(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000945
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】緊線工法及びこの緊線工法で用いる連結金具類
(51)【国際特許分類】
H02G 1/04 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
H02G1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102062
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】391001538
【氏名又は名称】日本カタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】松下 良治
(72)【発明者】
【氏名】船間 政広
【テーマコード(参考)】
5G352
【Fターム(参考)】
5G352BA03
(57)【要約】
【課題】送電線の緊線時に取り外すことで、繰り返し使用することが可能な延線用カマレス工具を有し、緊線の作業時間短縮、作業効率及び作業員の安全性向上につながる緊線工法及びこの緊線工法で用いる連結金具類の提供。
【解決手段】鉄塔に支持される碍子連に連結された4導体ヨーク、送電線の弛度調整金具、セミ金車、延線用カマレス工具、緊線用工具、及び送電線を把持する短尺クランプに連結された2つのカマレス金具を介しておこなわれる緊線工法、及びこの緊線工法で用いる連結金具類であって、送電線の延線後、緊線作業時に延線用カマレス工具を取り外すことができ、セミ金車及び連結金具dに対し垂直方向に屈曲する緊線用工具を用いることを特徴とする緊線工法及びこの工法で用いる連結金具類。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔間に延線された送電線を緊線する緊線工法であって、
該緊線工法は、鉄塔に支持される碍子連に連結された4導体ヨーク、送電線の弛度調整金具、セミ金車、延線用カマレス工具、緊線用工具、及び送電線を把持する短尺クランプに連結された2つのカマレス金具を介しておこなわれ、
延線時には、前記送電線を把持する短尺クランプは、長手方向の端部が前記2つのカマレス金具と第1連結軸を介して回動自在に連結され、もう一方の端部が第3連結軸を介して前記延線用カマレス工具の長手方向の端部と回動自在に連結され、前記延線用カマレス工具は、もう一方の端部が第4連結軸を介して延線用ワイヤに接続されたワイヤコネクタの端部に回動自在に連結されており、
前記2つのカマレス金具は、第1カマレス金具と第2カマレス金具とからなり、延線作業完了時には、前記第1カマレス金具は、長手方向の端部が第1連結軸を介して前記短尺クランプと回動自在に連結され、もう一方の端部が第2連結軸を介して第2カマレス金具と回動自在に連結されており、前記第2カマレス金具は、長手方向の端部が第2連結軸を介して前記第1カマレス金具に回動自在に連結され、もう一方の端部が第3連結軸を介して前記延線用カマレス工具と回動自在に連結されており、
前記緊線工法は、前記延線作業が完了した後、
1)前記第2カマレス金具に緊線用工具取付孔を介して前記緊線用工具を回動自在に連結する工程1と、
2)前記緊線用工具の第5連結軸を介して、前記4導体ヨークから接続された前記セミ金車に回動自在に連結する工程2と、
3)前記セミ金車を牽引した状態で、前記第2カマレス金具から、前記延線用カマレス工具とこれに接続されたワイヤコネクタ及び延線用ワイヤを取り外す工程3と、
4)前記第2カマレス金具に、前記4導体ヨークの天側に連結された前記弛度調整金具を接続する工程4と、
5)接続された前記弛度調節金具を介して、前記4導体ヨークの天側に連結された送電線を緊線する工程5と、
6)工程5で緊線された送電線に連結された前記第2カマレス金具から、前記セミ金車の先端部に連結された前記緊線用工具を取り外す工程6と、
7)工程6で取り外した前記緊線用工具及び前記セミ金車を、第5連結軸を回動させることで、他の送電線に連結された前記第2カマレス金具に緊線用工具取付孔を介して接続する工程7と、
8)前記セミ金車を牽引した状態で、前記第2カマレス金具から、前記延線用カマレス工具とこれに接続されたワイヤコネクタ及び延線用ワイヤを取り外す工程8と、
9)前記第2カマレス金具に、前記4導体ヨークの地側に連結された前記弛度調整金具を接続する工程9と、
10)接続された前記弛度調節金具を介して、前記4導体ヨークの地側に連結された送電線を緊線し、この送電線に連結された前記第2カマレス金具から、工程7で接続した前記緊線用工具及びこれに連結された前記セミ金車を取り外す工程10と、
を有することを特徴とする緊線工法。
【請求項2】
請求項1に記載の緊線工法で用いる連結金具類であって、
延線作業完了後、緊線時において、前記第2カマレス金具の第3連結軸から取り外すことが可能な前記延線用カマレス工具と、
鉄塔に支持される碍子連に連結された前記4導体ヨークと、
連結金具aを介して長手方向の端部が前記4導体ヨークと回動自在に連結された前記弛度調整金具と、
連結金具b及び連結金具cを介して前記弛度調整金具のもう一方の端部と回動自在に連結された前記第2カマレス金具と、
前記第2カマレス金具と第2連結軸で回動自在に連結された第1カマレス金具と、
前記4導体ヨーク又は前記緊線用工具と連結金具dを介して回動自在に連結された2台の前記セミ金車と、
長手方向の端部が前記セミ金車の連結金具dと回動自在に連結され、もう一方の端部が前記第2カマレス金具と緊線用工具取付孔で連結された緊線用工具と、
からなる連結金具類。
【請求項3】
前記緊線用工具が、接続箇所において前記セミ金車及び連結金具dと垂直方向に屈曲することを特徴とする、請求項2に記載の連結金具類。
【請求項4】
前記延線用カマレス工具の代替用連結金具は、直角クレビス、直角クレビスリンク、直角リンク、角度クレビス、角度クレビスリンク、及び角度リンクからなる群から選択される請求項2又は3に記載の連結金具類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊線工法及びこの緊線工法で用いる連結金具類に係り、より詳しくは、送電線の延線後、延線時にのみ使用する延線用カマレス工具を取り外すことで、該延線用カマレス工具を繰り返し使用することができると共に、後の緊線における連結作業も容易となり、尚且つ送電線毎にセミ金車の付け替えが不要であることから、作業効率の向上及び作業時間短縮を実現した、緊線工法及びこの緊線工法で用いる連結金具類に関する。
【0002】
「延線」とは、送電線鉄塔(以下、鉄塔という)間の2kmから4kmの区間を1延線区間とし、送電線を鉄塔に取り付けた金車を経由させてウインチで引き延ばして架線をおこなう作業であり、「緊線」とは、延線した送電線をあらかじめ設計で決められた送電線の弛み(弛度)に調整するための作業である。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、複数の揺動ブロック体(カマレス金具)と、この揺動ブロック体(カマレス金具)を枢結する複数本の枢結軸とを備え、その一端部が送電線側に枢結されると共に、その他端部が延線ワイヤ側に枢結されるカマレス金具が開示されている。
この特許文献1のカマレス金具の場合、中間の揺動ブロック体(カマレス金具)は、緊線用工具が取付けられる工具取付部と、この工具取付部の端部に連設されるアイ部とを有すると共に、上記送電線側に枢結される揺動ブロック体(カマレス金具)が、上記揺動ブロック体(カマレス金具)のアイ部に枢結されるクレビス部を有している。
このため、延線作業中に、中間の揺動ブロック体(カマレス金具)に引張力が作用すると、この引張力の作用点から上記クレビス部までの距離が比較的短くなるという効果を奏し、延線作業や緊線作業の際に付与される引張力によるアイ部やクレビス部の変形を防止できる。しかし、このアプローチでは、部品点数が多くなり、作業時間を要するという問題点がある。
【0004】
特許文献2には、延線された送電線を緊線する緊線工法において、連結金具と弛度調整金具の連結作業をおこないやすい緊線工法、その緊線工法に用いる連結金具、および連結金具ユニットが開示されている。
特許文献2では、短尺クランプにカマレス金具3個を連結させて使用している。また、セミ金車を2セット使用し、天側と地側それぞれ付け替え作業をおこなうことで緊線する工法であること等から、緊線時の作業に多くの時間を要していた。
【0005】
また、送電線の架線工事は、地上から100m超の高所での作業が主であるため、作業員の安全を確保することが重要である。しかし、例えば緊線工法に用いるセミ金車は1個が約15kg、セミ用ワイヤーは1kg/mと、重量物を扱う作業を鉄塔上等の足場の悪い高所でおこなうため、作業員や工具等の重量物の落下事故が絶えないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-169412号公報
【特許文献2】特開2012-125093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、叙上の従来技術の問題点を解決すべく、連結金具類の部品点数を減らし、かつ緊線作業の効率を向上することで緊線の作業時間を短縮すること、作業員の安全を確保することを目的とする。すなわち、送電線の緊線時にカマレス金具の繰り返し使用を可能とし、且つ緊線作業の作業時間を削減し、作業員の安全性を向上することができる緊線工法及びこの緊線工法で用いる連結金具類を提供せんとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、鉄塔間に延線された送電線を緊線する緊線工法であって、
該緊線工法は、鉄塔に支持される碍子連に連結された4導体ヨーク、送電線の弛度調整金具、セミ金車、延線用カマレス工具、緊線用工具、及び送電線を把持する短尺クランプに連結された2つのカマレス金具を介しておこなわれ、
延線時には、前記送電線を把持する短尺クランプは、長手方向の端部が前記2つのカマレス金具と第1連結軸を介して回動自在に連結され、もう一方の端部が第3連結軸を介して前記延線用カマレス工具の長手方向の端部と回動自在に連結され、前記延線用カマレス工具は、もう一方の端部が第4連結軸を介して延線用ワイヤに接続されたワイヤコネクタの端部に回動自在に連結されており、
前記2つのカマレス金具は、第1カマレス金具と第2カマレス金具とからなり、延線作業完了時には、前記第1カマレス金具は、長手方向の端部が第1連結軸を介して前記短尺クランプと回動自在に連結され、もう一方の端部が第2連結軸を介して第2カマレス金具と回動自在に連結されており、前記第2カマレス金具は、長手方向の端部が第2連結軸を介して前記第1カマレス金具に回動自在に連結され、もう一方の端部が第3連結軸を介して前記延線用カマレス工具と回動自在に連結されており、
前記緊線工法は、前記延線作業が完了した後、
1)前記第1カマレス金具に緊線用工具取付孔を介して前記緊線用工具を回動自在に連結する工程1と、
2)前記緊線用工具の第5連結軸を介して、前記4導体ヨークから接続された前記セミ金車に回動自在に連結する工程2と、
3)前記セミ金車を牽引した状態で、前記第1カマレス金具から、前記延線用カマレス工具とこれに接続されたワイヤコネクタ及び延線用ワイヤを取り外す工程3と、
4)前記第1カマレス金具に、前記4導体ヨークの天側に連結された前記弛度調整金具を接続する工程4と、
5)接続された前記弛度調節金具を介して、前記4導体ヨークの天側に連結された送電線を緊線する工程5と、
6)工程5で緊線された送電線に連結された前記第1カマレス金具から、前記セミ金車の先端部に連結された前記緊線用工具を取り外す工程6と、
7)工程6で取り外した前記緊線用工具及び前記セミ金車を、第5連結軸を回動させることで、他の送電線に連結された前記第2カマレス金具に緊線用工具取付孔を介して接続する工程7と、
8)前記セミ金車を牽引した状態で、前記第1カマレス金具から、前記延線用カマレス工具とこれに接続されたワイヤコネクタ及び延線用ワイヤを取り外す工程8と、
9)前記第1カマレス金具に、前記4導体ヨークの地側に連結された前記弛度調整金具を接続する工程9と、
10)接続された前記弛度調節金具を介して、前記4導体ヨークの地側に連結された送電線を緊線し、この送電線に連結された前記第1カマレス金具から、第7工程で接続した前記緊線用工具及びこれに連結された前記セミ金車を取り外す工程10と、
を有することを特徴とする緊線工法に関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の緊線工法で用いる連結金具類であって、
延線作業完了後、緊線時において、前記第2カマレス金具の第3連結軸から取り外すことが可能な前記延線用カマレス工具と、
鉄塔に支持される碍子連に連結された前記4導体ヨークと、
連結金具aを介して長手方向の端部が前記4導体ヨークと回動自在に連結された前記弛度調整金具と、
連結金具b及び連結金具cを介して前記弛度調整金具のもう一方の端部と回動自在に連結された前記第2カマレス金具と、
前記第2カマレス金具と第2連結軸で回動自在に連結された第1カマレス金具と、
前記4導体ヨーク又は前記緊線用工具と連結金具dを介して回動自在に連結された2台の前記セミ金車と、
長手方向の端部が前記セミ金車の連結金具dと回動自在に連結され、もう一方の端部が前記第2カマレス金具と緊線用工具取付孔で連結された緊線用工具と、
からなる連結金具類に関する。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記緊線用工具が、接続箇所において前記セミ金車及び連結金具dと垂直方向に屈曲することを特徴とする、請求項2に記載の連結金具類に関する。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記延線用カマレス工具の代替用連結金具は、直角クレビス、直角クレビスリンク、直角リンク、角度クレビス、角度クレビスリンク、及び角度リンクからなる群から選択される請求項2又は3に記載の連結金具類に関する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、延線作業が完了した後、
1)第2カマレス金具に緊線用工具取付孔を介して緊線用工具を回動自在に連結する工程1と、
2)緊線用工具の第5連結軸を介して、4導体ヨークから接続されたセミ金車に回動自在に連結する工程2と、
3)セミ金車を牽引した状態で、第2カマレス金具から、延線用カマレス工具とこれに接続されたワイヤコネクタ及び延線用ワイヤを取り外す工程3と、
4)第2カマレス金具に、4導体ヨークの天側に連結された弛度調整金具を接続する工程4と、
5)接続された弛度調節金具を介して、4導体ヨークの天側に連結された送電線を緊線する工程5と、
6)工程5で緊線された送電線に連結された第2カマレス金具から、セミ金車の先端部に連結された緊線用工具を取り外す工程6と、
7)工程6で取り外した前記緊線用工具及び前記セミ金車を、第5連結軸を回動させることで、他の送電線に連結された前記第2カマレス金具に緊線用工具取付孔を介して接続する工程7と、
8)セミ金車を牽引した状態で、第2カマレス金具から、延線用カマレス工具とこれに接続されたワイヤコネクタ及び延線用ワイヤを取り外す工程8と、
9)第2カマレス金具に、4導体ヨークの地側に連結された弛度調整金具を接続する工程9と、
10)接続された弛度調節金具を介して、4導体ヨークの地側に連結された送電線を緊線し、この送電線に連結された第2カマレス金具から、第7工程で接続した緊線用工具及びこれに連結されたセミ金車を取り外す工程10と、
を有すること特徴とする緊線工法であるため、従来の工法のようにセミ金車を付け替える必要がないことから、作業効率が向上し、作業時間を大幅に短縮することができる。
また、作業工数を削減することで、作業員の安全性を向上させることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に記載の緊線工法で用いる連結金具類であって、延線完了後緊線時において、第2カマレス金具の第3連結軸から取り外すことが可能な延線用カマレス工具を含むため、取り外した延線用カマレス工具を繰り返し延線作業に使用することができ、延線等の作業を簡便な作業工数でおこなうことができる。さらに、作業工数を削減することで、作業員の安全性を向上させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、緊線用工具が、接続箇所においてセミ金車及び連結金具dと垂直方向に屈曲することを特徴とする、請求項2に記載の連結金具類であるため、緊線用工具と、セミ金車及び連結金具dが垂直方向となることで取り外しや連結作業が容易となり、作業効率が向上し、作業時間を大幅に短縮することができる。
また、例えば水平方向に屈曲する連結金具と比較し、連結時に必要な金具の部品点数を少なくすることができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、緊線時に取り外す延線用カマレス工具の代替用連結金具は、直角クレビス、直角クレビスリンク、直角リンク、角度クレビス、角度クレビスリンク、及び角度リンクからなる群から選択され、クロムモリブデン鋼等の特殊材料を用いた高価なカマレス金具ではなく、架空送電線の工法等に通常使用されている工具で、軽量且つ汎用性の高い材料を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る緊線工法で用いる連結金具類の全体を示す平面図である。(a)は上面から見た平面図、(b)は(a)の90°側面方向において、矢印で指示した部分の側面図(矢視図)である。
【
図2】本発明に係る緊線工法で用いる連結金具類の一部を示す平面図である。(a)は上面から見た平面図、(b)は(a)の90°側面方向を示した側面図である。
【
図3】本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程1及び2を示す側面図である。
【
図4】本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程3を示す側面図である。
【
図5】本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程3を示す側面図である。
【
図6】本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程4を示す側面図である。
【
図7】本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程4を示す側面図である。
【
図8】本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程5を示す側面図である。
【
図9】本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程5を示す側面図である。
【
図10】本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程6を示す側面図である。
【
図11】本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程7を示す側面図である。
【
図12】本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程8を示す側面図である。
【
図13】本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程8を示す側面図である。
【
図14】本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程9を示す側面図である。
【
図15】本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程9を示す側面図である。
【
図16】本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程10を示す側面図である。
【
図17】従来の緊線工法において使用する連結金具類を示した平面図である。(a)は上面から見た平面図、(b)は(a)の90°側面方向を示した側面図である。
【
図18】従来の緊線工法において使用する連結金具類に使用されるカマレス金具を示した平面図である。(a)は上面から見た平面図、(b)は(a)の90°側面方向を示した側面図である。
【
図19】本発明の緊線工法において使用する連結金具類中の汎用性カマレス金具の一例を示した図である。(a)は上面から見た平面図、(b)は(a)の90°側面方向を示した側面図、(c)は(b)の状態から、第2カマレス金具に緊線用工具取付孔を介して緊線用工具を回動自在に連結させた状態の側面方向を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る緊線工法の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1~16を参照して本発明に係る緊線工法について説明する。
【0018】
以下、本発明に係る緊線工法の一例について詳述する。尚、以下に詳述する工法は一例であって、これに限定されない。
尚、以下の例では、本発明に係る連結金具類(1)を用いて緊線作業を実施しているが、これに限定されず、下記工程を実施できる連結金具類(1)であり、当業者に自明のものであれば、いかなるものを用いても良い。
【0019】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る連結金具類(1)の上面から見た平面図であり、(b)は(a)の90°側面方向を示した側面図である。
図1に示した本発明に係る連結金具類は、鉄塔に支持される碍子連に連結された4導体ヨーク(22)、送電線の弛度調整金具(24)、連結金具a(25)、連結金具b(26)、連結金具c(27)、連結金具d(28)、セミ金車(18)、延線用カマレス工具(4)、緊線用工具(17)、並びに送電線を把持する短尺クランプ(3)に連結された2つの第1カマレス金具(7)及び第2カマレス金具(8)を含む。
【0020】
図2に示す如く、本発明に係る連結金具類(1)には、第1カマレス金具(7)及び第2カマレス金具(8)が含まれている。これらのカマレス金具には、従来から送電線の緊線作業等で用いられ、汎用性のある直角クレビス(30)、直角クレビスリンク(32)、角度クレビス、角度クレビスリンク、直角リンク(31)、角度リンク等当業者に自明のものであれば、いかなるものでも用いることができる。
【0021】
連結金具類(1)における第1カマレス金具(7)及び第2カマレス金具(8)は、第2連結軸(12)で連結されることにより一体化する。
連結金具類(1)における第1カマレス金具(7)及び第2カマレス金具(8)、及び延線用カマレス工具(4)は、平面視略楕円形状を呈しており、短尺クランプ(3)側から、第1カマレス金具(7)、第2カマレス金具(8)、延線用カマレス工具(4)の順にワイヤコネクタ(6)へ連結されている。
連結金具類(1)の構成部品は夫々長手方向の端部に連結軸を備えており、短尺クランプ(3)と第1カマレス金具(7)は第1連結軸(11)、第1カマレス金具(7)と第2カマレス金具(8)は第2連結軸(12)、第2カマレス金具(8)と延線用カマレス工具(4)は第3連結軸(13)、延線用カマレス工具(4)とワイヤコネクタ(6)は第4連結軸(14)で回動自在に連結されている。
また、緊線作業時には、緊線用工具(17)が第2カマレス金具(8)の緊線用工具取り付け孔(16)を介して回動自在に連結される。
【0022】
連結金具類(1)における第1カマレス金具(7)、第2カマレス金具(8)、及び延線用カマレス工具(4)の形状は平面視略楕円形状に限定されず、第1カマレス金具(7)と第2カマレス金具(8)とを一体化することができる形状であれば、例えば、長円状、矩形状等、いかなる形状であってもよい。
また、第2連結軸(12)と第3連結軸(13)の形状は、第1カマレス金具(7)及び第2カマレス金具(8)と回動自在に連結することができる形状であり、当業者に自明のものであれば、いかなる形状であってもよい。
【0023】
叙上の通り、連結金具類(1)における第1カマレス金具(7)、第2カマレス金具(8)、及び延線用カマレス工具(4)等の連結機構は特に限定されないが、例えば、第1カマレス金具(7)及び第2カマレス金具(8)の両端に設けられたコッタピンにより連結してもよい。
尚、第2連結軸(12)及び第3連結軸(13)にはコッタピンだけでなく、例えばボルト等、連結に通常用いられる部材であり、当業者に自明である部材であれば、いかなるものでも用いることができる。
【0024】
図3は、本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程1及び2を示す側面図であり、第2カマレス金具(8)に緊線用工具取付孔(16)を介して緊線用工具(17)を回動自在に連結させ、続けて緊線用工具(17)の第5連結軸(15)を介して、4導体ヨーク(22)から接続されたセミ金車(18)に回動自在に連結させる工程を示している。
なお、工程1は、
図19(c)に示したように、第2カマレス金具(8)に緊線用工具取付孔(16)を介して緊線用工具(17)を回動自在に連結させた状態である。
【0025】
セミ金車(18)は、送電線の緊線作業において、4導体ヨーク(22)に連結された状態で、第2カマレス金具(8)を弛度調整金具(24)に連結させるまで送電線(2)を保持するために用いられる。
【0026】
図4は、本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程3を示す側面図であり、
図3で緊線用工具(17)にセミ金車(18)を連結させた後、セミ金車(18)を牽引する工程を示している。
【0027】
図5は、本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程3を示す側面図であり、セミ金車(18)を牽引した状態で、第2カマレス金具(8)から、延線用カマレス工具(4)とこれに接続されたワイヤコネクタ(6)及び延線用ワイヤ(5)を取り外す工程を示している。
本発明に係る緊線用工具(17)に使用できる工具は、例えば、特殊平行クレビスやUクレビス等が挙げられるが、当業者に自明である部材であればいかなるものでも用いることができる。
【0028】
本発明に係る連結金具類(1)中で、延線用カマレス工具(4)は取り外すことが可能であり、延線用カマレス工具(4)を取り外して緊線作業をおこなう。
これにより、緊線作業時に用いる部品点数を削減することができ、作業性を向上させると共に作業時間(特に高所での作業時間)を削減することができる。
尚、緊線作業時に取り外す延線用カマレス工具(4)は特に限定されず、直角クレビス、直角クレビスリンク、直角リンク、角度クレビス、角度クレビスリンク、及び角度リンク等、送電線(2)の延線作業時に通常用いられ、当業者に自明のものであれば、いかなるものでも用いることができる。
【0029】
図6及び
図7は、本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程4を示す側面図であり、第2カマレス金具(8)に、4導体ヨーク(22)の天側に連結された弛度調整金具(24)を接続する工程を示している。
【0030】
図8及び
図9は、本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程5を示す側面図であり、接続された弛度調節金具(24)を介して、4導体ヨークの天側に連結された送電線(2)を緊線する工程を示している。
図8では、
図7で接続した弛度調整金具(24)を使用して緊線作業を開始し、
図9の状態になると緊線作業が完了する。
【0031】
図10は、本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程6を示す側面図であり、工程5で緊線された送電線(2)に連結された第2カマレス金具(8)から、セミ金車(18)の先端部に連結された緊線用工具(17)を取り外す工程を示している。
【0032】
図11は、本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程7を示す側面図であり、工程6で取り外した緊線用工具(17)を、セミ金車(18)に接続された連結工具d(28)の第5連結軸(15)を回動させることで、他の送電線(2)に連結された第2カマレス金具(8)に緊線用工具取付孔(16)を介して接続する工程を示している。
【0033】
図12及び
図13は、本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程8を示す側面図であり、
図12は、工程7の後にセミ金車(18)を牽引した状態、
図13は、セミ金車(18)を牽引した状態で第2カマレス金具(8)から、延線用カマレス工具(4)とこれに接続されたワイヤコネクタ(6)及び延線用ワイヤ(5)を取り外す工程を示している。
【0034】
図14及び
図15は、本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程9を示す側面図であり、第2カマレス金具(8)に、4導体ヨーク(22)の地側に連結された弛度調整金具(24)を接続する工程を示している。
【0035】
図16は、本発明に係る緊線工法の一実施形態における工程10を示す側面図であり、接続された弛度調節金具(24)を介して、4導体ヨーク(22)の地側に連結された送電線(2)を緊線し、この送電線(2)に連結された第2カマレス金具(8)から、工程7で接続した緊線用工具(17)、及び連結工具d(28)を介して緊線用工具(17)に連結されたセミ金車(18)を取り外す工程を示している。
【0036】
図17は、従来の緊線工法における連結金具類(1)を示した平面図である。
従来の緊線工法においては、4導体ヨーク(22)の天側及び地側それぞれに対してセミ金車を設ける必要があったため、緊線作業の効率が悪く、セミ金車の付け替え作業に時間を要していた。
しかし、本発明に係る緊線工法においては、4導体ヨーク(22)の天側及び地側を1本のセミ金車(18)で緊線することで作業効率を改善し、作業時間を大幅に短縮した。
また、作業工数を削減したことで、作業員の安全性を向上させた。
【0037】
図18は、従来の緊線工法における連結金具類(1)に使用されるカマレス金具を示した平面図である。
従来の緊線工法における連結金具類(1)は、
図18に示す如く直角クレビスリンク(32)のみで構成されていた。
【0038】
しかし、
図19のように、本発明の緊線工法における連結金具類に使用される汎用性カマレス金具は、その一例を挙げると、直角クレビス(30)、直角リンク(31)、及び直角クレビスリンク(32)の他、角度クレビス、角度リンク、及び角度クレビスリンク等、当業者に自明な工具であればいかなるものを用いても構わない。
【実施例0039】
(緊線工程に要する作業時間の測定)
本発明に係る緊線工法における各工程の平均作業時間(分)を測定し、従来の緊線工法に要する作業時間と比較した。本発明に係る緊線工法、及び従来の緊線工法のいずれも、工程毎に3回以上測定した値の平均値を算出した。
本発明に係る緊線工法における作業時間の測定は、
図3~
図16に記載の工法を実施しておこなった。
【0040】
従来の緊線工法では、本発明に係る緊線工法の工程6と工程7との間に、工程11としてセミ金車を付け替える工程が必要となる。
工程11は、具体的には、天側のヨークに取り付けられているセミ金車にロープを巻き付けて吊り下げ、セミ金車とヨークとの連結ボルトを外す。続けてセミ金車をロープで吊り下げ、地側のヨークとの連結部まで移動させて連結しロープを外すまでの工程である。
【0041】
表1は本発明に係る緊線工法に必要な平均時間と、従来の緊線工法に必要な時間を比較したものである。
【0042】
【0043】
表1に記載の通り、本発明に係る緊線工法に必要な作業時間(分)は従来工法と比較し、工程11が不要である分だけ短縮され、合計では約3分の2に短縮されたことがわかった。
この結果より、本発明に係る緊線工程における作業効率は、従来の工法よりも大幅に向上していることが明らかとなった。
本発明に係る緊線工法及びこの緊線工法で用いる連結金具類は、送電線の延線後、延線時にのみ使用する延線用カマレス工具を取り外すことで、該延線用カマレス工具を繰り返し使用することができると共に、後の緊線における連結作業も容易となり、尚且つ送電線毎にセミ金車の付け替えが不要であることから、緊線における作業時間の短縮、作業効率の向上、工期短縮を実現した。加えて、作業員の安全性の向上のために有効に使用することができる。
それゆえに、本発明に係る緊線工法及びこの緊線工法で用いる連結金具類は、鉄塔間における緊線作業に好適に利用できる。