット部分を含む画素の周りにおいて、ドット部分と背景部分を含む画素において、色情報を平均することで評価しても良い。
【0115】
また、画像の色の評価方法も特に限定されない。例えば、撮像した画像の画素における階調から色調を算出することができる。また、レーザースキャン等で光を投光し、投光された光の反射量若しくは吸収量から画像取得し、色情報を算出しても良い。尚、色調の数値情報としては、L*a*b*やL*C*h*などのCIE色空間の他に、RGB色空間、HSV色空間、マンセル色空間等を使用することができる。
【0116】
<相関値計算部34C>
本実施形態の特徴である相関値計算部34Cは、色情報検査部34Bにより得られた色情報に対し、予め設定されたインクの基準色情報データとの相関値を算出する機能を備えている。
【0117】
予め設定されたインクの基準色情報データとの相関値の算出方法は特に限定されないが、例えば、RGB色空間の平均値により色を評価する場合、正常な色と検査した色の差分を評価することで、正常なドットを検査できているかどうかを確認することができる。機能性インクのようにドットの色がなんらかの環境変化に応じて変色する場合、既定の変色量の範囲内にある色のインクのみを認識し、どの程度の変色量に該当するかを判断することができる。
【0118】
色の評価には、照明環境やドットの透過や反射、認識対象物の背景色の反射、曲率の影響、影の映り込みなど、様々な要因により測定誤差が発生する。ドットの色と背景色の色の強弱が大きい場合や、機能性インクの変色を評価するドットの変色量の強弱が大きい場合等は、判定公差を大きく設定できる場合が多く、測定誤差が大きくても計算することができる。
【0119】
また、色の評価の測定誤差を小さくする手法として、照明環境を常に一定にすることが好ましい。一方で、照明環境が限定されると、多様な環境下での撮影が難しくなる。そのため、背景色の色を検査し、その数値とドットの色との相関性を色情報の検査に適用することでも、測定誤差を小さくすることが可能である。
【0120】
その場合、背景色の色を予め規定する手法が好ましい。背景色の色を規定するためには、一度適正な照明環境下にて画像撮影しても良いし、規定値を入力しても良い。
【0121】
ドット部分の色と背景の色の相関値の評価方法は特に限定されないが、予め正常な色のドットと背景の色の差分を評価して規定しておくことで、検査の際、同様にドット部分の色と背景色の色を検査し、その差分の変化の程度によってドットの色を評価する手法等を用いることができる。
【0122】
背景色の評価方法についても、特に限定されない。認識したドット部分の画素データ以外の画素データを用い、その平均値を評価しても良いし、ドット部分から一定距離離れた範囲の画素の色を評価しても良いし、認識したドット部分の画素データ以外の画素データの内、もっともドットの色との色の差が大きい値にて評価しても良い。
【0123】
<インク状態判定部34D>
本実施形態の特徴であるインク状態判定部34Dは、相関値計算部34Cの色の評価結果より、インクが示す認識対象の状態を判定する機能を備えている。
【0124】
判定方法は特に限定されないが、判定基準を予め規定しておく必要がある。例えば、RGB色空間の平均値により色を評価する場合、RGB色空間の平均値が或る一定の値であれば判定A、また、別の或る一定の値であれば判定Bと判定する。もちろん、複数段階の判定も可能である。
【0125】
例えば、認識対象物の品質を管理する目的で、機能性インクを印字することで形成したドットパターンを検査する場合、
図10の加熱前(0分)を示す(a)、及び加熱後(10分)を示す(b)にあるように、環境温度に応じてドットが変色する。
図10の(a)においては「青色」であったが、
図10の(b)においては「黄色」に変色している。そして、(c)のように、閾値「(R+G+B)/3=130」と比較し、その色評価結果から認識対象物の品質状態が、「正常」、「警告」、「異常」の環境下に晒されていることを判定することができる。
【0126】
判定結果として、ドットパターンの認識エラーや、ドットの数の表示など、色評価の判定基準とは異なる判定結果を表示することもできる。印字検査装置の機能を備える場合、印字検査結果を表示することや、読み取った文字や記号やコードの情報を併せて表示することも可能である。
【0127】
本実施形態に係る画像入力部31である画像撮影装置や、相関値計算部34C、インク状態判定部34Dは、一つのドットパターンに対し、複数回数実行したり、複数台用いても良い。この場合、通信機能付きカメラ端末等を好ましく用いることができる。このように、画像撮影装置が通信機能付きカメラ端末であることも特徴の一つである。
【0128】
また、ドットパターンを印字画像検査装置により、同一の印字画像検査装置、或いは異なる印字画像検査装置にて複数回検査する場合、検査する際に得られた画像データ、画像検査データ、判定データのいずれかのデータを共有し、2回目以降の検査方法、検査結果、判定結果に活用することも特徴の一つである。
【0129】
カメラ端末に通信機能を有さなくても、画像データや計算データ、判定データなどを保存し、通信機能付き端末等を用いて、複数台の画像撮影装置にて共有することもできる。例えば、印字検査装置にて機能性インクのドットパターンの色情報、印字情報などを検査し、そのドットパターンについて、機能性インクが色変化した後に、通信機能付きカメラ端末にて色情報、印字情方等を検査することが可能である。
【0130】
この場合、1回目の印字検査装置による検査結果を、2回目の通信機能付きカメラ端末での検査方法や判定基準に用いることも可能である。例えば、1回目の検査と2回目の検査での色情報の差分を計算しても良いし、1回目の印字情報(ロット番号や製造年月日など)を2回目のドットパターンの検査条件に加えても良い。
【0131】
このように、一度画像検査を実施することでドットパターンの配列情報およびインクの色情報データを記憶し、再び画像検査を実施する際に、相関値計算部における予め設定されたインクの色情報データとして、ドットパターンの配列情報及びインクの色情報データとの相関性を算出することも特徴の一つである。
【0132】
また、1回目の印字情報である製造年月日を検査し、2回目の検査時にその製造年月日から一定期間が経過していたら、異常判定することも可能である。すなわち、検査する時点の環境情報(時間や天候や場所情報など)も判定結果に加えることが可能である。このように、検査する際の時間、場所、温度などの環境情報を判定結果の判定基準に用いることも特徴の一つである。
【0133】
次に、実際の印字画像検査装置(IMG)を使用した検査の一例を具体的に説明する。
【0134】
[機能性インクを用いたドットパターンの作製]
熱履歴に応じて色変化する示温インクを、インクジェット記録装置(株式会社日立産機システム社製インクジェットプリンタUX型)に充填し、ガラス基材に印字した。基材に印字された印字ドットは初期状態において、「青色」であった。その印字基材を70℃の環境に静置したところ、1分後より緩やかに黄色に顕色しはじめ、10分後に完全に黄色に顕色することを目視にて確認した。この印字基材について、ドットの色の検査を検討した。
【0135】
[ドットパターンの色の検査]
図10に、作製した印字ドットの加熱による色変化の様子を示している。画像撮影装置として、スマートフォン(HUAWEI製、P8lite)を用い、オートフォーカス機能を用いて、ドットパターンを含む認識対象物を撮影した。撮影した画像について、画像処理ソフト(ImageJ)を用いて2値化、及びドットパターンの位置の検出を試みた。
【0136】
ドットパターンの検出条件として、ドットの直径に依存するドットの画素の面積を50~200、ドットの真円度を0.2~1.0、ドットの数を40~60、としてドット部分の画素データを検出した。
図11の(a)に示すように、印字したドット52個が検査できていることがわかる。
【0137】
この手法により、検出したドット部分について、(b)の加熱前(0分)と(c)の加熱後(10分)のドットの色をRGBの平均値により評価した。評価結果を
図11に併記する。
図11に示すように、ドットの色の変化を数値化できていることがわかる。
【0138】
このうち、判定基準として、
図10に示すように、RGBの平均値が130未満の値の場合に加熱前、130以上の値の場合に加熱後と表示することとした。この結果より、70℃に加熱して0~5分経過するまでは加熱前と判定され、5~10分後では、加熱後と判定される結果が得られた。
【0139】
以上より、本実施例に係る印字画像検査装置を用い、連続噴射式荷電制御型のインクジェット記録装置により形成したドットパターンの色を検査し、その色情報より、インクの状態を判定する印字画像検査装置を確認することができた。
【0140】
このように、印字画像検査装置(IMG)になる印字検査装置(PID)及びスマートフォン(SMT)によって、工場、出荷場、店舗、及び顧客等からアクセスできるので、環境変化に基づく色情報が、多様で簡便な検査手法により検査できるようになる。尚、スマートフォン(SMT)を印字画像検査装置(IMG)とすれば、いかなる時、いかなる場所で簡便に検査を行うことができる。
【0141】
更に、印字画像検査装置(IMG)の機能を管理サーバ(MSV)に持たせ、スマートフォン(SMT)や小型携帯端末から、撮影画像を管理サーバ(MSV)に転送して管理サーバ(MSV)で画像検査を行うことも可能である。特に店舗で多数の製品の流通過程での熱履歴等を管理する場合は有効である。
【0142】
尚、本発明は上記したいくつかの実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。各実施例の構成について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0143】
10…インク容器、11…インク液、12…インク供給ポンプ、13…インクノズル、14…圧電素子、15…インク柱、16…帯電電極、17…インク液滴、18、19…偏向電極、20…印字対象物、21…ガター、30…入力部、31…画像入力部、32…出力部、33…通信部、34…処理部、34A…ドットパターン認識部、34B…色情報検査部、34C…相関値計算部、34D…インク状態判定部、34E…読取りデータ取得部、35…記憶部、35A…ドットパターン記憶部、35B…色情報記憶部、35C…相関値情報記憶部、35D…インク状態記憶部。