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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094341
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20230628BHJP
   B23K 26/02 20140101ALI20230628BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209763
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松本 明久
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AA00
4E168CA06
4E168CA07
4E168CA15
4E168CB04
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA28
4E168EA17
4E168EA24
(57)【要約】
【課題】加工対象物との位置をより正確に調整可能とすること。
【解決手段】レーザ加工装置10は、レーザ光LWを出射するレーザ光源33、可視領域の波長を有するガイド光LGを出射するガイド用光源44、レーザ光LWおよびガイド光LGを走査する走査部46、レーザ光LWおよびガイド光LGが透過する保護ガラス48を有している。変位センサ47は、投光部47aと受光部47bを含む。投光部47aは、加工対象物Wに対して可視領域の波長を有する検出光LKを投光する。変位センサ47は、検出光LKが保護ガラス48の鉛直軸と所定の基準距離で交差するように配置されている。受光部47bは、加工対象物Wにて拡散反射した検出光LK(反射光KR)を受光する。変位センサ47は、受光部47bの受光状態に基づいて距離を測定する。メイン制御部21は、変位センサ47の測定結果に基づいてコンソール14の表示部51に距離を表示する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光にて加工対象物を加工するレーザ加工装置であって、
前記レーザ光を出射するレーザ光源と、
可視領域の波長を有するガイド光を出射するガイド用光源と、
前記レーザ光と前記ガイド光を合流する光合流部材と、
前記レーザ光および前記ガイド光が透過する出射窓部と、
前記レーザ光および前記ガイド光を走査する走査部と、
前記加工対象物に対して可視領域の波長を有する検出光を投光する投光部と、前記加工対象物にて前記検出光が拡散反射された光を受光する受光部と、を含み、前記出射窓部の鉛直軸に対して前記検出光の光軸が前記出射窓部から所定の基準距離で交差するように配置され、前記受光部の受光状態に基づいて距離を測定する変位センサと、
前記加工対象物を前記レーザ光により加工する加工モード、または前記加工対象物の位置を調整する位置調整モードを選択するモード選択部と、
前記加工モードにおいて前記レーザ光により前記加工対象物を加工するように前記走査部を制御し、前記位置調整モードにおいて前記ガイド光により前記加工対象物上に位置調整用の基準マークを投射するように前記走査部を制御する制御部と、
前記位置調整モードは、第1調整モードと第2調整モードとを含み、
前記制御部は、前記第1調整モードにおいて、前記加工対象物上に前記基準マークを投射するとともに前記検出光を前記加工対象物に向けて投光させ、前記第2調整モードにおいて、少なくとも前記検出光を前記加工対象物に向けて投光して前記加工対象物までの距離を測定させ、測定結果を表示部に表示させる、
レーザ加工装置。
【請求項2】
前記出射窓部において前記レーザ光が出射する出射面の側から視て、前記投光部および前記受光部は、前記走査部に向かう前記レーザ光の光軸に対して交差する方向に並んで配置されている、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記出射窓部において前記レーザ光が出射する出射面の側から視て、前記受光部は、前記走査部に向かう前記レーザ光の光軸に対して前記投光部と同じ側に配置されている、請求項1または請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記投光部および前記受光部は、前記走査部に向かう前記レーザ光の光軸に対して直交する方向に並んで配置されている、請求項2または請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記投光部および前記受光部は、前記鉛直軸を中心とする円の周方向に並んで配置されている、請求項2または請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記位置調整モードにおいて、前記加工対象物までの加工物距離は変更可能に設定される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記制御部は、測定結果の測定距離を前記表示部に表示させる、請求項6に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記加工物距離を前記表示部に表示させる、請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記制御部は、測定結果の測定距離と前記加工物距離との差を相対距離とし、前記相対距離を前記表示部に表示させる、請求項6から請求項8のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記変位センサの受光量が第1設定値より小さいの場合に測定エラーを報知する、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
前記加工対象物の情報を設定する加工対象物設定部を備え、
前記加工対象物の情報は、前記加工対象物の表面における前記検出光の反射に関する情報を含み、
前記制御部は、前記検出光が正反射する前記情報が設定された場合に、前記変位センサによる前記距離の測定を無効化する、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
前記レーザ光の焦点距離を変更する焦点調整部を備え、
前記制御部は、前記焦点調整部を制御して、前記加工モードにおいて、前記レーザ光の焦点距離を、前記位置調整モードの前記第2調整モードにおける測定結果の測定距離とするように調整する、
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
前記基準距離は、前記焦点調整部にて調整した基準焦点距離である、請求項12に記載のレーザ加工装置。
【請求項14】
前記基準焦点距離は、前記焦点調整部にて調整可能な焦点距離のうち、前記出射窓部から最も遠い最遠焦点距離と、前記出射窓部に最も近い最近焦点距離との間の中間の距離である、請求項13に記載のレーザ加工装置。
【請求項15】
前記変位センサは、前記検出光が前記出射窓部を透過するように配置されている、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記第2調整モードにおいて、前記加工対象物に前記ガイド光を照射しない状態で前記変位センサによる測定を行うように制御する、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置は、不可視光であるレーザ光を出射するレーザ光源と、可視光であるガイド光を出射する可視光源とを備える(例えば、特許文献1,2参照)。このレーザ加工装置は、加工対象物にレーザ光を照射し、そのレーザ光によって加工対象物を加工する。また、レーザ加工装置は、加工対象物に対して加工用のレーザ光が照射される位置と同一位置に可視光であるガイド光を照射する。このガイド光により、作業者は、加工対象物におけるレーザ光の照射位置の確認、加工対象物の位置の調整、等を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-208132号公報
【特許文献2】特開2017-030011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ光は、焦点位置にてエネルギーが最も高い。このため、高エネルギーで加工するアプリケーションでは、加工対象物を焦点位置に配置する、つまり、加工対象物をレーザ加工装置の焦点距離の位置に配置することが必要となる。しかしながら、ガイド光を用いた位置調整では、作業者の視認によるものであるため、加工対象物の位置が焦点位置からずれるおそれがある。このため、より正確な位置調整が求められる。
【0005】
一方、樹脂等の加工対象物の加工面に対して発色印字と呼ばれるアプリケーションでは、加工対象物の加工面を、焦点位置からずらした位置に配置することが必要となる場合がある。このような場合、焦点位置に対して遠距離側または近距離側に加工対象物(加工面)を配置することが必要となる。このような場合にも、正確な位置調整が求められる。
【0006】
本開示の目的は、加工対象物の位置をより正確に調整可能としたレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のレーザ加工装置は、レーザ光にて加工対象物を加工するレーザ加工装置であって、前記レーザ光を出射するレーザ光源と、可視領域の波長を有するガイド光を出射するガイド用光源と、前記レーザ光と前記ガイド光を合流する光合流部と、前記レーザ光および前記ガイド光が透過する出射窓部と、前記レーザ光および前記ガイド光を走査する走査部と、前記加工対象物に対して可視領域の波長を有する検出光を投光する投光部と、前記加工対象物にて前記検出光が拡散反射された光を受光する受光部と、を含み、前記出射窓部の鉛直軸に対して前記検出光の光軸が前記出射窓部から所定の基準距離で交差するように配置され、前記受光部の受光状態に基づいて距離を測定する変位センサと、前記加工対象物を前記レーザ光により加工する加工モード、または前記加工対象物の位置を調整する位置調整モードを選択するモード選択部と、前記加工モードにおいて前記レーザ光により前記加工対象物を加工するように前記走査部を制御し、前記位置調整モードにおいて前記ガイド光により前記加工対象物上に位置調整用の基準マークを投射するように前記走査部を制御する制御部と、前記位置調整モードは、第1調整モードと第2調整モードとを含み、前記制御部は、前記第1調整モードにおいて、前記加工対象物上に前記基準マークを投射するとともに前記検出光を前記加工対象物に向けて投光させ、前記第2調整モードにおいて、少なくとも前記検出光を前記加工対象物に向けて投光して前記加工対象物までの距離を測定させ、測定結果を表示部に表示させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示のレーザ加工装置によれば、加工対象物の位置をより正確に調整可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態のレーザ加工装置を示す斜視図である。
図2図2は、図1のレーザ加工装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3図3は、図1のヘッドユニットの内部構造の概略を示す平面図である。
図4図4は、図1のヘッドユニットの内部構造を下面から視た一部概略構成図であり、レーザ光およびガイド光の光軸と変位センサの関係を示す説明図である。
図5図5は、図1のヘッドユニットを正面から視た概略図であり、レーザ光およびガイド光の光軸と変位センサの関係を示す説明図である。
図6図6は、図1のヘッドユニットを側面から視た概略図であり、レーザ光およびガイド光の光軸と変位センサの関係を示す説明図である。
図7A図7Aは、焦点調整部におけるレンズ位置とレーザ光の焦点位置との関係を示す説明図である。
図7B図7Bは、焦点調整部におけるレンズ位置とレーザ光の焦点位置との関係を示す説明図である。
図7C図7Cは、焦点調整部におけるレンズ位置とレーザ光の焦点位置との関係を示す説明図である。
図8図8は、ガイド光によるガイドマークおよびガイド点を示す説明図である。
図9図9は、変更例のレーザ加工装置の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、レーザ加工装置の一実施形態を図面に従って説明する。
以下に示す実施形態は、技術的思想を具体化するための構成や方法を例示するものであり、各構成部品の材質、形状、構造、配置、寸法等を下記のものに限定するものではない。なお、説明を簡単かつ明確にするために、図面に示される構成要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。添付の図面は、本開示の実施形態を例示するに過ぎず、本開示を制限するものとみなされるべきではない。本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単に対象物を区別するために用いられており、対象物を順位づけするものではない。
【0011】
[レーザ加工装置の概要]
図1に示すように、レーザ加工装置10は、コントローラユニット11、光源ユニット12、ヘッドユニット13、コンソール14を有している。光源ユニット12は、第1電気ケーブル81と光ファイバケーブルFLとによりヘッドユニット13に接続されている。また、光源ユニット12は、第2電気ケーブル82によりコントローラユニット11に接続されている。第1電気ケーブル81は、第1電源ケーブルSP1と第1信号ケーブルSL1とから構成されている。第2電気ケーブル82は、第2電源ケーブルSP2と第2信号ケーブルSL2とから構成されている。コントローラユニット11は、電源ケーブルによりAC電源が供給される。レーザ加工装置10は、供給されるAC電源により動作し、加工対象物Wを加工する。コンソール14は、第3電気ケーブル83によりコントローラユニット11に接続されている。コンソール14は、レーザ加工装置10における各種の設定を行うために設けられる。また、コンソール14は、レーザ加工装置10の状態、各種の情報を表示するために設けられる。
【0012】
コントローラユニット11は、光源ユニット12、ヘッドユニット13を制御する。光源ユニット12は、加工対象物Wを加工するレーザ光LWを生成する。そのレーザ光は、光ファイバケーブルFLによりヘッドユニット13に伝達される。ヘッドユニット13は、加工対象物Wに向けてレーザ光LWを出射する。
【0013】
[各ユニットの構成]
[光源ユニット]
図2に示すように、光源ユニット12は、光源制御部31、記憶部32、レーザ光源33、ファン34を有している。光源制御部31、記憶部32、レーザ光源33、ファン34は、第1電源ケーブルSP1により供給される駆動電源により動作する。光源制御部31は、第1信号ケーブルSL1により、コントローラユニット11のメイン制御部21と通信可能に構成されている。
【0014】
光源制御部31は、レーザ光源33を制御する。レーザ光源33は、レーザ光LWを出射する。このレーザ光源33は、レーザ光を出射するものであればよく、例えば、ファイバレーザ、YAGレーザ、COレーザ、等が挙げられる。
【0015】
記憶部32は、光源ユニット12の情報を記憶する。光源ユニット12の情報は、光源ユニット12の識別情報を含む。識別情報は、光源ユニット12の機種情報(型式)、固有情報(シリアル番号)を含む。ファン34は、例えば光源制御部31によって制御される。ファン34は、レーザ光源33、および光源ユニット12の各種電子部品を冷却する。
【0016】
[ヘッドユニット]
ヘッドユニット13は、ヘッド制御部41、記憶部42、モニタ部43、ガイド用光源44、焦点調整部45、走査部46、変位センサ47、保護ガラス48を有している。
【0017】
記憶部42は、ヘッドユニット13の情報を記憶する。ヘッドユニット13の情報は、ヘッドユニット13の識別情報を含む。識別情報は、ヘッドユニット13の機種情報(形式)、固有情報(シリアル番号)を含む。
【0018】
モニタ部43は、光源ユニット12から光ファイバケーブルFLにて伝達されるレーザ光の光量をモニタする。
ガイド用光源44は、可視領域の波長を有するガイド光LGを出射する。
【0019】
焦点調整部45は、レーザ光LWの焦点位置(焦点距離)を調整する。
走査部46は、レーザ光LWを加工対象物Wに向けて照射する。また、走査部46は、加工対象物Wの加工面Waに対してレーザ光LWを走査する。走査部46にて反射されたレーザ光LWは、保護ガラス48を通してヘッドユニット13の外部へ出射される。保護ガラス48は、出射窓部を構成する。保護ガラス48は、ヘッドユニット13の外周面の一部を構成する出射面48aを有している。
【0020】
変位センサ47は、投光部47a、受光部47bを含む。投光部47aは、可視領域の波長を有する検出光LKを投光する。検出光LKは、保護ガラス48を通してヘッドユニット13の外部に出射される。投光部47aは、加工対象物Wに向けて検出光LKを投光するように配置されている。受光部47bは、加工対象物Wにて反射した検出光LK(反射光KR)を受光する。変位センサ47は、受光量を出力する。変位センサ47は、受光部47bの受光状態に基づいて距離を測定する。この距離は、ヘッドユニット13の基準面から検出光LKを反射した対象物、ここでは加工対象物Wまでの距離である。基準面は、例えば保護ガラス48の出射面48a、ヘッドユニット13の下面、等に設定される。
【0021】
変位センサ47は、例えば対象物までの距離を三角測距法により測定するセンサである。受光部47bは、例えば受光面における反射光KRの受光位置を検出する受光素子を含む。このような受光素子は、例えば、CMOSイメージセンサ(CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)image sensor)、CCDイメージセンサ(CCD(Charge Coupled Device)image sensor)、PSD(Position Sensitive Detector)等により構成される。本実施形態の変位センサ47は、投光部47aと受光部47bとを一体的に有する1つのユニットとして構成されている。
【0022】
ヘッド制御部41は、ガイド用光源44、焦点調整部45、走査部46、変位センサ47を制御する。ヘッド制御部41は、モニタ部43のモニタ結果をコントローラユニット11のメイン制御部21に送信する。ヘッド制御部41は、変位センサ47の測定結果、受光量をコントローラユニット11のメイン制御部21に送信する。
【0023】
[コントローラユニット]
図2に示すように、コントローラユニット11は、メイン制御部21、記憶部22、電源回路23、ファン24を有している。電源回路23は、コントローラユニット11、光源ユニット12、およびヘッドユニット13に駆動のための電力を供給する。なお、電源回路23は、コンソール14に対して駆動のための電力を供給するようにしてもよい。
【0024】
記憶部22は、各種の情報を記憶する。記憶部22は、例えばコントローラユニット11に接続されるユニット(光源ユニット12、ヘッドユニット13)の識別情報を記憶する。記憶部22は、加工対象物Wを加工するための加工データを記憶する。加工データは、例えば、加工対象物Wの加工面Waに対して印字すべき文字、図形、等の加工パターンの情報である。記憶部22は、基準マークデータを記憶する。基準マークデータは、加工対象物Wの加工面Waに投射する位置調整用の基準マークの情報である。基準マークは、加工対象物Wとヘッドユニット13との間の距離(ワークディスタンス)を調整するために用いられる。
【0025】
記憶部22は、加工対象物Wの情報を記憶する。加工対象物Wの情報は、加工対象物Wの種類に関する情報であり、加工対象物Wの材質、色、表面状態、反射の状態(正反射、拡散反射、反射量)、等を含む。記憶部22は、各種の距離情報を記憶する。各種の距離情報は、ワークディスタンス、焦点位置、基準距離、等を含む。
【0026】
さらに、記憶部22は、変位センサ47による測定結果を記憶する。また、記憶部22は、変位センサ47の受光量に対する第1設定値、第2設定を記憶する。第1設定値および第2設定値は、変位センサ47において、距離の測定に適した光量の範囲の下限値および上限値として設定される。受光量が第1設定値以下の場合、または受光量が第2設定値以上の場合、変位センサ47の受光部47bにて得られる反射光KRの入射位置、つまり測定結果に誤差が生じる場合がある。このため、変位センサ47における受光量が第1設定値以上第2設定値以下の場合に、変位センサ47の測定結果を有効とする。これにより、精度の高い精度で位置を調整可能とすることができる。
【0027】
メイン制御部21は、第1信号ケーブルSL1と第2信号ケーブルSL2とを介して、光源ユニット12の光源制御部31およびヘッドユニット13のヘッド制御部41と通信可能に構成されている。メイン制御部21は、加工データ等に基づいて、光源制御部31、ヘッド制御部41に対して制御データを送信する。例えば、メイン制御部21は、加工データに基づいて、加工対象物W上の加工位置に対応する複数の走査位置データ(座標データ)と、オンオフデータとを含む制御データを生成する。メイン制御部21は、制御データを光源制御部31、ヘッド制御部41に送信する。
【0028】
光源制御部31は、制御データに基づいてレーザ光源33を制御する。例えば、光源制御部31は、レーザ光源33から出射するレーザ光の光量(光パワー)を制御する。
ヘッド制御部41は、制御データに基づいて、レーザ光LWにて加工対象物Wを加工するように走査部46を制御する。ヘッド制御部41は、制御情報に基づいて、ガイド用光源44からガイド光LGを出射するようにガイド用光源44を制御する。また、ヘッド制御部41は、ガイド光LGにより、加工対象物Wに加工パターン、基準マークを投射するように走査部46を制御する。加工パターンは、加工対象物Wに形成する文字、記号、または図形等の形状である。基準マークは、ヘッドユニット13と加工対象物Wとの間の距離を調整するための図形である。
【0029】
[コンソール]
コンソール14は、表示部51、操作部52を有している。表示部51は、レーザ加工装置10の各種情報を表示可能に構成されている。操作部52は、ユーザによるデータの入力が可能に構成されている。コンソール14は、例えば、タブレット端末、ノートパソコン、PDA(Personal Digital Assistant)やスマートフォンなどの汎用端末と、それに導入された専用のアプリケーションソフトウェアとにより構成される。
【0030】
コンソール14は、操作部52の操作に応じて、コントローラユニット11に対して、各種の制御、動作モードを指示する。指示する制御は、例えば、加工開始、加工停止、を含む。動作モードは、加工モード、教示モード、位置調整モードを含む。加工モードは、レーザ光LWにて加工対象物Wに加工パターンを形成するモードである。教示モードは、ガイド光LGにて加工対象物Wに加工パターンを投射するモードである。位置調整モードは、加工対象物Wの位置を調整するモードである。加工対象物Wの位置は、レーザ加工装置10(ヘッドユニット13)に対する加工対象物Wの位置であり、レーザ加工装置10(ヘッドユニット13)と加工対象物Wとの間の相対的な位置であるといえる。位置調整モードは、第1調整モード、第2調整モードを含む。第1調整モードは、ガイド光LGおよび検出光LKにより加工対象物Wの位置を調整するモードである。第2調整モードは、変位センサ47の測定結果により加工対象物Wの位置を調整するモードである。コンソール14は、これらの動作モードを選択するための文字等を表示する。そして、コンソール14は、操作部52の操作によって選択された動作モードをコントローラユニット11のメイン制御部21に対して指示する。コンソール14は、動作モードを選択するモード選択部、加工対象物設定部として機能する。
【0031】
コントローラユニット11のメイン制御部21は、ヘッドユニット13のモニタ部43のモニタ結果、変位センサ47の測定結果、等をコンソール14の表示部51に表示させる。
【0032】
[ヘッドユニットの構成]
図3図6は、ヘッドユニット13に含まれる光学素子の概略を示す。図3図6において、ヘッドユニット13の外形を二点鎖線にて示している。図3図6において、レーザ光LW等の光軸を一点鎖線にて示している。図5図6において、加工対象物Wの加工面Waを実線および配線にて示している。
【0033】
図3に示すように、ヘッドユニット13には、光ファイバケーブルFLのヘッドコネクタFLaが取着される。光ファイバケーブルFLにて伝達されるレーザ光LWは、ヘッドコネクタFLaからヘッドユニット13の内部へと出射される。レーザ光LWは、光合流部材49を透過する。光合流部材49は、例えばダイクロイックミラーである。光合流部材49は、レーザ光LWの光軸上に設けられ、その光軸に対して所定の角度傾いて配置されている。光合流部材49は、その入射面49aにおいて、レーザ光LWの一部を反射するように形成されている。
【0034】
光合流部材49にて反射した一部のレーザ光LWaは、モニタ部43に入射する。モニタ部43は、レーザ光LWaを受光する受光素子を含む。モニタ部43は、受光したレーザ光LWaの受光量を検出する。これにより、レーザ光LWの光量をモニタすることができる。
【0035】
光合流部材49の後段には、焦点調整部45と走査部46とが配置されている。
本実施形態の焦点調整部45は、3枚のレンズ45a,45b,45cを有している。レンズ45a~45cは、レーザ光LWの光軸上に配置されている。レンズ45aは、例えば凹レンズであり、レンズ45b,45cは例えば凸レンズである。焦点調整部45は、レンズ45aを支持する支持部材と、支持部材をレーザ光LWの光軸に沿って移動させる駆動部とを有している。支持部材は例えばリニアスライダ等によって構成される。駆動部は、例えばステッピングモータ等によって構成される。焦点調整部45を通過するレーザ光LWは、レンズ45a~45cの位置に応じた距離にて集光する。これによりレーザ光LWの焦点距離(焦点位置)は調整可能となる。
【0036】
走査部46は、一対のミラー46a,46bと、ミラー46a,46bのそれぞれを駆動する駆動部46c,46dを有する。駆動部46c,46dは、例えばステッピングモータ等によって構成される。ミラー46a,46bはそれぞれ、レーザ光LWを反射する。駆動部46c,46dは、ミラー46a,46bを回動する。ミラー46a,46bの回動により、ミラー46a,46bにより反射されたレーザ光LWは、加工対象物Wに対して互いに直交する2つの軸方向に沿って走査される。
【0037】
ガイド用光源44は、光合流部材49の出射面49bに向けてガイド光LGを出射するように配置されている。光合流部材49は、その出射面49bにおいて、ガイド光LGを反射するように形成されている。ガイド光LGは、光合流部材49により、光合流部材49を透過したレーザ光LWと同軸状となるように反射される。つまり、光合流部材49は、レーザ光LWとガイド光LGを同軸状に合流する。光合流部材49にて反射されたガイド光LGは、焦点調整部45を通過し、走査部46にてレーザ光LWと同様に反射され、加工対象物Wに照射される。したがって、メイン制御部21は、レーザ光LWを走査するときと同様に加工データに基づいて走査部46を制御する。これによりメイン制御部21は、ガイド光LGにて加工対象物Wの加工面Waに対して加工パターンを投射する。ガイド光LGは、可視領域の波長を有している。したがって、ガイド光LGにより、加工パターンを確認することができる。
【0038】
また、メイン制御部21は、基準マークデータに基づいて走査部46を制御する。これにより、メイン制御部21は、ガイド光LGにて加工対象物Wの加工面Waに対して基準マークを投射する。
【0039】
図4図6に示すように、変位センサ47は、投光部47aから検出光LKを投光する。その検出光LKは、保護ガラス48の鉛直軸48Lに対して傾斜している。変位センサ47は、投光部47aから投光する検出光LKの光軸が保護ガラス48の鉛直軸48Lに対して傾斜するように配置されているといえる。保護ガラス48の鉛直軸48Lは、走査部46にて反射したレーザ光LWが保護ガラス48の出射面48aから垂直に出射するときの光軸と等しい。
【0040】
また、検出光LKの光軸は、保護ガラス48の鉛直軸48Lと所定距離にて交差する。変位センサ47は、検出光LKの光軸が保護ガラス48の鉛直軸48Lと所定距離にて交差するように配置されているといえる。検出光LKの光軸と鉛直軸48Lとが交差する所定距離は、例えば保護ガラス48の出射面48aから交差する点までの距離である。この所定距離を、基準距離とする。
【0041】
図4に示すように、ヘッドユニット13を保護ガラス48の出射面48aの側から視て、変位センサ47は、保護ガラス48の鉛直軸48Lに対して、ヘッドユニット13の先端側(図4において左側)に配置されている。また、変位センサ47は、保護ガラス48の鉛直軸48Lを含み、走査部46に入射するレーザ光LWの光軸と平行な平面LP(一点鎖線にて示す)に対して、一方の側(図4において上側)に投光部47aおよび受光部47bが位置するように配置されている。したがって、変位センサ47から投光される検出光LKの光軸は、走査部46においてレーザ光LWを走査する2つの軸に対して傾いている。投光部47aおよび受光部47bは、保護ガラス48の鉛直軸48Lを含む平面において、焦点調整部45から出射されるレーザ光LWと直交する平面と、検出光LKおよび反射光KRを含む平面が所定角度で交差するように配置されているといえる。図4において、ミラー46aは、レーザ光LWを図面の左右方向に走査する。この走査軸をX軸とする。同様に、ミラー46bは、レーザ光LWを図面の上下方向に走査する。この操作軸をY軸とする。上記した鉛直軸48Lは、例えばこれらX軸とY軸の交点であり、レーザ光LWを走査するX-Y座標の原点(中心)である。
【0042】
[焦点距離の調整]
図7Aに示すように、焦点調整部45は、レンズ45a,45b,45cを有している。レンズ45aは、凹レンズであり、レンズ45bおよびレンズ45cは凸レンズである。レンズ45aとレンズ45bは、入射するレーザ光のビーム径を拡大し、平行光となるレーザ光LWを出力する。レンズ45cは、平行光であるレーザ光LWを集光する。
【0043】
図7Bに示すように、レンズ45aをレンズ45bに近づけると、レンズ45bを透過したレーザ光LWは、広がりを持つ、つまりビーム径は徐々に大きくなる。このレーザ光LWにより、レンズ45cにより集光されたレーザ光LWの焦点位置は、図7Aに示す焦点位置よりもレンズ45cから遠くなる。つまり、レーザ光LWの焦点距離が長くなる。
【0044】
図7Cに示すように、レンズ45aをレンズ45bから遠ざけると、レンズ45bを透過したレーザ光LWは、絞られる、つまりビーム径は徐々に小さくなる。このレーザ光LWにより、レンズ45cにより集光されたレーザ光LWの焦点位置は、図7Bに示す焦点位置よりもレンズ45cに近くなる。つまり、レーザ光LWの焦点距離が短くなる。
【0045】
図2に示すヘッド制御部41は、焦点調整部45のレンズ45aの位置を制御する。このレンズ45aの移動により、レンズ45a~45bの間のレンズ間距離が変更される。つまり、ヘッド制御部41は、焦点調整部45を制御し、レンズ間距離を調整する。
【0046】
図7Aは、レンズ45aを基準位置に移動させたときの状態を示す。基準位置は、レンズ45aを移動させる移動機構における移動範囲の中間位置である。このときのレーザ光LWの焦点位置を含み、光軸に対して直交する平面を基準面BPとする。ヘッドユニット13(保護ガラス48の出射面48a)から基準面BPまでの距離を基準焦点距離とする。光軸に対して直交する平面はX軸(X座標値)およびY軸(Y座標値)により規定される(2次元の座標値)。そして、光軸に沿った方向はZ軸(Z座標値)により規定される(1次元の座標値)。
【0047】
図7Bおよび図7Cは、レンズ45aの移動による焦点位置の調整範囲を示す。
図7Bにおいて、図7Aに示す基準位置にあるレンズ45aを、その第1レンズ45aの移動範囲において最もレンズ45bに近づけた状態を示す。このときのレーザ光LWの焦点位置をZ軸方向における最遠点位置とし、最遠点位置を含み、光軸に対して直交する平面を最遠点面FPとする。なお、厳密には、二次元平面状における四角形状の加工領域(印字エリア)の各対角点が加工領域を含めた最遠点位置となるが、ここでは、二次元平面状の原点位置における光軸方向(Z軸方向)での最遠点位置の説明としている。ヘッドユニット13(保護ガラス48の出射面48a)から最遠点面FPまでの距離を最遠焦点距離とする。
【0048】
図7Cにおいて、図7Aに示す基準位置にあるレンズ45aを、その第1レンズ45aの移動範囲において最もレンズ45bから離した状態を示す。このときのレーザ光LWの焦点位置をZ軸方向における最近点位置とし、最近点位置を含み、光軸に対して直交する平面を最近点面NPとする。ヘッドユニット13(保護ガラス48の出射面48a)から最近点面NPまでの距離を最近焦点距離とする。
【0049】
[ガイドマークおよびガイド点]
図8は、基準マーク60の一例を示す。この基準マーク60は、所定の半径を有する円61と、円61の中心点61aにて互いに直交する2本の直線62a,62bとを含む。円61の中心点61aは、例えば図3図6に示す走査部46によりレーザ光LWを走査するX-Y座標の原点に設定される。基準マーク60の色、つまりガイド光LGの色は、例えば緑色である。
【0050】
図8には、ガイド点70が示されている。ガイド点70は、変位センサ47の投光部47aから投光される検出光LKによって、加工対象物Wの加工面Waに示される。図8において、ガイド点70は、円として示されている。なお、図8には、ガイド点70の例として3つのガイド点70a,70b,70cが示されている。ガイド点70a~70cの色、つまり検出光LKの色は、例えば赤色である。
【0051】
図4図6に示すように、検出光LKは、鉛直軸と所定距離(基準距離)にて交差する。この交差する所定の基準距離は、例えば図7Aに示す基準面BPの距離に設定される。この場合、基準面BPにおいて、検出光LKは鉛直軸48Lと交差する。この基準面BPにおいて、図8に示すように、鉛直軸48Lを中心とする円61を含む基準マーク60が投影される。したがって、検出光LKによるガイド点70は、基準マーク60の中心に位置する。つまり、加工対象物Wの加工面Waが基準面BPの位置にあるとき、基準マーク60の中心にガイド点70a(70)が投影される。
【0052】
(作用)
次に、本実施形態のレーザ加工装置10の作用を説明する。
[加工モード]
メイン制御部21は、コンソール14にて加工モードが選択され、加工開始が指示されると、加工対象物Wに対する加工処理を開始する。
【0053】
メイン処理は、加工データに基づいて加工対象物Wにレーザ光LWを照射する処理を実行する。メイン制御部21は、制御データを生成する。制御データは、印字すべき文字等に関する加工データに基づいて加工対象物W上の加工位置に対応する複数の走査位置データ(座標データ)と、レーザ光LWのオンオフデータとを含む。メイン制御部21は、制御データを光源ユニット12の光源制御部31とヘッドユニット13のヘッド制御部41とに送信する。
【0054】
光源ユニット12の光源制御部31は、制御データに基づいてレーザ光源33を制御し、レーザ光LWを出射させる。ヘッドユニット13のヘッド制御部41は、制御データに基づいて、焦点調整部45、走査部46を制御し、レーザ光LWを加工対象物Wに向けて走査する。これにより、レーザ加工装置10は、加工対象物Wの加工面Waを、加工パターンを加工する。
【0055】
[教示モード]
メイン制御部21は、コンソール14にて教示モードが選択され、開始が指示されると、加工対象物Wに対する教示処理を開始する。
【0056】
メイン処理は、加工データに基づいて加工対象物Wにガイド光LGを照射する処理を実行する。メイン制御部21は、制御データを生成する。制御データは、印字すべき文字等に関する加工データに基づいて加工対象物W上の加工位置に対応する複数の走査位置データ(座標データ)と、ガイド光LGのオンオフデータとを含む。メイン制御部21は、制御データをヘッドユニット13のヘッド制御部41に送信する。
【0057】
ヘッドユニット13のヘッド制御部41は、制御データに基づいて、ガイド用光源44を制御するとともに、焦点調整部45、走査部46を制御し、ガイド光LGを加工対象物Wに向けて走査する。これにより、レーザ加工装置10は、加工対象物Wの加工面Waに、加工パターンを投射する。
【0058】
[位置調整モード:第1調整モード]
メイン制御部21は、コンソール14にて位置調整モード:第1調整モードが選択され、開始が指示されると、加工対象物Wに対する第1調整モードの処理を開始する。
【0059】
メイン処理部は、基準マークデータに基づいて、加工対象物Wにガイド光LGを照射する処理を実行する。メイン制御部21は、制御データを生成する。制御データは、基準マークデータに基づいて加工対象物W上の加工位置に対応する複数の走査位置データ(座標データ)と、ガイド光LGのオンオフデータとを含む。また、制御データは、変位センサ47の投光部47aから検出光LKを出射させる指示を含む。メイン制御部21は、制御データをヘッドユニット13のヘッド制御部41に送信する。
【0060】
ヘッドユニット13のヘッド制御部41は、制御データに基づいて、ガイド用光源44を制御するとともに、焦点調整部45、走査部46を制御し、ガイド光LGを加工対象物Wに向けて走査する。これにより、レーザ加工装置10は、加工対象物Wの加工面Waに、基準マーク60を投射する。また、ヘッド制御部41は、制御データに基づいて、変位センサ47の投光部47aから検出光LKを投光させる。これにより、レーザ加工装置10は、加工対象物Wの加工面Waに、ガイド点70を投射する。
【0061】
図4図6に示すように、検出光LKは、保護ガラス48の鉛直軸48Lに対して傾いている。したがって、加工面Waが上記の基準面BPに対してヘッドユニット13に近い位置にある場合、またはヘッドユニット13から遠い位置にある場合、検出光LKによるガイド点は、基準マーク60の中心からずれる。例えば加工面Waが図7Bに示す最遠点位置にあるとき、図8に示すガイド点70bが示される。また、例えば加工面Waが図7Bに示す最近点位置にあるとき、図8に示すガイド点70cが示される。このように投射されるガイド点70a~70cにより、加工面Waが基準面BPの位置にあるか否かを容易に判断できる。
【0062】
[位置調整モード:第2調整モード]
メイン制御部21は、コンソール14にて位置調整モード:第2調整モードが選択され、開始が指示されると、加工対象物Wに対する第2調整モードの処理を開始する。
【0063】
メイン制御部21は、変位センサ47により距離を測定する指示を含む制御データを生成する。メイン制御部21は、制御データをヘッドユニット13のヘッド制御部41に送信する。ヘッド制御部41は、制御データに基づいて、変位センサ47にて距離を測定する。ヘッド制御部41は、変位センサ47の測定結果、受光量を含むデータをメイン制御部21に送信する。メイン制御部21は、ヘッド制御部41から受信したデータに基づいて、変位センサ47による測定結果をコンソール14の表示部51に表示する。
【0064】
検出光LKは、図2に示す変位センサ47の投光部47aから投光される。変位センサ47は、受光部47bにおける受光状態により、距離を測定する。図2に示すヘッド制御部41は、変位センサ47の測定結果をメイン制御部21に送信する。メイン制御部21は、受信した測定結果に基づいてコンソール14の表示部51に距離を表示する。例えば、メイン制御部21は、測定結果に基づいて、測定距離をコンソール14の表示部51に表示する。測定距離は、例えばヘッドユニット13(保護ガラス48の出射面48a)から加工対象物Wの加工面Waまでの距離として示される。この測定距離により、加工対象物Wの位置をより高い精度にて調整することができる。
【0065】
メイン制御部21は、表示部51に、記憶部22に記憶された加工物距離を表示させる。加工物距離は、加工対象物Wの加工面Waに対して加工パターンを所望のビーム径にて加工する距離である。加工物距離は、例えば上記の基準距離が設定される。また、加工物距離は、コンソール14の操作によって変更可能に設定される。加工物距離は、記憶部22に記憶される。レーザ光LWの焦点位置を、加工面Waに対して高さ方向(光軸方向)にずらすことで、所望のビーム径にて加工することができる。例えば、レーザ光LWを最も絞った状態(焦点位置)にて加工パターンを加工する場合、レーザ光LWの焦点距離は、加工物距離と等しい。そして、加工物距離と測定距離とを表示部51に表示することで、加工対象物Wの位置が合わせられているか否かを容易に判断することができる。そして、表示された測定距離を加工物距離に一致させるように加工対象物Wを移動させることにより、より簡単に、かつより高い精度にて調整することができる。
【0066】
この第2調整モードにおいて、メイン制御部21は、ガイド光LGによる基準マーク60の投影を停止する。これにより、加工対象物Wの加工面Waにて反射したガイド光LGが受光部47bに入射することを防止する。例えば、メイン制御部21は、ヘッド制御部41に対して停止を示す制御データを送信し、ヘッド制御部41は、ガイド用光源44によりガイド光LGの出射を停止する。なお、例えば図3に示す光合流部材49と焦点調整部45との間にシャッタを設け、シャッタによりガイド光LGを遮るようにしてもよい。
【0067】
メイン制御部21は、ヘッド制御部41から受信したデータに含まれる変位センサ47の受光量と、記憶部22に記憶された第1設定値、第2設定値とを比較する。メイン制御部21は、比較結果に応じて測定エラーを報知する。メイン制御部21は、受光量が第1設定値よりも少ない場合に、コンソール14の表示部51に測定エラーを表示させる。これにより、変位センサ47における受光量が不足していることを確認できる。また、メイン制御部21は、受光量が第2設定値よりも多い場合に、コンソール14の表示部51に測定エラーを表示させる。これにより、変位センサ47における受光量が多すぎることを確認できる。このようなエラー表示により、変位センサ47による距離測定が不安定であることを確認できる。
【0068】
なお、メイン制御部21は、記憶部22に記憶された加工対象物Wの情報によって、第2調整モードを無効化する、つまり第2調整モードにおける処理を実行しないようにしてもよい。例えば、メイン制御部21は、加工対象物Wの種類において、反射の状態として拡散反射が設定された加工対象物Wの場合に、第2調整モードを有効とし、変位センサ47による測定結果をコンソール14の表示部51に表示する。一方、メイン制御部21は、加工対象物Wの種類において、反射の状態として正反射が設定された加工対象物Wの場合に、第2調整モードを無効化する。
【0069】
図4に示すように、変位センサ47の受光部47bは、保護ガラス48の鉛直軸48Lを含む平面に対して、変位センサ47の投光部47aと同じ側に位置している。したがって、検出光LKを正反射する加工対象物Wでは、加工対象物Wによる反射光KRは投光部47aに入射し難く、距離の測定が困難になる。このため、メイン制御部21は、第2調整モードを無効化する。つまり、メイン制御部21は、加工対象物Wの情報(反射の状態)によって、第2調整モードの有効と無効とを判定する。
【0070】
なお、メイン制御部21は、他の情報によって判定してもよい。例えば、加工対象物Wの色によって判定する。例えば黒色等のように、検出光LKによる反射の光量が少ない加工対象物Wの色の場合に、第2調整モードを無効化する。なお、メイン制御部21は、第2調整モードを無効化した旨を表示部51に表示させるようにしてもよい。
【0071】
(効果)
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)レーザ加工装置10は、レーザ光LWを出射するレーザ光源33と、可視領域の波長を有するガイド光LGを出射するガイド用光源44と、レーザ光LWおよびガイド光LGを走査する走査部46を有する。レーザ加工装置10は、レーザ光LWおよびガイド光LGが透過する保護ガラス48を有している。また、レーザ加工装置10は、投光部47aと受光部47bを含む変位センサ47を備えている。投光部47aは、加工対象物Wに対して可視領域の波長を有する検出光LKを投光する。変位センサ47は、検出光LKが保護ガラス48の鉛直軸48Lと所定の基準距離で交差するように配置されている。受光部47bは、加工対象物Wにて拡散反射した検出光LK(反射光KR)を受光する。変位センサ47は、受光部47bの受光状態に基づいて距離を測定する。メイン制御部21は、変位センサ47の測定結果に基づいてコンソール14の表示部51に距離を表示する。
【0072】
例えば、メイン制御部21は、測定結果に基づいて、測定距離をコンソール14の表示部51に表示する。測定距離は、例えばヘッドユニット13(保護ガラス48の出射面48a)から加工対象物Wの加工面Waまでの距離として示される。この測定距離により、加工対象物Wの位置をより高い精度にて調整することができる。
【0073】
(2)メイン制御部21は、表示部51に、記憶部22に記憶された加工物距離を表示させる。加工物距離は、加工対象物Wの加工面Waに対して加工パターンを所望のビーム径にて加工する距離である。加工物距離は、例えば上記の基準距離が設定される。また、加工物距離は、コンソール14の操作によって変更可能に設定される。加工物距離は、記憶部22に記憶される。レーザ光LWの焦点位置を、加工面Waに対して高さ方向(光軸方向)にずらすことで、所望のビーム径にて加工することができる。
【0074】
(3)メイン制御部21は、ヘッド制御部41から受信したデータに含まれる変位センサ47の受光量と、記憶部22に記憶された第1設定値、第2設定値とを比較する。メイン制御部21は、受光量が第1設定値よりも少ない場合に、コンソール14の表示部51にエラーを表示させる。これにより、変位センサ47における受光量が不足していることを確認できる。また、メイン制御部21は、受光量が第2設定値よりも多い場合に、コンソール14の表示部51にエラーを表示させる。これにより、変位センサ47における受光量が多すぎることを確認できる。このようなエラー表示により、変位センサ47による距離測定が不安定であることを確認できる。
【0075】
(4)記憶部22は、変位センサ47による測定結果を記憶する。また、記憶部22は、変位センサ47の受光量に対する第1設定値、第2設定を記憶する。第1設定値および第2設定値は、変位センサ47において、距離の測定に適した光量の範囲の下限値および上限値として設定される。受光量が第1設定値以下の場合、または受光量が第2設定値以上の場合、変位センサ47の受光部47bにて得られる反射光KRの入射位置、つまり測定結果に誤差が生じる場合がある。このため、変位センサ47における受光量が第1設定値以上第2設定値以下の場合に、変位センサ47の測定結果を有効とする。これにより、精度の高い精度で位置を調整可能とすることができる。
【0076】
(5)光合流部材49にて反射した一部のレーザ光LWaは、モニタ部43に入射する。モニタ部43は、レーザ光LWaを受光する受光素子を含む。モニタ部43は、受光したレーザ光LWaの受光量を検出する。これにより、レーザ光LWの光量をモニタすることができる。
【0077】
(6)ガイド用光源44は、光合流部材49の出射面49bに向けてガイド光LGを出射するように配置されている。光合流部材49は、その出射面49bにおいて、ガイド光LGを反射するように形成されている。ガイド光LGは、光合流部材49により、光合流部材49を透過したレーザ光LWと同軸状となるように反射される。光合流部材49にて反射されたガイド光LGは、焦点調整部45を通過し、走査部46にてレーザ光LWと同様に反射され、加工対象物Wに照射される。したがって、メイン制御部21は、レーザ光LWを走査するときと同様に加工データに基づいて走査部46を制御する。これによりメイン制御部21は、ガイド光LGにて加工対象物Wの加工面に対して加工パターンを投射する。ガイド光LGは、可視領域の波長を有している。したがって、ガイド光LGにより、加工パターンを確認することができる。
【0078】
(7)検出光LKは、保護ガラス48の鉛直軸48Lに対して傾いている。したがって、加工面Waが上記の基準面BPに対してヘッドユニット13に近い位置にある場合、またはヘッドユニット13から遠い位置にある場合、検出光LKによるガイド点は、基準マーク60の中心からずれる。例えば加工面Waが図7Bに示す最遠点位置にあるとき、図8に示すガイド点70bが示される。また、例えば加工面Waが図7Bに示す最近点位置にあるとき、図8に示すガイド点70cが示される。このように投射されるガイド点70a~70cにより、加工面Waが基準面BPの位置にあるか否かを容易に判断できる。
【0079】
[変更例]
実施の形態に関する説明は、本開示に関するレーザ加工装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本開示は実施の形態以外に例えば以下に示される実施の形態の変更例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変更例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0080】
・メイン制御部21は、表示部51に、加工物距離と測定距離との差を相対距離として表示してもよい。表示部51には、加工物距離を基準として、測定結果に基づいて差を相対距離として表示する。これにより表示された値を「0」とするように加工対象物Wを移動させることにより、より簡単に、かつより高い精度にて調整することができる。また、加工物距離と測定距離との差の場合、表示部51には、数値とともにプラスまたはマイナスの記号が表示される。したがって、プラスまたはマイナスの記号によって、加工対象物Wを移動させる方向を容易に示すことができる。
【0081】
・ユニットの構成が異なるレーザ加工装置としてもよい。
図9は、2つのユニットを接続して構成されるレーザ加工装置110を示す。このレーザ加工装置110は、上記のコントローラユニット111、ヘッドユニット112、コンソール114を有している。ヘッドユニット112は、第2電気ケーブル82によりコントローラユニット111に接続されている。コントローラユニット111は、上記したレーザ加工装置10のコントローラユニット11と同じ構成である。つまり、コントローラユニット111は、上記のコントローラユニット11と同様に、メイン制御部21、記憶部22、電源回路23、ファン24を有している。ヘッドユニット112は、ヘッド制御部121、記憶部122、レーザ光源33、ファン34、モニタ部43、ガイド用光源44、焦点調整部45、走査部46、変位センサ47、保護ガラス48を有している。レーザ光源33、およびファン34は、図2に示す光源ユニット12の構成部材と同様に構成されている。モニタ部43、ガイド用光源44、焦点調整部45、走査部46、変位センサ47、保護ガラス48は、図2に示すヘッドユニット13の構成部材と同様に構成されている。ヘッド制御部121は、図2に示す光源制御部31とヘッド制御部41の機能を有している。また、記憶部122は、図2に示す記憶部32,42に記憶される情報を記憶する。コンソール114は、上記したレーザ加工装置10のコンソール14と同じ構成である。つまり、コンソール114は、上記のコンソール14と同様に、表示部51、操作部52を有している。このように構成されるレーザ加工装置10においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
・上記実施形態では、投光部47aと受光部47bとを一体的に有する変位センサ47を用いたが、投光部47aと受光部47bとが別々に設けられる変位センサを用いてもよい。
【0083】
・コントローラユニットに表示部51と操作部52との少なくとも一方を備えたレーザ加工装置としてもよい。
・変位センサ47は、受光部47bに対して、ガイド光LGの波長域を遮断するフィルタを装着した構成としてもよい。この場合、ガイド光LGにより基準マーク60を投射した状態で、変位センサ47による距離測定を行うことができるようになる。
【0084】
・ヘッドユニット13に、収束レンズ、fθレンズ、等を備える構成としてもよい。
・ヘッドユニット13の記憶部42に第1設定値、第2設定値を記憶させてもよい。ヘッド制御部41により、変位センサ47の受光部47bにおける受光量と第1設定値、第2設定値を比較し、エラーか否かを判定させる。そして、ヘッド制御部41からエラーか否かを示す情報をメイン制御部21に送信する。これにより、変位センサ47における受光量の状態をコンソール14に表示できる。なお、ヘッド制御部41は、エラーか否かを示す情報と受光量とをメイン制御部21に送信するようにしてもよい。
【0085】
・光合流部材49として、ハーフミラーやビームスプリッタ等を用いてもよい。
・上記実施形態では、レーザ光LWを透過するとともにガイド光LGを反射するように形成された光合流部材49を用いたが、レーザ光LWを反射するとともにガイド光LGを透過するように構成された光合流部材を用いてもよい。
【0086】
・上記実施形態では、光合流部材49によりレーザ光LWの一部を反射させてモニタ部43に入射したが、別の反射部材を用いてレーザ光LWの一部を反射させてモニタ部43に入射する構成としてもよい。
【0087】
・上記実施形態では、検出光LKが出射窓部としての保護ガラス48を透過するように変位センサ47を配置したが、保護ガラス48とは別に出射窓部を設け、検出光LKがその出射窓部を透過するように変位センサ47を配置してもよい。
【0088】
・上記実施形態に対して、変位センサ47の投光部47aと受光部47bとが並ぶ方向を適宜変更してもよい。
方向の第1例としては、保護ガラス48の出射面48aの側から視て、図4に示す平面LPと平行に投光部47aと受光部47bとが並ぶように変位センサ47を配置してもよい。
【0089】
方向の第2例として、保護ガラス48の出射面48aの側から視て、保護ガラス48の鉛直軸48Lから投光部47aと受光部47bとが等距離となるように変位センサ47を配置してもよい。この場合、投光部47aと受光部47bは、鉛直軸48Lを中心とする円の周方向に沿って並ぶように変位センサ47を配置するということもできる。また、投光部47aから出射される検出光LKと鉛直軸48Lとがなす角度と、その検出光LKにより受光部47bに入射する反射光KRと鉛直軸48Lとがなす角度とが等しくなるように変位センサ47を配置するということもできる。
【0090】
以上の説明は単に例示である。本開示の技術を説明する目的のために列挙された構成要素および方法(製造プロセス)以外に、より多くの考えられる組み合わせおよび置換が可能であることを当業者は認識することができる。本開示は、特許請求の範囲を含む本開示の範囲内に含まれるすべての代替、変形、および変更を包含することが意図されている。
【符号の説明】
【0091】
10 レーザ加工装置
11 コントローラユニット
12 光源ユニット
13 ヘッドユニット
14 コンソール
21 メイン制御部
22 記憶部
23 電源回路
24 ファン
31 光源制御部
32 記憶部
33 レーザ光源
34 ファン
41 ヘッド制御部
42 記憶部
43 モニタ部
44 ガイド用光源
45 焦点調整部
45a~45c レンズ
46 走査部
46a,46b ミラー
46c,46d 駆動部
47 変位センサ
47a 投光部
47b 受光部
48 保護ガラス
48a 出射面
48L 鉛直軸
49 光合流部材
49a 入射面
49b 出射面
51 表示部
52 操作部
60 基準マーク
61 円
61a 中心点
62a,62b 直線
70,70a~70c ガイド点
81 第1電気ケーブル
82 第2電気ケーブル
83 第3電気ケーブル
110 レーザ加工装置
111 コントローラユニット
112 ヘッドユニット
114 コンソール
121 ヘッド制御部
122 記憶部
BP 基準面
FL 光ファイバケーブル
FLa ヘッドコネクタ
FP 最遠点面
KR 反射光
LG ガイド光
LK 検出光
LP 平面
LW レーザ光
LWa レーザ光
NP 最近点面
SL1 第1信号ケーブル
SL2 第2信号ケーブル
SP1 第1電源ケーブル
SP2 第2電源ケーブル
W 加工対象物
Wa 加工面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9