(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094307
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】シャシダイナモメータの車両固定装置
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
G01M17/007 C
G01M17/007 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209705
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 壮大郎
(57)【要約】
【課題】車両をシャシダイナモメータに複数回載せ降ろしして試験を行う場合に、載せ降ろしの度にシャシダイナモメータに対する適正な位置に車両を固定できるシャシダイナモメータの車両固定装置を提供すること。
【解決手段】車両固定装置20は、シャシダイナモメータ10に対する適正な位置に車両1が固定された状態における、上方カメラ31が撮影した画像に基づいて取得された各ベルトの傾斜角度および長さと、ベルト張力検出部33により検出されたベルト張力と、を適正なベルト状態として記憶するベルト状態記憶部35を備える。ベルト制御部36は、駆動輪2を再度ローラ11に載置した状態で、上方カメラ31が撮影する画像に基づいて取得される各ベルトの現在の傾斜角度および長さと、ベルト張力検出部33により検出される現在のベルト張力と、を適正なベルト状態に合わせるようにベルト調整部25を作動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動輪が載置されるローラを有するシャシダイナモメータと、
前記車両の前部および後部にそれぞれ配置される前側フック部および後側フック部と、
前記車両の前方の床上に配置される左右で一対の前側固定部と、
前記車両の後方の床上に配置される左右で一対の後側固定部と、
前記前側フック部と一対の前記前側固定部とをそれぞれ連結する左右で一対の前側ベルトと、
前記後側フック部と一対の前記後側固定部とをそれぞれ連結する左右で一対の後側ベルトと、
一対の前記前側ベルトおよび一対の前記後側ベルトの長さおよび張力を調整するベルト調整部と、を備え、
前記ローラに前記駆動輪が載置された状態の前記車両を、一対の前記前側ベルトおよび一対の前記後側ベルトによって前記シャシダイナモメータに固定するシャシダイナモメータの車両固定装置において、
前記車両の上方に配置されるカメラと、
一対の前記前側ベルトおよび一対の前記後側ベルトにそれぞれ作用するベルト張力を検出するベルト張力検出部と、
前記シャシダイナモメータに対する適正な位置に前記車両が固定された状態における、前記カメラが撮影した画像に基づいて取得された一対の前記前側ベルトおよび一対の前記後側ベルトの傾斜角度および長さと、前記ベルト張力検出部により検出されたベルト張力と、を適正なベルト状態として記憶するベルト状態記憶部と、
前記駆動輪を前記ローラから降ろして再度前記ローラに載置した状態で、前記カメラが撮影する画像に基づいて取得される一対の前記前側ベルトおよび一対の前記後側ベルトの現在の傾斜角度および長さと、前記ベルト張力検出部により検出される現在のベルト張力と、を前記ベルト状態記憶部に記載されている適正なベルト状態に合わせるように前記ベルト調整部を作動させるベルト制御部と、を備えることを特徴とするシャシダイナモメータの車両固定装置。
【請求項2】
前記カメラを第1のカメラとした場合、前記車両の側方に配置される第2のカメラを備え、
前記ベルト状態記憶部は、前記シャシダイナモメータに対する適正な位置に前記車両が固定された状態における、前記第2のカメラが撮影した画像に基づいて取得された一対の前記前側ベルトおよび一対の前記後側ベルトの傾斜角度および長さと、前記ベルト張力検出部により検出されたベルト張力と、を前記第2のカメラに係る適正なベルト状態として記憶し、
前記ベルト制御部は、前記駆動輪を前記ローラから降ろして再度前記ローラに載置した状態で、前記第2のカメラが撮影する画像に基づいて取得される一対の前記前側ベルトおよび一対の前記後側ベルトの現在の傾斜角度および長さと、前記ベルト張力検出部により検出される現在のベルト張力と、を前記ベルト状態記憶部に記載されている前記第2のカメラに係る適正なベルト状態に合わせるように前記ベルト調整部を作動させることを特徴とする請求項1に記載のシャシダイナモメータの車両固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャシダイナモメータの車両固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のシャシダイナモメータの車両固定装置は、2つの前方固定装置および2つの後方固定装置を備えており、これらの固定装置のベルトの先端のフックを、位置決めされた自動車の前部と後部の固定フックに掛止するようになっている。また、特許文献1に記載のシャシダイナモメータの車両固定装置は、固定制御装置により前方固定装置および後方固定装置の各々のモータ部を駆動することで、ベルトの途中に挿入したロードセルで検出されるベルト張力が所望の値となるように各ベルトを巻き取るとともに、前方固定装置と後方固定装置の各々の減速装置を制御してベルトを固定することにより自動車を固定するようになっている。特許文献1に記載の技術によれば、作業者は、適正な位置に配置された自動車に複数のベルトを連結した後、張力計測部の計測値を参照しながらベルト巻取駆動部を操作することによって、簡易に自動車を安定的に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、シャシダイナモメータを用いる車両の試験は、車両の仕様を一部変更しながらシャシダイナモメータに車両を複数回載せ降ろしすることで実施されることがある。このような試験を実施する場合、ベルト張力が適正な値で一定であるだけではなく、車両の位置も適正な位置で一定である必要がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、ベルト張力を所望の値となるように制御するだけでは車両の位置を適正な位置に調整できないことがあり、シャシダイナモメータに車両を複数回載せ降ろしして試験を行う場合に、車両の位置が適正な位置から変化してしまう場合があった。このため、特許文献1に記載の技術は、シャシダイナモメータに車両を載せ降ろしする度に試験条件が変化してしまい、精度のよい試験結果を得ることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、車両をシャシダイナモメータに複数回載せ降ろしして試験を行う場合に、載せ降ろしの度にシャシダイナモメータに対する適正な位置に車両を固定できるシャシダイナモメータの車両固定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両の駆動輪が載置されるローラを有するシャシダイナモメータと、前記車両の前部および後部にそれぞれ配置される前側フック部および後側フック部と、前記車両の前方の床上に配置される左右で一対の前側固定部と、前記車両の後方の床上に配置される左右で一対の後側固定部と、前記前側フック部と一対の前記前側固定部とをそれぞれ連結する左右で一対の前側ベルトと、前記後側フック部と一対の前記後側固定部とをそれぞれ連結する左右で一対の後側ベルトと、一対の前記前側ベルトおよび一対の前記後側ベルトの長さおよび張力を調整するベルト調整部と、を備え、前記ローラに前記駆動輪が載置された状態の前記車両を、一対の前記前側ベルトおよび一対の前記後側ベルトによって前記シャシダイナモメータに固定するシャシダイナモメータの車両固定装置において、前記車両の上方に配置されるカメラと、一対の前記前側ベルトおよび一対の前記後側ベルトにそれぞれ作用するベルト張力を検出するベルト張力検出部と、前記シャシダイナモメータに対する適正な位置に前記車両が固定された状態における、前記カメラが撮影した画像に基づいて取得された一対の前記前側ベルトおよび一対の前記後側ベルトの傾斜角度および長さと、前記ベルト張力検出部により検出されたベルト張力と、を適正なベルト状態として記憶するベルト状態記憶部と、前記駆動輪を前記ローラから降ろして再度前記ローラに載置した状態で、前記カメラが撮影する画像に基づいて取得される一対の前記前側ベルトおよび一対の前記後側ベルトの現在の傾斜角度および長さと、前記ベルト張力検出部により検出される現在のベルト張力と、を前記ベルト状態記憶部に記載されている適正なベルト状態に合わせるように前記ベルト調整部を作動させるベルト制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように上記の本発明によれば、車両をシャシダイナモメータに複数回載せ降ろしして試験を行う場合に、載せ降ろしの度にシャシダイナモメータに対する適正な位置に車両を固定できるシャシダイナモメータの車両固定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るシャシダイナモメータの車両固定装置により車両が適正な位置に固定された状態を示す側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係るシャシダイナモメータの車両固定装置により車両が適正な位置に固定された状態を示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係るシャシダイナモメータの車両固定装置による車両の位置の調整動作を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係るシャシダイナモメータの車両固定装置は、車両の駆動輪が載置されるローラを有するシャシダイナモメータと、車両の前部および後部にそれぞれ配置される前側フック部および後側フック部と、車両の前方の床上に配置される左右で一対の前側固定部と、車両の後方の床上に配置される左右で一対の後側固定部と、前側フック部と一対の前側固定部とをそれぞれ連結する左右で一対の前側ベルトと、後側フック部と一対の後側固定部とをそれぞれ連結する左右で一対の後側ベルトと、一対の前側ベルトおよび一対の後側ベルトの長さおよび張力を調整するベルト調整部と、を備え、ローラに駆動輪が載置された状態の車両を、一対の前側ベルトおよび一対の後側ベルトによってシャシダイナモメータに固定するシャシダイナモメータの車両固定装置において、車両の上方に配置されるカメラと、一対の前側ベルトおよび一対の後側ベルトにそれぞれ作用するベルト張力を検出するベルト張力検出部と、シャシダイナモメータに対する適正な位置に車両が固定された状態における、カメラが撮影した画像に基づいて取得された一対の前側ベルトおよび一対の後側ベルトの傾斜角度および長さと、ベルト張力検出部により検出されたベルト張力と、を適正なベルト状態として記憶するベルト状態記憶部と、駆動輪をローラから降ろして再度ローラに載置した状態で、カメラが撮影する画像に基づいて取得される一対の前側ベルトおよび一対の後側ベルトの現在の傾斜角度および長さと、ベルト張力検出部により検出される現在のベルト張力と、をベルト状態記憶部に記載されている適正なベルト状態に合わせるようにベルト調整部を作動させるベルト制御部と、を備えることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係るシャシダイナモメータの車両固定装置は、車両をシャシダイナモメータに複数回載せ降ろしして試験を行う場合に、載せ降ろしの度にシャシダイナモメータに対する適正な位置に車両を固定できる。
【実施例0011】
以下、本発明の一実施例に係るシャシダイナモメータの車両固定装置について図面を用いて説明する。
図1から
図3は、本発明の一実施例に係るシャシダイナモメータの車両固定装置を示す図である。なお、
図1から
図3において、紙面の左方向が車両1の前方とする。
【0012】
図1、
図2において、本発明の一実施例に係るシャシダイナモメータ10は、車両1の動力性能や燃費性能、耐久性などを試験する装置である。車両1は、前部4に配置された左右の駆動輪2と、後部5に配置された左右の従動輪3とを備える四輪自動車である。車両1の前部4および後部5には前側フック部6および後側フック部7が配置されている。
【0013】
シャシダイナモメータ10は、車両1の駆動輪2が載置されるローラ11と、この車両1が載置および固定される駆体12と、を備えている。駆体12の内部には図示しない動力計が設けられており、動力計はローラ11に連結されている。シャシダイナモメータ10は、車両1の燃費、転がり抵抗、排気ガス浄化性能等を測定する。駆体12の上面12Aは、車両1が載置される床面を構成している。なお、シャシダイナモメータ10には、駆体12の上面12Aに連続する路面等、車両1の固定および試験を実施するために必要な全ての設備が含まれる。
【0014】
シャシダイナモメータ10には、車両固定装置20が設けられている。車両固定装置20は、後述する複数の固定部やベルト等によって、車両1をシャシダイナモメータ10に固定する。
【0015】
車両固定装置20は、車両1の前方の床上に配置される左右で一対の前側固定部21A、21Bと、車両1の後方の床上に配置される左右で一対の後側固定部22A、22Bと、を備えている。車両1の前側フック部6に対して、前側固定部21Aは左斜め前方に配置され、前側固定部21Bは右斜め前方に配置されている。車両1の後側フック部7に対して、後側固定部22Aは左斜め後方に配置され、後側固定部22Bは右斜め後方に配置されている。
【0016】
車両固定装置20は、左右で一対の前側ベルト23A、23Bを備えており、前側ベルト23A、23Bは、前側フック部6と一対の前側固定部21A、21Bとをそれぞれ連結している。
【0017】
車両固定装置20は、左右で一対の後側ベルト24A、24Bを備えており、後側ベルト24A、24Bは、後側フック部7と一対の後側固定部22A、22Bとをそれぞれ連結している。
【0018】
車両固定装置20はベルト調整部25(
図1参照)を備えており、ベルト調整部25は、一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24B(以下、各ベルトともいう)の長さおよび張力をそれぞれ調整する。ベルト調整部25は、図示しないモータ、巻き取り機構およびロック機構等を備えており、モータにより駆動される巻き取り機構によって各ベルトを巻き取り、ロック機構によって所望の巻き取り状態を維持するようになっている。ベルト調整部25は、最初の試験時は作業者の操作によって作動し、2回目以降の試験時は後述するベルト制御部36からの指令により作動する。
【0019】
このように構成された車両固定装置20は、ローラ11に駆動輪2が載置された状態の車両1を、各ベルトによってシャシダイナモメータ10に固定する。
【0020】
ここで、シャシダイナモメータ10による車両1の試験は、車両1の仕様を一部変更しながらシャシダイナモメータ10に車両1を複数回載せ降ろしすることで実施されることがある。例えば、車両1に搭載されたエンジン制御装置の設定を変更する前後で、車両1をシャシダイナモメータ10に載せてそれぞれ試験を行い、設定変更の前後の試験結果を比較するような場合がある。また、ある仕様のタイヤを装着した車両1をシャシダイナモメータ10に載せて最初の試験を行い、その後に他の異なる仕様のタイヤに交換した車両1をシャシダイナモメータ10に再び載せて試験を行い、タイヤの変更前後の試験結果を比較するような場合がある。
【0021】
このように、シャシダイナモメータ10に車両1を複数回載せ降ろししながら試験を実施する場合に、シャシダイナモメータ10に対する車両1の位置が試験ごとに異なったり、車両1を固定する各ベルトのベルト張力が試験ごとに異なったりすると、車両1の位置やベルト張力が異なることによる影響が試験結果に含まれてしまうため、精度がよく安定した試験結果を得ることができない。
【0022】
例えば、車両1がシャシダイナモメータ10に対する適正な位置から傾いた位置に固定された場合や、各ベルトのベルト張力が適正な値より大きい場合は、ローラ11から駆動輪2に作用する負荷が大きくなってしまう。
【0023】
ここで、本実施例における車両1の「適正な位置」とは、
図1に示すようにシャシダイナモメータ10のローラ11の中心線C1を通って上下に伸びる基準線L1上に車両1の駆動輪2の中心線C2が配置され、かつ、
図2に示すように基準線L1に直交して前後に伸びる基準線L2上に前側フック部6および後側フック部7が配置される位置である。シャシダイナモメータ10に対する車両1の位置が適正である場合、シャシダイナモメータ10に対する車両1の姿勢(角度)も適正な姿勢となる。本実施例では、車両1が「適正な位置」であることには、車両1が「適正な姿勢」であることも含まれる。
【0024】
車両1の載せ降ろしを伴う複数回の試験を実施する場合であっても精度がよく安定した試験結果を得るためには、各試験時に、車両1がシャシダイナモメータ10に対して適正な位置に固定され、かつ、車両1を固定する各ベルトのベルト張力が適正な値となっている必要がある。言い換えれば、車両1が適正な位置にあり各ベルトが適正なベルト張力となっている状態で最初の試験が実施され、かつ、2回目以降の試験も、最初の試験時と同じ適正な位置および適正なベルト張力の状態で実施される必要がある。車両1が適正な位置にあり各ベルトが適正なベルト張力となっているとき、各ベルトの傾斜角度、長さおよびベルト張力の値は、車両1の適正な位置に対応する一定の値となる。
【0025】
そこで、本実施例の車両固定装置20は、最初の試験時に、作業者によって車両1が適正な位置に固定され各ベルトが適正なベルト張力に設定されたときの各ベルトの状態(傾斜角度、長さおよびベルト張力)を適正なベルト状態として記憶しておき、2回目以降の試験時に、適正なベルト状態を再現するようにベルト調整部25を作動させて各ベルトの傾斜角度、長さおよびベルト張力を調整するようになっている。
【0026】
本実施例では、車両固定装置20は、車両1の上方に配置された上方カメラ31を備えている。上方カメラ31は、車両1と、一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24Bとを上方から撮影する。上方カメラ31は本発明における第1のカメラを構成する。
【0027】
車両固定装置20は、制御部30(
図1参照)を備えており、制御部30は、ベルト張力検出部33、映像取得部34、ベルト状態記憶部35およびベルト制御部36を有している。
【0028】
ベルト張力検出部33は、図示しないロードセル等によって、一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24Bにそれぞれ作用するベルト張力を検出する。映像取得部34は、一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24Bの傾斜角度および長さを、上方カメラ31が撮影した画像に基づいて取得する。詳しくは、映像取得部34は、画像上で各ベルトを背景から区別(抽出)し、各ベルトの傾斜角度および長さを取得する。
【0029】
最初の試験時において、ベルト状態記憶部35は、シャシダイナモメータ10に対する適正な位置に車両1が固定された状態における、上方カメラ31が撮影した画像に基づいて取得された一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24Bの傾斜角度および長さと、ベルト張力検出部33により検出されたベルト張力と、を適正なベルト状態として記憶する。
【0030】
車両固定装置20は、ベルト調整部25を作動させるベルト制御部36を備えている。2回目以降の試験時において、ベルト制御部36は、駆動輪2をローラ11から降ろして再度ローラ11上に載置した状態で、上方カメラ31が撮影する画像に基づいて取得される一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24Bの現在の傾斜角度および長さと、ベルト張力検出部33により検出される現在のベルト張力と、をベルト状態記憶部35に記載されている適正なベルト状態に合わせるようにベルト調整部25を作動させる。
【0031】
車両固定装置20は、車両1の側方(左側方)に配置された側方カメラ32を備えている。側方カメラ32は、車両1と、一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24Bとを側方から撮影する。側方カメラ32は本発明における第2のカメラを構成する。映像取得部34は、一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24Bの傾斜角度および長さを、側方カメラ32が撮影した画像に基づいて取得する。
【0032】
最初の試験時において、ベルト状態記憶部35は、シャシダイナモメータ10に対する適正な位置に車両1が固定された状態における、側方カメラ32が撮影した画像に基づいて取得された一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24Bの傾斜角度および長さと、ベルト張力検出部33により検出されたベルト張力と、を側方カメラ32に係る適正なベルト状態として記憶する。
【0033】
2回目以降の試験時において、ベルト制御部36は、駆動輪2をローラ11から降ろして再度ローラ11に載置した状態で、側方カメラ32が撮影する画像に基づいて取得される現在の一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24Bの傾斜角度および長さと、ベルト張力検出部33により検出される現在のベルト張力と、をベルト状態記憶部35に記載されている側方カメラ32に係る適正なベルト状態に合わせるようにベルト調整部25を作動させる。
【0034】
本実施例では、上方カメラ31により撮影された画像上で、前側ベルト23A、23Bの傾斜角度は、基準線L2に対して前側ベルト23A、23Bがなす角度(挟角)23C、23Dとして取得され、後側ベルト24A、24Bの傾斜角度は、基準線L2に対して後側ベルト24A、24Bがなす角度(挟角)24C、24Dとして取得される。また、側方カメラ32により撮影された画像上で、前側ベルト23A、23Bの傾斜角度は、駆体12の上面12Aに対して前側ベルト23A、23Bが共通になす角度(挟角)23Eとして取得され、後側ベルト24A、24Bの傾斜角度は、駆体12の上面12Aに対して後側ベルト24A、24Bが共通になす角度(挟角)24Eとして取得される。
【0035】
なお、側方カメラ32により撮影された画像に基づく各ベルトの傾斜角度を、4つの各ベルトの個別の傾斜角度として取得するように構成してもよい。例えば、1つの側方カメラ32により撮影された画像上で各ベルトが左右方向に重なっている状態であっても抽出できるように各ベルトの太さや色彩を異ならせることにより、各ベルトが左右方向に重なっている状態であっても、4つの各ベルトの個別の傾斜角度を取得することができる。または、車両1の左右の両側方にそれぞれ側方カメラ32を配置することで、各ベルトが左右方向に重なっている状態であっても、4つの各ベルトの個別の傾斜角度を取得することができる。
【0036】
このように、本実施例の車両固定装置20は、上方カメラ31および側方カメラ32により撮影された画像上の車両1の位置を直接測定して各ベルトを調整するのではなく、撮影された画像上の各ベルトの傾斜角度および長さを測定し、その傾斜角度および長さと、ベルト張力検出部33により検出されたベルト張力とを、最初の試験時に記憶した適正なベルト状態に合わせるように各ベルトを調整している。
【0037】
そのため、各ベルトの傾斜角度および長さを精度よく調整することができる。また、画像上で各ベルトを背景から精度よく区別(抽出)できるように、各ベルトの模様や色彩、および背景となる駆体12の上面12A等の模様や色彩を設定しておくことにより、各ベルトの傾斜角度および長さをさらに精度よく取得することができる。
【0038】
図3を参照し、車両固定装置20による車両1の位置の調整動作について説明する。この調整動作は、最初の試験時にベルト状態記憶部35に記憶された適正なベルト状態を参照し、2回目以降の試験時に行われる。
【0039】
図3において、車両1の現在の位置(実線で表す)は、車両1の適正な位置(破線で表す)に対して傾斜しており、一対の後側ベルト24A、24Bについては、適正なベルト状態に対応する値からずれている。
【0040】
そこで、ベルト制御部36(
図1参照)は、一対の後側ベルト24A、24Bについて、現在の傾斜角度、長さおよびベルト張力が、適正なベルト状態に対応する傾斜角度、長さおよびベルト張力に一致するように、ベルト調整部25を作動させる。なお、
図3のように後側フック部7の位置が基準線L2からずれている場合、ベルト制御部36は、例えば、基準線L2に平行で後側フック部7を通る幅基準線L3を設定し、この幅基準線L3に対する後側ベルト24A、24Bの角度を傾斜角度として取得する。
【0041】
以上説明したように、本実施例では、車両固定装置20は、車両1の上方に配置される上方カメラ31と、一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24Bにそれぞれ作用するベルト張力を検出するベルト張力検出部33と、を備えている。また、車両固定装置20は、ベルト状態記憶部35を備えている。最初の試験時に、ベルト状態記憶部35は、シャシダイナモメータ10に対する適正な位置に車両1が固定された状態における、上方カメラ31が撮影した画像に基づいて取得された一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24Bの傾斜角度および長さと、ベルト張力検出部33により検出されたベルト張力と、を適正なベルト状態として記憶する。
【0042】
そして、2回目以降の試験時に、ベルト制御部36は、駆動輪2をローラ11から降ろして再度ローラ11に載置した状態で、上方カメラ31が撮影する画像に基づいて取得される一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24Bの現在の傾斜角度および長さと、ベルト張力検出部33により検出される現在のベルト張力と、をベルト状態記憶部35に記載されている適正なベルト状態に合わせるようにベルト調整部25を作動させる。
【0043】
これにより、車両1を再度ローラ11に載置して試験を行うときに、上方カメラ31の画像により取得される現在の一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24Bの傾斜角度および長さと、ベルト張力検出部33により得られる現在のベルト張力とが、ベルト状態記憶部35に記載されている適正なベルト状態に合うように自動的に調整される。この結果、車両1をシャシダイナモメータ10に複数回載せ降ろしして試験を行う場合に、載せ降ろしの度にシャシダイナモメータ10に対する適正な位置に車両1を固定できる。
【0044】
また、本実施例では、車両固定装置20は、車両1の側方に配置される側方カメラ32を備えている。最初の試験時に、ベルト状態記憶部35は、シャシダイナモメータ10に対する適正な位置に車両1が固定された状態における、側方カメラ32が撮影した画像に基づいて取得された一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24Bの傾斜角度および長さと、ベルト張力検出部33により検出されたベルト張力と、を側方カメラ32に係る適正なベルト状態として記憶する。
【0045】
そして、2回目以降の試験時に、ベルト制御部36は、駆動輪2をローラ11から降ろして再度ローラ11に載置した状態で、側方カメラ32が撮影する画像に基づいて取得される現在の一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24Bの傾斜角度および長さと、ベルト張力検出部33により検出される現在のベルト張力と、をベルト状態記憶部35に記載されている側方カメラ32に係る適正なベルト状態に合わせるようにベルト調整部25を作動させる。
【0046】
これにより、駆動輪2を再度ローラ11に載置して試験を行うときに、一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24Bの傾斜角度および長さが、側方カメラ32が撮影する画像に基づいて取得される。このため、各ベルトの側方から見た傾斜角度および長さについても、適正なベルト状態に合わせるように調整される。したがって、一対の前側ベルト23A、23Bおよび一対の後側ベルト24A、24Bの傾斜角度、長さおよびベルト張力の調整精度を向上させることができる。
【0047】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。