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特開2023-94479防水シート接合装置および防水シート接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094479
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】防水シート接合装置および防水シート接合方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 15/06 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
E04D15/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209985
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000223403
【氏名又は名称】住ベシート防水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩和
(57)【要約】
【課題】防水シート同士の重なり部に対するローラによる転圧を、この防水シートを敷設する床部に段差が形成されていたとしても、優れた精度で実施することができる防水シート接合装置、および、かかる防水シート接合装置を用いた防水シート接合方法を提供すること。
【解決手段】防水シート接合装置1は、液状材料を供給する供給系10と、車体91と、この車体91に回転可能に支持された車輪92Bとを有し、供給系10ごと走行する走行系9とを備え、供給系9により防水シート同士の重なり部に液状材料が供給された後に、走行系9が備えるローラ92Aにより重なり部を転圧するように構成されており、走行系9において、ローラ92Aは、その一端部および他端部で、それぞれ、上下方向に揺動可能に、下方向に向かって付勢されており、一端部および他端部が、独立して上下方向に移動可能となっている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水性を有する防水シートを、溶剤または接着剤を含む液状材料を用いて、躯体としての床面に敷設する際に用いられる防水シート接合装置であって、
前記液状材料を前記防水シートに供給する供給系と、
車体と、該車体が備え回転可能に支持された車輪とを有し、該車輪の回転により前記供給系ごと前進方向に沿って走行する走行系とを備え、
前記防水シートが有する第1防水シートと第2防水シートとを、前記前進方向に沿って、前記第2防水シートを下側として縁部で重ね合わせることで形成された重なり部に前記液状材料を供給することにより、前記第1防水シートと前記第2防水シートとが接合され、
前記供給系により、前記第1防水シートと前記第2防水シートとが重なる前記重なり部に、前記液状材料が供給された後に、前記走行系が備える回転可能に支持されたローラにより、前記液状材料が供給された前記重なり部を、前記第1防水シートの表側から転圧するように構成されており、
前記走行系において、前記ローラは、その一端部および他端部で、それぞれ、上下方向に揺動可能に、下方向に向かって付勢されており、前記一端部および前記他端部が、独立して前記上下方向に移動可能となっていることを特徴とする防水シート接合装置。
【請求項2】
前記走行系は、前記車体に連結された押圧部を有し、
前記押圧部は、前記前進方向に直交する直交方向に並べられ間隙を介して互いに対向して配置された2つの連結板と、2つの前記連結板の間に配置された1つの前記ローラと、2つの前記連結板にそれぞれ連結された2つの連結部材とを有し、
1つの前記ローラは、2つの前記連結板同士の間で、車軸を介して2つの前記連結板に、それぞれ、その一端部と他端部とが回転可能に支持され、
前記連結部材は、付勢部材を備え、これにより、前記ローラの各端部を、それぞれ独立して、上下方向に揺動可能に、下方向に向かって付勢している請求項1に記載の防水シート接合装置。
【請求項3】
前記走行系は、複数の前記押圧部を有し、
複数の前記押圧部は、前記車体の前記重なり部に対応する位置に沿って、並んで配置されている請求項2に記載の防水シート接合装置。
【請求項4】
前記ローラは、前記一端部および前記他端部において、前記車軸が前記連結板に球面軸受けされている請求項2または3に記載の防水シート接合装置。
【請求項5】
前記走行系は、前記車体に連結された押圧部を有し、
前記押圧部は、前記前進方向に直交する直交方向に並べられ間隙を介して互いに対向して配置された2つの連結板と、2つの前記連結板の間に配置された複数の前記ローラと、2つの前記連結板にそれぞれ連結された4つの連結部材とを有し、
複数の前記ローラは、それぞれ、前記前進方向に並べられ、2つの前記連結板同士の間で、車軸を介して2つの前記連結板に、その一端部と他端部とが回転可能に支持され、
2つの前記連結板は、それぞれ、2つの前記連結部材が連結されており、
前記連結部材は、付勢部材を備え、これにより、前記ローラの各端部を、それぞれ独立して、上下方向に揺動可能に、下方向に向かって付勢している請求項1に記載の防水シート接合装置。
【請求項6】
前記走行系は、複数の前記押圧部を有し、
複数の前記押圧部は、前記車体の前記重なり部に対応する位置に沿って、並んで配置されている請求項5に記載の防水シート接合装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の防水シート接合装置を用いて、前記防水シートを接合する接合工程を有することを特徴とする防水シート接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水シート接合装置および防水シート接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の高耐久化が求められるに伴って、多くの建築物の屋上やベランダ等の床部において、防水シートを敷設施工したシート防水構造が採用されている。
【0003】
このシート防水構造では、躯体としての床部に対する防水シートの敷設において、例えば、2枚の防水シートの縁部同士を上下に重ね合わせて、その重なり部を接着剤によって接合した構成をなすものが知られている。
【0004】
防水シート同士の重なり部を接着剤により接合する際に、供給装置を用いて前記重なり部に接着剤を供給することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載の供給装置は、接着剤を貯留するタンクと、タンクに接続され、接着剤が通過するチューブと、チューブの前記タンクと反対側に位置する先端部に接続され、接着剤を前記重なり部に排出(供給)するノズルとを有している。
【0006】
この供給装置では、供給装置を防水シート同士の重なり部に沿って移動させる際に、タンクに貯留された接着剤を、チューブを介して、ノズルの先端から、防水シート同士の重なり部に供給し、その後、上側に位置する防水シートを表側から、供給装置が備えるローラで転圧することで、防水シート同士の重なり部において、防水シート同士が接合される。
【0007】
かかる構成の供給装置では、防水シート同士の重なり部において、防水シート同士を優れた精度で接合させるには、防水シート同士の重なり部に沿った供給装置の移動の際に、防水シート同士の重なり部に対応して、上側に位置する防水シートを表側から、供給装置が備えるローラで安定的に転圧することが求められる。
【0008】
しかしながら、かかる構成の供給装置において、ローラは、一般的に、供給装置が備える車体に対して固定されている。そのため、防水シートを敷設する床部に、凹凸すなわち段差が形成されていると、この段差に対応する位置を供給装置が通過するときに、ローラが、防水シート同士の重なり部において、上側に位置する防水シートの表側から、位置ズレしてしまうことに起因して、防水シート同士を優れた精度で接合するのが技術的に困難であった。
【0009】
また、このような問題は、特許文献1に記載の供給装置を用いて、タンクに貯留された接着剤を、防水シート同士の重なり部に供給する場合に限らず、接着剤に代えて溶剤を液状材料としてタンクに貯留し、この溶剤を防水シート同士の重なり部に供給して、溶剤により防水シート同士を溶着する場合にも、同様に生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実公平05-012027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、防水シート同士の重なり部に対するローラによる転圧を、この防水シートを敷設する床部に段差が形成されていたとしても、優れた精度で実施することができる防水シート接合装置、および、かかる防水シート接合装置を用いた防水シート接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的は、下記(1)~(7)に記載の本発明により達成される。
(1) 防水性を有する防水シートを、溶剤または接着剤を含む液状材料を用いて、躯体としての床面に敷設する際に用いられる防水シート接合装置であって、
前記液状材料を前記防水シートに供給する供給系と、
車体と、該車体が備え回転可能に支持された車輪とを有し、該車輪の回転により前記供給系ごと前進方向に沿って走行する走行系とを備え、
前記防水シートが有する第1防水シートと第2防水シートとを、前記前進方向に沿って、前記第2防水シートを下側として縁部で重ね合わせることで形成された重なり部に前記液状材料を供給することにより、前記第1防水シートと前記第2防水シートとが接合され、
前記供給系により、前記第1防水シートと前記第2防水シートとが重なる前記重なり部に、前記液状材料が供給された後に、前記走行系が備える回転可能に支持されたローラにより、前記液状材料が供給された前記重なり部を、前記第1防水シートの表側から転圧するように構成されており、
前記走行系において、前記ローラは、その一端部および他端部で、それぞれ、上下方向に揺動可能に、下方向に向かって付勢されており、前記一端部および前記他端部が、独立して前記上下方向に移動可能となっていることを特徴とする防水シート接合装置。
【0013】
(2) 前記走行系は、前記車体に連結された押圧部を有し、
前記押圧部は、前記前進方向に直交する直交方向に並べられ間隙を介して互いに対向して配置された2つの連結板と、2つの前記連結板の間に配置された1つの前記ローラと、2つの前記連結板にそれぞれ連結された2つの連結部材とを有し、
1つの前記ローラは、2つの前記連結板同士の間で、車軸を介して2つの前記連結板に、それぞれ、その一端部と他端部とが回転可能に支持され、
前記連結部材は、付勢部材を備え、これにより、前記ローラの各端部を、それぞれ独立して、上下方向に揺動可能に、下方向に向かって付勢している上記(1)に記載の防水シート接合装置。
【0014】
(3) 前記走行系は、複数の前記押圧部を有し、
複数の前記押圧部は、前記車体の前記重なり部に対応する位置に沿って、並んで配置されている上記(2)に記載の防水シート接合装置。
【0015】
(4) 前記ローラは、前記一端部および前記他端部において、前記車軸が前記連結板に球面軸受けされている上記(2)または(3)に記載の防水シート接合装置。
【0016】
(5) 前記走行系は、前記車体に連結された押圧部を有し、
前記押圧部は、前記前進方向に直交する直交方向に並べられ間隙を介して互いに対向して配置された2つの連結板と、2つの前記連結板の間に配置された複数の前記ローラと、2つの前記連結板にそれぞれ連結された4つの連結部材とを有し、
複数の前記ローラは、それぞれ、前記前進方向に並べられ、2つの前記連結板同士の間で、車軸を介して2つの前記連結板に、その一端部と他端部とが回転可能に支持され、
2つの前記連結板は、それぞれ、2つの前記連結部材が連結されており、
前記連結部材は、付勢部材を備え、これにより、前記ローラの各端部を、それぞれ独立して、上下方向に揺動可能に、下方向に向かって付勢している上記(1)に記載の防水シート接合装置。
【0017】
(6) 前記走行系は、複数の前記押圧部を有し、
複数の前記押圧部は、前記車体の前記重なり部に対応する位置に沿って、並んで配置されている上記(5)に記載の防水シート接合装置。
【0018】
(7) 上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の防水シート接合装置を用いて、前記防水シートを接合する接合工程を有することを特徴とする防水シート接合方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、防水シート接合装置を用いて、防水シート同士の重なり部に、溶剤または接着剤を含む液状材料を供給し、その後、上側に位置する防水シートを表側から、供給装置が備えるローラで転圧することで、防水シート同士の重なり部において、防水シート同士が接合する際に、この重なり部に対応する床部に段差が形成されていたとしても、防水シート同士の重なり部に対するローラによる転圧を、優れた精度で実施することができる。したがって、作業者は、防水シート接合装置を用いて、防水シート同士の重なり部において、防水シート同士を優れた精度で接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の防水シート接合装置の第1実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示す防水シート接合装置を図中の矢印A方向である側面視で見た側面図である。
図3図1に示す防水シート接合装置を図中の矢印C方向である正面視で見た正面図である。
図4図1に示す防水シート接合装置を図中の矢印B方向である平面視で見た平面図である。
図5図1に示す防水シート接合装置が備える供給系の構成を示す模式図である。
図6図1に示す防水シート接合装置が備える押圧部を拡大して示す部分拡大側面図である。
図7図1に示す防水シート接合装置が備える押圧部を拡大して示す部分拡大正面図である。
図8】本発明の防水シート接合装置の第2実施形態を示す側面図である。
図9図8に示す防水シート接合装置を正面視で見た正面図である。
図10図8に示す防水シート接合装置が備える押圧部を拡大して示す部分拡大側面図である。
図11図8に示す防水シート接合装置が備える押圧部を拡大して示す部分拡大正面図である。
図12】本発明の防水シート接合装置の第3実施形態が備える押圧部を拡大して示す部分拡大正面図である。
図13】防水シートの施工状態の一例を示す分解斜視図である。
図14】防水シートの施工状態の一例を示す分解斜視図である。
図15図13に示す防水シートの施工状態の他の構成例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の防水シート接合装置および防水シート接合方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0022】
本発明の防水シート接合装置は、防水性を有する防水シートを、溶剤または接着剤を含む液状材料を用いて、躯体としての床面に敷設する際に用いられる防水シート接合装置であって、前記液状材料を前記防水シートに供給する供給系と、車体と、該車体が備え回転可能に支持された車輪とを有し、該車輪の回転により前記供給系ごと前進方向に沿って走行する走行系とを備え、前記防水シートが有する第1防水シートと第2防水シートとを、前記前進方向に沿って、前記第2防水シートを下側として縁部で重ね合わせることで形成された重なり部に前記液状材料を供給することにより、前記第1防水シートと前記第2防水シートとが接合され、前記供給系により、前記第1防水シートと前記第2防水シートとが重なる前記重なり部に、前記液状材料が供給された後に、前記走行系が備える回転可能に支持されたローラにより、前記液状材料が供給された前記重なり部を、前記第1防水シートの表側から転圧するように構成されており、前記走行系において、前記ローラは、その一端部および他端部で、それぞれ、上下方向に揺動可能に、下方向に向かって付勢されている。これにより、前記ローラの前記一端部および前記他端部が、独立して前記上下方向に移動可能となっている。
【0023】
防水シート接合装置を、かかる構成をなすものとすることで、防水シート同士の重なり部に、溶剤または接着剤を含む液状材料を供給し、その後、上側に位置する防水シートを表側から、供給装置が備えるローラで転圧することで、防水シート同士の重なり部において、防水シート同士が接合する際に、この重なり部に対応する床部に段差が形成されていたとしても、ローラは、下方向に向かって付勢された状態で、ローラの一端部および他端部において、それぞれが独立して、車体に対して、上下方向(z軸方向)に揺動し得るため、防水シート同士の重なり部に対するローラによる転圧を、優れた精度で実施することができる。したがって、作業者は、防水シート接合装置を用いて、防水シート同士の重なり部において、防水シート同士を優れた精度で接合することができる。以下、この防水シート接合装置について詳述する。
【0024】
<<防水シート接合装置>>
<第1実施形態>
図1は、本発明の防水シート接合装置の第1実施形態を示す斜視図、図2は、図1に示す防水シート接合装置を図中の矢印A方向である側面視で見た側面図、図3は、図1に示す防水シート接合装置を図中の矢印C方向である正面視で見た正面図、図4は、図1に示す防水シート接合装置を図中の矢印B方向である平面視で見た平面図、図5は、図1に示す防水シート接合装置が備える供給系の構成を示す模式図、図6は、図1に示す防水シート接合装置が備える押圧部を拡大して示す部分拡大側面図、図7は、図1に示す防水シート接合装置が備える押圧部を拡大して示す部分拡大正面図、図13は、防水シートの施工状態の一例を示す分解斜視図、図14は、防水シートの施工状態の一例を示す分解斜視図、図15は、図13に示す防水シートの施工状態の他の構成例を示す分解斜視図である。
【0025】
なお、以下では、説明の都合上、図1図3図5図7および図13図15中の上側を「上(または上方)」または「表側」、下側を「下(または下方)」または「裏側」と言う。また、図1および図13図15中の斜め左下側、図2および図5図6中の左側、図3および図7中の紙面手前側、図4中の下側を「前(または前方)」と言う。また、図1および図13図15中の斜め右上側、図2および図5図6中の右側、図3および図7中の紙面奥側、図4中の上側を「後(または後方)」と言う。また、図1図7に示すように、互いに直交する3軸をx軸、y軸およびz軸とする。また、x軸とy軸を含むxy平面が水平となっており、z軸が鉛直となっている。
【0026】
図1に示す防水シート接合装置1(以下、単に「接合装置」と言うこともある)は、防水性を有する防水シート100を、液状材料としての溶剤Q(可溶性溶剤)または接着剤を用いて、防水シート100の重なり部101において、接合する際に用いられる装置であるが、本実施形態では、溶剤Qを用いて溶着により接合する場合について説明する。
【0027】
また、防水シート100は、躯体に対して敷設(施工)されるが、この躯体としては、特に限定されず、例えば、屋上やベランダ等が挙げられ、この躯体が備える床面(床部)に対して、接合装置1を用いて防水シート100が敷設(施工)される。
【0028】
ところで、接合装置1を用いて、防水シート100同士が縁部において重なる重なり部101で接合して、躯体の床面に敷設される防水シート100の敷設態様としては、特に限定されず、例えば、図13図14に示す態様がある。
【0029】
図13に示す態様では、帯状の防水シート100(以下「防水シート100A」と言うこともある)と、防水シート100Aよりも幅が大きい2枚の防水シート100(以下「防水シート100B」と言うこともある)とを備えている。防水シート100B同士が間を開けて隣り合って、躯体の床面に、敷設されている。防水シート100Aは、防水シート100B同士の間を埋めるように、上側から敷設されている。そして、防水シート100Aと各防水シート100Bとは、縁部が重なることで重なり部101を形成しており、この重なり部101が接合しろとなって、接合装置1を用いて接合されることで、防水シート100が床面に敷設される。すなわち、躯体が備える床面(床部)が防水シート100で被覆され、これにより、躯体の床面に防水が施される。
【0030】
なお、図13に示す態様では、防水シート100Bを、断熱パネル150B、すなわち、いわゆる「塩ビ鋼板」等に代えることもできる。具体的には、図15に示すように、断熱パネル150Bは、隣り合う2つのものが、これら同士の間を開けることなく、縁部同士を突き合わせるようにして配置され、この状態で、母屋160に固定されている。そして、2つの断熱パネル150Bの縁部同士を突き合わせることで形成された境界部151を覆うように、耐火シート155が接合され、さらに、境界部151の耐火シート155が接合された領域を包含するように、防水シート100Aが接合されている。この断熱パネル150B同士の境界部151に対する、耐火シート155を介した防水シート100Aの接合に接合装置1が用いられ、この防水シート100Aの接合により、母屋160に断熱パネル150Bを敷設することで形成された床面に防水が施される。
【0031】
ここで、断熱パネル150Bは、内層がガルバリウム鋼板(登録商標)やステンレス鋼板等の各種鋼板(金属板)や断熱層からなる基板で構成され、最外層が防水シート100Bと同様に防水性を有するシート(防水シート)で構成された防水層(塩ビ層)からなるものである。すなわち、本発明では、基板上に形成された防水層をも、防水シート100B(第2防水シート)と言うこととする。換言すれば、図15に示す態様では、基板上に形成された防水層と、防水シート100Aとの接合に、接合装置1が用いられる。
【0032】
なお、図15に示す、2つの断熱パネル150Bのうちのいずれか一方は、母屋160等の構成によっては、防水シート100Bで構成することもできる。
【0033】
また、図13に示す態様では、2つの防水シート100B同士の間を開けて、2つの防水シート100B同士を隣り合うように配置したが、これに限定されず、図15に示すように、2つの断熱パネル150B(換言すれば防水シート100B)は、これら同士の間を開けることなく、2つの断熱パネル150Bの縁部同士を突き合わせるようにして配置させることもできる。
【0034】
図14に示す態様では、躯体の床面に平行となるように敷設された、防水シート100B同士(以下、上側に位置するものを「防水シート100BA」、下側に位置するものを「防水シート100BB」と言うこともある)が縁部で重なり合うことで重なり部101(重ね合わせ部)を形成している。そして、この重なり部101が接合しろとなって、接合装置1を用いて接合されることで、防水シート100が床面に敷設される。すなわち、躯体が備える床面(床部)が防水シート100で被覆され、これにより、躯体の床面に防水が施される。
【0035】
なお、図14に示す態様では、2つの防水シート100Bのうちの下側の防水シート100BBを、前述した断熱パネル150Bに代えてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、一例として、図14に示す態様の接合に接合装置1を用いる場合について説明する。
【0037】
なお、床面に敷設される防水シート100の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、ポリ塩化ビニルであるのが好ましい。ポリ塩化ビニルは、溶剤溶着性に優れる。そのため、接合装置1から供給される溶剤Qで溶着により防水シート100同士を接合することで、防水シート100同士の密着性を向上させることができる。
【0038】
上記のような、躯体が備える床面に対する防水シート100の敷設に、接合装置1が用いられ、この接合装置1は、図1に示すように、溶剤Qを防水シート100に供給する供給系10と、供給系10ごと走行する走行系9と、を備えている。以下、接合装置1が備える各部の構成について説明する。
【0039】
走行系9は、供給系10ごと走行する車体91と、車体91の下部に回転可能に支持されたローラ92Aを有する押圧部7と、車体91を駆動する駆動部6と、車体91の上部に支持、固定されたハンドル93とを有している。
【0040】
車体91は、フレーム94と、車体91(フレーム94)の下部に回転可能に支持された4つの車輪92Bとを備えている。
【0041】
フレーム94は、天板941を有しており、この天板941単独で、平板状をなすフレーム94を構成している。
【0042】
フレーム94(天板941)には、図1図4に示すように、天板941の4角に、その下側において、2対の車輪92Bが対をなすもの同士が対向するように配置されている。各車輪92Bは、前後方向すなわち±x軸方向に沿って回転可能に天板941に支持されている。そして、各車輪92Bが回転することにより、接合装置1は、供給系10ごと走行することができる。すなわち、後述する駆動部6の駆動により、各車輪92Bを+x軸方向に回転させることで、車体91すなわち接合装置1は、+x軸方向に前進し、各車輪92Bを-x軸方向に回転させることで、車体91は、-x軸方向に後進する。そして、接合装置1の+x軸方向への前進および-x軸方向への後進の際に、対向する車輪92Bは、それぞれ、x軸方向(前進方向)に沿った対をなす車輪走行ラインLkを走行する。より詳しくは、y軸方向において対向する車輪92Bのうち+y軸方向側に位置する車輪92Bは、車輪走行ラインLk1を走行し、-y軸方向側に位置する車輪92Bは、車輪走行ラインLk2を走行する。
【0043】
押圧部7は、本実施形態では、図1図4図6図7に示すように、y軸方向において対向する車輪92B同士の間、すなわち、x軸方向に沿った対をなす車輪走行ラインLk同士の間の位置において、x軸方向(前進方向)に沿った状態で、並んで合計5つ車体91に連結されている。
【0044】
また、各押圧部7は、y軸方向(前進方向に直交する直交方向)に並べられ間隙を介して互いに対向して配置された2枚(2つ)の側板71(連結板)と、2枚の側板71の間に配置された1つのローラ92A(押圧ローラ)と、2枚の側板71にそれぞれ連結された2つの連結部材72とを有している。
【0045】
押圧部7において、ローラ92Aは、2枚の側板71同士(第1ローラ指示部材および第2ローラ支持部材)の間で、車軸(回転軸)を介して2枚の側板71に、それぞれ、その一端部と他端部とが回転可能に支持されている。そして、2つの側板71の上端において、それぞれ連結された2つの連結部材72(第1連結部材および第2連結部材)が、車体91が有する天板941に連結されることで、ローラ92Aが、連結部材72を介した状態で、車体91(天板941)に対して回転可能に支持されている。
【0046】
このローラ92Aは、その幅が重なり部101の幅を包含し得る大きさに設定されており、車体91すなわち接合装置1の走行により、車輪92Bが回転するとともに、このローラ92Aも回転する。したがって、例えば、後述する駆動部6の駆動により、車体91を+x軸方向に前進させた場合には、各車輪92Bが+x軸方向に回転し、さらに、ローラ92Aも同様に+x軸方向に回転する。また、車体91を-x軸方向に後進させた場合には、各車輪92Bが-x軸方向に回転し、さらに、ローラ92Aも同様に-x軸方向に回転する。そして、車体91の+x軸方向への前進および-x軸方向への後進の際に、ローラ92Aは、対向する車輪92Bが走行する対をなす車輪走行ラインLk同士の間において、x軸方向に沿ったローラ走行ラインLsを走行する。このローラ92Aが走行する位置が、防水シート100BBと防水シート100BAとが縁部において重なることで形成された重なり部101に対応しており、後述する供給系10が備えるノズル5から溶剤Qが供給された後に、この重なり部101を、ローラ92Aにより、防水シート100BAの表側から転圧することで、防水シート100BAと防水シート100BBとを接合することができる。
【0047】
また、かかる構成をなすローラ92Aは、押圧部7において、2枚の側板71(第1ローラ指示部材および第2ローラ支持部材)の間に配置された状態で、2つの側板71に、それぞれ、ローラ92Aの一端部と他端部とが回転可能に連結され、さらに、これら2つの側板71にそれぞれ連結された2つの連結部材72(第1連結部材および第2連結部材)を介して、フレーム94(天板941)に連結されている。
【0048】
2つの連結部材72(第1連結部材および第2連結部材)は、それぞれ、天板941に対して上下方向(z軸方向)に摺動可能に連結された軸部74(第1軸部材および第2軸部材)と、コイル状(ばね状)とされ、天板941の下側において、内側に軸部74が挿通された付勢部材としてのコイル部73(第1ばねおよび第2ばね)とを有している。そして、軸部74は、天板941に対して、コイル部73のばね力に抗した状態で連結されている。
【0049】
かかる構成をなす、付勢部材を備える連結部材72により、押圧部7において、2つの連結部材72が備えるコイル部73(第1ばねおよび第2ばね)が独立して伸縮することで、フレーム94(天板941)に対してローラ92Aを、その一端部および他端部(各端部)で、それぞれ独立して、上下方向(z軸方向)に揺動可能に、下方向(-z軸方向)に向かって付勢することができる(図2図3図6図7参照)。
【0050】
したがって、押圧部7において、ローラ92Aは、その一端部および他端部で、それぞれ、天板941(車体91)に対して、上下方向(z軸方向)に揺動可能に、下方向(-z軸方向)に向かって付勢される。よって、押圧部7が備えるローラ92Aで防水シート100BAを、その表側から転圧することで防水シート100BAと防水シート100BBとを接合する際に、付勢力が異なるコイル部73を軸部74に挿通することで、防水シート100BAに掛かる荷重の大きさを所望の大きさに設定することができる。
【0051】
また、防水シート100BAと防水シート100BBとを接合する際に、防水シート100を敷設する床部に凹凸すなわち段差がたとえ形成されていたとしても、ローラ92Aの一端部および他端部において、それぞれが独立して、天板941(車体91)に対して、上下方向(z軸方向)に揺動(移動)し得るため、ローラ92Aを、この凹凸の形状に対応して追従させることができる。したがって、ローラ92Aがこの凹凸を乗り越えて、床部の凹凸が形成されている位置に対応する防水シート100においても、重なり部101における、防水シート100BAと防水シート100BBとの接合を、確実に実施することができる。すなわち、防水シート100B同士の重なり部101に対するローラ92Aによる転圧を、優れた精度で実施することができる。
【0052】
さらに、図2図6に示す通り、1つのローラ92Aを備える押圧部7は、それぞれ独立して、x軸方向(前進方向)に沿った状態で、並んで合計5つ車体91に連結されている。このように、凹凸の形状に対応して追従することができるローラ92Aが1つの押圧部7に対応して1つ設けられ、複数(本実施形態では5つ)の押圧部7が独立してx軸方向に沿って車体91に連結されている。そのため、各ローラ92Aは、x軸方向に隣接するローラ92Aに対して、影響することなく、独立して凹凸の形状に対応して追従することができる。よって、防水シート100BAと防水シート100BBとの接合を、より優れた精度で実施することができる。
【0053】
なお、車体91(フレーム94)に配置される押圧部7の配置数、すなわち、ローラ92Aの配置数は、図2等に示す構成では、+x軸方向に沿って、すなわち、ローラ走行ラインLsに沿って5つであるが、5つより多くても少なくてもよく、その数に限定されず、1つであってもよい。ただし、本実施形態のように、複数設けることで、防水シート100BAと防水シート100BBとの接合を、より確実に実施することができる。
【0054】
駆動部6は、車体91に連結して設けられ、駆動源60と、力伝達部80とを有しており、駆動源60により発生させた力を、力伝達部80により、車体91に伝達することで、車体91を駆動させる。すなわち、駆動部6の作動による車体91の駆動により、接合装置1を、+x軸方向に沿って前進、または-x軸方向に沿って後進させる。
【0055】
駆動源60は、車体91を駆動する力(動力)を発生させるものであり、この動力を発生し得るものであればいかなる構成のものであってもよく、例えば、エンジン、モーター等を用いることもできるが、本実施形態では、図1~4に示すように、モーターを備える工作機器としての電動ドライバーが車体91上に着脱自在に配置されている。
【0056】
駆動源60(電動ドライバー)は、図1図4に示すように、本体部61と、本体部61に収容されたモーターと、本体部61から突出して設けられ、モーターの回転軸の軸回りに回転動作するチャック62とを有している。
【0057】
本体部61は、把持部63を備え、この把持部63には、電源のオンとオフとを切り替える電源スイッチ、モーターひいてはチャック62の回転方向を切り替える回転スイッチ、モーターひいてはチャック62の速度を切り替えるレバー(速度調整スイッチ)がそれぞれ設けられている。
【0058】
また、本体部61は、本体部61に着脱自在に装着されたバッテリーを電源とするモーターを、本体部61が有する筐体に内蔵しており、電源スイッチをオンにすることによりモーターを駆動し、電源スイッチをオフにすることによりモーターを停止させることができる。また、回転スイッチの操作により、モーターが回転する回転方向を順回転と逆回転とに切り替えることができる。さらに、レバーの操作により、モーターが回転する速度を調整することができる。すなわち、各種スイッチの操作により、モーターを所望の回転方向および速度で回転させることができる。
【0059】
チャック62は、本体部61から突出して設けられ、本体部61に内蔵されたモーターが備える回転軸に連結されることで、モーターと同一の軸回りに回転動作するように構成されている。
【0060】
そして、チャック62には、力伝達部80が備えるビット81が着脱自在に装着されており、これにより、モーターの回転により発生した回転力(力)が、力伝達部80に伝達される。
【0061】
かかる構成をなす駆動源60(電動ドライバー)において、電源スイッチをオンにすると、モーターが備える回転軸が回転することに起因して、回転軸に連結されたチャック62がモーターと同一の軸回りに回転することから、チャック62に装着された、力伝達部80が備えるビット81も同様に、モーターと同一の軸回りに回転する。
【0062】
力伝達部80は、図3等に示すように、シャフトの先端に傘歯車を備え、このシャフト側においてチャック62に装着されたビット81と、ビット81が備える傘歯車に噛み合い係合して、縦軸の回転運動を横軸に変換する傘歯車82と、傘歯車82と同心的に連結、固定されたプーリ83と、フレーム94の前方の2つの角にそれぞれ配置された2つの車輪92Bに対応して設けられた1つの車軸86と、車輪92Bの途中に同心的に連結、固定されたプーリ85と、プーリ83とプーリ85とに掛け回されたタイミングベルト84とを有しており、チャック62側から車輪92B側に対して、ビット81、傘歯車82、プーリ83、タイミングベルト84、プーリ85および車軸86の順で配置されている。
【0063】
これにより、駆動源60(電動ドライバー)が備えるチャック62に装着されたビット81と、車体91が備える車輪92Bとは、傘歯車、プーリ、タイミングベルトおよび車軸を介して、連結された状態となっている。なお、力伝達部80が有する傘歯車、プーリおよびタイミングベルトの設置数は、本実施形態での設置数に限定されない。
【0064】
そして、駆動源60(電動ドライバー)において、電源スイッチをオンにすると、前述の通り、チャック62の回転により、このチャック62に装着されたビット81が回転する。このビット81により、ビット81が備える傘歯車は、縦軸の回転運動で回転する(図3参照)。縦軸の回転運動で回転するビット81の回転力は、ビット81の傘歯車が傘歯車82に噛み合い係合していることから、傘歯車82には、横軸の回転運動で回転する回転力に変換されて伝達される。これにより、プーリ83は、傘歯車82と同心的に連結されているため、傘歯車82とともに、横軸の回転運動で回転する。したがって、プーリ83の回転力は、タイミングベルト84を介して、プーリ85に、横軸の回転運動を維持して、伝達される。そして、プーリ85には、車軸86を介して、同心的に車輪92Bが連結されているため、車輪92Bは、プーリ85と同様に、横軸の回転運動で回転する。
【0065】
このように、駆動源60(電動ドライバー)において、発生させたモーターの回転力(動力)は、力伝達部80を介して、横軸の回転運動で回転する回転力として、車輪92Bに伝達される。よって、駆動源60(電動ドライバー)が備える回転スイッチの切り替えにより、車輪92Bが回転する回転方向を順回転と逆回転との任意に選択し得ることから、車体91すなわち接合装置1を、その自走により、選択的に前進または後進させることができる。さらに、駆動源60(電動ドライバー)が備えるレバー(速度調整スイッチ)の切り替えにより、車輪92Bが回転する速度を調整し得ることから、車体91すなわち接合装置1の速度を所望の速さに設定することができる。
【0066】
以上のように、接合装置1は、作業者の手動により接合装置1を前進させるのではなく、駆動部6の作動により、自走して+x軸方向に前進し、駆動部6が前述したような構成をなすことから、接合装置1を設定された速度を維持して安定的に走行(前進)させることができる。したがって、押圧部7が備えるローラ92Aの防水シート100BAに対する転圧による、防水シート100BAと防水シート100BBとの接合を、優れた精度で実施することができる。
【0067】
また、本実施形態では、駆動源60として、エンジンやモーター等を用いることなく、電動ドライバーを用いていることから、この電動ドライバーを接合装置1から離脱させ、ビット81に代えて各種の加工ビット(加工具)をチャック62に装着することで、電動ドライバーを各種の工作作業にも用いることができる。さらに、接合装置1が備える駆動源60として、既存の電動ドライバーを転用していることから、接合装置1を安価に製造することができる。
【0068】
ハンドル93は、車体91におけるフレーム94の後ろ側の2隅から、それぞれ、上方に向かって突出した2つのポール96に支持、固定されている。防水シート100の接合作業を行なう作業者は、ハンドル93を把持して、その状態で、駆動部6の駆動により、接合装置1を+x軸方向に前進させたり、または、接合装置1を-x軸方向に後進させたりする操作を行うことができる。
【0069】
また、ハンドル93には、以下で説明する供給系10が備えるレバー44が設けられている。このレバー44の作業者による操作により、接合装置1を+x軸方向に前進させて、重なり部101において防水シート100B同士を接合する際に、この重なり部101に対して、溶剤Qを供給することができる。
【0070】
供給系10は、走行系9が備える車体91に搭載され、走行系9とともに走行しつつ、防水シート100、より具体的には防水シート100B同士が重なる重なり部101に溶剤Qを供給する構造体である。
【0071】
供給系10は、図5等に示すように、溶剤Qを貯留する貯留部2と、貯留部2に連通し、貯留部2からの溶剤Qが通過する流路31と、流路31に連通し、流路31を通過した溶剤Qを防水シート100B同士が重なる重なり部101に供給(吐出)するノズル5と、ノズル5から吐出させる溶剤Qの流量を調整する流量調整部41と、流路31における溶剤Qの通過を開閉する開閉弁43と、流路31を介して貯留部2内の溶剤Qをノズル5側に向かって送り出すエアタンク48と、貯留部2とエアタンク48とに連通し、エアタンク48から貯留部2に供給する空気が通過する流路32と、貯留部2に供給する空気の供給量を調整する供給量調整部47とを有し、エアタンク48、供給量調整部47、貯留部2、流量調整部41、開閉弁43およびノズル5が、この順で、エアタンク48と供給量調整部47と貯留部2とが流路32を介して連通され、貯留部2と流量調整部41と開閉弁43とノズル5とが流路31を介して連通された状態で、配置されている。
【0072】
かかる構成をなす供給系10が備える各部が、走行系9が備える車体91上に配置されている。以下、この供給系10を構成する各部について説明する。
【0073】
貯留部2は、本実施形態では、図1に示すように、円筒状をなすタンク(溶剤タンク)で構成されている。
【0074】
この貯留部2は、天板941上に配置された、後述する開閉弁43に、流量調整部41および流路31を介して、その上方で固定されており、これにより、車体91上に配置されている。
【0075】
貯留部2には、重なり部101に供給されることで、重なり部101で防水シート100B同士(防水シート100BAと防水シート100BBと)を溶着させるために用いられる、溶剤Qが貯留されている。この溶剤Qとしては、特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ニトロベンゼン、四塩化炭素、ピリジン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン類、トルエン、メチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、テトラヒドロフランであることが好ましい。テトラヒドロフランは、揮発性に優れ、各種樹脂材料が溶解性を示す。そのため、防水シート100B同士を溶着させるために用いる溶剤として好ましい。
【0076】
この貯留部2には、その底部(下端)においてノズル5に連通する流路31の一端(基端)が連結され、また、その頂部(上端)においてエアタンク48に連通する流路32の他端(先端)が連結されており、流路32を介したエアタンク48からの貯留部2に対する空気の供給により、貯留部2に貯留された溶剤Qが流路31を介してノズル5に供給されるように構成されている。
【0077】
流路31(第1流路)は、貯留部2の底部、流量調整部41、開閉弁43およびノズル5に、液密的に接続されており、これにより、車体91上に配置されている。
【0078】
この流路31は、貯留部2とノズル5とに、それぞれ、その一端と他端とが接続され、これにより、貯留部2に貯留された溶剤Qがノズル5に供給される。
【0079】
また、流路31は、溶剤Qが通過する金属製または樹脂製のパイプで一部または全部を構成することができる。
【0080】
なお、流路31は、複数本のパイプが継手を介して接続されたものであってもよいし、1本のパイプで構成されていてもよい。また、パイプは、その長手方向の途中が1箇所または複数箇所で屈曲または湾曲していてもよい。
【0081】
ノズル5は、流路31の他端(先端)、すなわち貯留部2と反対側の先端部に、液密的に接続されており、これにより、車体91上に配置されている。
【0082】
このノズル5は、本実施形態では、偏平形状をなす金属製の中空体で構成され、その基端側において、流路31に連通し、また、図5に示すように、その先端側において、後方、すなわち、-x軸方向側に向かって開口し、流路31を通過した溶剤Qを、防水シート100B同士の重なり部101に吐出する吐出口51を有している。そして、吐出口51から吐出された溶剤Qは、防水シート100B同士、すなわち防水シート100BAと防水シート100BBとの接合に供される。なお、ノズル5は、xy平面と平行に-y軸方向側に向かって突出している。
また、ノズル5には、当該ノズル5を補強する補強材が設けられていてもよい。
【0083】
さらに、ノズル5の吐出口51から吐出される溶剤Qは、吐出口51の形状、供給量調整部47における空気の供給量、流量調整部41における溶剤Qの流量等を適宜設定することで、滝状、液滴状、霧状等のいずれの形態をなしていてもよい。
【0084】
そして、図1、5に示すように、ノズル5は、溶剤Qを吐出する際には、防水シート100Bの幅方向の一方側、すなわち、+y軸方向側から、上側の防水シート100BAの裏側(防水シート100BAと防水シート100BBとの間)に挿入される。
【0085】
供給系10は、このようなノズル5を有し、このノズル5から溶剤Qを吐出することで、防水シート100B同士の重なり部101に溶剤Qが供給される。
【0086】
なお、供給系10が有するノズル5の設置数は、本実施形態では、1つであるが、これに限定されず、例えば、2つ以上であってもよい。
【0087】
流量調整部41は、天板941上に配置された、後述する開閉弁43に流路31を介して、その上方で固定されており、これにより、車体91上に配置されている。また、流量調整部41は、貯留部2とノズル5との途中に、流路31に連結して設けられている。
【0088】
この流量調整部41は、例えば、可変絞り弁で構成される。これにより、流量調整部41は、絞り開度を変えることによって、流路31を通過する溶剤Qの流量を無段階に調整することができる。このような流量調整部41により、ノズル5から溶剤Qを過不足なく適量で供給することができる。
【0089】
なお、流量調整部41は、手動操作により溶剤Qの流量調整を行うよう構成されていてもよいし、または、例えば溶剤Qの粘度等の諸条件に基づいて自動的に溶剤Qの流量調整を行うよう構成されていてもよい。
【0090】
また、本実施形態では、貯留部2と流量調整部41との間には、流路31に連結して、ドレイン46が設けられている。これにより、流路31に気泡が混入した場合には、このドレイン46を介して、この気泡を除去することができる。また、溶剤Qの交換の際には、貯留部2に貯留されている、不要となった溶剤Qを、ドレイン46から抜き取ることができる。
【0091】
開閉弁43は、天板941上に固定されており、これにより、車体91上に配置されている。また、開閉弁43は、流量調整部41とノズル5との途中に、流路31に連結して設けられている。
【0092】
この開閉弁43は、例えば、絞り弁で構成され、図1等に示すように、ハンドル93に設けられたレバー44に、ワイヤー45を介して接続されており、レバー44の操作により、開閉弁43を開閉できるように構成されている。これにより、防水シート100の接合作業を行なう作業者によるレバー44の操作によって、ノズル5からの重なり部101に対する溶剤Qの供給のオン/オフを、切り替えることができる。
【0093】
エアタンク48は、天板941上に固定されており、これにより、車体91上に配置されている。
【0094】
このエアタンク48は、円筒状をなすタンクからなり、空気を供給し得るコンプレッサー(図示せず)を連結し得るよう構成されており、接合装置1による防水シート100B同士の接合に先立って、コンプレッサーを用いて、機械的に圧縮された空気(圧縮空気)が装填されている。なお、このコンプレッサーとしては、自動または手動のもののいずれであってもよい。また、手動のものとし、その重量が軽量である場合には、このコンプレッサーを、エアタンク48に内蔵させてもよい。
【0095】
このエアタンク48には、貯留部2の頂部に連通する流路32の一端(基端)が連結されており、圧縮された空気を、流路32を介して貯留部2に供給することで、貯留部2に貯留された溶剤Qを、貯留部2の底部に連通された流路31を介して、貯留部2から押し出すことができる。したがって、エアタンク48による、流路32を介した、貯留部2に対する空気の供給により、貯留部2に貯留された溶剤Qを、流路31を介して、ノズル5から吐出させることができる。このように、エアタンク48に圧縮された空気が装填(充填)されており、このエアタンク48に装填された空気の圧縮力を用いて、貯留部2に貯留された溶剤Qがノズル5から吐出される構成をなしている。そのため、ノズル5からの溶剤Qの吐出を、貯留部(タンク)とノズルとの高低差を利用したサイフォン原理により実施している装置構成を採用している接合装置のように、貯留部を配置させる位置に制約を受けることがない。したがって、本発明では、貯留部2を、フレーム94(天板941)上の任意の位置に配置させ得ることから、接合装置1を製造する際の設計の幅が広がる。
【0096】
流路32(第2流路)は、貯留部2の頂部、供給量調整部47およびエアタンク48に、気密的に接続されており、これにより、車体91上に配置されている。
【0097】
この流路32は、エアタンク48と貯留部2とに、それぞれ、その一端と他端とが接続され、これにより、エアタンク48に圧縮された状態で装填された空気が貯留部2に供給される。
【0098】
また、流路32は、空気が通過する金属製または樹脂製のパイプで一部または全部を構成することができる。
【0099】
なお、流路32は、流路31と同様に、複数本のパイプが継手を介して接続されたものであってもよいし、1本のパイプで構成されていてもよい。
【0100】
供給量調整部47は、天板941上に固定されており、これにより、車体91上に配置されている。また、供給量調整部47は、貯留部2とエアタンク48との途中に、流路32に連結して設けられている。
【0101】
この供給量調整部47は、例えば、可変絞り弁で構成される。これにより、供給量調整部47は、絞り開度を変えることによって、流路32を通過する空気の流量を無段階に調整することができる。このような供給量調整部47により、エアタンク48から貯留部2に対して空気を過不足なく適量で供給することができる。
【0102】
なお、供給量調整部47は、手動操作により空気の供給量調整を行うよう構成されていてもよいし、または、例えば空気により押し出す溶剤Qの粘度等の諸条件に基づいて自動的に空気の供給量調整を行うよう構成されていてもよい。
【0103】
また、貯留部2と供給量調整部47との間には、流路32に連結して、逆止弁および手動弁のうちの何れか一方が設けられていてもよい。逆止弁を設けることで、溶剤Qの貯留部2からエアタンク48への逆流を防止することができる。また、手動弁を設けることで、接合装置1の停止時に、作業者が不本意にレバー44を操作したとしても、溶剤Qがノズル5から吐出されるのを確実に防止することができる。
【0104】
かかる構成をなす供給系10において、接合装置1による防水シート100B同士の接合に先立って、コンプレッサーを用いて、エアタンク48には、圧縮された空気が装填される。また、供給量調整部47によるエアタンク48から貯留部2への空気の供給量調整、および、流量調整部41による貯留部2からノズル5への溶剤Qの流量調整が行われており、これにより、作業者によるレバー44の操作により、開閉弁43が開かれた際に、適切な供給量で、貯留部2に貯留された溶剤Qがノズル5から吐出されるように調整されている。すなわち、かかる構成をなす供給系10によれば、供給量調整部47および流量調整部41による調整により、ノズル5から吐出される溶剤Qの供給量を、所望の量に設定し得ることから、この供給量を、防水シート100B同士の接合に適切な量に確実に設定することができる。したがって、重なり部101において防水シート100Bを確実に溶融状態とするために、重なり部101に無駄な量の溶剤Qが大量に供給されるのを的確に抑制または防止し得ることから、経済的さらには環境的な面において望ましい。
【0105】
そして、接合装置1により防水シート100B同士を接合させる際に、接合装置1を+x軸方向に沿って前進させつつ、作業者によるレバー44の操作により、開閉弁43を開くことで、エアタンク48と貯留部2とノズル5とが、流路31、32を介して、連通される(図5参照)。このとき、エアタンク48には、圧縮された空気が装填されているため、この空気が流路32を介して、供給量調整部47により適切な供給量に調整された状態で、貯留部2の頂部から、その内部に供給される。この貯留部2への空気の供給により、貯留部2において、貯留された溶剤Qが、貯留部2の外側、すなわち、貯留部2の底部に連結されている流路31側に押し出される。その結果、流路31を介して、流量調整部41により適切な流量に調整された溶剤Qが、ノズル5から吐出され、重なり部101において防水シート100Bを溶融状態とすることができる。
【0106】
そして、車体91の進行方向において、ノズル5は、各ローラ92Aよりも前方に位置している。そのため、重なり部101において防水シート100Bを溶融状態とした後、すなわち、供給系10によりノズル5を介して溶剤Qが供給された後に、防水シート100B同士が、重なり部101において、走行系9が備えるローラ92Aにより、その表側から転圧される(図1図2等参照)。
【0107】
この転圧により、溶剤Qの供給により溶融した防水シート100B同士が、重なり部101において、接合されることとなる。その結果、重なり部101における、防水シート100BAと防水シート100BBとの間の防水性が確保されることとなる。以上のような接合装置1を用いた、ノズル5を介した重なり部101への溶剤Qの供給と、この溶剤Qの供給の後のローラ92Aによる防水シート100Bの転圧とにより、接合装置1を用いて防水シート100を接合することができ、これら溶剤Qの供給と、防水シート100Bの転圧とで、接合装置1を用いた接合工程(防水シート接合方法)が構成される。なお、接合工程の終了後、ノズル5が防水シート100B同士の間から抜去される。
【0108】
また、上記のような接合装置1を用いた重なり部101における防水シート100B同士の接合では、図1図4に示すように、走行系9において、押圧部7が備えるローラ92Aは、重なり部101上に沿って、防水シート100BA(第1防水シート)の表側が転圧されるローラ走行ラインLsを走行し、供給系10において、車体91が搭載する貯留部2は、ローラ走行ラインLsとは異なる、ローラ走行ラインLsと平行をなす車輪走行ラインLkを走行する。
【0109】
そして、異なるラインLs、Lkを走行する車体91と押圧部7とが、押圧部7が備える連結部材72を介して接合され、この連結部材72により、押圧部7が車体91(天板941)に対して、上下方向(z軸方向)に揺動可能に、かつ、下方向(-z軸方向)に向かって付勢されている。これにより、押圧部7が備えるローラ92Aで防水シート100BAを、その表側から転圧する際の荷重の大きさを所望の大きさに設定することができる。したがって、押圧部7が備えるローラ92Aにより防水シート100Bにかかる荷重をA[N]とし、車体91が搭載する貯留部2を備える供給系10により防水シート100Bにかかる荷重をB[N]としたとき、A<Bなる関係を満足し得るように構成されている。
【0110】
そのため、重なり部101において、防水シート100BAの表側からローラ92Aで転圧する際に、例えば、貯留部2に満量の溶剤Qが貯留されて、車体91の自重が大きくなったとしても、押圧部7が備えるローラ92Aにより、重なり部101に大きな荷重が付与されるのを、確実に防止して、ローラ92Aにより防水シート100Bにかかる荷重Aを防水シート100B同士の接合に適切な大きさに設定することができる。よって、重なり部101における防水シート100B同士の接合の際に、重なり部101に位置する防水シート100Bにシワが生じるのを的確に抑制または防止して、防水シート100B同士を優れた精度で接合することができる。
【0111】
なお、本実施形態では、供給系10が流量調整部41と供給量調整部47との双方を有している場合について説明したが、この場合に限定されず、供給系10は、流量調整部41と供給量調整部47とのうちいずれか一方が省略されたものであってもよい。ただし、本実施形態のように、供給系10を、流量調整部41と供給量調整部47との双方を有する構成とすることで、ノズル5から吐出される溶剤Qの吐出量をより優れた精度で調整することが可能となる。
【0112】
<第2実施形態>
図8は、本発明の防水シート接合装置の第2実施形態を示す側面図、図9は、図8に示す防水シート接合装置を正面視で見た正面図、図10は、図8に示す防水シート接合装置が備える押圧部を拡大して示す部分拡大側面図、図11は、図8に示す防水シート接合装置が備える押圧部を拡大して示す部分拡大正面図である。
【0113】
以下、この図を参照して本発明の防水シート接合装置の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0114】
本実施形態は、走行系9が備える押圧部7の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0115】
すなわち、図8図11に示すように、押圧部7は、本実施形態では、複数のローラ92Aを備えており、各ローラ92Aは、間隔を空けて、x軸方向(前進方向)に沿って並んだ状態で、2枚の側板71に、それぞれ、ローラ92Aの一端部と他端部とが回転可能に連結されている。換言すれば、本実施形態では、1つの押圧部7において、複数のローラ92Aが設けられている。なお、図8では、前方に位置する押圧部7が8つのローラ92Aを備えており、後方に位置する押圧部7が9つのローラ92Aを備えている場合について記載している。
【0116】
そして、これら2つの側板71は、合計4つの連結部材72を介して、天板941に連結されており、より詳しくは、側板71は、図10図11に示すように、1つの側板71において、その上側の前方側および後方側の隅部に対応して、連結部材72が連結されることで、1つの側板71に対して2つの連結部材72が連結されている。
【0117】
このように、押圧部7を、2つ(一対)の側板71の間で、複数のローラ92Aが回転可能に連結された構成のものとした場合においても、連結部材72が備えるコイル部73が伸縮することで、フレーム94に対してローラ92Aを、その一端部および他端部で、それぞれ独立して、上下方向(z軸方向)に揺動可能に、下方向(-z軸方向)に向かって付勢することができる。
【0118】
また、図8に示す通り、複数のローラ92Aを備える押圧部7は、それぞれ独立して、x軸方向(前進方向)に沿った状態で、並んで合計2つ車体91に連結されている。このように、凹凸の形状に対応して追従することができるローラ92Aが1つの押圧部7に対応して複数(本実施形態では、前方のものに8つ、後方のものに9つ)設けられ、複数(本実施形態では2つ)の押圧部7が独立してx軸方向に沿って車体91に連結されている。押圧部7をかかる構成をなすものとすることによっても、各ローラ92Aは、x軸方向に隣接するローラ92Aに対して、ほぼ影響することなく、独立して凹凸の形状に対応して追従することができる。よって、防水シート100BAと防水シート100BBとの接合を、優れた精度で実施することができる。
【0119】
さらに、複数のローラ92Aを備える押圧部7では、前方に位置する押圧部7と後方に位置する押圧部7とにおいて、複数のローラ92A(ローラ群)により、防水シート100BAに掛かる荷重の大きさ(押圧力)は、前方に位置する押圧部7よりも後方に位置する押圧部7の方が大きく設定されているのが好ましく、具体的には、前方に位置する押圧部7により防水シート100BAに掛かる押圧力が2kg/押圧部であり、後方に位置する押圧部7により防水シート100BAに掛かる押圧力が5kg/押圧部であることが好ましい。これにより、重なり部101における、防水シート100BAと防水シート100BBとの接合が、前方に位置する押圧部7により仮接合がなされ、その後、後方に位置する押圧部7により本接合がなされることとなる。そのため、防水シート100BAと防水シート100BBとの接合を、より優れた強度で実施することができる。
【0120】
なお、押圧部7が備えるローラ92Aの数は、本実施形態では、前方において8つ、後方において9つであるが、2つ以上であれば、これに限定されず、それぞれ、8つ未満であっても8つ超であってもよいし、9つ未満であっても9つ超であってもよい。さらに、1つの側板71において、2つの連結部材72が連結されているが、これに限定されず、2つ以上であれば、それ以上の数の連結部材72が連結されていてもよい。
【0121】
このような第2実施形態の防水シート接合装置1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0122】
<第3実施形態>
図12は、本発明の防水シート接合装置の第3実施形態が備える押圧部を拡大して示す部分拡大正面図である。
【0123】
以下、この図を参照して本発明の防水シート接合装置の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0124】
本実施形態は、走行系9が備える押圧部7の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0125】
すなわち、図12に示すように、本実施形態では、ローラ92Aが備える車軸(回転軸)の一端部と他端部とがともに球面で構成され、また、2枚の側板71(連結板)が、それぞれ、球面軸受け711を備えており、車軸の一端部と他端部とが、それぞれ、各側板71の球面軸受け711に当接して固定されている。これにより、押圧部7において、ローラ92Aは、その一端部と他端部とで、それぞれ、各側板71(連結板)に車軸が球面軸受けされている。
【0126】
このように、ローラ92Aの各端部において、それぞれ、各側板71(連結板)に車軸が球面軸受けされることで、連結部材72が備えるコイル部73の伸縮により、ローラ92Aが上下方向(±z軸方向)に揺動する際に、ローラ92Aを前後方向(±x軸方向)にも揺動させることが可能となる。すなわち、ローラ92Aの揺動(移動)の自由度が高くなっている。
【0127】
したがって、防水シート100BAと防水シート100BBとを接合する際に、防水シート100を敷設する床部に凹凸すなわち段差がたとえ形成されていたとしても、ローラ92Aを、この凹凸をより確実に乗り越えさせることができる。そのため、床部の凹凸が形成されている位置に対応する防水シート100においても、重なり部101における、防水シート100BAと防水シート100BBとの接合を、より確実に実施することができる。すなわち、防水シート100B同士の重なり部101に対するローラ92Aによる転圧を、より優れた精度で実施することができる。
【0128】
このような第3実施形態の防水シート接合装置1によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0129】
以上、本発明の防水シート接合装置および防水シート接合方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。また、防水シート接合装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0130】
例えば、接合装置1は、液状材料として溶剤Qを貯留部2に貯留し、これにより、ノズル5から防水シート100B同士の間に溶剤Qを供給することとしたが、溶剤Qに代えて液状材料として接着剤を、防水シート100B同士の間に供給して、防水シート100B同士を接合するようにすることもできる。
【0131】
また、本発明では、前記第1~第3実施形態で示した任意の2以上の構成を組み合わせるようにしてもよい。
【0132】
さらに、本発明の防水シート接合方法では、任意の目的で、1以上の工程を追加することができる。
【符号の説明】
【0133】
1 防水シート接合装置
2 貯留部
5 ノズル
6 駆動部
7 押圧部
9 走行系
10 供給系
31 流路
32 流路
41 流量調整部
43 開閉弁
44 レバー
45 ワイヤー
46 ドレイン
47 供給量調整部
48 エアタンク
51 吐出口
60 駆動源
61 本体部
62 チャック
63 把持部
71 側板
72 連結部材
73 コイル部
74 軸部
80 力伝達部
81 ビット
82 傘歯車
83 プーリ
84 タイミングベルト
85 プーリ
86 車軸
91 車体
92A ローラ
92B 車輪
93 ハンドル
94 フレーム
96 ポール
100 防水シート
100A 防水シート
100B 防水シート
100BA 防水シート
100BB 防水シート
101 重なり部
150B 断熱パネル
151 境界部
155 耐火シート
160 母屋
711 球面軸受け
941 天板
A 矢印
B 矢印
C 矢印
Lk 車輪走行ライン
Lk1 車輪走行ライン
Lk2 車輪走行ライン
Ls ローラ走行ライン
Q 溶剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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