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  • 特開-熱伝達抑制シート及び組電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094424
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】熱伝達抑制シート及び組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6555 20140101AFI20230628BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20230628BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20230628BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20230628BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230628BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
H01M10/6555
H01M10/658
H01M10/617
H01M10/651
H01M10/625
F16L59/02
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209896
(22)【出願日】2021-12-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】神保 直幸
(72)【発明者】
【氏名】島田 将平
【テーマコード(参考)】
3H036
5H031
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB03
3H036AB13
3H036AB15
3H036AB23
3H036AB24
3H036AC03
5H031HH06
5H031HH08
5H031KK02
(57)【要約】
【課題】均一な断熱性や放熱性が得られ、電池セルが熱暴走した場合には、隣り合う電池セル間で熱を遮断するとともに、電池セルの発熱を速やかに放熱させる。
【解決手段】熱伝達抑制シート10は、一様に分散した無機粒子21と、一様に分散するとともにシートの主面10a、10bに対して平行な一方向に配向されている第1の無機繊維23と、前記第1の無機繊維23と交絡して3次元ウエッブ構造を形成する第2の無機繊維24と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一様に分散した無機粒子と、
一様に分散するとともにシートの主面に対して平行な一方向に配向されている第1の無機繊維と、
前記第1の無機繊維と交絡して3次元ウエッブ構造を形成する第2の無機繊維と、
を含む熱伝達抑制シート。
【請求項2】
前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きい、請求項1に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項3】
前記第1の無機繊維の平均繊維長が、前記第2の無機繊維の平均繊維長よりも大きい、請求項1又は2に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項4】
前記第1の無機繊維の捲縮度が、前記第2の無機繊維の捲縮度よりも小さい、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項5】
前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状である、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項6】
前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、
前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項7】
前記第2の無機繊維の熱伝導率が41[W/m・K]以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項8】
前記第1の無機繊維がガラス繊維、グラスウール、スラグウール、ロックウール、アルカリアースシリケート繊維及びリフラクトリーセラミック繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維である、請求項1~7のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項9】
前記第2の無機繊維がアルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナシリケート繊維、鉱物系繊維及びジルコニア繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維である、請求項1~8のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項10】
前記無機粒子がシリカ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、ジルコン粒子、チタン酸バリウム粒子、酸化亜鉛粒子及びアルミナ粒子から選択される少なくとも1種からなる粒子である、請求項1~9のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項11】
前記無機粒子の含有量は、熱伝達抑制シート全質量に対して、30質量%以上80質量%以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項12】
前記無機粒子は、平均二次粒子径が1nm以上100nm以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項13】
前記第1の無機繊維及び前記第2の無機繊維の合計含有量は、熱伝達抑制シート全質量に対して、5質量%以上30質量%以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シート。
【請求項14】
複数の電池セルを直列又は並列に接続した組電池において、
請求項1~13のいずれか1項に記載の熱伝達抑制シートを用いた、組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気自動車又はハイブリッド車などを駆動する電動モータの電源となる組電池、並びに組電池に用いられる熱伝達抑制シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発熱体から他の物体への熱伝達を抑制するために、発熱体に近接させ、又は少なくとも一部を発熱体に接触させて用いる熱伝達抑制シートが用いられている。
【0003】
また、近年では、鉛蓄電池やニッケル水素電池等に比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池の需要が増加しており、携帯電話、パソコン、小型電子機器の小容量の二次電池だけでなく、自動車、バックアップ電源等の大容量の二次電池にも用いられている。特に、自動車の分野においては、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車等の開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車等には、駆動用電動モータの電源となるための、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。
【0004】
しかし、リチウムイオン二次電池は、充放電時に化学反応を起因とする熱が発生することがあり、これにより、電池の不具合が発生する。例えば、ある電池セルが急激に昇温し、熱暴走を起こした場合、隣接する他の電池セルに熱が伝播することで、他の電池セルの熱暴走を引き起こすおそれがある。
【0005】
上記のような組電池の分野において、熱暴走を起こした電池セルから隣接する電池セルへの熱の伝播を抑制し、熱暴走の連鎖による電池の類焼及び爆発の不具合を防ぐために、電池セル間に介在させる種々の熱伝達抑制シートが提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1では、繊維とシリカエアロゲルとを含む複合層と、前記複合層中で、厚み方向に配置された樹脂支柱と、を含む熱伝達抑制シートが記載されている。このような熱伝達抑制シートによれば、樹脂支柱によりシートに加わる圧縮応力を分散することができ、断熱特性を保持できる。電池セル間に上記熱伝達抑制シートを用いれば、シート中のシリカエアロゲルに掛かる圧縮応力を樹脂支柱で分散でき、電池セル間の断熱性を長期間保つことができる。その結果、電池のセル間の熱暴走による類焼を抑制し、安全な車載用電池を提供でき、さらに、断熱性樹脂支柱を多孔質の樹脂にすれば、電池セルからの熱伝導を抑制できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-215014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記熱伝達抑制シートは、断熱性が高いために、電池セルと密着すると、熱がこもって電池セルの熱暴走を促進することがある。
さらに、上記熱伝達抑制シートは、エアロゲルが存在しない樹脂支柱とエアロゲルが存在する複合層とで断熱性が異なるため、シート内で断熱性や放熱性が均一となりにくい。そのため、電池セルから発生した熱の伝達も異なり、熱暴走が発生した場合、熱伝達抑制シートでの熱伝達の抑制ができないことがある。
【0009】
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、均一な断熱性や放熱性が得られ、電池セルが熱暴走した場合には、隣り合う電池セル間で熱を遮断するとともに、電池セルの発熱を速やかに放熱させることができる熱伝達抑制シート、及び熱伝達抑制シートを電池セル間に介在させた組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、熱伝達抑制シートに係る下記[1]の構成により達成される。
【0011】
[1] 一様に分散した無機粒子と、
一様に分散するとともにシートの主面に対して平行な一方向に配向されている第1の無機繊維と、
前記第1の無機繊維と交絡して3次元ウエッブ構造を形成する第2の無機繊維と、
を含む熱伝達抑制シート。
【0012】
また、熱伝達抑制シートに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[2]~[13]に関する。
【0013】
[2] 前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きい、[1]に記載の熱伝達抑制シート。
【0014】
[3] 前記第1の無機繊維の平均繊維長が、前記第2の無機繊維の平均繊維長よりも大きい、[1]又は[2]に記載の熱伝達抑制シート。
【0015】
[4] 前記第1の無機繊維の捲縮度が、前記第2の無機繊維の捲縮度よりも小さい、[1]~[3]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0016】
[5] 前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0017】
[6] 前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、
前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる、[1]~[5]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0018】
[7] 前記第2の無機繊維の熱伝導率が41[W/m・K]以下である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0019】
[8] 前記第1の無機繊維がガラス繊維、グラスウール、スラグウール、ロックウール、アルカリアースシリケート繊維及びリフラクトリーセラミック繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0020】
[9] 前記第2の無機繊維がアルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナシリケート繊維、鉱物系繊維及びジルコニア繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維である、[1]~[8]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0021】
[10] 前記無機粒子がシリカ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、ジルコン粒子、チタン酸バリウム粒子、酸化亜鉛粒子及びアルミナ粒子から選択される少なくとも1種からなる粒子である、[1]~[9]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0022】
[11] 前記無機粒子の含有量は、熱伝達抑制シート全質量に対して、30質量%以上80質量%以下である、[1]~[10]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0023】
[12] 前記無機粒子は、平均二次粒子径が1nm以上100nm以下である、[1]~[11]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0024】
[13] 前記第1の無機繊維及び前記第2の無機繊維の合計含有量は、熱伝達抑制シート全質量に対して、5質量%以上30質量%以下である、[1]~[12]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シート。
【0025】
また、本発明の上記目的は、組電池に係る下記[14]の構成により達成される。
【0026】
[14] 複数の電池セルを直列又は並列に接続した組電池において、
[1]~[13]のいずれか1つに記載の熱伝達抑制シートを用いた、組電池。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、熱伝達抑制シートの内部で、第1の無機繊維が主面に対して平行な一方向に配向しながら分散しているので、シート内での断熱性や放熱性が優れるとともに均一となり、電池セルからの発熱を効果的に放熱できる。そのため、電池セルが熱暴走を起こした場合でも、隣り合う電池セルへの熱を遮断して連鎖を防ぐことができる。また、第1の無機繊維と第2の無機繊維とが交絡して3次元ウエッブ構造を形成するとともに、第2の無機繊維が第1の無機繊維と第1の無機繊維とをつなぐ伝熱パスとして機能して伝熱性がより高まるとともに、3次元ウエッブ構造になることによって強度的に優れたものとなる。
【0028】
本発明の組電池では、上記の熱伝達抑制シートが用いられている。したがって、本発明の組電池は安定した動作が持続し、電池セルの熱暴走が起こっても、被害を最小限に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シートの構成を示す模式図である。
図2図2は、本実施形態に係る組電池を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本願発明者らは、電池セルが熱暴走した場合には、隣り合う電池セル間で熱を遮断するとともに、電池セルの発熱を速やかに放熱させる断熱性と放熱性に優れた熱伝達抑制シートを提供するため鋭意検討を行った結果、シートに含まれる無機繊維の配向が重要であることを見出した。そして、配向している第1の無機繊維では熱が伝導しやすく、シート内での断熱性や放熱性が優れるとともに均一となり、電池セルからの発熱を効果的に放熱できる。また、第1の無機繊維と第2の無機繊維とが交絡することにより3次元ウエッブ構造を形成することにより、第2の無機繊維が、配向している第1の無機繊維同士をつなぐ伝熱パスとなって伝熱性がより高まり、更には3次元ウエッブ構造により強度的に優れたものとなることを見出した。本発明は、このような知見に基づくものである。
【0031】
以下、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シート及び組電池に関して、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
【0032】
[1.熱伝達抑制シート]
本発明の熱伝達抑制シートは、
(1)一様に分散した無機粒子と、
(2)一様に分散するとともにシートの主面に対して平行な一方向に配向されている第1の無機繊維と、
(3)第1の無機繊維と交絡して3次元ウエッブ構造を形成する第2の無機繊維と、
を含む。
【0033】
図1は、本発明の実施形態に係る熱伝達抑制シート10の構成を示す模式図である。図示されるように、熱伝達抑制シート10の主面10a,10bに対して平行な一方向に、第1の無機繊維23が層状に配向している。また、第1の無機繊維23が、第2の無機繊維24と交絡して3次元ウエッブ構造を形成している。それとともに、第1の無機繊維23及び第2の無機繊維24との間の空間に、無機粒子21が一様に広がって保持されている。無機粒子21、第1の無機繊維23及び第2の無機繊維24は、いずれも耐熱性の材料であり、更には、粒子間、粒子と繊維との間、繊維間に微小な空間が無数に形成され、空気による断熱効果も発揮されるため、熱伝達抑制性能に優れる。
【0034】
なお、本発明において、「一方向に配向している」とは、第1の無機繊維23がすべてその方向に向いている必要はなく、特定の一方向に第1の無機繊維23が並ぶ傾向が強ければよい。また、第1の無機繊維23が特定の方向に配向していることは、目視による確認で判断できるが、繊維の判別が難しい場合には、当該方向の曲げ強度を測定し、他の方向より20%以上大きくなっていることで確認することができる。
【0035】
(第1の無機繊維)
第1の無機繊維23は非晶質の繊維であり、第2の無機繊維24は、第1の無機繊維23よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維である。なお、結晶質の無機繊維の融点は通常非晶質の無機繊維のガラス転移点より高い。そのため、第1の無機繊維23は、高温にさらされると、その表面が第2の無機繊維24より先に軟化して、無機粒子21や第2の無機繊維24を結着するため、熱伝達抑制シート10の機械的強度を向上させることができる。
【0036】
第1の無機繊維23としては、ガラス繊維、グラスウール、スラグウール、ロックウール、アルカリアースシリケート繊維及びリフラクトリーセラミック繊維を好適に用いることができ、これらはそれぞれ単独でも、複数種を混合しても用いてもよい。中でも、融点が700℃未満である無機繊維が好ましく、多くの非晶質の無機繊維を用いることができる。特に、SiOを含む繊維であることが好ましく、安価で、入手も容易で、取扱い性等に優れることから、ガラス繊維であることがより好ましい。
【0037】
(第2の無機繊維)
第2の無機繊維24は、上述のとおり、第1の無機繊維23よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維である。第2の無機繊維24としては、多くの結晶性の無機繊維を用いることができる。
【0038】
第2の無機繊維24が結晶質の繊維からなるものであるか、又は第1の無機繊維23よりもガラス転移点が高いものであると、高温にさらされたときに、第1の無機繊維23が軟化しても、第2の無機繊維24は溶融又は軟化しない。したがって、電池セルの熱暴走時においても形状を維持し、電池セル間に存在し続けることができる。また、第2の無機繊維24が溶融又は軟化しないと、無機粒子21と無機粒子21との間、無機粒子21と第1の無機繊維23と第2の無機繊維24との間、第1の無機繊維23と第2の無機繊維24との間における微小な空間が維持されるため、空気による断熱効果が発揮され、優れた熱伝達抑制性能を保持することができる。
【0039】
第2の無機繊維24が結晶質である場合に、第2の無機繊維24としては、アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナシリケート繊維、鉱物系繊維、ジルコニア繊維を好適に用いることができ、これらはそれぞれ単独でも、複数種を混合しても用いてもよい。中でも、融点が1000℃を超えるものであると、電池セルの熱暴走が発生しても、第2の無機繊維は溶融又は軟化せず、その形状を維持することができるため、好適に使用することができる。
【0040】
また、第2の無機繊維24が非晶質である場合であっても、第1の無機繊維23よりもガラス転移点が高い繊維であれば、使用することができる。例えば、第1の無機繊維23よりガラス転移点が高いガラス繊維を第2の無機繊維24として用いてもよい。
【0041】
なお、上記のとおり、第1の無機繊維23は第2の無機繊維24よりもガラス転移点が低く、高温にさらされたときに、第1の無機繊維23が先に軟化するため、第1の無機繊維23で無機粒子21及び第2の無機繊維24を結着することができる。しかし、例えば、第2の無機繊維24が非晶質であって、その繊維径が第1の無機繊維23の繊維径よりも細い場合に、第1の無機繊維23と第2の無機繊維24とのガラス転移点が接近していると、第2の無機繊維24が先に軟化するおそれがある。したがって、第2の無機繊維24が非晶質の繊維である場合に、第2の無機繊維24のガラス転移点は、第1の無機繊維23のガラス転移点よりも100℃以上高いことが好ましく、300℃以上高いことがより好ましい。
【0042】
(第1の無機繊維及び第2の無機繊維の平均繊維径、並びに平均繊維長)
本発明において、平均繊維径が太い(太径の)無機繊維は、熱伝達抑制シート10の機械的強度や保形性を向上させる効果を有する。第1の無機繊維23及び第2の無機繊維24のいずれか一方を太径にすることにより、上記効果を得ることができる。熱伝達抑制シート10には、外部からの衝撃が作用することがあるため、太径の無機繊維が含まれることにより耐衝撃性が高まる。外部からの衝撃としては、例えば電池セルの膨張による押圧力や、電池セルの発火による風圧などである。
【0043】
また、機械的強度や保形性を向上させるためには、太径の無機繊維は線状又は針状であることが特に好ましい。なお、線状又は針状の繊維とは、後述の捲縮度が例えば10%未満、好ましくは5%以下である繊維をいう。
【0044】
より具体的には、熱伝達抑制シート10の機械的強度や保形性を向上させるためには、太径の無機繊維の平均繊維径は1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。ただし、太径の無機繊維が太すぎると、熱伝達抑制シート10への成形性、加工性が低下するおそれがあるため、平均繊維径は20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。また、太径の無機繊維は長すぎても成形性や加工性が低下するおそれがあるため、繊維長を100mm以下とすることが好ましい。さらに、太径の無機繊維は短すぎても保形性や機械的強度が低下するため、繊維長を0.1mm以上とすることが好ましい。
【0045】
一方、平均繊維径が細い(細径の)無機繊維は、無機粒子21の保持性を向上させるとともに、熱伝達抑制シート10の柔軟性を高める効果を有する。したがって、第1の無機繊維23及び第2の無機繊維24のうち、他方を細径にすることにより、上記効果を得ることができる。
【0046】
より具体的に、無機粒子21の保持性を向上させるためには、細径の無機繊維は変形が容易で、柔軟性を有することが好ましい。したがって、細径の無機繊維は、平均繊維径が1μm未満であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。ただし、細径の無機繊維が細すぎると破断しやすく、無機粒子21の保持能力が低下する。また、無機粒子21を保持せずに繊維が絡み合ったままでシート中に存在する割合が多くなり、無機粒子21の保持能力の低下に加えて、成形性や保形性にも劣るようになる。そのため、細径の無機繊維の平均繊維径は1nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。
なお、細径の無機繊維は、長くなりすぎると成形性や保形性が低下するため、繊維長は0.1mm以下であることが好ましい。
【0047】
また、細径の無機繊維は、樹枝状又は縮れ状であることが好ましい。細径の無機繊維がこのような形状であると、太径の無機繊維や無機粒子21と絡み合う。そのため、無機粒子21の保持能力が向上する。また、熱伝達抑制シート10が押圧力や風圧を受けた際に、細径の無機繊維が滑って移動することが抑制され、このことにより、特に外部からの押圧力や衝撃に抗する機械的強度が向上する。
【0048】
なお、樹枝状とは、2次元的又は3次元的に枝分かれした構造であり、例えば羽毛状、テトラポット形状、放射線状、立体網目状である。
細径の無機繊維が樹枝状である場合に、その平均繊維径は、SEMによって幹部及び枝部の径を数点測定し、これらの平均値を算出することにより得ることができる。
【0049】
また、縮れ状とは、繊維が様々な方向に屈曲した構造である。縮れ形態を定量化する方法の一つとして、電子顕微鏡写真からその捲縮度を算出することが知られており、例えば下記式から算出することができる。
捲縮度(%)=(繊維長さ-繊維末端間距離)/(繊維長さ)×100
ここで、繊維長さ、繊維末端間距離ともに電子顕微鏡写真上での測定値である。すなわち、2次元平面上へ投影された繊維長、繊維末端間距離であり、現実の値よりも短くなっている。この式に基づき、細径の無機繊維の捲縮度は10%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。捲縮度が小さいと、無機粒子21の保持能力や、太径の無機繊維同士、太径の無機繊維との絡み合い(ネットワーク)が形成されにくくなる。
【0050】
上述のとおり、第1の無機繊維23及び前記第2の無機繊維24のいずれか一方の平均繊維径が、他方の平均繊維径よりも大きいことが好ましいが、本発明においては、第1の無機繊維23の平均繊維径が、第2の無機繊維24の平均繊維径よりも大きいことがより好ましい。第1の無機繊維23の平均繊維径が太径であると、第1の無機繊維23のガラス転移点が低く、早く軟化するため、温度の上昇に伴って膜状となって硬くなる。一方、第2の無機繊維24の平均繊維径が細径であると、温度が上昇しても細径の第2の無機繊維24が繊維の形状で残存するため、熱伝達抑制シート10の構造を保持し、粉落ちを防止することができる。
【0051】
なお、第1の無機繊維23として、太径であって線状又は針状の無機繊維と、細径であって樹枝状又は縮れ状の無機繊維との両方が使用されており、第2の無機繊維24として、太径であって線状又は針状の無機繊維と、細径であって樹枝状又は縮れ状の無機繊維との両方が使用されていると、無機粒子21の保持効果、機械的強度及び保形性をより一層高めることができるため、最も好ましい。
【0052】
また、第1の無機繊維23の平均繊維長が第2の無機繊維24よりも大きいことにより、配向長さが伸びるため放熱性がより高まる。更には、第2の無機繊維24が樹枝状又は縮れ状であるため第1の無機繊維との交絡が容易であり、伝熱パスや形状保持に効果的となる。
【0053】
(第1の無機繊維及び第2の無機繊維の熱伝導率)
熱伝達抑制シート10は断熱性能に優れるほど好ましく、第1の無機繊維23及び第2の無機繊維24ともに熱伝導率が低いことが好ましい。しかし、第2の無機繊維24は、層状に配向している第1の無機繊維同士をつなぐ伝熱パスになるため、第1の無機繊維23よりも熱伝導率が高いことが好ましい。そのため、断熱性能を考慮して、第2の無機繊維24の熱伝導率は41[W/m・K]以下であることが好ましい。
【0054】
(無機粒子)
無機粒子21の材質は特に限定されないが、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子を用いることができる。中でも、酸化物粒子が好ましい。また、無機粒子21の形状及び大きさについても特に限定されないが、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ナノ粒子を含むことがより好ましい。
【0055】
無機粒子21は、それぞれ単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の熱伝達抑制効果が互いに異なる無機粒子21を併用すると、発熱体を多段に冷却することができ、吸熱作用をより広い温度範囲で発現できる。また、無機粒子21は、大径粒子と小径粒子とを混合使用することも好ましい。大径の無機粒子同士の隙間に小径の無機粒子が入り込むと、より緻密な構造となり、熱伝達抑制効果を向上させることができる。
【0056】
無機粒子21の平均二次粒子径が0.01μm以上であると、入手しやすく、製造コストの上昇を抑制することができる。また、200μm以下であると、所望の断熱効果を得ることができる。したがって、無機粒子21の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0057】
以下に、無機粒子21について詳説する。
【0058】
(酸化物粒子)
無機粒子21として好ましい酸化物粒子は、屈折率が高く、光を乱反射させる効果が強いため、無機粒子21として酸化物粒子を使用すると、特に異常発熱などの高温度領域において放射伝熱を抑制することができる。具体的にはシリカ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子、ジルコン粒子、チタン酸バリウム粒子、酸化亜鉛粒子及びアルミナ粒子が好ましい。特に、シリカ粒子は断熱性が高い成分であり、チタニア粒子は他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であって、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ放射熱を遮る効果が高いため、酸化物粒子としてシリカ粒子及びチタニア粒子を用いることが最も好ましい。
【0059】
(酸化物粒子の平均一次粒子径:0.001μm以上50μm以下)
酸化物粒子の粒子径は、放射熱を反射する効果に影響を与えることがあるため、平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
【0060】
すなわち、酸化物粒子の平均一次粒子径が0.001μm以上であると、加熱に寄与する光の波長よりも十分に大きく、光を効率よく乱反射させるため、500℃以上の高温度領域においてシート内における熱の放射伝熱が抑制され、より一層断熱性を向上させることができる。一方、酸化物粒子の平均一次粒子径が50μm以下であると、圧縮されても粒子間の接点や数が増えず、伝導伝熱のパスを形成しにくいため、特に伝導伝熱が支配的な通常温度域の断熱性への影響を小さくすることができる。
【0061】
2種以上の酸化物粒子を使用する場合に、大径粒子と小径粒子(ナノ粒子)とを混合使用することも好ましく、この場合の大径粒子の平均一次粒子径は、1μm以上50μm以下であることがより好ましく、5μm以上30μm以下であることが更に好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。なお、本発明において平均一次粒子径は、顕微鏡で粒子を観察し、標準スケールと比較し、任意の粒子10個の平均をとることにより求めることができる。
【0062】
(ナノ粒子)
本発明において、ナノ粒子とは、球形又は球形に近い平均一次粒子径が1μm未満のナノメートルオーダーの粒子を表す。ナノ粒子は低密度であるため伝導伝熱を抑制し、無機粒子としてナノ粒子を使用すると、更に空隙が細かく分散するため、対流伝熱を抑制する優れた断熱性を得ることができる。このため、通常の常温域の電池使用時において、隣接するナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる点で、ナノ粒子を使用することが好ましい。
【0063】
また、本発明において、無機粒子21として選択される酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子のうち、少なくとも1種がナノ粒子であることが好ましい。さらに、酸化物粒子として、平均一次粒子径が小さいナノ粒子を使用すると、電池セルの熱暴走に伴う膨張によって熱伝達抑制シート10が圧縮され、内部の密度が上がった場合であっても、熱伝達抑制シート10の伝導伝熱の上昇を抑制することができる。これは、ナノ粒子が静電気による反発力で粒子間に細かな空隙ができやすく、かさ密度が低いため、クッション性があるように粒子が充填されるからであると考えられる。
【0064】
なお、本発明において、無機粒子21としてナノ粒子を使用する場合に、上記ナノ粒子の定義に沿ったものであれば、材質について特に限定されない。例えば、シリカナノ粒子は、断熱性が高い材料であることに加えて、粒子同士の接点が小さいため、シリカナノ粒子により伝導される熱量は、粒子径が大きいシリカ粒子を使用した場合と比較して小さくなる。また、一般的に入手されるシリカナノ粒子は、かさ密度が0.1g/cm程度であるため、例えば、熱伝達抑制シート10の両側に配置された電池セルが熱膨張し、熱伝達抑制シート10に対して大きな圧縮応力が加わった場合であっても、シリカナノ粒子同士の接点の大きさ(面積)や数が著しく大きくなることはなく、断熱性を維持することができる。したがって、ナノ粒子としてはシリカナノ粒子を使用することが好ましい。シリカナノ粒子としては、湿式シリカ、乾式シリカ及びエアロゲル等を使用することができる。
【0065】
上述のとおり、チタニアは放射熱を遮る効果が高く、シリカナノ粒子は伝導伝熱が極めて小さいとともに、熱伝達抑制シート10に圧縮応力が加わった場合であっても、優れた断熱性を維持することができるため、無機粒子21として、チタニア粒子及びシリカナノ粒子の両方を使用することが最も好ましい。
【0066】
(ナノ粒子の平均一次粒子径:1nm以上100nm以下)
ナノ粒子の平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。
【0067】
すなわち、ナノ粒子の平均一次粒子径を1nm以上100nm以下とすると、特に500℃未満の温度領域において、熱伝達抑制シート10の内部における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制することができ、断熱性をより一層向上させることができる。また、圧縮応力が印加された場合であっても、ナノ粒子間に残った空隙と、多くの粒子間の接点が伝導伝熱を抑制し、熱伝達抑制シート10の断熱性を維持することができる。なお、ナノ粒子の平均一次粒子径は、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることが更に好ましい。一方、ナノ粒子の平均一次粒子径は、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
【0068】
(無機水和物粒子)
無機粒子21として無機水和物粒子も好ましいが、この無機水和物粒子は、発熱体からの熱を受けて熱分解開始温度以上になると熱分解し、自身が持つ結晶水を放出して発熱体及びその周囲の温度を下げる、所謂「吸熱作用」を発現する。また、結晶水を放出した後は多孔質体となり、無数の空気孔により断熱作用を発現する。
【0069】
無機水和物の具体例として、水酸化アルミニウム(Al(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化亜鉛(Zn(OH))、水酸化鉄(Fe(OH))、水酸化マンガン(Mn(OH))、水酸化ジルコニウム(Zr(OH))、水酸化ガリウム(Ga(OH))等が挙げられる。
【0070】
例えば、水酸化アルミニウムは約35%の結晶水を有しており、下記式に示すように、熱分解して結晶水を放出して吸熱作用を発現する。そして、結晶水を放出した後は多孔質体であるアルミナ(Al)となり、断熱材として機能する。
2Al(OH)→Al+3H
【0071】
なお、後述するように本発明の組電池では、電池セル間に介在された熱伝達抑制シート10を有するが、熱暴走を起こした電池セルでは、200℃を超える温度に急上昇し、700℃付近まで温度上昇を続ける。したがって、無機粒子は熱分解開始温度が200℃以上である無機水和物からなることが好ましい。
【0072】
上記に挙げた無機水和物の熱分解開始温度は、水酸化アルミニウムは約200℃、水酸化マグネシウムは約330℃、水酸化カルシウムは約580℃、水酸化亜鉛は約200℃、水酸化鉄は約350℃、水酸化マンガンは約300℃、水酸化ジルコニウムは約300℃、水酸化ガリウムは約300℃であり、いずれも熱暴走を起こした電池セルの急激な昇温の温度範囲とほぼ重なり、温度上昇を効率よく抑えることができることから、好ましい無機水和物であるといえる。
【0073】
また、無機粒子21として、無機水和物粒子を使用した場合に、その平均粒子径が大きすぎると、シート内の中心付近にある無機水和物が、その熱分解温度に達するまでにある程度の時間を要するため、熱伝達抑制シート10の中心付近の無機水和物粒子が熱分解しきれない場合がある。このため、無機水和物粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0074】
(無機粒子、第1の無機繊維及び第2の無機繊維の各含有量)
無機粒子21の含有量は、熱伝達抑制シート10の全質量に対して、30質量%以上80質量%以下であることが好ましい。無機粒子21の含有量は、より好ましくは、40質量%以上70質量%以下であり、50質量%以上60質量%以下である。
また、第1の無機繊維23と第2の無機繊維24との合計含有量は、熱伝達抑制シート10の全質量に対して、5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。第1の無機繊維23と第2の無機繊維24と合計含有量は、より好ましくは、10質量%以上25質量%以下であり、15質量%以上20質量%以下である。
このような含有量にすることにより、無機粒子21による吸熱・断熱効果、第1の無機繊維23による保形性や押圧力耐性、抗風圧性、第2の無機繊維24による伝熱パス作用や無機粒子21の保持能力がバランスよく発現される。
【0075】
(他の配合材料)
熱伝達抑制シート10には、必要に応じて、従来から熱伝達抑制シート10に配合されている他の配合材料を配合してもよい。例えば、有機繊維や有機バインダ等を配合することができる。これらはいずれも熱伝達抑制シート10の補強や成形性の向上を目的とする上で有用であり、熱伝達抑制シート10の全質量に対して合計量で、10質量%以下とすることが好ましい。
【0076】
(熱伝達抑制シートの厚さ)
本実施形態において、熱伝達抑制シート10の厚さは特に限定されないが、0.05~6mmの範囲にあることが好ましい。熱伝達抑制シート10の厚さが0.05mm以上であると、充分な機械的強度を熱伝達抑制シート10に付与することができる。一方、熱伝達抑制シート10の厚さが6mm以下であると、良好な組付け性を得ることができる。
【0077】
(熱伝達抑制シートの断熱性能)
断熱性能を表す指標として、熱伝導率を挙げることができるが、本実施形態においては、熱伝導率は1(W/m・K)未満であることが好ましく、0.5(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.2(W/m・K)未満であることがより好ましい。さらに、熱伝導率は0.1(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.05(W/m・K)未満であることがより好ましく、0.02(W/m・K)未満であることが特に好ましい。なお、熱伝導率は、JIS R 2251に記載の「耐火物の熱伝導率の試験方法」に準拠して、測定することができる。
【0078】
[2.熱伝達抑制シートの製造方法]
まず、無機粒子21、第1の無機繊維23及び他の配合材料を所定の割合で水に加え、混練機で混練することにより、ペーストを調製する。その後、得られたペーストを、押出成形機を用いてスリット状のノズルから押出して第1部材を得る。この第1部材は、シート状の湿潤物であり、第1の無機繊維23が一方向に配向し、繊維間に無機粒子21が保持されている。
【0079】
また、無機粒子21、第2の無機繊維24及び他の配合材料を所定の割合で乾式混合し、プレス成形することで、第2部材を得る。この第2部材は、シート状で、第2の無機繊維24がランダムに存在し、繊維間に無機粒子21が保持されている。
【0080】
そして、第1部材と第2部材とを複数、交互に積層して全体をプレス成形し、乾燥することで熱伝達抑制シート10が得られる。プレス成形の際に、第2部材中にランダムに存在している第2の無機繊維24が、湿潤状態にある第1部材に入り込んで、第1の無機繊維23と絡み合う。そして、乾燥することにより、このような状態が維持されて熱伝達抑制シート10となる。
【0081】
[3.組電池]
図2に示すように、本実施形態に係る組電池100は、複数個の電池セル20a、20b、20cが並設され、直列又は並列に接続されて電池ケース30に格納されたものであり、電池セル20a、20b、20c間に、上記の熱伝達抑制シート10が介在されている。
【0082】
このような組電池100では、各電池セル20a、20b、20cの間に、熱伝達抑制シート10が介在されているため、通常使用時において、各電池セル20a、20b、20c間の熱の伝播を抑制することができる。
【0083】
一方、電池セル20a、20b、20cのいずれかが熱暴走を起こした場合でも、本実施形態に係る熱伝達抑制シート10が存在することにより、電池セル20a、20b、20c間の熱の伝播を抑制することができる。したがって、熱暴走の連鎖を阻止することができ、他の電池セルへの悪影響を最小限に抑えることができる。
【0084】
また、図示は省略するが、熱伝達抑制シート10は、電池セル20a、20b、20cの間に介在する他、電池ケース30の内底面に直接付設したり、電池ケース30の天井面や側壁と電池セル20a、20b、20cとの間の空間に配設してもよい。したがって、高い汎用性が得られるとともに、隣接する電池セル間で熱が伝播することによる熱暴走の連鎖を防止する効果を有するのみでなく、ある電池セルが発火した場合に、電池ケースの外側に炎が広がることを抑制することもできる。
【0085】
さらに、熱伝達抑制シートの構成成分や厚さの選択によっては、容易に屈曲可能なものとなる。したがって、電池セルの形状に影響されず、どのような形状のものにも対応させることができる。具体的には、角型電池の他、円筒形電池、平板型電池等にも適用することができる。
【0086】
例えば、本実施形態に係る組電池は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)等に使用され、搭乗者の床下に配置されることがある。この場合に、仮に電池セルが発火しても、搭乗者の安全を確保することができる。この場合に、各電池セル間に介在させる熱伝達抑制シートを、電池セルと電池ケースとの間にも配置することができるため、新たに防炎材等を作製する必要がなく、容易に低コストで安全な組電池を構成することができる。
【符号の説明】
【0087】
10 熱伝達抑制シート
10a、10b 主面
20,20b,20c 電池セル
21 無機粒子
23 第1の無機繊維
24 第2の無機繊維
30 電池ケース
100 組電池
図1
図2