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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094609
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】セラミックサセプターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/111 20060101AFI20230628BHJP
   C04B 35/622 20060101ALI20230628BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
C04B35/111
C04B35/622
H01L21/68 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206061
(22)【出願日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0185962
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520139620
【氏名又は名称】ミコ セラミックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン チョン リ
(72)【発明者】
【氏名】チン ミン ユ
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA33
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131BA23
5F131CA02
5F131CA32
5F131CA68
5F131EA03
5F131EA04
5F131EB11
5F131EB24
5F131EB26
5F131EB78
5F131EB79
(57)【要約】
【課題】セラミックサセプターの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のセラミックサセプターの製造方法は、セラミックシートを製造する段階と、前記セラミックシートを積層する段階であって、これらのセラミックシートの間に電極用伝導性金属材質が配置される積層構造の成形体を製造する段階と、前記積層構造の成形体を焼結する段階と、を含み、前記セラミックシートを製造する段階は、MgO、SiO、CaOを含むスラリーを熱処理して非晶質化された第1添加剤粉末を得る段階と、Al粉末に、前記第1添加剤粉末、MgO粉末を含む第2添加剤粉末、Y粉末を含む第3添加剤粉末を混合してスラリーを製造する段階と、前記スラリーをテープキャスティングしてセラミックシートを形成する段階とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックシートを製造する段階と、
前記セラミックシートを積層する段階であって、これらのセラミックシートの間に電極用伝導性金属材質が配置される積層構造の成形体を製造する、段階と、
前記積層構造の成形体を焼結する段階と、
を含み、
前記セラミックシートを製造する段階は、
MgO、SiO、CaOを含むスラリーを熱処理して非晶質化された第1添加剤粉末を得る段階と、
Al粉末に、前記第1添加剤粉末、MgO粉末を含む第2添加剤粉末、Y粉末を含む第3添加剤粉末を混合してスラリーを製造する段階と、
前記スラリーをテープキャスティングしてセラミックシートを形成する段階とを含む、セラミックサセプターの製造方法。
【請求項2】
前記非晶質化された第1添加剤粉末を得る段階において、
前記スラリー中にCaO、SiO、MgOが重量比(wt%)35~55:35~50:8~18で含まれる、請求項1に記載のセラミックサセプターの製造方法。
【請求項3】
前記セラミックシートを形成する段階において、前記Al粉末、前記第1添加剤粉末、前記第2添加剤粉末及び前記第3添加剤粉末が重量比(wt%)94~98:1~3:0.5~1.5:0.5~1.5で含まれる、請求項1に記載のセラミックサセプターの製造方法。
【請求項4】
前記焼結後の焼結体内のセラミック粒子のグレーンサイズ分布が0.5~5μmである、請求項1に記載のセラミックサセプターの製造方法。
【請求項5】
前記伝導性金属材質の厚さが10μm~30μmである、請求項1に記載のセラミックサセプターの製造方法。
【請求項6】
前記非晶質化された第1添加剤粉末を得る段階は、
前記MgO、SiO、CaOを含むスラリーに対してミキシング、メルティング、クエンチング及びグラインディング工程を順次に行う段階を含む、請求項1に記載のセラミックサセプターの製造方法。
【請求項7】
前記クエンチングは、ウォータークエンチングである、請求項6に記載のセラミックサセプターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックサセプターに関し、特に、組成が均一であり、物性の温度依存性が改善されたセラミックサセプターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置又はディスプレイ装置は、誘電体層及び金属層を含む複数の薄膜層をガラス基板、フレキシブル基板又は半導体ウエハー基板上に順次に積層した後にパターニングする方式で製造される。それらの薄膜層は、化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition,CVD)工程又は物理気相蒸着(Physical Vapor Deposition,PVD)工程によって基板上に順次に蒸着される。前記CVD工程には、低圧力化学気相蒸着(Low Pressure CVD,LPCVD)工程、プラズマ強化化学気相蒸着(Plasma Enhanced CVD,PECVD)工程、有機金属化学気相蒸着(Metal Organic CVD,MOCVD)工程などがある。このような半導体工程を行うためのCVD装置及びPVD装置のチャンバー装置には、ガラス基板、フレキシブル基板及び半導体ウエハー基板などのような様々な基板を支持するための静電チャックとして用いられるか、又は半導体素子の配線微細化などの精密な工程のためにプラズマ蒸着工程などにおいて正確な温度制御と熱処理の要求などのためのヒーターとして用いられる、セラミックサセプター(Ceramic Susceptor)が広く用いられている。
【0003】
特に、乾式エッチング工程のうちポリシリコンエッチング(Poly Etch)工程に主に用いられるセラミック静電チャックは、従来のMLC(Multi-layer Ceramics)のようなセラミック積層型静電チャックにおいて、常温から100℃~150℃の付近に温度が上昇するにつれて静電力がクーロンタイプ(高抵抗)からジョンセン・ラーベック(中抵抗)に変わりながら静電力が大きく増加するため、残留電荷の放電時間が長くかかってしまい、ウエハーデチャッキング(De-chucking)が難しくなるという問題があった。このように、セラミック静電チャックの組成によって素材物性の温度依存性が大きくなり、構造的欠陥につながってしまい、電気的/機械的物性が低下する原因として作用する問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-103389号(2017.06.08)
【特許文献2】日本登録特許6088346号(2017.03.01)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、上述した問題点を解決するために案出されたものであり、本発明の目的は、温度依存性がなく、固体的抵抗を有する均一な組性のセラミックシートを適用したセラミックサセプターの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず、本発明の特徴を要約すると、上記の目的を達成するための本発明の一面によるセラミックサセプターの製造方法は、セラミックシートを製造する段階と、前記セラミックシートを積層する段階であって、これらのシートの間に電極用伝導性金属材質が配置される積層構造の成形体を製造する段階と、前記積層構造の成形体を焼結する段階と、を含み、前記セラミックシートを製造する段階は、MgO、SiO、CaOを含むスラリーを熱処理し、非晶質化された第1添加剤粉末を得る段階と、Al粉末に、前記第1添加剤粉末、MgO粉末を含む第2添加剤粉末、Y粉末を含む第3添加剤粉末を混合してスラリーを製造する段階と、前記スラリーをテープキャスティングしてセラミックシートを形成する段階とを含む。
【0007】
前記非晶質化された第1添加剤粉末を得る段階において、前記スラリー中にCaO、SiO、MgOの重量比(wt%)が35~55:35~50:8~18で含まれる。
【0008】
前記セラミックシートを形成する段階において、前記Al粉末、前記第1添加剤粉末、前記第2添加剤粉末及び前記第3添加剤粉末の重量比(wt%)が94~98:1~3:0.5~1.5:0.5~1.5で含まれる。
【0009】
前記焼結後の焼結体内のセラミック粒子のグレーンサイズ分布が0.5~5μmであることが好ましい。
【0010】
前記伝導性金属材質の厚さは、10μm~30μmであることが好ましい。
【0011】
前記非晶質化された第1添加剤粉末を得る段階は、前記MgO、SiO、CaOを含むスラリーに対してミキシング、メルティング、クエンチング及びグラインディング工程を順次に行う段階を含む。
【0012】
前記クエンチングは、ウォータークエンチングであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るセラミックサセプターの製造方法によれば、均一な組性であり、温度依存性がなく、固体的抵抗を有するセラミックサセプターを提供し、静電チャックに適用時に、温度依存性がなく、静電力の変化無しでチャッキングとデチャッキングが安定して行われることが可能になる。
【0014】
本発明に関する理解を助けるために詳細な説明の一部として含まれる添付の図面は、本発明の実施例を提供し、詳細な説明と一緒に本発明の技術的思想を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施例に係るポリシリコンエッチング(Poly Etch)工程に主に用いられるセラミックサセプターの構造を説明するための図である。
図2】本発明の一実施例に係るセラミックサセプターのセラミックプレートを製造する過程を説明するためのフローチャートである。
図3】本発明のセラミックシートを得るための製造過程を具体的に説明するためのフローチャートである。
図4】参考論文のCaO-MgO-SiO位相ダイヤグラムの例である。
図5】[表2]の実施例によって製造されたセラミックシートに対する表面SEM写真の例である。
図6】従来、本発明(新規)及び比較例のセラミックシート焼結体の成分分析の結果である。
図7】従来技術又は比較例と本発明(新規)との機械的物性の比較グラフである。
図8A】シリコンウエハー、比較例のセラミックシート、本発明のセラミックシート(新規)におけるエッチング深さを比較した結果である。
図8B】比較例のセラミックシートと本発明のセラミックシート(新規)のエッチング表面のSEM写真を比較した例である。
図9】本発明のセラミックシートの組成比率を異ならせて作製した場合(ケース番号0、1、2、3)の組成比率表である。
図10】本発明の図9のケース番号0、1、2、3に対する体積抵抗及び密度を測定した結果である。
図11】非晶質粉末添加を用いない従来技術における温度による体積抵抗グラフである。
図12】本発明の図9のケース番号0、1、2、3に対する体積抵抗グラフである。
図13】本発明の図9のケース番号0、1、2、3に対する表面SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では添付の図面を参照して本発明について詳しく説明する。図面中、同一の構成要素は可能な限り同一の符号で示す。また、既に公知された機能及び/又は構成に関する詳細な説明は省略する。以下に開示の内容は、様々な実施例に係る動作を理解する上で必要な部分を中心に説明し、その説明の要旨を曖昧にさせ得る要素に関する説明は省略する。また、図面の一部の構成要素は誇張されたり、省略されたり又は概略して示されてよい。各構成要素の大きさは実際の大きさを全的に反映するものではなく、よって、各図に示されている構成要素の相対的な大きさや間隔によって、ここに記載の内容が限定されるものではない。
【0017】
本発明の実施例を説明するとき、本発明に関連した公知技術に関する具体的な説明が本発明の要旨を却って曖昧にさせ得ると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。そして、後述する用語は、本発明での機能を考慮して定義された用語であり、それらは使用者、運用者の意図又は慣例などによって変わり得る。したがって、その定義は、本明細書全般にわたる内容に基づいて下されるべきであろう。詳細な説明で使われる用語は本発明の実施例を記述するためのものに過ぎず、決して制限的ではならない。特記しない限り、単数形態の表現は複数形態の意味を含む。本説明において、「含む」又は「備える」のような表現は、ある特性、数字、段階、動作、要素、それらの一部又は組合せを示すためのものであり、記述された以外の一つ又はそれ以上の他の特性、数字、段階、動作、要素、それらの一部又は組合せの存在又は可能性を排除するように解釈されてはならない。
【0018】
また、第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために使用可能であるが、前記構成要素が前記用語によって限定されるものではなく、これらの用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使われる。
【0019】
まず、本発明で言及されるセラミックサセプターは、半導体工程を行うための装置に備えられるものであり、プラズマ強化化学気相蒸着などの工程においてガラス基板、フレキシブル基板及び半導体ウエハー基板などのような様々な基板を支持するための静電チャックとして用いられるか、又は半導体素子の配線微細化などの精密な工程のためにプラズマ蒸着工程などで正確な温度制御及び熱処理要求などのためのヒーターとして用いられてよい。静電チャック(Electro Static Chuck)の機能は、静電気力を用いて当該基板を固定させるためのものであり、イオン注入工程又は他の半導体工程装置において、基板を堅固に吸着固定・解除するためのチャッキング・デチャッキングを行い、特に、十分なクランピング力(clamping force)を提供してチャッキングがなされるようにし得る。このようなクランピング圧力は保持しながら基板のチャッキング及びデチャッキング時間を向上させ得るように、セラミックサセプターのチャッキング電極が交流電圧によって駆動される。ヒーター機能は、このような基板の支持と共に、半導体ウエハー基板上に形成された薄膜層のエッチング工程(etching process)、又はフォトレジスト(photoresist)の焼成工程などでプラズマ形成及び基板加熱のためにセラミックサセプターの高周波電極/ヒーター電極に電力を供給することによって駆動されてよい。
【0020】
したがって、以下、本発明において、セラミックサセプターのチャッキング電極がセラミックプレートに備えられ、電極ロッドを通ってチャッキング電極に電力が供給されることを取り上げて説明するが(静電チャック機能)、これに限定されるものではなく、本発明において、セラミックサセプターのチャッキング電極の代わりに、セラミックプレートにヒーター電極又はプラズマ発生のためのRF(Radio Frequency)電極が備えられ、電極ロッドを通ってヒーター/RF電極に電力が供給される場合にも(ヒーター/プラズマ機能)、関連説明の類似の適用が可能であることは明らかである。
【0021】
図1は、本発明の一実施例に係るポリシリコンエッチング(Poly Etch)工程に主に用いられるセラミックサセプター100の構造を説明するための図である。
【0022】
図1を参照すると、本発明の一実施例に係るセラミックサセプター100は、ベース基材200及びセラミックプレート300を含む。セラミックサセプター100は円形の形状が好ましいが、場合によっては、楕円形、長方形などの他の形状に設計されてもよい。
【0023】
ベース基材200は、複数の金属層からなる多層構造物(multi-layer structure)から形成されてよく、それらの金属層は、ブレイジング(brazing)工程、ウェルディング(welding)工程又はボンディング(bonding)工程などによって接合されてよい。セラミックプレート300はベース基材200上に固定され、これは所定の固定手段や接着手段によってベース基材200上に固定されてよい。ベース基材200とセラミックプレート300は別個に作製されて接合されてもよく、場合によっては、ベース基材200の上面に直接セラミックプレート300の構造物を形成することも可能である。
【0024】
半導体工程などのためのチャンバーの内部にセラミックサセプター100が装着された場合に、外部の冷却ガスを用いてセラミックプレート300上の基板(例えば、ガラス基板、フレキシブル基板及び半導体ウエハー基板など)を均一に冷却させるために、ベース基材200とセラミックプレート300は所定の冷却構造(図示せず)を備えることができる。例えば、ベース基材200とセラミックプレート300の冷却ガス孔と冷却流路パターンを通して冷却ガスを流し、セラミックプレート300上の基板を均一に冷却させることができる。このとき、冷却ガスとしては主にヘリウムガス(He)が用いられてよいが、必ずしもこれに限定されない。
【0025】
図1において、セラミックプレート300は、絶縁層/誘電体層として第1セラミックシート層310、第1セラミックシート層310上にチャッキング電極を含む電極層320、電極層320上に絶縁層/誘電体層として第2セラミックシート層330を含む。
【0026】
電極層320のチャッキング電極などは、伝導性金属材質で構成されてよい。例えば、電極層320のチャッキング電極などは、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)及びチタニウム(Ti)のうち少なくとも一つで形成されてよく、より好ましくは、タングステン(W)で形成されてよい。電極層320は、CVD、PVC、溶射コーティング工程又はスクリーンプリント工程などを用いて形成されてよい。電極層320の電極、例えば、DC電極は、約10μm~30μmの厚さを有する。例えば、電極層320の電極の厚さが10μm未満であると、当該電極層内の気孔率及びその他欠陥によって抵抗値が増加し、該記抵抗値の増加によって静電吸着力が低下する現象が発生するため好ましくない。また、電極層320の電極の厚さが30μmを超えると、温度変化によってセラミックと電極層との界面間の応力が増加し、場合によっては部分分離によってアーキングなどの現象が発生することがあるため好ましくない。したがって、電極層320のDC電極の厚さは、約10μm~30μmの範囲を有することが好ましい。電極層320の電極は、該当の電極ロッド(図示せず)を通って電力が供給され、第2セラミックシート層330の上部に置かれる基板(図示せず)をロードする際にバイアスをかけて静電気力を発生させ、これでチャッキングがされ得る。基板(図示せず)をアンロードする際には、電極層320の電極に反対のバイアスをかけて放電がなされるようにし、これでデチャッキングがなされる。
【0027】
第1セラミックシート層310及び第2セラミックシート層330は、セラミック材質からなる。本発明によって、下記するように、MgO、SiO、CaOを含むスラリーをミキシング、メルティング、クエンチング及びグラインディングして非晶質化された第1添加剤粉末を得た後、Al粉末に、前記第1添加剤粉末、MgO粉末を含む第2添加剤粉末、Y粉末を含む第3添加剤粉末を含めてセラミックシートを製造し、該セラミックシートを電極層320を挟んで所望の厚さに複数回積層して電極層320と共に焼結することにより、第1セラミックシート層310及び第2セラミックシート層330を形成することができる。
【0028】
一方、上述したように、図示してはいないが、本発明において、セラミックプレート300は、電極320の他にも、セラミック材質、又は上のようなセラミックシート層同士の間に、ヒーター機能のためのヒーター電極と該当の電極ロッドをさらに含んでよい。すなわち、セラミックプレート300は、セラミック材質の間にチャッキング電極320及び(又は)ヒーター/RF電極が上下に所定の間隔でセラミック材質を挟んで離隔して配置(埋設)されるように構成されてよい。これにより、セラミックプレート300は加工対象基板を安定して支持しながら加熱及び(又は)プラズマ強化化学気相蒸着工程が可能なように構成され得る。セラミックプレート300は、所定の形状を有する板状構造物であってよい。例えば、セラミックプレート300は板状構造物となってよく、上視図において円形であることが好ましいが、必ずしもこれに限定されない。
【0029】
図2は、本発明の一実施例に係るセラミックサセプター100のセラミックプレート300を製造する過程を説明するためのフローチャートである。
【0030】
図2を参照すると、本発明の一実施例に係るセラミックサセプター100のためのセラミックプレート300を製造するために、第1セラミックシート層310及び第2セラミックシート層330を形成するためのセラミックシートを製造して得る(S110)。セラミックシートの製造過程は図3で具体的に説明する。
【0031】
次に、電極層320の電極が配置されたサンドウィッチ構造の積層構造を成形する(S120)。すなわち、それぞれが複数のセラミックシート層を含む、第1セラミックシート層310と第2セラミックシート層330との間に電極層320の電極のための伝導性金属材質が配置された成形体を製造する。例えば、所定のステージ又はキャリアフィルム上に、第1セラミックシート層310のためにセラミックシートを所望の厚さに複数回積層する。前記ステージ又はキャリアフィルム上には接着剤などを配置し、第1セラミックシート層310を容易に固定支持させることができる。その上には、電極層320の電極のための伝導性金属材質を配置する。伝導性金属材質の配置は、スクリーンプリンティングなどの印刷法でプリントされてよい。伝導性金属材質の厚さは10μm~30μmであってよい。また、伝導性金属材質上には、第2セラミックシート層330のためにセラミックシートを所望の厚さに複数回積層する。電極層320のチャッキング電極の代わりに、ヒーター/プラズマ機能のためのヒーター電極/RF電極のための伝導性金属材質を配置してもよい。また、上述したように、電極層320のチャッキング電極に加え、ヒーター機能のためのヒーター電極/RF電極がさらに備えられたセラミックサセプター100の製造のために、ヒーター電極/RF電極のための伝導性金属材質を第2セラミックシート層330上にさらに配置することもできる。この時、ヒーター電極/RF電極のための伝導性金属材質上に、第3セラミックシート層のためにセラミックシートを所望の厚さに複数回積層することができる。
【0032】
次に、セラミックサセプター100を構成するサセプター100ボディー部の全体的な形状に対応する当該積層構造の成形体内に含まれた炭素を除去するための還元雰囲気での脱脂工程、及び電極酸化防止のための還元雰囲気での常圧焼結がなされてよい(S130)。
【0033】
例えば、所定の成形モールドと加圧モールドを用いて次のように成形体に対する脱脂工程及び常圧焼結がなされてよい。すなわち、第1セラミックシート層310のためのセラミックシートの複数積層、電極層320のための金属材質の配置、及び第2セラミックシート層330のためのセラミックシートの複数積層(必要によって、セラミックシートの複数積層とヒーター電極/RF電極のための金属材質の追加配置)がなされた、当該積層構造の成形体に対して、まず、脱脂工程がなされてよい。脱脂工程では、当該積層構造の成形体内に残存する高分子化合物の除去のために、還元雰囲気で高温の熱を提供することにより、積層構造内の炭素化合物を除去する。この時、脱脂工程の温度は500~700℃の範囲が適切である。脱脂工程が行われた成形体は、電極の酸化防止のための還元雰囲気で常圧焼結がなされてよい。常圧焼結では、前記積層構造の成形体中のアルミナ粒子の緻密化を誘導するように高温で常圧焼結がなされる。常圧焼結工程の温度は1500~1700℃の範囲が適切である。
【0034】
図3は、本発明のセラミックシートを得るための製造過程を具体的に説明するためのフローチャートである。
【0035】
図3を参照すると、上記のようなセラミックシート層310,330のためのセラミックシートを得るための製造過程は、ミキシング(mixing)(S210)、メルティング(melting)(S220)、ウォータークエンチング(water quenching)(S230)、グラインディング(grinding)(S240)、ミーリング(milling)(S250)及びテープキャスティング(tape casting)(S260)のような工程を含むことができる。
【0036】
すなわち、MgO、SiO、CaOを含むスラリーをミキシング(S210)、メルティング(S220)、クエンチング(S230)及びグラインディング(S240)処理して非晶質化された第1添加剤粉末が得られ、その後、Al粉末に前記第1添加剤粉末、MgO粉末を含む第2添加剤粉末、Y粉末を含む第3添加剤粉末をミーリング(S250)及びテープキャスティング(S260)によって混合加工してセラミックシートを形成する。
【0037】
まず、非晶質化された第1添加剤粉末を得るために、ミキシング(S210)工程では、MgO、SiO、CaOを含むスラリー、すなわち、CaO、SiO、MgOの重量比が35~55wt%:35~50wt%:8~18wt%であって、概略的にCaO、SiO、MgOの重量比(wt%)が1:0.7:0.3程度であるスラリーを所定の混合装置で混合する。スラリーには溶媒(例えば、水やアルコール)と分散剤が一部含まれてよい。
【0038】
メルティング(S220)工程では、前記スラリーを坩堝(例えば、Pt坩堝)に入れて加熱して溶かす。メルティング(S220)工程はその他にも1100~1600℃で1~3時間行われてよく、好ましくは1400~1500℃で2時間行われてよい。
【0039】
ウォータークエンチング(S230)工程では、メルティング(S220)工程で処理されて液状に変化した前記スラリーを非晶質化するために水で冷却させるが、液状に変化した前記スラリーを含んでいる容器を所定のウォータークエンチング装置の水に焼入れ(quenching)して急冷させることにより、液状に変化した前記スラリーを非晶質化させて非晶質固体を生成することができる。
【0040】
グラインディング(S240)工程では、ウォータークエンチング(S230)工程で生成される非晶質固体をビーズミル(Beads Mill)装置などを用いてグラインドし、直径0.3~1.0μm程度の粉末(非晶質第1添加剤粉末)を生成する。上のようなCaO、SiO、MgOの混合によって、前記非晶質第1添加剤粉末は、CaMgSiO、CaMgSi、CaMg(Si)などの非晶質固体状態のものが得られる。
【0041】
ミーリング(S250)工程では、Al粉末に、前記第1添加剤粉末、MgO粉末を含む第2添加剤粉末、Y粉末を含む第3添加剤粉末をボールミーリング(Ball Milling)装置などを用いて均一に混合する。例えば、前記Al粉末、前記第1添加剤粉末(MgO、SiO、CaOを含む非晶質粉末)、前記第2添加剤粉末(MgO粉末)及び前記第3添加剤粉末(Y粉末)の重量比が、94~98wt%:1~3wt%:0.5~1.5wt%:0.5~1.5wt%となるように含めることができ、概略的に前記Al粉末、前記第1添加剤粉末(MgO、SiO、CaOを含む非晶質粉末)、前記第2添加剤粉末(MgO粉末)及び前記第3添加剤粉末(Y粉末)の重量比を96:2:1:1程度にすることができる。
【0042】
テープキャスティング(S260)工程では、ミーリング(S250)工程で処理された混合粉末を溶媒、結合剤、分散剤、可塑剤などと適切な割合で混合してスラリーを製造した後、キャリアフィルム(Carrier film)上に均一な厚さの板状に成形して乾燥させ、テープ形態のセラミックシートを作る。
【0043】
このように、本発明のセラミックサセプター100の製造方法は、高温用セラミック静電チャックやヒーターなどのセラミックサセプター100に適用されるセラミックシートの作製において、Alを主要セラミックとし、また、固体的抵抗値を有するように添加剤としてMgO、SiO、CaO及びYなどを添加して製造される。特に、添加されるMgO、SiO、CaOスラリーをまず高温で溶融した後に急冷させる工程によって非晶質化(ガラス化)させて非晶質粉末に作った後、Al粉末に前記非晶質粉末と共にMgO粉末、Y粉末などをさらに添加することによってセラミックシートを製造する。
【0044】
本発明のように固体的抵抗セラミックとなるためには非晶質化された組成が必要であり、素材の高温安定性の向上のために焼結助剤(sintering additive)を高い融点の非晶質で合成して添加した。非晶質がセラミック母材の焼結性を促進し、98%以上の相対密度を有させることができる。また、粒子成長の制御及び高温特性の向上のためにMgO及びYがさらに添加されており、さらに添加されるMgOは、Alセラミックの不均一な粒子成長を抑制することにより、焼結(S130)後の焼結体、すなわち、セラミックプレート300におけるセラミック粒子のグレーンサイズ分布が0.5~5μm、平均としては約3μmを有するようにし、高強度性の維持及び耐プラズマ性の増大を可能にした。
【0045】
<実施例1>
【0046】
本発明の一実施例によってMgO、SiO、CaOを含むスラリーによって[表1]、図4のような高い融点の非晶質組成からなるCaMgSi焼結助剤を合成した。図4は、参考論文のCaO-MgO-SiO位相ダイヤグラムの例である。参考論文は、「Fundamentals of Eaf and Ladle Slags and Ladle Refining Principles,Semantic Scholar,2021」を参考した。
【0047】
【表1】
【0048】
[表2]のように、Al粉末に、非晶質粉末(Glass)と共にMgO粉末、Y粉末などをさらに添加してセラミックシートを製造した。
【0049】
【表2】
【0050】
図5は、[表2]の実施例によって製造されたセラミックシートに対する表面SEM(Scanning Electron Microscope)写真の例である。図5の(a)は、セラミックシートの比較例(例えば、商用製品など)であり、図5の(b)は、[表2]のような本発明の実施例であり、図5の(c)は、[表2]のような本発明の実施例において局部的な結晶化ガラス部分の例である。
【0051】
図5の(b)のように、[表2]のような焼結助剤の添加量を制御することによって、不均一な粒子成長を抑制できることを確認したし、図5の(c)のように、Yのような希土類を添加し、局部的に希土類を中心にした結晶化ガラスが形成されることを確認した。
【0052】
<実施例2>
【0053】
本発明の他の実施例によってMgO、SiO、CaOを含むスラリーを用いて高い融点の非晶質粉末を作って添加し、比較例の組成範囲内で各組成が含まれるようにしてセラミックシートを作製した。
【0054】
図6は、従来(非晶質粉末添加を利用しない)、本発明(新規)及び比較例のセラミックシート焼結体の成分分析結果である。
【0055】
図6の実施例のような組成の本発明のセラミックシートでは、比較例の密度3.84g/cmよりも高い密度(測定値)3.94g/cmを示した。
【0056】
図7は、従来技術(非晶質粉末添加を利用しない)又は比較例と本発明(新規)との機械的物性の比較グラフである。
【0057】
図7に示すように、本発明のセラミックシートでは、曲げ強度(a)、ビッカース硬度(b)、及び体積抵抗(c)がいずれも、従来技術又は比較例に比べて向上していることを確認した。特に、図7の(c)のように、本発明のセラミックシートでは、高温溶融液状と希土類の添加によって高温体積抵抗特性が向上することを確認した。
【0058】
図8Aは、シリコンウエハー、比較例のセラミックシート、本発明のセラミックシート(新規)のエッチング深さを比較した結果である。
【0059】
図8Bは、比較例のセラミックシート、本発明のセラミックシート(新規)のエッチング表面のSEM写真を比較した例である。
【0060】
図8Aに示すように、所定のエッチング溶液を使用し、同一のエッチング条件において、本発明のセラミックシート(新規)は、シリコンウエハーはもとより、比較例のセラミックシートのエッチング深さ(1.79)よりも相対的に低いエッチング深さ(1.65)を示している。これは、図8Bのように本発明のセラミックシート(新規)の表面の溝サイズが比較例のセラミックシートのそれよりも小さいことからも、本発明のセラミックシート(新規)が緻密且つ微細な粒子で構成されていることが確認できる。
【0061】
<実施例3>
【0062】
図9は、本発明のセラミックシートの組成比率を異ならせて作製した場合(ケース番号0、1、2、3)の組成比率表である。
【0063】
図9に示すように、ケース2は、非晶質粉末を添加していない場合であり、ケース0は、非晶質粉末とMgO、Y粉末を添加剤とした場合であり、ケース1は、ケース0において非晶質粉末を原料配合比で計算して添加した場合であり、ケース2は任意に選定した配合原料配合比であり、ケース3はケース0においてY粉末の添加がない場合である。
【0064】
図10は、本発明の図9のケース番号0、1、2、3に対する体積抵抗及び密度を測定した結果である。
【0065】
図10に示すように、全てのケースにおいて3.79g/cm以上の密度を示しており、200℃で体積抵抗1015Ωcm以上を示している。
【0066】
図11は、非晶質粉末添加を用いない従来技術における温度による体積抵抗グラフである。
【0067】
図12は、本発明の図9のケース番号0、1、2、3に対する体積抵抗グラフである。
【0068】
図11に示すように、従来技術では200℃以上で体積抵抗が1012Ωcmよりも小さく測定された。これに対し、本発明の図9の全ケース番号0、1、2、3に対して200℃以上で概ね体積抵抗が1015Ωcm以上を維持することを確認した。
【0069】
図13は、本発明の図9のケース番号0、1、2、3に対する表面SEM写真である。
【0070】
図13に示すように、ケース0(非晶質粉末とMgO、Y粉末を添加剤とした場合)では、サークル表示部分のように、イットリア(Y)がガラス質に溶けて界面に存在することが確認できる。また、ケース0、及びケース0から非晶質粉末を除いたケース1では、サークル表示部分のように、結晶化ガラスとして予想されるグレーンが発見されることが確認できる。
【0071】
また、ケース1において大部分のイットリアは粒子として存在し、ケース1、2において方向性による収縮率の相違があることが分かる。ケース2(非晶質粉末を添加しない場合)には異常粒子が多数成長していることが確認できる。ケース3(ケース0においてY粉末添加がない場合)では、イットリアが添加されず、結晶化ガラスが見られないことが確認できる。
【0072】
その他にも、本発明のケース0(非晶質粉末とMgO、Y粉末を添加剤とした場合)では、EDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)測定の結果、ガラス質とイットリアが相対的に多量含まれることを確認した。これは、界面ではなく粒子位置で周辺粒子を吸収して成長することと考えられる。
【0073】
上述したように、本発明に係るセラミックサセプター100の製造方法は、均一な組性であり、温度依存性がなく、固体的抵抗を有するセラミックサセプター100を提供し、静電チャックに適用時に、温度依存性がなく、静電力の変化無しでチャッキングとデチャッキングが安定して行われるようにし得る。
【0074】
以上のように、具体的な構成要素などのような特定事項と限定された実施例及び図面によって本発明が説明されたが、これは、本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な修正及び変形が可能であろう。したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定して定められてはならず、添付する特許請求の範囲及びこの特許請求の範囲と均等又は等価の範囲で変形された技術思想はいずれも本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきであろう。
【符号の説明】
【0075】
200 ベース基材
300 セラミックプレート
310 第1セラミックシート層
330 第2セラミックシート層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13