IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社日本工業試験所の特許一覧

特開2023-94480橋梁用ケーブルの検査方法及び検査装置
<>
  • 特開-橋梁用ケーブルの検査方法及び検査装置 図1
  • 特開-橋梁用ケーブルの検査方法及び検査装置 図2A
  • 特開-橋梁用ケーブルの検査方法及び検査装置 図2B
  • 特開-橋梁用ケーブルの検査方法及び検査装置 図3
  • 特開-橋梁用ケーブルの検査方法及び検査装置 図4
  • 特開-橋梁用ケーブルの検査方法及び検査装置 図5A
  • 特開-橋梁用ケーブルの検査方法及び検査装置 図5B
  • 特開-橋梁用ケーブルの検査方法及び検査装置 図5C
  • 特開-橋梁用ケーブルの検査方法及び検査装置 図6
  • 特開-橋梁用ケーブルの検査方法及び検査装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094480
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】橋梁用ケーブルの検査方法及び検査装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20230628BHJP
   E01D 19/16 20060101ALI20230628BHJP
   G01V 3/12 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D19/16
G01V3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209986
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】593153428
【氏名又は名称】中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500271030
【氏名又は名称】株式会社日本工業試験所
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】高野 真希子
(72)【発明者】
【氏名】岡山 準也
(72)【発明者】
【氏名】谷野 知伸
(72)【発明者】
【氏名】村松 大介
(72)【発明者】
【氏名】正木 英行
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 清和
(72)【発明者】
【氏名】眞田 裕規
(72)【発明者】
【氏名】山上 哲示
【テーマコード(参考)】
2D059
2G105
【Fターム(参考)】
2D059AA41
2D059GG39
2G105AA02
2G105BB11
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE01
2G105GG01
2G105HH05
2G105KK05
(57)【要約】
【課題】橋梁用ケーブルの内部に存在する素線の異常を、高い精度で検出できる橋梁用ケーブルの検査方法と、これに用いる検査装置を提供する。
【解決手段】
ケーブル検査装置1がケーブル6に沿って移動しながら、検査機器17としての電磁波レーダ装置によりケーブル6内の水分を探索すると共に、撮像装置16によりケーブル6の表面を撮影する。電磁波レーダ装置でケーブル6内に水分が検出されると、この水分の検出位置と、ケーブル6の表面に変状が検出された位置で、検査機器17としての渦電流探傷装置によってケーブル6内の鋼線の形状を確認する。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製の素線と、この素線を被覆する被覆体を有する橋梁用ケーブルを、橋梁における設置位置で検査する検査方法であって、
上記橋梁用ケーブルの検査対象部分に対して、上記被覆体の内側に存在する水分を検出する水分検出工程と、
上記橋梁用ケーブルの検査対象部分のうち、上記水分検出工程で水分が検出された部分に対して、上記素線の形状の検査を行う形状検査工程と
を備えることを特徴とする橋梁用ケーブルの検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の橋梁用ケーブルの検査方法において、
上記橋梁用ケーブルの検査対象部分に対して、上記被覆体の表面の変状を検出する外観検査工程を備え、
上記形状検査工程は、上記水分検出工程で水分が検出された部分と、上記外観検査工程で変状が検出された部分とに対して、上記素線の形状の検査を行うことを特徴とする橋梁用ケーブルの検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載の橋梁用ケーブルの検査方法において、
上記水分検査工程を、電磁波レーダ法により行い、
上記形状検査工程を、渦電流探傷法又は後方散乱X線撮像法により行うことを特徴とする橋梁用ケーブルの検査方法。
【請求項4】
請求項2に記載の橋梁用ケーブルの検査方法において、
上記水分検査工程を、電磁波レーダ法により行い、
上記外観検査工程を、上記水分検出工程で上記橋梁用ケーブルに電磁波を照射する際に同時に被覆体の表面を撮影して得た撮影画像に基づいて行うことを特徴とする橋梁用ケーブルの検査方法。
【請求項5】
鋼製の素線と、この素線を被覆する被覆体を有する橋梁用ケーブルを、橋梁における設置位置で検査するために用いられる検査装置であって、
上記橋梁用ケーブルの少なくとも一部を取り囲むように配置されるフレームと、
上記フレームに取り付けられ、上記橋梁用ケーブルの表面に接して転動し、上記フレームを上記橋梁用ケーブルの軸方向に移動するように案内する車輪と、
上記橋梁用ケーブルに沿ってこの検査装置を移動させる駆動力を生成する駆動装置と、
上記フレームに、検査機器として、電磁波レーダ装置、渦電流探傷装置及び後方散乱X線撮像装置のうちの少なくとも一つを選択して搭載可能に形成された検査機器搭載機構と、
遠隔位置で行われる操作に基づいて、少なくとも上記検査機器と駆動装置を制御する制御装置と
を備えることを特徴とする橋梁用ケーブルの検査装置。
【請求項6】
請求項5に記載の橋梁用ケーブルの検査装置において、
上記フレームに、上記橋梁用ケーブルの被覆体の表面を撮影する撮影装置が設置されていることを特徴とする橋梁用ケーブルの検査装置。
【請求項7】
請求項5に記載の橋梁用ケーブルの検査装置において、
上記駆動装置は、上記車輪を回転駆動する車輪駆動装置であり、
上記フレームに取り付けられ、少なくとも上記検査機器と車輪駆動装置に電力を供給する電池を収容する筐体を備え、
上記車輪は、上記橋梁用ケーブルの鉛直方向の上側と下側に配置され、
上記電池を含んだ筐体に作用する重力により、上記橋梁用ケーブルの鉛直方向の上側の車輪と、上記橋梁用ケーブルの鉛直方向の下側の車輪とで上記橋梁用ケーブルを挟んで押圧する押圧力を発揮するように形成されていることを特徴とする橋梁用ケーブルの検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば斜張橋等に用いられている橋梁用ケーブルを原位置で検査する方法と、これに用いる検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
斜張橋やエクストラドーズド等で、桁を支持するために用いられる橋梁用ケーブルは、橋梁の構造を維持するための重要な構成要素である。したがって、橋梁の維持管理の一環として橋梁用ケーブルの検査を行い、劣化の有無を正確に検出することが求められる。このような状況において、従来、橋梁用ケーブルに沿って移動可能な検査装置を用いて、橋梁用ケーブルの検査を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この橋梁用ケーブルの検査方法で用いられる検査装置は、遠隔操作により作動するものであり、橋梁用ケーブルに沿って移動するための移動装置と、橋梁用ケーブルの表面を撮影する撮像装置と、橋梁用ケーブル内の鋼線の破断を検出する渦電流探傷装置を備える。この橋梁用ケーブルの検査装置を用いた検査方法では、橋梁用ケーブルに沿って移動する間に、撮像装置によってケーブルの表面を撮影する。これにより得られた画像に基づいて、橋梁用ケーブルの表面の変状を検出すると、この変状の検出位置で、渦電流探傷法による検査を行う。渦電流探傷法による検査では、交流電流を印加した検出コイルを、橋梁用ケーブルの表面の近傍で移動させ、ケーブル内の鋼線に渦電流を発生させる。この渦電流の変化によって生じる検出コイルのインピーダンスの変化に基づいて、上記鋼線の破断を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6308529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の橋梁用ケーブルの検査方法は、橋梁用ケーブル内の鋼線の破断について、検出漏れが生じる場合がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、橋梁用ケーブルの内部に存在する素線の異常を、従来よりも高い精度で検出できる橋梁用ケーブルの検査方法と、これに用いる検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の橋梁用ケーブルの検査方法は、鋼製の素線と、この素線を被覆する被覆体を有する橋梁用ケーブルを、橋梁における設置位置で検査する検査方法であって、
上記橋梁用ケーブルの検査対象部分に対して、上記被覆体の内側に存在する水分を検出する水分検出工程と、
上記橋梁用ケーブルの検査対象部分のうち、上記水分検出工程で水分が検出された部分に対して、上記素線の形状の検査を行う形状検査工程と
を備えることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、鋼製の素線と被覆体を有する橋梁用ケーブルを、橋梁における設置位置で検査する際、まず、水分検出工程を行う。この水分検出工程では、橋梁用ケーブルの検査対象領域に対して、橋梁用ケーブルの被覆体の内側に存在する水分を検出する。この後、形状検査工程を行い、橋梁用ケーブルの検査対象領域のうち、上記水分検出工程で水分が検出された部分に対して、上記被覆体の内側の素線の形状の検査を行う。このように、水分検出工程で被覆体の内側に存在する水分を検出することにより、鋼製の素線の劣化を促進する腐食環境を、高い確率で検出することができる。この水分が検出された位置を対象に、形状検査工程で素線の形状の確認を行うので、素線に生じている減肉や破断等の異常を、漏れなく検出することができる。ここで、橋梁用ケーブルは、斜張橋、エクストラドーズド橋又は吊り橋に使用され、橋梁を構成して引張力を受け持つ部材が該当する。また、素線は、複数の直線状の鋼線が平行に配列されて束ねられたものや、複数の鋼線が撚り合わされたより線状のもの等が該当し、その形態は限定されない。また、被覆体は、素線を内側に収容する樹脂製の管状体や、素線と共に一括して押し出し成形された樹脂製の被覆等が該当し、素線の外側に配置された充填材をも含む。すなわち、被覆体は、素線を保護するために素線の外側に設けられるものであれば、その材質や形態は限定されない。
【0009】
橋梁用ケーブルの素線の腐食環境は、橋梁用ケーブルの被覆体の内側に形成されるため、被覆体の外観から腐食環境の位置を正確に特定することは困難である。そして、この腐食環境の位置は、被覆体の表面に傷や変色等の変状が表れる位置とは、必ずしも一致しない。すなわち、被覆体に生じた傷から浸入した雨水は、被覆体の内側の被覆体と素線の間や、素線の相互の間を流れて移動し、上記被覆体の傷の位置と異なる位置に腐食環境を生成する場合がある。このため、従来の橋梁用ケーブルの検査方法のように、被覆体の表面に変状が生じている位置で渦電流探傷法を行っても、この位置には腐食環境が生成されておらず、素線の異常が検出されない場合がある。この場合、上記被覆体の傷から浸入した雨水により、傷から離れた位置に腐食環境が形成され、この腐食環境の位置の素線に、腐食に伴う減肉や破断等の異常が発生している可能性がある。この素線の異常は、従来の検査方法では検出できず、検査漏れが生じることとなる。このような被覆体の変状の位置と、素線の異常の位置とが異なる場合があることを本発明者は発見し、この知見に基づいて、本発明がなされたのである。
【0010】
一実施形態の橋梁用ケーブルの検査方法は、上記橋梁用ケーブルの検査対象部分に対して、上記被覆体の表面の変状を検出する外観検査工程を備え、
上記形状検査工程は、上記水分検出工程で水分が検出された部分と、上記外観検査工程で変状が検出された部分とに対して、上記素線の形状の検査を行う。
【0011】
上記実施形態によれば、水分検出工程に加えて、外観検査工程を行い、橋梁用ケーブルの検査対象部分に対して、被覆体の表面に変状が生じている部分を検出する。ここで、変状とは、傷や汚れ等のように、視覚的に検出することができる被覆体の表面の異常をいう。また、上記水分検出工程と外観検査工程は、いずれを先に行ってもよく、同時に行ってもよい。この後、形状検査工程を行い、上記水分検出工程で水分が検出された部分と、上記外観検査工程で変状が検出された部分とに対して、橋梁用ケーブルの素線の形状の検査を行う。これにより、被覆体の表面に変状が生じている部分に腐食環境が形成され、この腐食環境で素線に生じた異常についても、形状検査工程で検出することができる。したがって、橋梁用ケーブルの検査対象部分に生じている素線の異常を、高い確率で検出することができる。
【0012】
一実施形態の橋梁用ケーブルの検査方法は、上記水分検査工程を、電磁波レーダ法により行い、
上記形状検査工程を、渦電流探傷法又は後方散乱X線撮像法により行う。
【0013】
上記実施形態によれば、水分検査工程で電磁波レーダ法を行うことにより、橋梁用ケーブルの検査対象部分に対して、被覆体の内側に存在する水分を、非破壊で効果的に検出することができる。また、電磁波レーダ法は、対象に電磁波を連続的に照射して連続的に検査を行うことができるので、橋梁用ケーブルの検査対象部分を連続的に検査できる。したがって、橋梁用ケーブルの内部の水分を、迅速かつ効率的に検出できる。また、水分検査工程で水分が検出された部分に対して、形状検査工程で渦電流探傷法又は後方散乱X線撮像法を局所的に行うことにより、橋梁用ケーブルの素線の形状を、非破壊で迅速かつ効果的に検出できる。したがって、素線の減肉や破断等の異常を、迅速かつ効果的に検出できる。ここで、渦電流探傷法又は後方散乱X線撮像法は、電磁波レーダ法よりも検査速度が遅いにもかかわらず、水分検査工程によって検査範囲が狭められるので、検査の全体にかかる時間を効果的に短縮できる。
【0014】
一実施形態の橋梁用ケーブルの検査方法は、上記水分検査工程を、電磁波レーダ法により行い、
上記外観検査工程を、上記水分検出工程で上記橋梁用ケーブルに電磁波を照射する際に同時に被覆体の表面を撮影して得た撮影画像に基づいて行う。
【0015】
上記実施形態によれば、電磁波レーダ法を適用することにより、橋梁用ケーブルの検査対象部分に対して、被覆体の内側に存在する水分を、非破壊で効果的に検出することができる。また、電磁波レーダ法は、対象に電磁波を連続的に照射して連続的に検査を行うことができるので、橋梁用ケーブルの検査対象部分を連続的に検査できる。したがって、橋梁用ケーブルの内部の水分を、迅速かつ効率的に検出できる。さらに、電磁波レーダ法で橋梁用ケーブルに電磁波を照射すると共に、この橋梁用ケーブルの被覆体の表面を撮像装置で撮影し、これにより得た撮影画像に基づいて外観検査工程を行う。したがって、水分検出工程と外観検査工程を同時に行うことができ、検査の全体にかかる時間を効果的に短縮できる。
【0016】
本発明の橋梁用ケーブルの検査装置は、鋼製の素線と、この素線を被覆する被覆体を有する橋梁用ケーブルを、橋梁における設置位置で検査するために用いられる検査装置であって、
上記橋梁用ケーブルの少なくとも一部を取り囲むように配置されるフレームと、
上記フレームに取り付けられ、上記橋梁用ケーブルの表面に接して転動し、上記フレームを上記橋梁用ケーブルの軸方向に移動するように案内する車輪と、
上記橋梁用ケーブルに沿ってこの検査装置を移動させる駆動力を生成する駆動装置と、
上記フレームに、検査機器として、電磁波レーダ装置、渦電流探傷装置及び後方散乱X線撮像装置のうちの少なくとも一つを選択して搭載可能に形成された検査機器搭載機構と、
遠隔位置で行われる操作に基づいて、少なくとも上記検査機器と駆動装置を制御する制御装置と
を備えることを特徴としている。
【0017】
上記構成によれば、検査装置は、鋼製の素線と被覆体を有する橋梁用ケーブルを、橋梁における設置位置で検査するために用いられる。この検査装置は、フレームが、橋梁用ケーブルの少なくとも一部を取り囲むように配置される。このフレームに取り付けられ、橋梁用ケーブルの表面に接して転動する車輪により、フレームが橋梁用ケーブルの軸方向に移動するように案内される。駆動装置により、橋梁用ケーブルに沿ってこの検査装置を移動させる駆動力が生成される。検査機器搭載機構により、検査機器として、電磁波レーダ装置、渦電流探傷装置及び後方散乱X線撮像装置のうちの少なくとも一つを選択して、上記フレームに搭載可能に形成されている。このような構成の検査装置を用いることにより、遠隔位置で操作を行い、橋梁用ケーブルに沿って移動させながら、検査機器としての電磁波レーダ装置により、橋梁用ケーブルの被覆体の内側に存在する水分を検出することができる。この後、検査機器搭載機構で搭載する検査機器を、電磁波レーダ装置から渦電流探傷装置又は後方散乱X線撮像装置に交換する。続いて、橋梁用ケーブルの水分が検出された位置に移動し、この水分が検出された橋梁用ケーブルの部分について、検査機器としての渦電流探傷装置又は後方散乱X線撮像装置により、素線の形状の検査を行うことができる。このように、橋梁用ケーブルについて、電磁波レーダ装置で検査対象部分を連続的に検査して水分を検出し、水分が検出された部分に対して、渦電流探傷装置又は後方散乱X線撮像装置で局所的に素線の検査を行うことができる。したがって、橋梁用ケーブルの検査対象部分が長大であっても、素線の腐食環境の存在する可能性がある部分を電磁波レーダ装置で抽出し、この部分で渦電流探傷装置又は後方散乱X線撮像装置により素線の形状の検査を行うことにより、効率的な検査を行うことができる。
【0018】
一実施形態の橋梁用ケーブルの検査装置は、上記フレームに、上記橋梁用ケーブルの被覆体の表面を撮影する撮影装置が設置されている。
【0019】
上記実施形態によれば、フレームに設置された撮影装置により、橋梁用ケーブルに沿って駆動装置で移動しながら、橋梁用ケーブルの被覆体の表面を撮影することができる。これにより得られた撮影画像に基づいて、被覆体の表面の変状を検出し、この変状が検出された橋梁用ケーブルの部分を、検査機器としての渦電流探傷装置及び後方散乱X線撮像装置で検査する。これにより、素線に生じている減肉や破断等の異常を、効率的に検出することができる。
【0020】
一実施形態の橋梁用ケーブルの検査装置は、上記駆動装置は、上記車輪を回転駆動する車輪駆動装置であり、
上記フレームに取り付けられ、少なくとも上記検査機器と車輪駆動装置に電力を供給する電池を収容する筐体を備え、
上記車輪は、上記橋梁用ケーブルの鉛直方向の上側と下側に配置され、
上記電池を含んだ筐体に作用する重力により、上記橋梁用ケーブルの鉛直方向の上側の車輪と、上記橋梁用ケーブルの鉛直方向の下側の車輪とで上記橋梁用ケーブルを挟んで押圧する押圧力を発揮するように形成されている。
【0021】
上記実施形態によれば、橋梁用ケーブルに接する車輪が、車輪駆動装置によって駆動されることにより、橋梁用ケーブルの検査装置が橋梁用ケーブルに沿って移動する。ここで、少なくとも上記検査機器と車輪駆動装置に電力を供給する電池を収容する筐体がフレームに取り付けられており、この筐体に作用する重力により、橋梁用ケーブルの上側と下側に接する車輪が、上記橋梁用ケーブルを挟んで押圧する押圧力を発揮する。これにより、車輪駆動装置で生成される車輪の駆動力が、橋梁用ケーブルに安定して伝達され、安定して橋梁用ケーブルに沿って移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態の橋梁用ケーブルの検査方法が適用される橋梁を示す模式図である。
図2A】橋梁用ケーブルを示す横断面図である。
図2B】橋梁用ケーブルに損傷が生じた様子を示す縦断面図である。
図3】橋梁用ケーブルに損傷が生じる過程を説明するフロー図である。
図4】実施形態の橋梁用ケーブルの検査装置を示すブロック図である。
図5A】実施形態の橋梁用ケーブルの検査装置を示す側面図である。
図5B】実施形態の橋梁用ケーブルの検査装置を示す正面図である。
図5C】実施形態の橋梁用ケーブルの検査装置を示す背面図である。
図6】本発明の実施形態の橋梁用ケーブルの検査方法を示すフロー図である。
図7】他の実施形態の橋梁用ケーブルの検査方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態の橋梁用ケーブルの検査方法が行われる橋梁を示す模式図である。本実施形態の橋梁用ケーブルの検査方法は、本実施形態の橋梁用ケーブルの検査装置1を用いて、橋梁としての斜張橋4に設置されているケーブル6の検査を原位置で行う方法である。
【0025】
本実施形態の橋梁用ケーブルの検査方法が適用される斜張橋4は、図1に示すように、海底や河底の地盤に立設された主塔5と、この主塔5に取り付けられた複数のケーブル6,6,6,・・・と、これらの複数のケーブル6,6,6,・・・で支持される主桁7とを含んで構成されている。本実施形態の橋梁用ケーブルの検査方法は、本実施形態の橋梁用ケーブルの検査装置1をケーブル6に設置し、主桁7に支持された道路上の操作者が遠隔管理装置2を操作して作動させることにより行う。この検査装置1は、遠隔管理装置2からの指令に応じて、矢印Mで示すようにケーブル6に沿って移動し、また、後述する検査機器を動作させてケーブル6の検査を行う。
【0026】
図2Aは、上記斜張橋4のケーブル6の横断面図であり、図2Bは、上記ケーブル6に損傷が生じた様子を示す縦断面図である。このケーブル6は、複数の素線としての鋼線21,21,21,・・・が平行に配置され、これらの鋼線21,21,21,・・・の外側に、被覆体としての保護膜22が被覆されている。上記鋼線21は、高張力鋼の亜鉛メッキ鋼で形成され、上記保護膜22は、ポリエチレンで形成されている。なお、本発明の検査方法は、他の構造の橋梁用ケーブルにも適用でき、例えば、素線として鋼撚り線が用いられた橋梁用ケーブルや、被覆体として樹脂製の管が用いられた橋梁用ケーブルにも適用できる。
【0027】
図3は、このような橋梁用のケーブル6が破断するまでの過程を説明するフロー図である。まず、ケーブル6の被覆体としての保護膜22に、傷24が発生する(ステップS1)。保護膜22の傷24は、ケーブル6の製造、設置又は検査を行う時の事故又は不注意や、経年劣化や、飛来物の接触等、種々の理由によって発生する。この保護膜22の傷24により生じた隙間から、雨水が保護膜22の内側へ浸入する(ステップS2)。保護膜22の内側へ浸入した雨水が、保護膜22の内側の種々の位置で滞留し、鋼線21の腐食を促進する腐食環境領域25A,25Bが発生する(ステップS3)。これらの腐食環境領域25A,25Bに位置する鋼線21に、腐食が発生する(ステップS4)。これらの腐食環境領域25A,25Bで鋼線21が腐食すると、保護膜22の傷24に近い腐食環境領域25Aからは錆汁が外側に流出する一方、上記傷24から遠い腐食環境領域25Bからは錆汁が外側に流出しない(ステップS5)。保護膜22の傷24に近い腐食環境領域25Aから漏出した錆汁は、保護膜22の外観の変状を発生させる(ステップS6)。この後、保護膜22の傷24に近い腐食環境領域25Aと、上記傷24から遠い腐食環境領域25Bのいずれにも、腐食が進行して鋼線21が破断し、破断部26A,26Bが生じる(ステップS7)。
【0028】
このように、橋梁用のケーブル6は、保護膜22の傷24の位置から離れた位置に腐食環境領域25Bが形成される場合がある。したがって、従来の検査方法のように、保護膜22の傷24から漏出した錆汁等の変状に基づいて傷24の位置を特定し、この傷24の周辺で渦電流探傷法により鋼線21の損傷を検査しても、傷24に近い腐食環境領域25Aの破断部26Aのみが検出される。その結果、保護膜22の傷24から遠い腐食環境領域25Bの破断部26Bは検出されず、この破断部26Bは検出漏れとなる。また、保護膜22の傷24から錆汁の漏出が生じない場合や、傷24が外観の変状として検出されない場合、従来の検査方法では、保護膜22の傷24に近い腐食環境領域25Aの破断部26Aも検出されない。
【0029】
本発明の橋梁用ケーブル6の検査方法及び検査装置1は、保護膜22の傷24から遠い腐食環境領域25Bや、保護膜22の傷24から近くかつ保護膜22の表面に外観の変状が生じない腐食環境領域25Aについて、これらの腐食環境領域25A,25Bを漏れなく検出し、さらに、これらの腐食環境領域25A,25Bに生じる可能性のある破断部26A,26Bを漏れなく検出することを可能とするものである。
【0030】
図4は、本発明の実施形態のケーブル検査装置1と遠隔管理装置2を示すブロック図である。図5Aはケーブル検査装置1を示す側面図であり、図5Bはケーブル検査装置1を示す正面図であり、図5Cは実施形態のケーブル検査装置1を示す背面図である。実施形態のケーブル検査装置1は、図4に示すように、主要な構成として、移動装置15、撮像装置16、検査機器17及び制御装置10を備える。また、このケーブル検査装置1は、上記移動装置15、撮像装置16、検査機器17及び制御装置10に電力を供給する蓄電池18を備え、外部から電力を供給されることなく動作可能になっている。
【0031】
ケーブル検査装置1は、図5A乃至5Cに示すように、移動装置15、制御装置10及び蓄電池18を支持する主フレーム31と、撮像装置16及び検査機器17を支持する機器フレーム36を有する。
【0032】
主フレーム31は、ケーブル6の上側部分を取り囲む門型の上部フレーム部材31Aと、ケーブル6の下側部分を取り囲むH字形状の下部フレーム部材31Bとを有する。上部フレーム部材31Aの下端部は、下部フレーム部材31Bの上端部の内側に摺動可能に嵌合しており、この嵌合長さが調節可能に形成されている。上記上部フレーム部材31Aと下部フレーム部材31Bは分離可能に形成されており、ケーブル検査装置1をケーブル6に取り付ける際、ケーブル6の下側に下部フレーム部材31Bを配置し、ケーブル6の上側に上部フレーム部材31Aを配置する。この後、上部フレーム部材31Aと下部フレーム部材31Bを連結して、主フレーム31がケーブル6を取り囲むように配置される。
【0033】
機器フレーム36は、ケーブル6が内側に挿通される環状に形成されており、主フレーム31の下部フレーム部材31Bの正面側に連結されている。機器フレーム36には、検査機器17をケーブル6の周方向に回転駆動する検査機器駆動装置38が内蔵されている。機器フレーム36は、上側と下側に分割可能に形成されており、ケーブル検査装置1をケーブル6に取り付ける際、ケーブル6の下側に機器フレーム36の下側部分を配置し、ケーブル6の上側に機器フレーム36の上側部分を配置する。この後、機器フレーム36の上側部分と下側部分を連結して、機器フレーム36がケーブル6を取り囲むように配置される。
【0034】
上記上部フレーム部材31Aは、幅方向の両側から背面側に延出する2つの上アーム34A,34Aを有し、これらの上アーム34A,34Aの間に掛け渡された回転軸に、上側の2つの車輪32A,32Aが設置されている。また、上記下部フレーム部材31Bは、幅方向の両側から背面側に延出する2つの2つの下アーム34B,34Bを有し、これらの下アーム34B,34Bの間に掛け渡された回転軸に、下側の2つの車輪32B,32Bが設置されている。車輪32A,32Bは円錐台形状を有し、1つの回転軸につき2つの車輪32A,32A;32B,32Bが、円錐台の斜面を対向するように配置される。これにより、2つの車輪32A,32A;32B,32Bでケーブル6の表面を幅方向の両側で挟むようになっている。また、上側の車輪32A,32Aと、下側の車輪32B,32Bで、ケーブル6を上下両側から挟むようになっている。上側の車輪32A,32Aと、下側の車輪32B,32Bとの間の距離が、上部フレーム部材31Aの下部フレーム部材31Bに対する嵌合長さを調節することにより、ケーブル6の径に応じて調節可能になっている。
【0035】
移動装置15は、ケーブル6に沿ってケーブル検査装置1のフレーム31,36を移動するためのものであり、図5A及び5Cの車輪32A,32A,32B,32Bと、これらの車輪32A,32A,32B,32Bを駆動する駆動装置としてのモータ33A,33Bを含んで構成される。上記モータ33A,33Bは、上側の回転軸と下側の回転軸に夫々連結されている。移動装置15は、いずれかの車輪32A,車輪32Aに設けられたエンコーダの出力や、いずれかのモータ33A,33Bの回転数に基づいて、ケーブル6に沿った走行距離を検出するようになっている。移動装置15の走行距離に関する情報は制御装置10に入力され、この入力された情報に基づいて、ケーブル6上におけるケーブル検査装置1の位置を特定する位置情報が生成される。制御装置10は、この位置情報を、撮像装置16や検査機器17が出力する情報に関連付けて、撮像装置16や検査機器17の情報の収集位置を特定するように構成されている。
【0036】
撮像装置16は、光学レンズと、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等の撮像素子を内蔵し、動画や静止画の撮像データを出力するものである。この撮像装置16は、機器フレーム36に、ケーブル6を周方向に取り囲むように、等間隔をおいて4個設置されている。4個の撮像装置16により、ケーブル6の全周を撮影するように配置されている。なお、撮像装置16の個数は、4個に限られない。
【0037】
検査機器17は、ケーブル6の検査を行うためのものであり、電磁波レーダ装置と、渦電流探傷装置と、後方散乱X線撮像装置とのいずれかが選択され、検査機器17として搭載される。
【0038】
電磁波レーダ装置は、電磁波をケーブル6の内部に向けて放射するレーダアンテナと、このレーダアンテナから放射した電磁波の反射波を受信する受信アンテナを有する。電磁波レーダ装置は、比誘電率の異なる境界面で電磁波が反射し、その反射波の強度が境界面に接する物質の比誘電率に応じて異なる原理を利用している。本実施形態の検査方法では、電磁波レーダ装置により、ケーブル6の保護膜22の内側に存在する水を検出する。
【0039】
渦電流探傷装置は、交流電流が印加され、被検査体に渦電流を生成するコイルと、このコイルのインピーダンスの変化を検出する検出回路を有する。渦電流探傷装置は、被検査体に存在する傷に応じて生じる渦電流の変化を、コイルのインピーダンスの変化として検出することにより、被検査体の傷の形状等を検出する。本実施形態の検査方法では、渦電流探傷装置により、ケーブル6の内部の鋼線21の形状を検出する。
【0040】
後方散乱X線撮像装置は、被検査体にX線を照射するX線照射装置と、被検査体からの後方散乱X線を検出するX線検出装置を有する。後方散乱X線撮像装置は、被検査体の内部の物質の違いによって生じる後方散乱X線の線量の違いに基づいて、被検査体の内部に存在する物質の形状を検出する。本実施形態の検査方法では、後方散乱X線撮像装置により、ケーブル6の内部の鋼線21の形状を検出する。
【0041】
上記検査機器17は、検査機器搭載機構としての検査機器搭載部材37に搭載される。検査機器搭載部材37は、環状の機器フレーム36に、互いに180°の角度をおいて2つ設置されている。この検査機器搭載部材37は、機器フレーム36に接続されて正面側に延出する支持部材と、この支持部材の先端部に検査機器17を固定する固定部材を有する。支持部材は、基端側が、機器フレーム36に内蔵された検査機器駆動装置38に連結されている。検査機器駆動装置38は、機器フレーム36と同心に配置された環状の歯車と、この歯車を周方向に駆動する駆動モータを有する。この検査機器駆動装置38の歯車に、上記検査機器搭載部材37の支持部材が連結されている。検査機器駆動装置38の駆動モータが歯車を駆動すると歯車が周方向に回転し、これにより、2つの検査機器搭載部材37が互いに180°の角度差を保持した状態で、周方向に回転してケーブル6の外周側を周方向に回転する。その結果、検査機器搭載部材37に搭載された2つの検査機器17が、互いに180°の角度差を保持した状態で、ケーブル6の外周側を周方向に回転する。検査機器駆動装置38は、検査機器搭載部材37に搭載された検査機器17の動作に応じて、ケーブル6に対して周方向の所定位置に検査機器17を保持し、また、ケーブル6の外周側で検査機器17を周方向に回転駆動するように動作する。
【0042】
制御装置10は、上記移動装置15、撮像装置16及び検査機器17の動作を制御する。また、検査機器17の動作と共に、この検査機器17を搭載する検査機器搭載部材37に連結された検査機器駆動装置38の動作を制御する。この制御装置10はコンピュータで形成され、CPU(Central Processing Unit;中央演算装置)11と、CPU11で実行されるコンピュータプログラムが格納された記憶装置12と、遠隔管理装置2と無線通信を行う通信装置13を有する。制御装置10は、遠隔管理装置2から受信した情報に基づき、移動装置15、撮像装置16及び検査機器17を動作させる。また、撮像装置16及び検査機器17からの情報を、記憶装置12に記憶し、遠隔管理装置2に送信するようになっている。
【0043】
上記制御装置10及び蓄電池18は2つの筐体35に収容され、これらの筐体35は、主フレーム31の下端に揺動可能に吊り下げられている。これらの筐体35に作用する重力Gにより、ケーブル6の上側の車輪32A,32Aと、ケーブル6の下側の車輪32B,32Bとでケーブル6を挟んで押圧する押圧力P1,P2を発揮するように形成されている。すなわち、筐体35に作用する重力Gにより、ケーブル6に、上側の車輪32A,32Aから下向きに押圧する押圧力P1が作用し、下側の車輪32B,32Bから上向きに押圧する押圧力P2が作用する。これにより、車輪32A,32A;32B,32Bからケーブル6に駆動力が安定して伝達され、ケーブル検査装置1が安定してケーブル6に沿って移動可能になっている。
【0044】
遠隔管理装置2は、コンピュータで形成され、操作者から入力を受ける入力装置と、ケーブル検査装置1の制御装置10との間で無線通信を行う通信装置と、ケーブル検査装置1から受信したデータの解析を行う解析装置と、ケーブル検査装置1の操作に関する情報や解析に関する情報を表示する表示部を有する。
【0045】
次に、上記構成のケーブル検査装置1を用いて実行されるケーブル6の検査方法を説明する。
【0046】
図6は、実施形態の橋梁用ケーブルの検査方法を示すフロー図である。本実施形態の検査方法では、ケーブル6の検査対象部分が、ケーブル6の下端に位置する主桁7への定着部と、ケーブル6の上端に位置する主塔5への定着部の間であるとする。なお、ケーブル6の検査対象部分は、ケーブル6の主桁7への定着部と、主塔5への定着部との間の一部であってもよい。ケーブル6の検査対象部分の検査を開始するにあたり、まず、ケーブル検査装置1を、ケーブル6の下端に設置する。ここで、主フレーム31を上部フレーム部材31Aと下部フレーム部材31Bに分離すると共に、機器フレーム36及び検査機器駆動装置38を分割する。上記下部フレーム部材31Bと機器フレーム36の下側部分をケーブル6の下側に配置し、上記上部フレーム部材31Aと機器フレーム36の上側部分をケーブル6の上側に配置する。この後、上部フレーム部材31Aと下部フレーム部材31Bを連結すると共に、機器フレーム36の上側部分と下側部分を連結して、ケーブル検査装置1をケーブル6に設置する。このとき、上部フレーム部材31Aと下部フレーム部材31Bの嵌合長さを調節して、上部フレーム部材31A側に取り付けられた上側の車輪32A,32Aと、下部フレーム部材31B側に取り付けられた下側の車輪32B,32Bとを、ケーブル6の表面に密着させる。
【0047】
ケーブル検査装置1をケーブル6の下端に設置すると、2つの検査機器搭載部材37に、検査機器17としての電磁波レーダ装置を夫々取り付ける。この後、操作者が遠隔管理装置2に検査の開始を指令すると、移動装置15が作動すると共に、電磁波レーダ装置と撮像装置16が作動する。これにより、移動装置15の車輪32A,車輪32Bが回転駆動してケーブル検査装置1が正面側に向かって移動し、ケーブル6に沿って上昇する。これと共に、電磁波レーダ装置がケーブル6に電磁波を照射し、反射波の電磁波データを収集する。また、撮像装置16がケーブル6の保護膜22の表面を撮影し、撮像データを収集する。電磁波レーダ装置と撮像装置16が収集したデータは、ケーブル6上の位置情報に関連付けられて、制御装置10の通信装置13により遠隔管理装置2へ送信され、遠隔管理装置2の記憶装置に保存される。ケーブル検査装置1がケーブル6の上端に達すると、移動装置15の動作が停止すると共に、電磁波レーダ装置と撮像装置16が停止する。こうして、ケーブル6の検査対象部分について、往路のデータ収集が終了する。
【0048】
引き続いて、操作者が遠隔管理装置2に復路の検査の開始を指令すると、検査機器駆動装置38が作動し、検査機器17としての電磁波レーダ装置の位置を、ケーブル6の周方向に90°変更する。この後、移動装置15が作動すると共に、電磁波レーダ装置が作動する。これにより、移動装置15の車輪32A,車輪32Bが回転駆動してケーブル検査装置1が背面側に向かって移動し、ケーブル6に沿って下降する。これと共に、電磁波レーダ装置がケーブル6に電磁波を照射し、反射波の受信データを収集する。電磁波レーダ装置が収集したデータは、制御装置10の通信装置13により遠隔管理装置2へ送信され、遠隔管理装置2の記憶装置に保存される。ケーブル検査装置1がケーブル6の下端に達すると、移動装置15の動作が停止すると共に、電磁波レーダ装置が停止する。こうして、ケーブル6の検査対象部分について、復路のデータ収集が終了する。
【0049】
このようにして、ケーブル6の検査対象部分について、下端から上端に向かう往路で、電磁波レーダ装置によりケーブル6の上端部及び下端部の電磁波データを収集し、撮像装置16で全周の撮像データを収集する。また、上端から下端に向かう復路で、電磁波レーダ装置によりケーブル6の右側部及び左端部の電磁波データを収集する。こうして、ケーブル6の検査対象部分について、全周の電磁波データと撮像データの収集が完了する。
【0050】
この後、遠隔管理装置2により、記憶装置に保存した電磁波データの解析を行い、ケーブル6の保護膜22の内側の水分を探索する(ステップS11)。
【0051】
また、遠隔管理装置2により、記憶装置に保存した撮像データの解析を行い、ケーブル6の保護膜22の表面における錆汁の汚れや傷等の変状を探索する(ステップS12)。
【0052】
続いて、電磁波データの解析結果に基づき、保護膜22の内側に水分が存在するか否かを判断し(ステップS13)、水分が存在すると判断すると、水分の検出位置を特定する。また、保護膜22の内側に水分が存在しない部分について、撮像データの解析結果に基づき、保護膜22の表面に変状が存在するか否かを判断し(ステップS14)、変状が存在すると判断すると、変状の検出位置を特定する。
【0053】
ケーブル6の保護膜22の内側に水分が検出され、及び/又は、ケーブル6の保護膜22の表面に変状が検出されると、2つの検査機器搭載部材37に、検査機器17としての渦電流探傷装置を夫々取り付ける。この後、操作者が遠隔管理装置2に検査の開始を指令すると、移動装置15が作動する。これにより、ケーブル検査装置1が、電磁波データの位置情報と撮像データの位置情報に基づき、水分の検出位置と、変状の検出位置に移動し、これらの位置で、渦電流探傷装置が作動して渦電流探傷法による検査を行う。
【0054】
渦電流探傷装置による検査では、渦電流探傷装置が有するコイルに交流電流を印加し、ケーブル6の鋼線21に渦電流を発生させる。そして、鋼線21に渦電流を発生させた状態で、渦電流探傷装置を、検査機器駆動装置38によってケーブル6の回りを半周分移動させ、2つの渦電流探傷装置でケーブル6の全周分のインピーダンスのデータを取得する。全周方向のインピーダンスのデータを取得した後は、ケーブル検査装置1をケーブル6の軸方向に沿って所定距離移動させる。そして、移動後の位置において、全周方向のインピーダンスのデータを取得する。このケーブル検査装置1の移動と全周方向のインピーダンスのデータの取得を所定回数繰り返すことにより、ケーブル6の軸方向における所定範囲の走査を行う。こうして得た所定範囲のインピーダンスのデータに基づいて、遠隔管理装置2により解析を行い、鋼線21の形状を検出し、破断部26A,26Bの有無と、破断部26A,26Bの大きさを測定する。このようにして、保護膜22の内側の水分の検出部分と、保護膜22の表面の変状の検出部分に対して、渦電流探傷法により鋼線21の形状を確認する(ステップS15)。
【0055】
渦電流探傷法により鋼線21の形状を確認し、破断部26A,26Bの存在と、その大きさが測定されると(ステップS16)、ケーブル6の検査対象部分の鋼線21に異常があると判断される。一方、電磁波データの解析結果に基づいて保護膜22の内側に水分が存在しないと判断され(ステップS13)、かつ、撮像データの解析結果に基づいて保護膜22の表面に変状が存在しないと判断されると(ステップS14)、ケーブル6の検査対象部分の鋼線21には異常が無いと判断される。
【0056】
以上のように、本実施形態のケーブル検査方法によれば、ケーブル検査装置1を用いて、検査機器17としての電磁波レーダ装置によりケーブル6内の水分を検出すると共に、撮像装置16によりケーブル6の表面の変状を検出し、この後、水分の検出位置と変状の検出位置で、検査機器17としての渦電流探傷装置で鋼線21の形状を確認する。したがって、鋼線21の破断部26A,26Bを漏れなく検出することができる。
【0057】
また、本実施形態のケーブル検査装置1によれば、検査機器搭載部材37に、検査機器17としての電磁波レーダ装置と渦電流探傷装置を選択して搭載できるので、効率的に検査を行うことができる。
【0058】
上記実施形態において、ケーブル6の水分の検出位置と変状の検出位置で、検査機器17としての渦電流探傷装置で鋼線21の形状を確認したが、X線撮像装置で鋼線21の形状を検出してもよい。この場合、検査機器搭載部材37にX線撮像装置を設置し、渦電流探傷装置と同様に、ケーブル6の軸方向の所定範囲の走査を行う。これにより、ケーブル6の鋼線21の形状を、後方散乱X線の線量に基づいて検出することができる。
【0059】
また、上記実施形態において、検査機器17としての渦電流探傷装置により鋼線21の破断部26A,26Bを検出したが、破断に至る前段階である減肉部を検出することも可能である。
【0060】
また、上記実施形態の検査方法において、撮像装置16の撮像データに基づいて保護膜22の変状を検出したが、撮像装置16による撮像データの収集は行わなくてもよい。図7は、他の実施形態の検査方法を示すフロー図である。この検査方法では、ケーブル検査装置1の撮像装置16を停止し、電磁波レーダ装置により、ケーブル6の検査対象部分について、電磁波データのみを収集する。この後、遠隔管理装置2で電磁波データの解析を行い、ケーブル6の保護膜22の内側の水分を探索する(ステップS21)。続いて、電磁波データの解析結果に基づき、ケーブル6の保護膜22の内側に水分が存在するか否かを判断する(ステップS22)。ケーブル6内に水分が存在すると判断すると、渦電流探傷装置により、水分の検出部分で渦電流探傷法による検査を行い、鋼線21の形状を確認する(ステップS23)。渦電流探傷法により鋼線21の形状を確認し、破断部26A,26Bの存在と、その大きさが測定されると(ステップS24)、ケーブル6の検査対象部分の鋼線21に異常があると判断する。一方、電磁波データの解析結果に基づいて保護膜22の内側に水分が存在しないと判断すると(ステップS24)、ケーブル6の検査対象部分の鋼線21には異常が無いと判断する。このように、ケーブル6内の水分を検出することにより、水分によって形成される腐食環境領域25A,25Bを検出できるので、ケーブル6の表面の変状を検出しなくても、腐食環境領域25A,25Bで発生する可能性の高い破断部26A,26Bを、効率的かつ良好な精度で検出することができる。
【0061】
また、上記実施形態の検査方法において、ケーブル検査装置1の検査機器搭載機構としての2つの検査機器搭載部材37に2つの検査機器17を設置したが、検査機器搭載部材37の設置数は2に限定されない。例えば、検査機器搭載部材37の数が1である場合、1つの検査機器搭載部材37に1つの検査機器17を設置し、検査機器駆動装置38によって検査機器17をケーブル6の全周に移動させ、1つの検査機器17でケーブル6の全周の検査を行えばよい。また、検査機器搭載部材37は3個以上設けてもよく、検査機器搭載部材37に設置された3個以上の検査機器17により、各検査機器17に割り振られたケーブル6の部分の検査を行えばよい。
【0062】
また、上記実施形態のケーブル検査装置1は、移動装置15として、ケーブル6に接してフレーム31,36を移動させるための車輪32A,32A,32B,32Bと、これらの車輪32A,32A,32B,32Bを駆動する駆動装置としてのモータ33A,33Bを備えたが、他の構成の移動装置を採用してもよい。例えば、主フレーム31に、ケーブル6に接して従動する車輪を設け、駆動装置として、主フレーム31にワイヤやリンク等の接続部材で接続されて、この主フレーム31をケーブル6に沿って移動させるドローン等の飛翔体を採用してもよい。
【0063】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、多くの変形が、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 ケーブル検査装置
2 遠隔管理装置
4 斜張橋
5 主塔
6 ケーブル
7 主桁
10 制御装置
11 CPU
12 記憶装置
13 通信装置
15 移動装置
16 撮像装置
17 検査機器
18 蓄電池
21 ケーブルの鋼線
22 ケーブルの保護膜
24 保護膜の傷
25A,25B 腐食環境領域
26A,26B 鋼線の破断部
31 主フレーム
31A 上部フレーム部材
31B 下部フレーム部材
36 機器フレーム
32A,32B 車輪
33A,33B モータ
35 筐体
37 検査機器搭載部材
38 検査機器駆動装置
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7