(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094339
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】異常感知器及び異常感知システム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20230628BHJP
G08B 17/12 20060101ALI20230628BHJP
G01J 1/04 20060101ALI20230628BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
G08B17/00 G
G08B17/12
G01J1/04 E
G01J1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209761
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 聡司
(72)【発明者】
【氏名】平塚 秀則
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 孝治
【テーマコード(参考)】
2G065
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
2G065AB02
2G065AB22
2G065BA14
2G065BA37
2G065CA29
2G065DA06
5C085AA11
5C085CA30
5C085FA16
5G405AA01
5G405AB05
5G405CA60
5G405FA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】窓部が堆積粉塵等で激しく汚れる環境においても、異常感知を行うことが可能な異常感知器及び異常感知システムを提供すること。
【解決手段】炎感知器1は、感知器本体11の前面に設けた凹部113を介して、感知視野内の異常をセンサ部が検知する異常感知器であって、凹部113に向けたノズル部14と、ノズル部14に高圧気体を供給可能な送気管12と、を備え、高圧気体を凹部14に吹き付けて、凹部14に溜まった堆積粉塵又は凹部113に設けた窓部114に付着した堆積粉塵を除去する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感知器本体の前面に設けた凹部を介して、感知視野内の異常をセンサ部が検知する異常感知器であって、
前記凹部に向けたノズル部と、
前記ノズル部に高圧気体を供給可能な送気管と、を備え、
前記高圧気体を前記凹部に吹き付けて、前記凹部に溜まった堆積粉塵又は前記凹部に設けた窓部に付着した堆積粉塵を除去することを特徴とする異常感知器。
【請求項2】
汚れ検知機能を有し、
前記窓部の汚れを検知したときに、前記高圧気体を前記凹部に吹き付けることを特徴とする請求項1に記載された異常感知器。
【請求項3】
前記ノズル部は、分岐した複数の送気管の先端を前記凹部の幅方向に並べて形成されることを特徴とする請求項1または2に記載された異常感知器。
【請求項4】
前記凹部は第1方向に長く形成されており、
前記第1方向で前記高圧気体を前記凹部に吹き付けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載された異常感知器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載された異常感知器の送気管に送気配管を接続し、
前記送気配管を、火災監視対象物を貯蔵した倉庫の開口部近傍まで延在させて前記高圧気体を供給する気体供給源に接続可能としたことを特徴とする異常感知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体の凹部を介する感知視野を有した異常感知器に関し、粉塵のある環境下で使用することに適した異常感知器及び異常感知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
炎感知器のような異常感知器には、窓部を介する感知視野を有するものがある。炎感知器では、凹部に設けた窓部の内側に赤外線センサが設けられ、赤外線センサから窓部を介して略円錐状に拡がる感知視野を有する。このような異常感知器の窓部が汚れると、異常を感知することが難しくなる。そこで、特許文献1の炎感知器は、窓部の汚れを検出する機能を備え、検出した汚れの量により赤外線の受光量を補正して炎を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の炎感知器では、窓部の汚れが激しくなると赤外線を受光することができなくなり、補正を行っても炎を検知することは難しい。例えば、バイオマス燃料の倉庫のように、粉塵が多い場所で炎感知器を用いる場合に、窓部に粉塵が溜まると赤外線が透過しない。そのような状態では、補正を行っても炎感知を行うことは困難である。このような状況は炎感知器だけでなく、本体の凹部に設けた窓部を介する感知視野を有した異常感知器で生じ易い。
【0005】
本発明は、窓部が堆積粉塵等で激しく汚れる環境においても、異常感知を行うことが可能な異常感知器及び異常感知システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る異常感知器は、感知器本体の前面に設けた凹部を介して、感知視野の異常をセンサ部が検知する異常感知器であって、前記凹部に向けたノズル部と、前記ノズル部に高圧気体を供給可能な送気管と、を備え、前記高圧気体を前記凹部に吹き付けて、前記凹部に溜まった堆積粉塵又は凹部に設けた窓部に付着した堆積粉塵を除去するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の異常感知器は、窓部が堆積粉塵等で激しく汚れる環境においても、異常感知を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】炎感知器が設置されたバイオマス倉庫の平面図。
【
図2】炎感知器が設置されたバイオマス倉庫の断面図。
【
図3】(a)実施例1の炎感知器を前方から見た図と、(b)側方から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態の一例として、バイオマス倉庫4に炎感知器1を設置した例を示す。炎感知器1は、感知視野Vを有する感知器であって、この感知視野V内に異常である高温または火災を、センサ部である赤外線センサが検知する異常感知器である。バイオマス倉庫4の平面図を
図1に示す。バイオマス倉庫4には、バイオマス燃料5として木質ペレットが貯蔵されている。木質ペレット等のバイオマス燃料5を多量に保管すると、バイオマス燃料5の酸化等により生じた熱が内部に溜まり、自然発火する場合がある。そのため、バイオマス燃料5の内部に熱が溜まらないように管理するが、自然発火した場合に備えて火災感知器を設置することが望ましい。本実施形態においては、バイオマス燃料5を火災監視対象物として炎感知器1を設置する。
【0010】
図1に示す実施形態のバイオマス倉庫4では、3つの炎感知器1により火災を感知する。
図1は、バイオマス倉庫4の中を上方から見た図であり、バイオマス燃料5を保管している。炎感知器1は、バイオマス倉庫4の2つの角部近傍と、対向する壁41の中央付近に設置されている。炎感知器1は、バイオマス倉庫4の中央に向いている。また、側方から見ると、
図2のバイオマス倉庫4の断面図に示すように、炎感知器1はバイオマス倉庫4の上部である天井または天井近辺の柱に、感知視野Vを斜め下方に向けて設置されている。3つの炎感知器1は、感知線21を介して受信機22に接続している。このようにして、感知線21、受信機22を備えた感知設備2と、複数台の炎感知器1により、バイオマス倉庫4の全体における火災を監視する。
【0011】
炎感知器1は炎が発する赤外線を感知して、火災を検知する。そして、堆積したバイオマス燃料5の表面付近が高温になると、炎感知器1で赤外線を感知する。赤外線により火災を感知した炎感知器1は、感知信号を発する。感知信号は
図1、2に示す感知線21を介して受信機22へ送られる。そして、受信機22から別棟に設けた管理センター等に、火災警報が発せられる。
【0012】
一方、実施形態のバイオマス倉庫4には、炎感知器1への送気設備3が設けられている。送気設備3は、送気配管31と接続ボックス32を有する。炎感知器1には送気配管31が接続している。そして、送気配管31の接続口311が、接続ボックス32の中に設けられている。送気配管31は、バイオマス燃料5を貯蔵する倉庫であるバイオマス倉庫4の出入り口である開口部42の近傍まで延在しており、接続口311を設けている。接続口311には、高圧気体の気体供給源であるコンプレッサー33が接続可能である。なお、
図2は、接続ボックス32の扉321が開いて、内部の接続口311が露出している状況を示している。バイオマス倉庫4には、多量のバイオマス燃料5が貯えられるため、バイオマス倉庫4の奥側、つまり
図1の左側であって開口部42と対向する部分に管理者が行くことは難しい。このため、管理者の作業・操作が必要となる受信機22および接続ボックス32は、バイオマス倉庫4の出入り口に相当する開口部42の近傍に設けることが望ましい。
【0013】
炎感知器1には汚れ検出器(図示せず)が設けられており、窓部114の汚れを検出すると、感知線21を介して受信機22に汚れ信号を送信する。なお、この汚れ検出器は、汚れ検知機能として後述する。受信機22が管理センター等に汚れ報知を行うと、管理者が気体供給源であるコンプレッサー33を接続ボックス32の近傍へ運ぶ。
図1、2には、開口部42の外まで運んだコンプレッサー33を示す。実施形態において、コンプレッサー33は、必要時にバイオマス倉庫4の外部から運び込む。そして、管理者がコンプレッサー33の送気チューブ(図示せず)を、接続ボックス32の中の接続口311に接続する。コンプレッサー33を動作させて、コンプレッサー33から高圧気体を送気配管31に送ると、炎感知器1に高圧気体が送られて堆積粉塵6の除去が行われる。実施形態では、炎感知器1、感知設備2、送気設備3により、異常感知システムを形成している。
【実施例0014】
図3(a)は、斜め下方を向いた実施例1の炎感知器1を前方から見たところを示す。
図3(b)は炎感知器1を側方から見た図である。炎感知器1は、感知器本体11と送気管12を有する。炎感知器1では、感知器本体11の上に送気管12が固定されている。感知器本体11の前面111には中央に内側に凹んだ凹部113が形成され、凹部113の底面は窓部114となっている。窓部114の中には、透過する波長帯域が異なるフィルタを備えた3つの赤外線センサ(図示せず)が縦に並んで設置されている。そして、窓部114は第1方向である縦方向に長く形成されている。センサ部である赤外線センサの感知視野Vは、感知器本体11の前方に向かって略円錐状に拡がる。そして、凹部113は、窓部114から前面111に向かって拡がる形状となっている。この凹部113の形状が、感知視野Vの角度を定める要因の一つとなる。
【0015】
バイオマス倉庫4の中では、バイオマス燃料5から生じた粉塵が舞っている。この粉塵は炎感知器1に付着して堆積粉塵6となる。炎感知器1は斜め下方に向けてバイオマス倉庫4の中に設置されるが、窓部114の前面側に堆積粉塵6が付着する。
図3では、凹部113の中に付着した堆積粉塵6を記載している。
図3に示すように堆積粉塵6は凹部113の下方に厚く付着して、窓部114の下方の感知視野Vを塞ぐ。また、窓部114の上方にも図示しない堆積粉塵6が付着して感知視野Vの障害となる。
【0016】
実施例1の炎感知器1は、窓部114の汚れを検知する汚れ検知機能を備えている。炎感知器1において、凹部113の窓部114の側には、窓部114に向けて反射板(図示せず)が設けられている。そして、窓部114の内側に発光部と受光部(図示せず)が設けられ、反射板での発光部の光の反射を受光部が感知することにより、窓部114の汚れを検知する。窓部114に粉塵が付着して堆積粉塵6が生じると、汚れ検知機能の受光部に反射光が入らず、炎感知器1は、窓部114の汚れを検知する。そして、炎感知器1は、感知線21を介して受信機22に汚れ信号を送信する。
【0017】
実施例1の炎感知器1は、感知器本体11の上面112に送気管12が固定されている。
図3に示す実施例1の炎感知器1では、曲折した送気管12を2つ用いている。各々の送気管12の一端は三叉分岐13に接続しており、他端はノズル部14に接続している。送気管12は、ノズル部14に高圧気体を供給可能となっている。なお、実施例1では、送気管12とノズル部14は一体的に形成されている。三叉分岐13は、送気設備3の送気配管31にも接続する。2つの送気管12は、感知器本体11の上面112近傍で、三叉分岐13から離れた方向へ延在した後に屈曲して近づき、さらに屈曲して並んで延在する。2つ並んだ送気管12は、感知器本体11の上面112から前面111の方向へ突出した後、曲折部121で下方へ屈曲する。そして、2つ並んだノズル部14を凹部113の方向へ向ける。
【0018】
ノズル部14は、分岐した複数の送気管12の先端を凹部113の幅方向に並べて形成している。このように、ノズル部14を2つ並べて凹部113の方向へ向けることにより、高圧気体を凹部113に幅広に吹き付けることができる。そして、高圧気体により、感知視野Vの堆積粉塵6を効率的に吹き飛ばす。なお、炎感知器1は、略円錐状に拡がる感知視野Vを有しているが、ノズル部14と送気管12は感知視野Vの外側に位置し、感知視野Vに干渉しない。
【0019】
ノズル部14は、
図3,
図4では、送気管12を2つ並べた先端でノズル部14としているが、それら2つの先端を内径の大きい筒状体でまとめて、その筒状体をノズル部として構成してもよい。ノズル部は、その内側の幅が凹部113の外側の幅とほぼ等しいことが望ましい。これは、そのような内側の幅であれば、凹部113に溜まった堆積粉塵6の全体に所定の高圧空気を当てられるので、確実に堆積粉塵6を吹き飛ばせられるからである。ノズル部は、まとめた筒状体を縦方向に潰して幅方向に拡げた形状でもよい。一方、ノズル部14から凹部113へ出す高圧空気の当て方によっては、凹部113よりも細い幅のノズルでも堆積粉塵6を吹き飛ばすことは可能である。
【0020】
ところで、送気配管31には、外径が5mm程度の細めの銅管を使用することが好ましい。銅管が好ましいのは、曲げ加工など加工がしやすいためである。また、細めの配管が好ましいのは、基端側に接続されるコンプレッサー33に小型のものを使用するためである。バイオマス倉庫4は比較的大きな倉庫であり、太めの配管で送気配管31を構成すると、堆積粉塵6を吹き飛ばすための高圧空気を送るためには大容量のコンプレッサー33が必要となってしまう。しかし、送気配管31を細くして内径を小さくすることで、この点を解消することが可能となる。
実施例1の炎感知器1と異なり、実施例2の炎感知器7は、送気管72が一本であり、ノズル部73も1つである。そして、送気管72は、感知器本体71の上面712から前面711の方向へ突出した後、曲折部721で下方へ屈曲し、ノズル部73を凹部713の方向へ向ける。実施例2の炎感知器7においても、炎感知器7の窓部714に付着した堆積粉塵を高圧気体の吹きつけにより除去することができる。送気管72における曲折部721は、フレキシブル配管のような素材で構成され、自由に折り曲げて、その折り曲げられた角度を維持するものである。なお、実施例1の炎感知器1と同様に、実施例2の炎感知器7におけるノズル部73と送気管72も感知視野Vの外側に位置し、センサ部である赤外線センサ(図示せず)の感知視野Vに干渉しない。送気管72の先端は、縦方向に潰して幅方向に拡げた形状としてもよい。
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
また、異常感知器が汚れ検出器を有していない場合にも、堆積粉塵の除去を行うことができる。その場合には、定期的に堆積粉塵の除去を行ったり、点検の際に管理者が堆積粉塵の状況を見て堆積粉塵の除去を行ったりすることができる。このような運用は、汚れ検出器を有している異常感知器においても行うことができる。
実施形態では、必要な時にコンプレッサー33をバイオマス倉庫4に運び込んで使用する。しかし、コンプレッサー33等の高圧気体の気体供給源をバイオマス倉庫4に常設し、接続口311に接続しておいてもよい。その場合、一定期間毎に自動的に高圧気体を送気配管31に供給して、高圧気体の吹きつけによる堆積粉塵の除去を行ってもよい。また、受信機22が炎感知器1から汚れ信号を受信したときに、受信機22が直接、またはコンプレッサー33を制御する図示しない制御盤を介して、コンプレッサー33を起動して、炎感知器1の送気配管31に高圧空気を供給してもよい。これにより、汚れを検出した際に人手を介在させないで、自動的に炎感知器1の凹部113他に溜まった粉塵を除去するシステムとすることができる。このシステムでは、粉塵は数秒高圧空気を噴射するだけで除去されるので、コンプレッサー33は一定時間だけ起動させればよい。
実施形態では、複数の異常感知器に接続した送気配管31を1本にまとめて一つの接続口311としたが、まとめずに各々の送気配管が接続口を有するようにしてもよい。その場合には、個々の異常感知器に強い高圧気体の吹きつけを行うことができる。また、バルブにより複数の送気配管をまとめて一つの接続口として、バルブの切り換えにより個々の異常感知器に強い高圧気体の吹きつけを行うようにしてもよい。
実施例1、2では、送気管12、17とノズル部14、73が一体的に形成されているが、送気管12、17とは別体のノズル部としてもよい。また、粉塵が入りにくくなるため、ノズル部の設置方向は下方に向けることが好ましいが、これに限らない。上方に向けたり側方や斜め方向にノズル部を向けたりして送気管を設置し、堆積粉塵を除去する高圧気体を吹きつけるようにしてもよい。