(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094355
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】パネル体、クッション体の製造方法、および、パネル体の製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 5/00 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
A47G5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209781
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】大川 航平
(57)【要約】
【課題】使用感が良好なパネル体を提供する。
【解決手段】パネル体Pは、融点が異なる複数種類の繊維F1,F2を含むパネル本体部1を備え、パネル本体部1において、表面から一定範囲の厚さ位置に、低融点繊維F2同士が溶融して連結した溶融構造部分F20が集中して分布する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が異なる複数種類の繊維を含むパネル本体部を備え、
前記パネル本体部において、表面から一定範囲の厚さ位置に、低融点繊維同士が溶融して連結した溶融構造部分が集中して分布する、
ことを特徴とするパネル体。
【請求項2】
前記パネル体は、さらに表皮クロスを含み、
前記溶融構造部分は、前記表皮クロスと前記パネル本体部の接合部よりもさらに前記パネル本体部の厚み方向に入り込んだ位置に分布する、
ことを特徴とする請求項1記載のパネル体。
【請求項3】
融点が異なる複数種類の繊維を含むクッション材を複数枚重ねて加熱することで、低融点繊維同士の接触部分が溶融して一体化し、1枚のクッション体を形成する、
ことを特徴とするクッション体の製造方法。
【請求項4】
融点が異なる複数種類の繊維を含むクッション材を複数枚重ねて加熱した後に、前記クッション材の厚み方向の両側に表皮クロスを配設して加圧することで、低融点繊維同士の接触部分が溶融して一体化し、1枚のクッション体を形成するとともに、前記加熱された前記クッション材の余熱で前記表皮クロスと前記クッション材とを接着する、
ことを特徴とするパネル体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル体、クッション体の製造方法、および、パネル体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天板と、これを3方向から囲む仕切板とを含んで構成されて、オフィスや公共施設等において個人用の執務や作業を行うためのブースを形成する家具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の家具では、天板に向かって着座する着座者の背後側が、完全に開放される。このため、背後側からブース内の様子が外部から簡単に視認されてしまう。また、近年は、ブース内で、パソコンを使用したオンラインミーティングが行われることも多いが、ブース内で着座者が発言した内容などが、背後側から外部へ音漏れしてしまう。
【0005】
これらの事態を回避するためには、着座者の背後側に、視線や音を遮るためのパネル体を設置すればよい。このようなパネル体は、視線や音を十分に遮るために十分な厚みを有するものであることが好ましい。その一方で、例えばブース空間に出入りする者がパネル体にあたっても痛くないように、パネル体は、適度な柔らかさを有することも好ましい。そこで例えば、硬質な板状の芯材の両主面に、柔らかいクッション材などを貼り合わせてパネル体を構成することも考えられる。しかしながら、この場合、芯材が内部にあることでパネル体の質感が硬質な印象になることが避けられず、使用感が損なわれてしまう。
【0006】
本発明は、これらの課題に着目してなされたものであって、使用感が良好なパネル体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち、本発明のパネル体は、融点が異なる複数種類の繊維を含むパネル本体部を備え、前記パネル本体部において、表面から一定範囲の厚さ位置に、低融点繊維同士が溶融して連結した溶融構造部分が集中して分布する、ことを特徴とする。
【0009】
この構成によると、全体的に均一な硬さと柔軟性を有する、使用感の良好なパネル体が得られる。
【0010】
好ましくは、前記パネル体は、さらに表皮クロスを含み、前記溶融構造部分は、前記表皮クロスと前記パネル本体部の接合部よりもさらに前記パネル本体部の厚み方向に入り込んだ位置に分布する、ことを特徴とする。
【0011】
この構成によると、クッション体における硬さと柔軟性の均一性を損なわずに、表皮クロスによってパネル体の美観を高めることができる。
【0012】
また、本発明のクッション体の製造方法は、融点が異なる複数種類の繊維を含むクッション材を複数枚重ねて加熱することで、低融点繊維同士の接触部分が溶融して一体化し、1枚のクッション体を形成する、ことを特徴とする。
【0013】
この構成によると、複数枚のクッション材を重ねて加熱するという簡易な工程で、容易にクッション体を製造することができる。
【0014】
また、本発明のパネル体の製造方法は、融点が異なる複数種類の繊維を含むクッション材を複数枚重ねて加熱した後に、前記クッション材の厚み方向の両側に表皮クロスを配設して加圧することで、低融点繊維同士の接触部分が溶融して一体化し、1枚のクッション体を形成するとともに、前記加熱された前記クッション材の余熱で前記表皮クロスと前記クッション材とを接着する、ことを特徴とする。
【0015】
この構成によると、容易にパネル体を製造することができる。また、表皮クロスに直接に熱がかかることがないので、熱によって表皮クロスが変質する(例えば、変色する)、といった事態が生じにくい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、使用感が良好なパネル体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るパネル体を模式的に示す断面図である。
【
図2】パネル体の材料を模式的に示す断面図である。
【
図4】パネル体の製造に係る各工程を説明するための模式図である。
【
図5】パネル体を用いて形成されるパネルユニットの斜視図である。
【
図6】パネルユニットの組み立ての態様を説明するための図である。
【
図8】変形例に係るパネルユニットおよびその使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
<1.パネル体>
実施形態に係るパネル体の構成について、
図1、
図2を参照しながら説明する。
図1は、パネル体Pを模式的に示す断面図である。
図2は、パネル体Pの材料を模式的に示す断面図である。
【0020】
パネル体Pは、パネル本体部であるクッション体1と、クッション体1の厚さ方向の両側に設けられた表皮クロス2と、を備える。
【0021】
(クッション体1)
クッション体1は、複数枚(図の例では2枚)のクッション材11,11を重ね合わせて一体化させることによって形成されている。
【0022】
各クッション材11は、融点が異なる複数種類の繊維F1,F2を含んで構成される繊維クッションである。クッション材11に含まれる各繊維F1,F2は、例えば、各種の樹脂により形成される繊維(いわゆる、樹脂繊維)から選択することができる。具体的には例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリスチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリカーボネート繊維、ポリアミド繊維、ウレタン繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、エラストマー繊維、などから選択することができる。あるいは、各繊維F1,F2は、ガラス繊維、炭素繊維、ゴム繊維、などから選択することもできる。
【0023】
複数種類の繊維F1,F2は、異なる物質からなる繊維の組み合わせであってもよいし、同じ物質からなる繊維の組み合わせであってもよい。具体的には例えば、ポリエステル繊維とポリエチレン繊維との組み合わせ、ポリプロピレン繊維とポリエチレン繊維の組み合わせ、例えば純度が異なることによって互いに融点が異なるものとなっているポリエステル繊維の組み合わせ、互いに融点が異なるポリエチレン繊維の組み合わせ、互いに融点が異なるポリエチレンテレフタレート繊維の組み合わせ、などであってもよい。
【0024】
ただし、クッション材11に含まれる、融点が異なる複数種類の繊維F1,F2のうち、少なくとも、相対的に融点が低い繊維(以下「低融点繊維」ともいう)F2は、熱可塑性樹脂により形成される繊維(いわゆる、熱可塑性樹脂繊維)から選択される。具体的には例えば、低融点繊維F2は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、熱可塑性ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリスチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリカーボネート繊維、ポリアミド繊維、ウレタン繊維、ポリ酢酸ビニル繊維、エラストマー繊維、などから選択することができる。いうまでもなく、クッション材11に含まれる複数種類の繊維F1,F2のうち、相対的に融点が高い繊維(以下「高融点繊維」ともいう)F1も、熱可塑性樹脂繊維から選択されてよい。
【0025】
複数種類の繊維F1,F2からクッション材11が形成される態様はどのようなものであってもよいが、融点以上に加熱されて溶融(軟化)した繊維が移動できるように、繊維間に適度な空隙を有していることが好ましい。例えば、クッション材11は、繊維F1,F2がランダムに配向して、交絡、融着、接着、などによって結合されたもの(いわゆる、不織布)であってもよい。
【0026】
上記のとおり、クッション体1は、複数枚(図の例では2枚)のクッション材11,11を重ね合わせて一体化させることによって形成されている。したがって、クッション体1は、融点が異なる複数種類の繊維F1,F2を含んで構成されるとともに、重ね合わされた複数枚のクッション材11,11の厚みに相当する厚みを有する、繊維クッションとなる。
【0027】
高融点繊維F1は、一体化される前の各クッション材11において、その全体に満遍なく分布している(
図2)。また、高融点繊維F1は、各クッション材11が一体化されたクッション体1においても、その全体に満遍なく分布している(
図1)。
【0028】
低融点繊維F2も、高融点繊維F1と同様、一体化される前の各クッション材11において、その全体に満遍なく分布している(
図2)。その一方で、低融点繊維F2は、各クッション材11が一体化されたクッション体1において、その全体に分布しているものの、その分布は均一ではなく、クッション体1の表面から一定範囲の厚さ位置において、局所的に多く分布している(
図1)。すなわち、クッション体1においては、その表面から一定範囲の厚さ位置に、低融点繊維F2同士が一度溶融して連結することによって形成された溶融構造部分F20が、集中して分布している。後述するように、クッション体1の表面には、接合部Hを介して表皮クロス2が接合されるところ、溶融構造部分F20は、クッション体1と表皮クロス2との接合部Hよりもさらにクッション体1の厚み方向に入り込んだ位置に分布することになる。
【0029】
溶融構造部分F20が集中して分布する厚さ位置は、より具体的には、重ね合わされたクッション材11,11間の境界B(
図4参照)に相当する位置B’である。例えば、クッション体1が、厚さが等しい2枚のクッション材11,11が一体化されることによって形成されている場合、溶融構造部分F20は、クッション体1の厚み方向の略中央およびその近傍に、集中して分布することになる。
【0030】
重ね合わされた複数枚のクッション材11,11は、それらの境界Bおよびその近傍において、溶融した低融点繊維F2同士が連結して溶融構造部分F20を形成することによって、一体化されている。すなわち、後述するように、クッション体1の製造過程においては、重ね合わされたクッション材11,11が、低融点繊維F2の融点以上に加熱された上で、加圧される。すると、融点以上に加熱されることによって溶融(軟化)した低融点繊維F2が、重ね合わされたクッション材11,11の境界Bおよびその近傍において、結合(統合)して一体化することで、溶融構造部分F20が形成される。これによって、重ね合わされた複数枚のクッション材11,11における対向する主面同士が接合(面接合)される。すなわち、重ね合わされたクッション材11,11が一体化されて、クッション体1が形成される。
【0031】
低融点繊維F2は、融点以上に加熱されることによって溶融した後に、融点よりも低い温度にまで降温すると、加熱前の柔軟性を取り戻す。このため、溶融構造部分F20は、クッション体1における他の部分と同程度の硬さおよび柔軟性を有する。このため、複数枚のクッション材11,11の主面同士が、低融点繊維F2の溶融構造部分F20によって接合されることによって形成されたクッション体1は、均一な硬さと柔軟性を有するものとなる。
【0032】
仮に、複数枚のクッション材11,11の主面同士を、各種の接着用材料(例えば、接着剤、ホットメルトなどの機能シート、など)を用いて接合する場合、得られるクッション体は、その芯部分(すなわち、重ね合わされた複数枚のクッション材11,11の境界Bに相当する部分)に、硬化した接着剤の層などといった、他の部分とは異質な層が、介在することになる。この異質な層は、多くの場合、他の部分に比べて、硬かったり、柔軟性に乏しかったりする。つまり、このような接合の態様では、均一な硬さと柔軟性を有するクッション体を得ることが難しい。上記のように、クッション材11に含まれる低融点繊維F2が形成する溶融構造部分F20によって、複数枚のクッション材11,11の主面同士が接合される場合、クッション体1の芯部分に異質な層が介在することがない。したがって、硬さと柔軟性の均一性が十分に担保されたクッション体1が得られる。
【0033】
(表皮クロス2)
表皮クロス2は、パネル体Pの表皮(張地)となる薄肉のシート状部分であり、例えば、クッション体1の各表面(表側の表面および裏側の表面)に設けられる。クッション体1の各表面は、重ね合わされた複数枚のクッション材11における、他のクッション材11の主面と対向配置されない主面に相当する。表皮クロス2の形成材料は、どのようなものであってもよい。例えば、表皮クロス2は、樹脂製のシート、革製(合成皮革製、天然皮革製、あるいは、人工皮革製)のシート、布(ファブリック)、不織布、などであってもよい。
【0034】
溶融構造部分F20が、クッション体1の厚み方向に入り込んだ位置に形成されるのに対し、表皮クロス2とクッション体1との接合部Hは、クッション体1の表面、すなわち、溶融構造部分F20よりも厚み方向の外方(厚み方向の中心から離れた側)であって厚み方向の中心に対して対称となる各位置に形成される。したがって、接合部Hが形成されることにより、クッション体1における硬さと柔軟性の均一性が損なわれにくい。
【0035】
<2.パネル体の製造方法>
次に、パネル体Pの製造方法について、
図1,
図2に加え、
図3、
図4を参照しながら説明する。
図3は、パネル体Pの製造工程の流れを示す図である。
図4は、各工程を説明するための模式図である。
【0036】
ステップS1
まず、融点が異なる複数種類の繊維F1,F2を含んで構成されるクッション材11を、複数枚(図の例では2枚)準備して、該複数枚のクッション材11,11を重ね合わせる。
【0037】
ステップS2
続いて、ステップS1で重ね合わされた複数枚のクッション材11,11を、熱板加熱する。具体的には、重ね合わされた複数枚のクッション材11,11を一対の熱板81,81で挟んで、ヒータ811などを用いて各熱板81を加熱することによって、複数枚のクッション材11,11を加熱する。このとき、クッション材11の加熱温度が、クッション材11に含まれる複数種類の繊維F1,F2のうち、相対的に融点が低い低融点繊維F2が溶融し、かつ、相対的に融点が高い高融点繊維F1が溶融しないような温度となるように、ヒータ811の温度が調整される。
【0038】
ステップS3
クッション材11,11が所定温度にまで加熱されると、続いて、重ね合わされた複数枚のクッション材11,11の厚み方向の一方側(例えば、表側の表面の側)に、表皮クロス2を配置する。また、重ね合わされた複数枚のクッション材11,11の厚み方向の他方側(例えば、裏側の表面の側)にも、表皮クロス2を配置する。
【0039】
ステップS4
続いて、ステップS3で重ねられた重畳体(すなわち、表皮クロス2、複数枚のクッション材11,11、および、表皮クロス2、がこの順で重ねられた重畳体)を、コールドプレスする。具体的には、重ね合わされた重畳体を、任意の形状の金型82で挟んで、厚み方向から加圧して成型する。
【0040】
すると、重ね合わされている各クッション材11,11における対向する主面同士が、圧着されて接合される。具体的には、重ね合わされているクッション材11,11が加圧されることによって、ステップS2の熱板加熱によって溶融している低融点繊維F2が、重ね合わされている複数枚のクッション材11,11の境界Bおよびその近傍において、他方のクッション材11の低融点繊維F2と接触して、該接触部分において結合して一体化し(いわゆる、熱結合)、低融点繊維F2同士が溶融して連結した溶融構造部分F20が形成される。これにより、複数枚のクッション材11,11が一体化されて、1枚のクッション体1が形成される。
【0041】
また、コールドプレスが行われると、ステップS2の熱板加熱によって加熱された複数枚のクッション材11,11の余熱によって、重ね合わされている複数枚のクッション材11,11(ひいては、これらが一体化されたクッション体1)の一方の表面(表側の表面)と表皮クロス2とが接着される(接合部Hが形成される)とともに、該複数枚のクッション材11,11の他方の表面(裏側の表面)と表皮クロス2とが接着される。
【0042】
<3.効果>
上記の実施形態に係るパネル体Pは、融点が異なる複数種類の繊維F1,F2を含むクッション体(パネル本体部)1を備え、クッション体1において、表面から一定範囲の厚さ位置に、低融点繊維F2同士が溶融して連結した溶融構造部分F20が集中して分布する。この構成によると、全体的に均一な硬さと柔軟性を有する、使用感の良好なパネル体Pが得られる。
【0043】
また、上記の実施形態に係るパネル体Pは、さらに表皮クロス2を含み、溶融構造部分F20は、表皮クロス2とクッション体1の接合部Hよりもさらにクッション体1の厚み方向に入り込んだ位置に分布する。この構成によると、クッション体1における硬さと柔軟性の均一性を損なわずに、表皮クロス2によってパネル体Pの美観を高めることができる。
【0044】
また、上記の実施形態に係るパネル体Pの製造方法は、融点が異なる複数種類の繊維F1,F2を含むクッション材11を複数枚重ねて加熱した後に、クッション材11の厚み方向の両側に表皮クロス2を配設して加圧することで、低融点繊維F2同士の接触部分が溶融して一体化し、1枚のクッション体1を形成するとともに、加熱されたクッション材11の余熱で表皮クロス2とクッション材11とを接着する。この構成によると、容易にパネル体Pを製造することができる。また、表皮クロス2に直接に熱がかかることがないので、熱によって表皮クロス2が変質する(例えば、変色する)、といった事態が生じにくい。
【0045】
<4.パネル体の適用例>
パネル体Pの適用例について、
図5、
図6を参照しながら説明する。
図5は、パネル体Pを用いて形成されるパネルユニットUの斜視図である。
図6は、パネルユニットUの組み立ての態様を説明するための図である。
【0046】
パネルユニットUは、パネル体Pと脚体Lとを備えており、パネル体Pが脚体Lによって支持されることで、自立可能とされている。
【0047】
パネル体Pの構成は、上述したとおりである。ここでは、パネル体Pが、主面が略楕円状となる形状に、成型されている。パネル体Pの外縁には、相対的に厚みが薄くなるように圧縮された外縁部21が設けられている。外縁部21が設けられることによって、パネル体Pの強度が高められるとともに、美観が向上する。また、パネル体Pの両主面内には、その中心線に沿って、相対的に厚みが薄くなるように圧縮された嵌合部22が設けられている。嵌合部22は、後述する脚体Lが備える一対の鋼板31,31に挟持される部分であり、鋼板31,31を位置決めする役割を担っている。また、パネル体Pには、嵌合部22の中心線に沿って、直線状のスリット23が形成されている。スリット23は、一対の鋼板31,31を連結するピン33を挿通させる役割を担っている。パネル体Pの形状、厚み、局所的な薄肉部(外縁部21、嵌合部22)、などは、コールドプレスに用いられる金型82の形状などによって制御することができる。
【0048】
脚体Lは、一対の鋼板31,31を備える。各鋼板31は、長尺な板状部材であり、長尺方向を上下方向に延在させるような姿勢で配置されて、下端部において、平板状の部材であるプレート32と接続される。一対の鋼板31,31は、互いの内側面の間に隙間を設けつつ、互いに平行な姿勢で対向配置されるとともに、高さ方向に沿って間隔を設けた複数の位置において、ピン33によって連結されている。一対の鋼板31,31の間に形成される隙間の寸法(一対の鋼板31,31の離間距離)は、パネル体Pに設けられている嵌合部22の厚さと略同一とされる。各鋼板31およびプレート32の一部あるいは全部は、例えば、鋼材、木質材、硬質樹脂、などから形成することができる。
【0049】
パネルユニットUを組み立てるにあたっては、パネル体Pが、嵌合部22が脚体Lの一対の鋼板31,31の間に挟み込まれるような位置関係で、脚体Lの上方から嵌め入れられる。このとき、パネル体Pに設けられるスリット23内に一対の鋼板31,31を連結するピン33が配置されることで、ピン33によって妨げられることなく、嵌合部22の略全体が一対の鋼板31,31の間に挟み込まれるような位置まで、パネル体Pを嵌め入れることができる。
【0050】
パネルユニットUは、例えば、
図7に示されるように、ブース家具9に付随して用いられてもよい。
【0051】
ブース家具9は、例えば、複数枚のパネルが、平面視にて略コの字型となるように接続された構成を備えており、内部にブース空間Vを形成する。ブース空間V内には、必要に応じて、椅子91、テーブル(机)92(
図7参照)、などが適宜に配置されるこのブース家具9が、例えば、オフィスや公共施設等に設置されることで、個人用の執務や作業を行うためのブース空間Vが形成される。
【0052】
ブース家具9には、ブース空間Vへの出入り口となる開口部分90が形成されており、パネルユニットUは、例えば、この開口部分90からの出入りが妨げられないように、開口部分90から一定距離離して配置される。これによって、開口部分90からの出入りが妨げられることなく、ブース空間Vの内部が、外部から視認されることが回避される。また、ブース空間Vの内部から外部に音が漏れ出ることが抑制され、ブース空間Vの外部から内部に音が入りにくくもなる。つまり、パネルユニットUによって、視線や音が遮られる。
【0053】
上記のとおり、パネルユニットUが備えるパネル体Pが備えるクッション体1は、複数枚のクッション材11,11を重ね合わせて一体化させることによって形成されているため、十分な厚みを有する。また、クッション体1は、複数枚のクッション材11,11が溶融構造部分F20によって接合されたものであるので、均一な硬さと柔軟性を有する。したがって、パネル体Pは、視線や音を十分に遮るために十分な厚みを有しつつ、適度な柔らかさを有するものとなっており、これがブース家具9に付随して用いられる場合に、例えばブース空間Vに出入りする者がパネル体Pにあたっても痛くなく、使用者に良好な使用感を与えることができる。
【0054】
<5.他の実施形態>
上記の実施形態では、クッション体1と表皮クロス2とを備えるパネル体Pを製造する場合について説明したが、パネル体Pの製造に係る一連の工程(ステップS1~ステップS4(
図3、
図4))のうち、例えば、ステップS3の工程を省略することで、表皮クロス2を備えない単独のクッション体1を製造することができる。すなわち、融点が異なる複数種類の繊維F1,F2を含むクッション材11を複数枚重ねて加熱することで、低融点繊維F2同士の接触部分が溶融して一体化し、1枚のクッション体1を形成することができる。この構成によると、複数枚のクッション材11を重ねて加熱するという簡易な工程で、容易にクッション体1を製造することができる。例えば、このような方法でクッション体1を製造した後に、その表面に適宜の方法を用いて表皮クロス2を配設してもよい。
【0055】
上記の実施形態において、クッション体1は、3枚以上のクッション材11を重ね合わせて一体化させることによって形成されてもよい。また、クッション体1の形成に用いられる複数枚のクッション材11は、互いに異なる厚みを有するものであってもよい。
【0056】
上記の実施形態において、クッション体1の形成に用いられる複数枚のクッション材11は、各クッション材11に含まれる複数種類の繊維F1,F2の組み合わせが、互いに異なるものであってもよい。例えば、複数枚のクッション材11は、高融点繊維F1として互いに異なる繊維を含有するものであってもよい。また、クッション体1の形成に用いられるクッション材11には、3種類以上の繊維が含まれてもよいし、各種の添加材など添加されていてもよい。また、クッション材11に含有される繊維の種類、繊維の絡み合わせ方、などが適宜に選択されることで、クッション体1が、吸音機能を有する吸音材として形成されることも好ましい。また、クッション材11は、例えば、複数種類の繊維F1,F2の一方あるいは両方が、糸状に撚り合わされて織り上げられたものであってもよい。
【0057】
パネル体Pを用いて形成されるパネルユニットUの構成は、上記の実施形態においてに例示したものに限らない。上記のとおり、パネル体Pの形状、厚み、局所的な薄肉部、などは、コールドプレスに用いられる金型82の形状などによって任意に制御することができるので、パネル体Pの形状などの自由度が高く、様々なパネルユニットUを形成することができる。
【0058】
例えば、
図8に示されるように、パネル体Pが蛇腹状を呈することによって、自立可能とされた、屏風型のパネルユニットUaを形成することもできる。このパネルユニットUaは、具体的には例えば、複数枚の略長尺矩形状のパネル体Pを、各長尺辺41において折り曲げ自在に連結したものであってもよい。あるいは、パネルユニットUaは、略矩形状に成型されたパネル体Pの面内に、相対的に厚みが薄く形成された直線状の部分41を、互いに平行に複数本形成して、各直線状の部分41で折り曲げられるようにしたものであってもよい。美観を高めるために、パネル体Pの長尺方向の一端側は、丸みを帯びた曲線状(例えば、円弧状)にすることも好ましい。このような構成において、折り曲げ自在な部分41のうちの少なくとも一部を折り曲げて、パネル体Pの下端部が直線上に配置されないようにすることによって、パネルユニットUaを自立させることができる。
【0059】
このようなパネルユニットUaも、例えば、ブース家具9の開口部分90から一定距離離して配置することで、開口部分90からの出入りはできるようにしながら、視線や音を遮るために用いることができる。
【0060】
上記の実施形態あるいは上記の変形例においては、パネル体Pを備えるパネルユニットU,Uaが、ブース家具9に付随して用いられる場合を例示したが、いうまでもなく、パネルユニットU,Uaの使用の態様はこれに限られるものではない。
【0061】
上記の実施形態において、パネル体Pは、必ずしも表皮クロス2を備える必要はない。例えば、パネル体Pは、クッション体1のみから構成されてもよいし、クッション体1と表皮クロス2以外の部材とを含んで構成されてもよい。
【0062】
上記の実施形態において、クッション体1は、必ずしもパネル体Pの構成要素とされなくともよい。すなわち、クッション体1を用いて、各種の家具、雑貨、などを形成することができる。例えば、クッション体1を用いて、床などに敷いて用いられるマット、椅子などに座る際に用いられる座布団やクッション、各種の緩衝材、などを形成してもよい。また例えば、クッション体1を用いて、ブース家具9を形成してもよい。
【0063】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 クッション体(パネル本体部)
11 クッション材
F1 高融点繊維
F2 低融点繊維
F20 溶融構造部分
2 表皮クロス
H 接合部
P パネル体
U パネルユニット