IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイヘンの特許一覧

特開2023-94248疑似負荷、および、当該疑似負荷を用いた校正用情報の取得方法
<>
  • 特開-疑似負荷、および、当該疑似負荷を用いた校正用情報の取得方法 図1
  • 特開-疑似負荷、および、当該疑似負荷を用いた校正用情報の取得方法 図2
  • 特開-疑似負荷、および、当該疑似負荷を用いた校正用情報の取得方法 図3
  • 特開-疑似負荷、および、当該疑似負荷を用いた校正用情報の取得方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094248
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】疑似負荷、および、当該疑似負荷を用いた校正用情報の取得方法
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/00 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
H05H1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209622
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 豊
(72)【発明者】
【氏名】納富 隼人
(72)【発明者】
【氏名】天立 茂樹
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084CC13
2G084DD03
2G084DD13
2G084EE10
2G084EE15
2G084HH02
2G084HH21
2G084HH22
2G084HH43
(57)【要約】
【課題】プラズマ源1を構成する高周波電源部10とプラズマ発生部8との間に設けた無線周波数帯域用のセンサの検出信号に基づく検出値を校正するための校正用情報の取得作業時に用いる疑似負荷を提供する。
【解決手段】疑似負荷9は、内心部921と複数の外周部922a、922bとを有する金属導体92を備えている。金属導体92は、プラズマ発生部8の放電管80の内部に挿入された状態で使用され、高周波電源部10から高周波電圧が出力されて、プラズマ発生部8の放電コイル81に高周波電流が流れた際に疑似負荷として機能する。また、複数の外周部922a、922bの少なくとも一つは、内心部921に沿って移動可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ源を構成する高周波電源部とプラズマ発生部との間に設けた無線周波数帯域用のセンサの検出信号に基づく検出値を校正するための校正用情報の取得作業時に用いる疑似負荷であって、
前記疑似負荷は、内心部と複数の外周部とを有する金属導体を備えており、
前記金属導体は、前記プラズマ発生部の放電管の内部に挿入された状態で使用され、高周波電源部から高周波電圧が出力されて、前記プラズマ発生部のコイルに高周波電流が流れた際に疑似負荷として機能するとともに、前記複数の外周部の少なくとも一つは、前記内心部に沿って移動可能である、疑似負荷。
【請求項2】
前記金属導体を覆うセラミック管を更に備えた請求項1に記載の疑似負荷。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の疑似負荷を用いた校正用情報の取得方法であって、
前記高周波電源部は、整流・平滑回路と、電圧変換回路と、インバータ回路と、共振回路と、制御部と、直流電圧センサと、直流電流センサとを備えており、
前記直流電圧センサと前記直流電流センサとは前記電圧変換回路とインバータ回路の間に設けられており、
前記高周波電源部から高周波電圧が出力されて前記コイルに高周波電流が流れた際に、前記直流電圧センサで検出した検出信号に基づく直流電圧検出値と前記直流電流センサで検出した検出信号に基づく直流電流検出値とから算出できるインピーダンスが予め定めた値となるように、前記移動可能な外周部の位置を定める工程と、
前記移動可能な外周部の位置を前記定めた位置にした状態で、前記無線周波数帯域用のセンサの検出信号を取得する工程と、
を含む校正用情報の取得方法。
【請求項4】
前記無線周波数帯域用のセンサは、高周波電圧を検出するセンサ及び高周波電流を検出するセンサである請求項3に記載の校正用情報の取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、校正用情報の取得作業時に用いる疑似負荷、および、当該疑似負荷を用いた校正用情報の取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置は、高周波電源から供給された高周波電力を用いてプラズマ発生部でプラズマを発生させ、ウェハ等の加工対象物に対してエッチング等のプラズマ処理を行っている。プラズマ処理装置には、いろいろなタイプがある。例えば、高周波電源部とプラズマ発生部とを含むプラズマ源において発生させたプラズマを用いてプラズマ処理部においてエッチング等のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置がある。
【0003】
上記プラズマ源を含むプラズマ処理装置では、高周波電圧、高周波電流、高周波電力、反射係数等の高周波パラメータを監視して制御に用いている。例えば、負荷(高周波電源部の出力端よりも後段の機器)に対して出力する高周波電圧が基準値を超えたときや負荷に流れる電流が基準値を超えたときに、出力する高周波電圧を低下させる等の制御を行って機器を保護している。そのため、高周波電圧センサや高周波電流センサが備わっている。そして、高周波電圧センサで検出した検出信号や高周波電流センサで検出した検出信号とを用いて制御が行われる。
【0004】
一般に、センサの感度はばらつくので、センサの検出信号(例えば、高周波電圧の検出信号)に基づいて算出された検出値(例えば、高周波電圧の電圧値)は、センサ毎にばらつく。そのため、センサ毎の感度のばらつき(いわゆる機差)の影響を低減させるために校正が行われる。
【0005】
上記のような校正を行うために必要な情報(校正用情報)(例えば、高周波電圧の検出信号や高周波電流の検出信号)を取得する際に、センサを搭載する装置は、所定の基準負荷(例えば、インピーダンスが所定値の負荷)を再現できる疑似負荷(ダミーロードともいう)に接続される(特許文献1参照)。
【0006】
しかし、校正を行う装置がプラズマ源である場合、プラズマ源を疑似負荷に接続することは困難である。なぜならば、プラズマ源の出力がプラズマだからである。そのため、実運用時と同様に、プラズマ源をプラズマ処理部に接続して、プラズマ源のプラズマ発生部においてプラズマを発生させた状態で校正用情報を取得する作業が行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5524796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、プラズマ源に適用できる疑似負荷を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの実施形態によれば、プラズマ源を構成する高周波電源部とプラズマ発生部との間に設けた無線周波数帯域用のセンサの検出信号に基づく検出値を校正するための校正用情報の取得作業時に用いる疑似負荷は、内心部と複数の外周部とを有する金属導体を備えている。前記金属導体は、前記プラズマ発生部の放電管の内部に挿入された状態で使用され、高周波電源部から高周波電圧が出力されて、前記プラズマ発生部のコイルに高周波電流が流れた際に疑似負荷として機能するとともに、前記複数の外周部の少なくとも一つは、前記内心部に沿って移動可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高周波電源部とプラズマ発生部とを有するプラズマ源の校正用の疑似負荷を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態にかかるプラズマ源1の一構成例を示す図である。
図2図2は、本実施形態にかかるプラズマ発生部8の主要部と疑似負荷9の一例を示す図である。
図3図3は、本実施形態にかかる金属導体の構造例を示す図である。
図4図4は、校正手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係るプラズマ源の一構成例を示す図である。プラズマ源1は、半導体製造プロセスにおけるエッチング等のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置の一部として用いられる。
【0013】
プラズマ源1は、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、以下「ICP」)型のプラズマ発生装置である。プラズマ源1は、高周波電源部10とプラズマ発生部8とを含む。高周波電源部10は、整流・平滑回路2と、昇降圧チョッパ3(電圧変換回路の一例)と、インバータ回路4と、共振回路5と、プラズマ発生部8と、制御部7とを含む。また、直流電圧センサ61と、直流電流センサ62と、高周波電圧センサ63と、高周波電流センサ64とを含む。
【0014】
整流・平滑回路2は、商用電源(図1の符号AC)の交流電力を直流電力に変換するための回路である。整流・平滑回路2は、例えば複数個の半導体素子をブリッジ接続してなる整流回路と、整流された電流(脈流)を平滑化する回路とを含む。
【0015】
昇降圧チョッパ3は、直流の入力電圧を昇圧又は降圧して、直流電圧Vdcを出力する回路である。この昇降圧チョッパ3は、例えば、内部にスイッチング素子が備わっており、制御部7からの指令信号に基づいてスイッチング素子のスイッチングが制御されて、出力する直流電圧Vdcを昇圧又は降圧させる。
【0016】
昇降圧チョッパ3の出力端には、図1に示すように、直流電圧センサ61および直流電流センサ62が設けられている。図1では直流電圧センサ61が直流電流センサ62よりも昇降圧チョッパ3側に設置されているが、直流電流センサ62を直流電圧センサ61よりも昇降圧チョッパ3側に設置してもよい。
直流電圧センサ61は、昇降圧チョッパ3から出力する直流電圧Vdcを検出し、直流電圧Vdcの検出信号を制御部7に送る。直流電流センサ62は、昇降圧チョッパ3の出力端に流れる直流電流Idcを検出し、直流電流Idcの検出信号を制御部7に送る。後述する制御部7では、直流電圧Vdcの検出信号と直流電流Idcの検出信号とに基づいて、昇降圧チョッパ3の出力端におけるインピーダンスRdcを算出する。具体的には、後述する式(1)のようにして算出すればよい。
なお、直流電圧Vdcの検出信号及び直流電流Idcの検出信号は、アナログ信号でも良いし、デジタル信号でもよい。アナログ信号の場合は、通常、制御部7においてAD変換される。また、説明を簡略化するために、式(1)中の符号を上記と同じにしているが、Vdcは直流電圧Vdcの電圧値であり、Idcは直流電流Idcの電流値である。
Rdc=Vdc/Idc ・・・・ (1)
【0017】
インバータ回路4は、昇降圧チョッパ3から出力される直流電圧Vdcを無線周波数(Radio Frequency)帯域の周波数を有する高周波電圧Vrfに変換して出力する。高周波帯域の周波数は、例えば2MHzである。もちろん、他の周波数でも適用可能である。また、例えば2MHzに対して周波数を増減させることもできる。通常、インバータ回路4には、スイッチング素子が備わっており、そのスイッチングが制御部7によって制御される。
【0018】
共振回路5は、インバータ回路4とプラズマ発生部8の一端部P1との間に直列接続されたインダクタ51及びコンデンサ52と、インバータ回路4とプラズマ発生部8の他端部P2との間に直列接続されたインダクタ53及びコンデンサ54とを備える。また、共振回路5は、一端部P1と他端部P2との間にコンデンサ55をさらに備える。
なお、コンデンサ52とコンデンサ54とは略同一の容量(キャパシタンス)を有し、インダクタ51とインダクタ53とは、略同一のインダクタンスを有するのが好ましい。このようにすれば、プラズマ発生部8の一端部P1とインバータ回路4との間の共振回路5の回路構成と、プラズマ発生部8の他端部P2とインバータ回路4との間の共振回路5の回路構成との間の回路構成とが同じ回路構成なので、一端部P1の最大電圧値と他端部P2の最大電圧値とが同程度になる。後述する放電管80内で発生するプラズマは、基準電位に対する電位差が大きい程、放電管80の内壁部分に引き寄せられる傾向にあるので、上記のように両端部における最大電圧値を均一化することで、放電管80の摩耗の偏りを低減させ、ひいては放電管80の寿命を延ばすことが可能となる。
【0019】
プラズマ発生部8は、放電コイル81を有する。この放電コイル81は、後述する放電管80(図2参照)の外周側であって、当該放電管80の流入口側から流出口側に亘って巻回されたものである。なお、放電コイル81は、共振回路5の一部として機能する。放電管80は、例えば石英、アルミナ等の非導電性材料からなる。放電コイル81は、例えば、銅等の導電性材料からなるコイルである。また、放電コイル81内に冷却水を流すことで、放電管80の温度上昇を低減させることができる。
【0020】
インバータ回路4から出力された高周波電圧Vrfが共振回路5を介してプラズマ発生部8に供給されるので、放電コイル81に高周波電流Irfが流れる。プラズマ発生部8でプラズマを発生させる場合、放電管80の内部に材料ガスが供給される。その結果、放電コイル81に流れる高周波電流による誘導結合によって材料ガスがプラズマ化し、プラズマが発生する。このプラズマを利用して、プラズマ処理部(図略)において各種の処理(エッチング等)が行われる。
【0021】
高周波電圧センサ63は、共振回路5から出力される高周波電圧Vrf(プラズマ発生部8の一端部P1と他端部P2との間の交流電圧)を検出し、高周波電圧Vrfの検出信号を制御部7に送る。高周波電流センサ64は、共振回路5の出力端に流れる高周波電流Irf(放電コイル81に流れる交流電流)を検出し、高周波電流Irfの検出信号を制御部7に送る。高周波電圧センサ63及び高周波電流センサ64は、無線周波数帯域用のセンサである。
なお、図1では高周波電流センサ64がプラズマ発生部8の他端部P2側に設けられているが、プラズマ発生部8の一端部P1側に設けてもよい。また、高周波電圧センサ63から制御部7に送付される高周波電圧Vrfの検出信号及び高周波電流センサ64から制御部7に送付される高周波電流Irfの検出信号は、アナログ信号でも良いし、デジタル信号でもよい。アナログ信号の場合は、通常、制御部7においてAD変換される。
【0022】
制御部7は、種々制御の制御処理・演算処理を実行する装置である。制御部7は、RAM(RandomAccessMemory)又はROM(ReadOnlyMemory)等の記憶部(図示せず)を備えたMPU(Micro-processingunit)、システムLSI(Large-ScaleIntegration)又はFPGA(Field-ProgrammableGateArray)を含み、記憶部に記憶してあるプログラム及びデータを読み出して実行することにより、種々の制御処理及び演算処理等を行う。例えば、制御部7は、直流電圧Vdcの検出信号と直流電流Idcの検出信号とに基づいて、プラズマ発生部8に供給される電力の電力値を算出し、その電力値が目標値になるように昇降圧チョッパ3の出力を制御する。
【0023】
<校正について>
上述したように、高周波電圧センサ63及び高周波電流センサ64のようなセンサは、感度がばらつくので、センサの検出信号に基づいて算出される検出値もばらつく。そのため、センサ毎の感度のばらつき(いわゆる機差)の影響を低減させるために校正が行われる。なお、校正は、センサから出力する検出信号の大きさを調整する場合もあれば、検出信号に基づいて検出値を算出する際に用いるパラメータを調整する場合もある。
【0024】
<疑似負荷9について>
本実施形態における校正では、特許文献1のような従来技術と異なり、プラズマ源1用の疑似負荷がプラズマ発生部8の内部に挿入された状態で使用される。以下、図2を用いて本実施形態で用いる疑似負荷9について説明する。
図2は、本実施形態にかかるプラズマ発生部8の主要部と疑似負荷9の一例を示す図である。なお、図2におけるプラズマ発生部8は、主要部の断面斜視図として図示されている。上述したように、プラズマ発生部8は、放電管80と放電コイル81とを含む。また、疑似負荷9は、セラミック管91と、金属導体92とを含む。
【0025】
セラミック管91は、金属導体92を覆うことで、放電管80内部への金属のコンタミネーションを防止することができる。
このように、セラミック管91を設けた方が望ましいが、放電管80内部への金属のコンタミネーションが問題とならない場合は、セラミック管91を設けなくてもよい。なお、金属導体92を放電管80に挿入する際に、金属導体92と放電管80とが擦れたり衝突することによって、放電管80に傷がついたり、割れたりすることを防止するために、放電管80とセラミック管91との間には、隙間がある方が望ましい。
【0026】
金属導体92は、放電管80およびセラミック管91の内部に設けられる。プラズマ源1は、高周波電圧Vrfをプラズマ発生部8へ供給して、放電管80に巻いている放電コイル81に高周波電流Irfを流す。これにより、放電コイル81で磁束が発生し、その磁束を打ち消す向きで誘導電流が金属導体92に流れる。この結果、放電管80内部にプラズマを発生させることなく、金属導体92を疑似負荷として用いることができる。すなわち、プラズマによる消費電力の機能を金属導体92が担うことになる。そのため、校正を行う際にプラズマ源1とプラズマ処理部との接続が不要である。また、材料ガスの供給ライン、真空ポンプ等の排気ラインも不要である。
【0027】
続いて、金属導体92の構造について、図3を用いて説明する。図3(a)に示すように、金属導体92は、内心部921と、外周部922を有する。内心部921および外周部922は、同一の材料である。
【0028】
また、図3(b)に示すように、金属導体92の外周部922は、互いに分離可能な第1外周部922aと第2外周部922bを有する。そして、第1外周部922aは、内心部921に沿って移動可能である。これにより、第1外周部922aの位置を調整することができる。第1外周部922aの位置を変更することで、結合率が変化する。これにより、プラズマ源1の高周波電源部10よりも後段(プラズマ発生部8の一端部P1及び他端部P2よりも後段)のインピーダンスを変更させることができる。ひいては、昇降圧チョッパ3の出力端よりも後段のインピーダンスを変更させることができる。
もちろん、第1外周部922aではなく第2外周部922bを移動可能としてもよいし、第1外周部922a及び第2外周部922bの両方を移動可能としてもよい。また、外周部922を3つ以上の部材で構成してもよい。また、金属導体92の形状は、円筒形でなくてもよい。
【0029】
<校正方法について>
次に、図4に示すフローチャートを用いて校正の手順について説明する。
・ステップ1(S1):高周波電源部10から高周波電圧Vrfを出力しない状態で、放電管80内部に疑似負荷9を挿入する。
【0030】
・ステップ2(S2):第1外周部922aの位置を初期位置に調整する。例えば、図3(a)のように、第1外周部922aと第2外周部922bとを密接させた状態とする。
【0031】
・ステップ3(S3):プラズマ源1の高周波電源部10から高周波電圧Vrfを出力し、プラズマ発生部8へ供給する。これにより、放電コイル81に高周波電流Irfが流れて、誘導電流が金属導体92に流れる。そのため、金属導体92を疑似負荷として用いることができる。
【0032】
・ステップ4(S4):昇降圧チョッパ3から出力する直流電圧Vdcを直流電圧センサ61で検出し、検出信号を制御部7に送る。また、昇降圧チョッパ3の出力端に流れる直流電流Idcを直流電流センサ62で検出し、検出信号を制御部7に送る。
制御部7は、受信した直流電圧Vdcの検出信号および直流電流Idcの検出信号に基づいてインピーダンスRdcを算出(式(1)参照)し、算出したインピーダンスRdcを出力する。
なお、直流電圧センサ61及び直流電流センサ62は、既に校正されているものとする。また、直流電圧センサ61及び直流電流センサ62は、直流検出用であるため、容易に校正を行うことができる。そのため、高周波電圧センサ63及び高周波電流センサ64で高周波電流Irfが校正されていない状態でも所定の基準負荷を再現できる。
【0033】
・ステップ5(S5):作業者は、出力されたインピーダンスRdcを確認しながら、インピーダンスRdcが目標値となるように、第1外周部922aの位置を調整する。インピーダンスRdcが目標値となるか、目標値との誤差が許容範囲になった位置を外周部設定位置とする。この外周部設定位置の情報(例えば、第1外周部922aと第2外周部922bとの間隔)を記録しておく。
なお、第1外周部922aの位置を手動で調整する場合には、安全のために、高周波電源部10から高周波電圧Vrfを出力しない状態で第1外周部922aの位置を調整し、調整後に高周波電源部10から高周波電圧Vrfを出力する。また、インピーダンスRdcの目標値が複数ある場合には、各目標値毎に上記の作業を行えばよい。また、プラズマ発生部8に供給される電力の目標値が複数ある場合にも、各目標値毎に上記の作業を行えばよい。
【0034】
・ステップ6(S6):基準検出器であるオシロスコープを図1に示す一端部P1と他端部P2との間に接続する。なお、オシロスコープは、基準検出器の一例なので、他の機器でもよい。
【0035】
・ステップ7(S7):疑似負荷9の第1外周部922aの位置を外周部設定位置(ステップ5参照)にする。ステップ5の段階から疑似負荷9の第1外周部922aの位置を移動させていない場合は、このステップは省略される。
【0036】
・ステップ8(S8):プラズマ源1の高周波電源部10から高周波電圧Vrfを出力する。そして、高周波電圧センサ63で高周波電圧Vrfを検出し、高周波電流センサ64で高周波電流Irfを検出する。それとともに、オシロスコープでも高周波電圧Vrf及び高周波電流Irfを検出する。これらの検出信号は、制御部7へ送信される。制御部7は、当該検出信号を記録する。
なお、プラズマ源1の高周波電源部10から出力する高周波電圧Vrfの大きさは、例えば、プラズマ源1の高周波電源部10からプラズマ発生部8に供給される電力値が予め定めた目標電力値になるように調整される。又は、プラズマ源1の高周波電源部10から出力する高周波電圧Vrfが予め定めた目標電圧値になるように調整される。
【0037】
・ステップ9(S9):ステップ8で取得した高周波電圧センサ63の検出信号、高周波電流センサ64の検出信号及びオシロスコープの検出値に基づいて校正を行う。校正方法は、公知の方法を適用できる。
基準検出器は、その検出値が校正されているので、同じ条件で校正対象となるセンサの検出信号と基準検出器の検出値とを取得することによって、校正対象となるセンサの検出信号に基づく検出値を正しい値に近づくように調整することができる。
【0038】
以上説明した手順で校正を行うことにより、プラズマ源1に搭載したセンサの校正を行うことができる。この際、プラズマ源1用の疑似負荷9を用いるので、従来のように、プラズマ源1をプラズマ処理部に接続し、プラズマ発生部8においてプラズマを発生させた状態で校正を行う必要がない。そのため、校正作業を簡易な設備で行うことができる。
これに対して、従来のように、実際にプラズマを発生させるとなれば、プラズマ処理部だけでなく、材料ガスの供給ライン、真空ポンプ等の排気ラインも必要になる。また、ガス流量・圧力・温度等の状態によってプラズマの状態が変化するため、同じ負荷を再現させることが困難である。そのため、本実施形態で説明した疑似負荷9を用いることによる効果は大きい。また、疑似負荷9は簡易な構成なので、扱いやすく、製造費用も低額である。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 プラズマ源、10 高周波電源部、2 整流・平滑回路、3 昇降圧チョッパ(電圧変換回路の一例)、4 インバータ回路、5 共振回路、61 直流電圧センサ、62 直流電流センサ、63 高周波電圧センサ、64 高周波電流センサ、7 制御部、8 プラズマ発生部、9 疑似負荷、91 セラミック管、92 金属導体、921 内心部、922a 第1外周部、922b 第2外周部。
図1
図2
図3
図4