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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094295
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】タイヤ製造用金型の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
B29C33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209688
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】小原 将明
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AA46
4F202AH20
4F202CA21
4F202CD06
4F202CD30
4F202CU01
4F202CU14
(57)【要約】
【課題】ボイド成型材の位置決め精度に優れるタイヤ製造用金型の製造方法を提供する。
【解決手段】タイヤ製造用金型22は、トレッド表面を成型するための金型本体40と、金型本体40とは異なる材料からなりトレッド表面にボイドを成型するためのボイド成型材42と、を備える。ボイド成型材42は、サポート部材66を用いて支持された状態にゴム型50に取り付けられる。ボイド成型材42が支持された状態でゴム型50に石膏が流し込まれてボイド成型材42が固定された石膏鋳型52が作製される。石膏鋳型52に金属を流し込むことによりボイド成型材42が鋳ぐるみされた金型本体40が得られる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド表面を成型するための金型本体と、前記金型本体とは異なる材料からなり前記トレッド表面にボイドを成型するためのボイド成型材と、を備えるタイヤ製造用金型の製造方法であって、
サポート部材を用いて前記ボイド成型材が支持された状態に前記ボイド成型材を前記サポート部材とともにゴム型に取り付けること、
前記ボイド成型材が支持された状態で前記ゴム型に石膏を流し込んで前記ボイド成型材が固定された石膏鋳型を作製すること、及び、
前記石膏鋳型に金属を流し込むことにより前記ボイド成型材が鋳ぐるみされた前記金型本体を鋳造すること、
を含むタイヤ製造用金型の製造方法。
【請求項2】
前記サポート部材を前記ゴム型の成型面から突出した状態で前記ゴム型に取り付け、これにより当該突出した部分が埋め込まれた状態に前記石膏鋳型を作製し、前記金型本体の鋳造後に前記金型本体のトレッド成型面から突出する前記サポート部材の一部を除去する、請求項1に記載のタイヤ製造用金型の製造方法。
【請求項3】
前記サポート部材が前記一部を除去するための破断部を備え、前記金型本体の鋳造後に前記破断部により前記サポート部材を破断して前記一部を除去する、請求項2に記載のタイヤ製造用金型の製造方法。
【請求項4】
前記サポート部材を前記ゴム型の成型面から突出しない状態で前記ゴム型に取り付ける、請求項1に記載のタイヤ製造用金型の製造方法。
【請求項5】
前記サポート部材は、前記ボイド成型材の前記ゴム型への埋め込み部分において最深部から深さ方向の70~95%の範囲で前記ボイド成型材を支持する、請求項4に記載のタイヤ製造用金型の製造方法。
【請求項6】
前記サポート部材は前記金型本体と同じ材料からなる、請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ製造用金型の製造方法。
【請求項7】
前記ボイド成型材が前記金型本体に複数設けられ、各ボイド成型材を複数の前記サポート部材により支持する、請求項1~6のいずれか1項に記載のタイヤ製造用金型の製造方法。
【請求項8】
前記サポート部材は、前記ボイド成型材の前記ゴム型への埋め込み部分において最深部を跨いで幅方向の両側にわたり連結された形状をなす、請求項1~7のいずれか1項に記載のタイヤ製造用金型の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、タイヤ製造用金型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのトレッド表面を製造するための金型は、一般に、石膏鋳型に金属を流し込んで鋳造することにより作製される。また、トレッド表面にサイプなどのボイドを有するタイヤを製造するための金型において、ボイドを成型するためのボイド成型材を金型本体とは異なる材料で作製することがある。例えば、軽量性のため金型本体をアルミニウムなどの軟質金属で作製する一方、強度等の観点からボイド成型材はステンレス鋼などの鉄系金属で作製される。その場合、ボイド成型材は金型本体を鋳造する際に当該金型本体に鋳ぐるみされる。
【0003】
このようなボイド成型材を持つ金型を作製する方法として、次のような方法が知られている。ボイド成型材をゴム型に取り付け、該ゴム型に石膏を流し込むことによりボイド成型材が固定された石膏鋳型を作製する。次いで、ゴム型を外した後、該石膏鋳型に金属を流し込むことにより金型本体を鋳造する。その後、石膏鋳型を取り除くことにより、ボイド成型材が鋳ぐるみされた金型が得られる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-58458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにボイド成型材をゴム型に取り付けて石膏鋳型を作製する際、金属製のボイド成型材をゴム型に対して安定した姿勢で維持することは難しい。ゴム型内でボイド成型材の姿勢が安定しないと、石膏鋳型におけるボイド成型材の位置決め精度が損なわれ、ひいてはタイヤ製造用金型でのボイド成型材の位置決め精度に影響する。近年タイヤ性能を向上させるべく、サイプよりも幅広ではあるが、幅が狭くて深い溝形状をトレッド表面に採用することが主流になっている。そのような溝をボイド成型材により成型する場合、サイプを成型する場合に比べて、ボイド成型材はその自重によりゴム型での姿勢が更に安定しにくくなり、石膏鋳型におけるボイド成型材の位置決め精度が損なわれる。
【0006】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、ボイド成型材の位置決め精度に優れるタイヤ製造用金型の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、トレッド表面を成型するための金型本体と、前記金型本体とは異なる材料からなり前記トレッド表面にボイドを成型するためのボイド成型材と、を備えるタイヤ製造用金型の製造方法である。該製造方法は、サポート部材を用いて前記ボイド成型材が支持された状態に前記ボイド成型材を前記サポート部材とともにゴム型に取り付けること、前記ボイド成型材が支持された状態で前記ゴム型に石膏を流し込んで前記ボイド成型材が固定された石膏鋳型を作製すること、及び、前記石膏鋳型に金属を流し込むことにより前記ボイド成型材が鋳ぐるみされた前記金型本体を鋳造すること、を含む。
【0008】
一実施形態において、前記サポート部材を前記ゴム型の成型面から突出した状態で前記ゴム型に取り付け、これにより当該突出した部分が埋め込まれた状態に前記石膏鋳型を作製し、前記金型本体の鋳造後に前記金型本体のトレッド成型面から突出する前記サポート部材の一部を除去してもよい。その場合、前記サポート部材が前記一部を除去するための破断部を備え、前記金型本体の鋳造後に前記破断部により前記サポート部材を破断して前記一部を除去してもよい。
【0009】
一実施形態において、前記サポート部材を前記ゴム型の成型面から突出しない状態で前記ゴム型に取り付けてもよい。その場合、前記サポート部材は、前記ボイド成型材の前記ゴム型への埋め込み部分において最深部から深さ方向の70~95%の範囲で前記ボイド成型材を支持してもよい。
【0010】
一実施形態において、前記サポート部材は前記金型本体と同じ材料からなるものでもよい。
【0011】
一実施形態において、前記ボイド成型材が前記金型本体に複数設けられ、各ボイド成型材を複数の前記サポート部材により支持するようにしてもよい。
【0012】
一実施形態において、前記サポート部材は、前記ボイド成型材の前記ゴム型への埋め込み部分において最深部を跨いで幅方向の両側にわたり連結された形状をなしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態であると、ゴム型に対してサポート部材を用いてボイド成型材を支持した状態でゴム型に石膏を流し込んで石膏鋳型を作製するので、ゴム型におけるボイド成型材の姿勢が安定化され、石膏鋳型におけるボイド成型材の位置決め精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】タイヤ加硫装置の半断面図
図2】一実施形態に係るタイヤ製造用金型の製造工程を説明するための模式図
図3】第1実施形態における元型の斜視図
図4】第1実施形態におけるゴム型の作製工程を示す斜視図
図5】第1実施形態におけるゴム型の斜視図
図6】第1実施形態における石膏鋳型の作製工程を示す斜視図
図7】第1実施形態における石膏鋳型の斜視図
図8】第1実施形態における金型本体の鋳造工程を示す斜視図
図9】第1実施形態におけるタイヤ製造用金型の取り出し工程を示す斜視図
図10】第1実施形態に係るタイヤ製造用金型の各製造工程におけるボイド成型材周辺の断面図
図11】第1実施形態における石膏鋳型の要部拡大斜視図
図12】第2実施形態に係るタイヤ製造用金型の各製造工程におけるボイド成型材周辺の断面図
図13】第2実施形態における石膏鋳型の要部拡大斜視図
図14】第3実施形態における石膏鋳型の要部拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、空気入りタイヤを加硫成型するためのタイヤ加硫装置10の一例を示す。タイヤ加硫装置10は、加硫金型12と、加硫金型12が取り付けられるコンテナ14と、ブラダー16とを備え、未加硫タイヤを所定形状に成型しつつ加硫する。
【0017】
加硫金型12は、上下一対のサイドプレート18,20と、周方向に分割された複数のセクタ22と、上下一対のビードリング24,26とを備え、タイヤTの外表面を成型する。セクタ22は、タイヤTのトレッド表面T1を成型するための金型であり、タイヤ周方向に複数に分割され、タイヤ半径方向に拡縮変位可能に設けられている。
【0018】
コンテナ14は、セクタ22を保持する複数のセグメント28と、セグメント28をタイヤ半径方向に移動させるジャケットリング30と、上下一対の取付プレート32,34とを備える。ジャケットリング30は、セグメント28に対して相対的に上下動することで、セグメント28をタイヤ半径方向に移動させ、これによりセクタ22がタイヤ半径方向に拡縮変位可能に構成されている。上側の取付プレート32は、不図示の昇降装置により下側の取付プレート34に対して上下動するように構成されている。
【0019】
ブラダー16は、トロイダル状をなす拡縮可能なゴム弾性体からなり、タイヤTの内面側に配置されて加圧気体の供給によって膨らむことによりタイヤTを内側から加圧する。
【0020】
以下、タイヤTのトレッド表面T1(即ち、トレッドの意匠面)を成型するための金型であるセクタ22を製造する方法について説明する。なお、セクタ22以外の金型であるサイドプレート18,20及びビードリング24,24については常法に従い作製することができる。以下の説明においては、セクタ22を「タイヤ製造用金型22」または単に「金型22」という。
【0021】
金型22は、トレッド表面T1を成型するための金型本体40と、トレッド表面T1にボイドを成型するためのボイド成型材42とを備える(図9参照)。通常は複数のボイド成型材42が金型本体40に鋳ぐるみされている。鋳ぐるみとは、一般に異種部材のまわりに溶融金属を流し込んで本体と一体化した鋳造品を得ることをいい、ここではボイド成型材42をインサートとして溶融金属を流し込むことにより、金型本体40にボイド成型材42が一体化された金型22を得ることをいう。
【0022】
金型本体40は、アルミニウムやアルミニウム合金などの軟質金属からなる。金型本体40は、トレッド表面T1を成型するためのトレッド成型面40Aを備える。トレッド成型面40Aには、トレッド表面T1に主溝、即ち周方向溝(図1の符号T2)を成型するためのリブ44が設けられている。リブ44は、トレッド成型面40Aから突出してタイヤ周方向に延びる凸条であり、金型本体40に一体に形成されている。
【0023】
ボイド成型材42は、金型本体40とは異なる材料からなり、強度等の観点から、例えばステンレス鋼などの鉄系金属により形成されることが好ましい。ボイド成型材42により成型されるボイドとしては、トレッド表面T1に設けられる様々な凹みが例示されるが、好ましくは溝状の凹み、例えばサイプや細溝が挙げられる。ここで、サイプは、溝幅2mm以下の切れ込みであり、カーフとも称される。細溝は、主溝よりも溝幅の狭い溝であり、例えば溝幅5mm以下の溝をいう。サイプや細溝は、タイヤ周方向に延びるものでもよく、タイヤ幅方向に延びるものでもよい。ボイド成型材42のうち、金型本体40から突出してボイドを成型する部分を成型部42Aといい、金型本体40に埋め込まれる部分を埋設部42Bという。
【0024】
溝状の凹みを成型する場合、ボイド成型材42は板状をなす。図9に示す例では、ボイド成型材42は平板状をなしているが、ボイド成型材42の形状は平板状には限定されない。例えば、成型する凹みが平面視(開口形状)で湾曲線状である場合、ボイド成型材42は湾曲した板状でもよい。成型する凹みが平面視で屈曲部を持つ線状の場合、ボイド成型材42は屈曲部を持つ板状でもよい。成型する凹みが平面視で波形である場合、ボイド成型材42は波板状でもよい。
【0025】
図2は、金型22の製造方法の概略を示したものであり、次の工程を含む。
工程1.元型46の作製(図2(A)参照)
工程2.元型46への取付穴成型材48の取付(図2(B)参照)
工程3.ゴム型50の作製(図2(C)及び(D)参照)
工程4.ゴム型50へのボイド成型材42の取付(図2(E)参照)
工程5.石膏鋳型52の作製(図2(F)参照)
工程6.金型22の鋳造(図2(G)~(I)参照)。
【0026】
図2(A)に示す工程1では、元型46を作製する。元型46は、金型22により成型されるトレッドと同じ形状を持つ型(タイヤ模型)であり、トレッド表面T1に相当する成型面46A(ゴム型50を成型するための元型46の表面)を持つ。元型46は、例えばエンジニアリングウッドや石膏を用いて、トレッド意匠を切削加工等することにより作製することができる。
【0027】
工程2では、図2(B)に示すように、元型46に取付穴成型材48を取り付ける。取付穴成型材48は、ゴム型50にボイド成型材42を取り付けるための取付穴54(図2(E))を成型する部材である。
【0028】
図3は、取付穴成型材48を取り付けた元型46を示す斜視図である。図3では、下面側にある成型面46A及び取付穴成型材48が透けて見えるように、成型面46Aの凹凸及び取付穴成型材48を実線で示しており、元型46に対する取付穴成型材48の取付け面を破線で示している(図4において同じ)。
【0029】
取付穴成型材48は、この例では元型46の成型面46Aに接着剤などを用いて貼り付けられている。取付穴成型材48は、成型面46Aに溝を設けてその溝に取付穴成型材48の一部を埋め込むようにして取り付けられてもよい。取付穴成型材48は、成型面46Aから突出した部分がボイド成型材42の埋設部42Bに対応した形状を持つ。
【0030】
工程3では、図2(C)に示すように、取付穴成型材48を取り付けた元型46にシリコーンゴム等のゴム材料を流し込んで、成型面46Aをゴム材料で被覆充填することにより、ゴム型50を作製する。詳細には、図4に示すように、ゴム型50を成型するための型56内に元型46を配置して型閉めし、型56と元型46との間の空間58にゴム材料を流入させ、ゴム材料を硬化させる。その後、図2(D)に示すように脱型することにより、ゴム型50が得られる。得られたゴム型50の成型面50A(石膏鋳型52を成型するためのゴム型50の表面)には、図5に示すように、複数の取付穴54が設けられる。
【0031】
工程4では、図2(E)に示すように、ゴム型50の取付穴54にボイド成型材42を挿入して取り付ける。これにより、図6に示すように、ボイド成型材42は、その一部(埋設部42B)がゴム型50に埋め込まれて、残部(成型部42A)が成型面50Aから突出した状態にて、ゴム型50に固定される。
【0032】
工程5では、図2(F)に示すように、ボイド成型材42を取り付けたゴム型50に石膏を流し込んで、ボイド成型材42が固定された石膏鋳型52を作製する。詳細には、図6に示すように、石膏鋳型52を成型するための型60内にゴム型50を配置して型閉めし、ゴム型50の成型面50Aに石膏を流し込んで硬化させる。その際、ボイド成型材42はその一部が石膏鋳型52に埋め込まれた状態に固定される。その後、脱型することにより、石膏鋳型52が得られる。
【0033】
図7は、石膏鋳型52の示す斜視図である。石膏鋳型52の成型面52A(金型22を成型するための石膏鋳型52の表面)にはボイド成型材42が固定されている。図7では、下面側にある成型面52A及びボイド成型材42が透けて見えるように、成型面52Aの凹凸及びボイド成型材42を実線で示しており、ボイド成型材42のうち石膏鋳型52に埋設された部分を破線で示している(図8において同じ)。
【0034】
工程6では、図2(G)及び図2(H)に示すように、ボイド成型材42が固定された石膏鋳型52に溶融金属を流し込むことにより、ボイド成型材42が鋳ぐるみされた金型本体40を鋳造する。詳細には、図8に示すように、金型22を成型するための型62内に石膏鋳型52を配置して型閉めし、型62と石膏鋳型52との間の空間64に溶融金属を注湯する。冷却により凝固させた後、図9に示すように型開きし、石膏鋳型52を破壊する。これにより、図2(I)に示すように金型22が成型され、その後、機械加工や仕上げ研磨等を加えることで最終形状となる。
【0035】
以上のような製造方法において、第1実施形態では、図6及び図10(C)~(D)に示すように、サポート部材66を用いてボイド成型材42が支持された状態にボイド成型材42をサポート部材66とともにゴム型50に取り付け、その状態でゴム型50に石膏を流し込んでボイド成型材42が固定された石膏鋳型52を作製する。
【0036】
サポート部材66は、ボイド成型材42とともにゴム型50に埋設されて、ゴム型50の成型面50Aから突出するボイド成型材42の姿勢を支える部材である。このようにボイド成型材42を支持することによりゴム型50に石膏を流し込む際に、ボイド成型材42の姿勢を安定化することができる。そのため、石膏鋳型52におけるボイド成型材42の位置決め精度を向上させることができ、金型本体40に鋳ぐるみされるボイド成型材42の位置決め精度を向上することができる。
【0037】
この例では、サポート部材66は、板状をなすボイド成型材42をその両側から支えるようにボイド成型材42の両側面に接触させて設けられている。より詳細には、サポート部材66は、図6及び図10(C)に示すように、ボイド成型材42のゴム型50への埋め込み部分42Cにおいて最深部を跨いで幅方向の両側にわたり連結された形状をなしている。すなわち、サポート部材66は、ボイド成型材42の埋め込み部分42Cにおいてボイド成型材42の両側面に沿って深さ方向に延在する一対の棒状の支えバー66A,66Aを、当該埋め込み部分42Cの最深部を跨ぐ連結部66Bで連結した形状を持つ。そのため、サポート部材66は、いわゆるU字型又はC字型をなしている。このように両側が連結された形状を持つことにより、ボイド成型材42の位置決め精度をより高めることができる。
【0038】
本実施形態では、また、サポート部材66が金型本体40と同じ材料からなり、すなわちアルミニウムやアルミニウム合金などの軟質金属で形成されている。これにより、例えば、サポート部材66が金型22のトレッド成型面40Aに露出する際に、トレッド成型面40Aの表面仕上げが容易となり、またタイヤTへの転写によるタイヤ外観品質への影響を最小化することができる。
【0039】
サポート部材66は、各ボイド成型材42に対して1つ設けてもよいが、好ましくは、各ボイド成型材42を複数のサポート部材66により支持することである。これにより、ボイド成型材42の位置決め精度をより高めることができる。図6に示す例では、各ボイド成型材42を2つのサポート部材66,66により支持しており、ボイド成型材42の長手方向における両端部にそれぞれサポート部材66が配されている。
【0040】
ここで、ボイド成型材42の両端部とは、ボイド成型材42の長手方向における寸法を全長L(図11参照)としたとき、ボイド成型材42の長手方向両端からそれぞれ全長Lの30%以内の範囲(L1)をいう。サポート部材66は、ボイド成型材42の両端からそれぞれ全長Lの10~30%の位置に設置されることが好ましい。より好ましくは、当該両端部に加えて長手方向の中央部にもサポート部材66を設けて、長手方向の3箇所でボイド成型材42を支持することである。
【0041】
このように本実施形態では、サポート部材66を用いてボイド成型材42を支持するため、上記工程2で元型46に取付穴成型材48を取り付ける際に次のようにすることが好ましい。図3に示すように、サポート部材66の形状に相当する突起68を取付穴成型材48に設けておく。突起68は、サポート部材66を挿入するための挿入凹所70(図5参照)をゴム型50に成型するためのものである。
【0042】
取付穴成型材48に突起68を設けておくことにより、図10(A)に示すようにその形状に沿ってゴム材料が充填される。そのため、図10(B)及び図5に示すように、ゴム型50の成型面50Aに形成された取付穴54は、ボイド成型材42の埋設部42Bに対応した形状を有するとともに、サポート部材66のための挿入凹所70を有する。
【0043】
次いで、上記工程4において、図10(C)及び図6に示すように、サポート部材66とともにボイド成型材42を取付穴54に差し込んで取り付ける。その際、上記のように挿入凹所70が形成されているため、これらを隙間なく取り付けることができる。
【0044】
第1実施形態では、サポート部材66は、ゴム型50の成型面50Aから突出した状態でゴム型50に取り付けられる。すなわち、サポート部材66は、その一部66Cが成型面50Aから突出しており、この突出した一部66Cでもボイド成型材42を支えている。そのため、ボイド成型材42の位置決め精度をより高めることができる。
【0045】
ゴム型50から外側に露出した上記一部66Cは、上記工程5において石膏鋳型52を作製したとき、図10(D)及び図10(E)に示すように石膏鋳型52内に埋まる。そのため、図11に示されるように、サポート部材66の上記一部66Cがボイド成型材42の成型部42Aとともに埋め込まれた状態で石膏鋳型52が作製される。
【0046】
次いで、上記工程6において、石膏鋳型52に溶融金属を流し込むと、図10(F)に示すように、石膏鋳型52の成型面52Aから露出している部分が金型本体40内に埋設される。そのため、図10(G)及び図9に示すように、石膏鋳型52に埋設されていたサポート部材66の上記一部66Cがボイド成型材42の成型部42Aとともにトレッド成型面40Aから突出する。従って、図10(H)に示されるように、金型本体40の鋳造後に、この突出するサポート部材66の一部66Cは除去される。
【0047】
図10(G)に示されるように、サポート部材66には、上記一部66Cを除去するための破断部72が設けられていることが好ましい。破断部72は、サポート部材66から上記一部66Cの切除を容易にする種々の構成が挙げられ、この例では切込み(ノッチ)により構成されている。
【0048】
図12(A)~(H)は、第2実施形態に係る金型22の製造工程を説明するための要部断面図であり、図13は第2実施形態における石膏鋳型52の要部斜視図である。
【0049】
第2実施形態では、図12(C)に示すように、サポート部材66Xがゴム型50の成型面50Aから突出しない状態でゴム型50に取り付けられる点で、ゴム型50の成型面50Aから突出した状態でゴム型50に取り付けられる第1実施形態のサポート部材66とは異なる。
【0050】
詳細には、サポート部材66Xは、第1実施形態と同様、ボイド成型材42のゴム型50への埋め込み部分42Cにおいて最深部を跨いで幅方向の両側にわたり連結された形状をなしており、一対の支えバー66A,66Aと連結部66Bとを有する。但し、両側の支えバー66A,66Aの長さが第1実施形態のサポート部材66とは異なり、サポート部材66Xでは、ゴム型50の成型面50Aから突出しないように、支えバー66Aが短く形成されている。そのため、サポート部材66Xの先端66X1(支えバー66Aの先端)と成型面50Aとの間には、空洞部74が設けられている。空洞部74は、挿入凹所70の開口端部として設けられており、この例ではサポート部材66Xが嵌合した部分よりも広幅に形成されている。
【0051】
図12(A)及び図12(B)に示すように、第1実施形態と同様、サポート部材66Xの形状に相当する突起68を設けた取付穴成型材48を元型46に取り付けて、ゴム型50を作製する。それにより形成された挿入凹所70を有する取付穴54に、サポート部材66Xとともにボイド成型材42を差し込んで取り付ける。その際、第2実施形態では、図12(C)に示されるように、サポート部材66Xの先端66X1と成型面50Aとの間に空洞部74が形成される。
【0052】
次いで、工程5により石膏鋳型52を作製したとき、第2実施形態では、図12(D)に示すように、サポート部材66Xは石膏鋳型52に埋まる部分を有しておらず、サポート部材66Xの先端66X1は、石膏鋳型52の成型面52Aから離間した位置にある。詳細には、図12(E)及び図13に示すように、石膏鋳型52の成型面52Aには、成型面52Aから隆起した石膏突起76が空洞部74により成型され、サポート部材66Xの先端66X1は石膏突起76の上面に位置する。そこで、この例では、石膏鋳型52を脱型して取り出した後、図12(F)に示すように、石膏突起76を削って除去する。
【0053】
その後、工程6において、石膏鋳型52に溶融金属を流し込むと、図12(G)及び図12(H)に示すように、サポート部材66Xはその全体が金型本体40内に埋設され、トレッド成型面40Aに露出するサポート部材66Xは存在しない。すなわち、ボイド成型材42は、トレッド成型面40Aから突出するが、それを支持するために設置したサポート部材66Xはその全体が金型本体40内に埋設され、トレッド成型面40Aには露出しない。そのため、タイヤ外観品質の悪化を抑えることができる。
【0054】
第2実施形態において、サポート部材66Xは、ボイド成型材42のゴム型50への埋め込み部分42Cにおいて最深部から深さ方向の70~95%の範囲でボイド成型材42を支持することが好ましい。すなわち、ボイド成型材42の埋め込み部分42Cにおいて、最深部から成型面50Aの深さをD0として、サポート部材66Xが支持している範囲(最深部から先端66X1までの範囲)D1が、D0の70~95%であることが好ましい。このように最深部から70~95%の領域をサポート部材66Xで支えることにより、ボイド成型材42を支える機能を確保しつつ、サポート部材66Xがトレッド成型面40Aに露出させない効果をより確実にすることができる。
【0055】
第2実施形態について、サポート部材66Xを含むその他の構成は、上記の点を除いて基本的に第1実施形態のサポート部材66及びその他の構成と同様であり、説明は省略する。
【0056】
図14は、第3実施形態に係る石膏鋳型52の要部斜視図である。第3実施形態では、サポート部材66Yが、ボイド成型材42の幅方向両側にわたり連結されていない点で第1実施形態のサポート部材66と異なる。すなわち、第3実施形態では、サポート部材66Yは、ボイド成型材42をその両側から支える一対の棒状の支えバー66A,66Aからなり、両者が分離してそれぞれ設けられている。なお、図14では手前側のサポート部材66Yのみが示されているが、反対側にも同様のサポート部材66Yが配されている。
【0057】
サポート部材66Yがゴム型50の成型面50Aから突出した状態でゴム型50に取り付けられ、そのため、この突出したサポート部材66Yの一部66Cが埋め込まれた状態に石膏鋳型52が作製される点、及び、金型本体40の鋳造後に金型本体40のトレッド成型面40Aから突出するサポート部材66Yの一部66Cを除去する点は、第1実施形態と同じである。
【0058】
第3実施形態について、サポート部材66Yを含むその他の構成は、上記の点を除いて基本的に第1実施形態のサポート部材66及びその他の構成と同様であり、説明は省略する。
【0059】
以上の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
22…タイヤ製造用金型、40…金型本体、40A…トレッド成型面、42…ボイド成型材、42A…埋め込み部分、50…ゴム型、50A…成型面、52…石膏鋳型、52A…成型面、66,66X,66Y…サポート部材、72…破断部
図1
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