(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094441
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】LED発光装置、及び、LED発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/62 20100101AFI20230628BHJP
【FI】
H01L33/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209922
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】596099446
【氏名又は名称】シーシーエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 慎
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA51
5F142AA82
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA03
5F142CA13
5F142CB15
5F142CB23
5F142CD02
5F142CD17
5F142CD44
5F142CG45
(57)【要約】
【課題】例えばスルーホールの存在する小型の基板であっても、LEDベアチップの実装密度を高めながら、製造コストの上昇を抑制することができるLED発光装置を提供する。
【解決手段】基板1と、前記基板1を厚み方向に貫通するとともに、内周面に金属メッキ1Pが施されたスルーホール11と、前記基板1上に搭載されるLEDベアチップ2と、を備え、前記LEDベアチップ2が前記スルーホール11の直上に配置されるとともに、当該スルーホール11において前記LEDベアチップ2が配置されていない側が開口しているようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板を厚み方向に貫通するとともに、内周面に金属メッキが施されたスルーホールと、
前記基板上に搭載されるLEDベアチップと、を備え、
前記LEDベアチップが前記スルーホールの直上に配置されるとともに、当該スルーホールにおいて前記LEDベアチップが配置されていない側が開口しているLED発光装置。
【請求項2】
前記LEDベアチップが、前記基板において前記スルーホールの開口周囲に形成されたランドにダイボンディング用ペーストで固定されている請求項1記載のLED発光装置。
【請求項3】
前記LEDベアチップが直上に配置されている前記スルーホール内又は前記スルーホールの開口上の少なくとも一部に前記ダイボンディング用ペーストが存在する請求項2記載のLED発光装置。
【請求項4】
前記LEDベアチップが、前記基板上において前記スルーホール以外の場所に複数設けられている請求項1乃至3いずれか一項に記載のLED発光装置。
【請求項5】
基板と、前記基板を厚み方向に貫通するとともに、内周面に金属メッキが施されたスルーホールと、前記基板上に搭載されるLEDベアチップと、を備えたLED発光装置の製造方法であって、
前記LEDベアチップを前記スルーホールの直上に配置するとともに、当該スルーホールにおいて前記LEDベアチップが配置されていない側は開口させるLED発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記スルーホールの直上に前記LEDベアチップを配置した後、前記基板において前記LEDベアチップが配置されている側に封止材を設ける請求項5記載のLED発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、基板の表面にLEDベアチップを多数実装した所謂チップオンボード(COB)型のLED発光装置がある。このようなLED発光装置100Aは、
図3に示すように基板1A上には、例えば環状をなし、内側にLEDベアチップ2Aの実装領域を区成するダム4Aが設けられている。また、このダム4Aの内側に多数のLEDベアチップ2Aが実装された後、ダム4A内には透光性を有する封止材5Aが充填される。
【0003】
ところで、基板1Aが例えば両面実装可能に構成されている場合には、基板1Aの表面に形成された回路と裏面に形成された回路との間を導通させるために、厚み方向に貫通するとともに、内周面に金属メッキ1Pが施されたスルーホール11Aが形成されていることがある。このスルーホール11Aは設計上の制約によってダム4Aの内側の実装領域内に形成するしかないこともある。
【0004】
このような場合には、
図3(a)に示すようにスルーホール11Aが貫通したままの状態であると、ダム4A内に封止材5Aを充填するとスルーホール11Aを介して封止材5Aが基板1Aの裏面側へと漏出してしまい、ダム4A内を封止できない。したがって、
図3(b)に示すように従来のLED発光装置100Aでは、まずスルーホール11A内に樹脂等の閉塞材FLを充填して完全にスルーホール11Aを閉塞させた後、
図3(c)に示すようにダム4A内に封止材5Aを充填している。
【0005】
しかしながら、このようなLED発光装置100Aでは、実装領域内にスルーホール11Aが無いものに比べて、スルーホール11Aを閉塞させるという余分な工程が発生し、製造コストが高い。また、スルーホール11A上にはLEDベアチップ2Aは実装されないため、実装密度が低下して均一な面光源として構成しにくい場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、例えばスルーホールの存在する小型の基板であっても、LEDベアチップの実装密度を高めながら、製造コストを低減できるLED発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係るLED発光装置は、基板と、前記基板を厚み方向に貫通するとともに、内周面に金属メッキが施されたスルーホールと、前記基板上に搭載されるLEDベアチップと、を備え、前記LEDベアチップが前記スルーホールの直上に配置されるとともに、当該スルーホールにおいて前記LEDベアチップが配置されていない側が開口していることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、前記LEDベアチップが前記スルーホールの直上に配置されるので、前記スルーホール内に樹脂等の閉塞材を充填しなくても前記スルーホールにおいて前記LEDベアチップが実装される側の開口は蓋がされた状態にできる。このため、前記基板に封止材を塗布しても、封止材が前記スルーホールを介して裏面側へと漏出することはない。したがって、従来の前記スルーホール内を閉塞させるといった前工程を省き、製造コストを抑えることができる。
【0010】
また、前記基板において封止材が塗布されるLED実装領域内に前記スルーホールが配置されていても、その直上にLEDベアチップを配置するので、LEDベアチップの実装密度も高めることができる。
【0011】
前記スルーホールの直上に前記LEDベアチップを実装しても十分に電気的に接続されるようにするには、前記LEDベアチップが、前記基板において前記スルーホールの開口周囲に形成されたランドにダイボンディング用ペーストで固定されていればよい。
【0012】
前記スルーホールを事前に穴埋めせずに前記LEDベアチップを前記スルーホールの直上に実装した場合でも、前記LEDベアチップの固定強度を十分に高められるようにするには、前記LEDベアチップが直上に配置されている前記スルーホール内又は前記スルーホールの開口上の少なくとも一部に前記ダイボンディング用ペーストが存在すればよい。
【0013】
LED発光装置の具体的な態様としては、前記LEDベアチップが、前記基板上において前記スルーホール以外の場所に複数設けられているものが挙げられる。
【0014】
本発明に係るLED発光装置の製造方法は、基板と、前記基板を厚み方向に貫通するスルーホールと、前記基板上に搭載されるLEDベアチップと、を備えたLED発光装置の製造方法であって、前記LEDベアチップを前記スルーホールの直上に配置するとともに、当該スルーホールにおいて前記LEDベアチップが配置されていない側は開口させることを特徴とする。
【0015】
このようなものであれば、前記スルーホール上に前記LEDベアチップが実装されるので従来よりも複数のLEDベアチップの実装密度を高めることができるとともに、前記スルーホールを事前に穴埋めする必要がないので、製造コストを低くすることができる。
【0016】
製造コストを抑えることができる封止材の充填方法としては、前記スルーホールの直上に前記LEDベアチップを配置した後、前記基板において前記LEDベアチップが配置されている側に封止材を設ける方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明に係るLED発光装置によれば、前記スルーホールを事前に穴埋めせずにその直上に前記LEDベアチップを実装するように構成されているので、製造コストを低く抑えながらも前記基板における複数のLEDベアチップの実装密度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態におけるLED発光装置を示す模式図。
【
図2】同実施形態におけるLED発光装置の一部を拡大した模式的平面図及び模式的断面図。
【
図3】従来のLED発光装置の一部を拡大した模式的平面図及び模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明に係るLED発光装置の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明するLED発光装置は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また一の実施形態において説明する内容は、他の実施形態にも適用可能である。また各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、特にスルーホールの大きさ、金メッキやレジストの膜厚については、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0020】
本実施形態のLED発光装置100は、複数のLEDベアチップ2が基板1に実装された所謂チップオンボード型のものであり、例えば、均一性が求められる面発光照明等に用いられるものである。具体的にこのLED発光装置100は、
図1に示すように、基板1と、基板1の上面(表面)に搭載されたLEDベアチップ2及び電極体3と、LEDベアチップ2の周囲に設けられたダム4と、ダム4の内側に充填されてLEDベアチップ2を覆う封止材5とを備えている。なお、
図1においてはLEDベアチップ2間や基板上の電極部との間を接続するワイヤー等は省略している。
【0021】
LEDベアチップ2は、平面視矩形状をなす同一規格のものであり、所定のピッチで縦横マトリックス状に等間隔に配置されている。なお、LEDベアチップ2の数や、LEDベアチップ2間のピッチ長さは、LED発光装置100の目的及び用途に応じて適宜変更されてよい。また、LEDベアチップ2間についてはワイヤボンディング等でそれぞれが例えば直列に接続されている。なお、LEDベアチップ2については基板1上にフリップチップ実装されてもよい。
【0022】
図1に示すように、基板1は平面視において概略矩形状をなす平板状のものであり、例えばガラスエポキシ基板等のプリント基板である。本実施形態では基板1は両面実装基板であって、
図2のLEDベアチップ2と電極体3をそれぞれ1つずつ含む部分を拡大した部分断面図に示すように、基板1の上面に形成された回路と基板1の下面(裏面)に形成された回路を電気的に接続するために基板1の厚み方向に対して貫通するスルーホール11が形成されている。ここで、本明細書では、スルーホール11とは内周面には銅等による金属メッキ1Pが施されており、LEDベアチップ2が実装される前の基板1ではスルーホール11の上面側及び下面側はそれぞれ開口した状態で貫通しているものをいう。また、基板に対して形成された有底穴であり、例えばLEDベアチップの放熱等の目的で内部に金属等が充填されたものをビアであると本明細書では定義し、スルーホールにはビアは含まれない。
【0023】
図2(b)に示すようにスルーホール11の直上には、該スルーホール11が樹脂や金属等によって塞がれていない状態でLEDベアチップ2が配置されて、スルーホール11の下面側が開口した状態にしてある。言い換えると、本実施形態のLED発光装置100では、少なくとも一部のLEDベアチップ2については基板1においてスルーホール11の直上を塞ぐように実装され、その他のLEDベアチップ2については基板1においてスルーホール11以外の平板部分に実装される。その結果、
図1に示すように基板1においてLEDベアチップ2が例えばアレイ状に配列された場合にスルーホール11部分にLEDベアチップ2の歯抜けを生じさせることなく、配列ピッチを詰めて実装される。一方、スルーホール11のうちLEDベアチップ2が直上に配置されないものについては、
図2(b)に示すように薄膜であるレジスト3が上面側の開口を塞ぐように設けられる。スルーホール11の直上にLEDベアチップ2又はレジスト3のいずれが設けられる場合であってもスルーホール11内については樹脂等による閉塞材は充填されず、スルーホール11内のほとんどは空洞の状態となる。なお、LEDベアチップ2の上面に形成されたアノード21とレジスト3の近傍において基板1上に形成されているランド12との間はワイヤー配線されている。
【0024】
スルーホール11の直上に設けられているLEDベアチップ2の実装について
図2を参照しながらさらに詳述する。
【0025】
本実施形態では
図2(b)に示すようにスルーホール11が開放されている状態において、
図2(a)に示すようにスルーホール11の開口周囲に形成されている概略矩形状をなすランド12にダイボンディング用ペースト6が塗布される。このダイボンディング用ペースト6上にLEDベアチップ2の下面に形成されているカソードが接触するように設けられる。ダイボンディング用ペースト6の一部は、スルーホール11の表面開口を塞ぐようにLEDベアチップ2が押し付けられる際にスルーホール11内に侵入する。この結果、スルーホール11の上面側の開口がダイボンディング用ペースト6の膜で塞がれた状態となる。なお、スルーホール11内はダイボンディング用ペースト6の少なくとも一部が侵入してもよいし、
図2(b)のように上面側の開口がダイボンディング用ペースト6で完全に塞がれた状態とはならずに、一部に欠けがある状態にして、スルーホール11としては上面側から下面側に至るまで貫通している状態としてもよい。
【0026】
このように本実施形態のLED発光装置100によれば、多数あるLEDベアチップ2の一部については、基板1に形成されているスルーホール11の直上に設けられるので、スルーホール11が形成されている場所によらず、各LEDベアチップ2の配置ピッチを詰めて配列することが可能となる。このため、基板1における多数のLEDベアチップ2の実装密度を高くして、光量や明るさを従来よりも大きくすることができる。
【0027】
また、本実施形態では、スルーホール11についてはLEDベアチップ2の実装前に予め樹脂や金属等で埋めて閉塞させた状態にすることなく、貫通している状態でダイボンディング用ペースト6を上面側開口周囲に塗布し、その後スルーホール11直上にLEDベアチップ2を配置して上面側の蓋がされる。また、スルーホール11においてLEDベアチップ2が直上に配置されないものにはレジスト3で同様に蓋だけがされる。そして、スルーホール11の上面側の開口に蓋だけがされた状態で、封止材5をダム4内に充填するので、LEDベアチップ2の実装において従来のような余分な工程が増加することがなく、製造コストも抑えることができる。
【0028】
その他の実施形態について説明する。
【0029】
前記実施形態では、スルーホール11の直上に設けられているのは、LEDベアチップ2又はレジスト3であったが、その他の電子部品がスルーホール11の直上に設けられていてもよい。例えば電子部品として抵抗素子、サーミスタ、ノイズクリッピングダイオード、コンデンサ又は静電対策用ツェナーダイオード等の実装素子がスルーホール11の直上に設けられていてもよい。
【0030】
逆にスルーホール11の直上に設けられるのはLEDベアチップ2だけであってもよい。また、スルーホール11の直上に設けられるとは前記実施形態のようにスルーホール11がLEDベアチップ2の中央部に配置される構成に限られない。例えばLEDベアチップ2の周辺部においてスルーホール11が塞がれていても構わない。また、スルーホール11内に侵入するダイボンディング用ペースト6の量については、スルーホール11内に所定容積以上の空洞が形成されるものであればよく、例えばスルーホール11の容積の下側部分を含む50%以上が空洞となっている、あるいは、80%以上が空洞となっているもの等が挙げられる。
【0031】
前記実施形態において、ダム4内にLEDベアチップ2及びレジスト3が配列されていたが、ダム4内には、LEDベアチップ2のみが配列されていてもよい。
【0032】
前記実施形態のLEDベアチップ2が射出する光の波長は特に限定されず、紫外光や青色光等の任意の波長の光を発するものであってもよい。
【0033】
前記実施形態において基板1は、ガラスエポキシで形成された両面実装基板であったが、基板1は多層基板であってもよいし、例えばアルミ基板やセラミック基板であってもよい。要するに基板1が表面と裏面との間を貫通するスルーホール11を1又は複数具備しているものであればよい。
【0034】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
100・・・LED発光装置
1 ・・・基板
11 ・・・スルーホール
1P ・・・金属メッキ
12 ・・・ランド
2 ・・・LEDベアチップ
3 ・・・レジスト
4 ・・・ダム
5 ・・・封止材
6 ・・・ダイボンディング用ペースト