(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094525
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ワーク加工用保護シートおよびワーク個片化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20230628BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230628BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20230628BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230628BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20230628BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 Q
H01L21/304 622J
H01L21/304 631
C09J7/38
C09J201/00
C09J7/29
C09J5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152984
(22)【出願日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2021209814
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂尻 浩祐
(72)【発明者】
【氏名】田村 和幸
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 孝文
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】LDBGによりワークを研削してワーク個片化物を得る場合であっても、研削後のワーク個片化物のクラック発生率を低減できるワーク加工用保護シートを提供すること。
【解決手段】基材と、基材上に配置された粘着剤層と、を有するワーク加工用保護シートであって、基材は、支持材と軟質材とを有し、支持材の一方の主面上に軟質材と粘着材層とがこの順で配置されており、基材の引張弾性率と基材の厚さとの積が、100,000N/m以上であり、軟質材の引張弾性率が450MPa以下であるワーク加工用保護シートである。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に配置された粘着剤層と、を有するワーク加工用保護シートであって、
前記基材は、支持材と軟質材とを有し、前記支持材の一方の主面上に前記軟質材と前記粘着材層とがこの順で配置されており、
前記基材の引張弾性率と前記基材の厚さとの積が、100,000N/m以上であり、
前記軟質材の引張弾性率が450MPa以下であるワーク加工用保護シート。
【請求項2】
前記基材はさらに緩衝材を有し、前記緩衝材は、前記支持材の他方の主面上に配置されている請求項1に記載のワーク加工用保護シート。
【請求項3】
前記粘着剤層の厚さが50μm未満である請求項1または2に記載のワーク加工用保護シート。
【請求項4】
前記支持材の厚さが20μm以上80μm以下である請求項1または2に記載のワーク加工用保護シート。
【請求項5】
前記軟質材の厚さが10μm以上75μm以下である請求項1または2に記載のワーク加工用保護シート。
【請求項6】
前記緩衝材の厚さが10μm以上75μm以下である請求項1または2に記載のワーク加工用保護シート。
【請求項7】
前記軟質材の応力緩和率が50%以下である請求項1または2に記載のワーク加工用保護シート。
【請求項8】
内部に改質領域が形成されたワークの裏面を研削することによりワークをワーク個片化物に個片化する工程において、ワークの表面に貼付されて使用される請求項1または2に記載のワーク加工用保護シート。
【請求項9】
請求項1または2に記載のワーク加工用保護シートを、ワークの表面に貼付する工程と、
前記ワークの表面もしくは裏面から前記ワーク内部に改質領域を形成する工程と、
前記ワーク加工用保護シートが表面に貼付され、かつ前記改質領域が形成されたワークを裏面側から研削して、前記改質領域を起点として複数のワーク個片化物に個片化させる工程と、
個片化が済んだワークから、前記ワーク加工用保護シートを剥離する工程と、を有するワーク個片化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク加工用保護シートおよびワーク個片化物の製造方法に関する。特に、ワークの裏面研削を行い、その応力等でワークを個片化する方法に好適に使用されるワーク加工用保護シート、および、当該ワーク加工用保護シートを用いるワーク個片化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の小型化、多機能化が進む中、それらに搭載される半導体チップも同様に、小型化、薄型化が求められている。チップの薄型化のために、半導体ウエハの裏面を研削して厚さ調整を行うことが一般的である。また、薄型化されたチップを得るために、ウエハの表面側から所定深さの溝をダイシングブレードにより形成した後、ウエハ裏面側から研削を行い、研削によりウエハを個片化し、チップを得る先ダイシング法(DBG:Dicing Before Grinding)と呼ばれる工法を利用することもある。DBGでは、ウエハの裏面研削と、ウエハの個片化を同時に行うことができるので、薄型チップを効率よく製造できる。
【0003】
従来、半導体ウエハ等のワークの裏面研削時や、DBGによる半導体チップ等のワーク個片化物の製造時には、ワーク表面の回路を保護し、また、ワーク及びワーク個片化物を保持するために、ワーク表面にバックグラインドシートと呼ばれる粘着テープを貼付するのが一般的である。
【0004】
DBGにおいて使用するバックグラインドシートとしては、基材と、基材の一方の面に設けられた粘着剤層とを備える粘着テープが使用されている。このような粘着テープの一例として、特許文献1には、ヤング率の高い基材と、基材の一方の面に緩衝層が設けられ、他方の面に粘着剤層が設けられた粘着テープが開示されている。
【0005】
近年、先ダイシング法の変形例として、レーザーでウエハ内部に改質領域を設け、ウエハ裏面研削時の応力等でウエハの個片化を行う方法が提案されている。以下、この方法をLDBG(Laser Dicing Before Grinding)と記載することがある。LDBGでは、ウエハは改質領域を起点として結晶方向に切断されるため、ダイシングブレードを用いた先ダイシング法よりもチッピングの発生を低減できる。また、ダイシングブレードによりウエハ表面に所定深さの溝を形成するDBGと比較して、ダイシングブレードによりウエハを削り取る領域がないため、つまり、カーフ幅が極小であるため、チップの収率に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の粘着テープを用いて、LDBGにより、ウエハ等のワークの個片化を行うと、チップ等のワーク個片化物に印加される剪断力により、ワーク個片化物が僅かに動いてしまい、ワーク個片化物同士の接触が発生するという問題があった。その結果、ワーク個片化物にクラック(意図しないひび)が生じる確率(クラック発生率)が高くなってしまう。クラック発生率が高くなることは、上述したように、カーフ幅が極小であることにも起因している。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、LDBGによりワークを研削して個片化されたワーク個片化物を得る場合であっても、研削後のワーク個片化物のクラック発生率を低減できるワーク加工用保護シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、以下の通りである。
[1]基材と、基材上に配置された粘着剤層と、を有するワーク加工用保護シートであって、
基材は、支持材と軟質材とを有し、支持材の一方の主面上に軟質材と粘着材層とがこの順で配置されており、
基材の引張弾性率と基材の厚さとの積が、100,000N/m以上であり、
軟質材の引張弾性率が450MPa以下であるワーク加工用保護シートである。
[2]基材はさらに緩衝材を有し、緩衝材は、支持材の他方の主面上に配置されている[1]に記載のワーク加工用保護シートである。
[3]粘着剤層の厚さが50μm未満である[1]または[2]に記載のワーク加工用保護シートである。
[4]支持材の厚さが20μm以上80μm以下である[1]から[3]のいずれかに記載のワーク加工用保護シートである。
[5]軟質材の厚さが10μm以上75μm以下である[1]から[4]のいずれかに記載のワーク加工用保護シートである。
[6]緩衝材の厚さが10μm以上75μm以下である[1]から[5]のいずれかに記載のワーク加工用保護シートである。
[7]軟質材の応力緩和率が50%以下である[1]から[6]のいずれかに記載のワーク加工用保護シートである。
[8]内部に改質領域が形成されたワークの裏面を研削することによりワークをワーク個片化物に個片化する工程において、ワークの表面に貼付されて使用される[1]から[7]のいずれかに記載のワーク加工用保護シートである。
【0010】
[9][1]から[8]のいずれかに記載のワーク加工用保護シートを、ワークの表面に貼付する工程と、
ワークの表面もしくは裏面からワーク内部に改質領域を形成する工程と、
ワーク加工用保護シートが表面に貼付され、かつ改質領域が形成されたワークを裏面側から研削して、改質領域を起点として複数のワーク個片化物に個片化させる工程と、
個片化が済んだワークから、ワーク加工用保護シートを剥離する工程と、を有するワーク個片化物の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、LDBGによりワークを研削して個片化されたワーク個片化物を得る場合であっても、研削後のワーク個片化物のクラック発生率を低減できるワーク加工用保護シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】
図1Aは、本実施形態に係るワーク加工用保護シートの一例を示す断面模式図である。
【
図1B】
図1Bは、本実施形態に係るワーク加工用保護シートの他の例を示す断面模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るワーク加工用保護シートがワークの表面に貼付された様子を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、具体的な実施形態に基づき、図面を用いて詳細に説明する。まず、本明細書で使用する主な用語を説明する。
【0014】
ワークとは本実施形態に係るワーク加工用保護シートが貼付されて、その後、個片化される板状体を言う。ワークとしては、円形(ただし、オリエンテーションフラットを有する場合を含む)のウエハ、角形のパネルレベルパッケージおよびモールド樹脂封止を施したストリップ(短冊形基板)等が挙げられ、その中でも本発明の効果が得られ易い観点から、ウエハが好ましい。ウエハとしては、例えばシリコンウエハ、ガリウム砒素ウエハ、炭化ケイ素ウエハ、窒化ガリウムウエハ、インジウム燐ウエハなどの半導体ウエハや、ガラスウエハ、タンタル酸リチウムウエハ、ニオブ酸リチウムウエハなどの絶縁体ウエハであってもよく、また、ファンアウトパッケージ等の作製に用いる樹脂と半導体から成る再構成ウエハであってもよい。本発明の効果が得られ易い観点から、ウエハとしては、半導体ウエハまたは絶縁体ウエハが好ましく、半導体ウエハがより好ましい。
【0015】
ワークの個片化は、ワークを回路毎に分割し、ワーク個片化物を得ることを言う。例えば、ワークがウエハである場合には、ワーク個片化物はチップであり、ワークがパネルレベルパッケージまたはモールド樹脂封止を施したストリップ(短冊形基板)である場合には、ワーク個片化物は半導体パッケージである。
【0016】
ワークの「表面」は、回路、電極等が形成された面を指し、ワークの「裏面」は、回路等が形成されていない面を指す。電極としては、バンプ等の凸状電極であってもよい。
【0017】
DBGとは、ワークの表面側に所定深さの溝を形成した後、ワーク裏面側から研削を行い、研削によりワークを個片化する方法を言う。ワークの表面側に形成される溝は、ブレードダイシング、レーザーダイシング、プラズマダイシングなどの方法により形成される。
【0018】
また、LDBGとは、DBGの変形例であり、レーザーでワーク(例えばウエハ)内部に脆弱な改質領域を設け、ワーク裏面研削時の応力等により、改質領域を起点とする亀裂を進展させてワークの個片化を行う方法を言う。
【0019】
「ワーク個片化物群」とは、ワークの個片化後に、本発明に係るワーク加工用保護シート上に保持された、複数のワーク個片化物をいう。これらのワーク個片化物は、全体として、ワークの形状と同様の形状を構成する。また、「チップ群」とは、ワークとしてのウエハの個片化後に、本発明に係るワーク加工用保護シート上に保持された、複数のチップをいう。これらのチップは、全体として、ウエハの形状と同様の形状を構成する。
【0020】
「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
【0021】
「エネルギー線」は、紫外線、電子線等を指し、好ましくは紫外線である。
【0022】
「重量平均分子量」は、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。このような方法による測定は、たとえば、東ソー社製の高速GPC装置「HLC-8120GPC」に、高速カラム「TSK guard column HXL-H」、「TSK Gel GMHXL」、「TSK Gel G2000 HXL」(以上、全て東ソー社製)をこの順序で連結したものを用い、カラム温度:40℃、送液速度:1.0mL/分の条件で、検出器を示差屈折率計として行われる。
【0023】
剥離シートは、粘着剤層を剥離可能に支持するシートである。シートとは、厚みを限定するものではなく、フィルムを含む概念で用いる。
【0024】
粘着剤層用組成物等の組成物に関する説明における質量比は、有効成分(固形分)に基づいており、特段の説明が無い限り、溶媒は算入しない。
【0025】
(1.ワーク加工用保護シート)
本実施形態に係るワーク加工用保護シート1は、
図1Aに示すように、基材10と、基材10上に配置された粘着剤層20と、を有している。また、基材10は、支持材12と軟質材14とを有している。ワーク加工用保護シート1において、軟質材14は、支持材12と粘着剤層20との間に配置されている。支持材12から見ると、支持材12の一方の主面12a上に軟質材14と粘着剤層20とがこの順で積層されている。
【0026】
本実施形態では、
図2に示すように、ワーク加工用保護シート1は、ワーク100(例えばウエハ)の表面100aに粘着剤層20の主面20aが貼付されて使用される。ワーク100の表面100aは回路、電極等を有する面である。回路を有する面は、回路が露出している面であってもよいし、回路を保護するために回路上に形成されている保護層の主面であってもよい。また、回路上に、バンプ等の凸状電極が形成されていてもよい。
【0027】
本実施形態では、ワーク加工用保護シートが貼付されたワークは、複数のワーク個片化物(例えばチップ)に個片化される。ワークを個片化する方法としては、DBGを採用してもよいが、本実施形態に係るワーク加工用保護シート1は、LDBGによるワークの個片化に好適に用いられる。
【0028】
したがって、ワークの内部に改質領域が形成された後に、ワーク加工用保護シート1が表面100aに貼付されたワーク100(例えばウエハ)は、表面100aとは反対側の主面である裏面100bが研削される。
【0029】
研削が進行すると、ワークが薄くなっていくことと同時に、ワークの内部に形成された改質領域に印加された剪断力および圧力により、改質領域に亀裂が生じてワーク両面まで進展する。その結果、ワークが個片化される。LDBGによる個片化では、ワークから削り取られる領域がほぼないので、ワーク個片化物(ワーク個片化物群)において、ワーク個片化物と隣り合うワーク個片化物との間隔(カーフ幅)は非常に小さい。
【0030】
また、ワークが個片化されるタイミングは同時ではなく、ワークの一部が個片化され始めてから、ワーク全体が個片化されるまで研削は進行する。したがって、ワーク個片化物にも、研削ホイールによる剪断力が印加され続ける。平滑ではない研削ホイール表面が絶えず回転しながらワーク個片化物群に接触しているため、すべてのワーク個片化物に同時に同じ剪断力が印加されてはおらず、ワーク個片化物に印加される剪断力はワーク個片化物ごとに異なる。そのため、ワーク平面(すなわち、ワーク個片化物群の平面)と平行方向において、個々のワーク個片化物の移動がばらばらに生じ、かつカーフ幅が小さいので、ワーク個片化物同士が接触することがある。このような接触が生じると、ワーク個片化物にクラックが生じて、ワーク個片化物の収率が低下してしまうという問題が生じる。
【0031】
本実施形態に係るワーク加工用保護シートは、後述する基材および粘着剤層を有しているので、上記の問題の発生を効果的に抑制することができる。
【0032】
ワーク加工用保護シートは、
図1Aに記載の構成に限定されず、本発明の効果が得られる限りにおいて、他の層を有していてもよい。すなわち、基材10と粘着剤層20とが上述した構成を有していれば、たとえば、支持材12と軟質材14との間に他の層が形成されていてもよいし、粘着剤層20を被着体に貼り付けするまで粘着剤層20を保護するために、粘着剤層20の主面20aに剥離シートが配置されていてもよい。
【0033】
特に、本実施形態では、
図1Bに示すように、上記の問題の発生をさらに抑制する観点では、基材10が、支持材12および軟質材14に加えて、さらに緩衝材16を有していることが好ましい。緩衝材16は、支持材12において、軟質材14が形成されている主面12aとは反対側の主面12b上に形成されている。緩衝材16を有していることにより、上記の問題の発生をさらに抑制することができる。
【0034】
一方で、原材料のコストを低減する観点や、構成する厚い層が増えることによって基材製造時の厚みバラツキが生じるリスクを低減する観点においては、緩衝材16を実質的に有しないことが好ましい。実質的に有しないとは、緩衝材が全く存在しない又は厚みが1μm未満であることを言う。
【0035】
以下では、
図1Bに示すワーク加工用保護シート1の構成要素について詳細に説明する。
【0036】
(2.基材)
本実施形態では、
図1Aおよび
図1Bに示すように、基材は複数の構成材を有する複合材である。すなわち、
図1Aでは、基材10は、支持材12と軟質材14とから構成され、
図1Bでは、基材10は、支持材12、軟質材14および緩衝材16から構成される。また、本実施形態では、基材は以下に示す物性を有している。
【0037】
(2.1 基材の引張弾性率と基材の厚さとの積)
基材は、ワークに剪断力と圧力とが印加されるワークの研削時において、粘着剤層に固定されたワークを十分に保持し、ワーク加工用保護シート全体が歪まない程度の剛性を有する必要がある。本実施形態では、このような剛性を基材の引張弾性率(ヤング率)と基材の厚さとの積により評価する。
【0038】
本実施形態では、基材の引張弾性率と基材の厚さとの積は100,000N/m以上である。基材の引張弾性率と基材の厚さとの積が上記の範囲内であることにより、ワーク加工用保護シートとしての剛性が確保されてワーク個片化物の動きが生じにくくなるので、ワーク研削後のワーク個片化物のクラック発生率を抑制することができる。なお、たとえば、基材の引張弾性率が2500MPaであり、基材の厚さが100μmである場合には、基材の引張弾性率と基材の厚さとの積は250,000N/mとなる。
【0039】
基材の引張弾性率と基材の厚さとの積は、150,000N/m以上であることが好ましく、180,000N/m以上であることがより好ましく、200,000N/m以上であることがさらに好ましい。
【0040】
一方、基材の引張弾性率と基材の厚さとの積の上限は特に制限されないが、基材のワーク加工用保護シートの貼付作業性およびコスト等の観点から、600,000N/m以下であることが好ましく、400,000N/m以下であることがより好ましく、300,000N/m以下であることがさらに好ましい。
【0041】
基材の引張弾性率および基材の厚さは、これらの積が上記の範囲内となるように調整すればよい。本実施形態では、基材の引張弾性率は1000~4000MPaの範囲内であることが好ましく、1300~3000MPaの範囲内であることがより好ましい。また、基材の厚さは50~200μmの範囲内であることが好ましく、70~150μmの範囲内であることがより好ましい。
【0042】
本実施形態では、基材の引張弾性率は23℃における引張弾性率(ヤング率)である。引張弾性率は、JIS K 7127に準じて測定される。すなわち、JIS K 7127に規定されている測定方法と同様に測定するが、測定条件が異なっていてもよい。具体的な測定方法は実施例において説明する。
【0043】
以下では、基材の構成要素である支持材、軟質材および緩衝材について説明する。
【0044】
(2.2 支持材)
支持材は、基材の剛性を担う部材である。本実施形態では、支持材は、バックグラインドテープの基材として使用されている各種の樹脂フィルムから構成される。支持材の材質としては、基材の引張弾性率と基材の厚さとの積が上記の範囲内となるように選択すればよい。
【0045】
本実施形態では、支持材を構成する樹脂フィルムとして、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、全芳香族ポリエステル等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、二軸延伸ポリプロピレン等のフィルムが挙げられる。これらの中から、2種以上の樹脂フィルムを組み合わせてもよい。
【0046】
また、支持材の厚さも、基材の引張弾性率と基材の厚さとの積が上記の範囲内となるように選択すればよい。
【0047】
本実施形態では、基材の引張弾性率と基材の厚さとの積をより容易に上記の範囲内にできる観点から、支持材の材質は、ポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。また、支持材の厚さは20μm以上80μm以下の範囲内であることが好ましい。なお、同じ材質であっても、密度が高くなると、引張弾性率も高くなる傾向にある。
【0048】
また、支持材は、本発明の効果を損なわない範囲において、可塑剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、フィラー、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、触媒等を含んでいてもよい。また、支持材は、透明なものであっても、不透明なものであってもよい。たとえば、ワーク加工用保護シートの識別のために、支持材は着色層を有していてもよい。
【0049】
支持材の少なくとも一方の主面には、主面上に形成される軟質材、または、軟質材および緩衝材との密着性を向上させるために、コロナ処理等の接着処理を施してもよい。また、支持材の少なくとも一方の主面には、主面上に形成される軟質材、または、軟質材および緩衝材との密着性を向上させるために、易接着層が形成されていてもよい。
【0050】
易接着層を形成する易接着層形成用組成物としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等を含む組成物が挙げられる。易接着層形成用組成物には、必要に応じて、架橋剤、光重合開始剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填剤、防錆剤、顔料、染料等を含有してもよい。
【0051】
易接着層の厚さとしては、好ましくは0.01~10μm、より好ましくは0.03~5μmである。
【0052】
なお、本実施形態では、支持材の厚さには、支持材を構成する樹脂フィルムの厚さに加えて、上述した着色層、易接着層等の厚さも含まれる。
【0053】
(2.3 軟質材)
軟質材は、支持材よりも軟質の部材である。軟質材は、ワークの研削時において、ワーク個片化物に印加される剪断力を緩和するために、以下の物性を有している。
【0054】
(2.3.1 軟質材の引張弾性率)
本実施形態では、軟質材の引張弾性率(ヤング率)は450MPa以下である。軟質材の引張弾性率が上記の範囲内であることにより、軟質材が適度なクッション性を示し、研削時にワーク個片化物に印加される剪断力を和らげることができる。その結果、ワーク研削後のワーク個片化物のクラック発生率を抑制することができる。
【0055】
軟質材の引張弾性率は、400MPa以下であることが好ましく、370MPa以下であることがより好ましく、340MPa以下であることがさらに好ましく、200MPa以下であることが特に好ましい。
【0056】
一方、軟質材の引張弾性率の下限は特に制限されないが、軟質材を安定して取り扱うことの容易さおよびコスト等の観点から、100MPa以上であることが好ましい。
【0057】
本実施形態では、軟質材の引張弾性率は、基材の引張弾性率と同様に、23℃における引張弾性率である。軟質材の引張弾性率は、JIS K 7127に準じて測定される。すなわち、JIS K 7127に規定されている測定方法と同様に測定するが、測定条件が異なっていてもよい。具体的な測定方法は実施例において説明する。
【0058】
(2.3.2 軟質材の応力緩和率)
軟質材の応力緩和率は50%以下であることが好ましい。ワークの研削が進行し、ワークが複数のワーク個片化物に個片化され始め、個片化前の繋がった状態、および個片化後のワーク個片化物が混在するタイミングにおいて、研削ホイールによって個々のワーク個片化物に印加される圧力に不均一さが生じることがある。印加される圧力が不均一になったワーク個片化物のうち、圧力が若干高い領域に位置するワーク個片化物は、軟質材の応力緩和率が高い場合には、高圧力によってワーク加工用保護シートの方向に向かって押し込まれて(軟質材が変形して)、ワーク個片化物に傾きが生じやすい傾向にある。その結果、動いたワーク個片化物に意図しない負荷が生じ易かったり、ワーク個片化物同士がより接触しやすくなることで、クラックが発生し易い傾向にある。
【0059】
したがって、軟質材の応力緩和率が上記の範囲内であることにより、ワーク個片化物への圧力に伴って生じる軟質材の変形を抑制できるので、ワーク研削後のワーク個片化物のクラック発生率をより低減することができる。
【0060】
軟質材の応力緩和率は、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
【0061】
一方、軟質材の応力緩和率の下限は特に制限されないが、軟質材の物性およびコスト等の観点から、5%以上であることが好ましい。
【0062】
本実施形態では、軟質材の応力緩和率は引張試験機を用いて測定される。具体的な測定方法は実施例において説明する。
【0063】
(2.3.3 軟質材の材質)
本実施形態では、軟質材は樹脂フィルムから構成されることが好ましい。軟質材の材質は、軟質材の引張弾性率(および必要に応じて軟質材の応力緩和率)が上記の範囲内となるように選択すればよい。
【0064】
本実施形態では、軟質材の材質は、ポリオレフィン樹脂フィルムであることが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、たとえば、超低密度ポリエチレン(VLDPE,密度:880kg/m3以上、910kg/m3未満)、低密度ポリエチレン(LDPE,密度:910kg/m3以上、942kg/m3未満)、高密度ポリエチレン(HDPE,密度:942kg/m3以上)等のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン-ポリプロピレン共重合体、オレフィン系エラストマー(TPO)、シクロオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。これらのポリオレフィン樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
上記ポリオレフィン樹脂の中でも、軟質材の物性を上記の範囲内とする観点から、ポリエチレン樹脂が好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)がより好ましい。なお、同じ材質であっても、密度を低くすると、引張弾性率も低くできる傾向にある。
【0066】
軟質材の厚さは、上述したクッション性を発揮する観点から、10μm以上であることが好ましい。一方、軟質材の厚さが大きすぎると、研削時にワーク加工用保護シート全体がせん断方向に変形しやすくなるので、ワーク個片化物の移動が生じやすくなりクラックが発生しやすくなる傾向にある。したがって、このような観点から、軟質材の厚さは75μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましい。
【0067】
また、支持材の厚さと軟質材の厚さとの比(支持材の厚さ/軟質材の厚さ)は特に制限されないが、製造上の観点から、0.5~5の範囲内であることが好ましい。
【0068】
軟質材は、本発明の効果を損なわない範囲において、可塑剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、フィラー、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、触媒等を含んでいてもよい。また、軟質材は、透明であっても、不透明であってもよく、所望により着色または蒸着されていてもよい。
【0069】
(2.4 緩衝材)
本実施形態では、緩衝材は、ワーク加工用保護シートにおいて、任意の構成要素である。ワーク加工用保護シートを貼付したワーク(例えばウエハ)は、研削時にワーク加工用保護シートを介して吸着テーブル上に配置される。このとき、基材において、粘着剤層が形成されていない側の面が吸着テーブルに接する。粘着剤層が形成されていない側の面に緩衝材が形成されていると、緩衝材は、吸着テーブル上の異物等に起因する凹凸を埋め込みながら吸着テーブルと密着する。その結果、異物に起因するワーク個片化物(例えばチップ)のクラックを低減することができる。したがって、基材が緩衝材を有することにより、クラック発生率をさらに低減することができる。
【0070】
上記の機能を発揮する観点から、緩衝材は支持材よりも軟質の部材である。本実施形態では、緩衝材は樹脂フィルムから構成されることが好ましい。緩衝材の材質は、ポリオレフィン樹脂フィルムであることが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、たとえば、超低密度ポリエチレン(VLDPE,密度:880kg/m3以上、910kg/m3未満)、低密度ポリエチレン(LDPE,密度:910kg/m3以上、942kg/m3未満)、高密度ポリエチレン(HDPE,密度:942kg/m3以上)等のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン-ポリプロピレン共重合体、オレフィン系エラストマー(TPO)、シクロオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。これらのポリオレフィン樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
上記ポリオレフィン樹脂の中でも、緩衝材の材質としては、ポリエチレン樹脂が好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)がより好ましい。
【0072】
緩衝材の厚さは、上述した異物埋め込み性を発揮する観点から、10μm以上であることが好ましい。一方、緩衝材の厚さが大きすぎると、研削時にワーク加工用保護シート全体がせん断方向に変形しやすくなるので、クラックが発生しやすくなる傾向にある。したがって、緩衝材の厚さは75μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましい。
【0073】
(3.粘着剤層)
粘着剤層は、ワークの表面(すなわち回路、電極等が形成された面)に貼付され、表面から剥離されるまで、表面を保護し、ワークを支持する。粘着剤層は1層(単層)から構成されていてもよいし、2層以上の複数層から構成されていてもよい。粘着剤層が複数層を有する場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層を構成する層の組み合わせは特に制限されない。
【0074】
本実施形態では、粘着剤層の厚さは、50μm未満であることが好ましく、45μm以下であることがより好ましく、40μm以下であることがさらに好ましい。粘着剤層の厚さが上記の範囲内であることにより、研削時に印加されるワークまたはワーク個片化物群への圧力に起因するワーク個片化物の微小な動きを抑制することができる。その結果、ワーク個片化物同士が接触する確率が低くなり、クラック発生率を抑制することができる。
【0075】
一方、ワークに形成された回路、電極等を粘着剤層に埋め込む観点から、粘着剤層の厚さは10μm以上であることが好ましい。
【0076】
なお、粘着剤層の厚さは、粘着剤層全体の厚さを意味する。たとえば、複数層から構成される粘着剤層の厚さは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0077】
粘着剤層の組成は、ワークの表面を保護できる程度の粘着性を有していれば限定されない。本実施形態では、粘着剤層は、たとえば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等から構成されることが好ましい。
【0078】
また、粘着剤層は、エネルギー線硬化性粘着剤から形成されることが好ましい。ワーク加工用保護シートの粘着剤層がエネルギー線硬化性粘着剤から形成されることにより、ワークに貼付する際には高い粘着力でワークに貼り付き、ワークから剥離される際には、エネルギー線を照射することで粘着力を低下させることができる。そのため、ワークの回路等を適切に保護しつつ、ワーク加工用保護シートを剥離する際、ワーク表面の回路、電極等の破壊、ワーク上への粘着剤の付着が防止される。
【0079】
本実施形態では、エネルギー線硬化性粘着剤は、アクリル系粘着剤を含む粘着剤組成物から構成されることが好ましい。アクリル系粘着剤は、アクリル系重合体を含有する。
【0080】
アクリル系重合体としては、公知のアクリル系重合体であればよいが、本実施形態では、官能基含有アクリル系重合体が好ましい。官能基含有アクリル系重合体は、1種類のアクリル系モノマーから形成された単独重合体であってもよいし、複数種類のアクリル系モノマーから形成された共重合体であってもよいし、1種類または複数種類のアクリル系モノマーとアクリル系モノマー以外のモノマーとから形成された共重合体であってもよい。
【0081】
本実施形態では、官能基含有アクリル系重合体は、アルキル(メタ)アクリレートと官能基含有モノマーとを共重合したアクリル系共重合体であることが好ましい。
【0082】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0083】
官能基含有モノマーは、反応性官能基を含有するモノマーである。反応性官能基は、後述する架橋剤等の他の化合物と反応することが可能な官能基である。官能基含有モノマー中の官能基としては、たとえば、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基が挙げられ、水酸基が好ましい。
【0084】
水酸基含有モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)が挙げられる。
【0085】
アクリル系重合体は、さらに、エネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性物質が、アクリル系重合体が有する官能基と反応(例えば付加反応)して得た、エネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性のアクリル系重合体であることが好ましい。エネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性物質としては、エネルギー線硬化性基の他に、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシ基から選ばれる1種または2種以上を有する化合物が好ましく、イソシアネート基を有する化合物がより好ましい。前記イソシアネート基は、官能基含有アクリル系重合体の水酸基に付加反応させることができる。
【0086】
イソシアネート基を有する化合物としては、たとえば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0087】
粘着剤組成物は、アクリル系重合体に加え、エネルギー線硬化性化合物を含有することが好ましい。エネルギー線硬化性化合物としては、分子内に不飽和基を有し、エネルギー線照射により重合硬化可能なモノマー又はオリゴマーが好ましい。
【0088】
このようなエネルギー線硬化性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート,ポリエーテル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等のオリゴマーが挙げられる。
【0089】
これらの中でも、比較的分子量が高く、粘着剤層のせん断貯蔵弾性率を低下させにくい観点から、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0090】
エネルギー線硬化性化合物の分子量(オリゴマーの場合は重量平均分子量)は、好ましくは100~12000、より好ましくは200~10000、さらに好ましくは400~8000、特に好ましくは600~6000である。
【0091】
粘着剤組成物におけるエネルギー線硬化性化合物の含有量は、アクリル系重合体100質量部に対して、好ましくは5~100質量部、より好ましくは10~70質量部、さらに好ましくは15~40質量部である。
【0092】
粘着剤組成物は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤は、たとえば、官能基と反応して、官能基含有アクリル系重合体に含まれる樹脂同士を架橋する。
【0093】
架橋剤としては、たとえば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0094】
粘着剤の凝集力を向上させて粘着剤層の粘着力を向上させる観点、および入手の容易性の観点から、架橋剤はイソシアネート系架橋剤であることが好ましい。
【0095】
粘着剤組成物は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。粘着剤組成物が光重合開始剤を含有することにより、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0096】
光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられる。具体的には、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、ベンジルジメチルケタール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β-クロールアンスラキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが例示される。
【0097】
(4.ワーク加工用保護シートの製造方法)
本実施形態に係るワーク加工用保護シートを製造する方法は公知の方法であればよい。
【0098】
まず、支持材と軟質材とを有する基材を製造する。たとえば、支持材を構成する樹脂フィルムと、軟質材を構成する樹脂フィルムと、を積層して基材を製造する。
【0099】
樹脂フィルムと樹脂フィルムとを積層する方法としては、一方の樹脂フィルム(たとえば、支持材を構成する樹脂フィルム)の一方の主面に形成された易接着層を介して、他方の樹脂フィルム(たとえば、軟質材を構成する樹脂フィルム)を貼り合わせて積層するドライラミネーション法が例示される。
【0100】
ドライラミネーション法では、易接着層を備える樹脂フィルムを用いてもよいし、コロナ処理等の接着処理が施された面上に易接着層形成用組成物を塗工して易接着層を形成した樹脂フィルムを用いてもよい。なお、樹脂フィルムと易接着層との間に別の層が形成されてもよい。このような別の層として、ワーク加工用保護シートの識別性を高めるための着色層が例示される。
【0101】
また、Tダイ製膜機等を使用して、軟質材を構成する樹脂を溶融・混練し、支持材を一定の速度にて移動させながら、支持材の一方の面側に、溶融した樹脂を押出してラミネートする方法が例示される。さらに、ヒートシール等により、軟質材を支持材上に直接積層する方法が例示される。
【0102】
なお、支持材と軟質材と緩衝材とを有する基材を製造する場合、緩衝材は、軟質材と同様にして、支持材上に形成すればよい。
【0103】
続いて、粘着剤層を形成するための組成物として、たとえば、粘着剤層を構成する粘着剤組成物、または、当該粘着剤組成物を溶媒で希釈した組成物(この2つの組成物を「塗布剤」と称す。)を調製する。調製した塗布剤を、剥離フィルムの剥離面に塗布し、必要に応じて乾燥させ剥離フィルム上に粘着剤層を形成する。その後、基材の軟質材側の面と、粘着剤層の露出面とを貼り合わせて、基材上に粘着剤層が形成されたワーク加工用保護シートが得られる。また、調製した塗布剤を、基材の軟質材側の面に直接塗布して、粘着剤層を形成してもよい。
【0104】
(5.ワーク個片化物の製造方法)
本発明に係るワーク加工用保護シートは、上述したように、LDBGを利用してワークを個片化する方法に好適に使用される。
【0105】
ワーク加工用保護シートの非限定的な使用例として、以下に、LDBGを利用するワーク個片化物(例えばチップ)の製造方法について具体的に説明する。
【0106】
ワーク個片化物の製造方法は、具体的には、以下の工程1~工程4を少なくとも備える。
工程1:上記のワーク加工用保護シートを、ワークの表面に貼付する工程
工程2:当該ワークの表面もしくは裏面から当該ワーク内部に改質領域を形成する工程
工程3:ワーク加工用保護シートが表面に貼付され、かつ改質領域が形成されたワークを裏面側から研削して、改質領域を起点として、複数のワーク個片化物に個片化させる工程
工程4:個片化が済んだワーク(すなわち、複数のワーク個片化物)から、ワーク加工用保護シートを剥離する工程
【0107】
以下、上記ワーク個片化物の製造方法の各工程を詳細に説明する。説明には、ワークの具体例としてウエハを用い、ワーク個片化物の具体例としてチップを用いる。
【0108】
(工程1)
工程1では、ウエハ表面に、本実施形態に係るワーク加工用保護シートの粘着剤層を貼付する。本工程は、後述する工程2の後に行ってもよいが、ワーク加工用保護シートを貼付する際にウエハが意図せずに個片化するリスクを低減する観点から、工程2の前に行われることが好ましい。
【0109】
本製造方法で用いられるウエハの研削前の厚さは特に限定されないが、通常は500~1000μm程度である。
【0110】
また、ウエハの表面に回路が形成されている。ウエハ表面への回路の形成は、エッチング法、リフトオフ法などの従来汎用されている方法を含む様々な方法により行うことができる。
【0111】
形成された回路は露出していてもよいし、回路を保護するために回路保護層が形成されていてもよい。回路保護層は、通常、回路保護層を構成する組成物を塗布し熱硬化して形成される。また、回路に、バンプ、ピラー等の凸状電極が形成されていてもよい。
【0112】
(工程2)
工程2では、ウエハの表面または裏面からウエハの内部に改質領域を形成する。
【0113】
本工程で形成される改質領域は、ウエハにおいて、脆質化された部分である。改質領域では、ウエハに印加される剪断力および圧力による亀裂が生じやすい。このような亀裂はウエハの分割の起点となる。すなわち、工程2において改質領域は、後述する工程3において、ウエハが分割されてチップに個片化される際の分割線に沿うように形成される。
【0114】
改質領域の形成は、ウエハの内部に焦点を合わせたレーザーの照射により行う。したがって、改質領域は、ウエハの内部に形成される。レーザーの照射は、ウエハの表面側から行っても、裏面側から行ってもよい。なお、工程2を工程1の後に行いウエハの表面からレーザー照射を行う場合、ワーク加工用保護シートを介してウエハにレーザーを照射することになる。
【0115】
ワーク加工用保護シートが貼付され、かつ改質領域を形成したウエハは、吸着テーブル上に載せられ、吸着テーブルにより保持される。この際、ウエハの表面側がワーク加工用保護シートを介して吸着テーブル側に配置され吸着される。
【0116】
(工程3)
工程1および工程2の後、吸着テーブル上のウエハの裏面を研削して、ウエハを複数のチップに個片化する。
【0117】
ここで、裏面研削は、研削面(ウエハ裏面)が改質領域に至るまで行ってもよいが、研削面が厳密に改質領域まで至らなくてもよい。すなわち、改質領域を起点としてウエハが分割され個片化されたチップが得られるように、改質領域に近接する位置まで研削すればよい。
【0118】
また、研削ホイールを用いた裏面研削の終了後、ドライポリッシュ等のストレスリリーフを行ってもよい。
【0119】
個片化されたチップの形状は、方形でもよいし、矩形等の細長形状となっていてもよい。また、個片化されたチップの厚さは特に限定されないが、好ましくは5~100μm程度、より好ましくは10~45μmである。LDBGによれば、個片化されたチップの厚さを50μm以下、より好ましくは10~45μmとすることが容易になる。また、個片化されたチップの大きさは、特に限定されない。たとえば、チップ面積が好ましくは600mm2未満、より好ましくは400mm2未満、さらに好ましくは120mm2未満である。
【0120】
本実施形態に係るワーク加工用保護シートを使用することにより、裏面研削(工程3)終了後のチップにクラックが生じることが低減される。
【0121】
(工程4)
次に、個片化されたウエハ(すなわち、チップ群)から、ワーク加工用保護シートを剥離する。本工程は、例えば、以下の方法により行う。
【0122】
まず、ワーク加工用保護シートの粘着剤層が、エネルギー線硬化性粘着剤から形成される場合には、エネルギー線を照射して粘着剤層を硬化する。例えば、エネルギー線の照度は、120~280mW/cm2、エネルギー線の光量は、100~1000mJ/cm2であることが好ましい。エネルギー線としては、紫外線が好ましい。次いで、チップ群の裏面側に、ピックアップテープを貼付し、ピックアップが可能なように位置および方向合わせを行う。この際、ウエハの外周側に位置するリングフレームもピックアップテープに貼り合わせ、ピックアップテープの外周縁部をリングフレームに固定する。ピックアップテープには、ウエハとリングフレームとを同時に貼り合わせてもよいし、別々のタイミングで貼り合わせてもよい。次いで、ピックアップテープ上に保持された複数のチップからワーク加工用保護シートを剥離する。
【0123】
その後、ピックアップテープ上にある複数のチップをピックアップする。次いで、装置用の基板等の上にチップを固定して、装置を製造する。例えば、チップが半導体の場合には、半導体装置用の基板等の上にチップを固定して、半導体装置を製造する。
【0124】
なお、ピックアップテープは、特に限定されないが、例えば、基材と、基材の一方の面に設けられた粘着剤層とを備える粘着シートである。
【0125】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の態様で改変しても良い。
【実施例0126】
以下、実施例を用いて、発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0127】
本実施例における測定方法および評価方法は以下の通りである。
【0128】
(基材の引張弾性率と基材の厚みとの積)
実施例および比較例で作製した基材を長さ130mm、幅15mmのサイズにカットし、引張弾性率を測定するための測定用試料を得た。その際、測定用試料の長辺(130mm)は基材作製時の流れ方向と平行する方向とし、測定用試料の短辺(15mm)は流れ方向に直交する方向とした。引張試験機(製品名「オートグラフ(登録商標)AG-IS 500N」、SHIMADZU社製)により、200mm/分の速度、初期の掴み具間距離(すなわち、測定用試料の長さ)は100mmの条件で、23℃の環境で、得られた測定用試料を測定用試料の長さ方向に引張り、測定結果から23℃における引張弾性率(ヤング率)の値を算出した。この値を基材の23℃における引張弾性率(単位:MPa)とした。得られた引張弾性率の値から、基材の引張弾性率と基材の厚みとの積を算出した。結果を表1に示す。
【0129】
(軟質材の引張弾性率)
実施例および比較例で作製した軟質材を長さ130mm、幅15mmのサイズにカットし、引張弾性率を測定するための測定用試料を得た。得られた測定用試料を用いて、上記の基材の引張弾性率の測定方法と同じ測定方法により、軟質材の23℃における引張弾性率(ヤング率)(単位:MPa)を算出した。結果を表1に示す。
【0130】
(軟質材の応力緩和率)
実施例および比較例で作製した軟質材を長さ130mm、幅15mmのサイズにカットし、応力緩和率を測定するための測定用試料を得た。引張試験機(製品名「オートグラフ(登録商標)AG-IS 500N」、SHIMADZU社製)を用いて、200mm/分の速度、初期の掴み具間距離は100mmの条件で、23℃の環境で、測定用試料を測定用試料の長さ方向に引張り、測定用試料が10%(すなわち、掴み具間距離は110mm)伸張した時点で引張りを停止し、停止したときの応力A(N/m2)と、測定用試料の伸張停止から1分後の応力B(N/m2)とを測定した。測定された応力AおよびBの値から、下記の式により応力緩和率を算出した。
応力緩和率={(A-B)/A}×100(%)
【0131】
(クラック発生率)
直径12インチ、厚み780μmのワークとしてのシリコンウエハに、実施例および比較例で製造したワーク加工用保護シートを、バックグラインド用テープラミネーター(リンテック社製、装置名「RAD-3510F/12」)を用いて貼付した。レーザーソー(ディスコ社製、装置名「DFL7361」)を用い、ウエハに格子状の改質領域を形成した。なお、格子サイズは10mm×10mmとした。
【0132】
次いで、裏面研削装置(ディスコ社製、装置名「DGP8761」)を用いて、改質領域を形成したウエハのワーク加工用保護シートを貼付した面の反対面をウエハ(チップ群)の厚さが18μmになるまで研削(ドライポリッシュを含む)を行い、ウエハを複数のチップに個片化した。研削工程後にエネルギー線(紫外線)照射を行い、ワーク加工用保護シートの貼付面の反対面にダイシングテープ(リンテック社製、Adwill D-175D*)を貼付後、ワーク加工用保護シートを剥離した。その後、個片化されたチップをDFL7361で観察し、長さが10μm以上のクラックが少なくとも1つ発生したチップをクラックが発生したチップとし、以下の式に基づき、クラック発生率(%)を算出した。その際、円形のチップ群の円周部の、10mm×10mmに満たないサイズのチップ(例えば、三角形状のチップ)は観察対象から除外した。クラック発生率が5.0%以下である場合を「良好」、それ以外の場合を「不良」と評価した。
クラック発生率(%)=(クラックが発生したチップ数/全チップ数)×100
【0133】
(実施例1)
(1)基材
まず、支持材として、PETフィルム(厚み:50μm、23℃におけるヤング率:4300MPa)を準備した。
【0134】
準備したPETフィルムの一方の面に、厚さ2.5μmの易接着層を設け、軟質材として、破断エネルギーが48MJ/m3、密度が919kg/m3、厚さが25μmである、無色透明の低密度ポリエチレン(LDPE1)をドライラミネーション法により貼り合わせた。続いて、PETフィルムの他方の面に、厚さ2.5μmの易接着層を設け、緩衝材として、破断エネルギーが48MJ/m3、密度が919kg/m3、厚さが25μmである、無色透明の低密度ポリエチレン(LDPE1)をドライラミネーション法により貼り合わせて、支持材と軟質材と緩衝材とが積層された基材を得た。基材の厚さは105μmであった。
【0135】
なお、上記の軟質材及び緩衝材の破断エネルギー、及び以降の軟質材及び緩衝材の破断エネルギーの数値は、前記「軟質材の引張弾性率」の測定と同様の手順で、軟質材及び緩衝材を各々引張り、その後、破断するまで引張り続けた際に、歪みと応力から算出される値を採用したものである。
【0136】
(2)粘着剤層
(粘着剤層用組成物の調製)
n-ブチルアクリレート(BA)65質量部、メチルメタクリレート(MMA)20質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)15質量部を共重合して得たアクリル系重合体に、アクリル系重合体の全水酸基(100当量)のうち80当量の水酸基に付加するように、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を反応させて、エネルギー線硬化性のアクリル系共重合体(Mw:50万)を得た。
【0137】
このエネルギー線硬化性のアクリル系共重合体100質量部に、多官能ウレタンアクリレート系紫外線硬化性化合物(三菱ケミカル社製、製品名「UT-4332」)を10質量部、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、製品名「コロネートL」)を0.38質量部、光重合開始剤としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシドを1質量部配合し、メチルエチルケトンで希釈し、固形分濃度34質量%の粘着剤層用組成物の塗布剤を調製した。
【0138】
(ワーク加工用保護シートの作製)
剥離シート(リンテック社製、商品名「SP-PET381031」)のシリコーン剥離処理面に、上記で得た粘着剤層用組成物の塗布剤を塗工し、加熱乾燥させて、剥離シート上に厚さが40μmの粘着剤層を形成した。
【0139】
その後、基材の軟質材と、粘着剤層とを貼り合わせ、ワーク加工用保護シートを作製した。すなわち、
図1Bに示すワーク加工用保護シートを製造した。基材の構成および厚さと、粘着剤層の厚さを表1に示す。
【0140】
(実施例2)
破断エネルギーが61MJ/m3、密度が937kg/m3、厚さが25μmである、無色透明の低密度ポリエチレン(LDPE2)を軟質材および緩衝材として形成した以外は実施例1と同じ方法によりワーク加工用保護シートを製造した。基材の構成および厚さと、粘着剤層の厚さを表1に示す。
【0141】
(実施例3)
破断エネルギーが30MJ/m3、密度が940kg/m3、厚さが25μmである、無色透明の低密度ポリエチレン(LDPE3)を軟質材および緩衝材として形成した以外は実施例1と同じ方法によりワーク加工用保護シートを製造した。基材の構成および厚さと、粘着剤層の厚さを表1に示す。
【0142】
(実施例4)
支持材として、PETフィルム(厚み:50μm、23℃におけるヤング率:4300MPa)の一方の面に、厚さ2.5μmの易接着層を設け、破断エネルギーが48MJ/m
3、密度が919kg/m
3、厚さが25μmである、無色透明の低密度ポリエチレン(LDPE1)を軟質材として形成し、緩衝材を形成しない以外は実施例1と同じ方法によりワーク加工用保護シートを製造した。すなわち、
図1Aに示すワーク加工用保護シートを製造した。基材の構成および厚さと、粘着剤層の厚さを表1に示す。
【0143】
(実施例5)
破断エネルギーが30MJ/m3、密度が940kg/m3、厚さが25μmである、無色透明の低密度ポリエチレン(LDPE3)を軟質材として形成した以外は実施例4と同じ方法によりワーク加工用保護シートを製造した。基材の構成および厚さと、粘着剤層の厚さを表1に示す。
【0144】
(実施例6)
粘着剤層の厚さを60μmとした以外は実施例5と同じ方法によりワーク加工用保護シートを製造した。基材の構成および厚さと、粘着剤層の厚さを表1に示す。
【0145】
(実施例7)
支持材として、厚み40μmのPETフィルム(23℃におけるヤング率:4300MPa)を用いて、粘着剤層の厚さを30μmとした以外は実施例1と同じ方法によりワーク加工用保護シートを製造した。基材の構成および厚さと、粘着剤層の厚さを表1に示す。
【0146】
(実施例8)
支持材として、厚み40μmのPETフィルム(23℃におけるヤング率:4300MPa)を用いて、粘着剤層の厚さを30μmとした以外は実施例2と同じ方法によりワーク加工用保護シートを製造した。基材の構成および厚さと、粘着剤層の厚さを表1に示す。
【0147】
(実施例9)
軟質材の厚さを50μmとした以外は実施例4と同じ方法によりワーク加工用保護シートを製造した。基材の構成および厚さと、粘着剤層の厚さを表1に示す。
【0148】
(実施例10)
支持材として、厚み25μmのPETフィルム(23℃におけるヤング率:4300MPa)を用いた以外は実施例3と同じ方法によりワーク加工用保護シートを製造した。基材の構成および厚さと、粘着剤層の厚さを表1に示す。
【0149】
(比較例1)
破断エネルギーが19MJ/m3、密度が945kg/m3、厚さが25μmである高密度ポリエチレン(HDPE1)を軟質材および緩衝材として形成した以外は実施例1と同じ方法によりワーク加工用保護シートを製造した。基材の構成および厚さと、粘着剤層の厚さを表1に示す。
【0150】
(比較例2)
厚さが25μmである高密度ポリエチレン(HDPE1)を軟質材として形成した以外は実施例4と同じ方法によりワーク加工用保護シートを製造した。基材の構成および厚さと、粘着剤層の厚さを表1に示す。
【0151】
(比較例3)
支持材として、厚み25μmのPETフィルム(23℃におけるヤング率:4300MPa)を用いた以外は実施例1と同じ方法によりワーク加工用保護シートを製造した。基材の構成および厚さと、粘着剤層の厚さを表1に示す。
【0152】
得られた試料(実施例1~10および比較例1~3)に対して、上記の測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0153】
【0154】
表1より、基材の引張弾性率と基材の厚さとの積および軟質材の引張弾性率が上述した範囲内である場合には、ウエハをLDBGにより個片化しても、クラック発生率が低いことが確認できた。