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特開2023-94592核医学診断装置、画像処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094592
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】核医学診断装置、画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20230628BHJP
   A61B 6/03 20060101ALN20230628BHJP
【FI】
G01T1/161 C
G01T1/161 A
A61B6/03 377
A61B6/03 360T
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205153
(22)【出願日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/293,395
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/682,738
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VERILOG
(71)【出願人】
【識別番号】512249180
【氏名又は名称】カリフォルニア大学
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
【住所又は居所原語表記】1111, Franklin Street, 12th Floor, Oakland, CA, U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジンイ チ
(72)【発明者】
【氏名】ティアンティアン リー
(72)【発明者】
【氏名】シャオヘン シエ
(72)【発明者】
【氏名】ウエンユエン チー
(72)【発明者】
【氏名】リ ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チュン チャン
(72)【発明者】
【氏名】エヴレン アズマ
【テーマコード(参考)】
4C093
4C188
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA25
4C093CA18
4C093CA35
4C093FD03
4C188EE02
4C188FF07
4C188JJ02
4C188KK24
4C188KK33
4C188LL08
4C188LL09
(57)【要約】
【課題】画質を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る核医学診断装置は、処理回路を備える。処理回路は、被検体の減弱補正データと、散乱効果を含む核医学画像である前記被検体の第1の核医学画像とを受信し、さらに前記減弱補正データと前記第1の核医学画像とを訓練された機械学習ベースのシステムに入力することにより、前記第1の核医学画像における散乱効果に対応するデータを含む第1の散乱ベース出力を出力する。前記訓練された機械学習ベースシステムは、(1)入力データセットとして、(1a)減弱補正訓練データおよび(1b)散乱効果を含む訓練核医学画像と、(2)前記訓練核医学画像と比較して散乱効果が低減した散乱ベース訓練出力の対応する組とを入力することによって、訓練され、前記第1の散乱ベース出力は、(a)前記第1の核医学画像における推定散乱を示す散乱サイノグラム、(b)散乱の角度別投影の組、および(c)前記第1の核医学画像と比較して散乱が減少した散乱補正画像のうちの少なくとも1つを含む。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の減弱補正データと、散乱効果を含む核医学画像である前記被検体の第1の核医学画像とを受信し、さらに
前記減弱補正データと前記第1の核医学画像とを訓練された機械学習ベースのシステムに入力することにより、前記第1の核医学画像における散乱効果に対応するデータを含む第1の散乱ベース出力を出力する処理回路を備え、
前記訓練された機械学習ベースシステムは、(1)入力データセットとして、(1a)減弱補正訓練データおよび(1b)散乱効果を含む訓練核医学画像と、(2)前記訓練核医学画像と比較して散乱効果が低減した散乱ベース訓練出力の対応する組とを入力することによって、訓練され、
前記第1の散乱ベース出力は、(a)前記第1の核医学画像における推定散乱を示す散乱サイノグラム、(b)散乱の角度別投影の組、および(c)前記第1の核医学画像と比較して散乱が減少した散乱補正画像のうちの少なくとも1つを含む、核医学診断装置。
【請求項2】
前記訓練された機械学習ベースのシステムは、少なくとも1つの深層畳み込みニューラルネットワーク(Deep Convolutional Neural Network:DCNN)を含む、請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項3】
前記訓練された機械学習ベースのシステムは、教師あり学習を用いて訓練された少なくとも1つの深層畳み込みニューラルネットワーク(Deep Convolutional Neural Network:DCNN)を含む、請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項4】
前記訓練された機械学習ベースのシステムは、類似性指標を用いた教師あり学習を用いて訓練された少なくとも1つの深層畳み込みニューラルネットワーク(Deep Convolutional Neural Network:DCNN)を含む、請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項5】
前記類似性指標は、2乗平均平方根誤差、強度差の加重和、相互相関、敵対的損失、画像ヒストグラム間の相互情報量のうち少なくとも1つを含む、請求項4に記載の核医学診断装置。
【請求項6】
前記処理回路はさらに、前記第1の核医学画像における前記推定散乱を示す前記散乱サイノグラムを処理することによって第2の核医学画像を再構成する、請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項7】
前記訓練核医学画像と比較して散乱効果が低減した前記散乱ベース訓練出力の組は、対応するモンテカルロシミュレーションに基づく、請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項8】
前記訓練核医学画像と比較して散乱効果が低減した前記散乱ベース訓練出力の組は、モデルベースの散乱補正に基づく、請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項9】
前記減弱補正訓練データは、コンピューター断層撮影(Computed Tomography:CT)スキャンから取得される、請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項10】
前記被検体の前記第1の核医学画像は、前記訓練された機械学習ベースモデルへの入力前に低解像度に変換される、請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項11】
前記核医学診断装置は、PET(Positron Emission Tomography)装置である、請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項12】
前記第1の散乱ベース出力は、前記第1の核医学画像における前記推定散乱を示す前記散乱サイノグラムである、請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項13】
前記第1の散乱ベース出力は、前記散乱の角度別投影の組である、請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項14】
前記第1の散乱ベース出力は、前記第1の核医学画像と比較して散乱が低減した散乱補正画像である、請求項1に記載の核医学診断装置。
【請求項15】
前記処理回路はさらに、
(a)前記第1の核医学画像と比較して散乱が低減した前記散乱補正画像と(b)前記第1の核医学画像とから差分画像を生成し、
前記差分画像を順投影することによってサイノグラム画像を生成するように構成されている、請求項14に記載の核医学診断装置。
【請求項16】
核医学診断装置により、被検体の減弱補正データと、散乱効果を含む前記被検体の第1の核医学画像とを受信し、
核医学診断装置により、前記減弱補正データと前記第1の核医学画像とを訓練された機械学習ベースのシステムに入力することにより、前記第1の核医学画像における散乱効果に対応するデータを含む第1の散乱ベース出力を出力する画像処理方法であって、
前記訓練された機械学習ベースシステムは、(1)入力データセットとして、(1a)減弱補正訓練データおよび(1b)散乱効果を含む訓練核医学画像と、(2)前記訓練核医学画像と比較して散乱効果が低減した散乱ベース訓練出力の対応する組とを入力することによって、訓練され、
前記第1の散乱ベース出力は、(a)前記第1の核医学画像における推定散乱を示す散乱サイノグラム、(b)散乱の角度別投影の組、および(c)前記第1の核医学画像と比較して散乱が減少した散乱補正画像のうちの少なくとも1つを含む、画像処理方法。
【請求項17】
コンピューターに、
核医学診断装置により、被検体の減弱補正データと、散乱効果を含む前記被検体の第1の核医学画像とを受信し、
核医学診断装置により、前記減弱補正データと前記第1の核医学画像とを訓練された機械学習ベースのシステムに入力することにより、前記第1の核医学画像における散乱効果に対応するデータを含む第1の散乱ベース出力を出力する処理を実行させるプログラムであって、
前記訓練された機械学習ベースシステムは、(1)入力データセットとして、(1a)減弱補正訓練データおよび(1b)散乱効果を含む訓練核医学画像と、(2)前記訓練核医学画像と比較して散乱効果が低減した散乱ベース訓練出力の対応する組とを入力することによって、訓練され、
前記第1の散乱ベース出力は、(a)前記第1の核医学画像における推定散乱を示す散乱サイノグラム、(b)散乱の角度別投影の組、および(c)前記第1の核医学画像と比較して散乱が減少した散乱補正画像のうちの少なくとも1つを含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、核医学診断装置、画像処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
散乱は、再構成されたPET(Positron Emission Tomography)画像の画質を劣化させる主な要因の1つである。現在、散乱補正には主に2つの方法がある。すなわち、モンテカルロシミュレーションとモデルベースの散乱シミュレーションである。
【0003】
モンテカルロシミュレーションは非常に正確であらゆる散乱事象を含むが、多くのリアルタイム環境の利用には遅すぎる。それに比べて、既知のモデルベースの単一散乱シミュレーションは比較的高速だが、再構成プロセスの中で時間がかかる部分であることに変わりはない。さらに、単一散乱のサイノグラムしか予測しないため、複数の散乱事象には更なる予測ステップが必要となる。最近では、2次散乱事象もモデルベースのシミュレーションの一部としてモデル化でき、得られたサイノグラムが完全な散乱サイノグラムに非常に近くなることを実証している。しかし、この方法は非常に複雑で計算コストが高いという問題がある。
【0004】
深層畳み込みニューラルネットワーク(Deep Convolutional Neural Network:DCNN)は、画像処理の機械学習技術として広く用いられている。一般的に、DCNNは畳み込み、ストライド、プーリング、パディングといった複数のステップを含む。畳み込みの際、ネットワークはカーネルを用いて入力データから目的の特徴を抽出する。
【0005】
PET散乱線推定にDCNNを用いた技術として、(1)単一散乱サイノグラムから複数の散乱サイノグラムを推定する技術と(2)発光減弱サイノグラムから直接散乱サイノグラムを推定する技術の2つが知られている。後者の方法は、散乱が発光または減弱のサイノグラムによって物理的に生成されず、これらのサイノグラムと散乱のサイノグラムの間に直接的な関係がないため、困難である。また、散乱に影響する固有の画像特徴は、これらのサイノグラムから検出することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第11145055号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書及び図面の開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、画質を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る核医学診断装置は、処理回路を備える。処理回路は、被検体の減弱補正データと、散乱効果を含む核医学画像である前記被検体の第1の核医学画像とを受信し、さらに前記減弱補正データと前記第1の核医学画像とを訓練された機械学習ベースのシステムに入力することにより、前記第1の核医学画像における散乱効果に対応するデータを含む第1の散乱ベース出力を出力する。前記訓練された機械学習ベースシステムは、(1)入力データセットとして、(1a)減弱補正訓練データおよび(1b)散乱効果を含む訓練核医学画像と、(2)前記訓練核医学画像と比較して散乱効果が低減した散乱ベース訓練出力の対応する組とを入力することによって、訓練され、前記第1の散乱ベース出力は、(a)前記第1の核医学画像における推定散乱を示す散乱サイノグラム、(b)散乱の角度別投影の組、および(c)前記第1の核医学画像と比較して散乱が減少した散乱補正画像のうちの少なくとも1つを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、少なくとも1つの他の方法(例えば、モンテカルロシミュレーションおよび/またはモデルベースの方法)によって生成された推定散乱データを用いて、核医学訓練画像データ(例えば、複数のPETスキャンからの画像)および訓練減弱補正データ(例えば、減弱画像/マップおよび/または放射線減弱の3次元モデルからのデータ)の対応する組から推定散乱サイノグラムを直接生成するように訓練されている、機械学習ベースのシステム(例えば、DCNN)を示す図である。
図1B図1Bは、核医学画像(例えば、PETスキャンからの画像)および訓練された機械学習ベースのシステムの訓練に用いられる(複数)種類の減弱補正データ(例えば、減弱画像/マップおよび/または放射線減弱の3次元モデルからのデータ)から推定散乱サイノグラムを直接生成する、訓練された機械学習ベースのシステム(例えば、DCNN)を示す図である。
図1C図1Cは、推定散乱サイノグラムのための例示的な画像、核医学画像、および減弱補正データを利用した図1Bの方法およびシステムを示す図である。
図1D図1Dは、核医学画像(例えば、PETスキャンからの画像)からの散乱の推定角度別投影と、訓練されたDCNNの組の訓練に用いられる種類の減弱補正データ(例えば、減弱画像/マップおよび/または放射線減弱の3次元モデルからのデータ)とを直接生成する、一組の訓練されたDCNNを示す図である。
図2図2は、訓練されたDCCNが(a)核医学画像と(b)減弱補正データから一組の散乱補正画像を作成した後、順投影によって散乱サイノグラムを作成し、核医学画像と一組の散乱補正画像から生成した一組の差分画像に順投影を適用するデータフローを示す図である。
図3図3は、図2の核医学画像および一組の散乱補正画像のうちの1つから差分画像が生成される処理について示した図である。
図4図4は、図3の差分画像に順投影を施し、散乱補正を行うための疑似散乱サイノグラムを生成する処理について示した図である。
図5図5は、一実施例に係るPET/CTマルチチャネル入力を有する3D深層ニューラルネットワークの1つの例示アーキテクチャーを示す図である。
図6図6は、(1)散乱補正なし(Non-SC)、(2)単一散乱シミュレーション(SSS-SC)を用いた散乱補正あり、(3)深層散乱補正あり(DPET-SC)での患者のイメージングを含む、癌患者の異なる画像を示す図である。
図7A図7Aは、本開示の一実施形態に係るPET装置の斜視図を示す図である。
図7B図7Bは、本開示の一実施形態に係るPET装置の概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、核医学診断装置、画像処理方法及びプログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0011】
核医学イメージングでは、PETスキャンが散乱の影響を受けて画質が低下する。散乱を補正するために、機械学習ベースの補正システムを利用し、一実施形態ではDCNNを用いる、リアルタイム補正工程が本明細書に記載されている。一実施形態では、発光減弱補正データからDCNNを用いて、散乱サイノグラムが直接推定される。別の実施形態では、散乱補正された画像を、DCNNを用いて推定した後、散乱サイノグラムを順投影によって計算する。
【0012】
いずれの実施形態においても、DCNNはU-Netのような構造として実装できるが、ネットワーク構造はこれに限定されない。畳み込み演算、活性化関数、最大プーリング、バッチ正規化等の、基本的なニューラルネットワーク要素の他の異なる組み合わせも使用可能である。ネットワークの訓練において、予測画像(またはサイノグラム)とグラウンドトルース散乱補正画像(または散乱サイノグラム)の類似度を反映する損失関数を最小化する。これらのネットワークのパラメータは、新しい画像の組と共に使用する、訓練されたネットワークを形成する。予測とグラウンドトルースの類似性を測定するために、様々な類似性指標を適用することができる。この類似性指標には、2乗平均平方根誤差、強度差の加重和、相互相関、敵対的損失、画像ヒストグラム間の相互情報量が含まれるがこれらに限定されない。
【0013】
図1Aは、機械学習ベースのシステム(例えばDCCN)を示し、散乱補正なしの複数の飛行時間(Time Of Flight:TOF)再構成を表す訓練画像データの集合と、対応する訓練減弱補正データの集合(例えば、放射線減弱の3次元モデルまたは一組の減弱画像から生成される)から散乱を推定するよう訓練される。一実施形態では、訓練減弱補正データの集合は、PET画像データと共に機械学習ベースのシステムに入力される多数のヘリカルコンピューター断層撮影(Computed Tomography:CT)スキャンから取得される。あるいは、減弱補正データは放射線減弱の3次元モデルから得られる対応データであってもよい。DCCN訓練の前に、核医学画像に減弱補正データを登録しなければならない。次に、代替散乱推定方法(例えば、モンテカルロシミュレーションまたはモデルベースの方法)を用いて生成された対象の散乱情報をエミュレートするように、機械学習ベースのシステムを訓練する。
【0014】
その後、訓練された機械学習ベースのシステム(例えば、図1Bおよび1Cに示す)は、後の入力画像データおよび訓練されたシステムの訓練に使用される種類の対応する減弱補正データから、推定散乱サイノグラムを生成することができる。図1Cのデータフロー図に関連して例示的な画像を示す。
【0015】
代替実施形態では、単一のネットワークを用いてすべてのイメージング角度を計算する場合よりネットワークの次元を減らすために、図1Bの単一のDCNNを一連の角度別DCNNに置き換えている。図1Dは一組の訓練されたDCNNを示し、核医学画像(例えば、PETスキャンからの画像)からの散乱の推定角度別投影と、訓練されたDCNNの訓練に使用される種類の減弱補正データとを直接生成する。様々な角度からの散乱の個別の投影を結合して、散乱サイノグラムを生成することができる。非飛行時間(TOF)散乱の場合、投影は2次元となる。TOF散乱の場合、投影は3次元となる。
【0016】
代替実施形態では、機械学習ベースのシステムを作成して散乱サイノグラムを生成するのではなく、機械学習ベースのシステムを訓練して散乱補正された画像を生成する。図2はデータフロー図を示し、訓練されたDCCNが、(a)核医学画像と(b)減弱補正データから一組の散乱補正画像を作成する。次に、核医学画像と一組の散乱補正画像から生成された一組の差分画像に順投影を適用して、少なくとも一組の散乱補正サイノグラムデータPxを生成する。次に、散乱補正された少なくとも一組のサイノグラムデータPxは、最尤期待最大化(Maximum Likelihood Expectation Maximization:MLEM)再構成を含む任意の数の再構成に使用できる。再構成はこれに限定されない。
【0017】
未訓練の機械学習ベースのシステムを訓練して対応する散乱補正画像を生成するために、システムは、以下の式(1)で与えられるコスト関数を最小化する散乱分布を生成するネットワークの決定を求める。
【0018】
【数1】
【0019】
ここで、fθは非散乱補正画像xnscを、教師あり訓練を介してグラウンドトルース散乱補正画像xscに写像するネットワークを表す。あるいは、他のコスト関数を用いてもよい。
【0020】
ここで、xμは、散乱の推定/モデリングを支援する減弱情報を含む別の入力チャネルである。xnscとfθ(xnsc,xμ)間の差分画像は、散乱分布xとして定義される。
【0021】
ここで、以下の式(2)が成り立つ。
【0022】
【数2】
【0023】
ここで、y(バー記号)は、サイノグラムの計測カウントを表す。Pは順投影を表すシステム行列、xscはグラウンドトルース散乱補正画像、xsは上述の散乱分布、r(バー記号)はランダムな偶然の同時の期待数である。Pxsとモデルベースの散乱サイノグラムの差はバックプロジェクタの零空間に位置すると仮定され、再構築には影響しない。これによって以下の式(3)のような散乱補正再構成が行われる。
【0024】
【数3】
【0025】
PETの最尤法EMアルゴリズムにおいて、反復型更新式は以下の式(4)で与えられる。
【0026】
【数4】
【0027】
ここでyiはi番目のLORにおける計測カウントであり、xj kはj番目のボクセルにおけるk回目の推定アクティベーションである。
【0028】
反復再構成における散乱補正および上記提案の方法からの推定散乱siを考慮すると、散乱補正を加えた反復型更新式は以下の式(5)の通りである。
【0029】
【数5】
【0030】
図3は、図2の一部を示すデータ図である。図3では、核医学画像と図2の散乱補正画像の組のうちの1つの画像とから生成される差分画像が例示される。図4のデータ図ではさらに、図3の差分画像を順投影して疑似散乱サイノグラムを生成し、散乱補正を行う。
【0031】
公知の技術におけるタイミングと性能の問題に対処するため、画像ベースの散乱推定では、サイノグラムベース散乱推定よりも小さなデータサイズ(3D画像対4D/5Dサイノグラム)を使用する。散乱補正した画像を直接出力する場合と比較して、散乱サイノグラムを用いることでより柔軟な散乱補正となる。
【0032】
一実施形態では、機械学習ベースのシステムはニューラルネットワークからなり、訓練された機械学習ベースのシステムは訓練されたニューラルネットワークからなる。
【0033】
別の実施形態では、機械学習に基づくシステムは複数のニューラルネットワークからなり、ネットワークのうち少なくとも1つは図1Dに示すように、順投影の角度別散乱補正を利用する。
【0034】
図5は、本開示の一実施形態に係るPET/CTマルチチャネル入力を有する3D深層ニューラルネットワークの、1つの例示的なアーキテクチャーを示す。複数の隠れ層と1つの出力層を示す。図に示すように、一組のPET画像と減弱情報がニューラルネットワークへの入力として適用される。図中のニューラルネットワークは、各層で使用される画像サイズと、各層の相互接続に使用される結合の数を示す。各層で行う操作の種類も示す。例示的な実施形態に見られるように、学習とテストの速度を向上させるために、多くの層の処理中に画像サイズを縮小し、続く層で再拡大している。ただし、画像サイズを縮小したり、表示される量だけ縮小したりする必要はない。
【0035】
図6は、(1)散乱補正なし(Non-SC)、(2)単一散乱シミュレーション(SSS-SC)を用いた散乱補正あり、(3)深層散乱補正あり(DPET-SC)での患者のイメージングを含む、癌患者の異なる画像を示す。
【0036】
深層ニューラルネットワークを用いた散乱サイノグラムの直接推定と比較して、飛行時間型PETサイノグラムが5次元であるのに対し画像は3次元であるため、画像ベースの散乱推定はより効率的である。純粋な画像ベースの深層散乱補正と比較して、ハイブリッド手法はバイアスをさらに低減すると予想される。
【0037】
深層散乱補正を、Canon(登録商標) Cartisian(登録商標) PET/CTスキャナーからのフッ化デオキシグルコース(Fluorodeoxyglucose:FDG)スキャンを用いて検証した。あらかじめ訓練した深層散乱ネットワークを非散乱補正画像に適用し、散乱補正画像を生成した。ネットワーク予測は、線形回帰R2が0.97の単一散乱シミュレーションを用いる散乱補正画像に相当する。
【0038】
画像および関連する測定値が示すように、本開示の深層散乱法は良好な画質をもたらした。深層散乱補正画像では、単一散乱シミュレーション補正画像に比べ、肝臓領域がより均一である。さらに、深層散乱推定にかかる計算時間はわずか2秒であり、単一散乱シミュレーション法に比べて大幅に高速化された。
【0039】
上記の技術を様々なシステムに組み込めることが理解できる。一実施形態では、上記の技術をPETシステムに組み込むことができる。図7Aおよび7Bは、本明細書に記載される方法を実施することができるPET装置400の非限定的な例を示す。PET装置400は、それぞれが長方形の検出器モジュールとして構成された多数のガンマ線検出器(Gamma-Ray Detector:GRD)(例えば、GRD1、GRD2~GRDN)を備える。
【0040】
各GRDは、ガンマ線を吸収しシンチレーション光子を放出する個々の検出器結晶の2次元配列を含むことができる。シンチレーション光子は、光電子増倍管(photomultiplier tube:PMT)の2次元配列によって検出することができる。光電子増倍管もGRD内に配置される。検出器結晶の配列とPMTの間に光ガイドを配置することができる。
【0041】
あるいは、シンチレーション光子をシリコン光電子増倍管(silicon photomultiplier:SiPM)の配列によって検出することができ、各検出器結晶はそれぞれのSiPMを持つことができる。
【0042】
各光検出器(例えば、PMTまたはSiPM)はアナログ信号を生成することができる。アナログ信号はシンチレーションイベントがいつ発生するか、および検出イベントを生成するガンマ線のエネルギーを示す。さらに、1つの検出器結晶から放出された光子を複数の光検出器で検出することができ、各光検出器で生成されたアナログ信号に基づいて、検出イベントに対応する検出器結晶を、例えば、アンガーロジックおよび結晶復号を用いて決定することができる。
【0043】
図7Bは、被検体OBJから放出されるガンマ線を検出するように配置されたガンマ線(γ線)光子計数検出器(Gamma-Ray photon counting Detector:GRD)を有するPETスキャナーシステムの概略図を示す。GRDは、各ガンマ線検出に対応するタイミング、位置、エネルギーを測定できる。一実施態様では、図7Aおよび図7Bに示すように、ガンマ線検出器は環状に配置される。検出器結晶は、個々のシンチレータ素子を2次元配列で配置したシンチレータ結晶とすることができる。シンチレータ素子は任意の既知の発光物質とすることができる。各シンチレータ素子からの光を複数のPMTで検出してシンチレーションイベントのアンガー演算と結晶復号を可能にするように、PTMを配置することができる。
【0044】
図7Bは、PET装置400の配置の一例を示し、撮像対象の被検体OBJがテーブル416上に載っており、GRDモジュールGRD1~GRDNは被検体OBJおよびテーブル416の周囲に配置されている。ガントリー440に固定的に接続される円形コンポーネント420に、GRDを固定的に接続できる。ガントリー440は、PET撮像装置の多くの部品を収容している。PET撮像装置のガントリー440は、被検体OBJとテーブル416が通過できる開口部も含み、消滅イベントにより被検体OBJから反対方向に放出されるガンマ線をGRDによって検出でき、タイミングとエネルギー情報を用いてガンマ線ペアの一致を判定できる。
【0045】
図7Bでは、ガンマ線検出データの取得、保存、処理、および配信を行うための回路とハードウェアも示される。回路およびハードウェアは、プロセッサー470、ネットワークコントローラー474、メモリー478、およびデータ取得システム(Data Acquisition System:DAS)476を含む。PET撮像装置は、GRDからの検出測定結果をDAS476、プロセッサー470、メモリー478、およびネットワークコントローラー474に転送するデータチャネルも含む。DAS476は、検出器からの検出データの取得、デジタル化、およびルーティングを制御することができる。一実施態様では、DAS476はテーブル416の動きを制御する。プロセッサー470は、本明細書で説明するように、検出データからの画像の再構成、検出データの再構成前処理、および画像データの再構成後処理などの機能を実行する。
【0046】
一実施形態では、プロセッサー470を、本明細書に記載される様々なステップおよびその変形を実行するように構成できる。プロセッサー470は、ディスクリート論理ゲート、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、書き替え可能ゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、または他の複合プログラム可能論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)として実装できるCPUを含むことができる。FPGAまたはCPLDの実装は、VHDL、Verilog、または他の任意のハードウェア記述言語でコード化されてもよく、コードはFPGAまたはCPLDの内部に設けられた電子メモリーに格納または別の電子メモリーとして格納されてもよい。さらに、メモリーはROM、EPROM(登録商標)、EEPROM(登録商標)、FLASH(登録商標)メモリーなどの不揮発性メモリーであってもよい。メモリーはスタティックまたはダイナミックRAMなどの揮発性メモリーでもよく、マイクロコントローラーやマイクロプロセッサーなどのプロセッサーが、FPGAまたはCPLDとメモリー間の相互作用だけでなく電子メモリーを管理するために備えられてもよい。
【0047】
あるいは、プロセッサー470におけるCPUは、本明細書に記載の様々なステップを実行するコンピューター可読命令の組を含むコンピュータープログラムを実行することができ、プログラムは、上述の非一時的なコンピューター可読媒体、電子メモリーおよび/またはハードディスクドライブ、CD、DVD、FLASH(登録商標)ドライブまたは他の既知の記憶媒体のいずれかに格納されている。さらに、コンピューター可読命令は、米国Intel(登録商標)社のXenon(登録商標)プロセッサーまたは米国AMD(登録商標)社のOpteron(登録商標)プロセッサーなどのプロセッサーおよびMicrosoft(登録商標) VISTA(登録商標)、UNIX(登録商標)、Solaris(登録商標)、LINUX(登録商標)、Apple(登録商標)、MAC-OS(登録商標)、および当業者に知られている他のオペレーティングシステムと連携して実行する、ユーティリティーアプリケーション、バックグラウンドデーモン、オペレーティングシステムのコンポーネントまたはそれらの組み合わせとして提供されてもよい。さらにCPUは、協調して並列に動作して命令を実行する複数のプロセッサーとして実装できる。
【0048】
メモリー478は、ハードディスクドライブ、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、FLASH(登録商標)ドライブ、RAM、ROM、または当技術分野で他の既知の電子記憶装置とすることができる。
【0049】
米国Intel(登録商標)社のIntel Ethernet(登録商標) PROネットワークインターフェースカードなどのネットワークコントローラー474は、PET撮像装置の様々な部分間をつなぐことができる。さらに、ネットワークコントローラー474は外部ネットワークとつながることもできる。以上で理解できるように、外部ネットワークはインターネットなどのパブリックネットワーク、LANやWANネットワークなどのプライベートネットワーク、またはそれらの任意の組み合わせとすることができ、PSTNまたはISDNサブネットワークも含むことができる。外部ネットワークは、イーサネット(登録商標)ネットワークのように有線でも、EDGE、3G、4Gワイヤレスセルラーシステムを含むセルラーネットワークのように無線でも可能である。無線ネットワークは、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)または他の既知の無線通信形態とすることができる。
【0050】
本明細書に記載された方法およびシステムは、多くの技術で実施することができるが、概して本明細書に記載された工程を実行するためのイメージング装置および/または処理回路に関する。ニューラルネットワークが用いられる実施形態において、ニューラルネットワークを訓練するために用いられる処理回路は、本明細書に記載の方法を実行する訓練されたニューラルネットワークを実装するために用いられる処理回路と、同じ処理回路である必要はない。例えば、訓練されたニューラルネットワークを生成するためにFPGAを用いてもよいし(例えば、その相互接続および重みによって定義されるように)、さらに訓練されたニューラルネットワークを実装するためにプロセッサー470およびメモリー478を用いることができる。さらに、訓練されたニューラルネットワークの訓練および使用では、性能向上のためのシリアル実装またはパラレル実装を使用してもよい(例えば、グラフィックスプロセッサーアーキテクチャーなどのパラレルプロセッサーアーキテクチャーに、訓練されたニューラルネットワークを実装することによる)。
【0051】
これまでの説明において詳細を具体的に述べた。しかし、本明細書の技術はこの具体的な詳細から逸脱した他の実施形態で実施されてもよく、その詳細は説明のためであって限定するものではないことを理解しなければならない。本明細書に開示された実施形態について、添付の図面を参照して説明した。同様に、説明の目的で、理解を深めるための具体的な数値、材質、構成を示した。しかし、この具体的な詳細なしで実施形態を実施してもよい。
【0052】
様々な実施形態の理解を促すために、様々な技術を複数の個別の操作として説明した。記述の順序が、これらの操作が必然的に順序に依存することを示していると解釈するべきではない。実際、これらの操作は提示順に行われる必要はない。記載された操作は、記載された実施形態と異なる順序で実行されてもよい。追加の実施形態において、様々な追加の操作が実行されてもよく、および/または、記載された操作が省略されてもよい。
【0053】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、画質を向上させることができる。
【0054】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
470 プロセッサー
474 ネットワークコントローラー
476 データ取得システム
478 メモリー
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B