(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094601
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】スズを含むケイ酸リチウムガラスセラミック
(51)【国際特許分類】
C03C 10/04 20060101AFI20230628BHJP
A61K 6/833 20200101ALI20230628BHJP
【FI】
C03C10/04
A61K6/833
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022205342
(22)【出願日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】21217422
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL-9494 Schaan Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マルク ディトマー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン リッツベルガー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ランプ
(72)【発明者】
【氏名】カトリン ズルザー
【テーマコード(参考)】
4C089
4G062
【Fターム(参考)】
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4G062NN33
4G062QQ06
(57)【要約】
【課題】酸処理した充填材をベースにする、スズを含むケイ酸リチウムガラスセラミックを提供すること。
【解決手段】スズを含有し、かつ非常に良好な機械的および光学的性質を特徴とし、かつ特に歯科の修復材料として使用することができる、ケイ酸リチウムガラスセラミックおよびその前駆体について記述される。本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックは、SnO2として計算されるスズを0.01から4.5、好ましくは0.03から3.0、特に好ましくは0.1から2.0、最も好ましくは0.2から1.5重量%含むという事実によって特徴付けられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SnO2として計算された、0.02から4.5、好ましくは0.03から3.0、特に好ましくは0.1から2.0、最も好ましくは0.2から1.5重量%のスズを含む、ケイ酸リチウムガラスセラミック。
【請求項2】
65.0から89.0、好ましくは68.0から83.0、特に好ましくは75.0から81.0、最も好ましくは77.0から80.0重量%のSiO2を含む、請求項1に記載のガラスセラミック。
【請求項3】
10.0から21.0、好ましくは11.0から20.0、特に好ましくは13.0から19.0、最も好ましくは14.0から18.0重量%のLi2Oを含む、請求項1または2に記載のガラスセラミック。
【請求項4】
3.0未満、好ましくは2.0未満、特に好ましくは1.0未満、最も好ましくは0.1重量%未満のP2O5を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項5】
0から7.0、好ましくは1.0から6.0重量%の、K2O、Na2O、Rb2O、Cs2O、およびこれらの混合物から選択される1価の元素の酸化物MeI
2Oを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項6】
0から6.0、好ましくは1.0から5.0、より好ましくは1.2から4.5、さらに好ましくは1.5から4.0、最も好ましくは1.5から2.5重量%のK2Oを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項7】
0から15.0、好ましくは0から10.0、特に好ましくは0から8.0重量%の、CaO、MgO、SrO、ZnO、およびこれらの混合物の群から選択される2価の元素の酸化物MeIIOを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項8】
0から12.0、好ましくは0.1から10.0、特に好ましくは1.0から8.0重量%の、Al2O3、B2O3、Y2O3、La2O3、およびこれらの混合物から選択される3価の元素の酸化物MeIII
2O3を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項9】
0.1から6.0、好ましくは1.0から5.0、より好ましくは1.5から4.0、最も好ましくは1.5から3.0重量%のAl2O3を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項10】
二ケイ酸リチウムまたはメタケイ酸リチウムを主結晶相として含み、好ましくは二ケイ酸リチウムを主結晶相として含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項11】
1.0から50.0重量%、好ましくは1.5から45.0重量%、特に好ましくは2.0から40.0重量%のメタケイ酸リチウム結晶を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項12】
50.0から90.0、好ましくは55.0から85.0、特に好ましくは60.0から80.0重量%の二ケイ酸リチウム結晶を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載のガラスセラミック。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか一項に記載のガラスセラミックの成分を含む、出発ガラス。
【請求項14】
メタケイ酸リチウムおよび/または二ケイ酸リチウムの結晶化のための核を含む、請求項13に記載の出発ガラス。
【請求項15】
前記ガラスセラミックおよび前記出発ガラスが、粉末、顆粒、ブランク、または歯科修復物の形をとる、請求項1から12のいずれか一項に記載のガラスセラミックまたは請求項13もしくは14に記載の出発ガラス。
【請求項16】
請求項1から12または15のいずれか一項に記載のガラスセラミックを生成する方法であって、請求項13から15のいずれか一項に記載の出発ガラスを、少なくとも1つの熱処理に、特に800から1050℃、好ましくは850から1020℃の範囲で供する、方法。
【請求項17】
(a) 前記出発ガラスを、400から600℃、特に430から550℃、より好ましくは440から520℃の温度の熱処理に供して、核を持つ出発ガラスを形成し、
(b) 前記核を持つ出発ガラスを、800から1050℃、特に850から1020℃の温度の熱処理に供して、ケイ酸リチウムガラスセラミックを形成する、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
好ましくは歯科修復物を被覆するための、特に好ましくは歯科修復物を生成するための歯科材料としての、請求項1から12もしくは15のいずれか一項に記載のガラスセラミックの、または請求項13から15のいずれか一項に記載の出発ガラスの使用。
【請求項19】
前記ガラスセラミックまたは前記出発ガラスに、所望の歯科修復物、特にブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウン、またはファセットの形状が、プレスまたは機械加工によって与えられる、請求項18に記載の歯科修復物を生成するための使用。
【請求項20】
歯科修復物、特にブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウン、またはファセットを生成する方法であって、請求項1から12もしくは15のいずれか一項に記載のガラスセラミック、または請求項13から15のいずれか一項に記載の出発ガラスに、プレスまたは機械加工によって、特にCAD/CAMプロセスで所望の歯科修復物の形状を与える、方法。
【請求項21】
請求項1から12もしくは15のいずれか一項に記載のガラスセラミック、または請求項13から15のいずれか一項に記載の出発ガラスを含む、組成物であって、歯科材料として、好ましくは歯科修復物を被覆するための、特に好ましくは歯科修復物を生成するための歯科材料として使用される、組成物。
【請求項22】
前記ガラスセラミックまたは前記出発ガラスに、所望の歯科修復物、特にブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウン、またはファセットの形状が、プレスまたは機械加工によって与えられる、歯科修復物を生成するための、請求項21に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科で使用するのに、好ましくは歯科修復物を生成するのに特に適切な、スズを含むケイ酸リチウムガラスセラミック、およびこのガラスセラミックを生成するための前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
スズを含有するガラスセラミックは、従来技術から公知である。
【0003】
欧州特許出願公開第1985591号明細書は、金属コロイドによって着色することができるガラスセラミックについて記述する。可能性ある金属コロイド形成体は、金属Au、Ag、As、Bi、Nb、Cu、Fe、Pd、Pt、Sb、およびSnの化合物である。ガラスセラミックは、特に、少なくとも18.0重量%の多量の酸化アルミニウムと、有意な量の酸化アンチモンおよび酸化ヒ素であって健康に有害なものとを含有する、アルミノケイ酸リチウムガラスセラミックまたはアルミノケイ酸マグネシウムガラスセラミックである。
【0004】
国際公開第03/050053号および国際公開第03/050051号は、例えばマウスウォッシュ、歯磨き粉、またはデンタルフロスの成分として歯科医療の分野で使用することができる、抗菌性ガラスセラミック粉末について記述する。抗菌特性を高めるため、Ag、Au、I、Ce、Cu、Zn、およびSnなどの抗菌的に活性なイオンが存在していてもよい。ガラスセラミックは、アルカリ土類アルカリシリケートおよび/またはアルカリ土類シリケート、特にNaCaシリケートおよびケイ酸Caを、主結晶質相として有する。
【0005】
国際公開第2005/058768号は、調理用ホブ(cooking hob)の製造に特に適切な、アルミノケイ酸リチウムガラスセラミックの本体を開示する。本体は、Zn、Cu、Zr、La、Nb、Y、Ti、Ge、V、およびSnの群からのより高い含量の結晶化促進化学元素を持つ表面層を有する。主結晶質相として、ガラスセラミックは高石英固体溶液相を含有する。
【0006】
欧州特許出願公開第1688397号明細書は、少量の酸化亜鉛ならびに多量の2.0から5.0重量%の核化剤を含有するケイ酸リチウムガラスセラミックについて記述する。メタケイ酸リチウムを形成するための核化剤は、特に、P2O5と、元素Pt、Ag、Cu、およびWの化合物から選択され、好ましくはP2O5である。したがってP2O5も、ケイ酸リチウムに加えて、特に開示されたガラスセラミックの全てで核化剤として使用され、結晶相としてリン酸リチウムの形成ももたらす。しかしながらリン酸リチウム結晶は、ケイ酸リチウムガラスセラミックの機械的および/または光学的性質を損なう可能性がある。
【0007】
国際公開第2013/053866号は、酸化スズなどの4価の金属酸化物を含有するケイ酸リチウムガラスセラミックについて記述する。金属、特にAg、Au、Pt、およびPd、特に好ましくはP2O5が、ケイ酸リチウムの形成のための核化剤として使用される。しかしながら、核化剤としてのP2O5の使用は、結晶相として望ましくないリン酸リチウムの形成をもたらす。さらに、ガラスセラミックは、ごく少量の1価の金属酸化物K2OおよびNa2Oのみ含有し、好ましくは実質的にこれら金属酸化物を含まない。
欧州特許出願公開第3696149号明細書は、蛍光ガラスセラミック、ならびに蛍光を生成するセリウムおよびスズと核化剤としてのP2O5を含有するガラスについて記述する。この文脈において、スズは、Ce3+とCe4+イオンとの間の平衡の所望の調節に役立ち、それによってガラスセラミックの所望の蛍光および所望の変色が実現される。核化剤としてのP2O5の使用は、ガラスセラミック中での望ましくないホスフェート結晶相の存在をもたらし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1985591号明細書
【特許文献2】国際公開第03/050053号
【特許文献3】国際公開第03/050051号
【特許文献4】国際公開第2005/058768号
【特許文献5】欧州特許出願公開第1688397号明細書
【特許文献6】国際公開第2013/053866号
【特許文献7】欧州特許出願公開第EP3696149号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
まとめると、公知のガラスセラミックは、歯科修復材料に望ましい性質を保有せず、または特に修復材料に望ましい機械的および/または光学的性質を損なう可能性のあるホスフェート相またはクリストバライトなどの望ましくない結晶相の形成をもたらす可能性のある多量のP2O5を含有する。
【0010】
したがって本発明は、非常に良好な機械的および光学的性質の組合せを持つガラスセラミックを提供する問題をベースにする。ガラスセラミックは、歯科修復物に加工することも容易であるべきであり、したがって修復歯科材料として素晴らしく適切であるべきである。
【0011】
この問題は、請求項1から12および15に記載のケイ酸リチウムガラスセラミックにより解決される。同様に本発明の対象は、請求項13から15に記載の出発ガラス、請求項16、17、および20に記載の方法、ならびに請求項18および19に記載の使用である。
本件出願は、例えば、以下の項目を提供する。
(リクレーム)
(項目1)
SnO2として計算された、0.02から4.5、好ましくは0.03から3.0、特に好ましくは0.1から2.0、最も好ましくは0.2から1.5重量%のスズを含む、ケイ酸リチウムガラスセラミック。
(項目2)
65.0から89.0、好ましくは68.0から83.0、特に好ましくは75.0から81.0、最も好ましくは77.0から80.0重量%のSiO2を含む、前記項目のいずれか一つに記載のガラスセラミック。
(項目3)
10.0から21.0、好ましくは11.0から20.0、特に好ましくは13.0から19.0、最も好ましくは14.0から18.0重量%のLi2Oを含む、前記項目のいずれか一つに記載のガラスセラミック。
(項目4)
3.0未満、好ましくは2.0未満、特に好ましくは1.0未満、最も好ましくは0.1重量%未満のP2O5を含む、前記項目のいずれか一つに記載のガラスセラミック。
(項目5)
0から7.0、好ましくは1.0から6.0重量%の、K2O、Na2O、Rb2O、Cs2O、およびこれらの混合物から選択される1価の元素の酸化物MeI
2Oを含む、前記項目のいずれか一つに記載のガラスセラミック。
(項目6)
0から6.0、好ましくは1.0から5.0、より好ましくは1.2から4.5、さらに好ましくは1.5から4.0、最も好ましくは1.5から2.5重量%のK2Oを含む、前記項目のいずれか一つに記載のガラスセラミック。
(項目7)
0から15.0、好ましくは0から10.0、特に好ましくは0から8.0重量%の、CaO、MgO、SrO、ZnO、およびこれらの混合物の群から選択される2価の元素の酸化物MeIIOを含む、前記項目のいずれか一つに記載のガラスセラミック。
(項目8)
0から12.0、好ましくは0.1から10.0、特に好ましくは1.0から8.0重量%の、Al2O3、B2O3、Y2O3、La2O3、およびこれらの混合物から選択される3価の元素の酸化物MeIII
2O3を含む、前記項目のいずれか一つに記載のガラスセラミック。
(項目9)
0.1から6.0、好ましくは1.0から5.0、より好ましくは1.5から4.0、最も好ましくは1.5から3.0重量%のAl2O3を含む、前記項目のいずれか一つに記載のガラスセラミック。
(項目10)
二ケイ酸リチウムまたはメタケイ酸リチウムを主結晶相として含み、好ましくは二ケイ酸リチウムを主結晶相として含む、前記項目のいずれか一つに記載のガラスセラミック。
(項目11)
1.0から50.0重量%、好ましくは1.5から45.0重量%、特に好ましくは2.0から40.0重量%のメタケイ酸リチウム結晶を含む、前記項目のいずれか一つに記載のガラスセラミック。
(項目12)
50.0から90.0、好ましくは55.0から85.0、特に好ましくは60.0から80.0重量%の二ケイ酸リチウム結晶を含む、前記項目のいずれか一つに記載のガラスセラミック。
(項目13)
前記項目のいずれか一つに記載のガラスセラミックの成分を含む、出発ガラス。
(項目14)
メタケイ酸リチウムおよび/または二ケイ酸リチウムの結晶化のための核を含む、前記項目のいずれか一つに記載の出発ガラス。
(項目15)
前記ガラスセラミックおよび前記出発ガラスが、粉末、顆粒、ブランク、または歯科修復物の形をとる、前記項目のいずれか一つに記載のガラスセラミックまたは前記項目のいずれか一つに記載の出発ガラス。
(項目16)
前記項目のいずれか一つに記載のガラスセラミックを生成する方法であって、前記項目のいずれか一つに記載の出発ガラスを、少なくとも1つの熱処理に、特に800から1050℃、好ましくは850から1020℃の範囲で供する、方法。
(項目17)
(a)前記出発ガラスを、400から600℃、特に430から550℃、より好ましくは440から520℃の温度の熱処理に供して、核を持つ出発ガラスを形成し、
(b)前記核を持つ出発ガラスを、800から1050℃、特に850から1020℃の温度の熱処理に供して、ケイ酸リチウムガラスセラミックを形成する、
前記項目のいずれか一つに記載の方法。
(項目18)
好ましくは歯科修復物を被覆するための、特に好ましくは歯科修復物を生成するための歯科材料としての、前記項目のいずれか一つに記載のガラスセラミックの、または前記項目のいずれか一つに記載の出発ガラスの使用。
(項目19)
前記ガラスセラミックまたは前記出発ガラスに、所望の歯科修復物、特にブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウン、またはファセットの形状が、プレスまたは機械加工によって与えられる、前記項目のいずれか一つに記載の歯科修復物を生成するための使用。
(項目20)
歯科修復物、特にブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウン、またはファセットを生成する方法であって、前記項目のいずれか一つに記載のガラスセラミック、または前記項目のいずれか一つに記載の出発ガラスに、プレスまたは機械加工によって、特にCAD/CAMプロセスで所望の歯科修復物の形状を与える、方法。
(項目21)
前記項目のいずれか一つに記載のガラスセラミック、または前記項目のいずれか一つに記載の出発ガラスを含む、組成物であって、歯科材料として、好ましくは歯科修復物を被覆するための、特に好ましくは歯科修復物を生成するための歯科材料として使用される、組成物。
(項目22)
前記ガラスセラミックまたは前記出発ガラスに、所望の歯科修復物、特にブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウン、またはファセットの形状が、プレスまたは機械加工によって与えられる、歯科修復物を生成するための、前記項目のいずれか一つに記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】得られたガラスセラミックの4つの小板を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
スズを含有しかつ非常に良好な機械的および光学的性質を特徴とし、特に歯科の修復材料として使用することができる、ケイ酸リチウムガラスセラミックおよびその前駆体が記述される。
本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックは、SnO2として計算される0.01から4.5、好ましくは0.03から3.0、特に好ましくは0.1から2.0、最も好ましくは0.2から1.5重量%のスズを含むという事実を特徴とする。
意外にも、本発明によるガラスセラミックは、修復歯科材料に望ましい機械的および光学的性質の有利な組合せを示す。ガラスセラミックは、高い強度および破壊靭性を有し、これは特に機械加工によって歯科修復物の形状を容易に与えることができる。
【0014】
意外にも、ケイ酸リチウムガラスセラミックに関する通常の核化剤としてのP2O5の使用は、これらの性質を実現するのに必ずしも必要ではない。本発明によるガラスセラミックでは、存在するスズが核化剤として働くことが想定される。さらに少量のスズが有効であることが、特に意外である。
【0015】
本発明によるガラスセラミックは、例えば65重量%よりも多い、非常に多量のケイ酸リチウム結晶相を有することもでき、核化剤として存在するスズは、このことに本質的に原因があることが再び想定される。そのような高い含量のケイ酸リチウム結晶相は、通常、P2O5が核化剤として使用されるときに製造可能ではない。
【0016】
本発明によるガラスセラミックは、好ましくは、ごく少量のさらなる結晶相、例えばリン酸リチウムまたはクリストバライトのみ有する。大量のそのようなさらなる結晶相の形成は、核化剤としての大量のP2O5の使用により頻繁に生じ、それはこれまで一般的なことであり、これらのさらなる結晶相は、ケイ酸リチウムガラスセラミックの機械的および/または光学的性質に負の作用をもたらす可能性がある。さらに、リチウムは、リン酸リチウム結晶の形成によって消費され、したがってケイ酸リチウムの形成にもはや利用可能ではない。特に、ケイ酸リチウムガラスセラミックの優れた機械的性質のため、本質的な役割を演じるのが、ケイ酸リチウムである。したがって本発明によるガラスセラミックは、この点においても有利である。
【0017】
本発明によるガラスセラミックは、特に65.0から89.0、好ましくは68.0から83.0、特に好ましくは75.0から81.0、最も好ましくは77.0から80.0重量%のSiO2を含む。
【0018】
本発明によるガラスセラミックは、10.0から21.0、好ましくは11.0から20.0、より好ましくは13.0から19.0、最も好ましくは14.0から18.0重量%のLi2Oを含むことがさらに好ましい。Li2Oは、ガラス母材の粘度も低下させ、したがって所望の結晶相の結晶化を促進させることが想定される。
【0019】
ガラスセラミックは、K2O、Na2O、Rb2O、Cs2O、およびこれらの混合物の群から選択される1価の元素の酸化物、MeI
2Oを、0から7.0、好ましくは1.0から6.0重量%含むことも好ましい。
【0020】
ガラスセラミックは、1価の元素の下記の酸化物Me
I
2Oの、少なくとも1種、特に全てを:
【表2】
で示される量で含むことが、特に好ましい。
【0021】
特に好ましい実施形態では、本発明によるガラスセラミックは、1.0から5.0、好ましくは1.2から4.5、より好ましくは1.5から4.0、最も好ましくは1.5から2.5重量%のK2Oを含む。
【0022】
さらに、ガラスセラミックは、0から15.0、好ましくは0から10.0、最も好ましくは0から8.0重量%の、CaO、MgO、SrO、ZnO、およびこれらの混合物の群から選択される2価の元素の酸化物MeIIOを含むことが好ましい。
【0023】
別の好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、2.0重量%未満のBaOを含む。特に、ガラスセラミックは、BaOを実質的に含まない。
【0024】
好ましくは、ガラスセラミックは、下記の2価の元素の酸化物Me
IIOの少なくとも1種、特に全てを:
【表3】
に示される量で含む。
【0025】
0から12.0、好ましくは0.1から10.0、最も好ましくは1.0から8.0重量%の、Al2O3、B2O3、Y2O3、La2O3、およびこれらの混合物の群から選択される3価の元素の酸化物MeIII
2O3を含むガラスセラミックがさらに好ましい。
【0026】
ガラスセラミックは、下記の3価の元素の酸化物Me
III
2O
3の少なくとも1種、特に全てを:
【表4】
に示される量で含むことが特に好ましい。
【0027】
特に好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、0.1から6.0、好ましくは1.0から5.0、より好ましくは1.5から4.0、最も好ましくは1.5から3.0重量%のAl2O3を含む。
【0028】
さらに、0から9.0、特に好ましくは0から7.0重量%の、ZrO2、TiO2、GeO2、およびこれらの混合物の群から選択される4価の元素の酸化物MeIVO2を含むガラスセラミックが、好ましい。
【0029】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、4価の元素の下記の酸化物Me
IVO
2の少なくとも1種、特に全てを、
【表5】
で示される量で含む。
【0030】
別の好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、0から10.0、好ましくは0から8.0重量%の、Ta2O5およびNb2O5およびこれらの混合物からなる群から選択される5価の元素の酸化物MeV
2O5を、含む。
【0031】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、5価の元素の下記の酸化物Me
V
2O
5の少なくとも1種、特に全てを:
【表6】
に示される量で含む。
【0032】
本発明によるガラスセラミックは、3.0未満、好ましくは2.0未満、より好ましくは1.0未満、最も好ましくは0.1重量%未満のP2O5を含むことも好ましい。さらなる好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、P2O5を実質的に含まない。
【0033】
別の実施形態では、ガラスセラミックは、0から7.0、好ましくは0から6.0重量%の、WO3、MoO3、およびこれらの混合物からなる群から選択される6価の元素の酸化物MeVIO3を含む。
【0034】
特に好ましくは、ガラスセラミックは、下記の酸化物Me
VIO
3の少なくとも1種、特に全てを:
【表7】
で示される量で含む。
【0035】
さらなる実施形態では、本発明によるガラスセラミックは、0から1.0、特に0から0.5重量%のフッ素を含む。
【0036】
下記の成分の少なくとも1種、好ましくは全てを:
【表8】
(表中、Me
I
2O、Me
IIO、Me
III
2O
3、Me
IVO
2、Me
V
2O
5、およびMe
VIO
3は、上記にて与えられた意味を有する。)
に示される量で含むガラスセラミックが、特に好ましい。
【0037】
別の特に好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、下記の成分の少なくとも1種、好ましくは全てを:
【表9】
示される量で含む。
【0038】
上記成分のいくつかは、着色剤および/または蛍光剤として働き得る。本発明によるガラスセラミックはさらに、他の着色剤および/または蛍光剤を含んでいてもよい。これらは特に、さらなる無機顔料および/またはdおよびf元素の酸化物、例えばMn、Fe、Co、Pr、Nd、Tb、Er、Dy、Eu、およびYbの酸化物、または金属、好ましくはAg、Cu、およびAuから選択される。
【0039】
ガラスセラミックの好ましい実施形態では、SiO2のLi2Oに対するモル比は、1.5から4.0、好ましくは1.7から3.5、より好ましくは2.0から3.0の範囲にある。
【0040】
本発明によるガラスセラミックは、二ケイ酸リチウムまたはメタケイ酸リチウムを主結晶相として、特に二ケイ酸リチウムを主結晶相として含むことがさらに好ましい。
【0041】
「主結晶相」という用語は、ガラスセラミック中に存在する全ての結晶相の最も高い重量割合を有する結晶相を指す。結晶相の量は、特にRietveld法によって決定される。Rietveld法を用いた結晶相の定量分析に適した手順は、例えば、M. Dittmer “Glaser und Glaskeramiken im System MgO-Al2O3-SiO2 mit ZrO2 als Keimbildner”, University of Jena 2011による論文に記載されている。
【0042】
本発明によるガラスセラミックは、少なくとも1.0重量%、好ましくは少なくとも1.5重量%、特に好ましくは少なくとも2.0重量%のメタケイ酸リチウム結晶を含むことが好ましい。特に好ましくは、本発明によるガラスセラミックは、1.0から50.0重量%、好ましくは1.5から45.0重量%、特に好ましくは2.0から40.0重量%のメタケイ酸リチウム結晶を含む。
【0043】
別の実施形態では、本発明によるガラスセラミックは、少なくとも50.0重量%、好ましくは少なくとも55.0重量%、特に好ましくは少なくとも60.0重量%の二ケイ酸リチウム結晶を含むことが好ましい。特に好ましくは、本発明によるガラスセラミックは、50.0から90.0重量%、好ましくは55.0から85.0重量%、特に好ましくは60.0から80.0重量%の二ケイ酸リチウム結晶を含む。
【0044】
本発明によるガラスセラミックは、特に良好な機械的および光学的性質を特徴とし、対応する出発ガラスまたは核を持つ対応する出発ガラスの熱処理によって形成することができる。したがってこれらの材料は、本発明によるガラスセラミックの前駆体として働く。
【0045】
形成された結晶相のタイプおよび、特に量は、出発ガラスの組成ならびに出発ガラスからガラスセラミックを生成するよう適用された熱処理によって、制御することができる。実施例は、このことを、出発ガラスの組成および適用される熱処理を変更することによって示す。
【0046】
ガラスセラミックは、好ましくは少なくとも150MPa、特に好ましくは少なくとも250MPaの高い二軸破壊強度を有する。二軸破壊強度は、ISO 6872(2008)(ピストン・オン・スリー・ボール試験)に従い決定した。
【0047】
ガラスセラミックは、好ましくは少なくとも1.5MPa・m0.5、特に好ましくは少なくとも2.0MPa・m0.5、最も好ましくは少なくとも2.5MPa・m0.5の高い破壊靭性も有する。破壊靭性は、ISO 6872(2015)(SEVNB法)に従い決定した。
【0048】
さらに、ガラスセラミックは、好ましくは100g/cm2未満の、ISO 6872(2015)による酸溶解度として測定された高い化学安定性を有する。
【0049】
本発明によるガラスセラミックに存在する性質の特定の組合せは、歯科材料として、特に歯科修復物を生成するための材料として使用することをさらに可能にする。
【0050】
本発明は、そこから本発明によるガラスセラミックを熱処理によって生成することができる、対応する組成物の前駆体にも関する。これらの前駆体は、相応に構成された出発ガラス、および相応に構成された核を持つ出発ガラスである。「対応する組成物」という用語は、これらの前駆体が、ガラスセラミックと同じ組成を同じ量で含むことを意味し、成分は、フッ素を除き、ガラスおよびガラスセラミックによくあるような酸化物として計算される。
【0051】
したがって本発明は、本発明によるガラスセラミックの成分を含む出発ガラスにも関する。
【0052】
したがって本発明による出発ガラスは、特に、適切な量のSiO2、Li2O、およびスズを含み、これらは本発明によるガラスセラミックを形成するのに必要とされるものである。さらに出発ガラスは、本発明によるガラスセラミックに関して上記にて示されるその他の成分を含んでいてもよい。そのような全ての実施形態は、やはり本発明によるガラスセラミックの成分に好ましいことが示される出発ガラスの成分に好ましい。
【0053】
出発ガラスは、出発ガラスの溶融体を型に流延することによって得られるモノリシックブランクの形をとることが、特に好ましい。
【0054】
本発明は、ケイ酸リチウム、特にメタケイ酸リチウムおよび/または二ケイ酸リチウムの結晶化のため核を含む、そのような出発ガラスにも関する。
【0055】
出発ガラスは、特に、カーボネート、酸化物、およびハロゲン化物などの適切な出発原料の混合物を、特に約1500から1800℃の温度で0.5から4時間溶融することによって生成される。特に、SnOまたはSnO2は、スズのための出発原料として使用することができる。次いで溶融体を水に注いで、フリットを生成することができる。特に高い均質性を実現するため、得られたガラスフリットを再び溶融する。
【0056】
次いで溶融体を型に注いで、出発ガラスのブランク、いわゆるソリッドガラスブランクまたはモノリシックブランクを生成する。
【0057】
出発ガラスの熱処理により、核を持つさらなる前駆体出発ガラスを最初に生成することができる。次いで本発明によるケイ酸リチウムガラスセラミックを、このさらなる前駆体の熱処理によって生成することができる。あるいは、本発明によるガラスセラミックは、出発ガラスの熱処理によって形成することができる。
【0058】
出発ガラスを、400から600℃、特に430から550℃、特に好ましくは440から520℃の温度の熱処理に、好ましくは5から120分、特に10から60分の持続時間にわたり供して、ケイ酸リチウムの結晶化用の核を持つ出発ガラスを生成することが好ましい。
【0059】
出発ガラスまたは核を持つ出発ガラスを、800から1050℃、好ましくは850から1020℃の温度の熱処理に、特に5秒から120分、好ましくは1分から100分、より好ましくは5分から60分、さらに好ましくは10分から30分の持続時間にわたり、本発明によるガラスセラミックを生成するために供することが、さらに好ましい。
【0060】
したがって本発明は、本発明によるガラスセラミックを生成する方法であって、出発ガラスまたは核を持つ出発ガラスを、800から1050℃、好ましくは850から1020℃の範囲の少なくとも1つの熱処理に、特に5秒から120分、好ましくは1分から100分、より好ましくは5分から60分、さらに好ましくは10分から30分の持続時間にわたり供する、方法にも関する。
【0061】
本発明による方法で実施される少なくとも1つの熱処理は、本発明による出発ガラスのまたは核を持つ本発明による出発ガラスの、特に固体ガラスブランクのホットプレス、または特に粉末の焼結の過程で、実施することもできる。
【0062】
さらなる好ましい実施形態では、出発ガラスまたは核を持つ出発ガラスは、最初に、550から800℃、好ましくは600から800℃の温度の熱処理に、特に5秒から120分、好ましくは1分から100分、特に好ましくは5分から60分、さらに好ましくは10分から30分の持続時間にわたり、主結晶相としてメタケイ酸リチウムを持つ本発明によるガラスセラミックを生成するために供することができる。
【0063】
次いで主結晶相としてメタケイ酸リチウムを持つ本発明によるガラスセラミックを、さらなる熱処理に供して、メタケイ酸リチウム結晶を二ケイ酸リチウム結晶に変換することができ、特に、主結晶相として二ケイ酸リチウムを持つ本発明によるガラスセラミックを形成することができる。好ましくは、ガラスセラミックは、800から1050℃、好ましくは850から1020℃、特に好ましくは900から1020℃の温度のさらなる熱処理に、特に5秒から120分、好ましくは1分から100分、特に好ましくは1分から60分、さらに好ましくは5から30分、最も好ましくは5から20分の持続時間にわたり、供される。
【0064】
所与のガラスセラミックに適した条件は、例えばX線回折分析を種々の温度で行うことによって、決定することができる。
【0065】
本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスは、特に、任意の形状およびサイズの粉末、顆粒、またはブランク、例えばモノリシックブランク、例えば小板、直方体、もしくは円筒の形で、または粉末圧縮体を、未焼結の、部分的に焼結された、または稠密に焼結された形で存在する。これらの形では、例えば歯科修復物に、容易にさらに加工することができる。しかしながらそれらは、インレー、オンレー、クラウン、ベニア、ファセット、またはアバットメントなどの歯科修復物の形をとることもできる。
【0066】
歯科修復物、例えばブリッジ、インレー、オンレー、クラウン、ベニア、ファセット、またはアバットメントは、本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスから生成することができる。したがって本発明は、それらの、歯科修復物の生成における使用にも関する。この文脈において、ガラスセラミックまたはガラスには、プレスすることによって、特に機械加工によって、所望の歯科修復物の形状が与えられることが好ましい。
【0067】
プレスは、通常は上昇された圧力および温度下で実施される。プレスは、700から1200℃の温度で実施されることが好ましい。プレスは、2から10barの圧力で実施されることがさらに好ましい。プレス中、形状の所望の変化は、使用される材料の粘性流によって実現される。本発明による出発ガラス、本発明による核を持つ出発ガラス、および本発明によりガラスセラミックを、プレスに使用することができる。特に、本発明によるガラスおよびガラスセラミックは、任意の形状およびサイズのブランクの形で使用することができる。
【0068】
機械加工は通常、材料除去プロセスによって、特にミリングおよび/または研削によって実施される。機械加工はCAD/CAMプロセスで実施されることが、特に好ましい。本発明による出発ガラス、本発明による核を持つ出発ガラス、および本発明によるガラスセラミックを、機械加工に使用することができる。好ましくは、主結晶相としてメタケイ酸リチウムを持つ、本発明による核を持つ出発ガラスまたはガラスセラミックが、使用される。この文脈で、本発明によるガラスおよびガラスセラミックは、特に、ブランクの形で使用することができる。
【0069】
本発明によるガラスセラミックおよび本発明によるガラスの上述の性質に起因して、それらは歯科で使用するのに特に適している。したがって本発明の目的は、歯科材料として、好ましくは歯科修復物、例えばブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウン、またはファセットを生成するために、本発明によるガラスセラミックまたは本発明によるガラスを使用することでもある。
【0070】
したがって本発明は、歯科修復物、特にブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、アバットメント、部分クラウン、クラウン、またはファセットを生成する方法であって、本発明によるガラスセラミックまたはガラスに所望の歯科修復物の形状を、プレスによってまたは機械加工によって、特にCAD/CAMプロセスによって与える、方法にも関する。
【0071】
本発明は、非限定的な実施例を用いて、以下に、より詳細に説明される。
【実施例0072】
(例1から49-組成および結晶相)
表1に示される組成を持つ、合計で49種の、本発明によるガラスおよびガラスセラミックを、出発ガラスを生成するための対応する出発原料の溶融と、その後続の、結晶化を制御するための熱処理とを介して生成した。
【0073】
適用された熱処理ならびに得られたガラスセラミックの性質も、表1に示す。下記の意味が適用される。
Tg DSCにより決定されたガラス転移温度
Tsおよびts 出発ガラスを溶融するために適用された温度および時間
TKbおよびtKb 出発ガラスの核化のために適用された温度および時間
TC1およびtC1 第1の結晶化のために適用された温度および時間
TC2およびtC2 第2の結晶化のために適用された温度および時間
KIC ISO 6872(2015)(SEVNB法)に従い測定された破壊靭性
化学安定性 ISO 6872(2015)に従い、質量の損失として測定された
σBiax ISO 6872(2015)(ピストン・オン・スリー・ボール試験)に従い測定された二軸破壊強度
【0074】
実施例では、表1に示される組成を持つ出発ガラスを、最初に100から200gの規模で一般的な原材料から、TSの温度でtsの持続時間にわたり溶融し、非常に良好な溶融が、気泡または筋がない状態で可能であった。ガラスフリットを、出発ガラスを水に注ぐことによって調製し、必要に応じて引き続き、2回目の溶融を、温度Tsでtsの持続時間にわたり行って、均質化した。次いで出発ガラスの得られた溶融物を黒鉛の型に注いで、モノリシックガラスブロックを生成した。
【0075】
得られたガラスブロックの、温度TKbで持続時間tKbにわたる第1の熱処理は、ガラスの緩和および核を持つガラスの形成をもたらした。これらの核化ガラスは、温度TC1で持続時間tC1によるさらなる熱処理により結晶化して、室温でのX線回折研究により決定されるように、主結晶質相としてメタケイ酸リチウムまたは二ケイ酸リチウムを持つガラスセラミックを形成した。ある場合には、温度TC2で持続時間tC2によるさらなる熱処理を引き続き実施し、主結晶質相として二ケイ酸リチウムを持つガラスセラミックを得た。
【0076】
例9および38では、ガラスフリットを、出発ガラスを水に注ぐことによって生成した。これらのフリットを破砕し、篩にかけ、引き続き表1に示される温度および時間で焼結した。
【0077】
結晶相の量を、X線回折により決定した。この目的のため、それぞれのガラスセラミックの粉末を、粉砕および篩い分け(<45μm)により調製し、内部標準としてのAl2O3(Alfa Aesar、製品番号42571)と、80重量%のガラスセラミック対20重量%のAl2O3の比で混合した。混合物をアセトンでスラリー化して、最良の可能性ある混合を実現した。次いで混合物を約80℃で乾燥した。次いで回折図を、Bruker D8 Advance回折装置を使用して、CuKα放射線および0.014°2θのステップサイズを使用して10から100°2θの範囲で記録した。次いでこの回折図を、Rietveld法を使用するBruker’s TOPAS 5.0ソフトウェアを使用して解析した。ピークの強度とAl2O3の強度とを比較することにより、相の割合を決定した。
【0078】
ISO 6872(2015)(ピストン・オン・スリー・ボール試験)に従い二軸破壊強度を決定するために、ホルダーを、緩和し核化したガラスのブロックに結合し、これらのブロックを引き続き、CAD/CAM研削ユニット(Sirona InLab)を使用して機械加工した。研削プロセスは、ダイヤモンドでコーティングした研削工具を使用して行った。得られた小板を、表に示される熱処理、即ち第1の結晶化、および必要な場合には第2の結晶化に供し、次いで結晶化した小板を、ダイヤモンドホイールを使用して1.2±0.2mmの厚さに研磨した。二軸破壊強度は、このように調製された試験片で決定した。
【0079】
179超から524MPaに及ぶ、高い二軸破壊強度が、生成されたガラスセラミックに関して決定された。
【0080】
破壊靭性は、ISO 6872(2015)(SEVNB法)に従い決定し、2.6から3.1MPa・m0.5の範囲の高い破壊靭性が、生成されたガラスセラミックに関して決定された。
【0081】
化学安定性試験を、ISO 6872(2015)に従って行い、生成されたガラスセラミックは100g/cm2未満の酸溶解度を示した。
【0082】
歯科クラウンを、生成されたガラスおよびガラスセラミックから、CAD/CAM支援型機械加工により製作し、これらのクラウンを、必要に応じて表1に示される条件下で最終結晶化に供した。
【0083】
(例50-比較)
この例では、スズを含まない出発ガラスを、対応する出発原料の溶融を介して調製し、このガラスを引き続き熱処理して、その結晶化を行った。
【0084】
製造方法は、例1から49の調製に関して記述された方法と同じであった。使用される組成、適用された熱処理、ならびに得られたガラスセラミックの性質も、表1に示す。
【0085】
図1は、得られたガラスセラミックの、4つの小板を示す。スズを含有しないこれらの試料では、制御できない結晶成長に起因して亀裂が生じることがわかる。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】