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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094352
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20230628BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20230628BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
A61K8/92
A61Q5/12
A61Q5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209776
(22)【出願日】2021-12-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイト掲載日:2021年8月18日 ウェブサイトのアドレス:https://www.kracie.co.jp/release/10170556_3833.html 販売日:2021年9月28日 販売店:株式会社ツルハホールディングス、株式会社サンドラッグ、株式会社クスリのアオキ他
(71)【出願人】
【識別番号】306018365
【氏名又は名称】クラシエホームプロダクツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千葉 真樹子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083BB11
4C083CC31
4C083CC33
4C083DD23
4C083DD30
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】
植物油が高配合されているにも関わらず、製品の酸化臭・劣化臭が少なく、毛髪へなめらかさ、しっとり感、ツヤ等のヘアトリートメント効果を付与しながら、毛髪をべたつきがなく、軽くセットすることができ、かつ、手に付着した際もべたつきが少ない毛髪化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】
下記(A)、(B)及び(C)成分を含有する毛髪化粧料であって、
(A)と(B)の合計量が毛髪化粧料全体質量中65~85質量%であり、
(C)が毛髪化粧料全体質量中10質量%以上であることを特徴とする毛髪化粧料により上記課題を解決する。好ましくは、非水系である毛髪化粧料である。
(A)アンズ核油、
(B)オリーブ果実油、及び
(C)サフラワー油、
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)、(B)及び(C)成分を含有する毛髪化粧料であって、
(A)と(B)の合計量が毛髪化粧料全体質量中65~85質量%であり、
(C)が毛髪化粧料全体質量中10質量%以上であることを特徴とする毛髪化粧料。
(A)アンズ核油、
(B)オリーブ果実油、及び
(C)サフラワー油、
【請求項2】
前記毛髪化粧料が、非水系である請求項1記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
前記毛髪化粧料が、ヘアオイル、ヘアオイルゲル、ヘアオイルスプレー、又はヘアオイルミストである請求項1又は2記載の毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は毛髪化粧料に関し、詳しくは、植物油が高配合されているにも関わらず、べたつきがなく、酸化臭・劣化臭の少ない毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪になめらかさやツヤを付与し、くし通りをよくするために、洗い流さないタイプのコンディショニング効果を持つ毛髪化粧料が用いられ、一般にヘアエッセンス、ヘアクリーム、ヘアオイル、ヘアリクイド等の名称のヘアトリートメントが市販されている。その中でも、ヘアオイルで髪のケアをしている消費者が増えており、各社よりさまざまなヘアオイル製品が発売されている。さらに、近年はナチュラルやグリーン志向の高まりから、植物油を高配合したヘアオイル製品が好まれている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のような植物油を高配合したオイルタイプの毛髪化粧料では、髪や手がひどくべたつき、シルエットが重くなるという課題があった。
【0004】
一方で、特許文献2に記載のような植物油のみで構成されたオイルタイプの毛髪化粧料では植物油特有の酸化臭・劣化臭が経時とともにひどくなるといった課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-207807号公報
【特許文献2】特開2014-234364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明は、これらの問題を解決するために、植物油が高配合されているにも関わらず、べたつきがなく、酸化臭・劣化臭の少ない毛髪化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、毛髪化粧料に(A)アンズ核油、(B)オリーブ果実油、及び(C)サフラワー油を含むことで上記課題を解決することができることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記(A)、(B)及び(C)成分を含有する毛髪化粧料であって、
(A)と(B)の合計量が毛髪化粧料全体質量中65~85質量%であり、
(C)が毛髪化粧料全体質量中10質量%以上であることを特徴とする毛髪化粧料である。
(A)アンズ核油、
(B)オリーブ果実油、及び
(C)サフラワー油、
【0009】
さらに、本発明の一態様において、前記毛髪化粧料が、非水系である毛髪化粧料である。
【0010】
さらに、本発明の一態様において、前記毛髪化粧料が、ヘアオイル、ヘアオイルゲル、
ヘアオイルスプレー、ヘアオイルミストである毛髪化粧料である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の毛髪化粧料によれば、植物油が高配合されているにも関わらず、製品の酸化臭・劣化臭が少なく、毛髪へなめらかさ、しっとり感、ツヤ等のヘアトリートメント効果を付与しながら、毛髪をべたつきがなく、軽くセットすることができ、かつ、手に付着した際もべたつきが少ない状態を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
[毛髪化粧料]
本発明において毛髪化粧料とは、(A)アンズ核油、(B)オリーブ果実油、及び(C)サフラワー油を含むことを特徴とする毛髪化粧料であり、毛髪化粧料の全体質量に基づいて、該成分(A)と該成分(B)との合計含有量が特定の範囲内であり、成分(C)を前記毛髪化粧料中特定の割合で含むことを特徴とする、洗い流さないタイプの毛髪化粧料である。これらの成分(A)~(C)を特定の割合で配合することにより、本発明による効果を発揮することができる。ここで、「洗い流さないタイプの毛髪化粧料」とは、洗い流さず毛髪へ塗布したままにする、いわゆるアウトバスタイプの毛髪化粧料である。
【0014】
アウトバスタイプの毛髪化粧料としては、例えば、洗い流さないトリートメントや、ヘアフォーム、ヘアワックス、ポマード、ヘアジェル、ヘアクリーム、ヘアスプレー、ヘアミスト、ヘアウォーター、ヘアリキッド、ヘアオイル等の整髪剤や、ヘアカラースプレー等の一時染毛剤や、ヘアトニック、養毛剤等が挙げられるが、本発明においては、好ましくはヘアオイル、ヘアオイルゲル、ヘアオイルスプレー、ヘアオイルミストである。
【0015】
以下、本発明の毛髪化粧料の各成分について詳細に説明する。
【0016】
[(A)アンズ核油]
本発明における(A)アンズ核油はアンズ Prunus armeniacaの核から得られる脂肪油であり、ヘアコンディショニング剤の目的で配合される。本発明においては、(A)アンズ核油は市販品を用いてもよい。本発明において用いることができる市販品としては、これらに限定されるものではないが、例えばAPRICOT KERNEL OIL(TEXTRON PLIMON,S.L.U.製)、Apricot Kernel Oil RBDW(IMCD Benelux B.V.製)、CROPURE APRICOT KERNEL(クローダジャパン株式会社製)、Lipovol P(Vantage Specialty Ingredients, Inc.製)、アンズ核油(GP TEXTRON株式会社製)等が挙げられる。このようなアンズ核油は、それぞれ単独で用いることもでき、また2種以上混合して用いることもできる。
【0017】
[(B)オリーブ果実油]
本発明における(B)オリーブ果実油は、オリーブ Olea europaeaの果実から得られる脂肪油であり、ヘアトリートメント剤の目的で配合される。本発明においては、(A)オリーブ果実油は市販品を用いてもよい。本発明において用いることができる市販品としては、これらに限定されるものではないが、例えばAkorganic-O-Extra virgin olive(AKOTT GROUP S.R.L.製)、CROPURE OL(クローダジャパン株式会社製)、Lipovo O(Vantage Specialty Ingredients, Inc.製)、Olifeel Organic Oil(ROELMI HPC SRL製)、OLIVE OIL(TEXTRON PLIMON,S.L.U.製)、Olive Oil RBD(I
MCD Benelux B.V.製)、Organic Virgin Olive Oil(OLIVEA製)、エクストラバージンオリーブ油(サミット製油株式会社製)等が挙げられる。このようなオリーブ果実油は、それぞれ単独で用いることもでき、また2種以上混合して用いることもできる。
【0018】
本発明の毛髪化粧料における(A)アンズ核油と(B)オリーブ果実油の合計量は、毛髪化粧料の全体質量に基づき、65質量%以上85質量%であり、好ましくは70質量%~80質量%であり、より好ましくは73質量%~78質量%である。本発明の毛髪化粧料における(A)アンズ核油と(B)オリーブ果実油の合計量がこの範囲内であれば、製品の酸化臭・劣化臭が少なく、毛髪をべたつきがなく軽くセットすることができる。
【0019】
[(C)サフラワー油]
本発明における(C)サフラワー油は、ベニバナ Carthamus tinctoriusの種子から得られる脂肪油であり、ヘアコンディショニング剤の目的で配合される。本発明においては、(C)サフラワー油は市販品を用いてもよい。本発明において用いることができる市販品としては、これらに限定されるものではないが、例えばLipovol SAF(Vantage Specialty Ingredients, Inc.製)、NIKKOL サフラワー油(日光ケミカルズ株式会社製)、Saffloer Oil RBDW(IMCD Benelux B.V.製)、サフラワーサラダ油(サミット製油株式会社製)等が挙げられる。このようなオリーブ果実油は、それぞれ単独で用いることもでき、また2種以上混合して用いることもできる。
【0020】
本発明における(C)サフラワー油の含有量は、毛髪化粧料の全体質量に基づき、10質量%以上である。本発明の毛髪化粧料における(C)サフラワー油の含有量がこの範囲であれば、毛髪へなめらかさ、しっとり感、ツヤ等のヘアトリートメント効果を付与しながら、かつ、手に付着した際もべたつきが少ない状態を実現することができる。
【0021】
[その他の成分]
本発明の毛髪化粧料は、上記成分(A)~(C)を必須成分とし、溶剤などを加えた液にこれらを含有させることによって調製されるが、これらの必須成分以外にも本発明の効果を損なわない範囲において、通常毛髪化粧料に一般的に配合される(D)その他の成分を目的に応じて配合することができる。
【0022】
上記のような他の成分としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム等のカチオン性界面活性剤;セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリコシルトレハロース等の湿潤剤;ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、2-エチルヘキサン酸などの高級脂肪酸;アボカド油、グレープ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、ホホバ油、サフラワー油、マカデミアナッツ油、ローズヒップ油、メドウフォーム油、クランベアビシニカ油、ツバキ油、アルガン油、ヤシ油、セサミ油、ヒマワリ油、クルミ油、植物性スクワラン等の植物油;イソドデカン、水添ポリイソブテン、流動イソパラフィン、ワセリン、スクワラン等の炭化水素;ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム等の抗フケ成分;エタノール、メタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;l-メントール、ハッカ油等の冷感剤;L-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸ナトリウム、DL-アラニン、L-アルギニン、グリシン、L-グルタミン酸、L-システイン、Lスレオニン等のアミノ酸;液化石油ガス、ジメチルエーテル等の噴射ガス;12-ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール、アミノ酸誘導体等の低分子化合物、あるいはポリアクリル酸誘導体、デキストリン誘導
体等のオイルゲル化剤;その他、紫外線吸収剤、防腐剤、糖類、香料、色剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、各種薬剤、等が挙げられる。
【0023】
本発明の毛髪化粧料は、好ましくはヘアオイル、ヘアオイルゲル、ヘアオイルスプレー、ヘアオイルミストなどのリーブオンタイプの非水系毛髪化粧料に用いることができ、特に好ましくはヘアオイル、又はヘアオイルゲルに用いることができる。
【0024】
本発明の毛髪化粧料において、ヘアオイルに対してオイルゲル化剤を、通常、0.01~10重量%、好ましくは0.05~5重量%の範囲で加え、必要に応じて加熱撹拌して、オイルゲル化剤を溶解させたのち、室温に放置することにより、オイルゲル化物を得ることができる。オイルゲル化剤としては、12-ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール、アミノ酸誘導体等の低分子化合物、あるいはポリアクリル酸誘導体、デキストリン誘導体等の高分子化合物が知られている。
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0026】
[試料の調製]
以下の試料を下表1~2に記載の成分・配合量で、常法により調製した。その他成分については、ヘアオイルには、植物油、香料、その他の成分を、ヘアオイルゲルにはこれらの成分に加えてオイルゲル化剤を適宜配合した。
【0027】
[1]製剤の酸化臭・劣化臭の経時変化の評価
調整した試料をガラスの小瓶に入れ、密閉させて50℃に調温した庫内に2週間静置させ、経時変化を加速させたサンプルとした。経時変化を加速させたサンプルと調整直後のサンプルとを比較し、酸化臭・劣化臭などの匂いの変化を評価した。尚、評価基準は以下の通りである。
○:良好 匂い変化が小さい
△:やや悪い 匂い変化が認められる
×:悪い 匂い変化が大きい
【0028】
[毛髪サンプルの調製]
本発明の毛髪化粧料の有用性を評価するために、まず、次の方法で毛髪を処理した。市販の毛髪(10g、30cm、ビューラックス社製)を濃度10質量%のポリオキシエチレン(2E.O.)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液2gでシャンプー洗浄し、お湯で充分に洗い流した後、タオルドライを行い、ドライヤーで毛髪を乾燥させた。次に、下表1~2に示した実施例及び比較例の毛髪化粧料0.5gを均一に塗布し、自然乾燥させた後、なめらかさなど毛髪へのダメージケア効果を評価した。また、毛髪化粧料を毛束に塗布した後のべたつき感を評価した。
【0029】
[毛髪サンプルの評価]
上記のように調製した毛髪サンプルを用いて、以下の指標について評価した。
【0030】
[2]毛髪のべたつき評価
各毛髪化粧料を塗布した直後の毛束に1cm~2cmの羽毛を10枚ずつ乗せ、密着させた。その後、ドライヤーの冷風を10秒間かけ、毛束に残った羽毛の数を数えた。尚、毛束に残った羽毛の数が少ないほどべたつきがないことを示すものである。
[3]毛髪のなめらかさ評価
動摩擦係数を測定することにより毛髪のなめらかさを評価した。毛髪の動摩擦係数は、摩擦感テスター(KES-SE型、カトーテック株式会社製)を使用し、摩擦子としてシ
リコンシートを取り付け、荷重50g、移動スピード1mm/secの条件で動摩擦係数(MIU値)の測定を行い、20本の毛束の平均値を求めた。尚、動摩擦係数が低いほど、なめらかであることを示すものである。
【0031】
実施例1~22及び比較例1~17の配合及び評価結果を、下表1~2に記載する。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
表1~2から明らかなように、本発明の毛髪化粧料に関する実施例1~22は、比較例1~17の組成物に比べていずれも優れた性能を示した。