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特開2023-94588歪センサ用導電性組成物、及び歪センサ用部材
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  • 特開-歪センサ用導電性組成物、及び歪センサ用部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094588
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】歪センサ用導電性組成物、及び歪センサ用部材
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/16 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
G01B7/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203041
(22)【出願日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2021208931
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022155908
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桑原 章史
(72)【発明者】
【氏名】田中 稔彦
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063BA14
2F063BD11
2F063CA01
2F063CA29
2F063DA02
2F063DA05
2F063DC08
2F063DD02
2F063EC03
2F063EC07
2F063EC13
2F063EC14
2F063EC15
2F063EC20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、屋外の温湿度が刻々と変化する環境での歪測定が可能な歪センサを供給することを目的とする。
【解決手段】導電性粒子と、樹脂とを含有する歪センサ用導電性組成物であって、導電性粒子が、凝集粉銀粒子、銀コート銅粒子、及び銀コート合金粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする歪センサ用導電性組成物、さらには前記導電性組成物の導電性粒子の50%粒径が、1μm~10μmであり、かつBET比表面積が0.3~3m/gである導電性組成物により上記課題は解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子(A)と、樹脂(B)とを含有する歪センサ用導電性組成物であって、導電
性粒子(A)が、凝集粉銀粒子、銀コート銅粒子、及び銀コート合金粒子からなる群より
選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする歪センサ用導電性組成物。
【請求項2】
導電性粒子(A)の50%粒径が、1~10μmであり、かつBET比表面積が0.3
~3m/gであることを特徴とする請求項1に記載の歪センサ用導電性組成物。
【請求項3】
樹脂(B)が、ガラス転移温度が70℃以上のフェノキシ樹脂を含むことを特徴とする
請求項1又は2記載の歪センサ用導電性組成物。
【請求項4】
さらに、溶剤(C)を含み、溶剤(C)が沸点150℃以上である溶剤(C1)を含有
することを特徴とする請求項1又は2に記載の歪センサ用導電性組成物。
【請求項5】
さらに、メルカプト基含有化合物(D)を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の歪センサ用導電性組成物。
【請求項6】
前記メルカプト基含有化合物(D)を、樹脂(B)の質量を基準として0.1~10質量%含むことを特徴とする請求項5に記載の歪センサ用導電性組成物。
【請求項7】
歪センサ用導電性組成物により形成される導電層の体積抵抗値が、3×10-3Ω・c
m以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の歪センサ用導電性組成物。
【請求項8】
前記銀コート合金粒子が、銀コート銅ニッケル合金粒子、及び/又は、銀コート銅ニッ
ケル亜鉛合金であることを特徴とする請求項1又は2に記載の歪センサ用導電性組成物。
【請求項9】
基材と、請求項1又は2に記載の歪センサ用導電性組成物により形成される導電層と、
ラミネートフィルム層(F)とを少なくとも有する積層体を具備することを特徴とする歪
センサ用部材。
【請求項10】
ラミネートフィルム層が、フッ素系フィルムを有することを特徴とする請求項7に記載
の歪センサ用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外の温湿度が刻々と変化する環境での歪測定が可能な歪センサ用導電性組成物、及びそれを用いた歪センサ用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本国内のインフラ設備の老朽化に伴い、コンクリートの老朽化を計測するためのメンテナンス方法の構築が急がれており、近年は熟練労働者の不足や計測を自動化するニーズに伴い、計測を無人化することも求められてきている。コンクリートの老朽化を評価、診断する上でコンクリート表面の歪量を計測することは非常に重要であり、従来金属箔やワイヤーを用いた歪ゲージで行われてきた。しかし、既存の歪ゲージは温度変化に対して影響を受けやすく、耐水性、耐湿性が弱く、センサ自体を封止するためにゴム状のテープを貼ったり、樹脂で封止したりする防水・防湿及び環境対策が必要であり、封止したことによる歪計測の信頼性が損なわれ、しかも数年間という長期の計測には耐えられないのが現状であった。
また、コンクリートの劣化の計測が望まれているのは道路、橋、トンネル、鉄道の線路、ビルなどの建造物、鉄塔、港湾等があるが、屋外では直射日光の照射があるだけでなく、港湾や海岸近くのトンネルなどでは海水がコンクリート内に浸潤し、コンクリート内の鉄筋を腐食させたり、コンクリート表面から海水が漏洩したりすることもあり、コンクリート表面に歪センサを貼りつけても塩水、光、温度、湿度等に対し非常に高い耐久性を付与しないと計測に耐えらないことは容易に想像できる。さらに、歪量を計測する環境も一定温度、一定湿度のところはあり得ず、時々刻々と温度、湿度が変化する環境でコンクリートの歪量を計測しなければならず、温湿度による歪量の補正が容易な歪センサが望まれている。
【0003】
歪センサとしては歪ゲージと呼ばれる金属箔を抵抗体素子として利用したものが一般的であり、その他に、半導体を用いたセンサ、光ファイバを用いたセンサがよく知られている。しかしこれらのセンサは計測の精度は高いものの、金属箔を利用したものは高湿、あるいは雨が降るような環境では腐食するため推奨されず、短時間ならともかく、数か月、数年という長期間の使用には耐えられない。また、半導体や光ファイバを用いたものはコストが高く、計測できる歪量の範囲も狭いので用途がかなり限定される。
【0004】
先行文献1には、銀粒子と樹脂により歪センサをフィルム上に形成し、柔軟性及び加工性に富むひずみセンサ材料及びそれを用いたひずみセンサを提供しているが、センサの封止に関する記述がなく、温湿度が刻々と変化する屋外での使用は想定されていない。
先行文献2には、ゲージ率を向上させる目的として主たる導電材料としてグラファイト、金属粉の少なくとも一方を分散し、銀を分散した例では球状銀平均粒径10μm+グラファイト5μmの混合した例などが示されているが、センサ部分の封止に関する記述等はなく温湿度が刻々と変化する屋外での使用は想定されていない。
先行文献3には、導電性がカーボンブラックより高く、腐食しにくいという観点から、例えば、銀、金、銅、ニッケル、ロジウム、パラジウム、クロム、チタン、白金、鉄、およびこれらの合金等から適宜選択し、2種類のアスペクト比の異なる金属フィラーをエラストマーに分散したトランスデューサ、フレキシブル配線板の記述はあるが、センサ部分の封止に関する記述はなく温湿度が刻々と変化する屋外での使用は想定されていない。
先行文献4には、水分が浸入するのを防止し、他方では力が迂回するのを避けるか又は少なくとも著しく低減させる保護コーティングが提案されているが、温湿度が刻々と変化する屋外での使用は想定されていない。
先行文献5~7には、フレキシブルプリント回路上に設けた多点の歪受感部にカバーフィルムを貼り合わせたり、スクリーンインキで樹脂を印刷したりする方法等が記載されているが、基本的にフレキシブルプリント回路形成用の技術であり、防湿効果はあるものの、屋外での使用は想定されていない。
【0005】
先行文献8には、伸縮性に優れ、伸長時にクラックの発生を効果的に抑制でき、高温高湿環境下を経ても導電性を維持する導電ペースト、導電膜、積層体及び電子デバイスの提供するために、メルカプト基を有するエラストマーと、銀粒子又は銀被覆粒子とを含有する導電ペーストに関する記述があるが、メルカプト基を有するエラストマーを用いることによる耐久性の向上の記述はあるが、歪を計測するセンサ組成物としての記述はなくその示唆を与える記述もない。
【0006】
抵抗式歪センサ素子としては、箔ゲージ及び半導体式センサがよく知られており、研究用や一部インフラ設備の歪計測に用いられているものの、屋外での耐久性がなく、長期計測はできなかった。
【0007】
一方、有機系印刷抵抗は安価に抵抗を形成することができるものとして広く知られているが、これを歪センサとして使用した場合、そのゲージ率は小さく(歪による抵抗値変化が小さく)、一方、温湿度による抵抗値変化が大きいために、歪ゲージとして使用するには問題があった。
【0008】
印刷抵抗体を歪ゲージとして使用した場合に、ひずみεが加えられたときRであった抵抗値がΔRだけ変化したとすれば、抵抗体の抵抗値変化率△R/Rと歪量εの間には以下の関係がある。
△R/R=ε・K
K:ゲージ率
ゲージ率Kは、ひずみゲージの感度を表す係数であり、一般用のひずみゲージで使われている銅・ニッケル系やニッケル・クロム系合金のゲージ率Kはほぼ2である。
歪量εと抵抗値変化率ΔR/Rには比例関係が成り立てば、歪センサとして歪量を計測できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特願2015-110155
【特許文献2】特願平6-32423
【特許文献3】特願2009-257680
【特許文献4】特願2005-12552
【特許文献5】特願2015-234431
【特許文献6】PCT/JP2016/080555
【特許文献7】PCT/JP2016/080579
【特許文献8】特願2020-61720
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、屋外の温湿度が刻々と変化する環境での歪測定が可能な歪センサを供給することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決すべく、本発明は、以下のような歪センサ材料、及び、それを用いた歪センサを形成可能な、歪センサ用導電性組成物を提供するものである。
【0012】
本発明の一態様に係る歪センサ用導電性組成物は、導電性粒子(A)と、樹脂(B)とを含有する歪センサ用導電性組成物であって、導電性粒子(A)が、凝集粉銀粒子、銀コート銅粒子、及び銀コート合金粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る歪センサ用導電性組成物は、導電性粒子(A)の50%粒径が、1~10μmであり、かつBET比表面積が0.3~3m/gであることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る歪センサ用導電性組成物は、樹脂(B)が、ガラス転移温度が70℃以上のフェノキシ樹脂を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る歪センサ用導電性組成物は、さらに、溶剤(C)を含み、溶剤(C)が沸点150℃以上である溶剤(C1)を含有することを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る歪センサ用導電性組成物は、さらに、メルカプト基含有化合物(D)を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る歪センサ用導電性組成物は、前記メルカプト基含有化合物(D)を、樹脂(B)の質量を基準として0.1~10質量%含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る歪センサ用導電性組成物は、歪センサ用導電性組成物により形成される導電層の体積抵抗値が、3×10-3Ω・cm以下であることを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係る歪センサ用導電性組成物は、前記銀コート合金粒子が、銀コート銅ニッケル合金粒子、及び/又は、銀コート銅ニッケル亜鉛合金であることを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様に係る歪センサ用部材は、基材と、上記歪センサ用導電性組成物により形成される導電層と、ラミネートフィルム層(F)とを少なくとも有する積層体を具備することを特徴とする。
【0021】
本発明の一態様に係る歪センサ用部材は、ラミネートフィルム層が、フッ素系フィルムを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明により温湿度が変化する環境において安定して歪の計測が可能な歪センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、歪センサの印刷図を表す。
図2図2は、センサ形状(結線・封止付き)を表す。
図3図3は、歪センサ断面図を表す。
図4図4は、実施例1の歪センサの温湿度特性のグラフ(上段)と30%、60%、90%の各湿度毎の石灰ガラスの歪量(10℃の時を0μεとした時の熱膨張による歪量)のグラフ(下段)を示す。
図5図5は、比較例1の歪センサの温湿度特性のグラフ(上段)と30%、60%、90%の各湿度毎の石灰ガラスの歪量(10℃の時を0μεとした時の熱膨張による歪量)のグラフ(下段)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る歪センサ用導電性組成物、及び歪センサ用部材について順に詳細に説明する。
【0025】
[歪センサ用導電性組成物]
本発明の歪センサ用導電性組成物は、導電性粒子(A)と、樹脂(B)とを含有し、導電性粒子(A)が、凝集粉銀粒子、銀コート銅粒子、及び銀コート合金粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする。上記特定の導電性粒子を含むことで、優れた温湿度特性を発現し、温湿度が変化する環境においても正確に歪を計測することができる。
【0026】
(導電性粒子(A))
本発明で用いる導電性粒子(A)は、凝集粉銀粒子、銀コート銅粒子、及び銀コート合金粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。不定形な凝集粉銀粒子、並びに、銀コート銅粒子、銀コート合金粒子を含む導電性組成物は、金属の特性上、温度の上昇に対して抵抗値は上昇するものの、特に湿度の変化に対して安定であり、湿度が変化する環境でも歪を正確に計測することができる。
【0027】
〔凝集粉銀粒子〕
凝集粉銀粒子とは、球状もしくは不定形状の1次粒子が3次元的に凝集したものである。凝集粉銀粒子は球状粉などよりも比表面積が大きいことから低充填量でも導電性ネットワークを形成できる。凝集粉銀粒子は単分散の形態ではなく、粒子同士が物理的に接触していることから導電性ネットワークを形成しやすい。
【0028】
凝集粉銀粒子の粒子径は特に限定されないが、光散乱法により測定した平均粒子径(50%D)が1~20μmであるものが好ましい。より好ましくは1~10μm、さらに好ましくは1~5μmである。平均粒子径が20μm以下であると、分散性に優れペースト化が容易になる。平均粒子径が1μm以上であると、凝集粉としての効果が発現し、低充填においても良好な導電性を維持することができる。
【0029】
〔銀コート銅粒子〕
銀コート銅粉は、銅粉の表面に銀がコートされていることにより、銅粉の導電率が銀よりも小さく点、及び銅が酸化されやすい点、という欠点を解消している。銀コート銅粒子の形状としては、球状、樹脂状、フレーク状等があり、適宜選択できる。
銀コート銅粒子における銀の含有量は、1~20質量%が好ましく、より好ましくは2~15質量%であり、更に好ましくは3~10質量%である。銀コート銅粒子がコアシェル型粒子の場合、コア部に対するコート層の被覆率は、平均で60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。
【0030】
〔銀コート合金粒子〕
銀コート合金粒子における合金としては、例えば、銅ニッケル合金、銅ニッケル亜鉛合金が好適に用いられる。これらの合金を銀で被覆した、銀コート銅ニッケル合金粒子、銀コート銅ニッケル亜鉛合金粒子は、銅や銀よりも抵抗温度計数(下記式1参照)が小さいため、温度湿熱耐性に優れ好ましい。中でも、銀コート銅ニッケル亜鉛粒子は、抵抗温度計数が小さいためにセンサの温湿度特性の改善に好適である。銀コート合金の製造方法は特に制限されず、公知の方法を用いて製造すればよい。
《金属の抵抗値と温度係数との関係式》
(式1) RT=Rt(1+αt(T-t))
RT:T℃における抵抗値、αt:t℃における抵抗温度係数、Rt:t℃における抵抗値
【0031】
また、導電性粒子(A)は、上記の凝集粉銀粒子、銀コート銅粒子等と併用して、任意の導電性粒子を使用することができる。併用できる粒子としては、導電性を有する粒子(粉末)であれば、適宜公知のものを用いることができ、導電性物質としては、例えば、金、銀、銅、銀-銅合金、アモルファス銅、ニッケル、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、ケイ素、アルミニウム、タングステン、モリブデン、白金などの金属粉、これらの金属で被覆した無機物粉末、酸化銀、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ルテニウムなどの金属酸化物の粉末、これらの金属酸化物で被覆した無機物粉末、及びカーボンブラック、グラファイト等を用いることができる。
これらの導電性物質は、2種類以上組み合わせて用いてもよい。無機物粒子(ニッケル、銅、銀、カーボンなど)、無機物粒子の表面に導電性の高い金属(銀、金など)をコーティングした粒子、有機物粒子の表面に導電性の高い金属(銀、金など)をコーティングした粒子なども用いることができる。
【0032】
上記任意の導電性粒子の形状は、特に限定されず、球状、フレーク状、針状などが挙げられる。これらの形状は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよく、例えば、凝集粉とフレーク状粉末とを混合してもよい。
【0033】
導電性粒子(A)の50%粒径は、通常1~40μmであるが、導電性の観点から、1~20μmであることがより好ましく、さらに好ましくは1~10μmであり、特に好ましくは1μm~6μmである。また、平均粒径が0.5~5μmの範囲内の導電性粒子を用いることで、凝集し難く、版からの転移が良好なものが得られる。BET比表面積が0.3~3m/gの範囲にあると導電性が良好である。さらにタップ密度が2~5g/cmの導電性粒子を用いることで、基材への密着性、屈曲性が良好である。
【0034】
導電性粒子(A)の含有量は、所望の抵抗値によって適宜含有量を調整するが、歪センサ用導電性組成物としては、導電性の観点からは、導電性粒子の含有量が、組成物の固形分中で、60重量%以上であることが好ましく、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。また、印刷適性及び導電性の観点からは95重量%以下であることが好ましい。
【0035】
(樹脂(B))
本発明に用いる樹脂(B)としては、熱可塑性のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリル系共重合体、塩素化ポリオレフィン、塩化ゴム、メラミン樹脂、尿素樹脂、ニトロセルロース、セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)、セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)などの変性セルロース類、ロジン、マレイン酸樹脂、天然樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
【0036】
樹脂(B)としては、温度、湿度によって樹脂が膨脹しないことが好ましく、ガラス転移点(Tg)が比較的高く、有機溶剤に可溶な樹脂としてはフェノキシ樹脂とポリエステル樹脂が挙げられる。
【0037】
フェノキシ樹脂は、市販品でいえば、例えばJER1256(数平均分子量(以下、Mnという)10,000、水酸基価190mgKOH/g、ガラス転移温度(以下、Tgという)95℃、三菱化学社製)、JER4250(Mn9,000、水酸基価180mgKOH/g、Tg70℃、三菱化学社製)、JER4275(Mn8,000、水酸基価170mgKOH/g、Tg68℃、三菱化学社製)、PKHA(Mn9,000、水酸基価200mgKOH/g、Tg81℃、GabrielPhenoxies社製)、PKHB(Mn9,500、水酸基価203mgKOH/g、Tg84℃、GabrielPhenoxies社製)、PKHC(Mn11,000、水酸基価201mgKOH/g、Tg89℃、GabrielPhenoxies社製)、PKHJ(Mn16,000、水酸基価200mgKOH/g、Tg98℃、GabrielPhenoxies社製)、PKHH(Mn13,000、水酸基価201mgKOH/g、Tg98℃、GabrielPhenoxies社製)、PKFE(Mn16,000、、Tg98℃、GabrielPhenoxies社製)、PKCP-80(Tg30℃、GabrielPhenoxies社製)、YP-50(Mn14,000、Tg84℃、新日鉄住金化学社製)、YP-55U(水酸基価198mgKOH/g、Tg83℃、新日鉄住金化学社製)、YP-50S(水酸基価284mgKOH/g、Tg84℃、新日鉄住金化学社製)、YP-70(水酸基価270mgKOH/g、Tg72℃、新日鉄住金化学社製)、FX-293(重量平均分子量(以下、Mw)45,000、水酸基価163mgKOH/g、Tg158℃、新日鉄住金化学社製)、FX-280S(Mw42,000、水酸基価330mgKOH/g、Tg158℃、新日鉄住金化学社製)、FX-310(Mw45,000、Tg110℃、新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
またポリエステルは、多塩基酸とポリオール等との反応、又は多塩基酸エステルとポリオール等とのエステル交換反応等の公知の合成法で合成できる。また、芳香環を持つポリエステルを合成するために、多塩基酸は、例えば芳香族ジカルボン酸等を用いることが好ましい。さらに、多塩基酸は単独ではなく、例えば、直鎖脂肪族ジカルボン酸、環状脂肪族カルボン酸、及び3官能以上のカルボン酸等を同時に用いることができる。なお、多塩基酸は、酸無水物基含有化合物を含む。
【0038】
芳香族ジカルボン酸は、例えばテレフタル酸、及びイソフタル酸等が挙げられるがこれらに限定されない。また、直鎖脂肪族ジカルボン酸は、例えばアジピン酸、セバシン酸、及びアゼライン酸等が挙げられるがこれらに限定されない。また、環状脂肪族ジカルボン酸は、例えば1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ジカルボキシ水素添加ビスフェノールA、ダイマー酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及び3-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられるがこれらに限定されない。また、3官能以上のカルボン酸は、無水トリメリット酸、及び無水ピロメリット酸等が挙げられるがこれらに限定されない。その他のカルボン酸は、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩等のスルホン酸金属塩含有ジカルボン酸等も挙げられるがこれらに限定されない。多塩基酸は、単独又は2種類以上を併用できる。
【0039】
ポリオールは、ジオール、及び3個以上の水酸基を有する化合物が好ましい。ジオールは、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、及びネオペンチルグリコール等が挙げられるがこれらに限定されない。3個以上の水酸基を有する化合物は、トルメチロールプロパン、グリセリン、及びペンタエリスリトール等が挙げられるがこれらに限定されない。ポリオールは、単独又は2種類以上を併用できる。
【0040】
ポリエステル樹脂は、市販品でいえば、例えばエリーテルUE9900(Mn15,000、水酸基価8mgKOH/g、Tg101℃、ユニチカ社製)、エリーテルUE9800(Mn13,000、水酸基価4mgKOH/g、Tg85℃、ユニチカ社製)エリーテルUE3250(Mn18,000、水酸基価5mgKOH/g、Tg40℃、ユニチカ社製)、エリーテルUE3223G(Mn20,000、水酸基価5mgKOH/g、Tg-1℃、ユニチカ社製)、エリーテルUE3201(Mn20,000、水酸基価3mgKOH/g、Tg65℃、ユニチカ社製)、エリーテルUE3600(Mn20,000、水酸基価4mgKOH/g、Tg75℃、ユニチカ社製)、エリーテルXA-0611(Mn17,000、水酸基価4mgKOH/g、Tg65℃、ユニチカ社製)、エリーテルUE3200G(Mn15,000、水酸基価6mgKOH/g、Tg65℃、ユニチカ社製)、エリーテルUE3980(Mn8,000、水酸基価17mgKOH/g、Tg63℃、ユニチカ社製)、エリーテルXP-0544(Mn3,500、水酸基価32mgKOH/g、Tg51℃、ユニチカ社製)、バイロン200(Mn17,000、水酸基価6mgKOH/g、Tg67℃、東洋紡社製)、バイロン300(Mn23,000、水酸基価5mgKOH/g、Tg7℃、東洋紡社製)、バイロン630(Mn23,000、水酸基価5mgKOH/g、Tg7℃、東洋紡社製)、バイロン220(Mn3,000、水酸基価50mgKOH/g、Tg53℃、東洋紡社製)、バイロン802(Mn3,000、水酸基価37mgKOH/g、Tg60℃、東洋紡社製)、バイロンGK810(Mn6,000、水酸基価19mgKOH/g、Tg46℃、東洋紡社製)、バイロンGK780(Mn11,000、水酸基価11mgKOH/g、Tg36℃、東洋紡社製)、バイロンGK250(Mn10,000、水酸基価11mgKOH/g、Tg60℃、東洋紡社製)等が挙げられる。
【0041】
このうちフェノキシ樹脂は加水分解しやすい構造を含まず、有機溶剤に溶けやすいため、特に望ましい。ガラス転移温度(Tg)としては、70℃以上の樹脂が好ましく、80℃以上のものがより好ましい。フェノキシ樹脂であれば、Tgが100℃近いものもあり、溶剤に溶けやすく、基材への密着も優れ、かつ加水分解しにくいため、長期間使用しにも耐えやすく、さらにポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル系共重合体は湿度の影響により樹脂が膨脹しやすいが、Tgが70℃以上のフェノキシ樹脂は湿度による膨張が起こりにくいため、好適に歪計測に用いることができる。
これら導電性成物中の樹脂(B)の含有量は、導電性組成物の総固形分重量を基準(100重量%)として5~ 40重量%であることが好ましい。
【0042】
(溶剤(C))
本発明の導電性組成物には、樹脂の種類、分子量、溶解性に応じて、溶剤(C)を含有することができる。これらの樹脂を希釈するための溶剤(C)は、使用する樹脂の溶解性に合わせて選択することができる。溶剤(C)としては、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、肪族系溶剤、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、水等を使用することができ、2種類以上を混合して使用することもできる。以下に具体例を記載するが、それらに限定されるものではない。また、カッコ内は各溶剤の沸点を表す。
【0043】
エステル系溶剤としては、酢酸メチル(56.9℃)、酢酸エチル(77.1℃)、酢酸イソプロピル(89℃)、酢酸n-ブチル(126℃)、酢酸イソブチル(118℃)、酢酸(イソ)アミル(142℃)、酢酸シクロヘキシル(174℃)、乳酸エチル(154℃)、酢酸3-メトキシブチル(171℃)等が挙げられ、ケトン系溶剤としては、アセトン(56℃)、メチルエチルケトン(79.64℃)、メチルイソブチルケトン(116℃)、ジイソブチルケトン(168℃)、メチルアミルケトン(151℃)、イソホロン(215.2℃)、シクロヘキサノン(155.6℃)等が挙げられる。また、グリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル(124℃)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(144℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(171.2℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(194°C)、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル(212℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(121℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(121℃)、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル(149℃)、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル(170℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(194℃)、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル(210℃)、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル(217℃)、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル(247℃)及びこれらモノエーテル類の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(162℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(189℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(171℃)等のジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0044】
脂肪族系溶剤としては、n-ヘプタン(98.42℃)、n-ヘキサン(69℃)、シクロヘキサン(80.75℃)、メチルシクロヘキサン(101℃)、エチルシクロヘキサン(131.78℃)が挙げられ、芳香族系溶剤としては、トルエン(110.6℃)、キシレン(139℃)が挙げられる。アルコール系溶剤としては、メタノール(64.7°C)、エタノール(78.37℃)、1-プロパノール(97.15℃)、2-プロパノール(82.5℃)、1-ブタノール(117.7℃)、シクロヘキサノール(161.8℃)、3-メトキシブタノール(158℃)、ジアセトンアルコール(166℃)等が挙げられる。
【0045】
また、その他の液状媒体として、ジメチルカーボネート(90℃)、エチルメチルカーボネート(248℃)、ジ-n-ブチルカーボネート(206.6℃)が挙げられる。
【0046】
溶剤(C)は、溶剤(C)が沸点150℃以上である溶剤(C1)を含有することが好ましい。溶剤(C1)を含有することで、スクリーン印刷適性が付与されスクリーン版の版乾きが抑制でき印刷の精細性が良化する。
【0047】
(メルカプト基含有化合物(D))
本発明の導電性組成物は、さらに、メルカプト基含有化合物(D)を含むことができる。メルカプト基含有化合物(D)を含むことで、高温高湿度に対する耐久性が向上し、温湿度サイクル特性に優れるため好ましい。上記「温湿度サイクル特性に優れる」とは、長期計測の際に、ベースラインが変調し、センサの抵抗値が元の抵抗値に戻らない現象が抑制されることを意味する。メルカプト基含有化合物(D)を配合することで、メルカプト基が銀と錯体を形成して導電性粒子のネットワークが形成され、伸縮の歪を与えた際に元のネットワーク形状に戻りやすくなり、その結果ベースラインが安定化すると考えられる。
メルカプト基含有化合物(D)としては、例えば、ポリチオール化合物(シランカップリング剤を除く)、メルカプトシランカップリング剤が挙げられる。これらのメルカプト基含有化合物(D)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
〔ポリチオール化合物〕
上記ポリチオール化合物は、メルカプト基を2個以上有する化合物であればよく、分子量及び骨格などは特に限定されない(ただし、シランカップリング剤を除く)。
このようなポリチオール化合物としては、例えば、メタンジチオール、1,3-ブタンジチオール、1,4-ブタンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,2-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,4-ベンゼンジチオール、1,10-デカンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,9-ノナンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパジチオール、トルエン-3,4-ジチオール、3,6-ジクロロ-1,2-ベンゼンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、1,2-ベンゼンジメタンチオール、1,3-ベンゼンジメタンチオール、1,4-ベンゼンジメタンチオール、4,4’-チオビスベンゼンチオール、2,5-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、1,5-ジメルカプト-3-チアペンタン、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール(トリメルカプト-トリアジン)、2-ジ-n-ブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン、トリメチロールプロパントリス(β-チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ポリチオール(チオコールまたはチオール変性高分子(樹脂、ゴム等))が挙げられる。
【0049】
〔メルカプトシランカップリング剤〕
メルカプトシランカップリング剤は、官能基にメルカプト基を持つシランカップリング剤である。このようなメルカプトシランカップリング剤としては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトトリイソプロポキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン等のメルカプトシランカップリング剤が挙げられる。
【0050】
メルカプト基含有化合物(D)中のメルカプト基の濃度は、好ましくは、メルカプト基含有化合物(D)の固形分中0.05~20mmol/gである。0.05mmol/g以上であると、よりベースライン安定性に優れる。
また、メルカプト基含有化合物(D)の含有率は、ベースライン安定性の観点から、好ましくは、樹脂(B)の質量を基準として0.1~10質量%の範囲である。上記範囲内であると、特に60℃90%RHという厳しい高温高湿環境を経た場合でも、抵抗値の変動が抑制され、ベースラインが安定化するため好ましい。
【0051】
(その他成分)
その他に、本発明の導電性組成物は、必要に応じて硬化剤、分散剤、耐摩擦向上剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、酸化防止剤、消泡剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、保湿剤、などを含むことが出来る。
水酸基価を有するフェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂の硬化剤としては従来公知のイソシアネート、ブロックイソシアネートを用いることはできるが、歪の計測においては経時での反応によって、センサ部に硬化収縮による歪が生じる可能性があるので使用前に完全に硬化したか確認した上でセンサとして用いる必要がある。またアルミニウムキレートを添加すると、乾燥時の熱により硬化収縮を起こすために、銀粉同士の接触確率が増え、導電性組成物においてより低い抵抗率が得られる。市販のアルミキレートとしては川研ファインケミカル製のアルミキレートM(化学名:アルミニウムアルキルアセトアセテートジイソプロピレート)、アルミキレートD(化学名:アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート))、アルミキレートA(a)(化学名:アルミニウムトリス(アセチルアセトネート))、アルミキレートA(化学名:アルミニウムトリス(アセチルアセトネート))、S―75P(化学名:アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート+2-プロパノール(25%))、ALCH―TR(化学名:アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート))、ALCH(化学名:アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート)等がある。
【0052】
(導電性組成物の製造)
導電性組成物は導電性粒子、樹脂、必要に応じて溶剤を混練、分散することによって得られる。樹脂は予め溶剤に溶解し、樹脂ワニスとして導電性粒子と混合し、溶剤で所定濃度に希釈した後に、三本ロールで導電性粒子を分散することによって得られる。
【0053】
[歪センサ用導電性部材]
本発明の歪センサ用導電性部材は、基材と、上述の歪センサ用導電性組成物により形成される導電層と、ラミネートフィルム層(F)とを有する積層体を具備する。
【0054】
本発明の導電性組成物は、プラスチック基材の片面もしくは両面に印刷することができる。
プラスチック基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロハン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリスチレン、ビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール、ナイロン、ポリイミド、ポリカーボネート等が挙げられるが、特に耐候性の高い基材としては日陰を含む屋外の使用で5年以上使用可能なプラスチックフィルムであり、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、アクリルフィルム、フッ素フィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、塩化ビニルフィルム等が耐候性、耐酸性、耐アルカリ性の点から特に好ましく、その中でも歪計測を行う上で温度、湿度に対して安定している基材はポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミドが好ましく用いられる。
【0055】
一般にポリエチレンテレフタレート基材は、モノマーを縮合重合させたポリマーからなり、モノマーとポリマーの中間体であるオリゴマーが1.6~2質量%含まれているとされる。湿熱環境や太陽に曝される環境において加水分解しやすく、極端に脆化してしまうが、末端カルボン酸基をカルボジイミド系化合物、エポキシ系化合物、オキサゾリン系化合物により封止する他に末端カルボン酸基を上昇させることなく、重合反応を高度に進め、数平均分子量を増加させるために固相重合法を用いることで重合反応が進んでオリゴマー含有量1.5質量%以下、好ましくは、1.0質量%以下に低くすることができ、加水分解しにくく耐久性に優れたポリエステル樹脂基材を得ることが出来、市販品としても入手可能である。市販品として、例えば、東レ株式会社製のルミラーX10S(商品名)が挙げられる。ここで、オリゴマーの含有量は、核磁気共鳴(NMR)等の方法を用いて知ることができる。これら低オリゴマー含有量のポリエステル樹脂基材を用いると、日光の照射下であれば、黄変等の外観変化はあるが、脆化せず保護機能は保持されるが、日陰であれば黄変もなく、脆化もなく20年以上使用可能な場合がある。
【0056】
ポリイミド樹脂基材は、フレキシブルプリント回路の基材として使用され耐熱性が高く、酸、アルカリに対する耐性も高いが吸湿しやすいため、高温高湿の環境では水蒸気を通しやすい傾向あるが、水蒸気バリア層を設けることにより導電層の保護効果が高まる。
【0057】
また、プラスチック基材の表面を改質して、印刷効果を上げる手段として、コロナ処理(コロナ放電照射)、プラズマ処理(プラズマ放電照射)やアンカー処理が挙げられる。アンカー処理剤としてはポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステルなどの各種変性ポリエステル樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン、塩化ゴム、メラミン樹脂、尿素樹脂、ニトロセルロース、セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)、セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)などの変性セルロース類、ロジン、マレイン酸樹脂、天然樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
塗布方法としては、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷等、従来公知の印刷方法を用いて印刷することができる。但し歪センサの用途ではアンカーの歪が計測に影響するので、極薄く塗工するか、もしくはコロナ放電、プラズマ放電等の処理が望ましい。
歪センサのパターンを形成するための印刷方法としてはフレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷等、従来公知の印刷方法を用いて印刷することができるが、低抵抗化を実現するために膜厚を大きくするにはスクリーン印刷又はロータリースクリーン印刷が望ましい。
【0058】
基材に印刷した導電層を保護するためのラミネートの方法としては、フィルムの片面を熱融着させ貼り付けても、フィルムの片面にアクリル系粘着剤やポリエステル系、アクリル系、エポキシ系のドライラミ用の接着剤を塗工した上で、配線シートの配線パターンの設けられた側にフィルムに配線パターンを挟むように重ね、熱ロール間のニップに通し、貼り合せても差し支えない。もしくはポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂によるフィルムを2つの加熱ロールの片方又は両方を室温~250℃まで適宜加熱し、熱ロール間のニップに通して配線シートに貼り合せればよく、導電性配線を封止し、水蒸気、酸素、アルカリ、酸、日光等からの劣化を抑制することができる。フッ素樹脂は耐候性に優れている点で好ましく、その中でもテトラフルオロエチレン(ETFE)とフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)が特に好ましい。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)は長期の経時で接着剤、粘着剤が剥がれやすいためである。その中でも特に好ましいのがPVDFであり、長期の経時での導電膜の保護機能に優れ、歪計測への影響も少なく耐候性も高いので好適に用いられる。
【0059】
本発明の導電性組成物のより形成される導電層の体積抵抗値は、3×10-3Ω・cm以下であることが好ましい。
【0060】
(接合及び封止)
印刷によって形成した歪センサ部材の両端に端子にリード線を結線する必要があるが、
従来公知の導電接着剤、はんだ、異方導電フィルム、異方導電両面テープ、異方導電ペー
スト等を用いることができる。はんだは耐熱性の基材であるポリイミドの場合は用いるこ
とができるが、耐熱性出ない基材上にセンサを形成する場合は導電接着剤、異方導電両面
テープ等を用いてリード線を結線する。リード線とセンサを結線した部分は、封止用樹脂
やラミネートフィルム等でラミネートすることによって封止することができる封止用樹脂
はリジッド回路、フレキシブルプリント回路、半導体実装等で公知の封止用樹脂を用いる
ことができる。例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノ
ール樹脂等の一液もしくは二液の熱硬化性樹脂を用いることができる。但し、通常リード
線の被覆が塩化ビニルであるため、加熱硬化で被覆が融けてしまう可能性があり、硬化条
件としては常温硬化もしくは120℃以下の熱硬化で硬化することが望ましい。熱硬化に
よる封止樹脂の収縮を抑制するためにも、なるべく低温で樹脂を硬化することが望ましい
【0061】
(試験体用接着剤)
歪センサと試験体を接着する際は一般的に接着剤を用いる。用いられる接着剤としては
瞬間接着剤として用いられるシアノアクリレート系のものが歪計測では一般的である。硬
化時間が極めて短いことと、低粘度のため厚みムラが生じにくいこと、気泡が入りにくい
ために使い勝手に優れており、試験体表面の歪を正確にセンサに伝えることができるが、
高温低温の繰り返しや高湿度の条件では加水分解し脆化するため、剥がれやすく屋外での
長期の計測には向かない。
【0062】
その他にエポキシ系の2液硬化の接着剤があり、無溶剤でかつ常温で硬化し、しかも加
水分解しにくいため長期の計測に好適に用いることができる。エポキシ系の2液硬化剤と
してはエポキシ-酸無水物系、エポキシ-アニオン重合系、シリコーン付加反応系、エポ
キシ-チオール系、エポキシ-カチオン重合系等がある。その中でも室温で硬化する即硬
化が可能で高弾性率と高接着力を両立できるために、エポキシ-チオール系接着剤が特に
好適に用いられる。エポキシ-チオール系接着剤は熱硬化型接着剤のなかでも速硬化可能
な反応系になり、エポキシ樹脂を硬化させるための材料として、イミダゾールとチオール
という寒冷地でも反応する硬化剤を使用する。この組み合わせは外気が0℃の場所でも混
ぜただけで硬化反応が進むほど反応性が高いのが特徴である。コニシ製クイック5、クイ
ックメンダー、セメダイン製ハイスーパー5、共和電業製EP-270、EP-340、
EP-34B等がある。
【実施例0063】
(導電性粒子)
導電性組成物に用いる導電性粒子の一覧を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
(メルカプト基含有化合物)
導電性組成物に用いるメルカプト基含有化合物の一覧を以下に示す。
チオコールLP2:東レファイン・ケミカル(株)製、メルカプト基濃度0.5mmol/g、分子量4,000
チオコールLP3:東レファイン・ケミカル(株)製、メルカプト基濃度2.0mmol/g、分子量1,000
メルカプトプロピルトリメトキシシラン:東京化成工業(株)製、メルカプト基濃度15.2mmol/g、分子量196.34
【0066】
1)タップ密度
JISZ2512:2006法に基づいて測定した。
2)平均粒径
島津製作所製レーザー回折粒度分布測定装置「SALAD-3000」を用いて測定し
た体積粒度分布の累積粒度50の粒子径(D50)を平均粒径と定義し記載した。
3)BET比表面積
島津製作所製流動式比表面積測定装置「フローソーブII」を用いて測定した表面積より
、以下の計算式により算出した値を比表面積と定義し記載した。
比表面積(m/g)=表面積(m)/粉末質量(g)
【0067】
<導電性組成物の製造>
(樹脂ワニスの調整)
樹脂は三菱ケミカル製フェノキシ樹脂JER1256(Tg95℃)、JER4250
(Tg70℃)と東洋紡製ポリエステル樹脂のバイロン200(Tg67℃)、ユニチカ
製ポリエステル樹脂エリーテルUE-9900(Tg101℃)、GabrielPhe
noxies社製フェノキシ樹脂PKCP-80(Tg30℃)の5種をそれぞれエチル
ジグリコールアセテートの溶剤に固形分40%となるようにフラスコで還流させながら溶
解し、樹脂ワニスとした。
【0068】
[実施例1]
凝集銀粉Aを61.7部とJER1256ワニスを33.4部混合し、さらにアルミキ
レ―ト「アルミキレートD(川研ファインケミカル製)」を0.2部と酢酸ジエチレング
リコールモノブチルエーテルを4.7部混合し、遊星攪拌器(EME製UFO-1.5)
で混合した後、3本ロール(AIMEX製BR-150HCV)に通して、グラインドゲ
ージで粒径が15μm以下になるまで仕上げたものを用いた。
【0069】
[実施例2~18、比較例1~2]
材料と配合量を表2のとおり変更した以外は、実施例1の導電性組成物の作成と同様にして、実施例2~18、比較例1~2の導電性組成物を作製した。
【0070】
【表2】
【0071】
<導電性組成物の評価>
得られた導電性組成物について以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0072】
[導電組成物の印刷性の評価]
厚さ75μmのPETフィルムに、実施例1~13、比較例1、2の導電性組成物で線
幅の異なる50mmの線をシルクスクリーン印刷した。用いた版は400メッシュステン
レス版であり、印刷機はミノグループ製EC-1515を用いて印刷した。乾燥はオーブ
ンで130℃、30分間熱風乾燥させた後、その印刷物をダイナトロン製ガーバー基準2
次元自動測長装置MasterSCALEにて印刷物の線幅を確認した。
◎ :線幅が50μm未満
○ :線幅が50μm以上100μm未満
○△:線幅が100μm以上500μm未満
△ :線幅が500μm以上1000μm未満
× :線幅が1000μm以上
【0073】
[歪センサの評価]
(歪センサの作成)
歪センサはポリエチレンテレフタレート(東レルミラーX10S50μm)に両面コロ
ナ処理を施したものを基材とした。この基材上に表2に示す導電性組成物をそれぞれシル
クスクリーン印刷で図1のパターンを印刷した。
【0074】
用いた版は400メッシュステンレス版であり、印刷機はミノグループ製EC-151
5を用いて印刷した。乾燥はオーブンで130℃、30分間熱風乾燥させた後、さらに、
PVDFラミネートフィルムS152FA(トーヨーケム製)をラミネート機(大成ラミ
ネーター製油圧ラミネーターNP―500S)を用いて60℃、ゲージ圧力4MPa、搬
送速度0.5m/minでロールラミネートした後、図1の形状にカッターで切り抜いて
歪センサとした。
【0075】
次に導電組成物の端子部にリード線を接合するため導電接着剤(CircuitWor
ks製CW2400)を用いて、3芯のリード線「ビニール平行線100LJCT」(東
京測器研究所製)1端子に2本ともう一方の端子に1本接合し、24時間以上常温硬化さ
せた。
【0076】
次に接合部分を封止するために2液エポキシ接着剤(コニシ製「クイック5」)を接合
部とリード線を覆うように被覆し、室温で24時間以上硬化させ歪センサを作成した。
【0077】
次に歪センサの温度特性、湿度特性を把握するために熱膨張係数がほぼゼロ(熱膨張係
数1×10-7/K)の3mm厚のアズワン製耐熱ガラス「ネオセラムN-0」と3mm厚の
アズワン製石灰ガラス(熱膨張係数8.5×10―6/K)の2種類のガラスに歪センサ
を貼りつけた。歪センサを貼りつける接着剤は歪センサ用瞬間接着剤CN-E(東京測器
研究所製)を用いた。
【0078】
(体積抵抗値の測定)
実施例1~13、比較例1、2の導電性組成物を、厚さ125μmのポリエチレンテレ
フタレート(東レルミラーX10S50μm)のフィルム上にドクターブレードを用いて
乾燥膜厚が5μmとなるように調整し塗布した後、150℃で30分加熱乾燥し体積抵抗
率評価用の導電組成物(10cm×10cmの塗膜)を得た。
導電回路の体積抵抗率は、ロレスタGP(三菱化学アナリテック社製)を用いて4端子
法で測定(JIS-K7194)して判定した。
(センサ抵抗値)
歪センサの初期のセンサ抵抗値は各歪センサをKeysight製データロガDAQ9
70A本体に計測アダプター20chマルチプレクサDAQM901を用い、各歪センサ
と計測アダプターを繋いで、抵抗値をデータロガで計測した時の室温(20℃)における抵
抗値(Ω)を読み取った。
【0079】
[評価1:歪センサの温湿度特性]
歪センサの温度特性と湿度特性は、耐熱ガラス「ネオセラムN-0」と石灰ガラスに歪
センサを貼付け、温度と湿度を変化させて、その際に耐熱ガラスの熱膨張による歪とセン
サ自身が温度によって検出する抵抗値から求めた。Keysight製データロガDAQ
970A本体に計測アダプター20chマルチプレクサDAQM901を用い、各歪セン
サと計測アダプターを繋ぎ、ガラスに貼りつけた歪センサをプログラム式環境試験機(エ
スペック製PL-2J)に入れ、温度を10℃から順次10℃ずつ変化させ、10℃、20℃、30℃、40℃の各温度で湿度を3時間おきに30%RH、60%RH、90%RHと変化させたとき、各温湿度で安定した時の抵抗値を読み取り、その抵抗値から抵抗値変化率(△R/R)を計算した。ここで、Rは試験開始時(0hr)の抵抗値であり、△Rは、安定した時に読み取った抵抗値とRとの差を表す。
【0080】
最小二乗法による線形近似を用いて、温度湿度特性は以下のように評価した。
(評価基準)
温度に対する耐熱ガラス上での歪センサの抵抗値変化率が
◎+:30%、60%、90%のいずれ湿度でも相関係数R2が0.97以上
◎ :30%、60%、90%のいずれ湿度でも相関係数R2が0.95以上0.97
未満
○ :30%、60%、90%のいずれの湿度でも相関係数R2が0.85以上0.9
5未満
△ :30%、60%、90%のいずれの湿度でも相関係数R2が0.8以上0.85
未満
× :30%、60%、90%のいずれかの湿度で相関係数R2が0.8未満
【0081】
[評価2:歪センサの感度測定]
(手順(1))
石灰ガラスの歪計測も耐熱ガラスの歪計測と同様に行い、各温湿度で安定した時の抵抗
値を読み取り、その抵抗値から抵抗値変化率△R/Rを計算した。
【0082】
耐熱ガラス上で検出される抵抗値の変化はガラスの熱膨張がほぼゼロであるため、主に
歪センサに由来する固有の抵抗値変化であり、温湿度変化による歪センサの抵抗値変化を
求めることができる。
【0083】
さらに熱膨張率が既知である石灰ガラスを用いることにより、石灰ガラスの熱膨張に由
来する歪を計測し歪センサの特性を評価するものである。すなわち、石灰ガラスの熱膨張
率は8.5×10-6/Kであるから1℃温度上昇する毎に8.5μεの歪を生じるとし
、湿度による膨張は無視できるので温度上昇に伴う歪として計測できるかできないかが判
断できる。
(手順(2))
この時、石灰ガラスの歪計測では歪センサ自身の温度特性を含むため、石灰ガラス上で
の抵抗値変化率と耐熱ガラス上での抵抗値変化率の差(g-n)を求めることで、石灰ガ
ラスの歪を捉えているかを判断できる。温度に対する熱膨張に由来する石灰ガラスの歪量
(10℃からの温度差によって生じた熱膨張による歪量)と石灰ガラス上での抵抗値変化
率と耐熱ガラス上での抵抗値変化率の差について最小二乗法により線形近似し、以下の様
に評価した。
◎:相関係数R2が0.95以上
○:相関係数R2が0.8以上0.95未満
△:相関係数R2が0.7以上0.8未満
×:相関係数R2が0.7未満かあるいは傾きが負になる
【0084】
[評価3:歪センサの温湿度サイクル耐性(ベースライン安定性)]
歪センサの温湿度サイクル耐性は、耐熱ガラス「ネオセラムN-0」に歪センサを貼付け、温度と湿度を変化させて、その際に耐熱ガラスの熱膨張による歪とセンサ自身が温度によって検出する抵抗値を測定した。Keysight製データロガDAQ970A本体に計測アダプター20chマルチプレクサDAQM901を用い、各歪センサと計測アダプターを繋ぎ、耐熱ガラスに貼りつけた歪センサを、プログラム式環境試験機(エスペック製PL-2J)に入れた。温度を10℃から順次10℃ずつ変化させ10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃の各温度で湿度を3時間おきに30%RH、60%RH、90%RHと変化させていき、10℃/30%RHからスタートして、60℃/90%RH完了後に、再び10℃/30%RHに戻した。
10℃/30%RHに戻した時(2サイクル目)の抵抗値変化率(ΔR/R)の値と、10℃/30%RHでスタートした時(0hr:1サイクル目)の抵抗値変化率(ΔR/R(=0))との差を求め、当該差に基づき、以下の基準で評価した
S:差が0.0005未満
A:差が0.0005以上、0.005未満
B:差が0.005以上、0.01未満
C:差が0.01以上
【0085】
【表3】
【0086】
図4に一例として実施例1の歪センサの温湿度特性のグラフを示す。いずれの湿度にお
いても歪センサは正の温度特性を示す。すなわち、耐熱ガラスの歪量はほぼゼロであるに
も関わらず抵抗値変化率は温度に伴い直線的に上昇する。一方、石灰ガラスの熱膨張によ
る歪に対し抵抗値変化率が単調に増加しており、温度・湿度の変化がある中でも石灰ガラ
スの歪量が計測可能であり、実施例1のセンサが歪量の計測が可能であることが分かった
【0087】
図5に比較例の一例として比較例1の歪センサの温湿度特性のグラフ(上段)と各湿度
毎の石灰ガラスの歪量(10℃の時を0μεとした時の熱膨張による歪量)のグラフ(下段
)を示す。比較例1の歪センサの温度特性のグラフは実施例と同じく直線関係が得られる
が、一方石灰ガラスの熱膨張による歪量に対し抵抗値変化率は相関しないので、温度と湿
度が変化する環境で歪量の計測はできないと考えられる。
【0088】
実施例に示した歪センサは温度10℃~40℃、湿度30%~90%の範囲の環境条件
で安定して石灰ガラスの歪量を計測できていることが分かった。特に導電性粒子が凝集粉
銀粒子、銀コート銅粒子、銀コート合金粒子の場合が好ましく、フレーク銀粉、球形銀を
用いると歪センサの温度特性、湿度特性の影響が大きく石灰ガラスの歪量が計測できない
と考えられた。
【0089】
導電性粒子(A)の50%粒径は6μm以下だと導電パスがつながりやすく、歪量に対
し抵抗値変化率が直線性を示しやすいと考えられる。また、BET比表面積は粒子径が細
かくなる程大きくなる傾向があるが、粒子径が細かいほど導電性組成物内に均一に導電粒
子が分散されやすく歪に対して安定した抵抗値変化率を示すと考えられる。
【0090】
また、凝集粉銀粒子、銀コート銅粒子、及び銀コート合金粒子からなる群より選ばれる
少なくとも1種で、体積抵抗率が3×10-3Ωcm以下だとセンサ抵抗値を低く設定で
き、歪センサの抵抗値をコントロールしやすく、歪量に対する抵抗値変化率の変化も安定
し、温湿度特性に優れ、温湿度の変化に対して安定して歪量の計測ができることが分かっ
た。
中でも、銀コート合金粒子を用いた組成物は、特に温湿度特性に優れていた(実施例1
0~13)。
【0091】
また、今回樹脂(B)にTgが比較的高いフェノキシ樹脂とポリエステル樹脂を用いた
が、フェノキシ樹脂のPKCP-80と、ポリエステルのバイロン200はTgが70℃
未満で温度特性が安定しなかったのに対し、Tgが70℃以上のフェノキシ樹脂とTgが
101℃と高いポリエステル樹脂エリーテルUE-9900は温度、湿度の変化に対して
安定して計測できていた。これは導電性組成物の樹脂がTg以下のガラス領域であれば、
温度、湿度による膨張が小さく歪センサに影響しにくいためと考えられ、バイロン200
は少なくともTgが低いために温度湿度による樹脂の膨張の影響を受けやすいものと考え
られた。
【0092】
以上のことから、導電性粒子(A)に凝集粉銀粒子、銀コート銅粒子、及び銀コート合
金粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、樹脂のTgが70℃以上あれ
ば歪センサの計測に好適であると考えられる。
【0093】
また、メルカプト基含有化合物(D)を、樹脂(B)の質量を基準として0.1~10質量%含む実施例14~17は、特に、ベースライン安定性に優れていた。これは、メルカプト基が主に導電性粒子の銀コートに作用しコンプレックスを形成したためだと考えられ、歪センサの定量性を向上させるものと考えられる。
【符号の説明】
【0094】
1歪センサ(導電組成物)
2端子部(導電組成物)
3粘着剤付きラミネートフィルム
4センサ基材
5導電接合材
6封止材
73芯リード線
8ラミネート基材
9粘着剤・接着剤層
図1
図2
図3
図4
図5