IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フロンティアの特許一覧

<>
  • 特開-積層容器の製造方法 図1
  • 特開-積層容器の製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094443
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】積層容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/10 20060101AFI20230628BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20230628BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20230628BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
B29C39/10
B29C45/00
B29C39/24
B29C49/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209925
(22)【出願日】2021-12-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 展示日:令和3年12月8日 展示会名:第10回プラスチックジャパン
(71)【出願人】
【識別番号】594082648
【氏名又は名称】株式会社フロンティア
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】祢津 陽一
(72)【発明者】
【氏名】甘利 史哉
(72)【発明者】
【氏名】跡部 忠宣
【テーマコード(参考)】
4F204
4F206
4F208
【Fターム(参考)】
4F204AA33
4F204AA42
4F204AC05
4F204AD05
4F204AD12
4F204AG07
4F204AH55
4F204AM28
4F204EA03
4F204EB01
4F204EB12
4F204EF05
4F204EF27
4F204EF30
4F204EK09
4F204EK13
4F204EK17
4F206AA33
4F206AA42
4F206AD05
4F206AD07
4F206JB12
4F208AA11
4F208AA24
4F208AA28
4F208AA29
4F208AA50
4F208AG07
4F208AH55
4F208LA04
4F208LB01
4F208LG03
4F208LG28
4F208LN23
4F208LW02
4F208LW41
(57)【要約】
【課題】タグなどを適切な状態で内部に取り付け可能なインサートオーバーモールド成形による積層容器の製造方法を提案すること。
【解決手段】ICタグ付きの積層容器1の製造方法では、インサートオーバーモールド成形工程(ST4)において、液状の熱硬化性樹脂を、ICタグ3(中間体)を取り付けた状態の内層形成容器4がインサートされた成形型7に、液状の熱硬化性樹脂を自重注入して、外層成形体5を成形している。成形型7にインサートされた内層形成容器4、ICタグ3に対して、射出圧力や溶融樹脂熱、せん断熱による変形が生じることがなく、外層形成体5の成形時に内層形成容器4に変形防止用の内圧を加える必要もない。樹脂流動の影響を受けずに、ICタグ3を内外層の間の任意の位置に適切な状態で埋め込むことができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の内層形成容器と、
前記内層形成容器の胴部および底部を包み込む状態に当該内層形成容器の外表面に積層成形された外層形成体と、
前記内層形成容器と前記外層形成体の間に配置された中間体と、
を備えた積層容器の製造方法であって、
熱可塑性樹脂を用いて、有底筒状の前記内層形成容器を成形する内層形成容器製造工程と、
前記内層形成容器に前記中間体を配置する中間体配置工程と、
前記外層形成体を成形するための成形型に、前記中間体が配置された前記内層形成容器をインサートし、液状の熱硬化性材料を前記成形型に注入あるいは射出して、前記内層形成容器の前記胴部および底部を包み込む状態に前記外層形成体が積層成形された前記積層容器を得るインサートオーバーモールド成形工程と、
を含むことを特徴とする積層容器の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記中間体は、タグおよび前記内層形成容器に形成した印刷層のうちの一方あるいは双方である積層容器の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記インサートオーバーモールド成形工程では真空注型成形を行い、
当該真空注型成形では、前記内層形成容器がインサートされた前記成形型を真空状態にし、この状態で、液状の前記熱硬化性材料を前記成形型に自重注入し、注入後の前記成形型を所定の温度状態に加熱あるいは加温して前記熱硬化性材料を硬化させる積層容器の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれか一つの項において、
前記内層形成容器製造工程は、
前記熱可塑性樹脂を用いて、有底筒状の内層形成容器のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームに二軸延伸ブロー成形を施して前記内層形成容器を得る二軸延伸ブロー成形工程と、
を備えている積層容器の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれか一つの項において、
前記熱可塑性樹脂は、PET(リサイクルPETを含む)、PEF、PP、PEN、TPX、非晶性ポリアミド合成樹脂、PC、コポリエステル樹脂、またはバイオマス系樹脂であり、
前記熱硬化性材料は、硬質、軟質のシリコーン樹脂、またはウレタン樹脂である積層容器の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれか一つの項において、
前記中間体は電子情報を担持したタグである積層容器の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれか一つの項において、
前記中間体配置工程では、前記内層形成容器における前記底部に前記中間体を配置し、
前記インサートオーバーモールド成形工程を経て、前記内層形成容器の前記底部と、前記外層形成体の前記底部との間に前記中間体が配置された前記積層容器が得られる積層容器の製造方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちのいずれか一つの項に記載の製造方法によって製造されるタグ付き積層容器であって、
熱可塑性樹脂からなる有底筒状の内層形成容器と、
前記内層形成容器に取り付けたタグと、
前記内層形成容器の胴部および底部を包み込む状態に当該内層形成容器の外表面に積層成形された熱硬化性材料からなる外層形成体と、
を備えており、
前記内層形成容器の前記底部と前記外層形成体の前記底部との間に、前記タグがインサートされていることを特徴とするタグ付き積層容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグ、RFIDタグ、HFタグ(スマートフォンで読取可能)、意匠性、製品情報を備えた加飾用タグ、加飾印刷層やバーコード印刷層、その他の中間体が内部に配置されている積層容器に関し、特に、タグなどの中間体に位置ずれ、破損、損傷が生じることなく積層容器の積層間にタグなどの中間体を配置することのできる積層容器の製造方法、およびタグ付き積層容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内層、外層を備えた2層容器、3層以上の多層容器などの積層容器が知られている。積層容器の製造方法としてインサートオーバーモールド成形方法が知られている。この方法では、合成樹脂からなる一次中間製品となるプリフォームを成形した後に、このプリフォームをブローあるいは延伸ブローして二次中間製品に成形し、しかる後に、この二次中間製品を最終成形品である積層容器の形状に対応した外層を成形するための成形型にインサートし溶融樹脂を射出してオーバーモールド成形を行っている。このような積層容器の成形法においては、オーバーモールド成形時における溶融樹脂の射出圧力によって二次中間製品である内層ブロー容器が変形しないようにする必要がある。
【0003】
また、このような積層容器として、高い意匠性を付与するために積層容器の外層を肉厚にする、特に、厚底にして、重量感や高級感のあるガラスライクな容器が好まれている。しかしながら、肉厚にすることは樹脂の収縮によるヒケや気泡(真空ボイド)の発生、内層および外層樹脂の結晶化などの問題が発生する。また、内層ブロー容器が外層形成時に、断熱樹脂層として機能してしまい、厚肉の外層内面の冷却を阻害するという問題がある。
【0004】
特許文献1に記載のオーバーモールド容器の製造方法では、外層を形成するための成形時の射出圧力により内層ブロー容器の変形を抑制するために、外層形成時に、内層ブロー容器に内圧を加えるようにしている。しかし、内圧を加え、それを制御するための構造が複雑である。また、加える内部空気圧力を、内層ブロー容器が外層形成時の射出成形樹脂圧で変形せず、かつ、容器が破裂することのない圧力に制限する必要がある。
【0005】
特許文献2に記載の積層容器の製造方法では、外層を形成する際の溶融樹脂熱、せん断熱により、内層ブロー容器が結晶化するなどの変質を防ぐために、内層および外層を形成する樹脂を非晶質樹脂とし、かつ、内層のガラス転移点温度を外層のガラス転移点温度よりも高くしている。しかし、外層成形用の樹脂として、低融点樹脂を使用しなければならないなど、樹脂の選定に制約がある。
【0006】
一方、樹脂製の積層容器として、その内外層間に、ICタグ、RFIDタグ、HFタグ(スマートフォンで読取可能)などの電子情報担持タグ、加飾用、製品情報担持タグなどのタグがインサートされたタグ付き積層容器が知られている。特許文献3には、積層容器成型用のプリフォームを多層構造とし、その内層と外層の間の中間層として加飾ラベル等のタグを配置している。このようなタグ付きの多層プリフォームを延伸ブローして、タグ付き積層容器を成形する方法では、タグが、延伸ブロー成形時における樹脂流動の影響を受けて、位置ずれ、損傷等が生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5632709号公報
【特許文献2】特開2019-189307号公報
【特許文献3】特許第6932448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、化粧品容器等に代表される積層容器は、優れた外観性、高付加価値が要求される。また、このような容器は高機能化が求められ、生産在庫管理、ラベルレス、リユース、製造会社偽造防止等を目的として、容器自体に各種情報を担持させることも要求されつつある。さらに、業務用の専用機器でなくスマートフォンで読取ることができるというユーザーからの要求もある。
【0009】
このような点に鑑みて、特許文献1、2に記載のインサートオーバーモールド成形によりタグ付きで、外観品位等の優れた厚肉の積層容器を製造することが考えられる。しかしながら、この場合においても、内層ブロー容器に外層を成形する際の樹脂の射出圧力、保圧、溶融樹脂の熱などの影響により、積層容器の層間等に、情報担持機能を備えたタグ、意匠性を備えたタグ等を適切な状態でインサートすることが困難である。特に、外層の射出成形時には、射出型にインサートされている内層ブロー容器の底部にタグを配置した場合には、射出圧、保圧、熱の影響が大きく、このような部位にタグをインサートすることが困難である。
【0010】
本発明の目的は、このような点に鑑みて、タグやその他の中間体が適切な状態で内部に配置可能なインサートオーバーモールド成形による積層容器の製造方法を提案することにある。また、本発明は、この新たな製造方法によって得られるタグ付き積層容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、
有底筒状の内層形成容器と、
前記内層形成容器の胴部および底部を包み込む状態に当該内層形成容器の外表面に積層成形された外層形成体と、
前記内層形成容器と前記外層形成体の間に配置された中間体と、
を備えた積層容器の製造方法であって、
熱可塑性樹脂を用いて、有底筒状の前記内層形成容器を成形する内層形成容器製造工程と、
前記内層形成容器に前記中間体を配置する中間体配置工程と、
前記外層形成体を成形するための成形型に、前記中間体が配置された前記内層形成容器をインサートし、液状の熱硬化性材料を前記成形型に注入あるいは射出して、前記内層形成容器の前記胴部および底部を包み込む状態に前記外層形成体が積層成形された前記積層容器を得るインサートオーバーモールド成形工程と、
を含むことを特徴としている。
【0012】
前記中間体としてはタグを用いることができる。タグには、ICタグ、RFIDタグ、HFタグ(スマートフォンで読取可能)などの電子情報担持体が知られている。このようなタグを用いて、生産管理、内容物、リユース、製造会社偽造防止その他の目的のために用いる各種情報を担持させることができる。また、中間体としては、例えば、内層形成容器に形成した印刷層を挙げることができる。印刷層としては、加飾印刷層、バーコードなどの光学的に外部から読取り可能な情報、商品情報などが担持した情報担持印刷層などを挙げることができる。中間体としては、内層形成容器に貼り付けたシール、ラベルなどのその他の形態の各種のものを用いることができる。
【0013】
ここで、前記インサートオーバーモールド成形工程では真空注型成形を行うことが望ましい。当該真空注型成形では、前記内層形成容器がインサートされた前記成形型を真空状態にし、この状態で、液状の前記熱硬化性材料を前記成形型に自重注入し、注入後の前記成形型を所定の温度状態に加熱あるいは加温して前記熱硬化性材料を硬化させる。
【0014】
また、プリフォームの成形に用いる前記熱可塑性樹脂として、PET、PEF、PP、PEN、TPX、非晶性ポリアミド合成樹脂(非晶性ナイロン:商品名)、PC、コポリエステル樹脂(トライタン:商標名)、バイオマス樹脂などの合成樹脂を用いることができる。また、外層成形体の成形に用いる前記熱硬化性材料として、硬質、軟質のシリコーン樹脂、またはウレタン樹脂を用いることができる。外層成形体についても環境配慮の観点からバイオマス化の検討もすることができる。
【0015】
さらに、前記中間体配置工程では、前記内層形成容器における前記底部に前記中間体を配置し(例えばタグを取り付け)、前記オーバーモールド成形工程を経て、前記内層形成容器の前記底部と、前記外層形成体の前記底部との間に前記中間体が配置された(例えばタグがインサートされた)前記積層容器を得ることができる。
【0016】
一方、本発明は、上記の製造方法によって製造されたタグ付き積層容器であって、
熱可塑性樹脂からなる有底筒状の内層形成容器と、
前記内層形成容器に取り付けたタグと、
前記内層形成容器の胴部および底部を包み込む状態に当該内層形成容器の外表面に積層成形された熱硬化性材料からなる外層形成体と、
を備えており、
前記内層形成容器の前記底部と前記外層形成体の前記底部との間に、前記タグがインサートされていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積層容器の製造方法では、インサートオーバーモールド成形工程において、液状の熱硬化性樹脂を、タグなどの中間体を配置した状態の内層形成容器がインサートされた成形型に注入あるいは射出して、積層容器を成形している。特に、真空注型成形により液状の熱硬化性樹脂を自重注入している。本発明によれば、成形型にインサートされた内層形成容器、タグなどの中間体に対して、射出圧力や溶融樹脂熱、せん断熱による変形を生じさせることなく、外層形成体を成形でき、外層形成体の成形時に、内層形成容器に変形防止用の内圧を加える必要がない。また、樹脂流動の影響を受けずに、情報担持用のタグ、加飾用のタグ、製品情報担持タグなどのタグ、その他の中間体を、内外層の間の任意の位置に適切な状態で配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を適用したタグ付き積層容器の製造工程の一例を示す説明図である。
図2】タグ付き積層容器の製造工程およびインサートオーバーモールド成形工程を示す概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したタグ付き積層容器の一例およびタグ付き積層容器の製造方法の一例を説明する。以下の説明は、ICタグが底面に配置された2層容器および当該2層容器の製造方法に関するものである。しかし、本発明は、例えば、ICタグ以外の中間体を備えている場合、タグなどの中間体が底部以外の部位に配置されている場合、3層以上の多層の積層容器の場合、形状の異なる積層容器の場合にも、同様に適用可能であり、本発明は、以下の例に限定されるものではない。
【0020】
図1は本例のタグ付き積層容器の製造工程の一例を示す説明図である。製造対象のタグ付き積層容器はICタグが取り付けられた樹脂製の2層容器である。図1に示すように、タグ付き積層容器1は、2層構造の積層容器本体(以下、単に、積層容器2という。)と、積層容器2の内部に取り付けたICタグ3とを備えている。積層容器2は、筒状の容器胴部21と、容器胴部21の下端を封鎖する容器底部22と、容器胴部21の上端に開口するネジ付きの容器口部23とを備えたボトル形状の容器である。
【0021】
積層容器2は、有底筒状の内層形成容器4と、内層形成容器4の胴部41および底部42を包み込む状態に当該内層形成容器4の外表面に積層成形された有底筒状の外層形成体5とを備えている。外層形成体5は上端が開口した筒状の胴部51と、この胴部の下端を封鎖している底部52とを備えている。積層容器2の容器胴部21および容器底部22の内層部分は、内層形成容器4の胴部41および底部42によって形成され、それらの外層部分は、外層形成体5の胴部51および底部52によって形成されている。本例では、外層形成体5の上端開口から、内層形成容器4のネジ付きの容器口部43が上方に露出しており、この容器口部43によって単層の積層容器2の容器口部23が形成されている。
【0022】
この構成のタグ付き積層容器1は次の工程を経て製造される。まず、熱可塑性樹脂を用いて、有底筒状の内層形成容器4を成形する。本例では、二軸延伸ブロー成形により内層形成容器4を製造している。すなわち、熱可塑性樹脂を用いて、有底筒状の内層形成容器4を成形するためのプリフォーム6を射出成形し(ST1:射出成形工程)、次に、プリフォーム6に二軸延伸ブローを施して内層形成容器4を成形している(ST2:二軸延伸ブロー成形工程)。内層形成容器4において、胴部41および底部42は二軸延伸ブロー成形が施された部分であり、ネジ付きの口部43は二軸延伸ブロー成形されずにそのまま残っている部位である。
【0023】
使用する熱可塑性樹脂には、PET(リサイクルPETを含む)、PEF、PP、PEN、TPX、非晶性ポリアミド合成樹脂(非晶性ナイロン:商品名)、PC、コポリエステル樹脂(トライタン:商標名)、またはバイオマス樹脂などの合成樹脂がある。また、内層形成容器4の成形方法は、コールドパリソン法、ホットパリソン法、ダイレクトブロー成形法、または、インジェクションブロー成形法を採用できる。
【0024】
次に、成形された内層形成容器4にICタグ3を取り付ける(ST3:タグ取付工程)。本例では、内層形成容器4の底部42の外面中央部分に例えば円盤状のICタグ3を、接着剤等を用いて貼り付ける。ICタグ3の取付位置は底部42以外であってもよく、ICタグ3の取付方法は接着固定以外の方法であってもよい。また、ICタグ3の代わりに、RFIDタグ、商品情報等が印刷されたタグ、加飾用のタグその他のタグを用いることができる。なお、中間体が、加飾印刷層、バーコード等の読み取り情報を担持した情報担持印刷層などの場合には、内層形成容器4の所定の位置に、このような印刷層を形成すればよい。勿論、内層形成容器4にICタグと、印刷層の双方を配置することも可能である。
【0025】
次に、ICタグ3を取り付けた内層形成容器4には、インサートオーバーモールド成形により、外層形成体5が積層形成され、これにより、底部にICタグ3が埋め込まれた状態の2層構造の積層容器2が得られる(ST4:インサートオーバーモールド成形工程)。インサートオーバーモールド成形においては、外層形成体5を成形するための成形型に、ICタグ3が取り付けられた状態の内層形成容器4をインサートし、液状の熱硬化性樹脂を成形型に注入あるいは射出して、内層形成容器4の胴部41および底部42を包み込む状態に外層形成体5を積層成形する。これにより、2層構造の積層容器2が得られる。
【0026】
本例では、真空注型成形により外層形成体5を内層形成容器4に積層形成している。真空注型成形の代わりに、液状のシリコーンゴムの成形品の製造に用いられている射出成形機を使ったLIM成形(Liquid Injection Molding)を採用することもできる。いずれの場合においても、成形型にインサートした内層形成容器4、ICタグ3に、射出圧力、溶融樹脂熱、せん断熱等による変形、結晶化などの変質が発生することなく、外層形成体5を成形できればよい。
【0027】
この後は、成形型からICタグ3の付いた積層容器2を取り出し、ICタグ3に所定の情報を書き込む(ST5:タグ書込工程)。これにより、ICタグ付き積層容器1が得られる。
【0028】
図2は、ICタグ付き積層容器1の製造工程、特に、真空注型成形(ST4:インサートオーバーモールド成形工程)を示す概略フローチャートである。この図を参照して説明すると、真空注型成形においては、予め、外層形成体5のマスタをアクリル樹脂等の材料で製作し(ST41)、これを用いて、シリコーンゴム等の材料で成形型7を製作しておく(ST42)。
【0029】
この成形型7に、ICタグ3を取り付けた内層形成容器4を挿入し(ST43)、成形型7の型閉めを行う(ST44)。型閉めした成形型7を、液状の熱硬化性樹脂を注入するための真空注入炉(図示せず)に入れて、真空注入炉の内部を真空引きする(ST45)。気泡、水分が除去された状態で、液状の熱硬化性樹脂(主材と硬化材からなる2液)を、成形型7に注入する(ST46)。液状の熱硬化性樹脂の注入は、例えば自重注入により行う。
【0030】
この後は、成形型7を真空注入炉から取り出して、樹脂硬化用の加熱炉(図示せず)に成形型7を入れ、注入樹脂を硬化させる(ST47)。例えば、炉内温度を60℃に昇温する。これにより、成形型7内において、内層形成容器4の胴部41、底部42を包み込む状態で外層形成体5が硬化して、2層構造の積層容器2が成形される。硬化温度は低温であることが好ましく、内層形成容器やタグへの熱負荷が低減され使用する材料の選択肢が増える。この後は、加熱炉から成形型7を取り出し、成形型7の型開きを行い、ICタグ付き積層容器2を取り出し、ゲートカット、バリ取り等の後処理を行う(ST48)。この後は、先に述べたように、ICタグ3に必要情報の書き込みを行って、ICタグ付き積層容器1が完成する。
【0031】
真空注型成形においては、外層形成体5の成形が高真空下で行われるので、気泡、ヒケが発生しない。よって、外層形成体5の肉厚の自由度が高まる。また、気泡溜まりができにくく、内外層の密着性が良い。さらに、内外層の間にインサートしたICタグ3は、外層形成体5の成形時に樹脂流動による位置ずれが生じない。なお、内層形成容器の形状は単純な円筒形でなく、扁平形状、各種の幾何学的な形状とすることができ、これに対応するように外層成形体の輪郭形状も各種の形状に成形される。この場合、成形型がシリコーン型であるので、外層成形体の輪郭形状に多少のアンダーカットが付いていても金型とは異なり、無理抜きが可能である。
【0032】
以上説明したように、本例の製造方法によれば、成形型にインサートされた内層形成容器、タグに対して、射出圧力や溶融樹脂熱、せん断熱による変形を生じさせることなく、外層形成体を成形でき、外層形成体の成形時に、内層形成容器に変形防止用の内圧を加える必要がない。また、樹脂流動の影響を受けずに、情報担持用のタグ、加飾用のタグ、製品情報担持用のタグなどのタグ、加飾印刷層、情報担持印刷層、その他の中間体を内外層の間の任意の位置に適切な状態で配置することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ICタグ付き積層容器
2 積層容器
3 ICタグ
4 内層形成容器
5 外層形成体
6 プリフォーム
7 成形型
21 容器胴部
22 容器底部
23 容器口部
41 胴部
42 底部
43 口部
51 胴部
52 底部
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状の内層形成容器と、
前記内層形成容器の胴部および底部を包み込む状態に当該内層形成容器の外表面に積層成形された外層形成体と、
前記内層形成容器と前記外層形成体の間に配置された中間体と、
を備えた積層容器の製造方法であって、
熱可塑性樹脂を用いて、有底筒状の前記内層形成容器を成形する内層形成容器製造工程と、
前記内層形成容器に前記中間体を配置する中間体配置工程と、
前記外層形成体を成形するための成形型に、前記中間体が配置された前記内層形成容器をインサートし、液状の熱硬化性材料を前記成形型に注入して、前記内層形成容器の前記胴部および底部を包み込む状態に前記外層形成体が積層成形された前記積層容器を得るインサートオーバーモールド成形工程と、
を含み、
前記インサートオーバーモールド成形工程では真空注型成形を行い、
当該真空注型成形では、前記内層形成容器がインサートされた前記成形型を真空状態にし、この状態で、液状の前記熱硬化性材料を前記成形型に自重注入し、注入後の前記成形型を所定の温度状態に加熱あるいは加温して前記熱硬化性材料を硬化させることを特徴とする積層容器の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記中間体は、タグおよび前記内層形成容器に形成した印刷層のうちの一方あるいは双方である積層容器の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記内層形成容器製造工程は、
前記熱可塑性樹脂を用いて、有底筒状の内層形成容器のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記プリフォームに二軸延伸ブロー成形を施して前記内層形成容器を得る二軸延伸ブロー成形工程と、
を備えている積層容器の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれか一つの項において、
前記熱可塑性樹脂は、PET(リサイクルPETを含む)、PEF、PP、PEN、TPX、非晶性ポリアミド合成樹脂、PC、コポリエステル樹脂、またはバイオマス系樹脂であり、
前記熱硬化性材料は、硬質、軟質のシリコーン樹脂、またはウレタン樹脂である積層容器の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれか一つの項において、
前記中間体は電子情報を担持したタグである積層容器の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれか一つの項において、
前記中間体配置工程では、前記内層形成容器における前記底部に前記中間体を配置し、
前記インサートオーバーモールド成形工程を経て、前記内層形成容器の前記底部と、前記外層形成体の前記底部との間に前記中間体が配置された前記積層容器が得られる積層容器の製造方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、ICタグ、RFIDタグ、HFタグ(スマートフォンで読取可能)、意匠性、製品情報を備えた加飾用タグ、加飾印刷層やバーコード印刷層、その他の中間体が内部に配置されている積層容器に関し、特に、タグなどの中間体に位置ずれ、破損、損傷が生じることなく積層容器の積層間にタグなどの中間体を配置することのできる積層容器の製造方法に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明の目的は、このような点に鑑みて、タグやその他の中間体が適切な状態で内部に配置可能なインサートオーバーモールド成形による積層容器の製造方法を提案することにある
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、
有底筒状の内層形成容器と、
前記内層形成容器の胴部および底部を包み込む状態に当該内層形成容器の外表面に積層成形された外層形成体と、
前記内層形成容器と前記外層形成体の間に配置された中間体と、
を備えた積層容器の製造方法であって、
熱可塑性樹脂を用いて、有底筒状の前記内層形成容器を成形する内層形成容器製造工程と、
前記内層形成容器に前記中間体を配置する中間体配置工程と、
前記外層形成体を成形するための成形型に、前記中間体が配置された前記内層形成容器をインサートし、液状の熱硬化性材料を前記成形型に注入して、前記内層形成容器の前記胴部および底部を包み込む状態に前記外層形成体が積層成形された前記積層容器を得るインサートオーバーモールド成形工程と、
を含み、
前記インサートオーバーモールド成形工程では真空注型成形を行い、
当該真空注型成形では、前記内層形成容器がインサートされた前記成形型を真空状態にし、この状態で、液状の前記熱硬化性材料を前記成形型に自重注入し、注入後の前記成形型を所定の温度状態に加熱あるいは加温して前記熱硬化性材料を硬化させることを特徴としている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】削除
【補正の内容】