(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009453
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】大型体重計
(51)【国際特許分類】
G01G 19/44 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
G01G19/44 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112757
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】522193547
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【弁理士】
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】浜野 強太
(57)【要約】
【課題】本体の下部に異物が侵入することを防ぐ遮蔽機構を備えた大型体重計を提供する。
【解決手段】被測定荷重が載加される計量台と、前記計量台の四隅に配置され、床面に着地される4本の脚と、前記計量台と前記脚との間に介装される荷重センサと、前記計量台の側縁に沿って、該計量台の下方に配置される遮蔽機構とを備え、前記荷重センサは、前記脚および前記遮蔽機構が取付けられる固定端と、前記計量台が取付けられる可動端を有し、前記遮蔽機構は、前記計量台の下方に突没可能で、前記計量台の側縁近傍の床面と接地/離間可能に構成される遮蔽部材を有するように構成される大型体重計を提供する。計量台側縁に沿って設けられた遮蔽機構の遮蔽部材が、床面に接地することで、大型体重計と載置される床面との隙間の入り口を塞ぎ、大型体重計の下方と床面の隙間に異物が侵入することを阻止する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定荷重が載加される計量台と、
前記計量台の四隅に配置され、床面に着地される4本の脚と、
前記計量台と前記脚との間に介装される荷重センサと、
前記計量台の側縁に沿って、該計量台の下方に配置される遮蔽機構と、
を備え、
前記荷重センサは、前記脚および前記遮蔽機構が取付けられる固定端と、前記計量台が取付けられる可動端を有し、
前記遮蔽機構は、前記計量台の下方に突没可能で、前記計量台の側縁近傍の床面と接地/離間可能に構成される遮蔽部材を有する、
ことを特徴とする大型体重計。
【請求項2】
前記遮蔽機構は、前記遮蔽部材を着脱可能に係止する係止部材を備え、
前記遮蔽部材は、前記係止部材から係止解除されることにより、少なくとも前記遮蔽部材の一部が下方へ移動して、前記計量台の側縁近傍の床面と接地するように構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の大型体重計。
【請求項3】
前記遮蔽部材は、前記計量台の側縁と略平行な回転軸で回動可能に構成される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の大型体重計。
【請求項4】
前記遮蔽部材は、固定される固定リンク体と、可動可能な第1可動リンク体および第2可動リンク体とが互いに連結される3リンク体構造の、前記第2可動リンク体として構成され、
前記固定リンク体は、前記固定端に取付けされ、
前記第2可動リンク体は、前記第1可動リンク体とおよび前記固定リンク体と、それぞれ長孔を介して連結されることで、前記長孔の範囲で移動および回動可能に構成され、
前記第2可動リンク体の前記固定リンク体との連結は、前記第2可動リンク体と前記第1可動リンク体との連結よりも前記計量台の側縁部側に配置される、
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の大型体重計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は大型体重計、特に体重計本体の下方への異物侵入を抑制可能な大型体重計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車椅子体重計や医療用秤など、大型の体重計がある。被測定者が、足を高く上げることなく計量台の上に乗ることができるように、計量台本体を薄く構成し、かつ脚を短くして床面と計量台との差が少なくなるように構成されている。また被測定者が転落しないように、計量台の載置面は厚みに対して大きく構成され、手すりなどの安全装置も設けられている。このため、全体が大型で重量の大きいものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような大型体重計では、例えばペンなどの落とし物が転がって、計量台下に入り込み、計量値に狂いを生じさせることがある。床面と計量台との差が小さいため、隙間に手を入れることが難しく、また大型であるため、一人で持ち上げてペンを取り出すことも容易ではない。使用者が、ペンが下方に入り込んだことすら気が付かずに、狂いの生じた計量値を知らずに使用し続ける場合もある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、計量台下への異物侵入を抑制可能な大型の体重計を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するため、本開示の大型体重計は、被測定荷重が載加される計量台と、前記計量台の四隅に配置され、床面に着地される4本の脚と、前記計量台と前記脚との間に介装される荷重センサと、前記計量台の側縁に沿って、該計量台の下方に配置される遮蔽機構とを備え、前記荷重センサは、前記脚および前記遮蔽機構が取付けられる固定端と、前記計量台が取付けられる可動端を有し、前記遮蔽機構は、前記計量台の下方に突没可能で、前記計量台の側縁近傍の床面と接地/離間可能に構成される遮蔽部材を有するように構成した。
【0007】
この態様によれば、計量台の側縁に沿って配置された遮蔽機構が、計量台側縁下の床面に接地することで、計量台下の空間の入り口を塞ぐシャッターとしての役割を果たし、計量台下に入り込もうとする異物の侵入を防ぐ。遮蔽機構は計量台下で荷重センサの固定端に取付けられるため、床面に接地しても離間しても、計量結果に影響はない。
【0008】
また、ある態様では、前記遮蔽機構は、前記遮蔽部材を着脱可能に係止する係止部材を備え、前記遮蔽部材は、前記係止部材から係止解除されることにより、少なくとも前記遮蔽部材の一部が下方へ移動して、前記計量台の側縁近傍の床面と接地するように構成した。この態様によれば、遮蔽機構が使用されない状態では係止部材に係止されて収納され、使用時には係止部材との係止を解除することにより使用状態となり、使い勝手がよい。
【0009】
また、ある態様では、前記遮蔽部材は、前記計量台の側縁と略平行な回転軸で回動可能に構成されるように構成した。遮蔽機構は回動により使用状態/収納状態が決定され、本構成がシンプルな構造で実装される。
【0010】
また、ある態様では、前記遮蔽部材は、固定される固定リンク体と、可動可能な第1可動リンク体および第2可動リンク体とが互いに連結される3リンク体構造の、前記第2可動リンク体として構成され、前記固定リンク体は、前記固定端に取付けされ、前記第2可動リンク体は、前記第1可動リンク体とおよび前記固定リンク体と、それぞれ長孔を介して連結されることで、前記長孔の範囲で移動および回動可能に構成され、前記第2可動リンク体の前記固定リンク体との連結は、前記第2可動リンク体と前記第1可動リンク体との連結よりも前記計量台の側縁部側に配置されるように構成した。この態様によれば、大型体重計の側面側にある遮蔽部材の端部を長孔の範囲で移動させると、内側の端部が長孔の範囲で移動する。移動させやすい外側端部を実質的なスイッチとして、巻き込み防止できる内側端部を移動させている。3リンク体構造を用いることで、操作性と実効性を両立させることができる。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、計量台下への異物侵入を抑制可能な大型体重計を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る大型体重計である。(A)が斜視図、(B)が正面図である。
【
図3】同大型体重計の
図1のA部の分解斜視図である。
【
図4】同大型体重計の
図1のVI-VI線に沿った端面図である。
【
図6】同大型体重計の垂直端面図である。切断面は係止部材を通過し、
図4の切断面と直交する。
【
図7】同大型体重計の正面図であり、遮蔽機構の動作を説明する説明図である。カバー部材は省略した。
【
図8】同大型体重計の鉛直端面図であり、遮蔽機構の動作を説明する説明図である。(A)が収納状態、(B)が、遮蔽部材が下方に降ろされた状態、(C)が使用状態である。
【
図9】第2の実施形態に係る大型体重計構成を示す概略構成図である。(A)が収納状態、(B)が使用状態である。
【
図11】第3の実施形態に係る大型体重計の構成を示す概略構成図である。(A)が収納状態、(B)が使用状態である。
【
図12】(A)が同大型体重計の側面図であり、使用状態を示す。(B)が同大型体重計の変形例である。
【
図13】第4の実施形態に係る大型体重計の構成を示す概略構成図である。(A)が正面図、(B)が使用状態における側面図である。
【
図14】第5の実施形態に係る大型体重計の構成を示す概略構成図である。(A)が収納状態、(B)が使用状態である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、以下の実施形態および変形例の説明において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0014】
(大型体重計100)
本開示の構成に係る好ましい実施形態を図面に従って説明する。
図1は、実施形態に係る大型体重計100を示す。(A)が正面斜視図、(B)が正面図である。
【0015】
図1に示すように、大型体重計100は車椅子体重計などの医療用の大型の体重計である。被測定荷重(被測定者)が載加される計量台20と、計量台20の下方の四隅に配置される脚8を有し、床面FLに脚8を着地させて使用される。
【0016】
被測定者が安全に乗り上げるため、計量台20は、踏面となる上面が広く、かつ全体が薄く構成されて、床面FL近くに配置される。歩行が不自由または困難な被測定者が掴まり立ちできるように、計量台20の左右の側縁には手すり4が立設している。車椅子に乗った被測定者も、車椅子のまま計量台20に乗りあげることができるように、計量台20には、床面FLに連なる緩勾配のスロープ3が備えられている。計量台20には、表示部5が立設しており、計量台20へ載加された荷重が、測定結果として表示部5に表示される。
【0017】
大型体重計100は、計量台20と床面FLとの隙間である空間SPに異物が侵入することを防止する遮蔽機構60を備える。遮蔽機構60は、計量台20の左右の側縁下方にそれぞれ設けられている。
【0018】
つぎに、大型体重計100の構成について説明する。大型体重計100は大型であるため、複数の分解斜視図を用いて、全体の機構から説明し、順に詳細な機構について説明していく。
【0019】
図2は、大型体重計100の分解斜視図である。大型体重計100は、カバー部材30、計量台20、複数の起歪体40、および前述の遮蔽機構60を備える。
【0020】
計量台20は、平面視矩形状で、大きさに対して高さが非常に低い扁平形状に構成される。計量台20は、計量台20の左右の側辺を構成するベース梁21,21、およびベース梁21,21の間に配置されて固定されるロードプレート22を有する。スロープ3はロードプレート22の一部として構成される。被測定者が足を大きく上げることなく計量台20へ上がることができるように、ロードプレート22はベース梁21の下方に固定される。
【0021】
計量台20の四隅の下方には、荷重センサである起歪体40が連結される。計量台20は起歪体40にのみ支持される。遮蔽機構60は一方向に長く構成されており、その長さはベース梁21と略同等で、ベース梁21と長手方向を合わせて、ベース梁21の下方に配置される。
【0022】
カバー部材30は、ベース梁21およびベース梁21に装着される図示しない演算装置などの内部機構の目隠し部材であり、ベース梁21を上から覆い、該ベース梁21に取付けられることで、ベース梁21および内部機構を外部から隠蔽する。カバー部材30には、手すり4および表示部5が立設しており、手すり4および表示部5を含むカバー部材30は、計量台20を介して起歪体40に装着される。カバー部材30は、床面FLからは離間して計量台20にのみ接触して該ベース梁21に支持されており、起歪体40と干渉することはない。このため、計量台20の上に乗った被測定者が、手すり4に掴まる、もたれ掛かるなどしても、測定値に影響はない。
【0023】
起歪体40では所定の標準状態から変化値が荷重として計算される。即ち、計量台20には何も置かれていない状態から、計量台20に載加されて重量として作用した負荷が、起歪体40で検出され、差分値が重量変換されて、表示部5に表示される。被測定者が車椅子に乗っていた場合、あらかじめ車椅子の重量を記憶させることで、差分値を計算して被測定者の体重を表示させることも可能である。
【0024】
(起歪体40)
図3は、大型体重計100のより詳細な分解斜視部である。
図1のA部、主として起歪体40周辺の分解図を示す。
図4は
図1のVI-VI線に沿ったA部の垂直端面図である。
【0025】
図3および
図4に示すように、起歪体40は、一方向に長い略直方体形状で、長手方向をベース梁21と揃えて、ベース梁21下方に配置される。起歪体40の一方の端部が可動端41、もう一方の端部が固定端42であり、固定端42側をベース梁21の端部に向けて配置される。起歪体40の側方にはメガネ状の貫通孔が穿設されており、貫通孔の設けられた薄肉部に、図示しない歪みゲージが貼付けされている。固定端42を固定し、可動端41に荷重を付加することによって薄肉部が変形し、この変形が歪みゲージによって電気信号に変換され、重量値に変換される。
【0026】
可動端41の上面にはネジ穴43が設けられており、可動端41は平板状の中間部材46を挟んでベース梁21の底面に、固定部材6(ボルト)で締結される。
【0027】
ベース梁21は、複数の金属製の平板や中空材を溶接や締結により固定することで形成される。ベース梁21の下方には、起歪体40を収めるために収納空間Sが設けられている。起歪体40は収納空間Sに収まってベース梁21の下面に固定され、ベース梁21を下方から支持する。起歪体40とベース梁21の間に中間部材46が介装されており、起歪体40がベース梁21に接触することはない(後述の
図6も参照のこと)。ベース梁21に底面から上方に大きく窪んだ収納空間Sを設けて、収納空間Sの上面に起歪体40を固定することで、ベース梁21と起歪体40との固定面を高くし、相対的にベース梁21に固定されるロードプレート22の配置位置を下げている。ロードプレート22の上面は、被測定者の踏面であり、踏面をより床面FL近くに配置して、安全性を高めている。
【0028】
固定端42の底面には、固定プレート48が、平板状の中間部材47を間に挟んで、固定部材7(ボルト)にて締結されている。
【0029】
固定プレート48の下面には、床面FLに当接する脚8が配置されている。脚8の先端部にはネジ部が設けられており、脚8を回転させることで、固定プレート48からの突出量が変化する。即ち、脚8を回転させることで、床面が水平でなくても、脚8の突出量を調整することで、計量台20を水平となるように調整できる。
【0030】
固定プレート48には、遮蔽機構60も取り付けられる。遮蔽機構60は、係止部材61と金属板からなる遮蔽部材62を有する。
【0031】
係止部材61は、金属製の遮蔽部材62を磁力により着脱可能に係止するマグネットであり、固定プレート48に設けられたネジ穴48aに低頭ネジ9で下方から固定される。係止部材61には低頭ネジ9のネジ頭を収める凹部が形成されているため、低頭ネジ9のネジ頭は係止部材61に収まり、係止部材61の下面から突出しない。
【0032】
遮蔽部材62は大型体重計100の下方に侵入する異物を阻止する可動板である。遮蔽部材62は、ベース梁21と略同じ長さに構成される長尺平板部材で、ベース梁21の下方に、該ベース梁21と長さを合わせて配置される。
【0033】
遮蔽部材62には脚8の配置に対応して脚用孔62eが形成されている。遮蔽部材62は脚8を脚用孔62eに通して、固定プレート48に固定される。脚用孔62eは孔径が脚8の最大外径よりも大きく、遮蔽部材62は脚8に干渉することはない。
【0034】
ベース梁21の逆端側に配置された起歪体40にも同構成が備えられており、逆端側に配置されたもう一つの係止部材61と合わせて二つの係止部材61(マグネット)により、遮蔽部材62は二か所を吸着されて、安定して保持される。
【0035】
(遮蔽機構60)
遮蔽機構60について、詳しく説明する。
図5は遮蔽機構60の分解斜視図である。
図6は、
図1A部の概略構成を示し、係止部材61の位置で切断した鉛直端面図である。
図3の分解斜視図と共に
図5、
図6を用いて説明する。
【0036】
図5に示すように、遮蔽機構60は、前述の遮蔽部材62と、固定リンク体64、および可動リンク体63を有する。遮蔽部材62、固定リンク体64、可動リンク体63は互いに連結され、長孔を利用した3リンク体機構として構成される。
【0037】
固定リンク体64は3リンク体機構の固定部であり、完全に固定されて可動せず、固定リンク体64に連結される可動リンク体63を第1可動リンク体、遮蔽部材62を第2可動リンク体として、両可動リンク体だけが可動する構成となっている。
【0038】
固定リンク体64は、U字型の金属平板を直角に屈曲させた屈曲ブラケットであり、水平面64e,64eと鉛直面64dから成る。水平面64e,64eを固定プレート48の上面に、鉛直面64dを固定プレート48の側面に沿わせて配置され、水平面64eに形成された孔64bを挿通したボルト4が、固定プレート48の上面に形成されたネジ穴48bに挿通して螺合することで、固定プレート48に締結される(
図3参照)。
【0039】
鉛直面64dは、固定プレート48に締結された状態で、下方領域を固定プレート48の下面よりも下方に突出させており、突出部分に二つの軸孔64a,64cが設けられている。
【0040】
可動リンク体63は短い金属平板であり、表面には軸孔63bと、軸孔63bと比較して孔径の大きな挿通孔63aとが形成されている。
【0041】
長板状の遮蔽部材62は、短辺が折り曲げられて側面62dが形成されている。側面62dにおいて、一方の端部に縦長孔62cが、逆側の端部には横長孔62bが形成されている。ここで、縦長孔62cは、横長孔62bよりも大型体重計100の側面側(外側)の端部に形成される。
【0042】
まず、第3軸体53が、可動リンク体63の挿通孔63aに軸を挿通して、固定リンク体64の軸孔64aに固定される。これにより可動リンク体63が固定リンク体64に回動可能に支持される。
【0043】
つぎに、第1軸体51が、遮蔽部材62の縦長孔62cに挿通して、固定リンク体64の軸孔64cに固定される。加えて第2軸体52が、遮蔽部材62の横長孔62bに挿通して、可動リンク体63の軸孔63bに固定される。これにより、遮蔽部材62は、縦長孔62cおよび横長孔62bの範囲内で移動可能にかつ回動可能に支持される。すべての軸体はベース梁21の延伸方向に向けて水平配置されており、可動リンク体63および遮蔽部材62は、上下方向に回動可能に構成される。
【0044】
遮蔽部材62の上面には、金属平板を屈曲させて形成した係止部材受け部62aが溶接されている。係止部材受け部62aは、前述の係止部材61に当接して吸着保持される部位となる。
【0045】
図6に示すように、遮蔽機構60が使用されない収納状態においては、遮蔽部材62は、係止部材61に吸着されて、床面FLとは離間して略水平に保持される。遮蔽機構60の使用状態では、遮蔽部材62は係止部材61から外れて、床面FLに接地する。遮蔽部材62は、使用状態でも収納状態においても、脚8に干渉しない。
【0046】
固定リンク体64、可動リンク体63、および遮蔽部材62(詳しくは側面62d)から成る3リンク体構造における各リンク体の長さは、側面62dが最も長く、固定リンク体64および可動リンク体63の長さを足し合わせると、おおむね側面62dの長さとなる。このため、可動リンク体63と固定リンク体64での開度を上げると、可動リンク体63は回動しつつ、横長孔62bに沿って移動し、開度180度まで開くと、可動リンク体63と固定リンク体64は概ね直線配置となり、遮蔽部材62の側面62dと重なり合って、側面62dの背面に隠れる(
図3参照)。このように、各リンク体(63,64,62d)は平行配置が可能な構成となっている。
【0047】
(使用状態)
上記のように構成された遮蔽機構60の動きについて、
図7および
図8を用いて詳しく説明する。
図7は、カバー部材30を外した状態のA部正面図である。
図7(A)が、遮蔽機構60の収納状態であり、遮蔽部材62が係止部材61に吸着保持されている。
図7(B)が、遮蔽部材62が係止部材61から外された状態を示す。
図7(C)が、遮蔽機構60の使用状態を示す。
図8(A)~
図8(C)は、
図7(A)~(C)の係止部材61の位置で切断した端面図である。
図8は
図6に対応する。なお、
図7および
図8においては、大型体重計100の側面側を外側、大型体重計の中心側を内側と称して説明する。
【0048】
前述の通り、固定リンク体64、可動リンク体63、および遮蔽部材62(側面62d)は、それぞれが互いに第1軸体51、第2軸体52、第3軸体53の三つの軸体により閉じて連結された3リンク体機構となっている。ベース梁21の下方に配置された遮蔽部材62は、外側長辺を、大型体重計100の側面に露出させている(
図1参照)。
【0049】
図7(A)および
図8(A)に示すように、遮蔽機構60の収納状態においては、固定プレート48下面に固定された係止部材61に係止部材受け部61aが吸着され、遮蔽部材62は床面FLから離間して接触せず、概ね水平状態で保持されている。
【0050】
固定リンク体64と可動リンク体63は側面62dと平行な直線配置となり、3リンク体は全て、概ね水平に保持される。係止部材61の磁力により遮蔽部材62は上方に引き上げられており、縦長孔62cに挿通する第1軸体51は、縦長孔62cの下方に位置し、磁力によりこの状態が保たれる。
【0051】
遮蔽機構60を使用する場合、使用者が大型体重計100の側面からカバー部材30と遮蔽部材62の隙間に手を入れて、遮蔽部材62を下方へ押し下げる(
図7(B)および
図8(B)参照)。係止部材61から係止部材受け部62aとが離れ、遮蔽部材62の外側端部が縦長孔62cの範囲で下方に移動する。詳しくは、遮蔽部材62は第1軸体51および第2軸体52に連結されているため、第2軸体52を中心として、外側端部が縦長孔62cの範囲で下方に回動し、縦長孔62cに挿通する第1軸体51が、縦長孔62cの上端部に係る。
【0052】
磁力によって姿勢保持していた係止部材61から遮蔽部材62が外れたことにより、遮蔽部材62の内側端部が自然落下し、第2軸体52で横長孔62bにガイドされながら移動および回動し、床面FLに接地する(
図7(C)および
図8(C)参照)。
【0053】
遮蔽部材62が床面FLに接地した使用状態(
図7(C))から、収納状態(
図7(A))に戻す場合、大型体重計100の側面から遮蔽部材62とカバー部材30との隙間に手を入れて、遮蔽部材62の外側端部を上方に押し上げると、係止部材61の磁力により、遮蔽部材62が吸着され、内側端部も上方に移動し、水平状態となって保持される。遮蔽部材62の移動と共に、遮蔽部材62と第3軸体53で連結されている可動リンク体63も回動して水平状態となり、収納状態(
図7(A))に戻る。
【0054】
(作用効果)
遮蔽部材62は、計量台20の側縁に沿って計量台20下方に設けられ、使用状態では計量台20側縁下方の床面FLに接地して、計量台20と床面FLとの間の空間SPの入り口を塞ぎ、大型体重計100の下に異物が入り込むことを阻止する。例えばペンなどの異物が知らず誰かに蹴られて大型体重計100の下方に転がっても、遮蔽部材62により空間SPへの進入を阻止され、大型体重計100の下に入り込むことが防止される。
【0055】
大型体重計100の下方に異物が入り込むと、計量値に悪影響を与えることがあるが、遮蔽機構60によりこれを抑制することができる。特に大型体重計は、大型で重量があるため容易に持ち上げることができず、床面FLと計量台20との隙間も小さいため、空間SPに手を入れて異物を取り出すことも難しいことから、効果が高い。
【0056】
計量台20と脚の間に起歪体40が介装され、遮蔽機構60は脚8が固定される起歪体40の固定端42に固定プレート48および中間部材47を介して固定される。遮蔽機構60は起歪体40の可動端41側に固定された部品を接触することがないため、遮蔽部材62が床面FLから離間した収納状態においても、遮蔽部材62が床面に接地した使用状態においても、測定値に影響を与えることがない。また、従来から体重計にある部材(固定プレート48)に固定される構成から、既存の体重計に遮蔽機構60を後から追加して取付けることも可能である。
【0057】
大型体重計100を移動のために持ち上げると、遮蔽部材62が自然に回動して係止部材61に吸着され、収納状態となる。収納状態では、遮蔽部材62は磁力で吸着保持されており、運搬の際の傾斜や振動でも勝手に動くことはない。また、収納状態では遮蔽機構60全体が略水平に保持され、省スペースに収まる。遮蔽部材62の側面62dの背面に回動機構が隠れて目隠しされるため、大型体重計100の意匠に影響を与えない。
【0058】
本実施形態の遮蔽部材62においては、遮蔽部材62の回動支持する第1軸体51が外側(大型体重計100の側面側)に配置され、回動する遮蔽部材62の内側の端部が回動する。このため、大型体重計100の下への侵入を阻止された異物が、遮蔽部材62に乗り上げ、収納時の遮蔽部材62の回動に巻き込まれ、内部に入り込んでしまうことや収納を阻害することがない。
【0059】
また、係止部材61の連結される係止部材受け部62aは遮蔽部材62の中心よりも大型体重計100の外側寄りに配置され、縦長孔62cも遮蔽部材62の外側寄りに配置されている。また、遮蔽部材62の外側端部(外側の長辺)は、大型体重計100の側面に露出している。遮蔽機構60の操作は遮蔽部材62の端部を引き下げ/引き下ろしすることで行われるが、回動する内側の端部ではなく、支持される外側の端部から行われる。遮蔽部材62の外側の端部(外側長辺)は、大型体重計100の側面に露出している(
図1参照)。単純な回動構造では、操作端部と回動端部が同じとなるが、本実施形態では3リンク体構造を用いることで、操作端部とは逆側の端部を回動側端部とした。遮蔽機構60の収納/使用の操作は、露出する大型体重計100の側面のどこからでも行うことができ、使い勝手が良い。
【0060】
本実施形態においては、遮蔽機構60は大型体重計100の左右の側縁にそれぞれ設けられたが、これに限られず、大型体重計100の正面および背面の側縁にも遮蔽機構60を設け、空間SPの四方全てを塞ぐ構成としても良い。
【0061】
係止部材61にはマグネットを用いたが、これに限られず、凹凸係止構造や、フック構造など、他の公知の係止構造を用いても良い。
【0062】
(第2実施形態)回動型
図9は、第2実施形態に係る大型体重計200の概略構成を示す図である。大型体重計200は、遮蔽機構60の代わりに遮蔽機構160を備える以外は、大型体重計100と同等の形態となっている。
図9(A)が遮蔽機構160の収納状態、
図9(B)が遮蔽機構160の使用状態を示す。
【0063】
遮蔽機構160は、係止部材161と遮蔽部材162を含んで構成される。
【0064】
遮蔽部材162は、金属製の長尺板材であり、長手方向をベース梁21に合わせてベース梁21の下方に配置され、軸体154により、ベース梁21の長手方向を回転軸方向として、固定プレート48に回動可能に支持される。
【0065】
係止部材161は、金属製の遮蔽部材162を着脱可能に係止する係止部材である。遮蔽部材162は、係止部材161に吸着されると、磁力により床面FLから離間して略水平状態で保持され、係止部材161から離されると、自然落下により、軸体154を回転軸として端部が回動して、床面FLに当接する。
【0066】
遮蔽機構160では、軸体154は大型体重計200の側面側(外側)に配置される。これに対し、係止部材161は大型体重計200の内側に配置される。このため、遮蔽部材162は、外側の長辺が軸体154により回動可能に支持されて、内側の長辺が可動して床面FLに接地する。
【0067】
遮蔽機構160を使用の際には、使用者は、カバー部材30の内側で遮蔽部材162の短辺に触れて引き下げ、係止部材161から遮蔽部材162を引き離す。これにより遮蔽部材162が床面FLと当接し、大型体重計200の下方に異物が侵入することが防止される。遮蔽機構160はシンプルな構成で、効果が高い。
【0068】
図10は、第2実施形態に係る大型体重計200の変形例である大型体重計200Aを示す。大型体重計200Aに備えられる遮蔽機構160Aは、遮蔽機構160のミラー構成となっており、軸体154Aが内側配置、係止部材161Aが固定プレート48の外側配置となっている。このため、遮蔽部材162Aは、内側の長辺が軸体154Aにより回動可能に支持されて、外側の長辺が可動して床面FLに接地する。
【0069】
この構成によれば、遮蔽部材162Aの可動側の長辺が、大型体重計200Aの側面に露出するため、遮蔽機構160Aを使用の際には、使用者は、大型体重計200の側面に露出する遮蔽部材162Aの長辺のどこからでも、遮蔽部材162Aを引き下げることができる。
【0070】
(第3実施形態)突没型
図11は、第3実施形態に係る大型体重計300の概略構成を示す図である。大型体重計300は遮蔽機構60の代わりに遮蔽機構260を備える以外は、大型体重計100と同等の構成となっている。
図11(A)は遮蔽機構260の収納状態、
図11(B)は遮蔽機構260の使用状態を示す。
【0071】
遮蔽機構260は、遮蔽部材262と係止部材261を含んで構成される。
【0072】
遮蔽部材262はベース梁21と略同じ長さの平板であり、ベース梁21の外側側方の、ベース梁21とカバー部材30との隙間S2に、垂直配置される。
【0073】
係止部材261は、垂直配置された遮蔽部材262を係止する係止部材であり、隙間S2の下方に配置されて固定プレート48に固定される。
【0074】
遮蔽部材262は、係止部材261をガイドとして上下方向に移動可能に構成される。
図11(A)に示すように、遮蔽機構260が使用されない収納状態では、遮蔽部材262は、最も上方に配置された状態で係止部材261に係止され、床面FLから離間して、全体がカバー部材30の内側に隠された状態で保持される。
【0075】
遮蔽機構260を使用の際は、係止部材261による遮蔽部材262の係止を解除する。遮蔽部材262は、自然落下して、床面FLに当接する(
図11(B)参照)。使用解除の際は、遮蔽部材262を元の高さまで押し上げ、係止部材261に係止させることで、収納状態に戻すことができる。または、大型体重計300を持ち上げて倒立させることで、遮蔽部材262は重力により元の位置に戻るため、これを係止部材261で係止することで収納状態とすることができる。
【0076】
大型体重計300の側面に沿って上下方向に移動可能な遮蔽部材262が、床面FLと大型体重計300との間の空間SPの入口に設けられたシャッターとしての役割を果たし、大型体重計300の下方への異物の侵入を防ぐ。
【0077】
係止部材261の係止機構には、従来周知の構成が用いられる。係止部材261は、最上方配置された遮蔽部材262を保持するだけでなく、遮蔽部材262がどの位置でも保持するように保持機構を有してもよい。
【0078】
図12(A)は、大型体重計300の側面図であり、遮蔽機構260の使用状態を示す。
図12(B)は、大型体重計300の変形例である大型体重計300Aの側面図を示す。
【0079】
図12(A)で示される大型体重計300では、遮蔽部材262は一枚の平板であり、遮蔽機構260が使用状態では、遮蔽部材262の底面が床面FLと当接して、大型体重計300の下方に異物が侵入するのを防ぐ。
【0080】
図12(B)に示される大型体重計300Aにおいては、遮蔽部材262Aは、複数の平板280から成る。複数の平板280は、大型体重計300の側面に、疑似的に一枚の長尺な平板となるように並列に配置される。各平板280はそれぞれ独立して上下方向に移動可能に構成され、かつ、独立して係止部材261Aに係止/係止解除が可能となっている。
【0081】
このように構成された遮蔽部材262Aは、それぞれの平板280が個々に移動して床面FLに接地/接地解除するように構成されているため、高低差のある床面FLに好適な形態となっている。例えば、
図12(B)に示すように、床面FLに段差が存在した場合にも、低地/高地に関係なくそれぞれの平板280が床面FLに当接し、大型体重計300A下方の空間SPへの入り口を塞ぎ、大型体重計300下方へ異物が侵入するのを防ぐ。
【0082】
(第4実施形態)バルーン型
図13は、第4実施形態に係る大型体重計400の概略構成を示す図である。大型体重計400は遮蔽機構60の代わりに遮蔽機構360を備える以外は、大型体重計100と同等の構成となっている。
図13(A)は遮蔽機構360の正面図、
図13(B)は遮蔽機構360の側面図(使用状態)である。
【0083】
遮蔽機構360は、遮蔽部材362と係止部材361を含んで構成される。
【0084】
遮蔽部材362は、バルーンなどの袋状の膨縮部材で、図示しないエアポンプから内部にエアが送り込まれると膨張して体積が増大し、内部のエアが外部へ排出されると収縮して体積が減少する。
【0085】
係止部材361は固定プレート48に固定され、内部エアが放出された状態の遮蔽部材362を、内に収めて外部から隠匿する筐体である。また、係止部材361は、遮蔽部材362の開口部に設けられる弁を含み、エアポンプから遮蔽部材362内部へ送られるエアの流止を制御する。
【0086】
遮蔽部材362は主膨張方向を下方として、配置される。遮蔽機構360が使用される場合、遮蔽部材362の内部にエアが送り込まれ、遮蔽部材362は主として下方に膨張して床面FLに当接する(図中の二点鎖線で示す膨張状態の遮蔽部材362´参照)。使用解除の際には、弁が開いて内部のエアが排出され、収納状態に戻る。
【0087】
このような形態の遮蔽機構360は、床面FLが平面でない場合に、特に好適である。例えば、
図13(B)に示すように、床面FLが波打つ場合であっても、遮蔽部材362は床面に沿って当接するため、大型体重計400と床面FLとの間の空間SPの入り口を隙なく塞ぎ、側面の隙間から異物が大型体重計400の下方に入り込むことを防止する。
【0088】
(第5実施形態)蛇腹型
図14は、第5実施形態に係る大型体重計500の概略構成を示す図である。大型体重計500は遮蔽機構60の代わりに遮蔽機構460を備える以外は、大型体重計100と同等の構成となっている。
図14(A)は遮蔽機構460の収納状態、
図14(B)は遮蔽機構460の使用状態を示す。
【0089】
遮蔽機構460は、固定プレート48に固定される遮蔽部材462を含んで構成される。
【0090】
遮蔽部材462は、ベース梁21の延伸方向に延びる複数の長板の端部が交互に連結された蛇腹構造となっており、上方の端部を固定プレート48に固定され、下方に展開可能に配置される。
【0091】
遮蔽機構460が収納された状態では、蛇腹が折りたたまれて、床面FLから離間して保持される(
図14(A)参照)。使用の際には下方が引っ張られて、下端が床面FLに当接するまで展開する(
図14(B)参照)。遮蔽部材462が大型体重計500と床面FLとの間の空間SPの入り口を隙なく塞ぎ、側面の隙間から異物が空間SPに入り込むことを防止する。
【0092】
以上、本発明の好ましい実施形態や変形例について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
20 :計量台
40 :起歪体
41 :可動端
42 :固定端
60 :遮蔽機構
61 :係止部材
62 :遮蔽部材
62b :横長孔
62c :縦長孔
63 :可動リンク体
64 :固定リンク体
100 :大型体重計