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特開2023-94281地中障害物除去用ビットを備えた削孔用ケーシング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094281
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】地中障害物除去用ビットを備えた削孔用ケーシング
(51)【国際特許分類】
   E21B 7/00 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
E21B7/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209669
(22)【出願日】2021-12-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】591137363
【氏名又は名称】大洋基礎株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】田中 昌史
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129BA03
2D129BB03
2D129DA11
2D129EA02
2D129EA08
2D129EA11
2D129EA23
2D129EA24
2D129GA01
2D129GA02
(57)【要約】
【課題】地中に残存する旧建物の基礎杭や基礎版等の地中障害物を除去するための地中障害物除去用ビットを備えた削孔用ケーシングを提供する。
【解決手段】ケーシング本体2と、ケーシング本体2の先端部に取り付けられた削孔用ビット3と、ケーシング本体2の内周に取り付けられ、ケーシング本体2及び削孔用ビット3と共に正回転して削孔用ビット3によってケーシング本体2の内側に切り取られた地中障害物の切断面を切削する地中障害物除去用ビット4を有する。地中障害物除去用ビット4は、ケーシング本体2の周壁に取り付けられたビットホルダー6と、ビットホルダー6に取り付けられ、ケーシング本体6が逆回転することによりビットホルダー6から離脱する切削用ビット5とから構成する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング本体と、前記ケーシング本体の先端部に取り付けられた削孔用ビットと、前記ケーシング本体の内周に取り付けられ、前記ケーシング本体および前記削孔用ビットと共に正回転して、前記削孔用ビットによって前記ケーシング本体の内側に切り取られた地中障害物の切断面を切削する地中障害物除去用ビットを備え、全周回転によって地中に圧入される地中障害物除去用ビットを備えた削孔用ケーシングにおいて、前記地中障害物除去用ビットは、前記ケーシング本体の周壁に取り付けられたビットホルダーと、前記ビットホルダーに取り付けられ、前記ケーシング本体が逆回転することにより前記ビットホルダーから離脱する切削用ビットを備えていることを特徴とする地中障害物除去用ビットを備えた削孔用ケーシング。
【請求項2】
請求項1記載の地中障害物除去用ビットを備えた削孔用ケーシングにおいて、前記ビットホルダーは前記切削用ビットが前記ケーシング本体の正回転方向に離脱可能に嵌合するホルダー穴を備えていることを特徴とする地中障害物除去用ビットを備えた削孔用ケーシング。
【請求項3】
請求項2記載の地中障害物除去用ビットを備えた削孔用ケーシングにおいて、前記ホルダー穴の底部に、前記ケーシング本体の円周方向の一端側部から前記ケーシング本体の正回転方向の他端側部にかけて上り勾配のテーパ面が設けられていることを特徴とする地中障害物除去用ビットを備えた削孔用ケーシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中障害物除去用ビットを備えた削孔用ケーシングに関し、例えば、老朽化した旧建物の跡地に新規に施工される基礎杭用の杭孔を掘削した後、ケーシング本体の内周に取り付けられた地中障害物除去用ビットを簡単に取り外すことができ、そして、ビット取外し後のケーシング内に必要とする外径の鉄筋かごを建て込んで、設計断面通りの基礎杭を施工できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
老朽化したビル等の建て替え工事において、旧建物の跡地に基礎杭などの杭孔を削孔する方法として、ケーシング本体の先端に削孔用ビットを備えた削孔用ケーシングを地中に回転させながら圧入しつつ、ケーシング内をハンマーグラブによって削孔する方法が一般に知られている。
【0003】
ところで、削孔中、地中に残存する旧建物の基礎杭や基礎版などの地中障害物を除去することもあり、その場合、削孔用ビットのみを備えた削孔用ケーシングでは、削孔用ビットによる切断部は円形状に連続する溝状に形成され、ケーシングとケーシングの内側と外側に切断された地中障害物との間に隙間がほとんど形成されない。
【0004】
このため、特にケーシングとケーシングの内側に切断された地中障害物との間にハンマーグラブを差し込むことができず、地中障害物を壊したり、取り出すことができないという課題があった。
【0005】
このため、ケーシング本体の内周にケーシング本体と共に回転して、削孔用ビットによってケーシング本体の内側に切断された地中障害物の切断面を切削することにより、ケーシングとケーシングの内側に切断された地中障害物との間にハンマーグラブの先端を差し込めるような充分な隙間を形成するための障害物除去用ビットを備えた削孔用ケーシングが一般に用いられている。
【0006】
また、例えば特許文献1には、既存杭やその他の地中に残置する障害物を撤去するのに用いられる障害物撤去工法用ケーシング装置の発明が開示されている。
【0007】
簡単に説明すると、ハンマーグラブ等の排土装置やカッター等の掘削具もしくは切断具を、ケーシング内側で長さ方向に設けたガイドレールに沿ってケーシング内を下降させ、下降位置でケーシングを回転させて障害物を切断・除去するように構成されている。
【0008】
また、ガイドレールの先端部またはその下側にケーシングの内周面から突出し、先端先細りの水平板体によるガイドレール保護具が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4959747号公報
【特許文献2】特許第6681633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、障害物除去用ビットを備えた削孔用ケーシングは、前記障害物除去用ビットがケーシング本体の内周に完全に固定され、ケーシング内に突出した状態で取り付けられているため、鉄筋かごを建て込む際の障害になり、このためケーシング本体の内径より小径の鉄筋かごを建て込まざるを得ず、設計断面通りの杭径を確保できないことがあった。
【0011】
また、設計断面通りの杭径を確保するには、削孔用ケーシングによる削孔が完了した後、障害物除去用ビットの無い通常のケーシングに置き換えてから鉄筋かごを建て込む必要があり、このため施工工程が増えて工事が遅延し工事費が嵩む等の課題があった。
【0012】
一方、特許文献1の障害物撤去工法用ケーシング装置は、ケーシング内に取り込めるような既存杭の除去はできても、基礎版などを円形に貫通して除去するような削孔は不可能であった。
【0013】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、例えば、老朽化した旧建物の跡地で新規に施工される基礎杭用の杭孔を掘削した後、ケーシング本体の内周に取り付けられた地中障害物除去用ビットを簡単に取り外すことができ、そしてケーシング内に必要とする外径の鉄筋かごを建て込んで、設計断面通りの基礎杭を施工できるようにした地中障害物除去用ビットを備えた削孔用ケーシングを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ケーシング本体と、前記ケーシング本体の先端部に取り付けられた削孔用ビットと、前記ケーシング本体の内周に取り付けられ、前記ケーシング本体および前記削孔用ビットと共に正回転して、前記削孔用ビットによって前記ケーシング本体の内側に切り取られた地中障害物の切断面を切削する地中障害物除去用ビットを備え、地中に全周回転(時計回り方向の回転)によって圧入される地中障害物除去用ビットを備えた削孔用ケーシングであって、前記地中障害物除去用ビットは、前記ケーシング本体の周壁に取り付けられたビットホルダーと、前記ビットホルダーに取り付けられ、前記ケーシング本体が逆回転(反時計回り方向の回転)することにより前記ビットホルダーから離脱する切削用ビットを備えていることを特徴とするものである。
【0015】
前記切削用ビットは、前記ビットホルダーが備えるホルダー穴に離脱可能に嵌合して取り付けことができ、また、前記ホルダー穴の底部に前記ケーシング本体の円周方向の一端側部から前記ケーシング本体の正回転方向の他端側部にかけて上り勾配のテーパ面を設けることで、前記ケーシング本体の逆回転時に前記切削用ビットが前記ケーシング本体の中心方向に強く押し出されることにより、前記切削用ビットと地中障害物の切断面との間に大きな摩擦抵抗が発生する。
【0016】
これにより切削用ビットは前記ケーシング本体と供回りすることなく、ビットホルダーのホルダー穴から前記ケーシング本体の正回転方向にスライドして確実に離脱する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の地中障害物除去用ビットを備えた削孔用ケーシングは、ケーシング本体の内周に取り付けられた地中障害物除去用ビットが、杭孔の削孔が完了した後、ケーシング本体が逆回転することによりケーシング本体の周壁から正回転方向に離脱する。
【0018】
このため、前記地中障害物除去用ビットが鉄筋かご建て込み時の障害になることは無く、削孔用ケーシング内に必要とする外径の鉄筋かごを建て込んで、設計断面通りの基礎杭を施工することができる。
【0019】
また、地中障害物除去用ビットは、削孔用ケーシングが逆回転することによりケーシング本体の内周壁より簡単に離脱するため施工性もよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の削孔用ケーシングの一実施形態を示す斜視図である。
図2図1に図示する削孔用ケーシングの一部拡大斜視図である。
図3図1に図示する削孔用ケーシングの底面図である。
図4】ケーシング本体の取付け穴に取り付けられた地中障害物除去用ビットを示す断面図である。
図5】地中障害物除去用ビットの動作を図示したものであり、図(a)は削孔用ケーシングが逆回転することにより、切削用ビットがビットホルダーのホルダー穴から削孔用ケーシングの正回転方向にスライドして外れる状態を示す断面図、図(b)はビットホルダーの平面図である。
図6】切削用ピットとビットホルダーとからなる地中障害物除去用ビットであり、図(a)はその全体を示す斜視図、図(b)はビットホルダーの斜視図である。
図7】ビット本体と脚部とからなる切削用ビットであり、図(a)はその全体を示す斜視図、図(b)は脚部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1-7は、本発明の地中障害物除去用ビットを備えた削孔用ケーシング(以下「削孔用ケーシング」)の一実施形態を図示したものであり、図において、削孔用ケーシング1は、円筒形に形成されたケーシング本体2の下端部に削孔用ビット3、ケーシング本体2の先端部よりやや上側の内周に地中障害物除去用ビット4をそれぞれ備えている。
【0022】
また、削孔用ケーシング1は、全周回転圧入によって地中に圧入され、かつ削孔深度に応じて複数のケーシング本体2が上方に互いに接合して配置されている。
【0023】
削孔用ビット3と地中障害物除去用ビット4は、共にケーシング本体2の円周方向に所定間隔に取り付けられ、削孔用ビット3は、ケーシング本体2と共に正回転(時計回り回転)して地中および地中内に残存するコンクリート基礎版等などの地中障害物をケーシング本体2の外側と内側に円形状に切断しながら掘進する。
【0024】
地中障害物除去用ビット4は、削孔用ビット3によってケーシング本体2の内側に円版状または円柱状に切り取られた地中障害物の切断面をケーシング本体2および削孔用ビット3と共に回転して切削する。
【0025】
これにより、特にケーシング本体2とケーシング本体2の内側に切断された地中障害物との間にハンマーグラブの先端を差し込めるような充分な隙間が形成されるため、ハンマーグラブによる地中障害物の取り壊しと地上への搬出をきわめて効率的に行うことができる。
【0026】
また、削孔用ビット3によって掘削されたコンクリート掘削片による削孔用ビット先端部分の目詰りが防止され、削孔用ケーシング1のスムーズな回転圧入が可能となる。
【0027】
地中障害物除去用ビット4は、地中障害物の切断面を切削する切削用ビット5と切削用ビット5をケーシング本体2の内側面に保持するビットホルダー6とから構成されている。
【0028】
ビットホルダー6は、ケーシング本体1の円周方向に長辺を有する直方体形状に形成され、かつケーシング本体2の周壁に形成された取付け穴7内に溶接等によって一体的に取り付けられている。なお、取付け穴7はケーシング本体2の側壁を貫通していてもよく、ケーシング本体の内側に凹状に形成されていてもよい。
【0029】
また、ビットホルダー6の内側に切削用ビット5を取り付けるホルダー穴8が形成され、当該ホルダー穴8内に切削用ビット5がケーシング本体2の正回転方向(時計回り方向)にスライドして離脱可能に取り付けられている。
【0030】
ホルダー穴8は、ケーシング本体2の円周方向に長く、かつケーシング本体2の円周方向の一端側端部8aが一番深く、ケーシング本体2の正回転方向に徐々に浅く、かつ正回転方向側の端部8bにおいてケーシング本体1の内周面と面一になるように形成されている。
【0031】
すなわち、ホルダー穴8の底部にケーシング本体2の円周方向の一端側部8aからケーシング本体2の正回転方向の他端側部8bにかけて上り勾配のテーパ面が形成されている。
【0032】
切削用ビット5は、地中障害物の切断面をケーシング本体2の円周方向に切削する刃を有するビット本体5aと、ビットホルダー6のホルダー穴8内にケーシング本体2の逆回転方向に嵌め込まれる嵌合部を有する脚部5bとから形成され、脚部5bの底部にホルダー穴8の底面部に対応してケーシング本体2の正回転方向に上り勾配をなすテーパ面が形成されている。また、ビット本体5aと脚部5bは部品化され、互いに切り離し可能に組み立てられている。
【0033】
このような構成において、ケーシング本体2が削孔用ビット3と共に正回転しているとき、切削用ビット5は、ビットホルダー6のホルダー穴8に保持され、ケーシング本体2および削孔用ビット3と共に正回転することにより、削孔用ビット3によってケーシング本体2の内側に切り取られた地中障害物の切断面を切削する。
【0034】
一方、ケーシング本体2が削孔用ビット3と共に逆回転すると、切削用ビット5は、ホルダー穴8内をケーシング本体2および削孔用ビット3の正回転方向にスライドしてビットホルダー6のホルダー穴8からケーシング本体2の正回転方向にスライドして離脱する。
【0035】
なお、ホルダー穴8の底面部と当該底面部に対応する切削用ビット5の脚部5bの底面部が、ケーシング本体2の正回転方向に上り勾配を成すテーパ状に形成されているため、ケーシング本体2の逆回転時に、切削用ビット5はケーシング本体2の中心方向に押し出されることにより地中障害物の切断面との摩擦抵抗を確実に受ける。
【0036】
これにより、切削用ビット5は、ケーシング本体2との供回りが防止され、ケーシング本体2の正回転方向にスライドしてビットホルダー6のホルダー穴8から確実に離脱する。
【0037】
なお、切削用ビット5は消耗品であり、ビットホルダー6のホルダー穴8から離脱した後は放置しても回収してもよい。また、回収された切削用ビット5については、刃を有するビット本体5aのみを新しいものに取り換え、再利用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、老朽化した旧建物の跡地に新規に施工される基礎杭用の杭孔を掘削した後、ケーシング本体の内周に取り付けられた地中障害物除去用ビットを簡単に取り外すことができ、そして、ビット取外し後のケーシング内に必要とする外径の鉄筋かごを建て込んで、設計断面通りの基礎杭を施工することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 削孔用ケーシング
2 ケーシング本体
3 削孔用ビット
4 地中障害物除去用ビット
5 切削用ビット
5a ビット本体
5b 脚部
6 ビットホルダー
7 ホルダー取付け穴
8 ホルダー穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7