(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094291
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】景観構造
(51)【国際特許分類】
E06B 7/28 20060101AFI20230628BHJP
E04H 1/02 20060101ALI20230628BHJP
E04H 17/14 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
E06B7/28 G
E04H1/02
E04H17/14 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209684
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】596056678
【氏名又は名称】株式会社 マテリアルハウス
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 秀雄
【テーマコード(参考)】
2E025
2E142
【Fターム(参考)】
2E025AA13
2E142MM00
(57)【要約】
【課題】住宅密集地の居室などの窓から屋外空間域の景色を見られるようにして窓景観の改善化を図り、また屋外からの視線などを遮りプライバシーを保護する。
【解決手段】透明な窓11の屋外側空間域の窓対向部分に平面反射板1を設置し、屋外側空間域自体の景色を屋内10bの人が視覚できるようにした。平面反射板1は、景色が写される第1の面部分である反射面1aと、反射面1aの裏側で窓屋外から窓屋内への視線を遮蔽する第2の面部分とを備え、窓11の下側から屋外側への上り傾斜状態で設けてある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な窓の屋外側空間域の窓対向部分に光反射部材を設置して用いることにより、当該屋外側空間域自体の景色を窓屋内の人が視覚できる景観構造において、
前記光反射部材は、
前記景色が写される第1の面部分と、
前記第1の面部分の裏側で窓屋外から窓屋内への視線を遮蔽する第2の面部分と、
を備えている、
ことを特徴とする景観構造。
【請求項2】
前記光反射部材は、
前記窓の下側から屋外側へ上り傾斜状態で設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の景観構造。
【請求項3】
前記窓が設けられた壁面の屋外側に、
前記景色を前記光反射部材に中継する追加反射面を備えた、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の景観構造。
【請求項4】
前記光反射部材は、
屋外側が窓側に屈曲している、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の景観構造。
【請求項5】
前記窓が設けられた壁面の屋外側に、
前記景色のための図案を備えた、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の景観構造。
【請求項6】
前記光反射部材は、
前記窓が設けられた建屋とは別の建築物に設けられた、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の景観構造。
【請求項7】
前記第1の面部分と前記窓との間に、
排水のための離間部を備えた、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の景観構造。
【請求項8】
前記光反射部材は、
前記第1の面部分の裏側に、振動を吸収する吸音材を備えた、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の景観構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な窓の屋外側空間域の窓対向部分などに光反射部材を設置することにより、当該屋外側空間域の景色(青空,雲,森林,公園など)を、窓屋内の人が当該光反射部材の反射面(例えば窓対向面)へのいわば写し作用で視覚できる景観構造に関する。
【0002】
このように窓屋外に設置した光反射部材の窓対向反射面に青空,雲などの景色が写され、かつ、その裏面は窓屋外から窓屋内への視線を遮蔽して当該窓屋内でのプライバシーが確保されるようにしている。
【0003】
本明細書では屋外方向を「外側」、屋内方向を「内側」という。すなわち各図の左側が「外側」、右側が「内側」となる。
【背景技術】
【0004】
従来より、窓の屋外側に設置して、屋外からの視線を遮り、屋内のプライバシーを守る窓用の目隠し装置が存在している(特許文献1参照)。
【0005】
このような目隠し装置は、不透明材または光を拡散する光透過材を用いた板状部材を窓の屋外側に離間して配置している。
【0006】
用いる不透明材・光透過材によらず、いずれの目隠し装置も窓を通した視線を遮るため外の景色が見えることはない。
【0007】
また、目隠し装置がない場合であっても、隣接する建築物や樹木などが至近にあって屋内から窓を通した視線を遮り外の景色が見えないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の目隠し装置は、窓を通過する視線を遮るためのものであり、窓があっても開放感がなかった。
【0010】
また、隠し装置がなくても、隣接する建築物や樹木などが至近にある場合には窓があっても開放感がなかった。
【0011】
本発明は、窓を通る屋内からの視線を屋外の光反射部材で反射して屋内から窓屋外側空間域の景色(注視点)を見える、ようにするといった新たな着想に基づくものであって、
(11)住宅密集地の居室などの窓景観の改善化を図り、
(12)屋外からの視線などを遮りプライバシーを保護する、
ことなどを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)透明な窓(例えば後述の窓11)の屋外側空間域の窓対向部分に光反射部材(例えば後述の平面反射板1,下反射板2,折曲反射板4)を設置して用いることにより、当該屋外側空間域自体の景色を窓屋内(例えば後述の屋内10b)の人が視覚できる景観構造において、
前記光反射部材は、
前記景色が写される第1の面部分(例えば後述の反射面1a,反射面2a,下側反射面4a,上側反射面4b)と、
前記第1の面部分の裏側で窓屋外から窓屋内への視線を遮蔽する第2の面部分と、
を備えている、
構成態様のものを用いる。
(2)上記(1)において、
前記光反射部材は、
前記窓の下側から屋外側へ上り傾斜状態で設けられている、
構成態様のものを用いる。
(3)上記(1),(2)において、
前記窓が設けられた壁面(例えば後述の壁面10a)の屋外側に、
前記景色を前記光反射部材に中継する追加反射面(例えば後述の上反射板3)を備えた、
構成態様のものを用いる。
(4)上記(1)~(3)において、
前記光反射部材は、
屋外側が窓側に屈曲している、
構成態様のものを用いる。
(5)上記(1)~(4)において、
前記窓が設けられた壁面の屋外側に、
前記景色としての図案(例えば後述の図案13)を備えた、
構成態様のものを用いる。
(6)上記(1)~(5)において、
前記光反射部材は、
前記窓が設けられた建屋とは別の建築物(例えば後述の塀14)に設けられた、
構成態様のものを用いる。
(7)上記(1)~(6)において、
前記第1の面部分と前記窓との間に、
排水のための離間部を備えた、
構成態様のものを用いる。
(8)上記(1)~(7)において、
前記光反射部材は、
前記第1の面部分の裏側に、振動を吸収する吸音材を備えた、
構成態様のものを用いる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上の課題解決手段により、
(21)隣家の存在などにより窓からは直視できない屋外側空間域の景色を屋内から窓を通して見られるようにして景観の改善化を図り、
(22)屋外からの視線などを遮りプライバシーを保護する、
ことなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】単一の平面反射板を用いた景観構造を示す説明図である。
【
図2】一対の平面反射板を用いた景観構造を示す説明図である。
【
図3】単一の折曲反射板を用いた景観構造を示す説明図である。
【
図4】景観対象として壁上の図案を用いた景観構造を示す説明図である。
【
図5】単一の平面反射板を窓のある建屋と別の建築物に固定した景観構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1~
図5を用いて本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
図1~
図5で用いるアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば反射面1a)は原則として当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば平面反射板1)の一部である、ことを示している。
【0017】
ここで、
図1~
図5において、
1は後述の窓11の外側に起き上がり態様で設けられた平面反射板,
1aは平面反射板1の上面に鏡面態様で設定された反射面,
1bは平面反射板1の下端に設けられ後述の窓枠11aに離間状態で固定するための三箇所のブラケット,
1cは平面反射板1の下端に設けられ後述の塀14に固定するためのブラケット,
2は後述の窓11の外側に起き上がり態様で設けられた下反射板,
2aは下反射板2の上面に鏡面態様で設定された反射面,
2bは下反射板2を後述の窓枠11aに固定するためのブラケット,
3は後述の壁面10aに固定された上反射板,
3aは上反射板3の外側に鏡面態様で設定された反射面,
4は後述の窓11の外側に起き上がり態様で設けられた折曲反射板,
4aは折曲反射板4の内側部分の上面に鏡面態様で設定された下側反射面,
4bは折曲反射板4の外側部分の上面に鏡面態様で設定された上側反射面,
4cは折曲反射板4を後述の窓枠11aに固定するためのブラケット,
10は平面反射板1,下反射板2,上反射板3および折曲反射板4を設置する建屋,
10aは建屋10の起立面である壁面,
10bは建屋10の内部空間域である屋内,
11は壁面10aに屋外と屋内との間に設けられた透明な窓,
11aは窓11の外周部分となる窓枠,
12は建屋10や後述の塀14の基礎となる地面,
13は壁面10aに設けられた景観を示す図案,
14は建屋10とは離間して独立した態様で設けられ、平面反射板1を窓11の高さに支持する塀,
Sは利用者の目に相当する視点,
θ1,θ5,θ6は反射面1aの水平に対する起上角度,
θ2は反射面2aの水平に対する起上角度,
θ3は下側反射面4aの水平に対する起上角度,
θ4は上側反射面4bの水平に対する起上角度,
Aは利用者の水平方向の視線であって、
図4においては下側反射面4aで反射した場合の視線,
Bは上側反射面4bで反射した場合の視線(
図4参照),
Cは下側反射面4aの延長面で視線Bが反射した場合の仮想的な視線(
図4参照)
をそれぞれ示している。
【0018】
平面反射板1,下反射板2,上反射板3および折曲反射板4の各反射面(反射面1a,反射面2a,反射面3a,下側反射面4aおよび上側反射面4b)は鏡面加工されたアルミニウムやステンレス、または反射膜を貼付・蒸着した樹脂・ガラスなどの反射材からなる。
【0019】
各反射面の裏面側には、反射材に貼り合わせるかたちで補強材を設けることができる。補強材として、発泡ウレタン板、ハニカムまたはグラスウールなどの空気含有層を備えた振動を吸収する吸音材を用いることで雨滴の衝突による騒音を低減できる。
【0020】
各反射板の大きさは、正対する窓11の幅より大きくすることができる。屋内の利用者が窓11を通して斜めから屋外を見るような場合でも、各反射板が視線をカバーして広い視線範囲で効果を担保できる。
また、このような構成とすることで屋外からの視線を十分に遮ることもできる。
【0021】
ブラケット1b,2b,4cは、各反射板(平面反射板1,下反射板2,上反射板3および折曲反射板4の)と窓枠11aとが離間するように設定されている。これにより落葉や雨水が離間部分より落下し、各反射板の上に溜まらないようにすることができる(
図1~4)。
【0022】
これらの各ブラケットに代えて、離間部分に雨どいやスリット孔などの排水構造を設けて、窓枠11aに直接固定してもよい。またこの場合に、雨どい部分や各反射板を窓11の幅方向水平に対し傾斜状態に設定することで、雨水や落葉・泥などの堆積物の滑落を促進するようにすることができる。
【0023】
図1は、単一の平面反射板1を用いた景観構造を示している。
【0024】
図1において、反射面1aの起上角度θ1は、利用者の視線に建屋10や隣接建築物などが写り込まないという要件を充足する範囲の例えば43度に設定されている。
【0025】
屋内の視点Sからの視線は反射面1aで上方向に反射して、利用者は間接的に天空を見ることになる。利用者から注視点(天空)までの距離を、窓11や反射面1aまでの距離より長く設定できるので利用者は開放感を得ることができる。
【0026】
図2は、一対の平面反射板(下反射板2および上反射板3)を用いた景観構造を示している。
【0027】
図2において、反射面2aの起上角度θ2は利用者の視線が反射面3aに向くという要件を充足する範囲の例えば55度に設定されており、反射面3aは垂直に設けられている。
【0028】
屋内の視点Sからの視線は下反射板2の反射面2aで反射し、上反射板3の反射面3aで反射して中継され、利用者は間接的に天空を見ることになる。利用者から注視点(天空)までの距離を、窓11や反射面2aまでの距離より長く設定できるので利用者は開放感を得ることができる。
【0029】
また、下反射板2の起上角度θ2を大きく設定できるため、景観構造の壁面10aからの突出が小さく、狭い場所にも設置できる。
【0030】
図3は、単一の折曲反射板(折曲反射板4)を用いた景観構造を示している。
【0031】
図3において、反射面4aの起上角度θ3は利用者の視線に建屋10や隣接建築物などが写り込まないという要件を充足する範囲の例えば30度に設定されており、同様に反射面4bの起上角度θ4は例えば45度に設定されている。
【0032】
折曲反射板4の外側が上方に折れているので、景観構造の壁面10aからの突出が小さくなり、狭い場所にも設置できる。
【0033】
また、視線Aと、仮想的に折曲反射板4の折れ曲がりがない場合(一点鎖線部分)で反射した場合の視線Cとを比較して、視線Aは建屋10側に傾いているため、例えば視線C-B間が視線A-B間になるように視線の広がりを抑制して、隣接する建築物や樹木などが視線を遮るなどの影響を受けにくくすることができる。
【0034】
図4は、景観対象として壁面10aに設けられた図案13を用いた景観構造を示している。
【0035】
図4において、反射面1aの起上角度θ5は利用者の視線が図案13に向くという要件を充足する範囲の例えば53度に設定されており、壁面10aの図案13は垂直に設けられている。
【0036】
図案13を用いることで天空以外の各種の景色を提供できる。図案13として壁面10aの模様そのものを利用しても良い。この場合であっても、利用者からの注視点(図案13)を窓11や反射面1aより遠くに設定できるので開放感を得ることができる。
【0037】
図案13は、壁面10aではなく、建屋10の軒(図示せず)や庇(図示せず)の下面に設けてもよい。また、図案13を照明することで、夜間でも景色を提供できる。
【0038】
図5は、単一の平面反射板1を窓11のある建屋10と別の塀14に固定した景観構造を示している。
【0039】
図5において、反射面1aの起上角度θ6は、利用者の視線に建屋10や隣接建築物などが写り込まないという要件を充足する範囲の例えば45度に設定されている。
【0040】
既存の塀14を利用でき、建屋10に追加の加工などによる防水などへの影響がない。また、平面反射板1は塀14の内側に突出するかたちで設けても良い。
【0041】
なお、
図1から
図5で示した反射面の起上角度は一例を示したものであり、これら各数値に限定されることはなく、上述した各要件を充足する任意の値をとり得る。
【0042】
本発明が以上の実施形態に限定されないことは勿論であり例えば、
(31)ブラケット1b,2b,4cを壁面10aに固定する、
(32)折曲反射板4を折れ平面ではなく曲面形状とする、
(33)塀14の代わりに地面12に支柱を設けて、そこに平面反射板1を設ける、
(34)屋内への紫外線や熱の影響を防ぐため、各反射面に紫外線遮断層や赤外線遮断層を設ける、
ようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1:平面反射板(
図1,
図4,
図5参照)
1a:反射面
1b:ブラケット
1c:ブラケット
2:下反射板(
図2参照)
2a:反射面
2b:ブラケット
3:上反射板(
図2参照)
3a:反射面
4:折曲反射板(
図3参照)
4a:下側反射面
4b:上側反射面
4c:ブラケット
10:建屋
10a:壁面
10b:屋内
11:窓
11a:窓枠
12:地面
13:図案(
図4参照)
14:塀(
図5参照)
θ1,θ5,θ6:反射面1aの起上角度
θ2:反射面2aの起上角度
θ3:下側反射面4aの起上角度
θ4:上側反射面4bの起上角度
S:視点(利用者の目)
A:利用者の水平方向の視線
B:上側反射面4bで反射した視線(
図4参照)
C:下側反射面4aの延長面で視線Aが反射した仮想的な視線(
図4参照)