(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009428
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】重油組成物および重油組成物の貯蔵方法
(51)【国際特許分類】
C10L 1/00 20060101AFI20230113BHJP
C10L 1/08 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C10L1/00
C10L1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112695
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 武
【テーマコード(参考)】
4H013
【Fターム(参考)】
4H013AA00
4H013CB00
(57)【要約】
【課題】硫黄分の含有割合を0.50質量%以下に低減し、動粘度を所望範囲内制御しつつ、着火性に優れ、単独で良好な貯蔵安定性を発揮するとともに他の重油組成物との混合後においても良好な貯蔵安定性を発揮し得る重油組成物を提供する。
【解決手段】直接脱硫重油を35容量%~70容量%、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上を合計で30~65容量%含有し、硫黄分含有量が0.50質量%以下、50℃における動粘度が20.00mm2/秒以上、CCAIが870以下、潜在セジメント量が0.10質量%以下、100℃で48時間エージング後のセジメント量-潜在セジメント量により算出される48時間エージングによるセジメント増加量が0.02質量%以下であることを特徴とする重油組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接脱硫重油を35容量%~70容量%、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上を合計で30~65容量%含有し、
硫黄分含有量が0.50質量%以下、
50℃における動粘度が20.00mm2/秒以上、
CCAIが870以下、
潜在セジメント量が0.10質量%以下、
100℃で48時間エージング後のセジメント量-潜在セジメント量により算出される48時間エージングによるセジメント増加量が0.02質量%以下である
ことを特徴とする重油組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の重油組成物と、
直接脱硫重油を主たる基材として含み、50℃における動粘度が20.00mm2/秒以上、CCAIが870以下、潜在セジメント量が0.10質量%以下である重油組成物とを、
請求項1に記載の重油組成物の含有割合が20~80容量%になるように混合した状態で貯蔵する
ことを特徴とする重油組成物の貯蔵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重油組成物および重油組成物の貯蔵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、重油組成物は、各種産業分野において種々の用途に使用されており、JIS K2205において、動粘度により、1種(A重油)、2種(B重油)及び3種(C重油)の3種類に分類されている。
これらの重油組成物のうち、A重油は、一般にハウス加温栽培用暖房機やビル等の暖房機用の燃料油として用いられ、B重油及びC重油は、一般に船舶用大型ディーゼルエンジンの燃料油や、工場、発電所、地域冷暖房などの大規模ボイラーの燃料油として用いられている。
【0003】
このうち、C重油は他の重油と比較して粘性が高いものであることから、基材配合も他の重油と相違し、通常、減圧残渣油に対して軽油留分を若干割合配合してなるものとなっている。
【0004】
近年、環境負荷を低減し煙道腐食を抑制するという観点から、重油基材となる残渣油の低硫黄化が検討されており、このような低硫黄化した基材を用いた重油組成物が求められるようになっている。
特に、船舶用燃料油として使用されるC重油相当の重油組成物については、IMO(国際海事機関)の定める国際条約(MARPOL条約)によって硫黄分の含有量が段階的に規制され、今後、0.50質量%以下に低減することが求められている。
【0005】
加えて、C重油相当の重油組成物、すなわち内燃機関で使用される重油組成物においては、着火性および燃焼性に優れることが求められる。
C重油相当の重油組成物の着火性の指標としては、重油組成物の15℃における密度および50℃における動粘度から算出されるCCAI(Calculated Carbon Aromaticity Index)が知られており、一般的には、CCAIが高い重油組成物ほど着火性が低いとされている。
【0006】
また、C重油は加熱して取り扱われるものであるから、燃焼器に噴射する際に適切な動粘度が求められるなど、使用に関しては種々の性能を付与されていることが求められる。
【0007】
ところで、多くの場合、C重油は、生産後において、出荷タンク、出荷後における二次基地のタンク、船舶のタンク等のタンクで貯蔵され、少しずつ使用されていくことから、長期間の貯蔵に耐えられるような安定性を有する重油組成物が求められるようになっている。
このような長期間の貯蔵安定性を有する重油組成物として、直接脱硫重油と、スラリーオイル及び接触分解軽油の少なくとも一方と、を含有し、組成物の全質量に対する芳香族分の含有量及びレジン分の含有量の和に対する、アスファルテン分の含有量の比が0.090以下である重油組成物が提案されるようになっている(特許文献1(特開2018-165365号公報)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1記載の燃料油組成物によれば、低硫黄でありながら、貯蔵安定性に優れた燃料油組成物を提供することができる。
【0010】
しかしながら、上記出荷タンク、二次基地のタンクまたは船舶のタンク等には断続的にC重油が供給されることから、異なる性状を有するC重油同士が混合され、貯蔵されることになる。このため、C重油としては、他のC重油と混合した後の貯蔵安定性にも優れるものが求められるようになっていた。
【0011】
上記二以上のC重油の混合物からなる重油組成物の貯蔵安定性に関し、船舶用燃料油について規定したISO/PAS 23263:2019には、『2つの安定した燃料油が一緒に混合されたときに必ずしも安定した混合燃料油が形成されることにはならない。燃料油を貯蔵する際は、本点に留意する必要がある。(It does however not necessarily follow that two stable fuels when mixed together form a stable mixture. When storing fuel, this should be kept in mind.)』旨が記載されている。
【0012】
また、今般のMARPOL条約における硫黄分規制に際しても、重油組成物の混合安定性、すなわち、例えば二以上のC重油を混合した混合油の安定性について議論になった。
【0013】
このように、従来、他のC重油と混合した場合においても貯蔵安定性に優れるC重油は知られていなかった。
特に、C重油の多くは、直接脱硫重油を主たる基材として含み、50℃における動粘度が20.00mm2/秒以上、CCAIが870以下、潜在セジメント量が0.10質量%以下であることから、係るC重油と混合した場合においても、優れた貯蔵安定性を示すC重油が求められるようになっていた。
【0014】
このような状況下、本発明は、硫黄分の含有割合を好適に低減し、流動性および着火性に優れ、単独で良好な貯蔵安定性を発揮するとともに他の重油組成物との混合後においても良好な貯蔵安定性を発揮し得る重油組成物を提供するとともに、重油組成物の貯蔵方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明者は、直接脱硫重油と接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上とを各々特定含有割合で配合して得られる、硫黄分含有量が0.50質量%以下、50℃における動粘度が20.00mm2/秒以上、CCAIが870以下、潜在セジメントが0.10質量%以下、「100℃で48時間エージング後のセジメント量-潜在セジメント量」により算出される48時間エージングによるセジメント増加量が0.02質量%以下である重油組成物により、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
【0016】
すなわち、本発明は、
(1)直接脱硫重油を35容量%~70容量%、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上を合計で30~65容量%含有し、
硫黄分含有量が0.50質量%以下、
50℃における動粘度が20.00mm2/秒以上、
CCAIが870以下、
潜在セジメント量が0.10質量%以下、
100℃で48時間エージング後のセジメント量-潜在セジメント量により算出される48時間エージングによるセジメント増加量が0.02質量%以下である
ことを特徴とする重油組成物、
(2)上記(1)に記載の重油組成物と、
直接脱硫重油を主たる基材として含み、50℃における動粘度が20.00mm2/秒以上、CCAIが870以下、潜在セジメント量が0.10質量%以下である重油組成物とを、
上記(1)に記載の重油組成物の含有割合が20~80容量%になるように混合した状態で貯蔵する
ことを特徴とする重油組成物の貯蔵方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、硫黄分の含有割合を好適に低減し、流動性および着火性に優れ、単独で良好な貯蔵安定性を発揮するとともに他の重油組成物との混合後においても良好な貯蔵安定性を発揮し得る重油組成物を提供するとともに、重油組成物の貯蔵方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
なお、本明細書中、数値範囲を現す「~」は、その上限及び下限としてそれぞれ記載されている数値を含む範囲を表す。また、「~」で表される数値範囲において上限値のみ単位が記載されている場合は、下限値も同じ単位であることを意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0019】
本明細書において、下記項目の値は、特に断らない限り、以下の試験法方及び計算を用いて求めた値を意味する。
・「15℃における密度」;
JIS K 2249-1(2011)「原油製品及び石油製品―密度試験方法」
・「硫黄分」;
測定対象となる試料中に含まれる硫黄分の含有量に応じて、下記測定方法1又は測定方法2のいずれかの方法により測定した。
測定方法1(硫黄分含有量が0.0051質量%以上の場合):
JIS K 2541-4(2003)「原油及び石油製品-硫黄分試験方法」に規定する「放射線式励起法」
測定方法2(硫黄分含有量が0.0050質量%以下の場合):
JIS K 2541-6(2013)に規定する「原油及び石油製品-硫黄分試験方法」(紫外蛍光法)。
・「窒素分」
JIS K 2609(1998)に規定する「原油及び石油製品-窒素分析試験方法」(化学発光法)。
・「50℃における動粘度」;
JIS K 2283(2000)「原油及び石油製品―動粘度試験方法」
・「CCAI」;
下記式(α)に示す計算方法で求めた値を意味する。
CCAI=D-140.7log10log10(V+0.85)-80.6 (α)
式(α)中、Dは上記方法により測定した15℃における密度(kg/m3)、Vは上記方法により測定した50℃における動粘度(mm2/s)を示す。
・「潜在セジメント量」
ISO 10307-2:2009「Petroleum products― Total sediment in residual fuel oils― Part 2:Determination using standard procedures for ageing」に規定される、手順A「Thermal Aging」に則ってエージングを行って測定した値(質量%)を意味する。
・「100℃で48時間エージング後のセジメント量」
ISO 10307-2:2009「Petroleum products― Total sediment in residual fuel oils― Part 2:Determination using standard procedures for ageing」に規定される、手順A「Thermal Aging」に則ってエージングを行い、更に24時間エージング時間を増加した後に(合計で48時間エージングした後に)測定した値(質量%)を意味する。
・「48時間エージングによるセジメント増加量」
上記「潜在セジメント量(質量%)」および「100℃で48時間エージング後のセジメント量(質量%)」に基づいて、下記式
「100℃で48時間エージング後のセジメント量(質量%)-潜在セジメント量(質量%)」
により算出されるセジメント増加量(質量%)を意味する。
・「実在セジメント量」
ISO 10307-1:2009「Petroleum products― Total sediment in residual fuel oils―」によって測定した値(質量%)を意味する。
・「残留炭素分」
残留炭素分は、JIS K2270「原油及び石油製品―残留炭素分の求め方」により測定した値を意味する。
・「常圧蒸留における沸点範囲」
常圧蒸留における沸点範囲は、JIS K2254:2018「石油製品-蒸留性状の求め方」により測定した値を意味する。
・「ガスクロマトグラフ法蒸留試験方法における蒸留性状」
ASTM D 6352「Standard Test Method for Boiling Range Distribution of Petroleum Distillates in Boiling Range from 174℃ to 700℃ by Gas Chromatography」に規定されている方法により測定した値を意味する。
【0020】
先ず、本発明に係る重油組成物について説明する。
本発明に係る重油組成物は、直接脱硫重油を35容量%~70容量%、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上を合計で30~65容量%含有し、
硫黄分含有量が0.50質量%以下、
50℃における動粘度が20.00mm2/秒以上、
CCAIが870以下、
潜在セジメント量が0.10質量%以下、
100℃で48時間エージング後のセジメント量-潜在セジメント量により算出されるセジメント増加量が0.02質量%以下である
ことを特徴とするものである。
【0021】
本発明に係る重油組成物は、直接脱硫重油を35容量%~70容量%含むものである。
【0022】
直接脱硫重油は、常圧蒸留残油、減圧蒸留残油またはこれらの混合物を水素化脱硫して得られる重質な留分である。
水素化脱硫に用いる直接脱硫装置としては、特に制限はなく、公知の装置を適用することができる。
【0023】
直接脱硫重油は、重油組成物を構成する重質基材として従来から使用されてきた減圧蒸留残渣油に比較すると、脱硫工程で受けた熱等によりセジメントが発生し易く、係るセジメントにより燃焼不良を生じる場合がある。
しかしながら、本発明に係る重油組成物によれば、直接脱硫重油を所定量含有するとともに、以下に説明する接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上を所定量含有してなるものにおいて、硫黄分含有量、50℃における動粘度、CCAI、潜在セジメント量および「100℃で48時間エージング後のセジメント量-潜在セジメント量」により算出される48時間エージングによるセジメント増加量を所定値に制御してなるものであることにより、単独で良好な貯蔵安定性を発揮するとともに他の重油組成物との混合後においても良好な貯蔵安定性を発揮することができる。
【0024】
また、直接脱硫重油は、従来の重油組成物の主基材として用いられている減圧蒸留残渣油と比べて硫黄分の含有量が少ないため、重油組成物が直接脱硫重油を含有することで、組成物中の硫黄分の含有量を低減し、かつ、重油組成物に適した動粘度に容易に調整することができる。
【0025】
直接脱硫重油は、硫黄分の含有割合が、0.50質量%以下であるものが好ましく、0.10質量%~0.47質量%であるものがより好ましく、0.10質量%~0.45質量%であるものがさらに好ましい。
直接脱硫重油中の硫黄分はより少ないことが好ましいが、直接脱硫重油中の硫黄分を過度に低減しようとすると、脱硫原料油が制約されたり、過酷な処理条件等が必要とされたりするなど、コストアップに繋がり易くなる。
直接脱硫重油中の硫黄分含有割合が上記範囲内にあることにより、重油組成物の硫黄分含有量を容易に調整することができる。
【0026】
直接脱硫重油は、窒素分の含有割合が、0.05質量%~0.20質量%であるものが好ましく、0.05質量%~0.19質量%であるものがより好ましく、0.05質量%~0.18質量%であるものがさらに好ましい。
直接脱硫重油中の窒素分が上記範囲内にあることにより、重油組成物の窒素分含有量を容易に調整することができる。
【0027】
直接脱硫重油は、残留炭素分の含有割合が、2.00質量%~10.00質量%であるものが好ましく、3.00質量%~8.00質量%であるものがより好ましく、4.00質量%~7.00質量%であるものがさらに好ましい。
本発明に係る重油組成物は、直接脱硫重油の残留炭度分が上記範囲内に制御されていることにより、燃焼室内でのカーボンの生成を効果的に抑制することができる。
【0028】
本発明に係る重油組成物において、直接脱硫重油は、15℃における密度が、0.9000g/cm3~0.9370g/cm3であるものが好ましく、0.9100g/cm3~0.9350g/cm3であるものがより好ましく、0.9200g/cm3~0.9330g/cm3であるものがさらに好ましい。
15℃における密度が、上記範囲内にある直接脱硫重油を用いて調製された重油組成物は、容量当りの発熱量を大きくすることができ、かつ燃焼の不均一性や燃焼障害の発生を容易に抑制することができる。
【0029】
本発明に係る重油組成物において、直接脱硫重油は、50℃における動粘度が、80.00mm2/s~270.0mm2/sであるものが好ましく、82.00mm2/s~270.0mm2/smm2/sであるものがより好ましく、84.00mm2/s~270.0mm2/sであるものがさらに好ましい。
50℃における動粘度が上記範囲内にある直接脱硫重油を用いて調製された重油組成物は、内燃機関で使用した場合の噴霧状態が良好なため、燃焼の不均一性及び失火を抑制することができ、また重油組成物を安定して機関に供給することができる。
【0030】
本発明に係る重油組成物において、直接脱硫重油は、CCAIが、810以下であるものが好ましく、790~808であるものがより好ましく、790~806であるものがさらに好ましい。
本発明に係る重油組成物において、直接脱硫重油のCCAIが上記範囲内にあることにより、上記範囲内にある直接脱硫重油を用いて調製された重油組成物は、良好な着火性を容易に発揮することができる。
【0031】
本発明に係る重油組成物において、直接脱硫重油は、実在セジメント量が、1.00質量%以下(0.00質量%~1.00質量%)であるものが好ましく、0.95質量%以下(0.00質量%~0.95質量%)であるものがより好ましく、0.90質量%以下(0.00質量%~0.90質量%)であるものがさらに好ましい。
【0032】
本発明に係る重油組成物において、直接脱硫重油の実在セジメント量が上記範囲内に制御されていることにより、セジメントの発生を効果的に抑制することができる。
【0033】
本発明に係る重油組成物において、直接脱硫重油は、潜在セジメント量が、1.30質量%以下(0.00質量%~1.30質量%)であるものが好ましく、1.20質量%以下(0.00質量%~1.20質量%)であるものがより好ましく、1.10質量%以下(0.00質量%~1.10質量%)であるものがより好ましい。
【0034】
本発明に係る重油組成物は、直接脱硫重油の潜在セジメント量が上記範囲内に制御されていることにより、貯蔵時におけるセジメントの発生を効果的に抑制することができる。
【0035】
本発明に係る重油組成物において、直接脱硫重油は、ガスクロマトグラフ法蒸留試験方法における10.0容量%留出温度(T10)が、330.0℃~450.0℃であることが好ましく、340.0℃~440.0℃であることがより好ましく、350.0℃~430.0℃であることがさらに好ましい。
【0036】
本発明に係る重油組成物において、直接脱硫重油は、ガスクロマトグラフ法蒸留試験方法における50.0容量%留出温度(T50)が、450.0℃~580.0℃であることが好ましく、460.0℃~570.0℃であることがより好ましく、470.0℃~560.0℃であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明に係る重油組成物において、直接脱硫重油は、ガスクロマトグラフ法蒸留試験方法における90.0容量%留出温度(T90)が、580.0℃~700.0℃であることが好ましく、590.0℃~690.0℃であることがより好ましく、600.0℃~680.0℃であることがさらに好ましい。
【0038】
本発明に係る重油組成物において、直接脱硫重油のガスクロマトグラフ法蒸留試験方法における各留出温度が上記範囲内にあることにより、重油組成物に配合したときに、50℃における動粘度やCCAIを所定値に制御することが容易となり、良好な流動性および着火性を維持することができる。
【0039】
本発明に係る重油組成物において、直接脱硫重油の含有割合は、35容量%~70容量%であり、35容量%~65容量%であることが好ましく、35容量%~60容量%であることがさらに好ましい。
【0040】
本発明に係る重油組成物は、直接脱硫重油を所定量含有するとともに、以下に説明する接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上を所定量含有してなるものにおいて、硫黄分含有量、50℃における動粘度、CCAI、潜在セジメント量および「100℃で48時間エージング後のセジメント量-潜在セジメント量」により算出される48時間エージングによるセジメント増加量を所定値に制御してなるものであることにより、硫黄分の含有割合を好適に低減し、流動性および着火性に優れ、単独で良好な貯蔵安定性を発揮するとともに他の重油組成物との混合後においても良好な貯蔵安定性を発揮し得る重油組成物を提供することができる。
【0041】
本発明に係る重油組成物は、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上を合計で30~65容量%含むものである。
【0042】
接触分解残渣油は、流動接触分解装置又は残油流動接触分解装置において、重質油を接触分解処理したときに得られる残渣留分、すなわちスラリーオイル(SLO)及びスラリーオイル中から触媒などの不純物を、除去、または低減したクラリファイドオイル(CLO)を意味する。
また、接触分解軽油(LCO(ライトサイクルオイル))は、流動接触分解装置又は残油流動接触分解装置において、重質油を接触分解処理したときに中間留分として得られる、常圧蒸留における沸点範囲が、170℃~390℃であるものを意味する。
流動接触分解装置又は残油流動接触分解装置としては、特に制限はなく、公知の装置を用いることができる。
【0043】
本発明に係る重油組成物において、接触分解軽油としては、常圧蒸留における沸点範囲が、175℃~380℃であるものが好ましく、180℃~370℃であるものがより好ましい。
【0044】
本発明に係る重油組成物において、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上は、CCAIが、860~965であるものが好ましく、860~940であるものがより好ましく、860~920であるものがさらに好ましい。
接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上のCCAIが上記範囲内にあることにより、重油組成物が所望量の芳香族分等を含むことになり、潜在セジメント量を抑制することができる。また、着火性の低下を容易に抑制することができる。
【0045】
本発明に係る重油組成物において、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上は、硫黄分の含有割合が、0.05質量%~1.20質量%であるものが好ましく、0.07質量%~1.10質量%であるものがより好ましく、0.09質量%~1.00質量%であるものがさらに好ましい。
本発明に係る重油組成物において、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上の硫黄分の含有割合が上記範囲内にあることにより、重油組成物中の硫黄分を0.50質量%以下に容易に調整することができる。
【0046】
本発明に係る重油組成物において、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上の窒素分の含有割合は、0.20質量%以下であるものが好ましく、0.19質量%以下であるものがより好ましく、0.18質量%以下であるものがさらに好ましい。
接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上の窒素分の含有割合が上記範囲内にあることにより、重油組成物の窒素分含有量を容易に調整することができる。
【0047】
本発明に係る重油組成物において、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上は、15℃における密度が、0.8800g/cm3~1.1200g/cm3であるものが好ましく、0.88500g/cm3~1.0900g/cm3であるものがより好ましく、0.9000g/cm3~1.0500g/cm3であるものがさらに好ましい。
接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上の15℃における密度が上記範囲内にあることにより、本発明に係る重油組成物におけるセジメント発生を効率的に抑制し、着火性の低下を抑制することができる。
【0048】
本発明に係る重油組成物において、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上は、50℃における動粘度が、1.30mm2/s~150.00mm2/sであるものが好ましく、1.35mm2/s~120.00mm2/sであるものがより好ましく、1.40mm2/s~90.00mm2/sであるものがさらに好ましい。
接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上の50℃における動粘度が上記範囲内にあることにより、直接脱硫重油と接触分解残渣油および接触分解軽油から選ばれる一種以上とを用いて調製された重油組成物は、工業炉やボイラー等に対して安定して供給することが可能となり、内燃機関で使用した場合には噴霧状態が良好となるため、燃焼の不均一性及び失火を抑制することができる。
【0049】
本発明に係る重油組成物において、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上は、実在セジメント量が、0.10質量%以下(0.00質量%~0.10質量%)であるものが好ましく、0.06質量%以下(0.00質量%~0.06質量%)であるものがより好ましく、0.03質量%以下(0.00質量%~0.03質量%)であるものがさらに好ましい。
本発明に係る重油組成物において、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上の実在セジメント量が上記範囲内にあることにより、セジメントの発生を効果的に抑制することができる。
【0050】
本発明に係る重油組成物において、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上は、潜在セジメント量が、0.10質量%以下(0.00質量%~0.10質量%)であるものが好ましく、0.06質量%以下(0.00質量%~0.06質量%)であるものがより好ましく、0.03質量%以下(0.00質量%~0.03質量%)であるものがさらに好ましい。
本発明に係る重油組成物において、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上の潜在セジメント量が上記範囲内にあることにより、貯蔵時のセジメントの発生を効果的に抑制することができる。
【0051】
本発明に係る重油組成物は、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上を、合計で、30容量%~65容量%含み、35容量%~65容量%含むことが好ましく、40容量%~65容量%含むことがより好ましい。
【0052】
本発明に係る重油組成物は、直接脱硫重油を所定量含有するとともに、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上を所定量含有してなるものにおいて、硫黄分含有量、50℃における動粘度、CCAI、潜在セジメントおよび「100℃で48時間エージング後のセジメント量-潜在セジメント量」により算出される48時間エージングによるセジメント増加量を所定値に制御してなるものであることにより、硫黄分の含有割合を好適に低減し、流動性および着火性に優れ、単独で良好な貯蔵安定性を発揮するとともに他の重油組成物との混合後においても良好な貯蔵安定性を発揮し得る重油組成物を提供することができる。
【0053】
本発明に係る重油組成物は、本発明の効果を害さない範囲においてその他の基材を含んでもよく、このような基材としては、例えば接触分解軽油を除く軽油留分を挙げることができる。
【0054】
本出願書類において、接触分解軽油を除く軽油留分とは、軽油やA重油の基材、減圧蒸留残渣のカットバックに用いられる基材として通常使用し得る、沸点範囲170~600℃程度のもの(ただし、接触分解軽油を除く)を意味し、例えば、直留軽油、減圧軽油、直接脱硫軽質軽油、直接脱硫重質軽油、水素化脱硫軽油、間接脱硫減圧軽油、熱分解軽油、脱硫減圧軽油等から選ばれる一種以上を挙げることができる。本出願書類において、軽油留分は、所定の物性を有する二種以上の軽油基材の混合物からなるものであってもよい。
なお、本出願書類において、上記「カットバック」とは、動粘度の低減や硫黄分の低減等を目的として残渣油に軽質基材を混合することを意味する。
【0055】
本発明に係る重油組成物は、必要に応じて各種の添加剤を適宜含有するものであってもよい。
添加剤としては、流動性向上剤、流動点降下剤、酸化防止剤、スラッジ分散剤、エマルジョン防止剤、燃焼促進剤、腐食防止剤等公知の燃料添加剤が挙げられる。
添加剤は、1種単独であってもよく、又は2種以上の組み合わせでもよい。
【0056】
本発明に係る重油組成物は、硫黄分含有量が、0.50質量%以下であり、0.47質量%以下であることが好ましく、0.45質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
本発明に係る重油組成物においては、基材となる直接脱硫重油や、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上として、硫黄分の含有量が所望範囲内に制御されたものを採用することにより、硫黄含有量を容易に0.50質量%以下に制御することができる。
【0058】
本発明に係る重油組成物は、窒素分の含有割合が、0.13質量%以下であるものが好ましく、0.12質量%以下であるものがより好ましく、0.11質量%以下であるものがさらに好ましい。
【0059】
本発明に係る重油組成物は、基材となる直接脱硫重油や、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上として、窒素分の含有量が所望範囲内に制御されたものを採用することにより、窒素分の含有量を容易に所望範囲内に制御することができる。
【0060】
本発明に係る重油組成物は、50℃における動粘度が、20.00mm2/秒以上であり、20.00mm2/秒~150.00mm2/秒であることが好ましく、20.00mm2/秒~120.00mm2/秒であることがより好ましい。
本発明に係る重油組成物は、動粘度が上記範囲内にあることにより、工業炉、ボイラーまたは船舶等に対して安定して供給することが可能となり、船舶等の内燃機関で使用した場合には噴霧状態が良好となるため、燃焼の不均一性及び失火を効果的に抑制することができる。
【0061】
本発明に係る重油組成物においては、基材となる直接脱硫重油や、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上を適宜選択することにより、動粘度を容易に所望値に制御することができる。
【0062】
本発明に係る重油組成物は、CCAIが、870以下であり、810~866であることが好ましく、830~861であることがより好ましい。
本発明に係る重油組成物は、CCAIが870以下であることにより、優れた着火性を容易に発揮することができる。
【0063】
本発明に係る重油組成物においては、基材となる直接脱硫重油や、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上を適宜選択することにより、CCAIを容易に所望値に制御することができる。
【0064】
本発明に係る重油組成物は、潜在セジメント量が、0.10質量%以下(0.00~0.10質量%)であり、0.00~0.06質量%であることが好ましく、0.00~0.03質量%であることがより好ましい。
本発明に係る重油組成物は、潜在セジメント量が0.10質量%以下であることにより、単独で良好な貯蔵安定性を発揮することができる。
【0065】
本発明に係る重油組成物においては、直接脱硫重油を所定量含有するとともに、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上を所定量含有することにより、潜在セジメント量を容易に所望値に制御することができる。
【0066】
本発明に係る重油組成物は、「100℃で48時間エージング後のセジメント量-潜在セジメント量」により算出される48時間エージングによるセジメント増加量が、0.02質量%以下(0.00~0.02質量%)あり、0.01質量%以下(0.00~0.01質量%)であることが好ましく、増加しないことがより好ましい。
【0067】
上述したように、従来、単独で保存した場合に貯蔵安定性に優れるとされる潜在セジメント量が0.10質量%以下である重油組成物であっても、他の重油組成物と混合した場合には、得られる混合燃料油は必ずしも優れた貯蔵安定性を示さなかった。
しかしながら、本発明に係る重油組成物は、「100℃で48時間エージング後のセジメント量-潜在セジメント量」により算出される48時間エージングによるセジメント増加量が、0.02質量%以下であることにより、単独で優れた貯蔵安定性を発揮するばかりか、他の重油組成物と混合した場合においても優れた貯蔵安定性を容易に発揮することができる。
【0068】
本発明に係る重油組成物は、15℃における密度が、0.9200g/cm3~0.9910g/cm3であることが好ましく、0.9250g/cm3~0.9870g/cm3であることがより好ましく、0.9300g/cm3~0.9830g/cm3であることがさらに好ましい。
【0069】
本発明に係る重油組成物は、実在セジメント量が、0.05質量%以下(0.00質量%~0.05質量%)であることが好ましく、0.04質量%以下(0.00質量%~0.04質量%)であることがより好ましく、0.03質量%以下(0.00質量%~0.03質量%)であることがさらに好ましい。
【0070】
本発明に係る重油組成物は、直接脱硫重油を所定量含有するとともに、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上を所定量含有してなるものにおいて、硫黄分含有量、50℃における動粘度、CCAI、潜在セジメント量および「100℃で48時間エージング後のセジメント量-潜在セジメント量」により算出される48時間エージングによるセジメント増加量を所定値に制御してなるものであることにより、硫黄分の含有割合を好適に低減し、流動性および着火性に優れ、単独で良好な貯蔵安定性を発揮するとともに他の重油組成物との混合後においても良好な貯蔵安定性を発揮し得る重油組成物を提供することができる。
【0071】
本発明に係る重油組成物を調製する方法としては、直接脱硫重油を35容量%~70容量%、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上を合計で30容量%~65容量%含有するように混合して、
硫黄分含有量が0.50質量%以下、
50℃における動粘度が20.00mm2/秒以上、
CCAIが870以下、
潜在セジメント量が0.10質量%以下、
100℃で48時間エージング後のセジメント量-潜在セジメント量により算出される48時間エージングによるセジメント増加量が0.02質量%以下である
重油組成物を得る方法を挙げることができる。
【0072】
上記直接脱硫重油、接触分解残渣油および接触分解軽油の詳細や、これら基材の混合割合の好適な範囲は、上述したとおりである。
【0073】
本発明においては、上記直接脱硫重油と、接触分解残渣油および接触分解軽油から選ばれる一種以上とを、所望性状が得られるように任意の方法によって混合することにより目的とする重油組成物を容易に調製することができる。
【0074】
本発明に係る重油組成物としては、C重油組成物を挙げることができ、係るC重油組成物は、例えば船舶用燃料等として好適に使用することができる。
【0075】
次に、本発明に係る重油組成物の混合対象として好適な重油組成物について説明する。
本発明に係る重油組成物は、製造された後、通常、出荷タンク、出荷後における二次基地のタンク、船舶のタンク等のタンクで他の重油組成物と混合され、貯蔵される。
本発明に係る重油組成物の混合対象として好適な重油組成物としては、直接脱硫重油を主たる基材として含み、50℃における動粘度が20.00mm2/秒以上、CCAIが870以下、潜在セジメント量が0.10質量%以下である重油組成物(以下、適宜、「混合対象油」と称する)を挙げることができ、より具体的には、上記特性を有するC重油を挙げることができる。
【0076】
上記混合対象油は、直接脱硫重油を主たる基材として含む。
本出願書類において、直接脱硫重油を主たる基材として含むとは、直接脱硫重油を35容量%~70容量%含むことを意味する。
上記混合対象油は、直接脱硫重油を、40容量%~70容量%含むものが好ましく、40容量%~65容量%含むものがより好ましい。
【0077】
上記混合対象油は、硫黄分含有量が、0.50質量%以下であるものが好ましく、0.47質量%以下であるものがより好ましく、0.45質量%以下であるものがさらに好ましい。
【0078】
上記混合対象油は、窒素分の含有割合が、0.13質量%以下であるものが好ましく、0.12質量%以下であるものがより好ましく、0.11質量%以下であるものがさらに好ましい。
【0079】
上記混合対象油は、50℃における動粘度が、20.00mm2/秒以上であるものが好ましく、20.00mm2/秒~110.00mm2/秒であるものがより好ましく、20.00mm2/秒~90.00mm2/秒であるものがさらに好ましい。
【0080】
上記混合対象油は、CCAIが、870以下であることが好ましく、800~859であることがより好ましく、800~858であることがさらに好ましい。
【0081】
上記混合対象油は、潜在セジメント量が、0.10質量%以下(0.00~0.10質量%)であることが好ましく、0.00~0.05質量%であることがより好ましく、0.00~0.02質量%であることがさらに好ましい。
【0082】
上記混合対象油は、15℃における密度が、0.9200g/cm3~0.9910g/cm3であることが好ましく、0.9250g/cm3~0.9870g/cm3であることがより好ましく、0.9300g/cm3~0.9830g/cm3であることがさらに好ましい。
【0083】
上記混合対象油は、実在セジメント量が、0.05質量%以下(0.00質量%~0.05質量%)であることが好ましく、0.04質量%以下(0.00質量%~0.04質量%)であることがより好ましく、0.03質量%以下(0.00質量%~0.03質量%)であることがさらに好ましい。
【0084】
上記混合対象油は、二種以上のC重油の混合物であってもよい。
上述したように、本発明に係る重油組成物は、製造された後、通常、出荷タンク、出荷後における二次基地のタンク、船舶のタンク等のタンク内で他の重油組成物と混合され、貯蔵される。
この場合、本発明に係る重油組成物を貯蔵するに先立ってタンク内に二種以上の重油組成物が混合された状態で混合対象油として貯蔵されていたり、本発明に係る重油組成物をタンク内に貯蔵した後、さらに二種以上の重油組成物を混合対象油としてタンク内に貯蔵する場合が想定されるが、このように他の重油組成物との混合後においても本発明に係る重油組成物は良好な貯蔵安定性を発揮することができる。
【0085】
本発明に係る重油組成物と、上記混合対象油とをタンク等で混合する場合、本発明に係る重油組成物の含有割合が、20~80容量%となるように混合することが好ましく、30~70容量%となるように混合することがより好ましく、40~60容量%となるように混合することがさらに好ましい。
【0086】
本発明に係る重油組成物を、上記混合対象油と上記混合割合となるように混合することにより、混合後においても良好な貯蔵安定性を容易に発揮することができる。
【0087】
本発明によれば、硫黄分の含有割合を好適に低減し、流動性および着火性に優れ、単独で良好な貯蔵安定性を発揮するとともに他の重油組成物との混合後においても良好な貯蔵安定性を発揮し得る重油組成物を提供することができる。
【0088】
次に、本発明に係る重油組成物の貯蔵方法について説明する。
本発明に係る貯蔵方法は、本発明に係る重油組成物と、
直接脱硫重油を主たる基材として含み、50℃における動粘度が20.00mm2/秒以上、CCAIが870以下、潜在セジメント量が0.10質量%以下である重油組成物とを、
上記(1)に記載の重油組成物の含有割合が20~80容量%になるように混合した状態で貯蔵する
ことを特徴とするものである。
【0089】
本発明に係る重油組成物や、直接脱硫重油を主たる基材として含む混合対象となる重油組成物(混合対象油)の詳細は、上述したとおりである。
本発明に係る重油組成物と、上記混合対象油とをタンク等で混合する場合、本発明に係る重油組成物の含有割合(混合割合)は、20~80容量%であり、30~70容量%が好ましく、40~60容量%がさらに好ましい。
本発明に係る貯蔵方法において、本発明に係る重油組成物としてはC重油組成物を挙げることができ、直接脱硫重油を主たる基材として含む重油組成物(混合対象油)としてもC重油を挙げることができる。
【0090】
本発明に係る貯蔵方法における具体的態様としては、本発明に係る重油組成物が、製造された後、出荷タンク、出荷後における二次基地のタンク、船舶のタンク等のタンクで、直接脱硫重油を主たる基材として含む重油組成物と混合され、貯蔵される態様を挙げることができる。
【0091】
本発明に係る貯蔵方法によれば、本発明に係る重油組成物を、直接脱硫重油を主たる基材として含む重油組成物と特定の割合で混合することにより、混合後においても良好な貯蔵安定性を容易に発揮することができる。
【実施例0092】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は本実施例により何ら限定されるものではない。
【0093】
(実施例1~実施例4および比較例1~比較例6)
各々表1に示す性状(硫黄分含有量、15℃における密度、50℃における動粘度、CCAI、実在セジメント量、潜在セジメント量、100℃で48時間エージング後のセジメント量(48hセジメント量))を有する、直接脱硫重油1~直接脱硫重油4、接触分解残渣油1~接触分解残渣油2、接触分解軽油1~接触分解軽油2を用いて、各々表2および表3に示す割合で配合することにより、実施例1~実施例4に係る重油1~重油4および比較例1~比較例6に係る比較重油1~比較重油6を調製した。
得られた各重油組成物の性状(硫黄分含有量、15℃における密度、50℃における動粘度、CCAI、実在セジメント量、潜在セジメント量、100℃で48時間エージング後のセジメント量(48hセジメント量))を測定した。
また、上記測定結果に基づいて、「48hセジメント量-潜在セジメント量」により算出される48時間エージングによるセジメント増加量(48hセジメント増加量)を算出した。
結果を表2および表3に示す。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
次いで、実施例1~実施例4で得られた重油1~重油4および比較例3~比較例6で各々得られた比較重油3~比較重油6を、表4に示す混合割合で混合し、得られた混合油における、実在セジメント量および潜在セジメント量を測定した。
また、得られた測定結果に基づいて、「潜在セジメント量-実在セジメント量」により算出されるセジメント増加量(24hセジメント増加量)を算出し、以下の評価基準により貯蔵安定性を評価した。
<貯蔵安定性の評価基準>
〇:24hセジメント増加量が0.02質量%未満
×:24hセジメント増加量が0.02質量%以上
結果を表4に示す。
【0098】
【0099】
表2より、実施例1~実施例4で得られた重油1~重油4は、直接脱硫重油を35容量%~70容量%、接触分解残渣油および接触分解軽油から得られる一種以上を合計で30~75容量%含有するとともに、硫黄分含有量が0.50質量%以下、50℃における動粘度が20.00mm2/秒以上、CCAIが870以下、潜在セジメント量が0.10質量%以下であることにより、硫黄分の含有割合が低減され、流動性および着火性に優れ、単独で良好な貯蔵安定性を発揮し得るものであることが分かる。
また、表2および表4より、実施例1~実施例4で得られた重油1~重油4は、「100℃で48時間エージング後のセジメント量-潜在セジメント量」により算出される48時間エージングによるセジメント増加量が0.02質量%以下であることにより、重油1~重油4を他の重油と混合した場合であっても、得られた混合油のセジメント増加量に基づく貯蔵安定性評価が「〇」評価であって、優れた貯蔵安定性を示すことが分かる。
【0100】
一方、表3より、比較例1~比較例2で得られた比較重油1~比較重油2は、CCAIが所定値を超えていたり(比較例1)、50℃における動粘度が所定値未満であったりする(比較例2)ことから、着火性や流動性に劣るものであることが分かる。
また、表3および表4より、比較例3~比較例6で得られた比較重油3~比較重油6は、いずれも潜在セジメント量が低く、単独で良好な貯蔵安定性を示すものであるが、「100℃で48時間エージング後のセジメント量-潜在セジメント量」により算出される48時間エージングによるセジメント増加量が所定値を超えることから、他の重油と混合した場合には、得られた混合油のセジメント増加量に基づく貯蔵安定性評価が「×」評価となり、貯蔵安定性に劣ることが分かる。
本発明によれば、硫黄分の含有割合を好適に低減し、流動性および着火性に優れ、単独で良好な貯蔵安定性を発揮するとともに他の重油組成物との混合後においても良好な貯蔵安定性を発揮し得る重油組成物を提供するとともに、重油組成物の貯蔵方法を提供することができる。