(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094629
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ワイパ制御装置
(51)【国際特許分類】
B60S 1/46 20060101AFI20230629BHJP
B60S 1/08 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B60S1/46 G
B60S1/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210029
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小堀 成光
【テーマコード(参考)】
3D225
【Fターム(参考)】
3D225AA01
3D225AC01
3D225AD02
3D225AG59
3D225AG77
3D225AG78
(57)【要約】
【課題】ウォッシャ液の噴射後に自動で行われるワイパ部材の払拭動作の後に、使用者の好みのタイミングでワイパ部材を自動で払拭動作させるよう学習可能なワイパ制御装置を提供する。
【解決手段】後払拭制御部62による後払拭制御での待機時間が、連動制御部61cによる連動制御が終了してから使用者によりワイパスイッチ21がオン操作されるまでの経過時間よりも短い時間に設定される。これにより、使用者の好みのタイミングで、自動で後払拭動作をさせることが可能となる。したがって、ワイパスイッチ21を追加で操作する必要がなくなり、利便性を向上させることが可能となる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイパ部材を払拭動作させるワイパモータと、
ワイパスイッチのオン操作により前記ワイパモータを駆動するコントローラと、
を備えたワイパ制御装置であって、
前記コントローラは、
ウォッシャ装置を作動させるウォッシャスイッチのオン操作により、前記ワイパモータを駆動して連動制御を行う連動制御部と、
前記連動制御が終了してから待機時間が経過した後に、前記ワイパモータを駆動して後払拭制御を行う後払拭制御部と、
を有し、
前記後払拭制御部は、
前記連動制御が終了してから前記ワイパスイッチがオン操作されるまでの経過時間が前記待機時間よりも短い場合に、前記経過時間よりも短い時間を次回の前記後払拭制御における前記待機時間とする、
ワイパ制御装置。
【請求項2】
前記後払拭制御部は、
前記後払拭制御中に前記ワイパスイッチのオン操作が無い場合に、短い時間に設定された前記待機時間を長くする、
請求項1に記載のワイパ制御装置。
【請求項3】
前記後払拭制御部は、
前記後払拭制御中に前記ワイパスイッチのオン操作が無い時間が長くなるに連れて前記待機時間を徐々に長くしていき、当該待機時間が比較閾値を超えた場合に、前記後払拭制御を終了させる、
請求項2に記載のワイパ制御装置。
【請求項4】
前記後払拭制御部は、
前記経過時間が前記待機時間よりも短い場合で、かつ前記ワイパスイッチのオン操作時間が前記ワイパ部材の一往復の払拭動作に掛かる時間よりも短い場合に、前記経過時間よりも短い時間を次回の前記後払拭制御における前記待機時間とする、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイパ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイパ部材を払拭動作させるワイパモータと、ワイパモータを駆動するコントローラと、を備えたワイパ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の前方にはワイパ装置が搭載されている。ワイパ装置は、運転席側ワイパ部材および助手席側ワイパ部材と、これらのワイパ部材を払拭動作させるワイパモータと、を備えている。そして、車室内のワイパスイッチ等を操作することでワイパモータが作動し、これによりワイパ部材がウィンドガラス上を払拭動作する。よって、ウィンドガラスに付着した雨水等が払拭される。
【0003】
また、ウィンドガラスに埃等が付着した場合には、車室内のウォッシャスイッチを操作して、ウィンドガラス上にウォッシャ液を噴射させつつワイパ部材を払拭動作させることが行われる。これにより付着物を湿らせて、ウィンドガラスを傷付けずに綺麗にすることができる。なお、運転席側ワイパ部材の払拭範囲および助手席側ワイパ部材の払拭範囲には、互いに重ねられたラップエリアが存在する。
【0004】
例えば、特許文献1では、ウィンドガラスの略中央部分でかつラップエリア外の部分にウォッシャ液が残り易くなっている。つまり、一方のワイパ部材の往路払拭動作で集められたラップエリア内のウォッシャ液は、他方のワイパ部材の復路払拭動作で払拭される。その一方で、一方のワイパ部材の往路払拭動作で集められたラップエリア外のウォッシャ液は、他方のワイパ部材の復路払拭動作で払拭されずにその場に残る。
【0005】
そこで、特許文献1に記載されたワイパ装置では、ウォッシャ液を噴射した後にワイパ部材を自動で2回ほど払拭動作(往復移動)させ、ラップエリア外に残って払拭範囲に垂れ落ちたウォッシャ液を払拭するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、ウィンドガラスの傾斜角度や車両の走行速度によっては、ラップエリア外に多くのウォッシャ液が残る場合がある。この場合、自動で行われるワイパ部材の払拭動作(2回)の後でも、ラップエリア外にウォッシャ液が残り、当該ウォッシャ液が払拭範囲に垂れ落ちてしまう。そこで、使用者によっては、ワイパスイッチを追加で操作して、払拭範囲に垂れ落ちたウォッシャ液を払拭するようにしていた。
【0008】
本発明の目的は、ウォッシャ液の噴射後に自動で行われるワイパ部材の払拭動作の後に、使用者の好みのタイミングでワイパ部材を自動で払拭動作させるよう学習可能なワイパ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様では、ワイパ部材を払拭動作させるワイパモータと、ワイパスイッチのオン操作により前記ワイパモータを駆動するコントローラと、を備えたワイパ制御装置であって、前記コントローラは、ウォッシャ装置を作動させるウォッシャスイッチのオン操作により、前記ワイパモータを駆動して連動制御を行う連動制御部と、前記連動制御が終了してから待機時間が経過した後に、前記ワイパモータを駆動して後払拭制御を行う後払拭制御部と、を有し、前記後払拭制御部は、前記連動制御が終了してから前記ワイパスイッチがオン操作されるまでの経過時間が前記待機時間よりも短い場合に、前記経過時間よりも短い時間を次回の前記後払拭制御における前記待機時間とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、後払拭制御における待機時間が、連動制御が終了してからワイパスイッチがオン操作されるまでの経過時間よりも短い時間に設定される。これにより、使用者の好みのタイミングで、自動で後払拭動作をさせることが可能となる。したがって、ワイパスイッチを追加で操作する必要がなくなり、利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】車両に搭載されたワイパ制御装置の概要図である。
【
図2】
図1のワイパモータを出力軸側から見た平面図である。
【
図3】
図1のワイパモータをカバー側から見た平面図である。
【
図5】[通常モード]の動作を示すフローチャートである。
【
図6】[通常モード]の前半の動作を示すタイムチャートである。
【
図7】[通常モード]の後半の動作を示すタイムチャートである。
【
図8】[後払拭モード]の動作を示すフローチャートである。
【
図9】[後払拭モード]の動作を示すタイムチャートである。
【
図10】[後払拭解除モード]の動作を示すフローチャートである。
【
図11】[後払拭解除モード]の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
図1は車両に搭載されたワイパ制御装置の概要図を、
図2は
図1のワイパモータを出力軸側から見た平面図を、
図3は
図1のワイパモータをカバー側から見た平面図を、
図4は
図1のワイパ制御装置のブロック図を、
図5は[通常モード]の動作を示すフローチャートを、
図6は[通常モード]の前半の動作を示すタイムチャートを、
図7は[通常モード]の後半の動作を示すタイムチャートを、
図8は[後払拭モード]の動作を示すフローチャートを、
図9は[後払拭モード]の動作を示すタイムチャートを、
図10は[後払拭解除モード]の動作を示すフローチャートを、
図11は[後払拭解除モード]の動作を示すタイムチャートをそれぞれ示している。
【0014】
図1に示されるように、自動車等の車両10の前方側には、ウィンドガラス11が設けられている。また、ウィンドガラス11の前方側(図中下側)には、当該ウィンドガラス11に付着した雨水や埃等を払拭して、運転者等の視界を確保するワイパ制御装置20が設けられている。ワイパ制御装置20は、ワイパ駆動機構30を備え、当該ワイパ駆動機構30は、車両10のエンジンルームを形成するバルクヘッドの内部等(図示せず)に搭載されている。
【0015】
ワイパ駆動機構30は、車室内に設けられたワイパスイッチ21をオン操作することで駆動されるワイパモータ31と、車両10に回動自在に設けられたDR側(運転席側)およびAS側(助手席側)ピボット軸32,33と、基端側がそれぞれのピボット軸32,33に固定され、先端側がウィンドガラス11上で払拭動作されるDR側およびAS側ワイパ部材34,35と、ワイパモータ31の出力をそれぞれのピボット軸32,33に伝達するリンク機構36と、を備えている。
【0016】
DR側ワイパ部材34は、DR側ワイパアーム34aおよびDR側ワイパブレード34bを備えている。DR側ワイパアーム34aの基端部は、DR側ピボット軸32に固定されている。DR側ワイパアーム34aの先端部には、DR側ワイパブレード34bが装着されている。また、AS側ワイパ部材35は、AS側ワイパアーム35aおよびAS側ワイパブレード35bを備えている。AS側ワイパアーム35aの基端部は、AS側ピボット軸33に固定されている。AS側ワイパアーム35aの先端部には、AS側ワイパブレード35bが装着されている。
【0017】
そして、ワイパモータ31の駆動により、リンク機構36を介してDR側ワイパブレード34bおよびAS側ワイパブレード35bが同期して揺動し、ウィンドガラス11上をそれぞれ払拭動作する。これにより、図中二点鎖線で囲ったDR側払拭範囲11aおよびAS側払拭範囲11bに付着した雨水や埃等が払拭される。なお、図中符号LRPは、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bの「下反転位置」を示し、図中符号URPは、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bの「上反転位置」を示し、図中符号HPは、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bの「格納位置」を示している。
【0018】
つまり、ワイパモータ31の動作中は、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bは、下反転位置LRPと上反転位置URPとの間を往復移動する。これに対し、ワイパモータ31を停止させる(ワイパスイッチ21をオフ操作する)と、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bは、それぞれ格納位置HPで停止される。なお、格納位置HPは、車両10の外部から見え難い位置、例えば、ボンネットで覆われる位置に設けられている。これにより、ワイパモータ31の停止時には、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bは隠されて、車両10の空力特性が向上し、かつ車両10の見栄えが良くなる。
【0019】
図1に示されるように、DR側払拭範囲11aおよびAS側払拭範囲11bは、それぞれ略扇形に形成されている。また、DR側およびAS側払拭範囲11a,11bは、互いに重ねられたラップエリア11cを備えている。ラップエリア11cには、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bの双方が、それぞれ払拭動作の際に通過するようになっている。
【0020】
これにより、AS側ワイパブレード35bが上反転位置URPに向けて移動(往路払拭)した際に集められたウォッシャ液Wのうち、ラップエリア11c内にあるウォッシャ液Wは、DR側ワイパブレード34bの下反転位置LRPへの移動(復路払拭)の際に払拭される。これに対し、AS側ワイパブレード35bの往路移動の際に集められたウォッシャ液Wのうち、ラップエリア11c外にあるウォッシャ液W(図中網掛部分)は、DR側ワイパブレード34bの復路移動により払拭されずにその場に残る。
【0021】
よって、ラップエリア11c外にあるウォッシャ液Wは、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bが停止した後、例えば、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bがそれぞれ格納位置HPで停止した後に、DR側およびAS側払拭範囲11a,11bに垂れ落ちてしまう。
【0022】
そこで、本実施の形態に係るワイパ制御装置20では、このようなDR側およびAS側払拭範囲11a,11bに垂れ落ちるウォッシャ液Wを、使用者(運転者等)の好みにタイミングで、自動で払拭することが可能となっている。当該ワイパ制御装置20の機能、つまり「後払拭制御」の内容については、後で詳しく説明する。
【0023】
ワイパ制御装置20は、さらに、ウォッシャ装置40を備えている。ウォッシャ装置40は、車室内に設けられたウォッシャスイッチ41をオン操作することで作動する。これにより、図中破線で示されるように、ウォッシャ液Wがウィンドガラス11に向けて噴射される。具体的には、ウォッシャ装置40は、ウォッシャ液Wを貯留するウォッシャタンク(図示せず)と、ウォッシャタンクに貯留されたウォッシャ液Wを吸い上げるウォッシャポンプ(図示せず)と、ウォッシャポンプの動作によりウォッシャ液Wを噴射するDR側ウォッシャノズル42およびAS側ウォッシャノズル43と、を備えている。
【0024】
図2ないし
図4に示されるように、ワイパモータ31は、ブラシレスモータを採用する。ワイパモータ31は、その外郭を形成するモータハウジング50と、モータハウジング50の開口部分を閉塞するモータカバー51およびギヤカバー52と、を備えている。なお、モータハウジング50はアルミダイカスト製であり、モータカバー51およびギヤカバー52はプラスチック製である。
【0025】
モータハウジング50は、モータ部53を収容するモータ収容部50aを備えている。また、モータハウジング50には、減速機構部54を収容する減速機構収容部50bが設けられている。モータ部53は、モータ収容部50aに圧入固定されるステータ53aを備えており、当該ステータ53aには、U相,V相,W相の三相のコイルCL1,CL2,CL3がデルタ結線で巻装されている。なお、これらのコイルCL1,CL2,CL3は、デルタ結線に限らずスター結線で巻装することもできる。
【0026】
モータ部53は、ロータ53bを備えている。ロータ53bは、ステータ53aの径方向内側に、所定の隙間(エアギャップ)を介して回転自在に設けられている。ロータ53bは、複数の鋼板(図示せず)を積層することで略円柱状に形成され、合計4つの永久磁石53cを有している。これらの永久磁石53cは、ロータ53bの周方向に極性が交互に並ぶよう等間隔(90度間隔)で配置されている。なお、ロータ53bの構造には、ロータ53bの内部に永久磁石53cを埋設したIPM(Interior Permanent Magnet)構造や、ロータ53bの外周表面に永久磁石53cを貼付したSPM(Surface Permanent Magnet)構造を採用することができる。
【0027】
モータ部53は、回転軸53dを備えている。回転軸53dは、ロータ53bの回転中心に固定され、回転軸53dの基端側(
図2の上側)は、モータカバー51の内部にまで延びている。一方、回転軸53dの先端側(
図2の下側)は、モータハウジング50の減速機構収容部50bの内部にまで延びている。そして、回転軸53dは、モータハウジング50の内部に設けられた複数の軸受(図示せず)により回転自在に支持されている。
【0028】
回転軸53dの先端側には、減速機構部54を形成するウォーム54aが一体に設けられている。また、回転軸53dのウォーム54aとロータ53bとの間には、回転軸用磁石MG1が固定されている。回転軸用磁石MG1は、回転軸53dの回転数の検出や、ロータ53bのステータ53aに対する回転位置の検出に用いられる。これにより、回転軸53dの回転状態を、精度良く制御可能となっている。
【0029】
また、モータハウジング50の減速機構収容部50bの内部には、減速機構部54を形成するウォームホイール54bが回転自在に収容されている。ウォームホイール54bは、例えばPOM(ポリアセタール)プラスチック等の樹脂材料により円盤状に形成され、その外周部分にはギヤ歯54c(詳細図示せず)が形成されている。そして、ウォームホイール54bのギヤ歯54cは、ウォーム54aに噛み合わされている。
【0030】
ウォームホイール54bの回転中心には、出力軸54dの基端側が固定されており、出力軸54dの先端側はモータハウジング50の外部に配置されている。そして、出力軸54dの先端部分には、リンク機構36(
図1参照)が固定されている。これにより、回転軸53dの回転数がウォーム54aおよびウォームホイール54b(減速機構部54)により減速され、この減速されて高トルク化された出力が、出力軸54dからリンク機構36に出力される。
【0031】
また、ウォームホイール54bの回転中心で、かつウォームホイール54bの出力軸54d側とは反対側の面には、
図3に示されるように、略円盤状に形成された出力軸用磁石MG2が設けられている。出力軸用磁石MG2は、出力軸54d(
図2参照)のモータハウジング50に対する回転位置の検出に用いられる。これにより、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bのDR側およびAS側払拭範囲11a,11bに対する位置を、正確に検知可能となっている。
【0032】
さらに、
図3に示されるように、ギヤカバー52の内側には、制御基板60が装着されている。制御基板60には、ギヤカバー52に一体に設けられたコネクタ接続部52aに接続される車両10側の外部コネクタCNを介して、車載バッテリ(図示せず)と、ワイパスイッチ21およびウォッシャスイッチ41(
図1および
図4参照)と、が電気的に接続されている。なお、制御基板60は、本発明におけるコントローラに相当する。
【0033】
図4に示されるように、制御基板60には、モータ部53の回転状態を制御するワイパ駆動制御部61が設けられている。ワイパ駆動制御部61には、ワイパスイッチ21およびウォッシャスイッチ41が電気的に接続されている。また、ワイパ駆動制御部61には、車載バッテリおよびU相,V相,W相から成るコイルCL1,CL2,CL3が電気的に接続されている。そして、ワイパ駆動制御部61は、インバータ回路61a,PWM信号生成部61bおよび連動制御部61cを備えている。
【0034】
インバータ回路61aは、FET等の半導体素子から成る複数のスイッチング素子(図示せず)を備えている。そして、ワイパ駆動制御部61は、それぞれのスイッチング素子を高速で切り替えることで、三相のコイルCL1,CL2,CL3のそれぞれに個別に駆動電流を供給する。よって、ロータ53bが所定の駆動トルクおよび回転速度で回転する。
【0035】
PWM信号生成部61bは、インバータ回路61aのそれぞれのスイッチング素子をオンオフ制御するためのデューティ比を生成する。そして、ワイパ駆動制御部61は、生成されたデューティ比に基づいて、インバータ回路61aのそれぞれのスイッチング素子をオンオフ制御する。これにより、それぞれのコイルCL1,CL2,CL3に供給される駆動電流の大きさが調整される。
【0036】
連動制御部61cは、ウォッシャ装置40を作動させるウォッシャスイッチ41のオン操作により、ウォッシャ装置40の動作に合わせてワイパモータ31を連動制御する。具体的には、連動制御部61cは、ウォッシャスイッチ41からのオン操作信号の入力に基づいてワイパモータ31を駆動し、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bを、DR側およびAS側払拭範囲11a,11bのそれぞれにおいて払拭動作させる。
【0037】
このとき、ウォッシャ装置40には、ウォッシャスイッチ41からのオン操作信号が直接入力される。そのため、ウォッシャ装置40を形成するウォッシャポンプも作動する。これにより、DR側およびAS側ウォッシャノズル42,43からウォッシャ液W(
図1参照)が噴射される。
【0038】
具体的には、連動制御部61cは、ウォッシャスイッチ41からオン操作信号が入力されるとワイパモータ31を駆動して、格納位置HPにあるDR側およびAS側ワイパブレード34b,35bを、下反転位置LRPと上反転位置URPとの間で3回払拭動作(往復移動)させる。その後、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bは、格納位置HPに戻される(
図6参照)。これにより、DR側およびAS側払拭範囲11a,11bに付着した付着物を湿らせて、DR側およびAS側払拭範囲11a,11bを傷付けずに綺麗にすることができる。
【0039】
ここで、ワイパ駆動制御部61は、ウォッシャスイッチ41からのオン操作信号の入力とは別に、ワイパスイッチ21からのオン操作信号のみの入力に基づいて、ワイパモータ31を駆動可能となっている。なお、ワイパスイッチ21からのオン操作信号の種類には、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bを1回だけ往復移動させる「MIST」信号や、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bを所定のインターバルで連続して往復移動させる「INT」信号、さらにはDR側およびAS側ワイパブレード34b,35bを低速および高速で連続して往復移動させる「LOW」信号および「HIGH」信号がある。
【0040】
さらに、制御基板60には、連動制御部61cによる連動制御が終了してから所定の待機時間が経過した後に、ワイパモータ31を自動で駆動して後払拭制御を行う後払拭制御部62が設けられている。ここで、後払拭制御とは、ウォッシャスイッチ41のオン操作により上述の連動制御を行った後に、DR側およびAS側払拭範囲11a,11bに垂れ落ちるウォッシャ液Wを、使用者(運転者等)のワイパスイッチ21の操作に依らず、使用者の好みのタイミングで、自動で払拭する制御のことである。
【0041】
後払拭制御部62は、経過時間記憶部62a,待機時間設定部62bおよび制御モード決定部62cを備えている。経過時間記憶部62aは、連動制御部61cによる連動制御が終了してからワイパスイッチ21がオン操作されるまでの経過時間を記憶する。そのため、経過時間記憶部62aには、ワイパスイッチ21からの操作信号(オン操作信号)およびワイパ駆動制御部61からの連動制御情報(連動制御中か否かを示す信号)が入力される。
【0042】
また、待機時間設定部62bでは、待機時間が記憶されるとともに、以下に示されるような2つの作業が行われる。
【0043】
第1に、待機時間設定部62bは、経過時間記憶部62aに記憶された経過時間が、所定の待機時間よりも短い場合(経過時間<待機時間)に、経過時間よりも短い時間を、次回の後払拭制御における待機時間とする。
【0044】
第2に、後払拭制御中にワイパスイッチ21のオン操作が無い場合(オン操作信号の入力が無い場合)に、短い時間に設定された待機時間を長くする。
【0045】
すなわち、待機時間は、使用者によるワイパスイッチ21の操作のタイミングに応じて、長くなったり短くなったりする変数となっている。
【0046】
制御モード決定部62cは、経過時間記憶部62aに記憶された経過時間および待機時間設定部62bで設定された待機時間に基づいて、三種類の制御モードの中から所定の制御モードを選択(決定)する処理を行う。ここで、制御モードには、後払拭制御を行わない[通常モード]、後払拭制御を行う[後払拭モード]および、後払拭モードから通常モードに戻す[後払拭解除モード]の三種類がある。
【0047】
そして、制御モード決定部62cで決定された制御モード信号(三種類のうちの1つ)が、ワイパ駆動制御部61に送出される。これにより、ワイパ駆動制御部61は、制御モード決定部62cで決定された所定の制御モードにしたがって、ワイパモータ31のモータ部53を制御する。
【0048】
次に、以上のように形成されたワイパ制御装置20の動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0049】
[通常モード]
図5に示されるように、まず、ステップS1において、イグニッションスイッチIGN(
図6および
図7参照)のオン操作に伴い、ワイパ制御装置20の制御がスタートする(
図6の時間t1)。
【0050】
続くステップS2では、ワイパ駆動制御部61により、ウォッシャスイッチ41がオン操作されたか否か、つまりウォッシャスイッチ41からのオン操作信号が入力されたか否かを判定する。ステップS2で「no」と判定された場合、つまりウォッシャスイッチ41がオン操作されていない場合には、ステップS2の判定処理が繰り返し行われる。一方、ステップS2で「yes」と判定された場合、つまりウォッシャスイッチ41がオン操作された場合には、ステップS3に進む(
図6の時間t2)。
【0051】
ステップS3では、連動制御部61cにより、ウォッシャ装置40の動作に合わせてワイパモータ31を駆動する連動制御を行う。具体的には、ウォッシャスイッチ41のオン操作によりウォッシャ装置40が作動して、ウィンドガラス11に向けてウォッシャ液Wが噴射される。これに引き続き、連動制御部61cは、ディレイ時間DT(
図6の時間t3-t2)が経過した後に、ワイパモータ31を駆動する。
【0052】
そして、連動制御部61cは、格納位置HPにあるDR側およびAS側ワイパブレード34b,35bを、下反転位置LRPと上反転位置URPとの間で3回ほど払拭動作(連動動作)させる。その後、連動制御部61cは、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bを、格納位置HPに戻す(
図6の時間t3からt11の間)。
【0053】
ここで、ウォッシャ液Wが噴射されてからワイパモータ31を駆動するまでにディレイ時間DTを設けているが、これは、ウォッシャ装置40から噴射されたウォッシャ液Wを、DR側およびAS側払拭範囲11a,11bにそれぞれ満遍なく行き渡らせるための待ち時間となっている。また、このような待ち時間を設けることで、ウィンドガラス11に付着した埃等が十分に湿って払拭し易くなる。
【0054】
なお、時間t3からt5の間に、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bは、連動動作1回目の往路側(格納位置HPから上反転位置URP)への払拭動作を行い、時間t5からt6の間に、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bは、連動動作1回目の復路側(上反転位置URPから下反転位置LRP)への払拭動作を行う。
【0055】
また、時間t6からt7の間に、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bは、連動動作2回目の往路側(下反転位置LRPから上反転位置URP)への払拭動作を行い、時間t7からt8の間に、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bは、連動動作2回目の復路側(上反転位置URPから下反転位置LRP)への払拭動作を行う。
【0056】
さらに、時間t8からt9の間に、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bは、連動動作3回目の往路側(下反転位置LRPから上反転位置URP)への払拭動作を行い、時間t9,t10,t11において、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bは、連動動作3回目の復路側(上反転位置URPから下反転位置LRP)への払拭動作および下反転位置LRPから格納位置HPへの格納動作を行う。
【0057】
図5に示されるように、ステップS4では、後払拭制御部62により、ウォッシャスイッチ41のオン操作時間(連続してオン操作されている時間)が、所定時間TM1(≒3sec)以上であるか否かを判定する。ここで、所定時間TM1は、
図6の時間t4-t2に相当し、ウォッシャ液Wの噴射量が多いのか少ないのかを判定する基準となっている。すなわち、所定時間TM1が3sec以上であると、ウォッシャ液Wの噴射量が多いと判定でき、所定時間TM1が3sec未満であると、ウォッシャ液Wの噴射量が少ないと判定できる。
【0058】
そして、ステップS4で「no」と判定された場合には、ウォッシャ液Wの噴射量が少なく、ラップエリア11c(
図1参照)外にもウォッシャ液Wが殆ど無いとして、上流側のステップS2に戻る処理が行われる。これに対し、ステップS4で「yes」と判定した場合には、ウォッシャ液Wの噴射量が多く、ラップエリア11c外にも多くのウォッシャ液Wが残っているとして、ステップS5に進む。
【0059】
ステップS5では、後払拭制御部62が、連動制御部61cによる連動制御が終了(
図6の時間t11)してから、所定時間TM2(≒5sec)以上経過したか否かを判定する。そして、ステップS5において5sec以上経過しておらず「no」と判定された場合にはステップS6に進み、ステップS5において5sec以上経過しており「yes」と判定された場合にはステップS7に進む。
【0060】
ステップS6では、ワイパ駆動制御部61および後払拭制御部62により、ワイパスイッチ21がオン操作されたか否かが判定される。そして、ステップS6で「no」と判定(ワイパスイッチ21の操作無)された場合には、上流側のステップS5に戻る処理が行われる。これに対し、ステップS6で「yes」と判定(ワイパスイッチ21の操作有)された場合には、ステップS8に進む。そして、ステップS8では、ワイパ駆動制御部61により、ワイパモータ31が駆動される(
図7の時間t12)。
【0061】
続くステップS9では、後払拭制御部62の待機時間設定部62bにより、ステップS7でオン操作されたワイパスイッチ21のオン操作時間(連続してオン操作されている時間)が、所定時間TM3(≒1.5sec)以内であるか否かを判定する。ここで、所定時間TM3は、
図7の時間t13-t12に相当し、ワイパモータ31が継続して駆動されているのか否かを判定する基準となっている。つまり、所定時間TM3が1.5secよりも大きいと、降雨等によりワイパモータ31が継続して駆動されていると判定でき、所定時間TM3が1.5sec以内であると、DR側およびAS側払拭範囲11a,11bに垂れ落ちたウォッシャ液Wを払拭するためにワイパモータ31が一時的に駆動されていると判定できる。
【0062】
ここで、本実施の形態では、ステップS6におけるワイパスイッチ21のオン操作が、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bを1回だけ往復移動させる「MIST」操作(払拭動作1回)となっている。
【0063】
具体的には、ワイパスイッチ21の「MIST」操作に伴い、
図7の時間t12からt14の間に、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bは、往路側(格納位置HPから上反転位置URP)への払拭動作を行い、時間t14,t15,t16において、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bは、復路側(上反転位置URPから下反転位置LRP)への払拭動作および下反転位置LRPから格納位置HPへの格納動作を行う。
【0064】
なお、ステップS6におけるワイパスイッチ21のオン操作には、「MIST」操作以外にも、例えば、「INT」操作を一時的に行う場合も含まれる。これにより、ステップS9における判定が「yes」判定となる。より具体的には、ステップS9での判定基準となる所定時間TM3(≒1.5sec)は、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bの一往復の払拭動作(下反転位置LRPと上反転位置URPとの間の往復移動)に掛かる時間(≒「LOW」操作時の往復移動に掛かる時間)に設定されている。
【0065】
そして、ステップS9で「no」と判定された場合には、降雨時におけるワイパモータ31の駆動(連続駆動)であるとして、上流側のステップS2に戻る処理が行われる。これに対し、ステップS9で「yes」と判定された場合には、DR側およびAS側払拭範囲11a,11bに垂れ落ちたウォッシャ液Wを払拭するためのワイパモータ31の駆動(一時的な駆動)であるとして、ステップS10に進む。
【0066】
続くステップS10では、待機時間設定部62bにより、連動制御部61cによる連動制御が終了してから、使用者によりワイパスイッチ21がオン操作されるまでの経過時間tm0(
図7の時間t12-t11に相当)が、後で行われる[後払拭モード]における待機時間の基準となる基準時間Te0に設定される(tm0=Te0)。なお、連動制御が終了してからワイパスイッチ21がオン操作されるまでの経過時間tm0は、後払拭制御部62の経過時間記憶部62aに記憶される。
【0067】
また、ステップS10では、ステップS9での所定時間TM3が1.5sec以内であるとの判定に基づいて、後払拭制御部62の制御モード決定部62cにより、[後払拭モード]を選択する処理が行われる。これにより、ステップS11において、ワイパ制御装置20の制御状態が[通常モード]から[後払拭モード]へと移行する。
【0068】
なお、ステップS5で「yes」と判定された後のステップS7では、連動制御部61cによる連動制御が終了してから5sec以上経過したことに伴い、後払拭制御部62によりタイムアウト処理が行われる。具体的には、後払拭制御部62は、タイマー(図示せず)を停止させるとともに、今までの積算値(TM1,TM2,TM3)をリセットする(タイマーリセット)。その後、上流側のステップS2に戻る処理が行われる。
【0069】
このように、ステップS5,ステップS6およびステップS7での一連の処理では、連動制御部61cによる連動制御が終了してから所定時間TM2未満において、使用者がワイパスイッチ21を操作したか否かを検出する。言い換えれば、所定時間TM2(≒5sec)は、ラップエリア11c外からDR側およびAS側払拭範囲11a,11bに垂れ落ちたウォッシャ液Wを、使用者の意思により払拭されるのか否か(使用者は払拭する気があるのか否か)を判定する基準となっている。
【0070】
ここで、
図7の時間t17に示されるように、イグニッションスイッチIGNをオフ操作しても、待機時間設定部62bにより設定された基準時間Te0は消去されずに保持される。また、制御モード決定部62cにより[後払拭モード]に選択されたことも消去されずに保持される。そして、次回のイグニッションスイッチIGNのオン操作後に、基準時間Te0に基づく待機時間Te0-αに設定された[後払拭モード]にしたがい、ワイパ制御装置20が後払拭制御される。
【0071】
[後払拭モード]
図8に示されるように、[後払拭モード]においても、ステップS1におけるイグニッションスイッチIGN(
図9参照)のオン操作に伴い、ワイパ制御装置20の制御(後払拭制御)がスタートする(
図9の時間t1)。
【0072】
以下、[通常モード]と異なる動作部分(
図8の網掛部分の処理)について、図面を用いて説明する。なお、[通常モード]と同じ部分には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0073】
図8のステップS20では、
図5のステップS5での処理に換えて、後払拭制御部62が、連動制御部61cによる連動制御が終了(
図9の時間t11)してから、待機時間Te0-α以上経過したか否かを判定する。ここで、待機時間Te0-αは、待機時間設定部62bにより設定される時間である。具体的には、前回の[通常モード]で設定された基準時間Te0から補正時間αの分だけ引いた時間である。なお、補正時間αは1sec程度の定数となっている。これにより、前回の[通常モード]での経過時間tm0(使用者のタイミング)よりも若干短い時間(Te0-α)が、今回の[後払拭モード]における待機時間とされる。
【0074】
その後、ステップS20で「no」と判定された場合にはステップS6に進み、ステップS20で「yes」と判定された場合にはステップS21に進む。
【0075】
ステップS21では、制御モード決定部62cにおいて[後払拭モード]が選択されていること、および待機時間設定部62bで補正時間αの分だけ短く設定された待機時間Te0-αが経過したことに基づいて、ワイパ駆動制御部61によりワイパモータ31が自動で駆動(後払拭)される。なお、待機時間Te0-αは、
図9の時間t18-t11に相当する。
【0076】
これにより、前回の[通常モード]において使用者がワイパスイッチ21を操作したタイミングよりも、補正時間αの分だけ早くワイパモータ31が自動で駆動される。よって、使用者の好みのタイミングでDR側およびAS側ワイパブレード34b,35bが自動で払拭動作され、ひいては利便性が向上する。
【0077】
ここで、使用者によるワイパスイッチ21の「MIST」操作と同様に、
図9の時間t18からt19の間に、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bは、往路側(格納位置HPから上反転位置URP)への払拭動作を行い、時間t19,t20,t21において、DR側およびAS側ワイパブレード34b,35bは、復路側(上反転位置URPから下反転位置LRP)への払拭動作および下反転位置LRPから格納位置HPへの格納動作を行う(払拭動作1回)。
【0078】
続くステップS22では、後払拭制御部62の制御モード決定部62cにより、[後払拭解除モード]を選択する処理が行われる。ステップS22では、制御モード決定部62cが、その上流側の処理において使用者がワイパスイッチ21をオン操作していないことに基づいて、後払拭制御が不要であると判断する。そして、ワイパ制御装置20の制御状態を[後払拭モード]から[後払拭解除モード]へと移行させる。
【0079】
また、待機時間Te0-αが経過する前に使用者によりワイパスイッチ21がオン操作された場合、つまり連動制御部61cによる連動制御が終了してから使用者によりワイパスイッチ21がオン操作されるまでの経過時間tm1(tm1<tm0)が待機時間Te0-αよりも短い場合で、かつワイパスイッチ21のオン操作時間が所定時間TM3以内である場合には、ステップS23に進む。
【0080】
ステップS23では、待機時間設定部62bにより、連動制御部61cによる連動制御が終了してから、使用者によりワイパスイッチ21がオン操作されるまでの経過時間tm1(tm1<Te0-α)が、後で行われる[後払拭モード]における待機時間の基準となる基準時間Te1に設定される(tm1=Te1)。なお、連動制御が終了してからワイパスイッチ21がオン操作されるまでの経過時間tm1においても、後払拭制御部62の経過時間記憶部62aに記憶される。
【0081】
そして、その後の後払拭制御において、連動制御が終了してからワイパスイッチ21がオン操作されるまでの経過時間が連続して次々と短くなっていく場合、つまり経過時間がtm1>tm2>tm3…のように続けて短くなっていく場合には、次回以降の後払拭制御における待機時間も続けて短くなっていく。具体的には、次回以降の待機時間は、補正時間αが毎回引かれつつ、Te1-α>Te2-α>Te3-α…のように続けて短くなるよう更新されていく。このように、後払拭制御部62は、使用者の好みに応じて、ワイパモータ31を自動で駆動する後払拭制御のタイミングを学習していく。
【0082】
[後払拭解除モード]
図10に示されるように、[後払拭解除モード]においても、ステップS1におけるイグニッションスイッチIGNのオン操作に伴い、ワイパ制御装置20の制御がスタートする。
【0083】
以下、[通常モード]と異なる動作部分(
図10の網掛部分の処理)について、図面を用いて説明する。なお、[通常モード]と同じ部分には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0084】
図10のステップS30では、待機時間設定部62bにより、ステップS1でのイグニッションスイッチIGNのオン操作後に[後払拭解除モード]が何回繰り返されたかに応じて、後のステップS31において加算される補正時間βの値が設定される。具体的には、待機時間設定部62bは、[後払拭解除モード]の繰り返しの回数が増えるに連れて、補正時間βの値を大きくしていく。
【0085】
ステップS31では、
図5のステップS5での処理に換えて、後払拭制御部62が、連動制御部61cによる連動制御が終了してから、待機時間Te10-α+β以上経過したか否かを判定する。ここで、待機時間Te10-αは、[後払拭解除モード]に移行する前の[後払拭モード]において、待機時間設定部62bにより設定された最終的な待機時間であり、ある程度短い時間となっている(Te1-α>Te2-α>Te3-α>Te4-α>…>Te10-α)。
【0086】
また、待機時間Te10-αに加算される補正時間βは、[後払拭解除モード]に移行した初期段階では2sec程度に設定され、[後払拭解除モード]が繰り返されるにしたがい5sec程度の大きさにまで徐々に増加する変数である。
【0087】
その後、ステップS31で「no」と判定された場合にはステップS6に進み、ステップS31で「yes」と判定された場合にはステップS32に進む。
【0088】
ステップS32では、制御モード決定部62cにおいて[後払拭解除モード]が選択されていること、および待機時間設定部62bで補正時間βの分だけ長くなった待機時間Te10-α+βが経過したことに基づいて、ワイパ駆動制御部61によりワイパモータ31が自動で駆動(後払拭)される。すなわち、[後払拭解除モード]では、使用者によるワイパスイッチ21のオン操作が無い時間が長くなるに連れて、設定済の待機時間(Te10-α)に補正時間β(変数)を加算していき、短い時間に設定された待機時間を徐々に長くしていく処理を行う。
【0089】
ステップS33では、待機時間設定部62bにより、現在の待機時間Te10-α+βが予め設定された比較閾値THを超えたか否かを判定する。ステップS33で「no」と判定された場合には上流側のステップS30に進み、ステップS33で「yes」と判定された場合にはステップS34に進む。ステップS34では、後払拭制御部62の制御モード決定部62cにより、[通常モード]を選択する処理が行われる。つまり、ステップS34では、ワイパモータ31を自動で駆動して後払拭をする後払拭制御を終了させて、[通常モード]へ移行する処理が行われる。
【0090】
なお、ステップS33からステップS30に進んだ後は、当該ステップS30において、前回のステップS30の処理で設定された補正時間βよりも大きい補正時間βを設定する(今回のβ>前回のβ)。よって、当該処理の下流のステップS31における待機時間Te10-α+βは、前回のステップS31における待機時間Te10-α+βよりも大きくなる(今回のTe10-α+β>前回のTe10-α+β)。よって、このような[後払拭解除モード]の繰り返し、すなわち、使用者によるワイパスイッチ21のオン操作が無い時間が長くなり、ステップS30ないしステップS33の処理の繰り返しの回数が増えるに連れて、待機時間Te10-α+βは徐々に長くなっていく。
【0091】
また、待機時間Te10-α+βが経過する前に使用者によるワイパスイッチ21のオン操作が有った場合、つまり連動制御部61cによる連動制御が終了してから使用者によりワイパスイッチ21がオン操作されるまでの経過時間tm10(tm10>tm1)が待機時間Te10-α+βよりも短い場合で、かつワイパスイッチ21のオン操作時間が所定時間TM3以内である場合には、ステップS35に進む。
【0092】
ステップS35では、待機時間設定部62bにより、連動制御部61cによる連動制御が終了してから、使用者によりワイパスイッチ21がオン操作されるまでの経過時間tm10(tm10<Te10-α+β)が、後で行われる[後払拭モード]における待機時間の基準となる基準時間Te10に設定される(tm10=Te10)。なお、連動制御が終了してからワイパスイッチ21がオン操作されるまでの経過時間tm10においても、後払拭制御部62の経過時間記憶部62aに記憶される。
【0093】
このように、[後払拭解除モード]において、ステップS6においてワイパスイッチ21のオン操作が無い場合には、ステップS30ないしステップS33の処理が繰り返されて、やがてステップS34の処理へと進む。このように、[後払拭解除モード]で使用者によるワイパスイッチ21のオン操作が無い場合には、後払拭制御の待機時間が徐々に長くなって、その後、後払拭制御が終了されて[通常モード]へと復帰する。
【0094】
その一方で、[後払拭解除モード]において、ステップS6においてワイパスイッチ21がオン操作された場合で、かつワイパスイッチ21のオン操作時間が所定時間TM3以内であると、ステップS35を介してステップS11に進み、待機時間を短くしていく後払拭制御を行う[後払拭モード]へ移行する。
【0095】
ここで、以上のような[通常モード],[後払拭モード]および[後払拭解除モード]の流れをタイムチャートで示すと、
図11のようになる。
【0096】
時点P1では、ワイパ制御装置20は、連動制御部61cによる連動制御のみを行っており、後払拭制御を行わない[通常モード]で作動している状態となっている。なお、このときの待機時間は無限大(∞)である。
【0097】
時点P2は、ワイパ制御装置20が[通常モード]から[後払拭モード]に移行した後で、連動制御が終了してから自動で後払拭を始めるまでの待機時間が短く設定された状態を示している。
【0098】
時点P3は、ワイパ制御装置20が[後払拭モード]中で、待機時間が短い側に更新された状態を示している。
【0099】
時間P4ないしP6は、使用者によるワイパスイッチ21の操作が無いことに基づいて、ワイパ制御装置20が[後払拭解除モード]に移行して、その後[通常モード]に徐々に復帰していく状態を示している。
【0100】
以上詳述したように、本実施の形態に係るワイパ制御装置20によれば、後払拭制御における待機時間が、連動制御が終了してからワイパスイッチ21がオン操作されるまでの経過時間よりも短い時間に設定される。これにより、使用者の好みのタイミングで、自動で後払拭動作をさせることが可能となる。したがって、ワイパスイッチ21を追加で操作する必要がなくなり、利便性を向上させることが可能となる。
【0101】
また、本実施の形態に係るワイパ制御装置20によれば、後払拭制御部62の待機時間設定部62bは、後払拭制御中にワイパスイッチ21のオン操作が無い場合に、短い時間に設定された待機時間を長くする。これにより、他の使用者の好み(ウォッシャ液WのDR側およびAS側払拭範囲11a,11bへの垂れ落ちが気にならない)にも合わせることができる。
【0102】
さらに、本実施の形態に係るワイパ制御装置20によれば、後払拭制御部62の待機時間設定部62bは、後払拭制御中にワイパスイッチ21のオン操作が無い時間が長くなるに連れて待機時間を徐々に長くしていき、待機時間が比較閾値THを超えた場合に、後払拭制御を終了させる。これにより、使用者によっては無駄になる制御(後払拭制御)を停止させて、ひいては車両10の燃費向上を図ることが可能となる。
【0103】
また、本実施の形態に係るワイパ制御装置20によれば、後払拭制御部62の待機時間設定部62bは、経過時間が待機時間よりも短い場合で、かつワイパスイッチ21のオン操作時間がDR側およびAS側ワイパブレード34b,35bの一往復の払拭動作に掛かる時間よりも短い場合に、経過時間よりも短い時間を次回の後払拭制御における待機時間とする。これにより、降雨時におけるワイパモータ31の駆動(連続駆動)と、DR側およびAS側払拭範囲11a,11bに垂れ落ちたウォッシャ液Wを払拭するためのワイパモータ31の駆動(一時的な駆動)とを、容易に認識して、後払拭制御を精度良く行うことが可能となる。
【0104】
さらに、本実施の形態に係るワイパ制御装置20によれば、使用者によっては無駄になる後払拭制御を停止させるよう後払拭制御部62に学習させることができるので、ワイパ制御装置20への負荷を低減してワイパ制御装置20の長寿命化が図れ、かつ車両10燃費向上を図ることができる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)において、特に目標7(手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する)および目標13(気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る)に貢献することが可能となる。
【0105】
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上述の実施の形態では、制御ロジックに車両10の車速情報を組み入れていないが、車両10の車速によってはラップエリア11c外に残ったウォッシャ液Wを走行風で吹き飛ばすことができる。よって、車両10の車速が所定の車速(高速)以上である場合に、後払拭制御を行う[後払拭モード]への移行を行わないようにする制御ロジックを組み込むこともできる。この場合、無駄な後払拭を無くすことが可能となる。
【0106】
また、上述の実施の形態では、コントローラとしての制御基板60をワイパモータ31のギヤカバー52に装着したものを示したが、本発明はこれに限らず、車両10に搭載された車載コントローラに制御基板60を搭載しても構わない。
【0107】
さらに、上述の実施の形態では、所定時間TM1を3sec,所定時間TM2を5sec,所定時間TM3を1.5sec,補正時間(定数)αを1secおよび補正時間(変数)βを2sec~5secにそれぞれ設定したものを示したが、本発明はこれに限らず、ワイパ制御装置20を形成する部品の仕様(例えば、ウォッシャ装置40のウォッシャ液Wの吐出能力)に応じて、任意にチューニングすることができる。
【0108】
また、上述の実施の形態では、ワイパモータ31がブラシレスモータであるものを示したが、本発明はこれに限らず、ブラシ付きのモータを採用することもできる。
【0109】
さらに上述の実施の形態では、ワイパ制御装置20を、自動車等の車両に用いたものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、航空機や鉄道車両,建設機械等にも用いることができる。
【0110】
その他、上述の実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上述の実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0111】
10:車両,11:ウィンドガラス,11a:DR側払拭範囲,11b:AS側払拭範囲,11c:ラップエリア,20:ワイパ制御装置,21:ワイパスイッチ,30:ワイパ駆動機構,31:ワイパモータ,32:DR側ピボット軸,33:AS側ピボット軸,34:DR側ワイパ部材(ワイパ部材),34a:DR側ワイパアーム,34b:DR側ワイパブレード,35:AS側ワイパ部材(ワイパ部材),35a:AS側ワイパアーム,35b:AS側ワイパブレード,36:リンク機構,40:ウォッシャ装置,41:ウォッシャスイッチ,42:DR側ウォッシャノズル,43:AS側ウォッシャノズル,50:モータハウジング,50a:モータ収容部,50b:減速機構収容部,51:モータカバー,52:ギヤカバー,52a:コネクタ接続部,53:モータ部,53a:ステータ,53b:ロータ,53c:永久磁石,53d:回転軸,54:減速機構部,54a:ウォーム,54b:ウォームホイール,54c:ギヤ歯,54d:出力軸,60:制御基板(コントローラ),61:ワイパ駆動制御部,61a:インバータ回路,61b:PWM信号生成部,61c:連動制御部,62:後払拭制御部,62a:経過時間記憶部,62b:待機時間設定部,62c:制御モード決定部,CL1~CL3:コイル,CN:外部コネクタ,DT:ディレイ時間,HP:格納位置,IGN:イグニッションスイッチ,LRP:下反転位置,MG1:回転軸用磁石,MG2:出力軸用磁石,Te0:基準時間,Te0-α:待機時間,Te1:基準時間,Te10:基準時間,Te10-α:待機時間,TH:比較閾値,tm0:経過時間,tm1:経過時間,tm10:経過時間,TM1~TM3:所定時間,URP:上反転位置,W:ウォッシャ液,α:補正時間(定数),β:補正時間(変数)