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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094363
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】蓄電池システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20230628BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20230628BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230628BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20230628BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/46
H02J7/00 B
H02J7/00 L
H02J7/00 X
H02J7/00 302C
H02J7/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209794
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田中 昌浩
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB03
5G066HB06
5G066HB07
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA05
5G503AA06
5G503AA07
5G503BA03
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA08
5G503CA10
5G503EA05
5G503GB01
5G503GB06
5G503GD04
(57)【要約】
【課題】蓄電池システムにおいて、充電要請または放電要請における指令値に従う出力で充放電しつつ、各蓄電池のSOCを均一化する。
【解決手段】上位システムからの充電要請あるいは放電要請に基づいて動作する蓄電池システム(1)であって、交直変換装置(PCSi)および蓄電池(Batti)から構成された、バンク(BSi)を複数備え、バンクの充放電の制限電力に応じて、各バンクにベース充放電量を割り当て、各蓄電池のSOC(State of Charge)を均一にさせるための補正充放電量を、ベース充放電量と補正充放電量との合計が、制限電力を越えない範囲とし、ベース充放電量と補正充放電量との合計にてバンクに充放電させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位システムからの充電要請あるいは放電要請に基づいて動作する蓄電池システムであって、
交直変換装置および蓄電池から構成された、バンクを複数と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記充電要請あるいは放電要請に基づいて、前記バンクの充放電の制限電力に応じて、各バンクにベース充放電量を割り当て、
前記蓄電池のSOC(State of Charge)を各バンク間で均一にさせるための補正充放電量を、前記ベース充放電量と前記補正充放電量との合計が、前記制限電力を越えない範囲で、各バンクに割り当てて、
各バンクにおいて、割り当てられた前記ベース充放電量と前記補正充放電量との合計電力にて前記蓄電池を充放電させるように前記交直変換装置を制御する、蓄電池システム。
【請求項2】
前記補正充放電量は、各バンクにおける、前記蓄電池のSOCの平均値に対する偏差の最大値に対する前記偏差の比率と、前記蓄電池の前記蓄電池システム全体の容量に対する容量比と、から定めた補正出力の配分比率、に基づき決定される請求項1に記載の蓄電池システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記各バンクにおいて、前記制限電力から前記ベース充放電量を差し引いたものを、補正電力制限値とし
前記各バンクの前記補正電力制限値における最小値を第1リミッタとし、
前記第1リミッタと、前記各蓄電池のSOCの平均値に対する前記各蓄電池のSOCの偏差、に対する最大値と、所定の係数と、を掛け合わせたものを第2リミッタとし、
前記第1リミッタおよび前記第2リミッタのうち小さい値に前記補正充放電量を制限する、請求項2に記載の蓄電池システム。
【請求項4】
前記配分比率の合計は、0である請求項2または3に記載の蓄電池システム。
【請求項5】
前記制限電力は、前記交直変換装置の定格出力電力と、前記蓄電池の定格出力電力のうちの小さい値である、請求項1から4のいずれか1項に記載の蓄電池システム。
【請求項6】
前記ベース充放電量は、前記各バンクの前記制限電力の合計に対する前記各バンクの前記制限電力の比率に基づき、前記充電要請あるいは放電要請に伴う指令値を各バンクに配分して決定される請求項1から5のいずれか1項に記載の蓄電池システム。
【請求項7】
前記ベース充放電量の合計は、前記充電要請あるいは放電要請に伴う指令値と等しい請求項1から6のいずれか1項に記載の蓄電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電設備を擁する電力系統の電力需給をバランスさせるために、蓄電池と、蓄電池を充放電し直流および交流を変換する交直変換装置(以降PCS(Power conditioner))と、を備えるバンクを複数備える蓄電池システムが用いられてきている。蓄電池システムは、上位のシステムからの充電要請または放電要請に従って、各バンクの充放電の電力を割り当てる。
【0003】
特許文献1には、蓄電池システムにおいて、蓄電池を長寿命化させるために、バンク間でのSOC(State of Charge)のばらつきを補正するように充放電の指令を行う技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、蓄電池システムを構成する各蓄電池の容量が異なる場合でも、各蓄電池が均一にSOC変化をするような蓄電池の充放電量を決定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-124063号公報
【特許文献2】国際公開第2016/063356号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の従来技術では、個々のバンクにおける充放電電力の制限により、蓄電池システム合計での充放電量が、充電要請または放電要請に対応した電力とならない場合がある。
【0007】
特許文献2の従来技術は、各蓄電池の容量比に応じて各蓄電池の充放電を行うものの、各蓄電池のSOCにばらつきが生じていた場合に、当該ばらつきを抑制する動作をしない。
【0008】
本発明の一態様は、蓄電池システムにおいて、充電要請または放電要請における指令値に従う出力で充放電しつつ、各蓄電池のSOCを均一化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る蓄電池システムは、上位システムからの充電要請あるいは放電要請に基づいて動作する蓄電池システムであって、交直変換装置および蓄電池から構成された、バンクを複数と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記充電要請あるいは放電要請に基づいて、前記バンクの充放電の制限電力に応じて、各バンクにベース充放電量を割り当て、前記蓄電池のSOC(State of Charge)を各バンク間で均一にさせるための補正充放電量を、前記ベース充放電量と前記補正充放電量との合計が、前記制限電力を越えない範囲で、各バンクに割り当てて、各バンクにおいて、割り当てられた前記ベース充放電量と前記補正充放電量との合計電力にて前記蓄電池を充放電させるように前記交直変換装置を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、蓄電池システムにおいて、充電要請または放電要請における指令値に従う出力で充放電しつつ、各蓄電池のSOCを均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る蓄電池システムの構成図である。
図2】実施形態1に係る各交直変換装置の動作の概要を示す概念図である。
図3】実施形態1に係る各蓄電池のSOCの状況を示す概念図である。
図4】実施形態1に係る各バンクにおける蓄電池のSOCと交直変換装置の動作の関係を示す図である。
図5】実施形態1に係る制御装置のフローチャートを示す。
図6】実施形態1に係る制御装置における各バンクに対する処理のブロック図を示す。
図7】実施形態1に係る制御装置の全バンク共通の処理のブロック図を示す。
図8】実施形態1におけるシミュレーションをおこなった条件を示す表である。
図9】実施形態1での0kW充放電をする場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。
図10】実施形態1での0kW充放電をする場合における、PCS出力指令値の時間変化を表すグラフである。
図11】実施形態1での575kW放電をする場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。
図12】実施形態1での575kW放電をする場合における、PCS出力指令値の時間変化を表すグラフである。
図13】実施形態1での575kW充電をする場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。
図14】実施形態1での575kW充電をする場合における、PCS出力指令値の時間変化を表すグラフである。
図15】実施形態1でのランダムに充放電をした場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。
図16】実施形態1での2300kW放電をする場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。
図17】実施形態1での2300kW放電をする場合における、PCS出力指令値の時間変化を表すグラフである。
図18】実施形態1での2300kW充電をする場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。
図19】実施形態1での2300kW充電をする場合における、PCS出力指令値の時間変化を表すグラフである。
図20】実施形態2におけるシミュレーションをおこなった条件を示す表である。
図21】実施形態2でのSOC最大偏差係数を100とし、1000kWh放電する場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。
図22】実施形態2でのSOC最大偏差係数を100とし、1000kWh放電する場合における、PCS出力指令値の時間変化を表すグラフである。
図23】実施形態3でのSOC最大偏差係数を50000とし、1000kWh放電する場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。
図24】実施形態3でのSOC最大偏差係数を50000とし、1000kWh放電する場合における、PCS出力指令値の時間変化を表すグラフである。
図25】実施形態3でのSOC最大偏差係数を10とし、1000kWh放電する場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。
図26】実施形態3でのSOC最大偏差係数を10とし、1000kWh放電する場合における、PCS出力指令値の時間変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図1図19に基づき、詳細に説明する。
【0013】
(蓄電池システムの構成)
図1は、実施形態1に係る蓄電池システム1の構成図である。蓄電池システム1は、上位システムからの充電要請あるいは放電要請に基づいて動作するシステムである。
【0014】
蓄電池システム1は、商用電源11と、複数の蓄電池設備トランス21と、複数の蓄電池設備(以降、バンク)BSiと、負荷トランス13と、負荷14と、分散電源トランス15と、分散電源16と、制御装置(制御部)12と、を備える。蓄電池システム1は、蓄電池設備トランス21およびバンクBSiの組み合わせを複数(n個)備え、各バンクBSiを区別するため、添え字iで識別する。i番目のバンクBSiは、交直変換装置(PCS:Power conditioner)PCSiと、蓄電池Battiと、を備える。つまり、1番目のバンクBS1は、交直変換装置PCS1と、蓄電池Batt1と、を備える。バンクBSiの蓄電池Battiは複数の蓄電池から構成されてもよく、この場合、蓄電池Battiの容量は、当該複数の蓄電池の容量の合計となる。
【0015】
商用電源11は、受電電力Psだけ交流電力を買電する。蓄電池設備トランス21と、負荷トランス13と、分散電源トランス15とは、それぞれトランスであり、電圧を変圧する。
【0016】
交直変換装置PCSiは、交流電力と直流電力を相互に変換する装置である。仮に、交直変換装置PCSiが交流電力を直流電力に変換して出力する電力を、蓄電池用PCS出力電力Pbiとする。すなわち、Pbiが正の場合は蓄電池Battiが充電し、Pbiが負の場合は蓄電池Battiが放電する。また、交直変換装置PCSiの出力は、バンクBSi毎によって異なる値でも構わない。
【0017】
蓄電池Battiは、直流電力を充放電する二次電池であり、蓄電池の種類は制限されない。例えば、蓄電池Battiとしては、リチウムイオン電池やナトリウム硫黄電池などが挙げられる。また、蓄電池Battiとしては、単体の二次電池でなくてもよく、複数の二次電池が集合したものであっても構わない。また、蓄電池Battiの容量は、バンクBSi毎によって異なる値でも構わない。
【0018】
負荷14は、交流負荷または、交流電力を直流電力に変換したうえで用いる直流負荷である。負荷14は、負荷電力PLを受電し使用する。
【0019】
分散電源16は、再生可能エネルギーを用いた発電装置、または新エネルギー発電装置であり、例えば、太陽光発電、風力発電、燃料電池、およびバイオマスなどが挙げられる。分散電源16は、分散電源出力電力Preを発電する。
【0020】
制御装置12は、蓄電池システム1の各部を統括的に管理し、制御する。具体的には、制御装置12は、受電電力Ps、負荷電力PL、および分散電源出力電力Preを入力し、各バンクBSiの出力指令Prefiを決定する。制御装置12は、決定した出力指令Prefiを各交直変換装置PCSiに出力し、各バンクBSiの出力電力Pbiを制御する。
【0021】
蓄電池システム1では、商用電源11で受電した電力および分散電源16で発電した電力を、負荷14で消費し、余剰分を蓄電池Battiが充電する。または、商用電源11で受電した電力および分散電源16で発電した電力で負荷14の消費を賄えない場合、蓄電池Battiが放電する。
【0022】
(蓄電池システムの長寿命化のための方法)
蓄電池システム1では、多数の蓄電池Battiを用いているが、これら蓄電池Battiを長寿命化することが求められている。一般的に蓄電池を長寿命化するためには、蓄電池の残容量(SOC(State of Charge))を所定の範囲に管理することが必要であり、そのためには過剰な充放電を避ける必要がある。
【0023】
各バンクBSiを構成する交直変換装置PCSiおよび蓄電池Battiは個体差があるため、交直変換装置PCSiの充放電電力の誤差、および蓄電池Battiの機差から、時間とともに、SOCにばらつきが発生する。各バンクBSiに共通した電力でもって充放電を行うと、このばらつきによって、蓄電池Battiが過剰な充放電を起こしてしまうことがある。そのため、蓄電池システム1を長寿命化するためには、各蓄電池BattiのSOCを個別に管理した電力でもって充放電する必要がある。
【0024】
(SOCの管理方法の概要)
図2は、実施形態1に係る各交直変換装置PCSiの動作の概要を示す概念図である。図2に示すように、交直変換装置PCSiの定格電力値Ppcs_riは、バンクBSi毎に異なっている。各バンクBSiは、ベース充放電量Ppcsiおよび補正充放電量Psociの合計であるPCS出力指令値Poutiを出力する。補正充放電量Psociは、ベース充放電量Ppcsiと同符号でも異符号でも構わない。
【0025】
各バンクBSiは、各バンクBSiを構成する交直変換装置PCSiと蓄電池Battiの仕様から、PCS定格値(バンク)Ppcs_riから定まり、この値は各バンクが出力できる電力の上限値である。PCS定格値(バンク)Ppcs_riは、バンクごとに異なっていてもよい。また、PCS定格値(バンク)Ppcs_riからベース充放電量Ppcsiを差し引いた値を補正電力上限値Pmaxiと呼び、補正充放電量Psociに充てられる上限値を規定している。
【0026】
ここで、ベース充放電量Ppcsi[kW]は、蓄電池システム1の上位側から指令されるシステム充放電指令値(合計)ΣPpcsiを各バンクBSiの定格電力比で配分したものである。補正充放電量Psoci[kW]は、蓄電池BattiのSOCを蓄電池システム1全体で均一化(平均化)していくための補正出力である。補正充放電量Psociの蓄電池システム1全体の合計値は0になる。PCS出力指令値Pouti[kW]は、ベース充放電量Ppcsiと補正充放電量Psociとを合成したものであり、実際に各バンクBSiが出力する電力を指令している。
【0027】
したがって、蓄電池システム1では、蓄電池システム1の上位側から指令されるシステム充放電指令値(合計)ΣPpcsiを入力し、それを蓄電池システム1全体で配分して出力しつつ、各SOCが均一化するように、各バンクBSiの出力を調整する。
【0028】
ここで、各蓄電池BattiのSOCを均一化するということに関して説明する。図3は、実施形態1に係る各蓄電池BattiのSOCの状況を示す概念図である。図3に示すように、各蓄電池BattiのSOC(バンク)SOCi[%]は、定格容量に対する割合で表される。
【0029】
各蓄電池BattiのSOCを均一化するために、蓄電池システム1全体の各バンクBSiのSOCの平均値であるSOC平均値SOC_ave[%]を求め、SOC(バンク)SOCiとSOC平均値SOC_aveの偏差であるSOC偏差DSOCi[%]を減らすように、制御装置12は制御を行っていく。
【0030】
図4は、実施形態1に係る各バンクにおける蓄電池BattiのSOCと交直変換装置PCSiの動作の関係を示す図である。蓄電池システム1のSOC平均値SOC_aveが変化すると、SOC偏差DSOCi[%]も比例して変化し、それに伴い、PCSの出力電力に影響する第2PCS補正最大出力指令値Pmaxh2[kW](詳細は後述する)も比例して変化する。
【0031】
PCSの出力電力を第2PCS補正最大出力指令値Pmaxh2以下に抑えることで、SOCの急峻な変化を抑制し、SOCの平均値への均一化途中でのオーバーシュートを抑制することができる。
【0032】
(制御装置による制御方法)
以降、バンクBSiの数がn個(n≧2)である場合の蓄電池システム1の制御方法の詳細を説明する。図5は、実施形態1に係る制御装置(制御部)12のフローチャートを示す。図6は、実施形態1に係る制御装置12における各バンクBSiに対する処理のブロック図を示す。図7は、実施形態1に係る制御装置12の全バンクBSi共通の処理のブロック図を示す。また、以降登場する「i」は、iバンク目を表す添え字のiであり、iは1≦i≦nの値を取り得る。
【0033】
(S10:ベース充放電量)
PCS定格値(バンク)Ppcs_riおよび蓄電池最大出力値(バンク)Ebriから、蓄電池システム1全体で上位から指令された出力電力を満たすための各バンクに必要な出力電力を求める(S10)。この工程の詳細を説明する。
【0034】
交直変換装置PCSiの定格値であるPCS定格値(バンク)Ppcs_ri[kW]、および蓄電池Battiの定格値である蓄電池最大出力値(バンク)Ebri[kW]の最小値をPCS電力最小値Ppcs_rai[kW](制限電力)とする(B11)。このPCS電力最小値Ppcs_raiの合計をPCS電力最小値(合計)ΣPpcs_rai[kW]とする(B12)。
【0035】
PCS電力最小値Ppcs_raiをPCS電力最小値(合計)ΣPpcs_raiで割り、PCS電力最小値の全体電力比Kpcsri[‐]とする(B13)。すなわち、PCS電力最小値の全体電力比Kpcsriは、各バンクの定格電力の合計に対する、各バンクの定格電力の比である。
【0036】
蓄電池システム1の上位側から指令されるシステム充放電指令値(合計)ΣPpcsiにPCS電力最小値の全体電力比Kpcsriを乗じることで、ベース充放電量Ppcsiを算出する(B14)。すなわち、ベース充放電量Ppcsiは、各バンクBSiのPCS電力最小値Ppcs_raiの合計に対する、各バンクのPCS電力最小値Ppcs_raiの比率に基づき、蓄電池システム1の上位側から指令されるシステム充放電指令値(合計)ΣPpcsiを満たせる出力を、各バンクに配分したものである。そのため、ベース充放電量Ppcsiの合計は、蓄電池システム1の上位側から指令されるシステム充放電指令値(合計)ΣPpcsiを満たせる出力と等しい。
【0037】
したがって、仮に、各蓄電池BattiのSOCにばらつきがなく、交直変換装置PCSiの充放電電力の誤差、および蓄電池Battiの機差がない理想的な状態においては、ベース充放電量Ppcsiの出力によっては、各蓄電池BattiのSOCにはばらつきが生じない。しかしながら、実際にはこのような理想的な状態であることはないため、以降説明する補正項を加味することで、SOCのばらつきを補正し、蓄電池Battiの長寿命化を図る。
【0038】
(S20:補正電力上限値)
各PCS電力最小値Ppcs_raiおよびPCS電力最小値の全体電力比Kpcsriから、各バンクが補正出力として出力できる電力の上限値を求める(S20)。この工程の詳細を説明する。
【0039】
蓄電池システム1の上位側から指令されるシステム充放電指令値(合計)ΣPpcsiの絶対値をシステム充放電指令値(合計)絶対値|ΣPpcsi|[kW]とする(B21)。
【0040】
システム充放電指令値(合計)絶対値|ΣPpcsi|に、PCS電力最小値の全体電力比Kpcsriを乗じることで、ベース充放電量絶対値|Ppcsi|[kW]とする(B22)。
【0041】
PCS電力最小値Ppcs_raiからベース充放電量絶対値|Ppcsi|を差し引き、補正電力上限値Pmaxi[kW](補正電力制限値)を求める(B23)。すなわち、補正電力上限値Pmaxiは、各蓄電池BattiのSOCを均一化させる補正処理に用いることができる電力の上限値である。つまり、この値が小さいほど、その蓄電池BattiのSOCは均一化され辛い。
【0042】
(S30:補正出力の配分比率)
各蓄電池BattiのSOCの蓄電池システム1全体に対する比率と、各蓄電池Battiの蓄電池システム1全体に対する容量比と、から各バンクBSiの補正出力の配分比率を求める(S30)。この工程の詳細を説明する。
【0043】
各蓄電池BattiのSOC(バンク)SOCi[%]を合計し(B31)、バンクBSiの数nで割ることで、SOC平均値SOC_ave[%]を算出する(B32)。
【0044】
各蓄電池BattiのSOC(バンク)SOCiから、SOC平均値SOC_aveを減算することで、SOC偏差DSOCi[%]を求める(B33)。各SOC偏差DSOCiの絶対値をSOC偏差絶対値|DSOCi|[%]とする(B34)。各SOC偏差絶対値|DSOCi|の最大値を、SOC偏差最大値DSOCmax[%]とする(B35)。
【0045】
SOC偏差DSOCiを、SOC偏差最大値DSOCmaxで割ることで、SOC偏差補正係数Khi[‐]とする(B36)。ただし、SOC偏差最大値DSOCmaxが0の時は、SOC偏差補正係数Khiも0とする。
【0046】
各蓄電池Battiの容量である蓄電池容量(バンク)Ebi[kWh]を合計し、蓄電池容量(合計)ΣEbi[kWh]とする(B37)。蓄電池容量(バンク)Ebiを蓄電池容量(合計)ΣEbiで割ることで、蓄電池容量比Kebi[‐]を算出する(B38)。
【0047】
SOC偏差補正係数Khiと蓄電池容量比Kebiとを乗算し、第1SOC偏差補正係数Khai[‐]とする(B39)。すなわち、第1SOC偏差補正係数Khaiは、各蓄電池BattiのSOCと(バンク)SOCiと蓄電池容量(バンク)Ebiとを考慮した比率であるといえる。
【0048】
第1SOC偏差補正係数Khaiを合計し(B40)、バンクBSiの数nで割ることで、第1SOC偏差補正係数平均値Khai_ave[-]とする(B41)。
【0049】
第1SOC偏差補正係数Khaiから、第1SOC偏差補正係数平均値Khai_aveを引いたものを第2SOC偏差補正係数Khbi[-]とする(B42)。すなわち、第2SOC偏差補正係数Khbiは、第1SOC偏差補正係数Khaiの平均値が0になるように、第1SOC偏差補正係数Khaiをオフセットしたものである。
【0050】
第2SOC偏差補正係数Khbiの絶対値を求め(B43)、その最大値を第2SOC偏差補正係数の最大値max|Khbi|とする(B44)。
【0051】
第2SOC偏差補正係数Khbiを第2SOC偏差補正係数の最大値max|Khbi|で割ることで、第3SOC偏差補正係数Khci[‐](配分比率)を算出する(B45)。ただし、第2SOC偏差補正係数の最大値max|Khbi|が0の時は、第3SOC偏差補正係数Khciも0とする。すなわち、第3SOC偏差補正係数Khciは、第2SOC偏差補正係数Khbiの絶対値の範囲を-1~1に正規化したものである。
【0052】
以上の処理によって、補正出力の配分比率として、第1SOC偏差補正係数Khaiと、第2SOC偏差補正係数Khbiと、第3SOC偏差補正係数Khciとを求める。これらは、共通した事項に関する、それぞれ異なる次元の数値である。
【0053】
特に、第3SOC偏差補正係数Khciは、各蓄電池BattiのSOCの蓄電池システム1全体に対する比率と、各蓄電池Battiの蓄電池システム1全体に対する容量比とから求まる配分比率を、平均値中心に正規化した配分比率である。そのため、この数字に所定の値をかけることで、各バンクBSiのSOCが均一化するような指令値が得られる。ただし、この時点では、所定の値の取り方によっては、各バンクの出力限界を越すことが考えられるため、制限を考慮する必要がある。また、第3SOC偏差補正係数Khciは、平均値に対する偏差に基づき定まった値であるため、各バンクBSiの合計は0である。すなわち、蓄電池システム1全体での配分比率の合計値は0である。
【0054】
(S50:PCS補正最大出力リミッタ)
各バンクBSiの補正電力上限値Pmaxiと、SOC偏差最大値DSOCmaxとから、その時々の蓄電池システム1において共通した補正出力の上限値を求める(S50)。この工程の詳細を説明する。
【0055】
各バンクBSiの補正電力上限値Pmaxiの絶対値を補正電力上限値絶対値|Pmaxi|[kW]とする(B51)。蓄電池システム1全体での補正電力上限値絶対値|Pmaxi|の最小値を第1PCS補正最大出力指令値Pmaxh1[kW](第1リミッタ)とする(B52)。
【0056】
ここで、SOC最大偏差係数Ksoch[-](所定の係数)という蓄電池システム1固有の定数を定義する。このSOC最大偏差係数Ksochの性質に関しては詳細を後述するが、蓄電池システム1の応答性を調整するパラメータである。
【0057】
第1PCS補正最大出力指令値Pmaxh1と、SOC偏差最大値DSOCmaxと、SOC最大偏差係数Ksochと、を掛け合わせ、第2PCS補正最大出力指令値Pmaxh2[kW](第2リミッタ)とする(B53)。すなわち、第2PCS補正最大出力指令値Pmaxh2は、SOC偏差最大値DSOCmaxに比例するため、SOC偏差DSOCiが小さくなった場合に出力を絞り、SOC(バンク)SOCiがSOC平均値SOC_aveに収束し易くするために設けている。
【0058】
第1PCS補正最大出力指令値Pmaxh1と、第2PCS補正最大出力指令値Pmaxh2と、を比較し、より小さい値をPCS補正最大出力リミッタPmaxh3[kW](補正最大出力リミッタ)とする(B54)。すなわち、PCS補正最大出力リミッタPmaxh3は、各バンクBSiが出力できる電力の下限と、各蓄電池BattのSOCを平均化するための補正電力の上限と、(所定のパラメータであるSOC最大偏差係数Ksochと)に基づき、蓄電池システム1全体に共通する各バンクが補正に用いられる電力を決定している。補正に用いられる電力の大小によって、蓄電池システム1の応答性は変化する。
【0059】
ここで、B54において、第1PCS補正最大出力指令値Pmaxh1と、SOC偏差最大値DSOCmaxと、SOC最大偏差係数Ksochと、を掛け合わせたものを第1PCS補正最大出力指令値Pmaxh1と比較するのは、SOC最大偏差係数Ksochの値の取り方によっては、第1PCS補正最大出力指令値Pmaxh1を超過してしまい、実際に出力できない出力電力が指令されないようにするためである。
【0060】
第1PCS補正最大出力指令値Pmaxh1をPCS補正最大出力リミッタPmaxh3にしない理由としては、SOC偏差DSOCiが小さくなると、偏差の分布が変化する(偏差の正負が反転するなど)。そのため、第1PCS補正最大出力指令値Pmaxh1をPCS補正最大出力リミッタPmaxh3にしていると、出力が過剰に大きくなり、PCSの出力が振動することがある。そこで、各バンクBSiのSOCが平均値に近づいた場合、PCSの出力が振動することを防ぐために、SOC偏差DSOCiに比例して出力電力を絞るようにしている。
【0061】
したがって、SOC偏差DSOCiが大きいときは、PCS補正最大出力リミッタPmaxh3として第1PCS補正最大出力指令値Pmaxh1が選択され、急激に補正が進む。SOC偏差DSOCiが小さくなると、PCS補正最大出力リミッタPmaxh3として第2PCS補正最大出力指令値Pmaxh2が選択され、補正がなだらかになり、各バンクのSOCは、SOC平均値SOC_aveに漸近していく。
【0062】
(S60:SOC補正出力指令値)
補正出力の配分比率である第3SOC偏差補正係数Khciと、PCS補正最大出力リミッタPmaxh3とから、各バンクのSOCを均一化する補正出力を求める(S60)。この工程の詳細を説明する。
【0063】
第3SOC偏差補正係数Khciと、PCS補正最大出力リミッタPmaxh3とを乗算し、補正充放電量Psoci[kW]を算出する(B61)。つまり、PCS補正最大出力リミッタPmaxh3によって、補正充放電量Psociを制限する。
【0064】
(S70:PCS出力指令値)
ベース充放電量Ppcsiおよび補正充放電量Psociを足し合わせ、各バンクの出力電力であるPCS出力指令値Pouti[kW]を決定する(S70、B71)。PCS出力指令値Poutiを出力することによって、実際に各バンクに出力させる電力であり、上位側から指令されるシステム充放電指令値(合計)ΣPpcsiを蓄電池システム1全体で担保しながら、各蓄電池BattiのSOCを均一化することができる。
【0065】
(補正出力によるSOCの均一化)
以降は、異容量の4バンクにおける充放電の実例を示し、本実施形態に係る蓄電池システム1の実際の動作を示す。図8は、実施形態1におけるシミュレーションをおこなった条件を示す表である。
【0066】
4バンクはそれぞれ、充放電開始時のSOCがそれぞれ30%、40%、50%、60%と異なっている。また、4バンクのそれぞれの蓄電池Battiの容量は400kWh、1000kWh、1200kWh、2000kWhと異なっている。さらに、4バンクそれぞれの交直変換装置PCSiの定格出力電力は200kW、500kW、600kW、1000kWと異なっている。すなわち、シミュレーション対象である4バンクはそれぞれ蓄電池Battiの容量も、交直変換装置PCSiの定格出力電力も異なっている。
【0067】
ここで、4バンクは異容量となっているが、蓄電池Battiの容量と交直変換装置PCSiの定格出力電力との間には、次の関係が成り立っている。
Eb1/Ppcs_r1=Eb2/Ppcs_r2=・・・=Ebi/Ppcs_ri
これは、上述したように、蓄電池Battiの容量とバンクのBSiの定格出力電力との比率でもって補正電力を決定するため、この上式での比の関係が崩れた場合、SOC(バンク)SOCiが収束しなくなる。そのため、SOC(バンク)SOCiが収束するように、上式の関係を満たすように蓄電池Battiおよび交直変換装置PCSiを選定する必要がある。
【0068】
上式の比の値は、用途ごとに異なる値を用いてもよい。具体的には、蓄電池システム1が複数の用途に用いられる場合、用途ごとにその用途用のバンクBSiを用いてもよい。例えば、蓄電池システム1がピークカットとピークシフトに用いられる場合、ピークカット用途のバンクBSiは上式の比を2とし、ピークシフト用途のバンクBSiは上式の比を3とするなど、異なる値を用いてもよい。ただし、各用途では共通した固有の上式の比の値を用いる必要がある。
【0069】
以降は、図8の表の条件に基づき、本実施形態の蓄電池システム1のシミュレーション結果を示し、説明する。システム充放電指令値(合計)ΣPpcsiは、正の値を充電とし、負の値を放電とする。
【0070】
図9は、実施形態1での0kW充放電をする場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。図10は、実施形態1での0kW充放電をする場合における、PCS出力指令値の時間変化を表すグラフである。図9および図10では、図8の表の条件に加え、SOC最大偏差係数Ksochを100とした。
【0071】
図9の横軸は時間[秒]であり、第1縦軸はSOC[%]であり、第2縦軸はシステム充放電指令値[kW]である。図10の横軸は時間[秒]であり、第1縦軸はPCS出力指令値[kW]であり、第2縦軸は合計PCS出力指令値[kW]である。
【0072】
図9に示すように、時間経過に伴い、各蓄電池BattiのSOCは均一化していく。特に、同一時刻でもって、各蓄電池BattiのSOCは同じ割合になっている。
【0073】
また、図10に示すように、時間経過に伴い、各PCS出力指令値Poutiも同一時刻でもって、値が変化しなくなっている(全て出力0kW)。
【0074】
さらに、図10において、約3150秒において、各グラフに変曲点がある。この変曲点は、このタイミングにおいて、PCS補正最大出力リミッタPmaxh3の選択が切替わったことを意味する。すなわち、0秒から当該タイミングまでは、SOC偏差DSOCiが大きかったため、PCS補正最大出力リミッタPmaxh3として第1PCS補正最大出力指令値Pmaxh1が選択されていた。対して、当該タイミング以降は、SOC偏差DSOCiが十分に小さくなったため、PCS補正最大出力リミッタPmaxh3として第2PCS補正最大出力指令値Pmaxh2が選択されるようになる。このPCS補正最大出力リミッタPmaxh3の選択の変化によって、高速に各バンクBSiのSOCをオーバーシュートさせずに、平均値に均一化させることができる。
【0075】
図9および10でのグラフは、0kW充放電なため、出力を全て補正に充てることができる。すなわち、ベース充放電量Ppcsiは全て0である。以降は、蓄電池システム1が充放電をしている状況下における、挙動を説明する。
【0076】
図11は、実施形態1での575kW放電をする場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。図12は、実施形態1での575kW放電をする場合における、PCS出力指令値の時間変化を表すグラフである。図13は、実施形態1での575kW充電をする場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。図14は、実施形態1での575kW充電をする場合における、PCS出力指令値の時間変化を表すグラフである。図11~14では、図8の表の条件に加え、SOC最大偏差係数Ksochを100とした。
【0077】
図11および13の横軸は時間[秒]であり、第1縦軸はSOC[%]であり、第2縦軸はシステム充放電指令値[kW]である。図12および14の横軸は時間[秒]であり、第1縦軸はPCS出力指令値[kW]であり、第2縦軸は合計PCS出力指令値[kW]である。
【0078】
図11に示すように、575kW放電している場合は、時間経過に伴い、各蓄電池BattiのSOCは減少していく。このときの傾きはバンクごとに異なっており、各々一定の値を取っている。その後、約4500秒において、各バンクBSiのSOCは収束し、それ以降は各バンクBSiが同一の傾きによってSOCが減少していく。このタイミングにおいて、補正を終了したものと考えられる。
【0079】
また、図12に示すように、575kW放電している場合は、時間経過に伴い、各PCS出力指令値Poutiも同一時刻でもって、値が変化しなくなっている。各PCS出力指令値Poutiの値が変化しなくなったことから、補正を終了したものと考えられる。
【0080】
図13に示すように、575kW充電している場合は、時間経過に伴い、各蓄電池BattiのSOCは増加していく。このときの傾きはバンクごとに異なっており、各々一定の値を取っている。その後、約4500秒において、各バンクBSiのSOCは収束し、それ以降は各バンクBSiが同一の傾きによってSOCが増加していく。このタイミングにおいて、補正を終了したものと考えられる。
【0081】
また、図14に示すように、575kW充電している場合は、時間経過に伴い、各PCS出力指令値Poutiも同一時刻でもって、値が変化しなくなっている。各PCS出力指令値Poutiの値が変化しなくなったことから、補正を終了したものと考えられる。
【0082】
図11および図13に示すように、各蓄電池Battiは、適宜SOCが均一になるように充放電をおこなっており、そのために、バンクごとにSOCの時間変化の傾きは異なっている。
【0083】
図15は、実施形態1でのランダムに充放電をした場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。図15の横軸は時間[秒]であり、第1縦軸はSOC[%]であり、第2縦軸はシステム充放電指令値[kW]である。
【0084】
図15に示すように、ランダムに充放電している場合においても、時間経過に伴い各蓄電池BattiのSOCは収束していき、一度収束してからは、全バンクBSiで同一の値をとるように変化をしていくことがわかる。すなわち、一定出力でない、ランダム出力であっても、本実施形態では、SOCの均一化を行うことができる。
【0085】
(補正出力による効果)
図9~15に示すように、充放電時に、システム充放電指令値(合計)ΣPpcsiを満たす出力電力を、蓄電池システム1全体で賄い、余剰した出力電力である補正電力上限値Pmaxi分だけの電力でもって、各SOCを均一化することができる。そのため、各蓄電池BattiのSOCが均一に制御することができることから、SOCの過充電・過放電をシステム全体で保護することができ、各蓄電池Battiの損耗を防ぐことができる。
【0086】
また、蓄電池容量(バンク)EbiおよびPCS定格値(バンク)Ppcs_riがそれぞれバンクごとに異なる値を取った場合であっても、蓄電池システムを構築することができる。そのため、システムを容易に構築することができる。
【0087】
したがって、蓄電池システム1は、バンクBSiの充放電のPCS電力最小値Ppcs_raiに応じて、各バンクBSiにベース充放電量Ppcsiを割り当てる。さらに、各蓄電池BattiのSOCを均一にさせるための補正充放電量Psociを、ベース充放電量Ppcsiと補正充放電量Psociとの合計が、PCS電力最小値Ppcs_raiを越えない範囲とする。各バンクにおいて、割り当てられたベース充放電量Ppcsiと補正充放電量Psociとの合計電力にて、蓄電池Battiを充放電させる。
【0088】
(補正出力がない場合)
ここで、ベース充放電量Ppcsiの絶対値が、PCS電力最小値Ppcs_rai以上のために、補正充放電量Psociが0になっている場合を参考のために示す。
【0089】
図16は、実施形態1での2300kW放電をする場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。図17は、実施形態1での2300kW放電をする場合における、PCS出力指令値の時間変化を表すグラフである。図18は、実施形態1での2300kW充電をする場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。図19は、実施形態1での2300kW充電をする場合における、PCS出力指令値の時間変化を表すグラフである。図16~19では、図8の表の条件に加え、SOC最大偏差係数Ksochを100とした。
【0090】
図16および18の横軸は時間[秒]であり、第1縦軸はSOC[%]であり、第2縦軸はシステム充放電指令値[kW]である。図17および19の横軸は時間[秒]であり、第1縦軸はPCS出力指令値[kW]であり、第2縦軸は合計PCS出力指令値[kW]である。
【0091】
図16に示すように、2300kW放電している場合は、時間経過に伴い、各蓄電池BattiのSOCは減少していく。このときの傾きは全バンクで共通している。
【0092】
また、図17に示すように、2300kW放電している場合は、時間経過に関係なく、各PCS出力指令値Poutiが全て一定の値を取っている。
【0093】
図18に示すように、2300kW充電している場合は、時間経過に伴い、各蓄電池BattiのSOCは増加していく。このときの傾きは全バンクで共通している。
【0094】
また、図19に示すように、2300kW充電している場合は、時間経過に関係なく、各PCS出力指令値Poutiが全て一定の値を取っている。
【0095】
ここで、図17および19で、各PCS出力指令値Poutiが一定の値をとっていることから、PCS電力最小値Ppcs_raiに対して、ベース充放電量Ppcsiの絶対値が飽和しており、補正充放電量Psociが出力できなくなっているといえる。補正充放電量Psociが0なため、図16および図18におけるSOCの変化は、全バンクで共通した割合で変化をし、均一化が進まない。
【0096】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0097】
実施形態1では、4バンクの蓄電池Battiの容量が全て異なり、交直変換装置PCSiの定格出力電力も全て異なっていた。図20は、実施形態2におけるシミュレーションをおこなった条件を示す表である。実施形態2では、4バンクの蓄電池Battiの容量が全て1500kWhで等しく、交直変換装置PCSiの定格出力電力も500kWで全て等しい。すなわち、実施形態1では、異容量の場合におけるSOCの均一化に関して示したが、実施形態2では、同容量の場合におけるSOCの均一化に関して示す。
【0098】
図21は、実施形態2でのSOC最大偏差係数Ksochを100とし、1000kWh放電する場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。図22は、実施形態2でのSOC最大偏差係数Ksochを100とし、1000kWh放電する場合における、PCS出力指令値の時間変化を表すグラフである。図21~22では、図20の表の条件に加え、SOC最大偏差係数Ksochを100とした。
【0099】
図21の横軸は時間[秒]であり、第1縦軸はSOC[%]であり、第2縦軸はシステム充放電指令値[kW]である。図22の横軸は時間[秒]であり、第1縦軸はPCS出力指令値[kW]であり、第2縦軸は合計PCS出力指令値[kW]である。
【0100】
図21に示すように、同容量でも異容量と同様にSOCの均一化を行うことができる。また、同容量の場合は、異容量の場合と異なり、均一化した後のPCSの出力は全バンクで一定の値を出力するようになる。
【0101】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0102】
実施形態1および2では、パラメータであるSOC最大偏差係数Ksochを100とした場合に関して示した。実施形態3では、SOC最大偏差係数Ksochを変化させることによる挙動の変化に関して示す。
【0103】
図23は、実施形態3でのSOC最大偏差係数Ksochを50000とし、1000kWh放電する場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。図24は、実施形態3でのSOC最大偏差係数Ksochを50000とし、1000kWh放電する場合における、PCS出力指令値の時間変化を表すグラフである。図25は、実施形態3でのSOC最大偏差係数Ksochを10とし、1000kWh放電する場合における、SOCの時間変化を表すグラフである。図26は、実施形態3でのSOC最大偏差係数Ksochを10とし、1000kWh放電する場合における、PCS出力指令値の時間変化を表すグラフである。図23~26では、図20の表の条件に加え、SOC最大偏差係数Ksochを50000または10とした。
【0104】
図23および25の横軸は時間[秒]であり、第1縦軸はSOC[%]であり、第2縦軸はシステム充放電指令値[kW]である。図24および26の横軸は時間[秒]であり、第1縦軸はPCS出力指令値[kW]であり、第2縦軸は合計PCS出力指令値[kW]である。
【0105】
図23に示すように、SOC最大偏差係数Ksochが50000で十分に大きいときであっても、SOCは均一化することができる。また、図25に示すように、SOC最大偏差係数Ksochが10で十分に小さいときであっても、SOCが均一化に進むことがわかる。
【0106】
また、図21図23図25とを比較すると、SOC最大偏差係数Ksochの変化に応じて、SOCの応答性が変化しており、SOCの均一化に要する時間が変化している。特に、図25は、図21に対して均一化しているタイミングが遅くなっている。対して、図23は、図21に対して均一化しているタイミングがやや早くなっている。したがって、SOC最大偏差係数Ksochは、各蓄電池BattiのSOCの補正に対する応答性を決定している。
【0107】
ただし、図24においては、SOCが均一化された以降に、PCSの出力値が発振する現象がみられる。高周波数で発振しているため、図24においては黒ベタで塗りつぶされたように見える。これは、一度SOCが均一化された以降も、SOCに偏差が生じないように、補正が続くことになることにおいて、SOC最大偏差係数Ksochが大きいことから偏差が小さいのにも関わらず過剰な出力に繋がってしまい、発振現象に繋がっていると考えられる。そのため、このSOC最大偏差係数Ksochは適切に調整することが必要だといえる。
【0108】
SOC最大偏差係数Ksochの変化に対するSOCの時間変化およびPCS出力指令値の時間変化に関しては、同容量の場合に関して示したが、これに限定されず、異容量の場合であっても同様の傾向が得られる。
【0109】
〔まとめ〕
上記の課題を解決するために本発明の一態様に係る蓄電池システムは、上位システムからの充電要請あるいは放電要請に基づいて動作する蓄電池システムであって、交直変換装置および蓄電池から構成された、バンクを複数と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記充電要請あるいは放電要請に基づいて、前記バンクの充放電の制限電力に応じて、各バンクにベース充放電量を割り当て、前記蓄電池のSOC(State of Charge)を各バンク間で均一にさせるための補正充放電量を、前記ベース充放電量と前記補正充放電量との合計が、前記制限電力を越えない範囲で、各バンクに割り当てて、各バンクにおいて、割り当てられた前記ベース充放電量と前記補正充放電量との合計電力にて前記蓄電池を充放電させるように前記交直変換装置を制御する。
【0110】
上記の構成によれば、蓄電池システムにおいて、充電要請または放電要請における指令値に従う出力で充放電しつつ、各蓄電池のSOCを均一化することができる。特に、上位システムから要請された充放電量を担保しつつ、補正を行うことができる。
【0111】
前記補正充放電量は、各バンクにおける、前記蓄電池のSOCの平均値に対する偏差の最大値に対する前記偏差の比率と、前記蓄電池の前記蓄電池システム全体の容量に対する容量比と、から定めた補正出力の配分比率、に基づき決定されてもよい。
【0112】
上記の構成によれば、蓄電池のSOCの蓄電池システム全体に対する比率と、蓄電池の蓄電池システム全体に対する容量比と、から補正出力を求める配分比率を求めることができる。そのため、蓄電池システム全体における各蓄電池の状況に合わせた割合で補正充放電量を決定できる。
【0113】
前記制御部は、前記各バンクにおいて、前記制限電力から前記ベース充放電量を差し引いたものを、補正電力制限値とし前記各バンクの前記補正電力制限値における最小値を第1リミッタとし、前記第1リミッタと、前記各蓄電池のSOCの平均値に対する前記各蓄電池のSOCの偏差、に対する最大値と、所定の係数と、を掛け合わせたものを第2リミッタとし、前記第1リミッタおよび前記第2リミッタのうち小さい値に前記補正充放電量を制限してもよい。
【0114】
上記の構成によれば、補正最大出力リミッタを第1リミッタと第2リミッタの小さいものとすることで、充放電量が大きくなりすぎることを防ぐことができる。そのため、SOCの偏差が小さくなった状況において、補正充放電量が適切な大きさになり、過剰な補正が行われなくなる。そのため、オ-バーシュート・発振等を防げる。
【0115】
前記配分比率の合計は、0であってもよい。
【0116】
上記の構成によれば、補正を行っていても上位システムに対して所望の充放電量を出力することができる。
【0117】
前記制限電力は、前記交直変換装置の定格出力電力と、前記蓄電池の定格出力電力のうちの小さい値であってもよい。
【0118】
上記の構成によれば、交直変換装置と蓄電池とを定格出力の中で運用することができる。
【0119】
前記ベース充放電量は、前記各バンクの前記制限電力の合計に対する前記各バンクの前記制限電力の比率に基づき、前記充電要請あるいは放電要請に伴う指令値を各バンクに配分して決定されてもよい。
【0120】
上記の構成によれば、ベース充放電量の決定に際し、各バンクが均等の負荷率で充放電することによって、上位システムが所望の充放電量(指令値)を担保することができる。そのため、補正出力をも均等に最大化することができ、より早くSOCの均一化を行うことができる。
【0121】
前記ベース充放電量の合計は、前記充電要請あるいは放電要請に伴う指令値と等しくてもよい。
【0122】
上記の構成によれば、上位システムに対して所望の充放電量(指令値)を出力することができる。
【0123】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0124】
1 蓄電池システム
11 商用電源
12 制御装置(制御部)
13 負荷トランス
14 負荷
15 分散電源トランス
16 分散電源
21 蓄電池設備トランス
Batti 蓄電池
BSi 蓄電池設備(バンク)
PCSi 交直変換装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図26