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特開2023-94613部位特異的抗体コンジュゲーション及びその使用
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  • 特開-部位特異的抗体コンジュゲーション及びその使用 図1A
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  • 特開-部位特異的抗体コンジュゲーション及びその使用 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094613
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】部位特異的抗体コンジュゲーション及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230628BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230628BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230628BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230628BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230628BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230628BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230628BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230628BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P25/28
A61P25/00
A61P27/02
A61P31/00
A61P29/00
A61P9/10
A61P37/02
A61P25/16
A61K47/68
【審査請求】有
【請求項の数】40
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022206731
(22)【出願日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】21217585.5
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】キルスティン・ホーファー
(72)【発明者】
【氏名】ライナー・エー・マルティン
(72)【発明者】
【氏名】モハメド・ヨスリー・ハッサン・モハメド
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・オエルシュレーゲル
(72)【発明者】
【氏名】フェリクス・フランツ・シューマッハ
(72)【発明者】
【氏名】タチアナ・セラ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA27
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC27
4C076CC31
4C076EE41
4C076EE59
4C085AA14
4C085AA21
4C085BB11
4C085CC23
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA40
4H045BA41
4H045CA11
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA21
4H045GA26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】医薬品としての使用のための、及び疾患の処置における使用のための医薬組成物としての、重鎖及び軽鎖を含む修飾抗体、並びに該修飾抗体と治療実体のコンジュゲートを提供する。
【解決手段】少なくとも抗体重鎖を含む修飾抗体であって、前記抗体重鎖が、前記抗体重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)を含む位置の群から互いに独立して選択される1つ以上の位置に、又はそれらの後に挿入される(ナンバリングはKabatに従う)、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つ又は2つ又は3つ又は4つ以上の第1の認識部位(複数可)を含む、修飾抗体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも抗体重鎖を含む修飾抗体であって、前記抗体重鎖が、前記抗体重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)を含む位置の群から互いに独立して選択される1つ以上の位置に、又はそれらの後に挿入される(ナンバリングはKabatに従う)、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つ又は2つ又は3つ又は4つ以上の第1の認識部位(複数可)を含む、修飾抗体。
【請求項2】
少なくとも抗体軽鎖を含む修飾抗体であって、前記抗体軽鎖が、前記抗体軽鎖の位置110(LC110)、位置143(LC143)及び位置214(LC214)を含む位置の群から互いに独立して選択される1つ以上の位置に、又はそれらの後に挿入される(ナンバリングはKabatに従う)、クツネリア・アルビダ由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つ又は2つ又は3つ又は4つ以上の第1の認識部位(複数可)を含む、修飾抗体。
【請求項3】
重鎖及び軽鎖を含む修飾抗体であって、前記重鎖又は/及び前記軽鎖が、前記抗体軽鎖の位置110(LC110)、位置143(LC143)及び位置214(LC214)、並びに前記抗体重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)を含む位置の群から互いに独立して選択される1つ以上の位置に、又はそれらの後に挿入される(ナンバリングはKabatに従う)、クツネリア・アルビダ由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つ又は2つ又は3つ又は4つ以上の第1の認識部位(複数可)を含む、修飾抗体。
【請求項4】
KalbTGに対する前記第1の認識部位が、各前記抗体鎖のアミノ酸配列内に存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項5】
前記修飾抗体が、前記抗体重鎖のC末端の、又はC末端に融合したKalbTGに対する第1の認識部位を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項6】
前記修飾抗体が、前記抗体重鎖の位置446(HC446)又は位置447(HC447)にKalbTGに対する第1の認識部位を更に含む(ナンバリングはKabatに従う)、請求項1~5のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項7】
前記修飾抗体が2つの同一の抗体重鎖を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項8】
前記修飾抗体が2つの異なる抗体重鎖を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項9】
前記修飾抗体が、KalbTGに対する前記認識部位(複数可)に加えて、以下の変異(ナンバリングはKabatに従う):
a)両Fc領域ポリペプチド中のL234A、L235A;
b)両Fc領域ポリペプチド中のP329G;
c)一方のFc領域ポリペプチド中のT366W、及び他方のFc領域ポリペプチド中のT366S、L368A、Y407V;
d)一方のFc領域ポリペプチド中のS354C、及び他方のFc領域ポリペプチド中のY349C;
e)a)及びb);
f)a)及びb)及びc);又は
g)a)及びb)及びc)及びd)
を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項10】
少なくとも1つの修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含む修飾抗体Fc領域であって、前記修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、前記抗体重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)を含む位置の群から互いに独立して選択される1つ以上の位置に、又はそれらの後に(ナンバリングはKabatに従う)、クツネリア・アルビダ由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つ又は2つ又は3つ又は4つ以上の第1の認識部位(複数可)を含む、修飾抗体Fc領域。
【請求項11】
KalbTGに対する前記第1の認識部位(複数可)が、アミノ酸配列RYGQR(配列番号11)、RWRQR(配列番号12)、YRQRT(配列番号13)、IRQRQ(配列番号14)、FRYRQ(配列番号15)、YRYRQ(配列番号17)及びRVRQR(配列番号18)を含む第1の認識部位の群から互いに独立して選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【請求項12】
KalbTGに対する前記認識部位(複数可)が、前記位置の後に挿入されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【請求項13】
KalbTGに対する前記認識部位(複数可)が、2つのフレキシブルペプチドリンカーの間に介在している、請求項1~12のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【請求項14】
前記ペプチドリンカーが、それぞれがアミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Ser(n=1、2、3、4、5;配列番号19)を有する1つ又は2つ又は3つ又は4つ又は5つの反復単位を含む、請求項13に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【請求項15】
前記修飾抗体が、配列番号01:
【表56】

【表57】

によって識別される1つ以上の位置の後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入され、
【表58】

によって識別される前記位置の1つにKalbTGに対する更なる第1の認識部位が挿入される場合にのみ、
【表59】

によって識別される位置の後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入される)
のアミノ酸配列を有する抗体重鎖定常領域を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項16】
前記修飾抗体が、配列番号02:
【表60】

【表61】

によって識別される1つ以上の位置の後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入され、
【表62】

によって識別される前記位置の1つにKalbTGに対する更なる第1の認識部位が挿入される場合にのみ、
【表63】

によって識別される位置の後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入される)
のアミノ酸配列を有する抗体重鎖定常領域を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項17】
前記修飾抗体が、配列番号03:
【表64】

【表65】

によって識別される1つ以上の位置の後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入され、
【表66】

によって識別される前記位置の1つにKalbTGに対する更なる第1の認識部位が挿入される場合にのみ、
【表67】

によって識別される位置の後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入される)
のアミノ酸配列を有する抗体重鎖定常領域を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項18】
前記修飾抗体が、配列番号04:
【表68】

【表69】

によって識別される1つ以上の位置の後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入され、
【表70】

によって識別される前記位置の1つにKalbTGに対する更なる第1の認識部位が挿入される場合にのみ、
【表71】

によって識別される位置の後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入される)
のアミノ酸配列を有する抗体重鎖定常領域を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項19】
前記修飾抗体が、配列番号05:
【表72】

【表73】

によって識別される1つ以上の位置の後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入され、
【表74】

によって識別される前記位置の1つにKalbTGに対する更なる第1の認識部位が挿入される場合にのみ、
【表75】

によって識別される位置の後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入される)
のアミノ酸配列を有する抗体重鎖定常領域を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項20】
前記修飾抗体が、配列番号8のアミノ酸配列を有する抗体重鎖定常領域を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項21】
前記修飾抗体が、配列番号9のアミノ酸配列を有する抗体重鎖定常領域を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項22】
前記修飾抗体が、配列番号34のアミノ酸配列を有する抗体重鎖定常領域を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項23】
前記修飾抗体が、配列番号06:
【表76】

【表77】

によって識別される1つ以上の位置の後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入される)
のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖定常領域を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項24】
前記修飾抗体が、配列番号07:
【表78】

【表79】

によって識別される1つ以上の位置の後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入される)
のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖定常領域を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項25】
前記修飾抗体が、配列番号10に示すアミノ酸配列を有する抗体軽鎖定常領域を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項26】
前記修飾抗体が、受容体媒介性エンドサイトーシスを誘導する受容体に特異的に結合する、請求項1~25のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項27】
前記修飾抗体が、ヒトトランスフェリン受容体1(TfR1)、ヒトインスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)、ヒト低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)及びヒト低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)からなる抗原群から選択される抗原に特異的に結合する、請求項1~26のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【請求項28】
共有結合型コンジュゲートであって、
(i)請求項1~27のいずれか一項に記載の修飾抗体と、
(ii)(i)の前記修飾抗体のKalbTGに対する前記1つ以上の第1の認識部位(複数可)に共有結合的にコンジュゲートされた1つ以上の非抗体ドメイン(複数可)と
を含み、
前記非抗体ドメインが、KalbTGに対する第2の認識部位を含む、共有結合型コンジュゲート。
【請求項29】
前記非抗体ドメインが、
(i)治療実体と、
(ii)前記修飾抗体に存在する前記第1の認識部位と相補的である、KalbTGに対する第2の認識部位と、
(iii)任意に、前記治療実体と前記第2の認識部位との間の第2のリンカーと
を含む、請求項28に記載の共有結合型コンジュゲート。
【請求項30】
KalbTGに対する前記第2の認識部位が、ペプチド配列RYESK(配列番号16)と少なくとも80%の配列同一性を有するKタグである、請求項28~29のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【請求項31】
前記第2のリンカーが、アルキルリンカー又はポリエチレンリンカー又はペプチドリンカー又はそれらの混合物である、請求項29~30のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【請求項32】
請求項1~27のいずれか一項に記載の修飾抗体を治療実体に共有結合的にコンジュゲートさせる方法であって、前記方法が、
a)請求項1~27のいずれか一項に記載の修飾抗体を提供することと、
b)非抗体ドメインを提供することであって、前記非抗体ドメインが、
(i)治療実体と、
(ii)(i)の下で提供される前記修飾抗体に存在する前記第1の認識部位と相補的である、KalbTGに対する第2の認識部位と、
(iii)任意に、前記治療実体とKalbTGに対する前記第2の認識部位との間の第2のリンカーと
を含む、非抗体ドメインを提供することと、
c)a)の前記修飾抗体及びb)の前記非抗体ドメインを、KalbTG又はその機能的に活性なバリアント若しくは断片の存在下でインキュベーションすることであって、それによりKalbTGに対する前記第1の認識部位と前記第2の認識部位との間にイソペプチド結合を形成し、
それにより、前記修飾抗体を前記治療実体にコンジュゲートする、インキュベーションすることと
を含む、方法。
【請求項33】
前記KalbTGに対する前記第2の認識部位が、RYESK(配列番号16)のアミノ酸配列を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記KalbTGが、アミノ酸配列(3文字表記)
【表80】

を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の修飾抗体、修飾Fc領域、共有結合型コンジュゲート及び方法。
【請求項35】
請求項29~31及び34のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲートを含む、医薬組成物。
【請求項36】
医薬として使用するための、請求項29~31及び34のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート、又は請求項32~34のいずれか一項に記載の方法に従って製造された共有結合型コンジュゲート。
【請求項37】
神経疾患が、神経障害、神経変性疾患、がん、眼疾患障害、発作障害、リソソーム蓄積症、アミロイドーシス、ウイルス性又は微生物性疾患、虚血、行動障害、CNS炎症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、脳転移を伴うCD20陽性がん、及び脳転移を伴うHER2陽性がんからなる群から選択される、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
請求項1~27のいずれか一項に記載の修飾抗体をコードする核酸又は核酸の組成物。
【請求項39】
請求項38に記載の核酸又は核酸組成物を含む、細胞。
【請求項40】
請求項1~27のいずれか一項に記載の修飾抗体を製造するための方法であって、
-請求項39に記載の細胞を培養する工程、
-前記修飾抗体を前記細胞又は/及び培養培地から回収し、
それにより、請求項1~27のいずれか一項に記載の修飾抗体を製造する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体技術の分野、特に抗体-薬物コンジュゲートの分野にある。特に、本発明は、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼのための1つ以上の人工認識部位を含む修飾抗体、及び前記修飾抗体を含む抗体-薬物コンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬は、疾患を処置、治癒又は予防するために使用される化学物質である。医薬はいくつかの経路を介して投与することができ、多くの医薬品は1つを超える経路によって投与することができる。典型的な投与経路としては、限定されないが、溶液、懸濁液又はエマルジョン(例えば、筋肉内、静脈内、腹腔内、眼内、骨内、皮下又は髄腔内)の経口、直腸、舌下又は局所の注射が挙げられる。明らかに、医薬は通常、患者の体内に全身的に分布しており、望ましくない領域でのその活性のために有害作用を有する可能性がある。他の領域に到達することは困難な場合がある。標的治療は、作用することが意図されている体内の領域に向けられた医薬を使用することによってこの欠点を克服することを目的とする。標的化治療は、従来の非標的化形態の処置よりも効果的であり、副作用が少ないと予想される。
【0003】
治療実体を意図された作用場所に向ける1つの方法は、標的細胞又は組織において特異的に結合する抗体にそれを結合させることによるものである。抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲート(AOC)等の抗体薬物コンジュゲート(ADC)に関連する課題の1つは、それらの製造である。ほとんどの薬物-抗体連結は、チオール-マレイミド化学を可能にする部分的に還元された鎖間ジスルフィド結合、又は活性化エステルを使用したリジン官能化若しくは人工的に導入されたシステイン残基のいずれかを利用する。この方法は、異なる部位に結合した異なる数の薬物を有するコンジュゲート抗体種の統計的混合物をもたらす。モノメチルアウリスタチンEペイロードを有するADCでは、4、6、又は8の薬物対抗体比(DAR)を有するADC種は、次第に疎水性となることが実証され、DAR2種よりもはるかに凝集しやすいことが示された(Adem et al.)。
【0004】
したがって、治療実体の結合の数及び部位をより正確に制御して、標的化治療のためのADC、例えばAOCを提供することが望ましい。それにより、ADCの均一性が高められるはずである。改善された部位特異的コンジュゲーション技術は、治療用ADC並びに診断用抗体標識又は抗体-酵素コンジュゲートの調製における潜在的な使用のために、多くの製薬会社の関心の対象であり続けている。
【0005】
ストレプトミセス・モバラエンシス(Streptomyces mobaraensis)由来の微生物トランスグルタミナーゼは、タンパク質架橋並びに部位特異的タンパク質標識のための安価で使いやすい酵素として浮上している(Ando et al.,2014;Strop et al.,2013)。
【0006】
クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)からの新規トランスグルタミナーゼ(KalbTG)の発見及びそれぞれのペプチド基質の同定は、Steffen et al.(2017)によって記載されている。KalbTGは、以前に記載された微生物トランスグルタミナーゼ(mTG)と比較して、同様の効率を示すが、特異性及び発達性が改善されている。
【0007】
米国特許出願公開第2020/0249231号は、トランスグルタミナーゼ種の同定及び特徴付けのためのシステム及び方法を報告した。
【0008】
IgG重鎖C末端は、抗体標識のためのmTGのための適切なQタグ挿入部位として記載されている(例えば、国際公開第2021/174091号を参照)。
【発明の概要】
【0009】
上記の欠点を回避するため、本発明の目的は、KalbTG媒介コンジュゲーションに関して修飾抗体の改善された特性をもたらすQタグモチーフの組み込みのためのIgG分子内の部位を同定することであった。Qタグの組み込みは、抗体の折り畳み又は機能を損なわず、又は発現収率を低下させず、コンジュゲーションに必要なアクセス可能性並びに治療実体の治療活性を提供すべきである。本発明によるそのような部位の成功した同定は、定義された化学量論及び制御された部位特異的様式でのIgG分子あたり1つ以上の治療部分の組み込みを可能にする。それにより、より均一なコンジュゲート生成物を提供することができ、例えば、必要な精製及び分離努力を軽減し、より好ましい薬物様特性を有する分子を得ることができる。さらに、コンジュゲーションプロセス及び/又はコンジュゲートペイロードによる抗体のその抗原への結合を損なうリスクが低減される。
【0010】
本発明者らは、とりわけ、ペイロードをIgG重鎖C末端に結合させると、凝集及び疎水性が増加することを観察した。KalbTGを使用して医薬として有用な抗体-薬物コンジュゲートを調製できるようにするために、KalbTG Q-タグは、本発明によるIgG骨格内の規定された部位に導入されなければならない。
【0011】
本発明は、重鎖及び軽鎖を含む修飾抗体であって、重鎖又は/及び軽鎖が、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)又はその機能的に活性なバリアントに対する1つ以上の第1の認識部位(複数可)を含む修飾抗体に関する。1つ以上の第1の認識部位(複数可)は、抗体の重鎖及び/又は軽鎖内の1つ以上の選択された位置(複数可)に導入される。
【0012】
本発明の一態様は、重鎖及び軽鎖を含む修飾抗体であって、重鎖又は/及び軽鎖が、軽鎖の位置110(LC110)、位置143(LC143)及び位置214(LC214)、並びに重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)から選択される1つ以上の位置(ナンバリングはKabatに従う)にあるか、又はこれらの位置の後に挿入された、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つ以上の(第1の)認識部位(複数可)を含む、修飾抗体である。したがって、本発明の修飾抗体では、KalbTGの認識部位は、抗体重鎖ポリペプチドの定常領域の内部に位置し、すなわち抗体重鎖のN末端若しくはC末端のいずれにも、又は/及び抗体軽鎖定常ドメインの内部若しくはC末端に位置していない。
【0013】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、本発明の修飾抗体は、重鎖のC末端、すなわち、位置446(HC446)又は位置447(HC447)(ナンバリングはKabatに従う)に、又はこれに融合したKalbTGに対する認識部位を更に含む。
【0014】
本発明との関連で、「ある位置におけるKalbTGの認識部位の挿入」という用語は、抗体のそれぞれの鎖の非修飾アミノ酸配列中のその位置に存在するアミノ酸残基が認識部位によって置換される、すなわち、認識部位がアミノ酸残基の代わりに挿入されるか、又は認識部位が、好ましい一実施形態では、アミノ酸配列中のその位置の直後に、2つの短いフレキシブルリンカーペプチドの間に間隔を置いての直接のいずれかで挿入される、すなわち、アミノ酸残基が維持されることを意味する。
【0015】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、1つ以上の位置は、軽鎖の位置214(LC214)、並びに重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)及び位置341(HC341)を含む位置の群から選択される(ナンバリングはKabatに従う)。
【0016】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、1つ以上の位置が、軽鎖の位置214(LC214)及び重鎖の位置341(HC341)、位置297(HC297)及び位置177(HC177)を含む位置の群から選択される(ナンバリングはKabatに従う)。
【0017】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、修飾抗体が2つの同一の重鎖又は重鎖Fc領域を含む。
【0018】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、修飾抗体は、軽鎖の位置110(LC110)、位置143(LC143)及び位置214(LC214)並びに重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)(ナンバリングはKabatに従う)から選択される1つ以上の位置に、又はそれらの後に挿入される、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する2、4又はそれを超える(第1の)認識部位(複数可)を含む。
【0019】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、本発明による修飾抗体が2つの異なる重鎖又は抗体Fc領域を含み、それにより、差異が少なくともヘテロ二量体化を誘導するためのそれぞれの突然変異から生じる。
【0020】
特定の実施形態では、修飾抗体は、軽鎖の位置110(LC110)、位置143(LC143)及び位置214(LC214)並びに重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)(ナンバリングはKabatに従う)から選択される1つ以上の位置に、又はそれらの後に互いに独立して挿入される、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1、2、3又はそれを超える(第1の)認識部位(複数可)を含む。
【0021】
同様に、本発明は、修飾抗体Fc領域に関し、修飾抗体Fc領域は、重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)を含む位置(ナンバリングはKabatに従う)の群から選択される1つ以上の位置にそれらの後に挿入された、クツネリア・アルビダKutzneria albida由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つ以上の(第1の)認識部位(複数可)を含む。
【0022】
したがって、本発明の修飾抗体Fc領域では、KalbTGの認識部位は、抗体重鎖Fc領域ポリペプチドの定常領域の内部に位置し、すなわちいかなる末端にも位置しない。さらに、本発明の修飾抗体Fc領域は、重鎖の位置446(HC446)又は位置447(HC447)、すなわちC末端にKalbTGの更なる第1の認識部位を含み得る(ナンバリングはKabatに従う)。本発明との関連で、「ある位置におけるKalbTGの認識部位の挿入」という用語は、非修飾配列中のその位置に存在するアミノ酸が認識部位によって置き換えられるか、又は好ましい一実施形態では、認識部位が、更にその位置の後に、直接又は2つのフレキシブルな短いリンカーペプチドの間に間隔を置いてのいずれかで挿入されることを意味する。
【0023】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、1つ以上の位置は、重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)及び位置341(HC341)を含む位置の群から選択される(ナンバリングはKabatに従う)。
【0024】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、1つ以上の位置が、重鎖の位置341(HC341)、位置297(HC297)及び位置177(HC177)を含む位置の群から選択される(ナンバリングはKabatに従う)。
【0025】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との少なくとも1つの(同族)対を含み、重鎖は、重鎖の位置297(HC297)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(ナンバリングはKabatに従う)。
【0026】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との少なくとも1つの(同族)対を含み、重鎖は、重鎖の位置177(HC177)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(ナンバリングはKabatに従う)。
【0027】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との少なくとも1つの(同族)対を含み、軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(ナンバリングはKabatに従う)。
【0028】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との少なくとも1つの(同族)対を含み、重鎖は、重鎖の位置297(HC297)及び位置177(HC177)に又はそれらの後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する2つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(ナンバリングはKabatに従う)。
【0029】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との少なくとも1つの(同族)対を含み、重鎖は、重鎖の位置297(HC297)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含み、軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(ナンバリングはKabatに従う)。
【0030】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との少なくとも1つの(同族)対を含み、重鎖は、重鎖の位置177(HC177)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含み、軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(ナンバリングはKabatに従う)。
【0031】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との少なくとも1つの(同族)対を含み、重鎖は、重鎖の位置297(HC297)及び位置177(HC177)に又はそれらの後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する2つの(第1の)認識部位(複数可)を含み、軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(ナンバリングはKabatに従う)。
【0032】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との2つの(同族)対を含み、第1の対の重鎖は、重鎖の位置297(HC297)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含み、第2の対の軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(ナンバリングはKabatに従う)。
【0033】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との2つの(同族)対を含み、第1の対の重鎖は、重鎖の位置177(HC177)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含み、第2の対の軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(ナンバリングはKabatに従う)。
【0034】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との2つの(同族)対を含み、第1の対の重鎖は、重鎖の位置297(HC297)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含み、第2の対の重鎖は、重鎖の位置177(HC177)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)(KalbTG)由来のトランスグルタミナーゼに対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含み、第2の対の軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(ナンバリングはKabatに従う)。
【0035】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との2つの(同族)対を含み、第1の対の重鎖は、重鎖の位置177(HC177)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含み、第2の対の重鎖は、重鎖の位置297(HC297)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)(KalbTG)由来のトランスグルタミナーゼに対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含み、第2の対の軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(ナンバリングはKabatに従う)。
【0036】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との2つの(同族)対を含み、第1の対の重鎖は、重鎖の位置297(HC297)及び位置177(HC177)に又はそれらの後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する2つの(第1の)認識部位(複数可)を含み、第2の対の軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(ナンバリングはKabatに従う)。
【0037】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)の認識部位(複数可)が、その位置の直後に挿入される。特定の実施形態では、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)の認識部位(複数可)は、2つのフレキシブルペプチドリンカーの間に挿入されている。特定の実施形態では、クツネリア・アルビダKutzneria albida由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)の認識部位(複数可)は、アミノ酸配列GGGSYRYRQGGGS(配列番号25)を有する。
【0038】
本発明は更に、本発明による修飾抗体をコードする1つ以上の核酸、並びに(i)本発明による修飾抗体、及び(ii)直接又は第1のリンカーを介してのいずれかで1つ以上の第1の認識部位(複数可)に共有結合的にコンジュゲートされた1つ以上の非抗体部分(ペイロード(複数可))を含む共有結合型コンジュゲートに関する。特定の実施形態では、非抗体部分は、治療実体、及び任意に第2のリンカーを含む。
【0039】
本発明は更に、本発明による修飾抗体を非抗体部分に共有結合的にコンジュゲートする方法に関する。非抗体部分が治療実体を含む場合、本発明は更に、医薬としての使用のための、並びに疾患の処置における使用のための医薬組成物としての本発明による修飾抗体と治療実体とのコンジュゲートに関する。
【0040】
KalbTGは、グルタミン側(Gln、Q)鎖とリジン(Lys、K)側鎖との間のイソペプチド結合の形成を触媒する。形成されたイソペプチド結合は、ε-(γ-グルタミル)リジン結合/架橋である。酵素結合形成は共有結合性であり、したがってほとんど不可逆的である。YRYRQ(配列番号17)はKalbTG Gln含有モチーフ(Qタグ)として同定され、RYESK(配列番号16)はLys含有アクセプターモチーフ(Kタグ)として同定された。
【0041】
したがって、本発明は、少なくとも以下の実施形態を包含する。
【0042】
1.少なくとも抗体重鎖を含む修飾抗体であって、抗体重鎖が、抗体重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)を含む位置の群から互いに独立して選択される1つ以上の位置に、又はそれらの後に挿入される(ナンバリングはKabatに従う)、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つ又は2つ又は3つ又は4つ以上の第1の認識部位(複数可)を含む、修飾抗体。
【0043】
2.少なくとも抗体軽鎖を含む修飾抗体であって、抗体軽鎖が、抗体軽鎖の位置110(LC110)、位置143(LC143)及び位置214(LC214)を含む位置の群から互いに独立して選択される1つ以上の位置に、又はそれらの後に挿入される(ナンバリングはKabatに従う)、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つ又は2つ又は3つ又は4つ以上の第1の認識部位(複数可)を含む、修飾抗体。
【0044】
3.重鎖及び軽鎖を含む修飾抗体であって、重鎖又は/及び軽鎖が、抗体軽鎖の位置110(LC110)、位置143(LC143)及び位置214(LC214)、並びに抗体重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)を含む位置の群から互いに独立して選択される1つ以上の位置に、又はそれらの後に挿入される(ナンバリングはKabatに従う)、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つ又は2つ又は3つ又は4つ以上の第1の認識部位(複数可)を含む、修飾抗体。
【0045】
4.KalbTGに対する第1の認識部位が、各抗体鎖のアミノ酸配列内に存在する、実施形態1~3のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0046】
5.修飾抗体が、抗体重鎖のC末端の、又はC末端に融合したKalbTGに対する第1の認識部位を更に含む、実施形態1~4のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0047】
6.修飾抗体が、抗体重鎖の位置446(HC446)又は位置447(HC447)にKalbTGに対する第1の認識部位を更に含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~5のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0048】
7.1つ又は2つ又は3つ又は4つ以上の位置が、抗体軽鎖の位置110(LC110)、位置143(LC143)及び位置214(LC214)、並びに抗体重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)を含む位置の群から互いに独立して選択される(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~6のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0049】
8.1つ又は2つ又は3つ又は4つ以上の位置が、抗体軽鎖の位置214(LC214)、並びに抗体重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)及び位置341(HC341)を含む位置の群から互いに独立して選択される(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~7のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0050】
9.1つ又は2つ又は3つ又は4つ以上の位置が、抗体軽鎖の位置214(LC214)、並びに抗体重鎖の位置341(HC341)、位置297(HC297)及び位置177(HC177)を含む位置の群から互いに独立に選択される(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~8のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0051】
10.1つ又は2つ又は3つ又は4つ以上の位置が、抗体軽鎖の位置214(LC214)、並びに抗体重鎖の位置297(HC297)及び位置177(HC177)を含む位置の群から互いに独立に選択される(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~9のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0052】
11.修飾抗体が、抗体軽鎖の位置110(LC110)、位置143(LC143)及び位置214(LC214)、並びに抗体重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)(ナンバリングはKabatに従う)からなる群から互いに独立して選択される1つ以上の位置に含むか、又はこれらの位置の後に挿入されている、KalbTGに対する偶数個の第1の認識部位(複数可)を含む、実施形態1~10のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0053】
12.偶数が、2又は4又は6又は8である、実施形態11に記載の修飾抗体。
【0054】
13.偶数が2又は4である、実施形態11~12のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0055】
14.修飾抗体が、抗体軽鎖の位置110(LC110)、位置143(LC143)及び位置214(LC214)、並びに抗体重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)(ナンバリングはKabatに従う)からなる群から互いに独立して選択される1つ以上の位置に含むか、又はこれらの位置の後に挿入されている、KalbTGに対する偶数個の第1の認識部位(複数可)を含む、実施形態1~13のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0056】
15.奇数が、1又は3又は5又は7である、実施形態14に記載の修飾抗体。
【0057】
16.奇数が、1又は3である、実施形態14~15のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0058】
17.修飾抗体が、抗体重鎖及び抗体軽鎖の少なくとも1つの同族対を含む、実施形態1~16のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0059】
18.抗体重鎖が、抗体重鎖の位置297(HC297)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~17のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0060】
19.抗体重鎖が、抗体重鎖の位置177(HC177)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~18のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0061】
20.抗体軽鎖が、抗体軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~19のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0062】
21.抗体重鎖が、抗体重鎖の位置297(HC297)及び位置177(HC177)に、又はそれらの後に挿入されたKalbTGに対する2つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~20のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0063】
22.抗体重鎖が、抗体重鎖の位置297(HC297)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含み、抗体軽鎖が、抗体軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~20のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0064】
23.抗体重鎖が、抗体重鎖の位置177(HC177)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含み、抗体軽鎖が、抗体軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~20のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0065】
24.抗体重鎖が、抗体重鎖の位置297(HC297)及び位置177(HC177)に又はそれらの後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含み、抗体軽鎖が、抗体軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する2つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~20のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0066】
25.修飾抗体が、抗体重鎖及び同族抗体軽鎖の2つの対を含む、実施形態1~24のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0067】
26.
(i)修飾抗体が、抗体重鎖及び抗体軽鎖の各々の2つの対を含み、抗体重鎖又は/及び抗体軽鎖の各々が、KalbTGに対する1つ以上の第1の認識部位を含むか、又は
(ii)修飾抗体が、抗体重鎖及び抗体軽鎖の各々の2つの対を含み、抗体重鎖又は/及び抗体軽鎖のうち1つが、KalbTGに対する1つ以上の第1の認識部位を含むか、又は
(iii)修飾抗体が、抗体重鎖及び抗体重鎖の1つの対と、1つの追加の抗体重鎖Fc領域ポリペプチドとを含み、抗体重鎖又は/及び抗体重鎖Fc領域断片又は抗体軽鎖が、KalbTGに対する1つ以上の第1の認識部位を含む、実施形態1~25のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0068】
27.第1の対の抗体重鎖が、抗体重鎖の位置297(HC297)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含み、第2の対の抗体軽鎖が、抗体軽鎖の214(LC214)位又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態25に記載の修飾抗体。
【0069】
28.第1の対の抗体重鎖が、抗体重鎖の位置177(HC177)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含み、第2の対の抗体軽鎖が、抗体軽鎖の214(LC214)位又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態25に記載の修飾抗体。
【0070】
29.第1の対の抗体重鎖が、抗体重鎖の位置297(HC297)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含み、第2の対の抗体重鎖が、抗体重鎖の位置177(HC177)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含み、第2の対の抗体軽鎖が、抗体軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態25に記載の修飾抗体。
【0071】
30.第1の対の抗体重鎖が、抗体重鎖の位置177(HC177)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含み、第2の対の抗体重鎖が、抗体重鎖の位置297(HC297)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含み、第2の対の抗体軽鎖が、抗体軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態25に記載の修飾抗体。
【0072】
31.第1の対の抗体重鎖が、抗体重鎖の位置297(HC297)及び位置177(HC177)に又はそれらの後に挿入されたKalbTGに対する2つの第1の認識部位を含み、第2の対の抗体軽鎖が、抗体軽鎖の214(LC214)位又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態25に記載の修飾抗体。
【0073】
32.両方の抗体重鎖が、抗体重鎖の位置297(HC297)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~25のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0074】
33.両方の抗体重鎖が、抗体重鎖の位置177(HC177)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~25のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0075】
34.両方の抗体軽鎖が、抗体軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~25のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0076】
35.両方の抗体重鎖が、抗体重鎖の位置297(HC297)及び位置177(HC177)に、又はそれらの後に挿入されたKalbTGに対する2つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~25のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0077】
36.両方の抗体重鎖が、抗体重鎖の位置297(HC297)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含み、両方の抗体軽鎖が、抗体軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~25のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0078】
37.両方の抗体重鎖が、抗体重鎖の位置177(HC177)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含み、両方の抗体軽鎖が、抗体軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~25のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0079】
38.両方の抗体重鎖が、抗体重鎖の位置297(HC297)及び位置177(HC177)に又はそれらの後に挿入されたKalbTGに対する2つの第1の認識部位を含み、両方の抗体軽鎖が、抗体軽鎖の位置214(LC214)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態1~25のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0080】
39.修飾抗体が2つの同一の抗体重鎖を含む、実施形態1~38のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0081】
40.修飾抗体が2つの異なる抗体重鎖を含む、実施形態1~38のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0082】
41.相違が、ヘテロ二量体化を誘導するための少なくともそれぞれの変異から生じる、実施形態40に記載の修飾抗体。
【0083】
42.修飾抗体が、KalbTGに対する認識部位(複数可)に加えて、以下の変異(ナンバリングはKabatに従う)を含む、実施形態1~41のいずれか一項に記載の修飾抗体:
a)両Fc領域ポリペプチド中のL234A、L235A;
b)両Fc領域ポリペプチド中のP329G;
c)一方のFc領域ポリペプチド中のT366W、及び他方のFc領域ポリペプチド中のT366S、L368A、Y407V;
d)一方のFc領域ポリペプチド中のS354C、及び他方のFc領域ポリペプチド中のY349C;
e)a)及びb);
f)a)及びb)及びc);又は
g)a)及びb)及びc)及びd)。
【0084】
43.少なくとも1つの修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含む修飾抗体Fc領域であって、修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)を含む位置の群から互いに独立して選択される1つ以上の位置に、又はそれらの後に(ナンバリングはKabatに従う)、クツネリア・アルビダ由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つ又は2つ又は3つ又は4つ以上の第1の認識部位(複数可)を含む、修飾抗体Fc領域。
【0085】
44.KalbTGに対する第1の認識部位が、各抗体鎖のアミノ酸配列内に存在する、実施形態43に記載の修飾抗体Fc領域。
【0086】
45.修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、そのC末端に又はそのC末端に融合したKalbTGに対する第1の認識部位を更に含む、実施形態43~44のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0087】
46.抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体重鎖の位置446(HC446)又は位置447(HC447)にKalbTGに対する第1の認識部位を更に含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態43~45のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0088】
47.1つ又は2つ又は3つ又は4つ以上の位置が、抗体重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)及び位置341(HC341)を含む位置の群から互いに独立して選択される(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態43~46のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0089】
48.1つ又は2つ又は3つ又は4つ以上の位置が、抗体重鎖の位置341(HC341)、位置297(HC297)及び位置177(HC177)を含む位置の群から互いに独立して選択される(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態43~47のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0090】
49.1つ又は2つ又は3つ又は4つ以上の位置が、抗体重鎖の位置297(HC297)及び位置177(HC177)を含む位置の群から互いに独立して選択される(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態43~48のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0091】
50.修飾抗体Fc領域が、抗体重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)(ナンバリングはKabatに従う)を含む位置の群から互いに独立して選択される1つ以上の位置に、又はそれらの後に挿入されたKalbTGに対する偶数個の第1の認識部位(複数可)を含む、実施形態43~49のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0092】
51.偶数が、2又は4又は6又は8である、実施形態50に記載の修飾抗体Fc領域。
【0093】
52.偶数が2又は4である、実施形態49~50のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0094】
53.修飾抗体Fc領域が、抗体重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)(ナンバリングはKabatに従う)を含む位置の群から互いに独立して選択される1つ以上の位置に、又はそれらの後に挿入されたKalbTGに対する奇数個の第1の認識部位(複数可)を含む、実施形態43~49のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0095】
54.奇数が、1又は3又は5又は7である、実施形態53に記載の修飾抗体Fc領域。
【0096】
55.奇数が、1又は3である、実施形態53~54のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0097】
56.修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体重鎖の位置297(HC297)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態43~55のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0098】
57.修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体重鎖の位置177(HC177)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態43~56のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0099】
58.修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体重鎖の位置297(HC297)及び位置177(HC177)に又はそれらの後に挿入されたKalbTGに対する2つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態43~57のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0100】
59.修飾抗体Fc領域が、実施形態43~58のいずれか一項に記載の2つの修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含む、実施形態43~58のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0101】
60.修飾抗体Fc領域が、2つの修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、一方の修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体重鎖の位置297(HC297)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含み、他方の修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体重鎖の位置177(HC177)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態43~58のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0102】
61.修飾抗体Fc領域が、2つの修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、その両方の修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体重鎖の位置297(HC297)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する1つの第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態43~58のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0103】
62.修飾抗体Fc領域が、2つの修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、その両方の修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体重鎖の位置177(HC177)に又はその後に挿入されたKalbTGに対する第1の認識部位を含む(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態43~58のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0104】
63.修飾抗体Fc領域が、2つの修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含み、その両方の修飾抗体重鎖Fc領域ポリペプチドが、抗体重鎖の位置297(HC297)及び位置177(HC177)に又はそれらの後に挿入されたKalbTGに対する2つの第1の認識部位(ナンバリングはKabatに従う)、実施形態43~58のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0105】
64.修飾抗体Fc領域が、2つの同一の抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含む、実施形態43~63のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0106】
65.修飾抗体Fc領域が、2つの異なる抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを含む、実施形態43~63のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域。
【0107】
66.相違が、ヘテロ二量体化を誘導するための少なくともそれぞれの変異から生じる、実施形態65に記載の修飾抗体Fc領域。
【0108】
67.修飾抗体が、KalbTGに対する認識部位(複数可)に加えて、以下の変異(ナンバリングはKabatに従う)を含む、実施形態43~66のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域:
a)両Fc領域ポリペプチド中のL234A、L235A;
b)両Fc領域ポリペプチド中のP329G;
c)一方のFc領域ポリペプチド中のT366W、及び他方のFc領域ポリペプチド中のT366S、L368A、Y407V;
d)一方のFc領域ポリペプチド中のS354C、及び他方のFc領域ポリペプチド中のY349C;
e)a)及びb);
f)a)及びb)及びc);又は
g)a)及びb)及びc)及びd)。
【0109】
68.実施形態43~67のいずれか一項に記載の修飾抗体Fc領域を含む、修飾抗体。
【0110】
69.KalbTGに対する第1認識部位(複数可)が、Gln含有5アミノ酸長モチーフを含むか又は有する、実施形態1~68のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【0111】
70.KalbTGに対する第1の認識部位(複数可)が、アミノ酸配列RYGQR(配列番号11)、RWRQR(配列番号12)、YRQRT(配列番号13)、IRQRQ(配列番号14)、FRYRQ(配列番号15)、YRYRQ(配列番号17)及びRVRQR(配列番号18)を含む第1の認識部位の群から互いに独立して選択される、実施形態1~69のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【0112】
71.KalbTGに対する第1の認識部位(複数可)が、互いに独立して、アミノ酸配列YRYRQ(配列番号17)又はRVRQR(配列番号18)から選択される、実施形態1~70のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【0113】
72.KalbTGの第1認識部位(複数可)がYRYRQ(配列番号17)である、実施形態1~71のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【0114】
73.KalbTGに対する認識部位(複数可)が、位置の後に挿入されている、実施形態1~72のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【0115】
74.KalbTGに対する認識部位(複数可)が、2つのフレキシブルペプチドリンカーの間に介在している、実施形態1~73のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【0116】
75.各ペプチドリンカーが、互いに独立して、1~20個のアミノ酸を含む、実施形態74に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【0117】
76.各ペプチドリンカーが互いに独立して1~10個のアミノ酸を含む、実施形態74~75のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【0118】
77.各ペプチドリンカーが互いに独立して1~5個のアミノ酸を含む、実施形態74~76のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【0119】
78.ペプチドリンカーが、Qタグ、KalbTG、抗体の折り畳み、及び修飾抗体に結合するペイロードの機能を本質的に妨害しない、実施形態74~77のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【0120】
79.ペプチドリンカーが、主に又は排他的に、Gly及び/又はSer及び/又はAla及び/又はThr及び/又はGluアミノ酸残基を含む、実施形態74~79のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【0121】
80.ペプチドリンカーが、互いに独立して、GGGP(配列番号20)、ESGS(配列番号21)、APAP(配列番号22)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号23)及びEGKSSGSGSESKST(配列番号24)を含むペプチドリンカーの群から選択される、実施形態74~80のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【0122】
81.ペプチドリンカーが、互いに独立して、主として又は完全に、Gly及びSerからなる、実施形態74~80のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【0123】
82.ペプチドリンカーが(GlySer)であり、m=1、2、3又は4及びn=1、2、3、4又は5であり、m及びnが互いに独立して選択される、実施形態74~81のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【0124】
83.m=3、n=1である、実施形態82のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【0125】
84.ペプチドリンカーが、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Ser(n=1、2、3、4、5;配列番号19)をそれぞれ有する1つ又は2つ又は3つ又は4つ又は5つの反復単位を含む、実施形態74~83のいずれか一項に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【0126】
85.ペプチドリンカーが、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Ser(n=1;配列番号19)を有する1つの反復単位を含む、実施形態84に記載の修飾抗体又は修飾抗体Fc領域。
【0127】
86.修飾抗体が1つ又は2つ又は3つ又は4つのFab断片を含む、実施形態1~85のいずれか1つに記載の修飾抗体。
【0128】
87.修飾抗体が、同族抗体軽鎖-重鎖対を形成する1つの完全長抗体軽鎖及び1つの完全長抗体重鎖と、完全長抗体重鎖のFc領域に会合するヒンジ領域を含む1つの抗体重鎖Fc領域ポリペプチド断片とを含む一価単一特異性抗体である、実施形態1~86のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0129】
88.修飾抗体がヒトIg重鎖定常領域に基づく、実施形態1~87のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0130】
89.修飾抗体が、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3又はヒトIgG4の重鎖定常領域に基づく、実施形態1~88のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0131】
90.修飾抗体が、ヒトIgG1重鎖ポリペプチドに基づき、配列番号1又は2に示すアミノ酸配列と75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上、又は最大100%同一の定常領域アミノ酸配列を有する、実施形態1~89のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0132】
91.修飾抗体が、ヒトIgG2重鎖ポリペプチドに基づき、配列番号3に示すアミノ酸配列と75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上、又は最大100%同一の定常領域アミノ酸配列を有する、実施形態1~89のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0133】
92.修飾抗体が、ヒトIgG3重鎖ポリペプチドに基づき、配列番号4に示すアミノ酸配列と75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上、又は最大100%同一の定常領域アミノ酸配列を有する、実施形態1~89のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0134】
93.修飾抗体が、ヒトIgG4重鎖ポリペプチドに基づき、配列番号5に示すアミノ酸配列と75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上、又は最大100%同一の定常領域アミノ酸配列を有する、実施形態1~89のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0135】
94.修飾抗体が、配列番号01
【表1】

【表2】

によって識別される1つ以上の位置に、又はその後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入され、
【表3】

によって識別される位置の1つにKalbTGに対する更なる第1の認識部位が挿入される場合にのみ、
【表4】

によって識別される位置の後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入される)のアミノ酸配列を有する抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~89のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0136】
95.修飾抗体が、配列番号02
【表5】

【表6】

によって識別される1つ以上の位置に、又はその後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入され、
【表7】

によって識別される位置の1つにKalbTGに対する更なる第1の認識部位が挿入される場合にのみ、
【表8】

によって識別される位置の後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入される)のアミノ酸配列を有する抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~89のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0137】
96.修飾抗体が、配列番号03
【表9】

【表10】

によって識別される1つ以上の位置に、又はその後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入され、
【表11】

によって識別される位置の1つにKalbTGに対する更なる第1の認識部位が挿入される場合にのみ、
【表12】

によって識別される位置の後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入される)のアミノ酸配列を有する抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~89のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0138】
97.修飾抗体が、配列番号04
【表13】

【表14】

によって識別される1つ以上の位置に、又はその後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入され、
【表15】

によって識別される位置の1つにKalbTGに対する更なる第1の認識部位が挿入される場合にのみ、
【表16】

によって識別される位置の後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入される)のアミノ酸配列を有する抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~89のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0139】
98.修飾抗体が、配列番号05
【表17】

【表18】

によって識別される1つ以上の位置に、又はその後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入され、
【表19】

によって識別される位置の1つにKalbTGに対する更なる第1の認識部位が挿入される場合にのみ、
【表20】

によって識別される位置の後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入される)のアミノ酸配列を有する抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~89のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0140】
99.修飾抗体が、配列番号8又は配列番号9又は配列番号34に示すアミノ酸配列と75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上又は最大100%同一である抗体重鎖定常領域アミノ酸配列を含む、実施形態1~98のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0141】
100.修飾抗体が配列番号8のアミノ酸配列を有する抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~99のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0142】
101.修飾抗体が配列番号9のアミノ酸配列を有する抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~99のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0143】
102.修飾抗体が配列番号34のアミノ酸配列を有する抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~99のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0144】
103.修飾抗体が、ヒトカッパ抗体又はラムダ抗体の軽鎖に基づき、配列番号6又は7に示すアミノ酸配列と75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上、又は最大100%同一の抗体軽鎖定常領域アミノ酸配列を有する、実施形態1~102のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0145】
104.修飾抗体が、配列番号10に示すアミノ酸配列と75%以上、例えば80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上、又は最大100%同一の定常領域アミノ酸配列を有する、実施形態1~89のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0146】
105.修飾抗体が、配列番号06
【表21】

【表22】

によって識別される1つ以上の位置に、又はその後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入されている)のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖定常領域を含む、実施形態1~104のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0147】
106.修飾抗体が、配列番号07
【表23】

【表24】

によって識別される1つ以上の位置に、又はその後に、KalbTGに対する第1の認識部位が挿入されている)のアミノ酸配列を有する抗体軽鎖定常領域を含む、実施形態1~104のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0148】
107.修飾抗体が、配列番号10に示すアミノ酸配列を有する抗体軽鎖定常領域を含む、実施形態1~106のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0149】
108.修飾抗体が、(i)配列番号6又は7のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を有する非修飾抗体軽鎖定常ドメイン、又は(ii)非修飾抗体重鎖定常領域が、配列番号1~5のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む、実施形態1~107のいずれか1つに記載の修飾抗体。
【0150】
109.修飾抗体が、
a)配列番号6又は7のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む非修飾抗体軽鎖定常ドメイン;及び
b)配列番号1~5のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はこれからなる修飾重鎖定常領域であって、KalbTGに対する少なくとも1つの認識部位が挿入されている、修飾抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~107のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0151】
110.修飾抗体が、
a)配列番号6又は7のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む修飾軽鎖定常ドメインであって、少なくとも1つのKalbTGに対する認識部位が挿入されている修飾抗体軽鎖定常ドメイン;及び
b)配列番号1~5のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる非修飾抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~107のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0152】
111.修飾抗体が、
a)配列番号6又は7のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む又はそれからなる抗体軽鎖定常ドメイン;及び
b)配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる修飾抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~107のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0153】
112.修飾抗体が、
a)配列番号6又は7のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む又はそれからなる抗体軽鎖定常ドメイン;及び
b)配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる修飾抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~107のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0154】
113.修飾抗体が、
a)配列番号6又は7のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む又はそれからなる抗体軽鎖定常ドメイン;及び
b)配列番号34のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる修飾抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~107のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0155】
114.修飾抗体が、
a)配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む又はそれからなる修飾抗体軽鎖定常ドメイン;及び
b)配列番号1~5のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~107のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0156】
115.修飾抗体が、
a)配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む又はそれからなる修飾抗体軽鎖定常ドメイン;及び
b)配列番号1~5のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~107のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0157】
116.修飾抗体が、
a)配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む又はそれからなる修飾抗体軽鎖定常ドメイン;及び
b)配列番号1~5のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~107のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0158】
117.修飾抗体が、
a)配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む又はそれからなる修飾抗体軽鎖定常ドメイン;及び
b)配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる修飾抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~107のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0159】
118.修飾抗体が、
a)配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む又はそれからなる修飾抗体軽鎖定常ドメイン;及び
b)配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる修飾抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~107のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0160】
119.修飾抗体が、
a)配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む又はそれからなる修飾抗体軽鎖定常ドメイン;及び
b)配列番号34のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる修飾抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~107のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0161】
120.修飾抗体が、
a)配列番号10のアミノ酸配列を含む修飾抗体軽鎖定常ドメイン;及び
b)配列番号8のアミノ酸配列を含む修飾抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~107のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0162】
121.修飾抗体が、
a)配列番号10のアミノ酸配列を含む修飾抗体軽鎖定常ドメイン;及び
b)配列番号9のアミノ酸配列を含む修飾抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~107のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0163】
122.修飾抗体が、
a)配列番号10のアミノ酸配列を含む修飾抗体軽鎖定常ドメイン;及び
b)配列番号34のアミノ酸配列を含む修飾抗体重鎖定常領域を含む、実施形態1~107のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0164】
123.修飾抗体が抗原に結合する、実施形態1~122のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0165】
124.修飾抗体が、血液脳関門の通過を可能にする構造に特異的に結合する、実施形態1~123のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0166】
125.修飾抗体が、受容体媒介性エンドサイトーシスを誘導する受容体に特異的に結合する、実施形態1~124のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0167】
126.修飾抗体が、ヒトトランスフェリン受容体1(TfR1)、ヒトインスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)、ヒト低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)及びヒト低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)からなる抗原群から選択される抗原に特異的に結合する、実施形態1~125のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0168】
127.修飾抗体が、ヒトトランスフェリン受容体1に特異的に結合する、実施形態1~126のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0169】
128.修飾抗体が、1つ又は2つの抗原に特異的に結合し、前記1つ又は2つの抗原が特定の細胞型に特異的である、実施形態1~127のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0170】
129.抗原の一方又は両方が、腫瘍細胞に特異的な腫瘍マーカーである、実施形態128記載の修飾抗体。
【0171】
130.細胞種が乳がん細胞である、実施形態128~129のいずれか一項に記載の修飾抗体。
【0172】
131.共有結合型コンジュゲートであって、
(i)実施形態1~130のいずれか一項に記載の修飾抗体と、
(ii)(i)の修飾抗体のKalbTGに対する1つ以上の第1の認識部位(複数可)に共有結合的にコンジュゲートされた1つ以上の非抗体ドメイン(複数可)と、を含み、
非抗体ドメインが、KalbTGに対する第2の認識部位を含む、共有結合型コンジュゲート。
【0173】
132.非抗体ドメインが、治療実体と、任意に第2のリンカーを含む治療部分である、実施形態131に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0174】
133.非抗体ドメインが、
(i)治療実体と、
(ii)修飾抗体に存在する第1の認識部位に相補的なKalbTGに対する第2の認識部位、すなわち、修飾抗体がQタグを含む場合、非抗体ドメインはKタグを含むか、又はその逆であり、特に、第2の認識部位はLys含有モチーフ、特に配列RYESK(配列番号16)(Kタグ)を含むか、又は有する、KalbTGに対する第2の認識部位と、
(iii)任意に、治療実体と第2の認識部位との間の第2のリンカーとを含む、実施形態131又は132に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0175】
134.KalbTGに対する第2の認識部位が、ペプチド配列RYESK(配列番号16)と少なくとも80%の配列同一性を有するKタグである、実施形態131~133のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0176】
135.治療実体が核酸である、実施形態131~134のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0177】
136.治療実体がDNA若しくはRNA、又はそれらの混合物である、実施形態131~135のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0178】
137.治療実体が非コードRNA分子である、実施形態131~136のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0179】
138.治療実体が、15~24塩基対長の非コードRNA分子である、実施形態131~137のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0180】
139.治療実体が、1つ以上のロックド核酸(LNA)残基を含む、実施形態131~138のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0181】
140.治療実体が、DNA又はRNA残基と混合されたLNAオリゴヌクレオチドである、実施形態131~139のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0182】
141.治療実体がsiRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドである、実施形態131~140のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0183】
142.治療実体が、LNAヌクレオチド、毒素、有機小分子及び免疫調節因子を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む群から選択される、実施形態131~141のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0184】
143.有機小分子が2,500ダルトン以下の分子量を有する、実施形態142に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0185】
144.有機小分子が1,000ダルトン以下の分子量を有する、実施形態142~143のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0186】
145.第2のリンカーが、アルキルリンカー又はポリエチレンリンカー又はペプチドリンカー又はそれらの混合物である、実施形態131~144のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0187】
146.第2のリンカーがエチレングリコール単位を含む、実施形態131~145のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0188】
147.第2のリンカーが約2~50個のエチレングリコール単位を含む、実施形態131~146のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0189】
148.第2のリンカーが脂肪族炭素鎖を含む、実施形態131~147のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0190】
149.第2のリンカーが、非置換又は置換C1~6アルキルを含み得、置換C1~6アルキルの場合、置換基が、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、カルボニルアルコキシ、アシルアミノ、アミノ、アミノアシル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シアノ、アジド、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、チオール、チオアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、アミノスルホニル、スルホニルアミノ、スルホニル及びオキソからなる群から選択される、実施形態131~148のいずれか一項に記載に共有結合型コンジュゲート
【0191】
150.第2のリンカーがペプチドリンカーである、実施形態131~145のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0192】
151.コンジュゲートが実施形態131~130のいずれか一項に記載の修飾抗体と1つ以上治療用核酸とを含み、各治療用核酸がイソペプチド結合を介して単一のQタグに連結されており、任意に、第2のリンカーを介してKタグの末端残基にアミド結合している、実施形態1~150のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0193】
152.1つ以上の治療用核酸(複数可)がアンチセンスオリゴヌクレオチド(複数可)である、実施形態151に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0194】
153.第2のリンカーが1つ以上のエチレングリコール単位を含む、実施形態151~152のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0195】
154.非抗体ドメインが、脳疾患を処置又は予防するためのRNA又はLNAと、任意にPEGリンカーとを含む治療実体を含む、実施形態131~153のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0196】
155.脳疾患がパーキンソン病又はアルツハイマー病である、実施形態154に記載の共有結合型コンジュゲート。
【0197】
156.方法が、
a)実施形態1~130のいずれか一項に記載の修飾抗体を提供することと、
b)非抗体ドメインを提供することであって、非抗体ドメインが、(i)治療実体、(ii)(i)の下で提供される修飾抗体に存在する第1の認識部位に相補的なKalbTGに対する第2の認識部位、及び(iii)任意に、治療実体とKalbTGに対する第2の認識部位との間の第2のリンカーを含む、非抗体ドメインを提供することと、
c)a)の修飾抗体及びb)の非抗体ドメインを、KalbTG又はその機能的に活性なバリアント若しくは断片の存在下でインキュベートすることであって、それによりKalbTGに対する第1の認識部位と第2の認識部位との間にイソペプチド結合を形成し、
それにより、修飾抗体を治療実体にコンジュゲートする、インキュベートすることと、を含む、実施形態1~130のいずれか一項に記載の修飾抗体を治療実体に共有結合的にコンジュゲートする方法。
【0198】
157.工程c)が、KalbTGの活性を助長する条件下で行われる、実施形態156に記載の方法。
【0199】
158.KalbTGに対する第1の認識部位がアミノ酸配列YRYRQ(配列番号17)を有する、実施形態156~157のいずれか一項に記載の方法。
【0200】
159.KalbTGに対する第2の認識部位のアミノ酸配列が、RYESK(配列番号16)である、実施形態156~158のいずれか一項に記載の方法。
【0201】
160.KalbTGが、アミノ酸配列(3文字表記)を含む、実施形態1~159のいずれか一項に記載の修飾抗体、修飾Fc領域、共有結合型コンジュゲート及び方法。
【表25】
【0202】
161.実施形態131~155及び160のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲートを含む、医薬組成物。
【0203】
162.医薬として使用するための、実施形態131~155及び160のいずれか一項に記載の共有結合型コンジュゲート、又は実施形態156~160のいずれか一項に記載の方法に従って製造される共有結合型コンジュゲート。
【0204】
163.使用が、神経疾患又は脳疾患又はがんを処置するものである、実施形態162に記載の使用。
【0205】
164.神経疾患が、神経障害、神経変性疾患、がん、眼疾患障害、発作障害、リソソーム蓄積症、アミロイドーシス、ウイルス性又は微生物性疾患、虚血、行動障害、CNS炎症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、脳転移を伴うCD20陽性がん、及び脳転移を伴うHER2陽性がんからなる群から選択される、実施形態162~163のいずれか一項に記載の使用。
【0206】
165.神経疾患が、ニューロパチー障害、神経変性疾患、がん、眼疾患障害、発作障害、リソソーム蓄積症、アミロイドーシス、ウイルス性又は微生物性疾患、虚血、行動障害、及びCNS炎症から選択される、実施形態162~164のいずれか一項に記載の使用。
【0207】
166.使用が、アルツハイマー病又はパーキンソン病又は乳がんを処置するためのものである、実施形態162~165のいずれか一項に記載の使用。
【0208】
167.実施形態1~130のいずれか一項に記載の修飾抗体をコードする、核酸又は核酸組成物。
【0209】
168.実施形態167に記載の核酸又は核酸組成物を含む、細胞。
【0210】
169.実施形態1~130のいずれか一項に記載の修飾抗体の製造方法であって、
-実施形態168に記載の細胞を培養する工程、
-細胞又は/及び培養培地から修飾抗体を回収し、それにより、実施形態1~130のいずれか1つに記載の修飾抗体を産生する工程を含む、方法。
【0211】
170.細胞が哺乳動物細胞である、実施形態169に記載の方法。
【0212】
171.細胞がCHO細胞である、実施形態169~170のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0213】
本発明は、少なくとも部分的には、QタグをIgG1抗体等の抗体内の全ての部位に組み込むことができず、ペイロードへのコンジュゲーションに付随する適合性を有するという知見に基づく。抗体定常ドメイン領域を、KalbTGを介したコンジュゲーションについてスクリーニングした。これに関連して、KalbTG Qタグを、ヒトIgG1重鎖及び軽鎖定常領域内の表面露出ドメイン間及びドメイン内のフレキシブルループ並びにそれぞれの重鎖及び軽鎖のC末端に挿入した。合計で、IgG1重鎖及び軽鎖内の9つの異なる部位を試験した。KalbTG Q-tagモチーフは、アミノ酸配列GGGS-YRYRQ-GGGS(配列番号25)として2つのフレキシブルリンカーの間/内に間隔を置いて挿入された。知見の一般的な適用可能性を示すために、更に、異なる結合特異性の5つの抗体(mAb-1~mAb-5)を試験した。単一のKalbTG認識部位挿入を有するこれらの分子を、それらの発現率について評価した。結果を実施例及び表1に示す。
【表26】
【0214】
挿入部位に応じて発現力価が変化した、すなわち減少した、又は更に改善されたことが分かるが、これは完全に予想外であった。
【0215】
修飾抗体を、KalbTGによる酵素的修飾のためのQタグのコンジュゲーション及びアクセス可能性について更に試験した。2つの異なるペイロード、小分子(蛍光色素)及び小さな一本鎖核酸を試験した。抗体が対称性である場合、すなわち2つの同一の重鎖対及び軽鎖対を含む場合、分子あたり2つのQタグが存在した。抗体が非対称である場合、すなわち2つの異なる重鎖対及び軽鎖対を含む場合、分子当たり単一のQタグが存在した。したがって、対称抗体については100%のコンジュゲーション効率で2の薬物対抗体比(DAR、すなわち抗体分子あたりのペイロード分子の数)が予想され、非対称抗体については100%のコンジュゲーション効率で1のDARが予想された。mAb-5の場合の蛍光色素についての結果を表2に示す。
【表27】
【0216】
mAb-1及び2の場合は15ヌクレオチド長、mAb-4の場合は20ヌクレオチド長の一本鎖核酸の結果を表3に示す(HIC及びUV-visによって決定)。
【表28】
【0217】
Mab-1及びmAb-2を一段階法でコンジュゲート化した、mAb-4を2段階法でコンジュゲートした(クリックケミストリーを使用して、最初にKタグ、次いでKタグを核酸にコンジュゲートした)。それにより、本発明による抗体を使用する本発明による方法の一般的な適用性が示され、すなわち、本方法は、抗体の結合特異性並びにペイロードをKタグにコンジュゲートするために使用される技術とは無関係である、すなわち、直接的又は逐次的のいずれかである。
【0218】
一例としてmAb-2の場合、5つの異なるQタグ、RYGQR(配列番号11)、RWRQR(配列番号12)、YRQRT(配列番号13)、IRQRQ(両方のQを修飾することができる;配列番号14)及びFRYRQ(配列番号15)がそれぞれ3つの異なる位置、すなわちHC297、HC446及びLC143に導入されている。発現収率(1L、μg/mL)及びコンジュゲーション(後方;HIC/UV-vis)の結果を表4に示す。
【表29】
【0219】
さらに、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)による、それぞれ15ヌクレオチド及び20ヌクレオチドからなる一本鎖核酸にコンジュゲートさせた修飾抗体の生物物理学的特徴付けを行った。これを、mAb-2(15ヌクレオチド)について表5及び図1に例示的に示す。親水性マーカーの保持時間は9.25分であり、疎水性マーカーの相対保持時間は25.9分であった(mAb-2)。
【表30】
【0220】
したがって、本発明者らは、発現収率に悪影響を及ぼさず、酵素のアクセス可能性を可能にする/提供する、IgG骨格の長さに及ぶいくつかのKalbTG Qタグ挿入部位の同定に成功した。
【0221】
したがって、Qタグの発現収率及び酵素的アクセス可能性に関する適切な挿入部位は、軽鎖の位置110(LC110)、143(LC143)及び214(LC214)並びに重鎖の位置118(HC118)、177(HC177)、297(HC297)、341(HC341)及び401(HC401)である(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)。
【0222】
さらに、ヒトFcRnトランスジェニックマウスを使用したin vivo分析による、1つ又は2つの一本鎖核酸にそれぞれコンジュゲートさせた修飾抗体の薬物動態パラメーターを作成した。これらの結果を表6に示す。
【表31】
【0223】
したがって、QタグのPK特性に関する好ましい挿入部位は、軽鎖の位置214(LC214)並びに重鎖の位置177(HC177)及び297(HC297)にある(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)。
【0224】
したがって、第1の態様では、本発明は、重鎖及び軽鎖を含む修飾抗体に関し、重鎖又は/及び軽鎖は、軽鎖の位置110(LC110)、位置143(LC143)及び位置214(LC214)、並びに重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)から選択される1つ以上の位置(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)にあるか、又はこれらの位置の後に挿入された、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つ以上の(第1の)認識部位(複数可)を含む。したがって、本発明の修飾抗体では、KalbTGの認識部位は、Ig重鎖ポリペプチドの定常領域の内部に位置し、すなわちいかなる末端にも、又は/及びIg軽鎖定常ドメインの内部若しくはC末端にも位置しない。さらに、本発明の修飾抗体は、重鎖の位置446(HC446)、すなわちC末端にKalbTGの更なる第1の認識部位を含んでいてもよい。ある位置にKalbTGの認識部位を挿入するという関連では、非修飾配列中のその位置に存在するアミノ酸が認識部位によって置き換えられるか、又は認識部位が好ましくはその位置の後に更に挿入されることを意味する。
【0225】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、1つ以上の位置は、軽鎖の位置214(LC214)、並びに重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)及び位置341(HC341)を含む位置の群から選択される(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)。
【0226】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、1つ以上の位置は、軽鎖の位置214(LC214)、並びに重鎖の位置341(HC341)、位置297(HC297)及び位置177(HC177)を含む位置の群から選択される(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)。
【0227】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、1つ以上の位置は、軽鎖の位置214(LC214)、並びに重鎖の位置297(HC297)及び位置177(HC177)を含む位置の群から選択される(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)。
【0228】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、本発明による修飾抗体は2つの同一の重鎖又は重鎖Fc領域を含む。更なる実施形態では、そのような修飾抗体は、軽鎖の位置110(LC110)、位置143(LC143)及び位置214(LC214)、並びに重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)から選択される1つ以上の位置に、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)(KalbTG)由来のトランスグルタミナーゼに対する2つ、4つ又はそれを超える(第1の)認識部位(複数可)を含む(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)。
【0229】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、本発明による修飾抗体が2つの異なる重鎖を含み、それにより、差異がヘテロ二量体化を誘導するためのそれぞれの突然変異から生じる。更なる実施形態では、そのような修飾抗体は、軽鎖の位置110(LC110)、位置143(LC143)及び位置214(LC214)、並びに重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)から選択される1つ以上の同一又は異なる位置に、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)(KalbTG)由来のトランスグルタミナーゼに対する1つ、2つ又はそれを超える(第1の)認識部位(複数可)を含む(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)。
【0230】
同様に、本発明は、重鎖Fc領域を含む修飾抗体Fc領域に関し、重鎖Fc領域は、重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)、位置341(HC341)及び位置401(HC401)を含む位置の群から選択される1つ以上の位置にあるか、又はこれらの位置の後に挿入された、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つ以上の(第1の)認識部位(複数可)を含む(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)。したがって、本発明の修飾抗体Fc領域では、KalbTGの認識部位は、Ig重鎖Fc領域ポリペプチドの定常領域の内部に位置し、すなわちいかなる末端にも位置しない。さらに、本発明の修飾抗体Fc領域は、重鎖の位置446(HC446)、すなわちC末端にKalbTGの更なる第1の認識部位を含んでいてもよい。ある位置にKalbTGの認識部位を挿入するという関連では、非修飾配列中のその位置に存在するアミノ酸が認識部位によって置き換えられるか、又は認識部位が好ましくはその位置の後に更に挿入されることを意味する。
【0231】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、1つ以上の位置は、重鎖の位置118(HC118)、位置177(HC177)、位置297(HC297)及び位置341(HC341)を含む位置の群から選択される(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)。
【0232】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、1つ以上の位置は、重鎖の位置341(HC341)、位置297(HC297)及び位置177(HC177)を含む位置の群から選択される(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)。
【0233】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、1つ以上の位置は、重鎖の位置297(HC297)及び位置177(HC177)を含む位置の群から選択される(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)。
【0234】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との少なくとも1つの(同族)対を含み、重鎖は、重鎖の位置297(HC297)にあるクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)。
【0235】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との少なくとも1つの(同族)対を含み、重鎖は、重鎖の位置177(HC177)にあるクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)。
【0236】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との少なくとも1つの(同族)対を含み、軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)にあるクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(アミノ酸ナンバリングはKabatのナンバリングスキームに従う)。
【0237】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との少なくとも1つの(同族)対を含み、重鎖は、重鎖の位置297(HC297)及び位置177(HC177)にあるクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する2つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)。
【0238】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との少なくとも1つの(同族)対を含み、重鎖は、重鎖の位置297(HC297)にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含み(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)、軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(アミノ酸ナンバリングはKabatのナンバリングスキームに従う)。
【0239】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との少なくとも1つの(同族)対を含み、重鎖は、重鎖の位置177(HC177)にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含み(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)、軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(アミノ酸ナンバリングはKabatのナンバリングスキームに従う)。
【0240】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との少なくとも1つの(同族)対を含み、重鎖は、重鎖の位置177(HC177)及び位置297(HC297)にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する2つの(第1の)認識部位(複数可)を含み(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)、軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(アミノ酸ナンバリングはKabatのナンバリングスキームに従う)。
【0241】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との2つの(同族)対を含み、第1の対の重鎖は、重鎖の位置297(HC297)にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含み(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)、第2の対の軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(アミノ酸ナンバリングはKabatのナンバリングスキームに従う)。
【0242】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との2つの(同族)対を含み、第1の対の重鎖は、重鎖の位置177(HC177)にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含み(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)、第2の対の軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(アミノ酸ナンバリングはKabatのナンバリングスキームに従う)。
【0243】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との2つの(同族)対を含み、第1の対の重鎖は、重鎖の297(HC297)位にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)(KalbTG)由来のトランスグルタミナーゼに対する(第1の)認識部位(複数可)を含み(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)、第2の対の重鎖は、重鎖の177(HC177)位にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)(KalbTG)由来のトランスグルタミナーゼに対する(第1の)認識部位(複数可)を含み(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)、第2の対の軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する(第1の)認識部位(複数可)を含む(アミノ酸ナンバリングはKabatのナンバリングスキームに従う)。
【0244】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との2つの(同族)対を含み、第1の対の重鎖は、重鎖の177(HC177)位にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)(KalbTG)由来のトランスグルタミナーゼに対する(第1の)認識部位(複数可)を含み(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)、第2の対の重鎖は、重鎖の297(HC297)位にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)(KalbTG)由来のトランスグルタミナーゼに対する(第1の)認識部位(複数可)を含み(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)、第2の対の軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する(第1の)認識部位(複数可)を含む(アミノ酸ナンバリングはKabatのナンバリングスキームに従う)。
【0245】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、抗体重鎖と抗体軽鎖との2つの(同族)対を含み、第1の対の重鎖は、重鎖の位置297(HC297)及び位置177(HC177)にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する2つの(第1の)認識部位(複数可)を含み(アミノ酸ナンバリングはKabatのEUナンバリングスキームに従う)、第2の対の軽鎖は、軽鎖の位置214(LC214)にクツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)に対する1つの(第1の)認識部位(複数可)を含む(アミノ酸ナンバリングはKabatのナンバリングスキームに従う)。
【0246】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)の認識部位(複数可)が、その位置の直後に挿入される。特定の実施形態では、クツネリア・アルビダ(Kutzneria albida)由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)の認識部位(複数可)は、2つのフレキシブルリンカーの間に挿入される。特定の実施形態では、クツネリア・アルビダKutzneria albida由来のトランスグルタミナーゼ(KalbTG)の認識部位(複数可)は、アミノ酸配列GGGSYRYRQGGGS(配列番号25)を有する。
【0247】
「抗体」及び「Ig」という用語は、本明細書では互換的に使用される。それらは最も広い意味で使用され、例えば、結合特異性とは無関係のモノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、中和抗体、完全長又はインタクトなモノクローナル抗体を含む)、一価抗体、(例えば1つのFabを欠く完全長抗体)、多価抗体、すなわち二価又は四価の多重特異性抗体である抗体、及び上に概説した修飾の少なくとも1つを含む限り、完全長抗体の断片を含む。
【0248】
天然に存在する抗体は、重鎖のみ(例えば、重鎖のみのVHH抗体)、又は重鎖及び軽鎖(例えば野生型IgG抗体)のアセンブリによって生成される。各重鎖は、4つのドメイン:可変ドメイン(VH)及び3つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3)で構成される。これらはフレキシブルヒンジ領域によって接続されている。軽鎖は、可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)で構成される。重鎖及び軽鎖が存在する場合、軽鎖は同族の重鎖、すなわちVHドメイン及びCH1ドメインを含む重鎖のFab断片と対合して、抗体の結合部位を形成する。関連する軽鎖及び重鎖Fab断片を合わせてFab断片と表記する。重鎖CH2及びCH3ドメインを合わせて、抗体重鎖Fc領域ポリペプチドと表記する。1つの抗体重鎖Fc領域ポリペプチドは、例えば第2の抗体重鎖からの追加の抗体重鎖Fc領域ポリペプチドと二量体化してFc領域を形成する。Fc領域は、フレキシブルヒンジ領域を介してFab断片(複数可)に接続される。したがって、特定の実施形態では、抗体重鎖Fc領域ポリペプチドは、CH2及びCH3ドメインに加えて、ヒンジ領域の全部又は一部を更に含む。ヒンジ領域は、2つの抗体重鎖Fc領域ポリペプチドを互いに共有結合的に連結するいくつかのジスルフィド架橋を含む。Fab断片では、軽鎖と重鎖のFab断片も1つのジスルフィド架橋によって接続されている。しかしながら、接続性はIgGサブクラス間で異なる。全長IgGの全体構造はY字形に似ており、Fc領域が塩基を形成し、2つのFab断片がアームを形成し、抗原への結合に利用可能である。
【0249】
可変ドメイン内には、相補性決定領域(CDR)と呼ばれるループが存在する。これらは主に、抗体とその抗原との直接相互作用を担う。これらのCDRにおけるアミノ酸の数の著しい変動のために、可変領域について複数のナンバリングスキームが存在する。本明細書において使用される場合、重鎖及び軽鎖の全ての定常領域及びドメインのアミノ酸位置は、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)において説明されるKabatナンバリングシステムによりナンバリングされ、本明細書では「Kabatに従うナンバリング」と称される。具体的には、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)のKabatナンバリングシステム(647~660ページを参照)は、カッパアイソタイプ及びラムダアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLに使用され、Kabat EUインデックスナンバリングシステム(661~723ページを参照)は、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2及びCH3であって、本明細書では、この場合には、「ナンバリングはKabat EUインデックスに従う」と称することによって更に明確にしている)に使用される。
【0250】
本明細書で使用される場合、「修飾抗体」という用語は、(所望の部位に)少なくとも1つの(人工)内部Qタグを含む本発明による抗体又は抗体Fc領域を示す。修飾抗体には、合成抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ(抗id)抗体、重鎖のみの抗体及びその機能的断片が含まれるが、これらに限定されない。「機能的断片」という用語は、断片が由来する抗体の抗原結合活性の一部又は全部を保持するインタクトな抗体の一部を指す。抗体の機能的断片の非限定的な例としては、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab)2断片、F(ab’)2断片等が挙げられる。特に、本発明による修飾抗体は、本発明による修飾が存在する限り、抗体分子及び抗体分子の免疫学的に活性な部分、例えば抗原結合ドメイン又は抗原に結合する抗原結合部位を含む分子(例えば、1つ以上の超える相補性決定領域(CDR))を含む。本明細書で提供される修飾抗体は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY、特定の実施形態ではIgG)、任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2、好ましい一実施形態ではIgG1)、又は任意のサブクラス(例えば、IgG2a及びIgG2b)のものであり得る。抗体は、ヒト化、キメラ及び/又は親和性成熟、並びに他の種、例えばマウス、ウサギ及びヒツジ由来の抗体であり得る。
【0251】
本発明によれば、特定の実施形態では、修飾抗体は、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含む。したがって、特定の実施形態では、修飾抗体は、1つ又は2つ又は3つ又は4つのFab断片を含む。特定の実施形態では、修飾抗体は、同族軽鎖-重鎖対(1つの結合部位を含む)を形成する1つの(完全長)軽鎖及び1つの(完全長)重鎖と、(完全長)重鎖のFc領域に関連するヒンジ領域を含む1つの重鎖Fc領域断片とを含む一価単一特異性抗体である。
【0252】
本発明によれば、特定の実施形態では、修飾抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体、特にヒト化、マウス、ウサギ、又はヒツジ抗体に基づくことができる。例示的かつ適切な配列を以下に示し、
【表32】

の注釈では、「X」はアミノ酸残基/位置を示し、
【表33】

はQタグモチーフの挿入部位(リンカー配列あり又はなし)を示す:
【表34】

【表35】

【表36】

【表37】

【表38】
【0253】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明による修飾抗体の重鎖定常領域は、ヒトIg重鎖定常領域、例えば、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3又はヒトIgG4重鎖定常領域に基づく。特定の実施形態では、重鎖定常領域は、本発明による少なくとも1つのQタグを含む。
【0254】
特定の実施形態では、本発明による修飾抗体の基となり得るヒトIgG1重鎖ポリペプチドは、配列番号1又は2に示すアミノ酸配列と75%以上、例えば80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上及び最大100%同一である定常領域アミノ酸配列を含む。本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、本発明による修飾抗体はIgG1抗体に基づくものであり、したがって、修飾/バリアントIgG1抗体である。特定の実施形態では、本発明による修飾抗体の基となり得るヒトIgG2重鎖ポリペプチドは、配列番号3に示すアミノ酸配列と75%以上、例えば80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上及び最大100%同一である定常領域アミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、本発明による修飾抗体の基となり得るヒトIgG3重鎖ポリペプチドは、配列番号4に示すアミノ酸配列と75%以上、例えば80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上及び最大100%同一である定常領域アミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、本発明による修飾抗体の基となり得るヒトIgG4重鎖ポリペプチドは、配列番号5に示すアミノ酸配列と75%以上、例えば80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上及び最大100%同一である定常領域アミノ酸配列を含む。
【0255】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、本発明による修飾抗体が、本発明による挿入されたKalbTG認識部位に加えて、以下の更なる変異(ナンバリングはKabatに従う)を含む:
a)両Fc領域ポリペプチド中のL234A、L235A;
b)両Fc領域ポリペプチド中のP329G;
c)一方のFc領域ポリペプチド中のT366W、及び他方のFc領域ポリペプチド中のT366S、L368A、Y407V;
d)一方のFc領域ポリペプチド中のS354C、及び他方のFc領域ポリペプチド中のY349C;
e)a)及びb);
f)a)及びb)及びc);又は
g)a)及びb)及びc)及びd)。
【0256】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、本発明による修飾抗体は、第1のFc領域ポリペプチドにおいて変異L234A、L235A、P329G、T366Wを含み、第2のFc領域ポリペプチドにおいて変異L234A、L235A、P329G、T366S、L368A、Y407Vを含む。本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、修飾抗体は、第1のFc領域ポリペプチド中に変異S354C及びY349Cの一方を更に含み、第2のFc領域ポリペプチド中に他方を更に含む。
【0257】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、本発明による修飾抗体は、ヒト重鎖ポリペプチドに基づいており、配列番号8又は配列番号9又は配列番号34に示すアミノ酸配列と75%以上、例えば80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上及び最大100%同一である定常領域アミノ酸配列を有する。
【0258】
【表39】
【0259】
本発明によれば、本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、修飾抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体、特に軽鎖定常ドメインを更に含むヒト化抗体に基づくものであり得る。本発明による修飾された軽鎖定常ドメインの例示的かつ適切な配列を以下に示し、
【表40】

の注釈において、「X」はアミノ酸残基/位置を示し、
【表41】

はQタグモチーフの挿入部位を示す(リンカー配列あり又はなし):
【表42】
【0260】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、本発明による修飾抗体の基となり得るヒト軽鎖ポリペプチドは、配列番号6又は7に示すアミノ酸配列と75%以上、例えば80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上及び最大100%同一である定常領域アミノ酸配列を含む。
【0261】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、本発明による修飾抗体のヒト軽鎖ポリペプチドは、配列番号10:
【表43】

に示すアミノ酸配列と75%以上、例えば80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、99%以上及び最大100%同一の定常領域アミノ酸配列を有する。
【0262】
好ましくは、非修飾軽鎖定常ドメインは、配列番号6又は7のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか、又は該非修飾重鎖定常領域は、配列番号1~5のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0263】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、本発明による修飾抗体は、
a)配列番号6又は7のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む非修飾軽鎖定常ドメイン;及び
b)配列番号1~5のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はこれからなる修飾重鎖定常領域であって、KalbTGに対する少なくとも1つの認識部位が挿入されている、修飾重鎖定常領域を含む。
【0264】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、本発明による修飾抗体は、
a)配列番号6又は7のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含む修飾軽鎖定常ドメインであって、少なくとも1つのKalbTG認識部位が挿入されている修飾軽鎖定常ドメイン;及び
b)配列番号1~5のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる非修飾重鎖定常領域を含む。
【0265】
また好ましくは、軽鎖定常ドメインは、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか若しくはこれからなるか、又は該重鎖定常領域が、配列番号8又は9又は34のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか若しくはこれからなる。
【0266】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、本発明による修飾抗体は、a)配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はこれからなる軽鎖定常ドメインを含み、b)配列番号8又は9又は34のアミノ酸配列と少なくとも96%、97%、98%又は99%、特に100%同一であるアミノ酸配列を含むか又はこれからなる修飾重鎖定常領域を含む。
【0267】
上に詳述したように、本発明による修飾抗体は、二重特異性抗体又は多重特異性抗体であり得る。例示的な二重特異性抗体又は多重特異性抗体としては、以下のものが挙げられる:
-ドメイン交換を伴う全長抗体:
第1のFab断片及び第2のFab断片を含む多重特異性IgG抗体であって、第1のFab断片において、
a)CH1及びCLドメインのみが互いに置き換えられている(すなわち、第1のFab断片の軽鎖はVL及びCH1ドメインを含み、第1のFab断片の重鎖はVH及びCLドメインを含む);
b)VH及びVLドメインのみが互いに置き換えられている(すなわち、第1のFab断片の軽鎖はVH及びCLドメインを含み、第1のFab断片の重鎖はVL及びCH1ドメインを含む);又は
c)CH1とCLドメインが互いに置き換えられ、VH及びVLドメインが互いに置き換えられている(すなわち、第1のFab断片の軽鎖はVH及びCH1ドメインを含み、第1のFab断片の重鎖はVL及びCLドメインを含む);及び
第2のFab断片が、VL及びCLドメインを含む軽鎖と、VH及びCH1ドメインを含む重鎖とを含み、
ドメイン交換を伴う全長抗体は、CH3ドメインを含む第1の重鎖及びCH3ドメインを含む第2の重鎖を含み得、両方のCH3ドメインは、第1の重鎖及び修飾された第2の重鎖のヘテロ二量体化を支援するために、それぞれのアミノ酸置換によって相補的に操作される;
-ドメイン交換及び追加の重鎖C末端結合部位を有する完全長抗体:
多重特異性IgG抗体であって、
a)完全長抗体軽鎖と完全長抗体重鎖のそれぞれ2対を含む1つの完全長抗体であって、完全長重鎖と完全長軽鎖のそれぞれの対により形成される結合部位が、第1の抗原に特異的に結合する、1つの完全長抗体と、
b)追加のFab断片であって、完全長抗体の1つの重鎖のC末端に融合されており、追加のFab断片の結合部位が第2の抗原に特異的に結合する、追加のFab断片とを含み、
第2の抗原に特異的に結合する追加のFab断片が、i)a)軽鎖可変ドメイン(VL)と重鎖可変ドメイン(VH)が互いに置き換えられている、又はb)軽鎖定常ドメイン(CL)と重鎖定常ドメイン(CH1)が互いに置き換えられているようなドメインクロスオーバーを含み、又はii)一本鎖Fab断片である、多重特異性IgG抗体;
-1アーム一本鎖フォーマット(=1アーム一本鎖抗体):
第1のエピトープ又は抗原に特異的に結合する第1の結合部位と、第2のエピトープ又は抗原に特異的に結合する第2の結合部位とを含む抗体であって、個々の鎖は以下の通りである:
-軽鎖(可変軽鎖ドメイン+軽鎖カッパ定常ドメイン)
-軽鎖/重鎖の組み合わせ(可変軽鎖ドメイン+軽鎖定常ドメイン+ペプチドリンカー+可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+CH3 ノブ変異あり)
-重鎖(可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+CH3 ホール変異あり);
-2アーム一本鎖フォーマット(=2アーム一本鎖抗体):
第1のエピトープ又は抗原に特異的に結合する第1の結合部位と、第2のエピトープ又は抗原に特異的に結合する第2の結合部位とを含む抗体であって、個々の鎖は以下の通りである:
-軽鎖/重鎖1の組み合わせ(可変軽鎖ドメイン+軽鎖定常ドメイン+ペプチドリンカー+可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+CH3 ホール変異あり)
-軽鎖/重鎖2の組み合わせ(可変軽鎖ドメイン+軽鎖定常ドメイン+ペプチドリンカー+可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+CH3 ノブ変異あり);
-一般的な軽鎖二重特異性フォーマット(=一般的な軽鎖二重特異性抗体):
第1のエピトープ又は抗原に特異的に結合する第1の結合部位と、第2のエピトープ又は抗原に特異的に結合する第2の結合部位とを含む抗体であって、個々の鎖は以下の通りである:
-軽鎖(可変軽鎖ドメイン+軽鎖定常ドメイン)
-重鎖1(可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+CH3 ホール変異あり)
-重鎖2(可変重鎖ドメイン+CH1+ヒンジ+CH2+CH3 ノブ変異あり)。
【0268】
「特異的に結合する」という用語は、抗体が少なくとも10-8mol/lの解離定数(=KDiss)でその同族抗原と相互作用することを示す。したがって、「特異的に結合する」という用語は、10-8mol/l以下の解離定数(=KDiss)を有する抗体のその同族抗原への結合を意味する。「特異的に結合しない(not specifically binding)」又は「特異的に結合しない(does not specifically bind)」という用語は、最大10-7mol/l以上、すなわち、例えば10-5mol/lの解離定数(=KDiss)での非関連抗原への抗体の結合を示す。同時に、「特異的に結合しない」という特性は、それぞれの非関連抗原に対して10-7mol/l以下のKDissによって保証される。特定の実施形態では、抗原に特異的に結合する抗体は、その同族抗原に対するその反応性と、無関係の抗原に対するその反応性との間に少なくとも100倍のKDiss-ギャップを有するであろう。
【0269】
抗体、特にKDissの結合特性は、BIAcore(登録商標)装置によって評価することができる。この方法では、結合特性は、表面プラズモン共鳴(SPR)の変化によって評価される。調査中の抗体を固相(チップと呼ばれる)に結合させ、問題の抗原をこの被覆チップに適用することによってその結合を評価することが簡便である。
【0270】
本明細書で使用される場合、対応する重鎖ドメイン及び軽鎖ドメインに関して「互いに置き換えられた」という用語は、上述のドメインクロスオーバーを指す。そのため、CH1及びCLドメインが「互いに置き換えられた」場合、該用語は、項目(i)の下で言及されたドメインクロスオーバー、並びに結果として生じる重鎖及び軽鎖ドメイン配列を指す。したがって、VH及びVLが「互いに置き換えられた」場合、該用語は、項目(ii)の下で言及されたドメインクロスオーバーを指し、またCH1及びCLドメインが「互いに置き換えられ」、かつVH及びVLドメインが「互いに置き換えられた」場合、該用語は、項目(iii)の下で言及されたドメインクロスオーバーを指す。
【0271】
多重特異性抗体はまた、特定の実施形態では、上記の項目(i)で述べたCH1及びCLドメインのドメインクロスオーバー、又は上記の項目(ii)で述べたVH及びVLドメインのドメインクロスオーバー、又は上記の項目(iii)で述べたVH-CH1及びVL-VLドメインのドメインクロスオーバーのいずれかを含む、少なくとも1つのFab断片を含む。ドメインクロスオーバーを伴う多重特異性抗体の場合、同じ抗原(複数可)に特異的に結合するFabは、同じドメイン配列であるように構築される。そのため、ドメインクロスオーバーを伴う1つを超えるFabが多重特異性抗体に含まれる場合、前記Fab(複数可)は同じ抗原に特異的に結合する。
【0272】
「抗原」という用語は、抗体が選択的に結合することができる所定の標的を指す。抗原は、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン若しくはその断片、又は他の天然に存在する若しくは合成化合物であり得る。特定の実施形態では、抗原はポリペプチドである。別の実施形態では、抗原は治療に関連する。更に別の実施形態では、抗原は、体内の特定の領域、例えば特定の器官若しくは細胞型又は疾患領域に特異的であるか、又は送達を可能にする。これは、受容体又は腫瘍マーカー等の細胞の表面上の特定の構造であり得る。本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、抗原はヒトトランスフェリン受容体である。
【0273】
好ましくは、(i)抗体は、重鎖及び/及び軽鎖の各々の2つのペアを含み、重鎖又は/及び軽鎖の各々が1つ以上の第1の認識部位を含むか、又は(ii)抗体は、重鎖及び軽鎖の各々の2つのペアを含み、重鎖又は/及び軽鎖の一方が1つ以上の第1の認識部位を含むか、又は(iii)抗体は、重鎖及び軽鎖の1つのペア及び1つの追加の重鎖Fc領域を含み、重鎖又は/及び重鎖Fc領域断片、又は軽鎖は1つ以上の第1の認識部位を含む。
【0274】
本発明によれば、修飾抗体は、重鎖ポリペプチド及び/又は軽鎖ポリペプチドに、KalbTGに対する1つ以上の認識部位を含む。認識部位は、KalbTGのモチーフを含み、KalbTGは、修飾抗体と、修飾抗体に結合する化合物(ペイロード)との間のイソペプチド結合の形成を触媒することができる。典型的には、イソペプチド結合は、グルタミン(Gln、Q)側鎖とリジン(Lys、K)側鎖との間に形成される。好ましくは、本発明の修飾抗体を得るために抗体に導入される修飾は、抗体重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチド内の(人工)Qタグ、すなわちKalbTGによって認識されるGln含有モチーフの生成を含む。適切なQタグは、参照により本明細書に明示的に組み込まれる国際公開第2017/102759号に開示されている。特定の実施形態では、互いに独立した1つ以上の第1のKalbTG認識部位は、Gln含有モチーフ、特に配列RYGQR(配列番号11)、RWRQR(配列番号12)、YRQRT(配列番号13)、IRQRQ(配列番号14)、FRYRQ(配列番号15)、又はYRYRQ(配列番号17)、特にYRYRQ(配列番号17)を含むか又は有する。Qタグは、置換又は挿入、好ましくは挿入等の1つ以上のアミノ酸修飾によって生成され得る。特定の実施形態では、Qタグは、YRYRQ(配列番号17)又はRVRQR(配列番号18)、特にYRYRQ(配列番号17)を含むアミノ酸配列の挿入及び/又は置換によって生成される。好ましくは、挿入されたアミノ酸配列は、5から20アミノ酸の長さを有し、YRYRQ(配列番号17)又はRVRQR(配列番号18)、特にYRYRQ(配列番号17)を含む。特定の実施形態では、挿入は、リンカーを有しないQタグモチーフであり、すなわち、挿入は、YRYRQ(配列番号17)又はRVRQR(配列番号18)、特にYRYRQ(配列番号17)からなる。KalbTGに対する1つ以上の認識部位の導入は、軽鎖及び/又は重鎖の定常領域における唯一の修飾であり得る。あるいは、精製のためのタグ(例えば、Hisタグ)又は他の修飾、例えば安定性又はヘテロ二量体化の増加又はエフェクター機能の修飾等の更なる修飾が、単独で又は任意の組み合わせで存在してもよい。
【0275】
上記のように、KalbTGの1つ以上の第1の認識部位(複数可)は、抗体の特定の部位、すなわち軽鎖の位置110(LC110)、143(LC143)及び214(LC214)、並びに重鎖の位置118(HC118)、177(HC177)、297(HC297)、341(HC341)及び401(HC401)、特にHC177及び/又はHC297及び/又はLC214から選択される1つ以上の位置に挿入される。特定の実施形態では、本発明の修飾抗体は、特に第1の認識部位で結合したドメインとは異なるドメインに連結するために、重鎖の位置446(HC446)、すなわちC末端にKalbTGの更なる(第2の)認識部位を含み得る。好ましくは、1つ以上の1の認識部位は、重鎖の位置177(HC177)若しくは297(HC297)又は軽鎖の位置214(LC214)において互いに独立している。
【0276】
特定の実施形態では、Qタグは、1つ又は2つのリンカー(複数可)の間に/を介して間隔を空けた抗体軽鎖/重鎖アミノ酸配列に挿入される。リンカーは、柔軟性を高め得るか、又はより大きなペイロードとのコンジュゲーション可能にし得る。特定の実施形態では、各リンカー配列は、互いに独立して、1~20個のアミノ酸、特定の実施形態では1~10個のアミノ酸、更なる実施形態では1~5個のアミノ酸を含み、前記リンカーは、Qタグ、KalbTG、抗体の折り畳み、及び修飾抗体に結合されるペイロードの機能を本質的に妨害しない。リンカーは、QタグにN末端及び/又はC末端に結合していてもよい。特定の実施形態では、リンカーアミノ酸は、グリシン又はセリンのような小さいアミノ酸である。アミノ酸リンカー及びそれらの組成物は、当技術分野で公知である(例えばChichili et al.を参照)。アミノ酸グリシン、セリン、アラニン、トレオニン及びグルタミン酸は、通常、フレキシブルリンカーのアミノ酸を構成する。したがって、リンカー(複数可)は、主に又は完全にGly及び/又はSer及び/又はAla及び/又はThr及び/又はGlu、例えばGGGP(配列番号20)、ESGS(配列番号21)又はAPAP(配列番号22)からなり得る。また、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号23)又はEGKSSGSGSESKST(配列番号24)を含む又はそれからなるリンカーが存在してもよい。本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、リンカーは、互いに独立して、主に又は完全にGly及びSerからなり、例えば、(GlySer)であって、m=1、2、3又は4及びn=1、2、3、4又は5であり、m及びnは互いに独立して、好ましくはm=3及びn=1である。本発明の全ての態様及び実施形態の1つの好ましい実施形態では、1つ以上の第1の認識部位は、その末端で1つ又は2つのリンカー(複数可)を介して重鎖又は/及び軽鎖アミノ酸配列に挿入され、特にリンカーは、Gly及びSerから主に又は完全になり、例えば(Gly-Gly-Gly-Ser)(配列番号19)であって、n=1、2、3、4又は5であり、好ましくはn=1である。
【0277】
リンカーが存在する場合、抗体へのアミノ酸配列X1-YRYRQ-X2(配列番号17)又はX1-RVRQR-X2(配列番号18)の挿入である。X1及びX2は、互いに独立して、存在しないか、又はリンカー、特にリンカーアミノ酸である。本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、挿入は、2つのフレキシブルリンカー、特にGGGSYRYRQGGGS(配列番号25)又はGGGSRVRQRGGGS(配列番号26)、特にGGGSYRYRQGGGS(配列番号25)を有するQタグモチーフのものである。
【0278】
第1の認識部位(太字)を有する(配列番号32、113と呼ばれる)及び有さない(配列番号33、110と呼ばれる)ヒンジ領域の一部を含む例示的なFc領域は、以下の配列を有する。
【表44】
【0279】
第2の態様では、本発明は、本発明による修飾抗体の鎖をコードする1つ以上の核酸に関する。
【0280】
本発明の修飾抗体をコードする核酸は、抗体を組換え生産するためにin vitroで単離又は生成することができる。核酸は、更なるクローニング(DNAの増幅)又は更なる発現のために複製可能なベクターに挿入され得る。
【0281】
「核酸」とは、DNA(gDNA及びcDNA)及びRNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸の基本構造単位であるヌクレオチドには、天然のヌクレオチドだけでなく、修飾された糖又は塩基部位を有する類縁体も含まれる。本発明の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする核酸の配列は、修飾され得る。そのような修飾には、コードされる配列が変化しない限り、ヌクレオチドの付加、欠失、又は非保存的若しくは保存的置換が含まれる。
【0282】
本発明による修飾抗体をコードするDNAは、従来の手順(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードするDNAに特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)を用いて単離又は合成することができる。
【0283】
多くの移入ベクター及び発現ベクターが利用可能である。ベクター成分には、一般に、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0284】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、宿主細胞において目的の遺伝子を発現させるための手段としてのプラスミドベクター;コスミドベクター;ウイルスベクター、例えば、バクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びアデノ随伴ウイルスベクター等を指す。ベクター中の修飾抗体をコードする核酸は、プロモーター及びポリアデニル化シグナル配列に作動可能に連結されている。
【0285】
「作動的に連結された」とは、核酸発現制御配列(例えば、プロモーター、シグナル配列、又は転写調節因子結合部位のアレイ)と別の核酸配列との間の機能的連結を指し、それにより制御配列は、他の核酸の転写及び/又は翻訳を制御する。
【0286】
真核細胞を宿主とする場合、哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば、メタロチオニンプロモーター、β-アクチンプロモーター、ヒトヘモグロビンプロモーター、及びヒト筋肉クレアチンプロモーター)を用いてもよく、又は動物ウイルス由来の哺乳動物プロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス(EBV)プロモーター及びマウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター)を用いてもよい。さらに、ポリアデニル化シグナル配列が、転写終結配列としてコード核酸の後に存在する。
【0287】
細胞は、前述のベクターで形質転換され得る。本発明の抗体を作製するために使用される細胞は、原核細胞、酵母細胞又は高等真核細胞であり得るが、それらに限定されない。
【0288】
しかしながら、最も興味深いのは動物細胞であり、有用な宿主細胞株の例は、COS-7、BHK、CHO、CHO-S、CHO-K1、GS-CHO、CHO DXB-11、CHO DG-44、CHO/-DHFR、CV1、COS-7、HEK293、BHK、TM4、VERO、HELA、MDCK、BRL3A、W138、HepG2、SK-Hep、MMT、TRI、MRC5、FS4、3T3、RIN、A549、PC12、K562、PER.C6、SP2/0、NS-0、U20S、又はHT1080であるが、これらに限定されない。好ましい一実施形態では、宿主細胞はCHO細胞である。
【0289】
第3の態様では、本発明は、(i)本発明による修飾抗体、及び(ii)KalbTGに対する1つ以上の(第1の)認識部位(複数可)に共有結合的にコンジュゲートされた1つ以上の非抗体(ペイロード)ドメイン(複数可)を含む共有結合型コンジュゲートであって、非抗体ドメインがKalbTGの相補的な第2の認識部位を含む、共有結合型コンジュゲートに関する。本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、非抗体ドメインは、治療実体及び任意に第2のリンカーを含む治療部分である。
【0290】
上に詳述したように、本発明の修飾抗体は、KalbTGの助けを借りて、1つ以上のペイロード、例えば治療部分を抗体の1つ以上の内部部位(複数可)に特異的にコンジュゲートするために提供される。それにより、標的化治療に使用され得るADCが得られる。コンジュゲートは、目的の標的に結合することができ、それによってペイロード、例えば治療部分を体内の意図された領域に輸送する。特定の実施形態では、本発明による修飾抗体は、標的を認識し、その相補性決定領域(CDR)でそれに結合し、特に標的は細胞上に存在する生体分子である。
【0291】
上に詳述したように、治療部分を患者の体内の特定の領域に標的化することが望ましい場合がある。これは、in vivo分布を改善し、有害な副作用を低減し得る。明らかに、治療部分を、そうでなければ到達しにくい領域に送達することが意図され得る。一例として、治療部分を脳内に誘導することが想定され得る。血液脳関門のために、特に治療部分が特定のサイズ制限を超える場合、脳に直接投与されない場合、「裸の」治療部分をそこに送達することは困難である。血液脳関門を克服し、治療部分を脳内に輸送するのを助ける治療アプローチが明らかに有利である。顕著には、治療薬を体内の別の領域に導くために同じアプローチが使用され得る。
【0292】
本発明では、体内の構造に特異的に結合する抗体の分子認識単位は、治療部分の標的化に使用される。上記を考慮すると、治療実体は、目的の疾患の処置又は予防に有用な任意の化合物、特に特定の器官又は細胞型又は疾患領域等の体内の特定の領域に送達される化合物であり得ることは明らかである。
【0293】
「処置する(treat)」、「処置する(treating)」及び「処置(treatment)」という用語は、症状、障害、若しくは疾患、又は症状、障害、若しくは疾患に関連する1つ以上の症候を緩和又は抑止すること、又は症状、障害若しくは疾患自体の原因(複数可)を緩和若しくは根絶することを含むことを意味する。「予防する(prevent)」、「予防する(preventing)」及び「予防(prevention)」という用語は、症状、障害、若しくは疾患、及び/又はその付随症候の発症を遅延及び/又は排除する方法;対象が症状、障害若しくは疾患を獲得することを妨げる方法;又は対象が症状、障害若しくは疾患を獲得するリスクを低下させる方法を含むことを意味する。
【0294】
このために、治療実体及び任意に第2のリンカーを含む非抗体ペイロードが、本発明の修飾抗体に共有結合的にコンジュゲートされる。治療部分は、活性治療実体又はプロドラッグを含む。任意に、第2のリンカーが存在してもよい。第2のリンカーは、例えばアルキル基又はポリエチレン基を含む化学的リンカー、又はペプチドリンカーであり得る。
【0295】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、治療実体は、RNA、siRNA又はASO(アンチセンスオリゴヌクレオチド)、特にLNAヌクレオチドを含むASO等の核酸であり、及び/又は治療実体は、毒素又は有機小分子又は免疫調節因子である。
【0296】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、治療実体は核酸である。特定の実施形態では、核酸は、DNA若しくはRNA又はそれらの混合物である。RNAという用語はまた、アンチセンスRNA、並びにmiRNAに類似し、RNA干渉(RNAi)経路内で作動する、典型的には20~24塩基対長の二本鎖非コードRNA分子のクラスである低分子干渉RNA(siRNA)を含む。それは、転写後にmRNAを分解することによって相補的なヌクレオチド配列を有する特定の遺伝子の発現を妨げ、それによって翻訳を妨げる。特定の実施形態では、核酸は、1つ以上のロックド核酸(LNA)を含む。LNAは、リボース部分が2’酸素と4’炭素とを接続する余分な架橋で修飾された修飾RNAヌクレオチドである。架橋は、3’-エンド(ノース)配座のリボースを「ロック」する。この構造は、酵素分解に対する安定性の増加に起因し得、更に、LNAの構造は、モノマー又はオリゴヌクレオチドの構成要素としての改善された特異性及び親和性を有する。特定の実施形態では、LNAヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド又は核酸中のDNA又はRNA残基と混合される。
【0297】
特定の実施形態では、追加的又は代替的に、治療実体は小分子であり得る。薬理学の分野では、小分子は低分子量(<2,500ダルトン、特に<1,000ダルトン)である。多くの小分子治療実体は、有機小分子である。有機小分子は、典型的には、特定の生物学的高分子に結合し、エフェクターとして作用し、標的の活性又は機能を変化させる。これらの化合物は、天然(一次及び二次代謝産物等)又は人工(すなわち、天然に存在しない)であり得、それらは疾患に対して有益な効果を有する。
【0298】
本発明において、治療実体は、任意に第2のリンカーを介して本発明の修飾抗体に共有結合している非抗体ドメインである。リンカーの長さ、剛性及び化学組成は、コンジュゲーション反応速度及び得られるコンジュゲートの安定性に影響を及ぼし得るため、リンカーは、意図される標的及び治療実体に依存し得る。本発明の全ての態様及び実施形態の1つの好ましい実施形態では、(第2の)リンカーは、アルキルリンカー又はポリエチレンリンカー又はペプチドリンカー又はそれらの混合物である。特定の実施形態では、(第2の)リンカーは、エチレングリコール(PEG)単位、例えば約2~50個のエチレングリコール単位を含む。例示的なリンカーとしては、ポリエチレングリコールリンカー((-NH-C(=O)-PEG-NH、n=2~25)が挙げられる。特定の実施形態では、(第2の)リンカーは、脂肪族炭素鎖である。リンカーは、非置換又は置換C1~6アルキル等の非置換又は置換アルキルを含んでもよく、C1~6アルキルは、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アルコキシカルボニル、カルボニルアルコキシ、アシルアミノ、アミノ、アミノアシル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シアノ、アジド、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、カルボキシル、チオール、チオアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、アミノスルホニル、スルホニルアミノ、スルホニル及びオキソからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよい。特定の実施形態では、(第2の)リンカーは、ペプチドリンカー、すなわち、アミノ酸から構成されるリンカーである。
【0299】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、コンジュゲートは、本発明による修飾抗体と、1つ以上治療用核酸、例えばASOとを含み、各治療用核酸は、イソペプチド結合を介して単一のQ-タグに連結され、任意に、上で定義したように、第2のリンカー、特にPEGリンカーを介してK-タグの末端残基にアミド結合されている。
【0300】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、コンジュゲートは、約1~約8、約1~約4、又は約1~約2の範囲のDARを有する。別の実施形態では、コンジュゲートは、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7又は約8のDARを有する。
【0301】
抗体が標的に結合すると、コンジュゲートはエンドサイトーシスによってそれぞれの細胞に輸送され、治療実体は放出され、意図した方法(例えば、疾患を処置する)で作用することができる。
【0302】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は1つの標的を認識し、前記標的は受容体媒介性エンドサイトーシスを誘導する受容体、例えばヒトトランスフェリン受容体1(TfR1)、ヒトインスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)、ヒト低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)又はヒト低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、特にTfR1である。
【0303】
例えばTfR1又はIGF-1R等の特異的受容体の場合、抗体が標的に結合すると、コンジュゲートはエンドサイトーシスによってそれぞれの細胞に輸送され、エンドソームから放出され、細胞から再びエキソサイトーシスされる。細胞が血液脳関門等の障壁の一部である場合、それによってそれぞれの障壁を越える輸送が達成される。それにより、治療実体は、本発明による修飾抗体にコンジュゲートされていない治療実体が到達することができなかった身体の区画に輸送される。
【0304】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、修飾抗体は、血液脳関門の通過を可能にする構造に特異的に結合する。特定の実施形態では、血液脳関門の通過を可能にする構造はヒトトランスフェリン受容体である。
【0305】
特定の実施形態では、修飾抗体は、1つ又は2つの標的(複数可)を認識し、前記1つ又は2つの標的は、腫瘍細胞(例えば、乳がん細胞)に特異的な腫瘍マーカー等の特定の細胞型に特異的である。
【0306】
本発明の全ての態様及び実施形態の好ましい一実施形態では、本発明による修飾抗体は、脳疾患、例えばパーキンソン病又はアルツハイマー病を処置又は予防するためのRNA又はLNAを含む治療実体、及び任意にPEGリンカーを含む非抗体ドメインにコンジュゲートされる。
【0307】
第4の態様では、本発明は、本発明による修飾抗体を治療実体に共有結合的にコンジュゲートさせる方法に関し、該方法は、
a)本発明による修飾抗体を提供することと、
b)非抗体ドメインを提供することであって、非抗体ドメインが、
(i)治療実体、
(ii)(i)の下で提供される修飾抗体中に存在する第1の認識部位に相補的なKalbTGに対する第2の認識部位、好ましい一実施形態では、Lys含有モチーフ、特に配列RYESK(配列番号16)を含むか又は有する、第2の認識部位、及び
(iii)任意に、治療実体と第2の認識部位との間の第2のリンカーを含む、非抗体ドメインを提供することと、
c)a)の修飾抗体及びb)の非抗体ドメインを、KalbTG又はその機能的に活性なバリアント若しくは断片の存在下、かつ、KalbTGの活性を助長する条件下でインキュベート又は反応させ、それにより、第1の認識部位と第2の認識部位との間にイソペプチド結合を形成し、したがって、修飾抗体を治療実体にコンジュゲートさせることと、を含む。
【0308】
本方法の第1の工程では、本発明の修飾抗体及び非抗体ドメインが提供される。
【0309】
非抗体ドメインは、
(i)治療実体と、
(ii)修飾抗体に存在する第1の認識部位に相補的なKalbTGに対する第2の認識部位、すなわち、修飾抗体がQタグを含む場合、非抗体ドメインはKタグを含むか、又はその逆であり、特に、第2の認識部位はLys含有モチーフ、特に配列RYESK(配列番号16)(Kタグ)を含むか、又は有する、KalbTGに対する第2の認識部位と、
(iii)任意に、治療実体と第2の認識部位との間の第2のリンカーとを含む。
【0310】
ドメインは、上で定義したとおりであり得る。
【0311】
修飾抗体及び非抗体ドメインを、KalbTG又はその機能的に活性なバリアント若しくは断片(野生型KalbTGと同等の酵素活性を有するKalbTGのバリアント又は断片を意味する)の存在下、及びKalbTGの活性を助長する条件下でインキュベートする、すなわち反応させ、それにより、第1及び第2の認識部位の間にイソペプチド結合が形成され、したがって修飾抗体が治療実体にコンジュゲートされる。
【0312】
本発明によるこの方法の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、抗体は、KalbTGの酵素活性を使用してそれぞれの1つ以上のKタグにコンジュゲートされる1つ以上のQタグ(複数可)を含む。
【0313】
非抗体ドメインは、KalbTGに対する第2の認識部位を含む。本発明によるこの方法の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、非抗体ドメインは、ペプチド配列RYESK(配列番号16)に対して少なくとも80%の配列同一性を有するKタグを含む。
【0314】
KalbTGを含む微生物トランスグルタミナーゼ(mTG)は、Gln-Lysイソペプチド結合の形成を触媒し、食品及びバイオテクノロジー用途におけるタンパク質及びペプチドの架橋に広く使用されている(例えば、タンパク質が豊富な食品の質感を改善するために、又は抗体-薬物コンジュゲートを生成することにおいて)。
【0315】
しかしながら、KalbTGは、既知のmTG基質又は一般的に使用される標的タンパク質、例えば抗体との交差反応性を本質的に示さず、したがって、所定の部位での特異的コンジュゲーションを可能にする。
【0316】
したがって、KalbTGのための第2の認識部位(Kタグ)を含む、特に第2の認識部位がLys含有モチーフ、特に配列RYESK(配列番号16)を含む又は有する本質的に任意のペイロードは、1つ以上の第1の認識部位(複数可)、すなわちQタグで修飾抗体にコンジュゲート/結合され得る。
【0317】
KalbTG又はその機能的に活性なバリアント若しくは断片は、Steffen at al.(2017)又は国際公開第2016/100735号A1に定義されるとおりであり得る(いずれも参照により本明細書に明示的に組み込まれる)。
【0318】
機能的に活性なバリアント又は断片は、国際公開2016/100735号A1(その中の配列番号6を参照)のKalbTGと少なくとも80%、90%、95%又は99%の配列同一性を有するトランスグルタミナーゼであり得る。あるいは、KalbTG又はその機能的に活性なバリアントは、例えば精製目的のために、タグ等の標識を追加的に含む融合タンパク質の一部であり得る。
【0319】
特定の実施形態では、KalbTGは、アミノ酸配列(3文字コード)を含む。
【表45】
【0320】
本発明による方法の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、前記連結は制御され、例えば、非抗体ドメインと修飾抗体との化学量論比、例えばQタグ/Kタグ対当たり約1:1で達成される。2つ又は更には複数のペイロードを修飾抗体に結合させるために、1つの修飾抗体上の2つ以上の第1の認識部位を使用することによって、複数のコンジュゲーションを達成することもできる。
【0321】
第5の態様では、本発明の修飾抗体を含むか、又は本発明の方法に従って製造された共有結合型コンジュゲートは、医薬として使用するためのもの、特にアルツハイマー病若しくはパーキンソン病等の神経疾患若しくは脳疾患の処置に使用するためのもの、又は乳がん等のがんの処置に使用するためのものである。
【0322】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、疾患は神経疾患である。特定の実施形態では、神経疾患は、神経障害、神経変性疾患、がん、眼疾患障害、発作障害、リソソーム蓄積症、アミロイドーシス、ウイルス性又は微生物性疾患、虚血、行動障害、CNS炎症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、脳転移を伴うCD20陽性がん、及び脳転移を伴うHER2陽性がんからなる群から選択される。
【0323】
本発明の全ての態様及び実施形態の特定の実施形態では、神経疾患は、ニューロパチー障害、神経変性疾患、がん、眼疾患障害、発作障害、リソソーム蓄積症、アミロイドーシス、ウイルス性又は微生物性疾患、虚血、行動障害、及びCNS炎症からなる群から選択される。
【0324】
上に詳述したように、本発明による修飾抗体を含むコンジュゲートは、医薬として、特に(アルツハイマー病又はパーキンソン病の好ましい一実施形態において)神経疾患又は脳疾患の処置において、又は乳がん等のがんの処置に使用するために使用することができる。
【0325】
コンジュゲートは、組成物に包含され得る。医薬組成物とも呼ばれるそのような組成物は、医薬分野での使用又は医薬としての使用を意図した組成物であり、その中に含有される活性成分の生物学的活性が有効であることを可能にするような形態であり、医薬組成物が投与される対象に対して許容できないほどに毒性である追加の成分を含有しない調製物を指す。組成物は、任意に、薬学的に許容され得る賦形剤、希釈剤又は担体、例えば緩衝物質、安定剤又は保存剤、及び任意に、更なる有効成分、特に医薬組成物に関連して公知の成分を含有し得る。
【0326】
一般に、追加の成分の性質は、医薬組成物の特定の形態及び使用される投与様式に依存する。薬学的に許容され得る担体は、組成物を増強若しくは安定化するか、又は組成物の調製を容易にするために使用することができる。そのような担体としては、生理的に適合性の生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、溶媒、分散媒、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。製剤は投与様式に適するべきである。例えば、非経口製剤は、通常、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロール等の薬学的及び生理学的に許容され得る流体をビヒクルとして含む注射用流体を含む。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、湿潤剤又は乳化剤、保存剤及びpH緩衝剤等の少量の非毒性補助物質を含有することができる。
【0327】
医薬組成物は、安定剤を含み得る。「安定剤」という用語は、加熱又は凍結中に生じる有害な条件等から組成物を保護し、及び/又はある条件若しくは状態での本発明のコンジュゲートの安定性又は貯蔵寿命を延長する物質を指す。安定剤の例としては、スクロース、ラクトース及びマンノース等の糖;マンニトール等の糖アルコール;グリシン又はグルタミン酸等のアミノ酸;及びヒト血清アルブミン又はゼラチン等のタンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0328】
典型的には、コンジュゲートの治療有効用量又は有効用量が、本発明の医薬組成物において用いられる。投与されるコンジュゲートの量は、最初に、同等の連結されていない治療薬の用量及び/又は投与レジメンのガイダンスに基づいて決定することができる。一般に、コンジュゲートは、標的化送達を提供することができ、したがって、投与レジメンにおける用量の減少又は投与の減少の少なくとも1つを提供することができる。したがって、コンジュゲートは、本発明のコンジュゲート中に存在する前の治療薬と比較して、投与レジメン中の用量の減少及び/又は投与の減少を提供することができる。上記のように、コンジュゲートは、薬物送達の制御された化学量論を提供することができるため、コンジュゲートの投与量は、抗体-治療実体抱合体ごとに提供される薬物分子の数に基づいて計算することができる。
【0329】
本発明の医薬組成物は、1回若しくは数回、又は複数回投与され得る。コンジュゲートの投与頻度は、種々の因子のいずれか、例えば症候の重症度等に応じて変動し得る。例えば、いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、6ヶ月に1回、5ヶ月に1回、4ヶ月に1回、3ヶ月に1回、2ヶ月に1回、1ヶ月に1回、1ヶ月に2回、1ヶ月に3回、1週間おきに(qow)、1週間に1回(qw)、1週間に2回(biw)、1週間に3回(tiw)、1週間に4回、1週間に5回、1週間に6回、1日おきに(qod)、毎日(qd)、1日に2回(qid)又は1日に3回(tid)投与される。
【0330】
特定の実施形態では、本発明のコンジュゲート又は医薬組成物は、1つ以上の追加の化合物と同時に投与される。特定の実施形態では、本発明のコンジュゲート又は医薬組成物は、追加の化合物(複数可)の前又は後に投与される。
【0331】
本発明の医薬組成物は、個体を処置するための医薬として使用され得る。個体は哺乳動物である。哺乳動物としては、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及び非ヒト霊長類、例えば、サル)、ウサギ及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、個体はヒトである。
【0332】
本明細書に記載のコンジュゲートを含む医薬組成物は、当技術分野で公知の送達技術を使用して、細胞、細胞群、腫瘍、組織、又は対象に送達することができる。一般に、コンジュゲートを送達するための当技術分野で認識されている任意の適切な方法を、本明細書に記載の組成物との使用に適合させることができる。例えば、送達は、局所(local)投与(例えば、直接注射、埋め込み、又は局所(topical)投与)、全身投与、又は皮下、静脈内、眼内、腹腔内、若しくは頭蓋内(例えば、脳室内、実質内及び髄腔内)を含む非経口経路、又は筋肉内投与によるものであり得る。本発明の共有結合型コンジュゲートは、静脈内、筋肉内又は動脈内に投与することが好ましく、静脈内に投与することがより好ましい。投与の容易さ及び投与量の均一性のため、上述の医薬組成物を単位剤形で製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される単位剤形は、単位投与量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と組み合わせて所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性成分を含有する。そのような単位剤形の例は、注射可能な溶液又は懸濁液等である。
【0333】
上に詳述したように、本発明のコンジュゲート/医薬組成物は、アルツハイマー病又はパーキンソン病等の神経疾患又は脳疾患の処置に特に有用である。「神経疾患」という用語は、とりわけ、神経変性疾患、神経炎症性疾患又は発作障害、特に脳のものを包含する。神経変性疾患は、ニューロンの死を含むニューロンの構造又は機能の進行性喪失を特徴とする。パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症及び多発性硬化症を含む多くの神経変性疾患は、神経変性過程の結果として起こる。非定型タンパク質集合及び誘導された細胞死を含む異なる神経変性障害間には多くの類似点がある。神経変性は更に、分子から全身に及ぶ多くの異なるレベルの神経回路に見ることができる。「神経変性疾患」及び「神経炎症性疾患」という用語は、部分的に重複する範囲を有する。炎症応答は、神経変性疾患の顕著な特徴であり、神経細胞死において異なる機構を介して関与するか、又は寄与する。キヌレニン経路(KP)に沿ったトリプトファン異化は、これらの機構の1つを表す。発作障害は、脳細胞間の異常なシグナル伝達を特徴とする脳障害である。発作障害は、脳の一部(部分発作)又は脳全体(全般発作)を冒し得る。最も顕著な発作性障害はてんかんである。血液脳関門を通過するために、受容体媒介型受容体誘導性エンドサイトーシスをコンジュゲートの標的として使用することができる。例えば、トランスフェリン受容体1(TfR1)、インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)又は低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、特にTfR1が挙げられる。
【0334】
他に定義されていない限り、本明細書で使用されている全ての技術的及び科学的用語及び任意の頭字語は、本開示の分野の当業者により共通して理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似の、又は同等の任意の方法及び材料を本明細書で提示された実施において使用することができるが、特定の方法、及び材料が本明細書に記載されている。
【0335】
本発明は、本明細書に記載されている特定の方法論、プロトコル、及び試薬に限定されない。理由はこれらが変動し得るからである。本明細書に記載の方法及び材料と類似又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実施に使用することができ、例示的な方法及び材料を本明細書に記載する。さらに、本明細書で使用されている用語は、特定の実施形態のみについて記載する目的のためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0336】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」、及び「the(その)」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「含む、備える(comprise)」、「含む、含有する(contain)」、「包含する(encompass)」という言葉は、排他的ではなく包括的に解釈される。同様に、「又は」という単語は、文脈が別途明確に指示しない限り、「及び」を含むことを意図している。「複数」という用語は、2つ以上を指す。
【0337】
以下の図、配列及び実施例は、本発明の様々な実施形態を例示することを意図している。したがって、説明された特定の変更は、本発明の範囲に対する限定として解釈されるべきではない。本発明の範囲から逸脱することなく、様々な同等物、変更、及び修正を行うことができることは当業者には明らかであり、したがって、そのような同等の実施形態が本明細書に含まれることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0338】
図1】15残基を有する一本鎖核酸にコンジュゲートした9つの異なるQタグ挿入部位を有するmAb-2(HER 2)の疎水性相互作用クロマトグラフィーを示す。
図2】mAbと核酸ペイロードとの単一工程KalbTG媒介コンジュゲーションの例示的な反応を示す。
【実施例0339】
実施例1
本発明による修飾抗体の組換え生産
遺伝子の合成
所望の遺伝子セグメントを化学合成によって調製し、合成した遺伝子断片をTwist Bioscience(米国サンフランシスコ)によってHEK293細胞及びExpi293細胞での発現に適したベクターにクローニングした。
【0340】
哺乳動物細胞における修飾抗体の発現
抗体産生を、F17培地(Invitrogen、米国カリフォルニア州カールスバッド)中で培養したHEK293細胞又はExpi293発現培地(Thermo Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)中のExpi293細胞における単一発現カセットプラスミドの一過性共トランスフェクションによってそれぞれ行った。トランスフェクションは、対称標準IgG1フォーマットの場合、HC:LC発現プラスミドのプラスミド比=1:1で、又は非対称ノブ・イントゥ・ホールフォーマットの場合、HC1:HC2:LC発現プラスミドのプラスミド比=1:1:1で、製造者の説明書に指定されているように行った。細胞培養上清をトランスフェクションの7日後に回収した。上清を低温(例えば-20℃)で保存した。
【0341】
タンパク質力価の定量
上清試料のタンパク質力価を、高速液体クロマトグラフィーシステム(Ultimate 3000 HPLCシステム、Thermo Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)でPOROS A 20μmカラム、2.1×30mm(Life Technologies、米国カリフォルニア州カールスバッド)を使用するアフィニティークロマトグラフィーによって決定した。0.2M NaHPO、pH7.4で平衡化したカラムに上清をロードし、続いて0.1Mクエン酸、0.2M NaCl、pH2.5で溶出した。力価を、280nmでの吸光度を測定することによって定量し、続いて、分析物の溶出ピーク面積(曲線下)を参照標準曲線と比較することによってタンパク質濃度を計算した。
【0342】
哺乳動物培養上清からの修飾抗体の精製
培養上清中の抗体を、PBS緩衝液、pH7.4で平衡化したMab Select SuReカラム(GE Healthcare、米国イリノイ州シカゴ)を使用するプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって捕捉した。未結合タンパク質を平衡化緩衝液で洗浄することによって除去した。修飾抗体を50mMクエン酸塩(pH3.0)で溶出し、溶出液のpHを2M Tris(pH9.0)の添加によって直ちにpH7.5に調整した。20mMヒスチジン、140mM NaCl、pH6.0中のSuperdex 200(商標)カラム(GE Healthcare、米国イリノイ州シカゴ)を使用するサイズ排除クロマトグラフィーを第2の精製工程として行った。精製した修飾抗体を-80℃で保存した。
【0343】
中規模自動化(Milan)を用いた抗体の精製
抗体を、Repligen(米国マサチューセッツ州ウォルサム)からのカラムを備えた液体処理システム(Tecan、スイス国メンネドルフ)でMabSelectSuRe-Sepharose(Cytiva、米国マサチューセッツ州マールボロー)を使用して、上記のようなプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して一段階で精製した。平衡化、試料ローディング及び洗浄の工程を記載のように行い、25mMクエン酸塩、pH3.0を使用してカラムから抗体を溶出した。溶出した抗体画分を1.5M Tris(pH7.5)で中和し、濃度を280nmでの光学密度(OD)を測定することによって決定した。
【0344】
例示的抗体の概要
抗体110:
説明:
P329G/L234A/L235A変異を有するIgG1サブクラスに基づく抗HER2抗体;アミノ酸残基177(HC177)後のHCへのQタグ挿入(EUナンバリング);Qタグ及びスペーサー配列:GGGSYRYRQGGGS(配列番号25)
【表46】
【0345】
抗体113:
説明:
P329G/L234A/L235A変異を有するIgG1サブクラスに基づく抗HER2抗体;アミノ酸残基401(HC401)後のHCへのQタグ挿入(EUナンバリング);Qタグ及びスペーサー配列:GGGSYRYRQGGGS(配列番号25)
【表47】

【表48】
【0346】
修飾抗体の発現は、導入されたQタグの位置に影響される。LC110、LC214、HC118、HC177、HC297、HC341及びHC401の後に導入すると、最高の収率が得られた。
【0347】
実施例2
本発明による修飾抗体の蛍光色素へのKalbTGコンジュゲーション
KalbTGを用いたコンジュゲーション
Qタグを含有する精製抗体を、透析を介してコンジュゲーション緩衝液(NaCl、pH8.5を含むヒスチジン緩衝液)に移した。KalbTG反応のため、抗体をKタグ小分子(蛍光色素、10×モル過剰)と混合し、KalbTGを添加した(モル比mAb:KalbTG>100:1)。反応混合物を振盪しながら37℃でインキュベートし、続いて溶液に10mM硫酸アンモニウムを添加することによって反応をクエンチした。非コンジュゲート化ペイロード及び残留酵素を除去するために、コンジュゲート化修飾抗体を、PBS pH7.5中Superdex 200(商標)カラム(GE Healthcare、米国イリノイ州シカゴ)を使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。精製したコンジュゲートを-80℃で保存した。
【0348】
コンジュゲートの分析
タンパク質の定量を、Nanodrop分光光度計(Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)を用いて行った。さらに、定性的DAR測定を、以下の実施例4に記載の疎水性相互作用クロマトグラフィーによって行った。コンジュゲートの純度を、製造者の説明書(Perkin Elmer、米国マサチューセッツ州ウォルサム)に従ってCaliper LabChip(登録商標)GXII Touch(商標)タンパク質特性評価システムを使用して変性及び還元条件下でCE-SDSによって分析した。
【0349】
凝集体含有量は、高性能液体クロマトグラフィーシステム(Ultimate 3000 HPLCシステム、Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)で、0.2M KHPO/KHPO、0.25M KCl、pH6.2で平衡化したTSKgel UP-SW 3000分析サイズ排除カラム(Tosoh Bioscience、ドイツ国グリースハイム)を使用してSECによって決定した。
【0350】
コンジュゲートの同一性を、ESI-Q-ToF-MS(Bruker maXis 433、Bruker、米国マサチューセッツ州ビレリカ)によって確認した。MS分析のため、N-グリコシダーゼF(Roche、スイス国バーゼル)を使用して試料を脱グリコシル化し、続いて2%ギ酸、40%アセトニトリルに脱塩した。
【表49】
【0351】
実施例3
核酸への本発明による修飾抗体のKalbTGコンジュゲーション
アンチセンスオリゴヌクレオチドの合成
標準的なホスホロアミダイト化学を使用して一本鎖LNAオリゴヌクレオチドを合成した。DNA及びLNAホスホロアミダイト及び全ての標準試薬は、Merck KGaA(ドイツ国ダルムシュタット)から購入した。Kタグペプチドは、Schafer-N Ap(デンマーク国コペンハーゲン)及びBiosyntan(ドイツ国ベルリン)によってカスタム合成した。
【0352】
オリゴヌクレオチドを、AKTA Oligopilot(GE Healthcare、デンマーク国ブロンビー)上のNittoPhase HL UnyLinker 350支持体(Kinovate、カリフォルニア州オーシャンサイド)上で130mmolスケールで合成した。合成後、オリゴヌクレオチドを支持体から一晩切断した。オリゴヌクレオチドをイオン交換クロマトグラフィーによって精製し、Millipore膜を使用して脱塩した。凍結乾燥後、化合物を最後に液体クロマトグラフィー-質量分析(逆相及びエレクトロスプレーイオン化-質量分析)によって特徴付けた。
【0353】
オリゴヌクレオチドを、Kタグにコンジュゲートするためのそれぞれのリンカー(1段階反応)又はクリック化学コンジュゲーションのためのアクセプター部分(2段階反応)のいずれかにコンジュゲートした。次いで、コンジュゲートを、以下に記載されるように逆相HPLCによる精製に直接供した。
【0354】
アセトン中の2%過塩素酸リチウムによるリンカーオリゴヌクレオチドの沈殿後、得られた沈殿物をアセトンで洗浄し、真空下で乾燥させ、PBSに再溶解した。1.5当量のK-タグペプチドをPBSに溶解し、添加した。室温で1時間後、反応混合物を逆相HPLCによる精製に直接供した。
【0355】
上記の両方の反応物を、溶離液として0.1M酢酸アンモニウム及びアセトニトリルを使用して、Waters XBridge Peptide BEH C 18 OBD Prep Column、300Å、10μm、10mm×150mmでの逆相HPLCによって精製した。プールした画分を凍結乾燥し、水に再溶解し、NaOH水溶液でpHをpH7.0に調整した。最終凍結乾燥後、化合物を最後に液体クロマトグラフィー-質量分析(逆相及びエレクトロスプレーイオン化-質量分析)によって特徴付けた。
【0356】
Qタグを有する抗体へのLNA-ASOの酵素的コンジュゲーション
KalbTGを用いた1段階コンジュゲーション
Qタグを含有する精製抗体を、透析を介してコンジュゲーション緩衝液(約150mM塩化物イオン、pH7.5を含むヒスチジン緩衝液)に移した。KalbTG反応のために、抗体を過剰のKタグ付きオリゴヌクレオチドと混合し、KalbTG(Roche Diagnostics、ドイツ国マンハイム)を添加した。反応混合物を振盪しながら37℃でインキュベートし、続いて溶液に10mM硫酸アンモニウムを添加することによって反応をクエンチした。非コンジュゲート化ペイロード及び残留酵素を除去するために、コンジュゲート化修飾抗体を、PBS、250mMアルギニン、pH7.5中Superdex 200(商標)カラム(GE Healthcare、米国イリノイ州シカゴ)を使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。精製したコンジュゲートを-80℃で保存した。
【0357】
KalbTG及びクリックケミストリーを使用した2段階コンジュゲーション
Qタグを含有する精製抗体を、透析を介してコンジュゲーション緩衝液(NaCl、pH8.5を含むヒスチジン緩衝液)に移した。KalbTG反応のために、抗体をクリックコンジュゲーションの第1の部分を含む過剰のKタグ付きリンカー(10倍モル過剰)と混合し、KalbTGを添加した。反応混合物を振盪しながら37℃でインキュベートし、続いて溶液に10mM硫酸アンモニウムを添加することによって反応をクエンチした。非コンジュゲート化リンカー及び残留酵素を除去するために、コンジュゲート化修飾抗体を、PBS、250mMアルギニン、pH7.5中Superdex 200(商標)カラム(GE Healthcare、米国イリノイ州シカゴ)を使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。精製した抗体-リンカーコンジュゲートを、PBS、250mMアルギニン、pH7.5中のクリックコンジュゲーションのそれぞれの他の部分にコンジュゲートしたオリゴヌクレオチドの過剰量に添加し、反応混合物を振盪しながら室温で一晩インキュベートした。抗体-オリゴヌクレオチドコンジュゲートを上記のようにサイズ排除クロマトグラフィーによって精製し、精製されたコンジュゲートを-80℃で保存した。
【0358】
コンジュゲートの分析
オリゴヌクレオチドコンジュゲートの定量を、SoloVPEシステム(C Technologies、米国ニュージャージー州ブリッジウォーター)を用いて260、280及び350nmでのUV/Vis分光法によって行った。ランベルト・ベールの式を用いて、コンジュゲート濃度及び定量的薬物抗体比(DAR)を計算した。さらに、定性的DAR測定を、以下の実施例4に記載の疎水性相互作用クロマトグラフィーによって行った。コンジュゲートの純度を、Caliper LabChip(登録商標)GXII Touch(商標)タンパク質特性評価システム(Perkin Elmer、米国マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して変性及び還元条件下でCE-SDSによって分析した。凝集体含有量は、高性能液体クロマトグラフィーシステム(Ultimate 3000 HPLCシステム、Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)で、0.2M KHPO/KHPO、0.25M KCl、pH6.2で平衡化したTSKgel UP-SW 3000分析サイズ排除カラム(Tosoh Bioscience、ドイツ国グリースハイム)を使用してSECによって決定した。コンジュゲートの同一性を、ESI-Q-ToF-MS(Bruker maXis 433、Bruker、米国マサチューセッツ州ビレリカ)によって確認した。MS分析のため、N-グリコシダーゼF(Roche、スイス国バーゼル)を使用して試料を脱グリコシル化し、続いて2%ギ酸、40%アセトニトリルに脱塩した。
【表50】
【0359】
修飾抗体のコンジュゲーションは、導入されたQタグの位置に影響される。LC110、LC143、LC214、HC118、HC177、HC297、及びHC341の位置の後の導入は、最良のコンジュゲーション効率をもたらした。
【表51】
【0360】
実施例4
本発明によるKalbTGコンジュゲート修飾抗体の疎水性相互作用クロマトグラフィー
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を、TSKgelブチル-NPRカラム(2.5μm、4.6×35mm、TOSOH Bioscience、日本国東京)を流速1mL/分で使用して高速液体クロマトグラフィーシステム(Ultimate 3000 HPLCシステム、Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)で行った。カラムを溶離液A(20mM NaHPO二水和物、1.5M(NHSO、pH7.0)で平衡化し、各試料60μgをカラムにロードした。続いて、溶離液Aと溶離液Bとの間の勾配(20mM NaHPO二水和物、25%(v/v)イソプロパノール、pH7.0)を適用した。
勾配:
0分 5%B
0~30分 5%B→80%B
30~34分 80%B->100%B
34~44分 100%B
45~55分 0%B
【0361】
280nmにおける吸光度を連続的に測定することによって、溶出プロファイルを得た。薬物抗体比(DAR)を、Chromeleon 7.2(Thermo Fisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)を使用したピーク積分によって決定した。
【0362】
例示的な結果を図1に示す。
【表52】
【0363】
親水性マーカーは9.25分の保持時間を有し、疎水性マーカーはそれぞれ25.9分(mAb-2)又は9.00分及び24.7分(mAb-4)の相対保持時間を有した。
【0364】
コンジュゲートの疎水性は、導入されたQタグの位置に影響される。LC110、LC214及びHC297の位置の後の導入は、コンジュゲートされた修飾抗体に対してコンジュゲートされていない抗体の最大で2倍の変化をもたらしたが、HC177は、試験された全ての内部挿入部位の相対保持時間が最小であった。
【0365】
実施例5
in vivo分析
試験計画
ヒトFcRnトランスジェニックマウス(hFcRn Tg32+/+マウス)を、試験する12の異なる化合物に従って12のコホート(n=3/コホート)にランダムに割り当てた。
【0366】
全ての化合物は、全長抗体軽鎖の同族対と、抗体Fc領域断片
【表53】

を有する全長抗体重鎖対とを含む1アーム抗トランスフェリン受容体抗体に基づく。
【0367】
Qタグは、それぞれの位置の後にアミノ酸配列GGGSYRYRQGGGS(配列番号25)が挿入されていた。
【0368】
化合物1:コンジュゲートされた核酸を含まない参照
化合物2:全長重鎖の位置HC118の後に挿入されたQタグにコンジュゲートされた1つの核酸
化合物3:全長重鎖の位置HC177の後に挿入されたQタグにコンジュゲートされた1つの核酸
化合物4:全長重鎖の位置HC295の後に挿入されたQタグにコンジュゲートされた1つの核酸
化合物5:全長重鎖の位置HC297の後に挿入されたQタグにコンジュゲートされた1つの核酸
化合物6:全長重鎖の位置HC341の後に挿入されたQタグにコンジュゲートされた1つの核酸
化合物7:全長重鎖の位置HC401の後に挿入されたQタグにコンジュゲートされた1つの核酸
化合物8:全長重鎖の位置HC446の後に挿入されたQタグにコンジュゲートされた1つの核酸
化合物9:位置LC214の後に挿入されたQタグにコンジュゲートされた1つの核酸
化合物10:完全長重鎖の位置HC297及びFc領域断片の後に挿入されたQタグにコンジュゲートされた2つの核酸
化合物11:完全長重鎖の位置HC341及びFc領域断片の後に挿入されたQタグにコンジュゲートされた2つの核酸
化合物12:完全長重鎖の位置HC446及びFc領域断片の後に挿入されたQタグにコンジュゲートされた2つの核酸
【0369】
化合物を20mMヒスチジン(pH6)中の溶液として製剤化し、20mg/kg体重の単一公称用量及び2mL/kgの投与量として静脈内投与した(例外的に、化合物1を3.3mL/kgの投与量及び16.7mg/kgの用量レベルで投与した)。製剤をそれぞれ、2つの外側尾静脈のうちの1つにゆっくりとボーラスによって注射した。血液の連続マイクロサンプリング(20μL/時点/マウス)を尾静脈穿刺によって行った。血液試料を、投与の5分後、1時間後、7時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後及び336時間後にK3-EDTA被覆Minivette(登録商標)POCTに収集した。Minivette(登録商標)が充填されたら、血液を直ちに0.2ml PCRエッペンドルフチューブ(登録商標)に移し、4℃、約10,000×gで約5分間遠心分離した。最終サンプリングのため、血液を心臓穿刺によって採取し、K3-EDTA被覆ポリプロピレンチューブに移した。血漿試料を更なる処理及び分析のために-20℃で保存した。
【0370】
生物分析
化合物の薬物動態(PK)は、2つの別個の方法:抗体成分を定量する1つの方法及びコンジュゲートのロックド核酸成分を定量する第2の方法によって決定した。
【0371】
血漿試料中のPKを決定するため、Stubenrauch et al.に基づく非GLP条件下で、cobas(登録商標)e411(Roche Diagnostics GmbH、ドイツ国マンハイム)装置上のヒトCH2ドメインに特異的な一般的電気化学発光免疫アッセイ(ECLIA)法を使用した。簡潔には、試験試料を、第1の検出抗体(ビオチン化)、第2の検出抗体(ルテニウム化)及びSAビーズと共に検出容器に段階的に添加した。各化合物の特定の標準曲線の較正範囲は、1%C57BL/6マウス血漿中の0.69ng/mL~1,500ng/mLアッセイ濃度であった。分析感度は100%血漿中で69ng/mLであった。標準曲線、品質対照及び試料希釈物を、1%マトリックス濃度をもたらすC57BL/6マウス血漿を含むアッセイ緩衝液中で調製した。血漿試料を2つの異なる希釈液(1:100~1:800)で分析した。
【0372】
同一の血漿試料を、非GLP条件下でハイブリダイゼーション酵素結合免疫吸着アッセイ(hELISA)を使用して分析した。
【0373】
hELISA法では、参照として非コンジュゲート核酸を使用して、標準、品質管理及び予備希釈試料を調製した。ビオチン化捕捉オリゴヌクレオチドプローブ及びジゴキシゲニル化検出オリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイゼーションのため添加し、ストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレートに移した。検出のため、ポリクローナル抗ジゴキシゲニン-POD Fab断片及びTMB溶液を使用した。色彩強度を450nm(690nm参照波長)で測光法により分析した。色彩強度は、試験試料中の分析物濃度に比例していた。1%C57BL/6マウス血漿中の0.8pM~111pMアッセイ濃度についての標準曲線の較正範囲。血漿試料、標準曲線、品質管理のために、全ての希釈物を、1%マトリックス濃度をもたらすC57BL/6マウス血漿を含むアッセイ緩衝液中で調製した。血漿試料を2つの異なる希釈液(1:100~1:400,000)で分析した。分析感度は100%血漿中で90pMであった。
【0374】
結果
【表54】
【0375】
【表55】
図1A
図1B
図2
【配列表】
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【外国語明細書】