(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094541
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】マスクブランク、転写用マスクの製造方法、および半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/58 20120101AFI20230628BHJP
G03F 1/50 20120101ALI20230628BHJP
【FI】
G03F1/58
G03F1/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022170315
(22)【出願日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2021209071
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野澤 順
(72)【発明者】
【氏名】堀込 康隆
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA06
2H195BA07
2H195BA10
2H195BB25
2H195BC24
2H195CA22
(57)【要約】
【課題】パターン形成用薄膜に微細なスペースパターンを形成することが可能なマスクブランクを提供する。
【解決手段】基板の主表面上に、パターン形成用薄膜、第1ハードマスク膜、第2ハードマスク膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、前記パターン形成用薄膜は、ケイ素および遷移金属から選ばれる少なくとも1以上の元素を含有し、前記第1ハードマスク膜は、クロムを含有し、前記第2ハードマスク膜は、タンタルを含有し、前記第2ハードマスク膜のタンタルは、酸素に対して不飽和なタンタルを含み、前記パターン形成用薄膜の膜厚は、20nm以上であり、前記第1ハードマスク膜の膜厚は、15nm以下であり、前記第2ハードマスク膜の膜厚は、10nm以下であることを特徴とするマスクブランクである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主表面上に、パターン形成用薄膜、第1ハードマスク膜、第2ハードマスク膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、
前記パターン形成用薄膜は、ケイ素および遷移金属から選ばれる少なくとも1以上の元素を含有し、
前記第1ハードマスク膜は、クロムを含有し、
前記第2ハードマスク膜は、タンタルを含有し、
前記第2ハードマスク膜のタンタルは、酸素に対して不飽和なタンタルを含み、
前記パターン形成用薄膜の膜厚は、20nm以上であり、
前記第1ハードマスク膜の膜厚は、15nm以下であり、
前記第2ハードマスク膜の膜厚は、10nm以下である
ことを特徴とするマスクブランク。
【請求項2】
基板の主表面上に、パターン形成用薄膜、第1ハードマスク膜、第2ハードマスク膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、
前記パターン形成用薄膜は、ケイ素および遷移金属から選ばれる少なくとも1以上の元素を含有し、
前記第1ハードマスク膜は、クロムを含有し、
前記第2ハードマスク膜は、タンタルを含有するとともに、酸素含有ガス雰囲気下において、膨潤するものであり、
前記パターン形成用薄膜の膜厚は、20nm以上であり、
前記第1ハードマスク膜の膜厚は、15nm以下であり、
前記第2ハードマスク膜の膜厚は、10nm以下である
ことを特徴とするマスクブランク。
【請求項3】
前記第2ハードマスク膜のタンタルの含有量に対する酸素の含有量の比率は、1.5以下である
請求項1または2に記載のマスクブランク。
【請求項4】
前記第2ハードマスク膜は、金属元素およびケイ素のうち、タンタルを最も多く含有する
請求項1から3のうちの何れか1項に記載のマスクブランク。
【請求項5】
前記第2ハードマスク膜の膜厚は、1nm以上である
請求項1から4のうちの何れか1項に記載のマスクブランク。
【請求項6】
前記第1ハードマスク膜は、クロムと、酸素および窒素の少なくとも一方を含有する
請求項1から5のうちの何れか1項に記載のマスクブランク。
【請求項7】
前記第1ハードマスク膜の膜厚は、前記第2ハードマスク膜の膜厚よりも厚い
請求項1から6のうちの何れか1項に記載のマスクブランク。
【請求項8】
前記パターン形成用薄膜は、タンタルを含有する光吸収膜であり、
前記基板と前記パターン形成用薄膜との間に、多層反射膜を有する
請求項1から7のうちの何れか1項に記載のマスクブランク。
【請求項9】
前記パターン形成用薄膜は、ケイ素を含有する遮光膜である
請求項1から8のうちの何れか1項に記載のマスクブランク。
【請求項10】
請求項1から9のうちの何れか1項に記載のマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、
前記第2ハードマスク膜上に形成され且つパターンを有するレジスト膜をマスクとし、
ドライエッチングにより、前記第2ハードマスク膜に第2ハードマスクパターンを形成する工程と、
前記第2ハードマスクパターンをマスクとし、酸素を含むガスを用いたドライエッチングにより、前記第2ハードマスクパターンのエッチング側壁を酸化によって膨潤させると共に、前記第1ハードマスク膜に第1ハードマスクパターンを形成する工程と、
前記第1ハードマスクパターンをマスクとし、ドライエッチングにより、前記パターン形成用薄膜に薄膜パターンを形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の転写用マスクの製造方法によって製造された転写用マスクを用い、
リソグラフィー法により前記転写用マスクの前記薄膜パターンを半導体デバイス用の基板上のレジスト膜に対してパターン転写する露光工程を有する
ことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランク、転写用マスクの製造方法、および半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転写用マスクの製造に用いるマスクブランクについては、転写用マスクに形成するパターンの微細化を目的として、ハードマスク膜を設けた構成とする技術が知られている。例えば、下記特許文献1には、「透光性基板上に、順次、遮光膜、エッチングマスク膜(ハードマスク膜)が形成されたフォトマスクブランクであって、遮光膜が、少なくとも、遷移金属シリサイドを含む遮光層と、この遮光層の上に形成され、酸素、窒素のうち少なくとも一方を含むタンタル化合物を主成分とする表面反射防止層と、を備え、エッチングマスク膜は、酸素、窒素のうち少なくとも一方を含むクロム化合物からなる」構成が記載されている。またこれにより、「クロム化合物からなるエッチングマスク膜をパターン加工する際に、エッチングマスク膜をドライエッチングするエッチングガスである酸素を含む塩素系ガスに対し、表面反射防止層を形成するタンタル化合物は遷移金属シリサイドに比べて高い耐性を有する。このため、エッチングマスク膜の加工断面側壁をほぼ垂直に立ち上がるようにオーバーエッチングを行うことが可能」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ハードマスク膜(エッチングマスク膜)を構成するクロム化合物は、酸素を含む塩素系ガスに対して等方性を有してエッチングされる。このため、レジスト膜をマスクにしたエッチングにおいて、クロム化合物からなるハードマスク膜(エッチングマスク膜)をパターニングする際には、エッチング側壁(加工断面側壁)が後退し、ハードマスク膜に形成されるパターンの開口幅(開口寸法)が拡大することは免れない。これは、パターニングされたハードマスク膜をマスクとしたエッチングによってパターン形成用薄膜に形成されるパターンの微細化を阻害する要因となり得る。さらに、このパターン形成用薄膜を備えた転写用マスクを用いて作製される半導体デバイスの高集積化を妨げる要因ともなり得る。
【0005】
そこで本発明は、パターン形成用薄膜に微細なパターンを形成することが可能なマスクブランクおよび転写用マスクの製造方法を提供すること、およびこの転写用マスクの製造方法によって作製された転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述の課題を解決する手段として、以下の構成を有する。
【0007】
(構成1)
基板の主表面上に、パターン形成用薄膜、第1ハードマスク膜、第2ハードマスク膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、
前記パターン形成用薄膜は、ケイ素および遷移金属から選ばれる少なくとも1以上の元素を含有し、
前記第1ハードマスク膜は、クロムを含有し、
前記第2ハードマスク膜は、タンタルを含有し、
前記第2ハードマスク膜のタンタルは、酸素に対して不飽和なタンタルを含み、
前記パターン形成用薄膜の膜厚は、20nm以上であり、
前記第1ハードマスク膜の膜厚は、15nm以下であり、
前記第2ハードマスク膜の膜厚は、10nm以下である
ことを特徴とするマスクブランク。
【0008】
(構成2)
基板の主表面上に、パターン形成用薄膜、第1ハードマスク膜、第2ハードマスク膜がこの順に積層した構造を備えるマスクブランクであって、
前記パターン形成用薄膜は、ケイ素および遷移金属から選ばれる少なくとも1以上の元素を含有し、
前記第1ハードマスク膜は、クロムを含有し、
前記第2ハードマスク膜は、タンタルを含有するとともに、酸素含有ガス雰囲気下において、膨潤するものであり、
前記パターン形成用薄膜の膜厚は、20nm以上であり、
前記第1ハードマスク膜の膜厚は、15nm以下であり、
前記第2ハードマスク膜の膜厚は、10nm以下である
ことを特徴とするマスクブランク。
【0009】
(構成3)
前記第2ハードマスク膜のタンタルの含有量に対する酸素の含有量の比率は、1.5以下である
構成1または2に記載のマスクブランク。
【0010】
(構成4)
前記第2ハードマスク膜は、金属元素およびケイ素のうち、 タンタルを最も多く含有する
構成1から3のうちの何れか1項に記載のマスクブランク。
【0011】
(構成5)
前記第2ハードマスク膜の膜厚は、1nm以上である
構成1から4のうちの何れか1項に記載のマスクブランク。
【0012】
(構成6)
前記第1ハードマスク膜は、クロムと、酸素および窒素の少なくとも一方を含有する
構成1から5のうちの何れか1項に記載のマスクブランク。
【0013】
(構成7)
前記第1ハードマスク膜の膜厚は、前記第2ハードマスク膜の膜厚よりも厚い
構成1から6のうちの何れか1項に記載のマスクブランク。
【0014】
(構成8)
前記パターン形成用薄膜は、タンタルを含有する光吸収膜であり、
前記基板と前記パターン形成用薄膜との間に、多層反射膜を有する
構成1から7のうちの何れか1項に記載のマスクブランク。
【0015】
(構成9)
前記パターン形成用薄膜は、ケイ素を含有する遮光膜である
構成1から8のうちの何れか1項に記載のマスクブランク。
【0016】
(構成10)
構成1から9のうちの何れか1項に記載のマスクブランクを用いる転写用マスクの製造方法であって、
前記第2ハードマスク膜上に形成され且つパターンを有するレジスト膜をマスクとし、ドライエッチングにより、前記第2ハードマスク膜に第2ハードマスクパターンを形成する工程と、
前記第2ハードマスクパターンをマスクとし、酸素を含むガスを用いたドライエッチングにより、前記第2ハードマスクパターンのエッチング側壁を酸化によって膨潤させると共に、前記第1ハードマスク膜に第1ハードマスクパターンを形成する工程と、
前記第1ハードマスクパターンをマスクとし、ドライエッチングにより、前記パターン形成用薄膜に薄膜パターンを形成する工程と
を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【0017】
(構成11)
構成10に記載の転写用マスクの製造方法によって製造された転写用マスクを用い、リソグラフィー法により前記転写用マスクの前記薄膜パターンを半導体デバイス用の基板上のレジスト膜に対してパターン転写する露光工程を有する
ことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、パターン形成用薄膜に微細なパターンを形成することが可能なマスクブランクおよび転写用マスクの製造方法を提供すること、およびこの転写用マスクの製造方法によって作製された転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態のマスクブランクの構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態のマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法を示す製造工程図(その1)である。
【
図3】本発明の第1実施形態のマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法を示す製造工程図(その2)である。
【
図4】本発明の第2実施形態のマスクブランクの構成を示す断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態のマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法を示す製造工程図(その1)である。
【
図6】本発明の第2実施形態のマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法を示す製造工程図(その2)である。
【
図8】比較例の転写用マスクの製造方法を示す製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明を適用した各実施の形態を説明する。なお、各図において同様の構成要素には同一の符号を付して説明を行う。
【0021】
≪第1実施形態≫
先ず、
図1に基づいて第1実施形態のマスクブランク1の構成を説明し、次にこのマスクブランク1を用いた転写用マスクの製造方法、および半導体装置の製造方法を説明する。
<マスクブランク1>
図1は、本発明の第1実施形態のマスクブランク1の構成を示す断面図である。この図に示すマスクブランク1は、透過型の転写用マスクの製造に用いられるものである。このマスクブランク1は、透光性基板10における一方側の主表面S上に、この透光性基板10側から順に、パターン形成用薄膜11、第1ハードマスク膜12、および第2ハードマスク膜13を積層した構造を有する。また、マスクブランク1は、第2ハードマスク膜13上に、必要に応じてレジスト膜14を積層させた構成であってもよい。以下、マスクブランク1の主要構成部の詳細を説明する。
【0022】
[透光性基板10]
第1実施形態における基板としての透光性基板10は、リソグラフィーにおける露光工程で用いられる露光光に対して透過性が良好な材料からなる。露光光としてArFエキシマレーザ光(波長:193nm)を用いる場合であれば、これに対して透過性を有する材料で構成されればよい。このような材料としては、合成石英ガラスが用いられるが、この他にも、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO2-TiO2ガラス等)、その他各種のガラス基板を用いることができる。特に、石英基板は、ArFエキシマレーザ光、またはそれよりも短波長の領域で透明性が高いので、本発明のマスクブランクに特に好適に用いることができる。
【0023】
なお、ここで言うリソグラフィーにおける露光工程とは、このマスクブランク1を用いて作製された透過型の転写用マスクを用いてのリソグラフィーにおける露光工程であり、以下において露光光とはこの露光工程で用いられる露光光であることとする。この露光光としては、ArFエキシマレーザ光(波長:193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長:248nm)、i線光(波長:365nm)のいずれも適用可能であるが、露光工程におけるパターンの微細化の観点からは、ArFエキシマレーザ光を露光光に適用することが望ましい。このため、以下においてはArFエキシマレーザ光を露光光に適用した場合についての実施形態を説明する。
【0024】
[パターン形成用薄膜11]
パターン形成用薄膜11は、露光光に対する遮光膜である。このようなパターン形成用薄膜11は、ケイ素および遷移金属から選ばれる少なくとも1以上の元素を含有することができる。ここでは、一例として、パターン形成用薄膜11は、ケイ素(Si)を含有する材料で形成されていることとする。またパターン形成用薄膜11は、ケイ素の他に、窒素(N)を含有する材料で形成されていることが好ましい。このようなパターン形成用薄膜11は、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによってパターニングが可能であり、以下に説明するクロム(Cr)を含有する材料で形成された第1ハードマスク膜12に対して十分なエッチング選択性を有したパターニングが可能である。
【0025】
またパターン形成用薄膜11は、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによってパターニングが可能であれば、さらに、半金属元素、非金属元素、金属元素から選ばれる1以上の元素を含有していてもよい。
【0026】
このうち、半金属元素は、ケイ素に加え、いずれの半金属元素であってもよく、例えば、ホウ素(B)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)が挙げられる。非金属元素は、窒素(N)に加え、いずれの非金属元素(ハロゲンおよび希ガスを含む)であってもよく、例えば、酸素(O)、炭素(C)、水素(H)、リン(P)、硫黄(S)、セレン(Se)、フッ素(F)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、およびキセノン(Xe)から選ばれる一以上の元素が挙げられる。金属元素は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、スズ(Sn)が例示される。
【0027】
またパターン形成用薄膜11の膜厚は、特に制限されるものではないが、露光光に対する十分な遮光性を得るために、例えば20nm以上とすることができる。これにより、パターン形成用薄膜11をエッチングする際に、パターン形成用薄膜11の遮光性を確保しつつ、第2ハードマスクパターン13P(後述)を効率的に除去することができる。また、微細なパターンを高精度に形成するために、パターン形成用薄膜11の膜厚は、70nm以下であることが好ましく、60nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。
【0028】
[第1ハードマスク膜12]
第1ハードマスク膜12は、フッ素系ガスを用いたパターン形成用薄膜11のドライエッチングにおいて、十分なエッチング耐性を有する材料によって構成されることが好ましい。このような第1ハードマスク膜12は、例えば、クロム(Cr)を含有する材料によって構成されることができる。クロム(Cr)を含有する材料によって構成された第1ハードマスク膜12は、酸素を含有するガスを用いたドライエッチングによってパターニングが可能である。この第1ハードマスク膜12を構成するクロムを含有する材料としては、クロム金属のほか、クロムに、酸素、窒素、および炭素のうち少なくとも1つを含有する材料が挙げられる。特に、クロムと、酸素および窒素のうちの少なくとも一方とを含有することが好ましく、例えばクロムと窒素とを含有する構成とすることができる。これにより、酸素を含有するガスをエッチャントとして、第1ハードマスク膜12をエッチングする場合のエッチングレートを高めることができる。
【0029】
また、この第1ハードマスク膜12は、ケイ素(Si)を含有する材料で形成されたパターン形成用薄膜11との間で十分なエッチング選択性を有しており、パターン形成用薄膜11にほとんどまたは全くダメージを与えずに第1ハードマスク膜12をエッチング除去することが可能である。
【0030】
さらに、この第1ハードマスク膜12は、以下に説明するタンタル(Ta)を含有する材料で形成された第2ハードマスク膜13に対して十分なエッチング選択性を有しており、この第2ハードマスク膜13をマスクとした第1ハードマスク膜12のパターニングが可能である。
【0031】
以上のような第1ハードマスク膜12は、微細パターン形成のために、例えば15nm以下の膜厚を有することができる。また第1ハードマスク膜12の膜厚は、以下に説明する第2ハードマスク膜13の膜厚よりも厚いことが好ましい。
【0032】
[第2ハードマスク膜13]
第2ハードマスク膜13は、酸素含有ガスを用いた第1ハードマスク膜12のドライエッチングにおいて、十分なエッチング耐性を有し、かつ膨潤する材料によって構成されることが好ましい。このような第2ハードマスク膜13は、タンタル(Ta)を含有する材料によって構成されることができる。すなわち、第2ハードマスク膜13の材料は、タンタル(Ta)を含有し、かつ、酸素含有ガス雰囲気下において、膨潤するものであればよい。この第2ハードマスク膜13に含まれるタンタル(Ta)を含有する材料は、酸素に対して不飽和なタンタル(Ta)を含む。第2ハードマスク膜13を構成する材料は、酸化が不完全なタンタル(Ta)を含むとも言える。タンタル(Ta)は、完全に酸化すると、安定な五酸化タンタル(Ta2O5)となるため、酸化が不完全なタンタルとは、Ta2O5結合以外の結合状態にあるタンタルを意味すると言える。
【0033】
これにより、酸素を含有するガスを用いた第1ハードマスク膜12のドライエッチングにおいて、第2ハードマスク膜13に含まれるタンタル(Ta)が酸化し、第2ハードマスク膜13が膨潤する。このような第2ハードマスク膜13のタンタル(Ta)の含有量に対する酸素の含有量の比率は、1.5以下であることが好ましい。これにより、タンタル(Ta)の酸化による膨潤量を十分な値とすることができる。また、この膨潤量は第2ハードマスク膜13のタンタル(Ta)の含有量に対する酸素の含有量の比率を適宜調整することによって制御することができる。より具体的には、第2ハードマスク膜13を成膜する際に、成膜条件(スパッタリングターゲットを構成する原子の組成比、スパッタリングガスの種類、ガス流量比など)を制御することにより、第2ハードマスク膜13のタンタル(Ta)の含有量に対する酸素の含有量の比率を所望の値となるように調整すればよい。なお、成膜装置には必ず個々に固有の特性があるため、上記の成膜条件は、用いる成膜装置それぞれに合わせて、調整する必要がある。また、タンタル(Ta)および酸素(O)の含有量は、XPS(X線光電子分光法)で測定することができる。
【0034】
また第2ハードマスク膜13は、タンタル(Ta)の他の金属元素およびケイ素の少なくとも一方を含有してもよい。第2ハードマスク膜13が、タンタル(Ta)の他の金属元素およびケイ素の少なくとも一方を含有する場合であっても、第2ハードマスク膜13は、タンタル(Ta)、他の金属元素、およびケイ素のうち、タンタル(Ta)を最も多く含有することが好ましい。第2ハードマスク13は、好ましくは、酸素を除いて、タンタルを最も多く含有するとも言える。これにより、タンタル(Ta)の酸化による膨潤量を十分な値とすることができる。
【0035】
また第2ハードマスク膜13の膜厚は、第1ハードマスク膜12の膜厚よりも薄いことが好ましい。このような第2ハードマスク膜13の膜厚は、例えば10nm以下である。
第2ハードマスク膜13の膜厚を薄く設定することで、第2ハードマスク膜13のエッチングマスクとなるレジスト膜14の膜厚を薄くでき、パターン形成用薄膜11に形成するパターンを微細化できる。さらに、第2ハードマスク膜13の膜厚を第1ハードマスク膜12の膜厚よりも薄くすることによって、後述のように、第1ハードマスク膜12をマスクとしてパターン形成用薄膜11をエッチングする際に、第1ハードマスク膜12を残存させたまま、第2ハードマスク膜13を除去することができる。また第2ハードマスク膜13の膜厚は、1nm以上である。これにより、酸素含有ガスを用いた第1ハードマスク膜12のドライエッチングの際に、既にパターニングされている第2ハードマスク膜13(第2ハードマスクパターン13P)のエッチング側壁が、十分な大きさで膨潤する効果を得ることができる。第2ハードマスクパターン13Pのエッチング側壁とは、第2ハードマスク膜13がパターニングされている状態のマスクブランク1を断面視した場合における第2ハードマスクパターンの側壁を意味する。該断面視において、側壁と基板の主表面とがなす角度は、直角または略直角である。
【0036】
[レジスト膜14]
レジスト膜14は、マスクブランク1において、第2ハードマスク膜13の表面に接して形成されていることが好ましい。レジスト膜14は、例えば化学増幅型のポジレジストであるが、微細パターンの形成が可能であればこれに限定されることはない。なお、レジスト膜14は、例えばレジスト膜14のリソグラフィー処理による微細パターンの形成の観点および、形成されたレジストパターンのパターン倒れ防止の観点から、膜厚が80nm以下であることがより好ましい。
【0037】
<転写用マスクの製造方法>
図2は、本発明の第1実施形態のマスクブランク1を用いた転写用マスクの製造方法を示す製造工程図(その1)である。また
図3は、本発明の第1実施形態のマスクブランク1を用いた転写用マスクの製造方法を示す製造工程図(その2)である。以下、これらの図に基づいて、透過型の転写用マスクの製造方法を説明する。
【0038】
先ず、
図1を用いて説明した構成のマスクブランク1を用意する。マスクブランク1がレジスト膜14を有していないものであれば、第2ハードマスク膜13の上部にレジスト膜14を形成する。なお、マスクブランク1は、
図1に示したように、レジスト膜14を備えている場合もあり、この場合にはレジスト膜14の成膜手順は不要である。
【0039】
[工程(1)]
図2に示す工程(1)では、マスクブランク1のレジスト膜14に対して、パターン形成用薄膜11に形成すべきパターンを露光描画する。この露光描画には、電子線を用いることができる。その後、必要に応じて、レジスト膜14に対してPEB(Post Exposure Bake)処理、現像処理、ポストべーク処理等の所定の処理を行い、レジスト膜14をパターニングする。パターニングされたレジスト膜14は、スペースパターン14aを有し、このスペースパターン14aの開口幅[W14]は、例えば最小スペース幅であることとする。なお、本実施形態におけるスペースパターンとは、膜が部分的に除去されてなるパターンを指し、線状のパターンおよびホール形状のパターン(ホールパターン)を含む。また、スペースパターンは、抜きパターンとも呼ぶことができる。スペースパターンがホール形状である場合は、開口幅[W14]は、ホールの径となる。以降の記載においても、同様である。
【0040】
[工程(2)]
図2に示す工程(2)では、パターニングされたレジスト膜14をマスクとして、第2ハードマスク膜13をエッチングする。この際、フッ素系ガスをエッチャントとして用いたドライエッチングにより、タンタル(Ta)を含有する材料によって構成された第2ハードマスク膜13をパターニングし、レジスト膜14に形成されたパターンを第2ハードマスク膜13に転写する。これにより、第2ハードマスク膜13に第2ハードマスクパターン13Pを形成する。
【0041】
ここで、フッ素系ガスをエッチャントとして用いたタンタル(Ta)を含有する材料のドライエッチングは、異方性が高い。このため、第2ハードマスクパターン13Pには、レジスト膜14に形成された開口幅[W14]のスペースパターン14aと、ほぼ同程度の開口幅[W13]を有するスペースパターン13aが形成される。なお、この工程においては、第2ハードマスクパターン13P上にレジスト膜14が残る場合もある。この残存するレジスト膜14は、酸素ガスやオゾンガスを用いたアッシング(灰化)により除去してもよく、後述するように、第1ハードマスク膜12のエッチングの際に除去してもよい。
【0042】
[工程(3)]
図2に示す工程(3)では、第2ハードマスクパターン13Pをマスクとして、第1ハードマスク膜12をエッチングする。この際、第2ハードマスクパターン13Pを膨潤させるためにも、酸素含有ガスをエッチャントとして用いる。このドライエッチングにより、第1ハードマスク膜12をパターニングし、第1ハードマスクパターン12Pを形成する。第1ハードマスク膜12が、クロム(Cr)を含有する材料によって構成されている場合には、エッチャントとしてのガスは、酸素に加えて、さらに塩素ガスを含有することが好ましい。なお、第2ハードマスクパターン13P上に残されたレジスト膜14は、酸素を含有するエッチャントによって灰化して除去してもよい。
【0043】
このドライエッチングは、酸素および塩素含有ガスをエッチャントとして用いており、クロム(Cr)を含有する材料によって構成された第1ハードマスク膜12のエッチングが、ウェットエッチングほどではないが、わずかに等方的に進む。
【0044】
ここで、このドライエッチングにおいては、第2ハードマスクパターン13Pが酸素含有ガスに晒され、第2ハードマスクパターン13Pに含まれるタンタル(Ta)が酸化する。この酸化は、第2ハードマスクパターン13Pの露出面から等方的に広がり、第2ハードマスクパターン13Pの露出面が酸化部13bで構成されたものとなる。このような酸化による膨潤により、第2ハードマスクパターン13Pに形成されているスペースパターン13aの開口幅[W13]は、第2ハードマスクパターン13Pの膨潤によって縮小された開口幅[W13’]となる。なお、上述のように、残存するレジスト膜14を、酸素ガスやオゾンガスを用いたアッシング(灰化)により除去した場合には、このアッシングの段階においても、第2ハードマスクパターン13Pに含まれるタンタル(Ta)が酸化し、第2ハードマスクパターン13Pが膨潤する。第2実施形態も同様である。
【0045】
このため、工程(1)においてレジスト膜14に形成したスペースパターン14aの開口幅[W14]よりも、小さい開口幅[W13’]を有する第2ハードマスクパターン13Pをマスクとして、第1ハードマスク膜12の等方性を有するドライエッチングが進む。これにより、第1ハードマスク膜12には、第2ハードマスクパターン13Pの膨潤量に対応する量だけサイドエッチングが抑えられた微細な開口幅[W12]のスペースパターン12aを有する第1ハードマスクパターン12Pが形成される。
【0046】
[工程(4)]
図3に示す工程(4)では、第1ハードマスクパターン12Pをマスクとして、パターン形成用薄膜11をエッチングする。この際、フッ素系ガスをエッチャントとして用いたドライエッチングにより、ケイ素(Si)を含有する材料によって構成されたパターン形成用薄膜11をパターニングし、第1ハードマスクパターン12Pをパターン形成用薄膜11に転写した薄膜パターン11Pを形成する。なお、このパターン形成用薄膜11をエッチングする間に、第1ハードマスクパターン12P上に残された第2ハードマスクパターン13Pは、酸化部13bも含めてフッ素系ガスのエッチャントによってエッチング除去されることが好ましい。
【0047】
また、フッ素系ガスをエッチャントとして用いたケイ素(Si)を含有する材料のドライエッチングは、異方性が高い。このため、ケイ素(Si)を含有する材料で構成された薄膜パターン11Pには、第1ハードマスクパターン12Pに形成された開口幅[W12]のスペースパターン12aと、ほぼ同程度に微細な開口幅[W11]を有するスペースパターン11aが形成される。
【0048】
[工程(5)]
図3に示す工程(5)では、薄膜パターン11P上の第1ハードマスクパターン12Pを、エッチング除去する。この際、塩素含有ガスをエッチャントとして用いたドライエッチングにより、クロム(Cr)を含有する材料によって構成された第1ハードマスクパターン12Pをエッチングする。この塩素含有ガスは、酸素をさらに含んでもよい。
【0049】
これにより、透光性基板10上に、パターン形成用薄膜11をパターニングしてなる薄膜パターン11Pを遮光パターンとして設けた透過型の転写用マスク100を得る。この転写用マスク100に形成された薄膜パターン11Pは、第2ハードマスクパターン13Pの膨潤量に対応する量だけサイドエッチングが抑えられた微細な開口幅[W11]を有するスペースパターン11aを有する。
【0050】
以上により、より微細なスペースパターン11aが形成された薄膜パターン11Pを有する転写用マスク100が得られる。
【0051】
<半導体デバイスの製造方法>
半導体デバイスの製造方法は、先に説明した転写用マスクの製造方法によって製造された透過型の転写用マスク100を用い、半導体デバイス用の基板上のレジスト膜に対して薄膜パターン11Pを露光転写することを特徴としている。このような半導体デバイスの製造方法は、次のように行う。
【0052】
先ず、半導体デバイスを形成する基板を用意する。この基板は、例えば半導体基板であってもよいし、半導体薄膜を有する基板であってもよいし、さらにこれらの上部に微細加工膜が成膜されたものであってもよい。用意した基板上にレジスト膜を成膜し、このレジスト膜に対して、転写用マスク100を用いたパターン露光を行ない、転写用マスク100に形成された薄膜パターン11Pをレジスト膜に対してパターン転写する。この際、露光光としては、先に説明したように、例えばArFエキシマレーザ光(波長:193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長:248nm)、i線光(波長:365nm)のいずれも適用可能であるが、パターンの微細化の観点からは、ArFエキシマレーザ光を露光光に適用することが望ましい。
【0053】
以上の後、薄膜パターン11Pが露光転写されたレジスト膜を現像処理してレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクにして基板の表層に対してエッチング加工を施したり不純物を導入する処理を行う。処理が終了した後には、レジストパターンを除去する。
【0054】
以上のようなリソグラフィー処理を、転写用マスク100を交換しつつ基板上において繰り返し行い、さらに必要な加工処理を行うことにより、半導体デバイスを完成させる。
【0055】
以上のような半導体デバイスの製造においては、先に説明した転写用マスクの製造方法によって製造された微細なスペースパターン11aを有する転写用マスク100を用いることにより、集積度の高い半導体デバイスを得ることができる。
【0056】
≪第2実施形態≫
先ず、
図4に基づいて第2実施形態のマスクブランク2の構成を説明し、次にこのマスクブランク2を用いた転写用マスクの製造方法、および半導体装置の製造方法を説明する。
【0057】
<マスクブランク2>
図4は、本発明の第2実施形態のマスクブランク2の構成を示す断面図である。この図に示すマスクブランク2は、極端紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet、以下EUV光と記す)を露光光とするEUVリソグラフィー用の反射型の転写用マスク(以下、反射型マスクと記す)の原版である。このマスクブランク2は、基板20における一方側の主表面S上に、この基板20側から順に、多層反射膜21、保護膜22、パターン形成用薄膜11’、第1ハードマスク膜12、および第2ハードマスク膜13を積層した構造である。また、マスクブランク2は、第2ハードマスク膜13上に、必要に応じてレジスト膜14を積層させた構成であってもよい。以下、マスクブランク2の主要構成部の詳細を説明する。
【0058】
[基板20]
基板20は、マスクブランク2の加工によって形成された反射型マスクを用いた露光(EUV露光)時の発熱による転写パターンの歪みを防止するため、低膨張ガラスが好ましく用いられる。低膨張ガラスとしては、例えば、SiO2-TiO2系ガラス、多成分系ガラスセラミックス等を用いることができる。なお、転写パターンとは、後述するパターン形成用薄膜11’の加工によって形成されたパターンである。
【0059】
[多層反射膜21]
多層反射膜21は、基板20の主表面Sにおいて、基板20とパターン形成用薄膜11’との間に配置された膜であり、露光光であるEUV光を高い反射率で反射する。この多層反射膜21は、このマスクブランク2を用いて形成される反射型の転写用マスクにEUV光を反射する機能を付与するものであり、屈折率の異なる元素を主成分とする各層が周期的に積層された多層膜である。
【0060】
一般的には、高屈折率材料である軽元素またはその化合物の薄膜(高屈折率層)と、低屈折率材料である重元素またはその化合物の薄膜(低屈折率層)とが交互に40から60周期程度積層された多層膜が、多層反射膜21として用いられる。例えば波長13nmから14nmのEUV光に対する多層反射膜21としては、好ましくはMo膜とSi膜を交互に40から60周期程度積層したMo/Si周期積層膜が用いられる。なお、多層反射膜21の最上層である高屈折率層をケイ素(Si)で形成してもよい。
【0061】
[保護膜22]
保護膜22は、このマスクブランク2を加工してEUVリソグラフィー用の反射型マスクを製造する際に、エッチングおよび洗浄から多層反射膜21を保護するために設けられた膜である。この保護膜22は、多層反射膜21の上に、多層反射膜21に接してまたは他の膜を介して設けられ、単層構造であっても積層構造であってもよい。
【0062】
このような保護膜22は、ルテニウム(Ru)を含有することが好ましい。保護膜22の材料は、Ru金属単体でもよいし、ルテニウム(Ru)にチタン(Ti)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ロジウム(Rh)、ホウ素(B)、ランタン(La)、コバルト(Co)、及びレニウム(Re)などから選択される少なくとも1種の金属を含有したRu合金であってよく、窒素を含んでいても構わない。一方、保護膜22は、ケイ素(Si)、ケイ素(Si)および酸素(O)を含む材料、ケイ素(Si)および窒素(N)を含む材料、ケイ素(Si)、酸素(O)および窒素(N)を含む材料などのケイ素系材料から選択した材料を使用することもできる。
【0063】
[パターン形成用薄膜11’]
パターン形成用薄膜11’は、露光光に対する光吸収膜である。このようなパターン形成用薄膜11’は、タンタル(Ta)を含有する材料によって構成することができる。またパターン形成用薄膜11’は、単層構造であってもよいが、図示したような積層構造のものであってもよい。この場合、基板20側から順に、第1薄膜11-1、および第2薄膜11-2の積層構造が例示される。パターン形成用薄膜11’の材料は特に限定されるものではないが、第1薄膜11-1および第2薄膜11-2の材料は、例えば次のようなものとすることができる。
【0064】
第1薄膜11-1は、露光光に対する光吸収性が良好であって、かつ保護膜22に対して選択比が高いエッチングが可能な材料によって構成される。このような第1薄膜11-1は、例えば少なくともタンタル(Ta)と窒素(N)とを含む材料によって構成される。なお、反射型の転写用マスク用のマスクブランクにおいては、光吸収膜の結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状又は微結晶の構造を有しているものが好ましい。タンタル(Ta)にホウ素(B)、ケイ素(Si)及び/又はゲルマニウム(Ge)等を加えることにより、アモルファス構造が容易に得られ、平滑性を向上させることができる。更に、Taに窒素(N)及び/又は酸素(O)を加えれば、酸化に対する耐性が向上するため、経時的な安定性を向上させることができる。これらのことから、第1薄膜11-1は、例えば、TaN、TaON、TaBN、TaBON、TaCN、TaCON、TaBCNあるいはTaBOCNとすることができる。
【0065】
また、第2薄膜11-2は、露光光に対する光吸収性が良好な材料であって、かつ第1ハードマスク膜12に対して選択性が高いエッチングが可能な材料によって構成されることが好ましい。このような第2薄膜11-2は、少なくともタンタル(Ta)と酸素(O)とを含む材料によって構成されることができ、平滑性、平坦性の点も考慮すると、例えばTaBOとすることができる。これにより、以下に説明するクロム(Cr)を含有する材料で形成された第1ハードマスク膜12に対して十分なエッチング選択性を有したパターニングが可能である。
【0066】
なお、第1薄膜11-1は、フッ素系ガスまたは実質的に酸素を含まない塩素系ガスを用いてドライエッチングすることができる。第2薄膜11-2は、フッ素系ガスまたは実質的に酸素を含まない塩素系ガスを用いてドライエッチングすることができるが、よりエッチングレートの大きなフッ素系ガスでエッチングすることが好ましい。
【0067】
またパターン形成用薄膜11’は、露光光(EUV光)に対する十分な吸収性を得るために、例えば20nm以上の膜厚を有することとする。また、シャドーイング効果を小さくするために、パターン形成用薄膜11’の膜厚は、70nm以下であることが好ましく、60nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。
【0068】
[第1ハードマスク膜12]
第1ハードマスク膜12は、第1実施形態で
図1を用いて説明したマスクブランク1の第1ハードマスク膜12と同様のものである。すなわち、第1ハードマスク膜12は、フッ素系ガスを用いたパターン形成用薄膜11’のドライエッチングにおいて、十分なエッチング耐性を有する材料によって構成されることが好ましい。このような第1ハードマスク膜12は、クロム(Cr)を含有する材料によって構成されることができ、例えばクロムに酸素、窒素、および炭素のうち少なくとも1つを含有する構成とすることができる。なお、第1ハードマスク膜12についての、さらに詳しい構成についての重複する説明は省略する。
【0069】
[第2ハードマスク膜13]
第2ハードマスク膜13は、第1実施形態で
図1を用いて説明したマスクブランク1の第2ハードマスク膜13と同様のものである。すなわち、第2ハードマスク膜13は、酸素含有ガスを用いた第1ハードマスク膜12のドライエッチングにおいて、十分なエッチング耐性を有し、かつ膨潤する材料によって構成される。このような第2ハードマスク膜13は、タンタル(Ta)を含有する材料によって構成されることが好ましい。なお、第2ハードマスク膜13についての、さらに詳しい構成についての重複する説明は省略する。
【0070】
[レジスト膜14]
レジスト膜14は、第1実施形態で
図1を用いて説明したマスクブランク1のレジスト膜14と同様のものであり、ここでの詳しい構成についての重複する説明は省略する。
【0071】
<転写用マスクの製造方法>
図5は、本発明の第2実施形態のマスクブランク2を用いた転写用マスクの製造方法を示す製造工程図(その1)である。また
図6は、本発明の第2実施形態のマスクブランク2を用いた転写用マスクの製造方法を示す製造工程図(その2)である。これらの図に示す製造方法の手順は、基本的には第1実施形態において
図2および
図3を用いて説明した製造方法の手順と同様である。以下、これらの図に基づいて、反射型の転写用マスクの製造方法を説明する。
【0072】
先ず、
図4を用いて説明した構成のマスクブランク2を用意する。マスクブランク2がレジスト膜14を有していないものであれば、第2ハードマスク膜13の上部にレジスト膜14を形成する。なお、マスクブランク2は、
図4に示したように、レジスト膜14を備えている場合もあり、この場合にはレジスト膜14の成膜手順は不要である。
【0073】
[工程(1)~(3)]
次に、
図5に示す工程(1)~工程(3)は、第1実施形態で
図2に示した工程(1)~工程(3)と同様の手順で実施するため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0074】
なお、特に工程(3)においては、第2ハードマスクパターン13Pをマスクとして、酸素含有ガスを用いた等方性を有するドライエッチングにより、クロム(Cr)を含有する第1ハードマスク膜12をパターニングする。ここでのドライエッチングには、酸素に加えて、さらに塩素を含むガスを用いることが好ましい。
【0075】
このドライエッチングにおいては、第2ハードマスクパターン13Pが酸素含有ガスに晒され、第2ハードマスクパターン13Pに含まれるタンタル(Ta)が酸化する。この酸化は、第2ハードマスクパターン13Pの露出面から等方的に広がり、第2ハードマスクパターン13Pの露出面が酸化部13bで構成されたものとなる。このような酸化による膨潤により、第2ハードマスクパターン13Pに形成されているスペースパターン13aの開口幅[W13]は、第2ハードマスクパターン13Pの膨潤によって縮小された開口幅[W13’]となる。
【0076】
このため、
図5の工程(1)においてレジスト膜14に形成したスペースパターン14aの開口幅[W14]よりも、小さい開口幅[W13’]を有する第2ハードマスクパターン13Pをマスクとして、第1ハードマスク膜12の等方性を有するドライエッチングが進む。これにより、第1ハードマスク膜12には、第2ハードマスクパターン13Pの膨潤量に対応する量だけサイドエッチングが抑えられた微細な開口幅[W12]のスペースパターン12aを有する第1ハードマスクパターン12Pが形成される。
【0077】
[工程(4)]
図6に示す工程(4)では、第1ハードマスクパターン12Pをマスクとして、パターン形成用薄膜11’における第2薄膜11-2をエッチングする。この際、フッ素系ガスをエッチャントとして用いたドライエッチングにより、少なくともタンタル(Ta)と酸素(O)とを含む材料によって構成された第2薄膜11-2をパターニングし、第1ハードマスクパターン12Pに形成されたパターンを、第2薄膜11-2に転写する。なお、この第2薄膜11-2をエッチングする間に、第1ハードマスクパターン12P上に残された第2ハードマスクパターン13Pは、酸化部13bも含めてフッ素系ガスのエッチャントによってエッチング除去されることが好ましい。
【0078】
また、フッ素系ガスをエッチャントとして用いたタンタル(Ta)を含有する材料のドライエッチングは異方性が高い。このため、少なくともタンタル(Ta)と酸素(O)とを含む材料によって構成された第2薄膜11-2には、第1ハードマスクパターン12Pに形成された開口幅[W12]のスペースパターン12aと、ほぼ同程度に微細な開口幅[W11’]を有するスペースパターン11a’が形成される。
【0079】
[工程(5)]
図6に示す工程(5)では、さらに、第1ハードマスクパターン12Pをマスクとして、パターン形成用薄膜11’における第1薄膜11-1をエッチングする。この際、塩素ガスをエッチャントとして用いたドライエッチングにより、少なくともタンタル(Ta)と窒素(N)とを含む材料によって構成された第1薄膜11-1をパターニングし、第1ハードマスクパターン12Pに形成されたパターンを、第1薄膜11-1に転写する。なお、この第1薄膜11-1をエッチングする間に、第2薄膜11-2上に残された第1ハードマスクパターン12Pは、塩素系ガスのエッチャントによってエッチング除去されることが好ましい。
【0080】
また、塩素系ガスをエッチャントとして用いたタンタル(Ta)を含有する材料のドライエッチングは異方性が高い。このため、少なくともタンタル(Ta)と窒素(N)とを含む材料によって構成された第1薄膜11-1には、第1ハードマスクパターン12Pに形成された開口幅[W12]のスペースパターン12aと、ほぼ同程度に微細な開口幅[W11’]を有するスペースパターン11a’が形成される。
【0081】
また、塩素系ガスをエッチャントとして用いたドライエッチングにおいては、ルテニウム(Ru)を含有する保護膜22がエッチングストッパとなり、多層反射膜21が保護される。
【0082】
これにより、基板20上に、多層反射膜21および保護膜22を介して、光吸収パターンとなる薄膜パターン11P’を設けた反射型の転写用マスク200を得る。この転写用マスク200に形成された薄膜パターン11P’は、第2ハードマスクパターン13Pの膨潤量に対応する量だけサイドエッチングが抑えられた微細な開口幅[W11’]を有するスペースパターン11a’を有する。
【0083】
以上により、より微細なスペースパターン11a’が形成された薄膜パターン11P’を有する反射型の転写用マスク200が得られる。
【0084】
<半導体デバイスの製造方法>
半導体デバイスの製造方法は、先に説明した転写用マスクの製造方法によって製造された反射型の転写用マスク200を用い、半導体デバイス用の基板上のレジスト膜に対して薄膜パターン11P’を露光転写することを特徴としている。このような半導体デバイスの製造方法は、次のように行う。
【0085】
先ず、半導体デバイスを形成する基板を用意する。この基板は、例えば半導体基板であってもよいし、半導体薄膜を有する基板であってもよいし、さらにこれらの上部に微細加工膜が成膜されたものであってもよい。用意した基板上にレジスト膜を成膜し、このレジスト膜に対して、転写用マスク200を用いたパターン露光を行ない、転写用マスク200に形成された薄膜パターン11P’をレジスト膜に露光転写する。この際、露光光としてはEUV光を用い、転写用マスク200で反射させた露光光(EUV光)をレジスト膜に対して照射する。
【0086】
以上の後、薄膜パターン11P’が露光転写されたレジスト膜を現像処理してレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクにして基板の表層に対してエッチング加工を施したり不純物を導入する処理を行う。処理が終了した後には、レジストパターンを除去する。
【0087】
以上のようなリソグラフィー処理を、転写用マスク200を交換しつつ基板上において繰り返し行い、さらに必要な加工処理を行うことにより、半導体デバイスを完成させる。
【0088】
以上のような半導体デバイスの製造においては、先に説明した転写用マスクの製造方法によって製造された微細なスペースパターン11a’を有する転写用マスク200を用いることにより、集積度の高い半導体デバイスを得ることができる。
【実施例0089】
次に、本発明を適用した実施例1-3と、これらの比較例1および比較例2とを説明する。これらの実施例および比較例に示す結果は、予め把握していた各エッチングガスに対するそれぞれの膜のエッチングレートおよび酸素ガス雰囲気下におけるタンタル含有膜(第2ハードマスク膜)の膨潤率に基づき、シミュレーションによって得たものである。
図7は、実施例および比較例を説明する図である。
図7は、実施例および比較例におけるマスクブランクの構成、およびこれらのマスクブランクの各膜に形成されたスペースパターンの開口幅を示す。以下、
図7と共に、先の
図1~
図6、および他の図を参照しつつ、比較例、および実施例を説明する。
【0090】
<比較例1>
[マスクブランクの作製]
比較例1のマスクブランクとして、透過型の転写用マスクの製造に用いられるマスクブランクを、以下のようにして作製した。
【0091】
先ず、厚さが約6.35mmの合成石英ガラスからなる透光性基板10上に、パターン形成用薄膜11として、窒化シリコン(SiNx)を62nmの膜厚でスパッタ成膜した。パターン形成用薄膜11上に、第1ハードマスク膜12として、窒化クロム(CrNx)を5nmの膜厚でスパッタ成膜した。第1ハードマスク膜12上に、第2ハードマスク膜13を形成せず、レジスト膜14として化学増幅型のポジレジストを60nmの膜厚で成膜したものを、比較例1のマスクブランクとした。
【0092】
[転写用マスクの作製(
図7および
図8参照)]
比較例1のマスクブランクを用いて透過型の転写用マスクを作製した。
図8は、比較例1の転写用マスクの製造方法を示す製造工程図である。以下、
図8に基づいて、比較例1のマスクブランクを用いた転写用マスクの作製手順を説明する。
【0093】
先ず、
図8の工程(1)に示すように、リソグラフィー処理により、レジスト膜14に開口幅[W14]=34nmのスペースパターン14aを形成した。この開口幅[W14]は、現時点においての透過型の転写用マスクの製造のためのリソグラフィー処理による最小スペース幅である。
【0094】
次に、
図8の工程(2)に示すように、パターニングしたレジスト膜14をマスクにして、第1ハードマスク膜12をエッチングした。この際、酸素含有塩素ガス(Cl
2+O
2)をエッチャントとして用いたドライエッチングにより、窒化クロム(CrNx)からなる第1ハードマスク膜12をパターニングし、スペースパターン12aを有する第1ハードマスクパターン12Pを形成した。このエッチングおいては、窒化クロム(CrNx)からなる第1ハードマスク膜12が、等方的にエッチングされた。このため、第1ハードマスクパターン12Pに形成されたスペースパターン12aの開口幅[W12]は、レジスト膜14の開口幅[W14]よりも大きく、開口幅[W12]=38nmとなった。なお、第1ハードマスクパターン12P上に残されたレジスト膜14は、酸素を含有するエッチャントによって灰化して除去された。
【0095】
次いで、
図8の工程(3)に示すように、第1ハードマスクパターン12Pをマスクにして、パターン形成用薄膜11をエッチングした。この際、フッ素系ガス(SF
6+He)をエッチャントとして用いたドライエッチングにより、窒化シリコン(SiNx)からなるパターン形成用薄膜11をパターニングし、スペースパターン11aを有する薄膜パターン11Pを形成した。このエッチングおいては、窒化シリコン(SiNx)からなるパターン形成用薄膜11が、異方性良好にエッチングされた。このため、薄膜パターン11Pに形成されたスペースパターン11aの開口幅[W11]は、第1ハードマスク膜12の開口幅[W12]と同程度の大きさとなり、開口幅[W11]=40nmとなった。
【0096】
その後、
図8の工程(4)に示すように、薄膜パターン11P上に残った第1ハードマスクパターン12Pを、酸素含有塩素ガス(Cl
2+O
2)をエッチャントとして用いたドライエッチングによって除去した。これにより、透光性基板10上に、窒化シリコン(SiNx)からなる薄膜パターン11Pを遮光パターンとした比較例1の転写用マスクを得た。
【0097】
<比較例2>
[マスクブランクの作製(
図1、
図7参照)]
比較例2のマスクブランク1として、透過型の転写用マスクの製造に用いられるマスクブランクを作製した。ここでは、比較例1のマスクブランクの製造手順において、第1ハードマスク膜12を成膜した後、レジスト膜14を成膜する前に、タンタル(Ta)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)及び酸素(O
2)の混合ガス雰囲気での反応性スパッタリングを行い、第2ハードマスク膜13として、酸化タンタル(TaOx)を3nmの膜厚でスパッタ成膜した。これにより、
図1を用いて説明した構成を有する比較例2のマスクブランク1を作製した。この第2ハードマスク膜13のタンタル(Ta)の含有量に対する酸素(O)の含有量の比率O/Taは、2.5であった。すなわち、第2ハードマスク膜13のタンタル(Ta)は酸素に対して飽和な状態にあった。第2ハードマスク膜13は、実質的に五酸化タンタル(Ta
2O
5)からなるものであったとも言える。
【0098】
[転写用マスクの作製]
比較例2のマスクブランク1を用いた透過型の転写用マスクの製造方法について説明する。比較例2における転写用マスクの製造方法の流れは、第2ハードマスク膜13が膨潤しない点以外は、
図2、
図3と同じであるため、
図2、
図3を参照して説明を行う。
【0099】
まず、リソグラフィー処理により、レジスト膜14に開口幅[W14]=34nmのスペースパターン14aを形成した。この開口幅[W14]は、現時点においての透過型の転写用マスクの製造のためのリソグラフィー処理による最小スペース幅である。
【0100】
次に、パターニングしたレジスト膜14をマスクにして、第2ハードマスク膜13をエッチングした。この際、フッ素系ガス(SF6+He)をエッチャントとして用いたドライエッチングにより、酸化タンタル(TaOx)からなる第2ハードマスク膜13をパターニングし、スペースパターン13aを有する第2ハードマスクパターン13Pを形成した。このエッチングにおいては、酸化タンタル(TaOx)からなる第2ハードマスク膜13が、異方性良好にエッチングされた。このため、第2ハードマスクパターン13Pに形成されたスペースパターン13aの開口幅[W13]は、レジスト膜14の開口幅[W14]と同程度の大きさとなり、開口幅[W13]=34nmとなった。
【0101】
その後、第2ハードマスクパターン13Pをマスクにして、第1ハードマスク膜12をエッチングした。この際、酸素含有塩素ガス(Cl2+O2)をエッチャントとして用いたドライエッチングにより、窒化クロム(CrNx)からなる第1ハードマスク膜12をパターニングし、スペースパターン12aを有する第1ハードマスクパターン12Pを形成した。
【0102】
このエッチングおいては、第2ハードマスクパターン13Pが酸素含有塩素ガス(Cl2+O2)に晒されても、第2ハードマスクパターン13Pに含まれるタンタル(Ta)は酸化されず、第2ハードマスクパターン13Pが膨潤しなかった。したがって、第1ハードマスク膜12をエッチングした後の、第2ハードマスクパターン13Pのスペースパターン13aの開口幅[W13]は、34nmのままとなった。
【0103】
また、このエッチングにおいては、窒化クロム(CrNx)からなる第1ハードマスク膜12が、等方的にエッチングされた。このため、第1ハードマスクパターン12Pに形成されたスペースパターン12aの開口幅[W12]は、スペースパターン13aの開口幅[W13]よりも大きく、開口幅[W12]=38nmとなった。なお、第2ハードマスクパターン13P上に残されたレジスト膜14は、酸素を含有するエッチャントによって灰化して除去された。
【0104】
次いで、第1ハードマスクパターン12Pをマスクにして、パターン形成用薄膜11をエッチングした。この際、フッ素系ガス(SF6+He)をエッチャントとして用いたドライエッチングにより、窒化シリコン(SiNx)からなるパターン形成用薄膜11をパターニングし、スペースパターン11aを有する薄膜パターン11Pを形成した。このエッチングにおいては、窒化シリコン(SiNx)からなるパターン形成用薄膜11が、異方性良好にエッチングされた。このため、薄膜パターン11Pに形成されたスペースパターン11aの開口幅[W11]は、第1ハードマスクパターン12Pにおけるスペースパターン12aの開口幅[W12]と同程度の大きさとなり、開口幅[W11]=40nmとなった。
【0105】
その後、薄膜パターン11P上に残った第1ハードマスクパターン12Pを、酸素含有塩素ガス(Cl2+O2)をエッチャントとして用いたドライエッチングによって除去した。これにより、透光性基板10上に、窒化シリコン(SiNx)からなる薄膜パターン11Pを遮光パターンとして設けた比較例2の転写用マスク100を得た。
【0106】
<実施例1>
[マスクブランクの作製(
図1、
図7参照)]
実施例1のマスクブランク1として、透過型の転写用マスクの製造に用いられるマスクブランクを作製した。ここでは、比較例1のマスクブランクの製造手順において、第1ハードマスク膜12を成膜した後、レジスト膜14を成膜する前に、タンタル(Ta)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)及び酸素(O
2)の混合ガス雰囲気での反応性スパッタリングを行い、第2ハードマスク膜13として、酸化タンタル(TaOx)を3nmの膜厚でスパッタ成膜した。これにより、
図1を用いて説明した構成を有する実施例1のマスクブランク1を作製した。この第2ハードマスク膜13のタンタル(Ta)の含有量に対する酸素(O)の含有量の比率O/Taは、1.3であり、第2ハードマスク膜13のタンタル(Ta)は酸素に対して不飽和なものであった。
【0107】
[転写用マスクの作製(
図2および
図3参照)]
実施例1のマスクブランク1を用いた透過型の転写用マスクの製造方法を、
図2および
図3に基づいて説明する。
【0108】
先ず、
図2の工程(1)に示すように、リソグラフィー処理により、レジスト膜14に開口幅[W14]=34nmのスペースパターン14aを形成した。この開口幅[W14]は、現時点においての透過型の転写用マスクの製造のためのリソグラフィー処理による最小スペース幅である。
【0109】
次に、
図2の工程(2)に示すように、パターニングしたレジスト膜14をマスクにして、第2ハードマスク膜13をエッチングした。この際、フッ素系ガス(SF
6+He)をエッチャントとして用いたドライエッチングにより、酸化タンタル(TaOx)からなる第2ハードマスク膜13をパターニングし、スペースパターン13aを有する第2ハードマスクパターン13Pを形成した。このエッチングにおいては、酸化タンタル(TaOx)からなる第2ハードマスク膜13が、異方性良好にエッチングされた。このため、第2ハードマスクパターン13Pに形成されたスペースパターン13aの開口幅[W13]は、レジスト膜14の開口幅[W14]と同程度の大きさとなり、開口幅[W13]=34nmとなった。
【0110】
その後、
図2の工程(3)に示すように、第2ハードマスクパターン13Pをマスクにして、第1ハードマスク膜12をエッチングした。この際、酸素含有塩素ガス(Cl
2+O
2)をエッチャントとして用いたドライエッチングにより、窒化クロム(CrNx)からなる第1ハードマスク膜12をパターニングし、スペースパターン12aを有する第1ハードマスクパターン12Pを形成した。
【0111】
このエッチングにおいては、第2ハードマスクパターン13Pが酸素含有塩素ガス(Cl2+O2)に晒され、第2ハードマスクパターン13Pに含まれるタンタル(Ta)の酸化によって、第2ハードマスクパターン13Pが膨潤した。すなわち、実施例1における第2ハードマスク膜13が、酸素に対して不飽和なタンタルを含んでいた。そして、このタンタルの酸化により、第2ハードマスクパターン13Pのスペースパターン13aの開口幅[W13]は、第2ハードマスクパターン13Pの膨潤によって縮小された開口幅[W13’]=30nmとなった。
【0112】
また、このエッチングにおいては、窒化クロム(CrNx)からなる第1ハードマスク膜12が、等方的にエッチングされた。このため、第1ハードマスクパターン12Pに形成されたスペースパターン12aの開口幅[W12]は、縮小されたスペースパターン13aの開口幅[W13’]よりも大きく、開口幅[W12]=34nmとなった。なお、第2ハードマスクパターン13P上に残されたレジスト膜14は、酸素を含有するエッチャントによって灰化して除去された。
【0113】
次いで、
図3の工程(4)に示すように、第1ハードマスクパターン12Pをマスクにして、パターン形成用薄膜11をエッチングした。この際、フッ素系ガス(SF
6+He)をエッチャントとして用いたドライエッチングにより、窒化シリコン(SiNx)からなるパターン形成用薄膜11をパターニングし、スペースパターン11aを有する薄膜パターン11Pを形成した。このエッチングにおいては、窒化シリコン(SiNx)からなるパターン形成用薄膜11が、異方性良好にエッチングされた。このため、薄膜パターン11Pに形成されたスペースパターン11aの開口幅[W11]は、第1ハードマスクパターン12Pにおけるスペースパターン12aの開口幅[W12]と同程度の大きさとなり、開口幅[W11]=36nmとなった。
【0114】
その後、
図3の工程(5)に示すように、薄膜パターン11P上に残った第1ハードマスクパターン12Pを、酸素含有塩素ガス(Cl
2+O
2)をエッチャントとして用いたドライエッチングによって除去した。これにより、透光性基板10上に、窒化シリコン(SiNx)からなる薄膜パターン11Pを遮光パターンとして設けた実施例1の転写用マスク100を得た。
【0115】
<実施例2>
[マスクブランクの作製(
図1、
図7参照)]
実施例2のマスクブランク1として、透過型の転写用マスクの製造に用いられるマスクブランクを作製した。ここでは、比較例1のマスクブランクの製造手順において、第1ハードマスク膜12を成膜した後、レジスト膜14を成膜する前に、タンタル(Ta)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)及び窒素(N
2)の混合ガス雰囲気での反応性スパッタリングを行い、第2ハードマスク膜13として、窒化タンタル(TaNx)を3nmの膜厚でスパッタ成膜した。これにより、
図1を用いて説明した構成を有する実施例2のマスクブランク1を作製した。この第2ハードマスク膜13のタンタル(Ta)の含有量に対する酸素(O)の含有量の比率O/Taは0であり、第2ハードマスク膜13のタンタル(Ta)は酸素に対して不飽和であった。
【0116】
[転写用マスクの作製(
図2および
図3参照)]
実施例2のマスクブランク1を用いて透過型の転写用マスクを作製した。ここでは、実施例1の転写用マスクの作製と同様の手順を実施し、透光性基板10上に、窒化シリコン(SiNx)からなるパターン形成用薄膜11をパターニングしてなる薄膜パターン11Pを有する実施例1の転写用マスク100を得た。各工程で形成したスペースパターンの開口幅は、
図7に合わせて示した。なお、本実施例2においても、第2ハードマスクパターン13Pをマスクにして、第1ハードマスク膜12をエッチングする際に、第2ハードマスクパターン13Pに含まれるタンタル(Ta)の酸化によって、第2ハードマスクパターン13Pが膨潤した。すなわち、第2ハードマスク膜13が、酸素に対して不飽和なタンタルを含んでいた。
【0117】
<実施例3>
[マスクブランクの作製(
図4、
図7参照)]
実施例3のマスクブランクとして、反射型の転写用マスクの製造に用いられるマスクブランク2を以下のようにして作製した。
【0118】
先ず、厚さが約6.35mmの低膨張ガラスからなる基板20上に、多層反射膜21と、多層反射膜21の上にルテニウム-ニオブ合金(RuNb)からなる保護膜22とを形成した。この多層反射膜21および保護膜22を下地膜とした。下地膜の合計膜厚は、289nmとした。
【0119】
下地膜上に、パターン形成用薄膜11’の第1薄膜11-1として窒化タンタル(TaNx)をスパッタ成膜し、次いで第2薄膜11-2として酸化タンタル(TaOx)をスパッタ成膜した。パターン形成用薄膜11’の合計膜厚を62nmとした。
【0120】
パターン形成用薄膜11’上に、第1ハードマスク膜12として、酸化炭化窒化クロム(CrOCN)を、6nmの膜厚でスパッタ成膜した。さらに、タンタル(Ta)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)及び窒素(N2)の混合ガス雰囲気での反応性スパッタリングを行い、第1ハードマスク膜12上に、窒化タンタル(TaNx)からなる第2ハードマスク膜13を、3nmの膜厚でスパッタ成膜した。第2ハードマスク膜13上に、レジスト膜14として化学増幅型のポジレジストを40nmの膜厚で成膜することにより、実施例3のマスクブランク2を得た。なお、この第2ハードマスク膜13のタンタル(Ta)の含有量に対する酸素(O)の含有量の比率O/Taは0であり、第2ハードマスク膜13のタンタル(Ta)は酸素に対して不飽和であった。
【0121】
[転写用マスクの作製(
図5および
図6参照)]
実施例3のマスクブランク2を用いた反射型の転写用マスクの製造方法を、
図5および
図6に基づいて説明する。
【0122】
先ず、
図5の工程(1)に示すように、リソグラフィー処理により、レジスト膜14に開口幅[W14]=26nmのスペースパターン14aを形成した。この開口幅[W14]は、現時点においての反射型の転写用マスクの製造のためのリソグラフィー処理による最小スペース幅である。
【0123】
次に、
図5の工程(2)に示すように、パターニングしたレジスト膜14をマスクにして、第2ハードマスク膜13をエッチングした。この際、フッ素系ガス(SF
6+He)をエッチャントとして用いたドライエッチングにより、窒化タンタル(TaNx)からなる第2ハードマスク膜13をパターニングし、スペースパターン13aを有する第2ハードマスクパターン13Pを形成した。このエッチングおいては、窒化タンタル(TaNx)からなる第2ハードマスク膜13が、異方性良好にエッチングされた。
このため、第2ハードマスクパターン13Pに形成されたスペースパターン13aの開口幅[W13]は、レジスト膜14に形成されたスペースパターン14aの開口幅[W14]と同程度の大きさとなり、開口幅[W13]=26nmとなった。
【0124】
その後、
図5の工程(3)に示すように、第2ハードマスクパターン13Pをマスクにして、第1ハードマスク膜12をエッチングした。この際、酸素含有塩素ガス(Cl
2+O
2)をエッチャントとして用いたドライエッチングにより、酸化炭化窒化クロム(CrOCN)からなる第1ハードマスク膜12をパターニングし、スペースパターン12aを有する第1ハードマスクパターン12Pを形成した。
【0125】
このエッチングにおいては、第2ハードマスクパターン13Pが酸素含有塩素ガス(Cl2+O2)に晒され、第2ハードマスクパターン13Pに含まれるタンタル(Ta)の酸化によって、第2ハードマスクパターン13Pが膨潤した。すなわち、実施例3における第2ハードマスク膜13が、酸素に対して不飽和なタンタルを含んでいた。そして、このタンタルの酸化により、第2ハードマスクパターン13Pのスペースパターン13aの開口幅[W13]は、第2ハードマスクパターン13Pの膨潤によって縮小された開口幅[W13’]=20nmとなった。
【0126】
また、このエッチングにおいては、酸化炭化窒化クロム(CrOCN)からなる第1ハードマスク膜12が、等方的にエッチングされた。このため、第1ハードマスクパターン12Pに形成されたスペースパターン12aの開口幅[W12]は、縮小されたスペースパターン13aの開口幅[W13’]よりも大きく、開口幅[W12]=24nmとなった。なお、第2ハードマスクパターン13P上に残されたレジスト膜14は、酸素を含有するエッチャントによって灰化して除去された。
【0127】
次いで、
図6の工程(4)に示すように、第1ハードマスクパターン12Pをマスクにして、パターン形成用薄膜11’の第2薄膜11-2をエッチングした。この際、フッ素系ガス(SF
6+He)をエッチャントとして用いたドライエッチングにより、酸化タンタル(TaOx)からなるパターン形成用薄膜11’の第2薄膜11-2をパターニングした。このエッチングおいては、酸化タンタル(TaOx)からなる第2薄膜11-2が、異方性良好にエッチングされた。また、この第2薄膜11-2をエッチングする際に、酸化部13bも含めて第2ハードマスクパターン13Pは除去された。
【0128】
続けて
図6の工程(5)に示すように、第1ハードマスクパターン12Pをマスクにして、パターン形成用薄膜11’の第1薄膜11-1をエッチングした。この際、塩素ガス(Cl
2)をエッチャントとして用いたドライエッチングにより、窒化タンタル(TaNx)からなるパターン形成用薄膜11’の第1薄膜11-1をパターニングした。このエッチングおいては、窒化タンタル(TaNx)からなる第1薄膜11-1が、異方性良好にエッチングされた。
【0129】
これにより、パターン形成用薄膜11’の第1薄膜11-1と第2薄膜11-2とをパターニングしてなる薄膜パターン11P’を形成した。この薄膜パターン11P’に形成されたスペースパターン11a’の開口幅[W11’]は、第1ハードマスク膜12の開口幅[W12]と同程度の大きさとなり、開口幅[W11’]=26nmとなった。なお、このエッチングにより、第1ハードマスクパターン12Pは除去された。
【0130】
以上により、基板20上に、窒化タンタル(TaNx)と酸化タンタル(TaOx)の積層構造からなるパターン形成用薄膜11’をパターニングしてなる薄膜パターン11P’を、光吸収パターンとして備えた実施例3の反射型の転写用マスク200を得た。
【0131】
<実施例および比較例の評価結果>
図7に示すように、実施例1~3のマスクブランクを用いた転写用マスクの作製において、パターン形成用薄膜11,11’に形成された各スペースパターン11a,11a’の開口幅[W11]、[W11’]は、レジスト膜14に形成したスペースパターン14aの開口幅[W14]と同程度であった。具体的には、レジスト膜14に形成したスペースパターン14aの開口幅[W14]からの幅寸法の増加率が、実施例1では6%、実施例2および実施例3では0%であり、低い値に抑えられていた。なお、上述の幅寸法の増加率とは、上記開口幅[W11]または上記開口幅[W11’]から、上記開口幅[W14]を減じた値を、[W14]で除した値(([W11]-[W14])/[W14]または([W11’]-[W14])/[W14])のことである。これに対し、比較例1のマスクブランクを用いた転写用マスクの作製において、パターン形成用薄膜11に形成されたスペースパターン11aの開口幅[W11]は、レジスト膜14に形成したスペースパターン14aの開口幅[W14]よりも、6nmも大きかった。すなわち、比較例1における幅寸法の増加率は、18%と大きな値であった。また、比較例2も同様に、パターン形成用薄膜11に形成されたスペースパターン11aの開口幅[W11]は、レジスト膜14に形成したスペースパターン14aの開口幅[W14]よりも、6nmも大きく、上記幅寸法の増加率は、18%であった。
【0132】
これにより、本発明を適用したマスクブランクは、パターン形成用薄膜に微細なスペースパターンを形成することが可能なものであることが確認された。
【0133】
さらに、実施例1と実施例2の比較により、第2ハードマスク膜13に含まれるタンタル(Ta)の酸化量が少ないほど、第2ハードマスクパターン13Pの膨潤量が大きく、膨潤によって縮小された開口幅[W13’]が、より小さくなる効果が確認された。また、第2ハードマスク膜13に含まれるタンタル(Ta)の酸化量によって、第2ハードマスクパターン13Pの膨潤量の制御が可能であることが確認された。
【0134】
また、本発明を適用したマスクブランクを用いることにより、微細なパターンを有する転写用マスクを製造することが可能であり、このようにして製造した転写用マスクを用いて作製した半導体デバイスの高集積化を図ることが可能であることが確認された。