(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094348
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】香料組成物及びそれを含有する洗浄剤組成物又は化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
C11B 9/00 20060101AFI20230628BHJP
C11D 3/50 20060101ALI20230628BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20230628BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20230628BHJP
A61K 8/33 20060101ALI20230628BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230628BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
C11B9/00 K
C11D3/50
C11D3/20
C11B9/00 D
A61Q13/00 101
A61K8/33
A61K8/34
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209772
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】306018365
【氏名又は名称】クラシエホームプロダクツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 薫
(72)【発明者】
【氏名】宮下 哲郎
【テーマコード(参考)】
4C083
4H003
4H059
【Fターム(参考)】
4C083AC211
4C083AC212
4C083CC23
4C083KK02
4H003AB10
4H003EB04
4H003EB28
4H003FA26
4H003FA27
4H059BA12
4H059BA14
4H059BA17
4H059BA20
4H059BA36
4H059BC23
4H059DA09
4H059EA32
4H059EA35
(57)【要約】
【課題】
本発明は、活性剤並びにカチオンカポリマーに起因する臭気をマスキングするとともに、サクラ調の香り立ちを有する香料組成物、および当該香料組成物を含有することを特徴とする洗浄剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
下記(A)及び(B)成分を含有する香料組成物であって、両成分の質量比が(A):(B)=1:50~50:1である香料組成物により上記課題を解決する。
(A)ベンズアルデヒド又はアニスアルデヒド
(B)ベンジルアルコール又はアニスアルコール
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)及び(B)成分を含有する香料組成物であって、(A)と(B)の質量比が(A):(B)=1:50~50:1であることを特徴とする香料組成物。
(A)ベンズアルデヒド又はアニスアルデヒド
(B)ベンジルアルコール又はアニスアルコール
【請求項2】
前記香料組成物が、N-アシルサルコシン塩及び/又はカチオン化ポリマーに起因する臭気を抑制するための請求項1に記載の香料組成物。
【請求項3】
前記香料組成物が、サクラ調の香気を有する請求項1又は2に記載の香料組成物。
【請求項4】
前記香料組成物を含有する洗浄剤組成物又は化粧料組成物。
【請求項5】
前記洗浄剤組成物又は化粧料組成物における前記香料組成物の含有量が0.001~1.0質量%である請求項4に記載の洗浄剤組成物又は化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料組成物に関する。更に詳しくは、特定の香料組成物の組み合わせにより、特定の基剤臭を抑制するとともに、良好なサクラ調の香気を呈することを可能とする香料組成物、およびこの香料組成物を配合する洗浄剤組成物又は化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
香粧品の分野においては、製品を製造する際に好ましくない臭気を様々な香料を用いてマスキングすることは汎用の技術として、広く一般に適用されている(非特許文献1~2参照)。
【0003】
上記マスキングの技術は、シャンプーやボディソープなどの洗浄剤組成物の分野にも応用され、商品の原料臭低減や嗜好性向上において大きな役割を担っている。特に、洗浄剤組成物の主成分として用いられている活性剤は特有の臭気を有することから、洗浄剤組成物として用いる際には香料を用いて該臭気をマスキングすることが一般的である(特許文献1参照)。
【0004】
N-アシルサルコシン塩やカチオン化ポリマーは洗浄剤等種々の技術分野で使用されており(例えば、特許文献2参照)、洗浄力と泡立ちが良いため化粧料の基剤として多く使用されている。ところが、N-アシルサルコシン塩は脂肪酸より構成されているため特有の脂肪酸様の臭気を有する。加えて配合量が高く、洗浄剤や化粧料として強い基剤臭を有する。またカチオン化ポリマーはカチオン基特有のアミン臭を有する。そして、従来、これら基剤臭は種々のマスキングが試みられてきた(例えば、特許文献3参照)
【0005】
一方、近年のサクラ調の香調を有した製品が入浴剤をはじめシャンプー、ボディソープ、ボディクリームなど多岐にわたり提案されている。その中、特有の基剤臭をマスキングし、サクラ特有の香気でマスキングし、かつ良好な香り立ちを呈することを可能とする技術は研究途上であり、今後の技術開発が期待される分野であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4-183797号公報
【特許文献2】特許第6184550号
【特許文献3】特表平9-510956号公報
【特許文献4】特開2001-72556号公報
【特許文献5】特表2002-500173号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】周知慣用技術集「香料」第I部香料一般、日本国特許庁、1999年1月29日発行、230-250頁
【非特許文献2】周知慣用技術集「香料」第III部香粧品用香料、日本国特許庁、2001年6月15日発行、532-535頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、活性剤およびカチオンカポリマーに起因する臭気をマスキングするとともに、良好なサクラ調の香り立ちを有する香料組成物、および当該香料組成物を含有する洗浄剤組成物又は化粧料組成物を提供
することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記事情に鑑み、鋭意研究した結果、特定の成分を組み合わせた香料組成物及び当該香料組成物を含有する洗浄剤が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成したものである。即ち、本発明は、以下の通りである。
【0010】
本発明における第一の発明は、下記(A)及び(B)成分を含有する香料組成物であって、(A)と(B)の質量比が(A):(B)=1:50~50:1である香料組成物である。
(A)ベンズアルデヒド又はアニスアルデヒド
(B)ベンジルアルコール又はアニスアルコール
【0011】
好ましくは、前記香料組成物が、N-アシルサルコシン塩及び/又はカチオン化ポリマーに起因する臭気を抑制するための香料組成物、又はサクラ調の香気を有する香料組成物である。
【0012】
本発明における第二の発明は、前記香料組成物を含有する洗浄剤組成物又は化粧料組成物である。好ましくは、当該洗浄剤組成物又は化粧料組成物における前記香料組成物の含有量が0.001~1.0質量%である洗浄剤組成物又は化粧料組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、活性剤およびカチオンカポリマーに起因する臭気をマスキングするとともに良好なサクラ調の香り立ちを有する香料組成物、および当該香料組成物を含有する洗浄剤組成物又は化粧料組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の香料組成物は、(A)ベンズアルデヒド又はアニスアルデヒド、および(B)ベンジルアルコール又はアニスアルコールからなる香料を用いるものである。
【0016】
<(A)ベンズアルデヒド又はアニスアルデヒド>
本発明の香料組成物に持ちる(A)成分は、ベンズアルデヒド又はアニスアルデヒドである。ベンズアルデヒド(CAS番号:100-52-7)は芳香族アルデヒドの一種であり、甘いアーモンド様の芳香を有する化合物である。アニスアルデヒド(CAS番号:123-11-5)は芳香族アルデヒドの一種であり、ミモザ様の芳香を有する化合物である。
【0017】
<(B)ベンジルアルコール又はアニスアルコール>
本発明の香料組成物に持ちる(B)成分は、ベンジルアルコール又はアニスアルコールである。ベンジルアルコール(CAS番号:100-51-6)は芳香族アルコールの一種であり、甘い方向を有し、多くのフローラル調に用いられる化合物である。アニスアルコール(CAS番号:105-13-5)は芳香族アルコールの一種であり、甘いフローラル調の芳香を有する化合物である。
【0018】
本発明では、前記(A)及び(B)成分を組み合わせることで、活性剤およびカチオンカポリマーに起因する臭気をマスキングするとともに良好なサクラ調の香り立ちを有することを見出した。
【0019】
本発明の香料組成物において、(A)及び(B)成分の質量比(A)/(B)は、特に
限定されるものではないが、0.01~100が好ましく、さらに好ましくは0.02~50の範囲である。質量比が0.01以上であれば、洗浄中におけるサクラ調の香気持続が良好となり、100以下であれば瓶口におけるサクラ調の嗜好が良好となる。
【0020】
次に本発明の香料組成物を含有する洗浄剤組成物又は化粧料組成物を説明する。
【0021】
本発明の香料組成物は、活性剤および/又はカチオンカポリマーを含有する既存の洗浄剤組成物又は化粧料組成物に配合することができる。洗浄剤組成物としては、洗顔料、ボディシャンプーなどの身体洗浄剤、シャンプーなどの毛髪洗浄剤等が挙げられる。また、化粧料組成物としては、メイク製品、フェイスケア製品、ボディケア製品等の皮膚化粧料や、リンス、コンディショナー、スタイリング剤の毛髪化粧料等が挙げられる。
【0022】
本発明の香料組成物を含有する洗浄剤組成物又は化粧料組成物は、所望の剤型に応じて公知の製造技術、処方に基づき製造することができ、脂肪酸臭抑制香料組成物の効果を損なわない範囲で、必要に応じて界面活性剤、油脂類、炭化水素類、ロウ類、高分子化合物、粘度調整剤、防腐剤、キレート剤、安定化剤、顔料、香料などの成分を配合することができる。
【0023】
本発明の洗浄剤組成物又は化粧料組成物における前記香料組成物((A)+(B)合計量)の配合量は、組成物総量に対し、好ましくは0.001~1.0質量%であり、より好ましくは0.005~1.0%である。配合量が0.001%以上であれば、マスキング効果を呈しつつ、使用時における嗜好性が良好である。一方、1.0質量%以下であれば香気が強すぎず、使用時において良好な香り立ちとともに嗜好性の高い洗浄剤組成物を提供することができる。
【0024】
<マスキングされる活性剤について>
本発明の香料組成物により、活性剤に起因する臭気の低減が可能となる。活性剤の例として、例えば例えば、N - ラウロイルサルコシントリエタノールアミン、N - ミリストイルサルコシントリエタノールアミン、N-ココイルサルコシントリエタノールアミン等が挙げられる。
【0025】
活性剤は、洗浄剤組成物又は化粧料組成物の全体に対して1.0%~40.0 質量% ( 以下、単に%という。)の範囲で配合しておくのが好ましく、さらに好ましくは5.0~30.0%である。配合量が1.0%以上であれば、コンディショニング効果( 例えば、洗浄中の使用感および洗浄後の仕上り感の良さ等) が良好で、40.0%以下であれば起泡性が良好となる。
【0026】
<マスキングされるカチオン化ポリマーについて>
本発明の香料組成物により、カチオン化ポリマーに起因する臭気の低減が可能となる。カチオン化ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えばカチオン化セルロ-ス誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グァーガム誘導体、ジアリル4 級アンモニウム塩重合物、ジアリル4 級アンモニウム塩/ アクリルアミド共重合物、4 級ポリビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。これらカチオン化ポリマーを適宜選択し、1 種又は2 種以上を用いることができる。なお、カチオン化ポリマーとしては、カチオン化セルロ- ス誘導体を用いることが好ましく、具体的には、ポリクオタニウム- 1 0 ( 製品名:レオガードMGP:ライオン株式会社製)等が好ましい。
【0027】
カチオン化ポリマーは、洗浄剤組成物又は化粧料組成物の全体に対して0.1~3.0%の範囲で配合しておくのが好ましく、さらに好ましくは0.3~1.5%である。配合量が0.1%以上であれば、コンディショニング効果が良好で、3.0%以下であれば洗
浄剤中に析出せず可溶化が良好となる。
【0028】
本発明の香料組成物を含有する洗浄剤組成物又は化粧料組成物は、所望の剤型に応じて公知の製造技術、処方に基づき製造することができ、脂肪酸臭抑制香料組成物の効果を損なわない範囲で、必要に応じて界面活性剤、油脂類、炭化水素類、ロウ類、高分子化合物、粘度調整剤、防腐剤、キレート剤、安定化剤、顔料、香料などの成分を配合することができる。
【実施例0029】
以下、本発明を実施例及び比較例を例示することにより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。まず、実施例に用いた評価方法、及び評価基準を示す。
【0030】
<香料組成物の調製>
本発明の香料組成物を表1の処方により調製した。
【0031】
【0032】
調製した香料組成物を用いて、表2、3に記載の処方にて洗浄剤組成物を調製し、下記の測定条件により洗浄剤組成物の活性剤およびカチオンカポリマーのマスキング効果を測定した。
【0033】
<評価方法>
表2、3記載の配合量で各原料を混合し、洗浄剤を調製した。
洗浄剤組成物の香りを瓶口及び洗浄中について、以下の評価基準に基づき専門パネラー5人により評価した。
【0034】
(瓶口での香り)
洗浄剤組成物20g を、規格瓶(ED-40) に入れ、瓶口の香りを評価した。
【0035】
(洗浄中の香り)
洗浄剤組成物3gを片方の手に取り、頬部を洗浄し、洗浄中の香りを評価した。
【0036】
<マスキングの評価基準>
1点:非常に強く油剤臭が感じられる。
2点:強く油剤臭が感じられる。
3点:油剤臭が感じられる。
4点:油剤臭が微かに感じられる。
5点:全く油剤臭が感じられない。
【0037】
<サクラ調の香調評価基準>
1点:サクラ調の香気を全く感じることができない。
2点:サクラ調の香気をわずかに感じることができる。
3点:サクラ調の香気を感じることができる。
4点:サクラ調の香気を十分に感じることができる。
5点:サクラ調の香気を強く感じることができる。
【0038】
【0039】
【0040】
表2、3に表すように、各実施例は各比較例に対し、いずれの特性も優れており良好な結果を得た。