(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094604
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】真空断熱要素
(51)【国際特許分類】
F16L 59/065 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
F16L59/065
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022205451
(22)【出願日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】20 2021 107 040.4
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】520366880
【氏名又は名称】ファ-クー-テック アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ボック
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン グララ
(72)【発明者】
【氏名】ケニー ロッテンバッハー
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム クーン
【テーマコード(参考)】
3H036
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB13
3H036AB24
3H036AB33
3H036AC03
3H036AE01
(57)【要約】
【課題】従来技術の欠点を克服し、防火断熱要素として使用できるように強化された防火特性を有する真空断熱要素を提供することである。
【解決手段】本発明は、防火断熱要素に適した真空断熱要素1であって、真空断熱要素1は、芯材2と、芯材2を完全に包囲する外囲体3とを備え、前記外囲体3は、プラスチック層3aと、このプラスチック層3a上に配置されたステンレス鋼層3bとを備える、真空断熱要素1に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防火断熱要素に適した真空断熱要素(1)において、
前記真空断熱要素(1)は、
芯材(2)と、
前記芯材(2)を完全に包囲する外囲体(3)とを備え、
前記外囲体(3)は、プラスチック層(3a)と、前記プラスチック層(3a)上に配置されたステンレス鋼層(3b)とを備える、真空断熱要素(1)。
【請求項2】
前記ステンレス鋼層(3b)がステンレス鋼箔を備え、前記ステンレス鋼箔は前記プラスチック層(3a)で被覆されている、請求項1に記載の真空断熱要素(1)。
【請求項3】
前記ステンレス鋼層(3b)はステンレス鋼箔を備え、前記プラスチック層(3a)はプラスチック箔を備え、前記ステンレス鋼箔が間接的又は直接的に前記プラスチック箔に積層された、請求項1に記載の真空断熱要素(1)。
【請求項4】
前記外囲体(3)は、前記外囲体(3)が柔軟性を有するように構成された厚さを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の真空断熱要素(1)。
【請求項5】
前記ステンレス鋼層(3b)が、20μm~80μm、特に30μm~40μmの範囲の厚さを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の真空断熱要素(1)。
【請求項6】
前記ステンレス鋼層(3b)がプラスチック層(3a)よりも小さな厚さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の真空断熱要素(1)。
【請求項7】
前記プラスチック層(3a)は、50μm~100μmの範囲の厚さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の真空断熱要素(1)。
【請求項8】
前記プラスチック層(3a)が、ヒートシール可能な材料又は超音波溶接可能な材料からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の真空断熱要素(1)。
【請求項9】
前記外囲体(3)が、前記ステンレス鋼層(3b)に前記プラスチック層(3a)を熱溶接することによって形成された少なくとも1つの継ぎ目(5)を有する、請求項8に記載の真空断熱要素(1)。
【請求項10】
前記真空断熱要素(1)は、燃焼芯材(2)を備え、前記真空断熱要素(1)がDIN4102-1による火災等級82又は13501-1によるEの最小要件を満足するように、前記外囲体(3)は設計されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の真空断熱要素(1)。
【請求項11】
前記真空断熱要素(1)は、不燃性の芯材(2)を備え、前記真空断熱要素(1)がDIN4102-1による火災等級A2又は13501-1によるENの最低要件を満足するように、前記外囲体(3)は設計されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の真空断熱要素(1)。
【請求項12】
前記芯材(2)が、中実芯又は粉体芯又は開孔芯を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の真空断熱要素(1)。
【請求項13】
前記芯材がガラス繊維(4)又はプラスチック材料を備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の真空断熱要素(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項に係る、防火断熱要素に適した真空断熱要素に関する。
【背景技術】
【0002】
真空断熱パネルとして設計されることが多い従来の真空断熱要素では、例えばフュームド・シリカの耐圧芯材が真空密封外囲体で包まれている。ハイバリア箔として設計された多層金属化プラスチック箔が、通常、外囲体として使用される。芯材は、外囲体内に導入され、外囲体は真空密封方式で排気されて密封される。
【0003】
このような真空断熱要素は、そこで発生する真空に起因して他の断熱シート材に比べて優れた断熱性を発揮する。特に、排気の結果としての真空断熱要素内の対流の減少によって、断熱特性の強化に寄与する。このような真空断熱要素は、種々の技術的用途、例えば、温度制御された輸送用の輸送容器又は箱内の断熱要素、又は、例えば天井や壁面の断熱のための建材の分野で採用されている。真空断熱要素は、多くの他の断熱要素と比較して、同じ断熱性能を提供することを可能にするために占めるスペースがかなり小さい場合が多い。
【0004】
真空断熱材の用途においては、真空断熱要素の場合、例えば、電池断熱材の場合や、鉄道交通や航空交通における断熱要素の場合など、真空断熱要素の防火特性に特別な要件が課せられることが多い。
【0005】
建築部門では、これらの要件は建築材料クラスの形式で定義される。
【0006】
一般的に使用される真空断熱材の要素は、一般的にDIN4102-1による建材クラスB2又はEN13501-1によるユーロクラスEの要件を満たしていない。これは主に、説明されている真空断熱要素の外囲体が容易に燃焼性の多層の金属化プラスチック材料で構成されているという事実による。しかし、この種の外囲体は、長期間にわたって真空を維持するための低い透過率を提供しかつ継ぎ目による熱溶接によっても容易にシールすることができるため、一般的に使用されている。外囲体上に塗布された難燃性物質は、より高い防火等級を達成するために使用することができるが、真空断熱要素は、通常、不燃性の芯材を有するものであっても、DIN4102-1又はEN13501-1による防火等級A2の要件を満たしていない。
【0007】
さらに、例えば、特許文献1(国際公開第96/01346号)から、ステンレス鋼製のケーシングを備えた真空断熱パネルを設けることが知られている。このプロセスでは、ステンレス鋼製の上部と下部を溶接して中間空間を気密封止する。この真空断熱パネルの芯内に数層のガラス繊維マットを配置している。
【0008】
同様の技術が特許文献2(国際公開第2018/043712号)に開示されており、真空断熱パネルには鋼製のケーシングが設けられている。ここでも、この芯材は繊維材料からなる。
【0009】
これらの真空断熱パネルは、不燃性が提供されるが、製造が複雑である。さらに、純ステンレス鋼製のケーシングの高い熱伝導率も不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第96/01346号
【特許文献2】国際公開第2018/043712号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来技術の欠点を排除し、防火断熱要素としての使用を可能にするために強化された防火特性を有する真空断熱要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、独立請求項による真空断熱要素によって達成される。有利な態様は、それぞれの下位請求項の発明の主題を形成する。
【0013】
本発明は、防火断熱要素に適した真空断熱要素であって、芯材と、芯材を完全に包囲する外囲体とを備え、外囲体はプラスチック層と、プラスチック層上に配置されたステンレス鋼層とを備える、真空断熱要素に関するものである。
【0014】
この点に関し、芯材は、フュームド・シリカ及び/又は繊維材料を備えることができる。外囲体を形成するためのプラスチック層とステンレス鋼層との組み合わせは、真空断熱要素を防火断熱要素として適切になる。さらに、このプラスチック層とステンレス鋼層との組み合わせは、真空断熱要素の環境と芯材との間及び外囲体の継ぎ目における熱の逃げ道の発生を減少させる。
【0015】
有利な一態様によれば、ステンレス鋼層は、ステンレス鋼箔を備える。ここでは、ステンレス鋼箔はプラスチック層で被覆される。ステンレス鋼箔は適切な厚さで利用可能であり、プラスチック層、例えばポリエチレンで容易に被覆することができる。ステンレス鋼層をステンレス鋼箔として設計することは、ステンレス鋼箔が金属化されたプラスチック層と比較して機械的応力に敏感でないので、金属化されたプラスチック層よりも有利である。
【0016】
別の有利な態様によれば、ステンレス鋼層は、ステンレス鋼箔を備え、プラスチック層は、プラスチック箔を備える。本件では、ステンレス鋼箔は、間接的又は直接的にプラスチック箔上に積層化される。この点に関し、積層化のプロセスにより、低コストで迅速な接合技術を提供する。このプロセスでは、ステンレス鋼箔とプラスチック箔は、接着剤を用いて、又は、熱積層(thermal lamination)を実施することによって、接合することができる。
【0017】
好ましい態様によれば、外囲体は、外囲体が柔軟性を有するように構成された厚さを有する。柔軟性の外囲体は、折返し縁が形成され得るという利点を提供する。
【0018】
特に有利な態様によれば、ステンレス鋼層は、20μm~80μm、特に30μm~40μmの範囲の厚さを有する。これにより、真空断熱要素が堅くなり過ぎないという利点を提供し、したがって、より柔軟に取り扱が可能となる。
【0019】
別の好ましい態様によれば、ステンレス鋼層はプラスチック層よりも小さな厚さを有する。これにより、外囲体の低重量化を実現することができる。
【0020】
好ましい態様によれば、プラスチック層は、50μm~100μmの範囲の厚さを有する。この点に関し、プラスチック層は、低い厚さにもかかわらず、プラスチック層が低い透過率を有するように、ハイバリア層として設計することができ、これは、0.1kPa(1mbar)未満の圧力を生成し、真空断熱要素の内側で維持することを保証するのに適している。
【0021】
別の好ましい態様によれば、プラスチック層は、ヒートシール可能な材料からなる。これにより、プラスチック層の熱溶接によって継ぎ目を作ることができる。別の選択肢は、超音波溶接可能な材料の使用であろう。
【0022】
特に好ましい態様によれば、外囲体は、プラスチック層をステンレス鋼層に熱溶接することによって作られた少なくとも1つの継ぎ目を備える。外囲体がプラスチック層とプラスチック層上に配置されたステンレス鋼層との組み合わせであるという態様により、継ぎ目の生成のための熱溶接を容易に行うことが可能となる。
【0023】
別の好ましい態様によれば、外囲体は、周囲条件で0~200N/m4y(2mbarl/m2y)の範囲の空気に対する透過率を有し、50℃かつ70%RHで0~0.004g/m2d)の範囲の水蒸気に対する透過率を有する。
【0024】
特に好ましい態様によれば、真空断熱要素は燃焼芯材を備える。本件では、外囲体は真空断熱要素がDIN4102-1による火災等級82、又はEN13501-1によるEの最小要件を満たすように設計されている。これにより、外囲体のステンレス鋼層が芯材の燃焼を防止するように形成される。
【0025】
有利な一態様によれば、真空断熱要素は不燃性芯材を備える。本件では、真空断熱要素がDIN4102-1又はEN13501-1による火災等級A2の最小要件を満たすように、外囲体が設計されている。
【0026】
特に有利な態様によれば、芯材は、中実芯又は粉体芯又は開孔芯を備える。それにより、開孔芯はフュームド・シリカを備えることができる。それによって、中実芯は、繊維材料を備えることができる。
【0027】
好ましい態様によれば、前記芯材はガラス繊維を備える。それによって、ガラス繊維及び他の繊維材料により、真空断熱要素の安定性を増すことができる。1つの変形例によれば、プラスチック製の芯材は、緩い形態又は圧縮形態のプラスチック製粉末と発泡プラスチック製とを備える。
【0028】
以下、本発明を真空断熱要素の概略図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、真空断熱要素1の1つの変形例を示している。図示の真空断熱要素1は、中央継ぎ目を有する真空断熱パネルとして形成されている。真空断熱要素1は、芯材2と、芯材2を完全に包囲すると共に互いに接続された各種部分からなる外囲体3とを備えている。外囲体3は、プラスチック箔3aと、ステンレス鋼箔3bとを備える。
【0031】
継ぎ目5は、約半分の高さで側部に沿って延在し、真空断熱パネルの平らな側部に沿って延在している。
【0032】
図示の実施形態における芯材2は、ヒュームド・シリカ、ガラス繊維4又は緩いプラスチック材料を備える。
【0033】
図2に真空断熱要素1の概略図を示す。図示の真空断熱要素1は、真空断熱パネルとして具現化されている。真空断熱要素1は、芯材2と、芯材2を完全に包囲する外囲体3とを備えている。外囲体3は、プラスチック箔3aとステンレス鋼箔3bとを備え、プラスチック箔3aとステンレス鋼箔3bは積層で接合されている。ここで、ステンレス鋼箔3bは厚さ40μmを有し、プラスチック箔3aは厚さ100μmを有する。これは、真空断熱要素1があまり堅くなり過ぎないことを意味し、折り返し縁の作成と同様に、より柔軟な取り扱いが可能となる。
【0034】
プラスチック箔3aは、ここでは、低い厚さにもかかわらず、プラスチック層3aが低い透過率を有するように、ハイバリア層として形成され、これは、0.1kPa(1mbar)未満の圧力を発生し、真空断熱要素の内部に維持することを保証するのに適している。
【0035】
熱シール可能な材料で作られたプラスチック箔3aとステンレス鋼箔3bとの組み合わせの使用により、熱溶接によって容易に継ぎ目5を作ることが可能となる。同時に、外囲体3としてのプラスチック箔3aとステンレス鋼箔3bの組み合わせにより、真空断熱要素1を防火断熱要素として適切なものにするのに寄与する。
【0036】
プラスチック箔3aとステンレス鋼箔3bを組み合わせて使用することは、ステンレス鋼箔3bが金属化されたプラスチック製層と比較して機械的応力に敏感でないので、金属化されたプラスチック箔3aよりも有利である。
【0037】
図示の実施形態における芯材2は、フュームド・シリカ及びガラス繊維4を備える。外囲体3としてプラスチック箔3aとステンレス鋼箔3bとを組み合わせることにより、真空断熱要素1の環境と芯材2との間の熱の逃げ道の発生を低減することができる。
【0038】
図示された実施形態の発明による真空断熱要素1は、防火等級A2についてDIN4102-1及びEN13501-1による要件を満足している。
【0039】
図3は、外囲体3を通る断面図を示す。ここで、外囲体3は、プラスチック箔3aとステンレス鋼箔3bとを備える。この態様において、プラスチック箔3aとステンレス鋼箔3bとは、積層によって互いに接合されている。