(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094647
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】グルコシノレート含有組成物の製造方法、グルコシノレート含有組成物の乳化抑制方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20230629BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20230629BHJP
A23L 19/00 20160101ALI20230629BHJP
A23L 2/52 20060101ALN20230629BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L5/00 K
A23L19/00 A
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210064
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000104113
【氏名又は名称】カゴメ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】塚副 成
(72)【発明者】
【氏名】古口 勝
(72)【発明者】
【氏名】高田 渉
【テーマコード(参考)】
4B016
4B018
4B035
4B117
【Fターム(参考)】
4B016LC07
4B016LG05
4B016LP01
4B016LP02
4B016LP05
4B016LP11
4B016LP13
4B018MD53
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF03
4B018MF04
4B018MF05
4B018MF06
4B018MF07
4B018MF14
4B035LC06
4B035LG32
4B035LP01
4B035LP22
4B035LP23
4B035LP43
4B035LP44
4B035LP46
4B035LP59
4B117LC04
4B117LG07
4B117LP01
(57)【要約】
【課題】グルコシノレート含有組成物の製造において、、グルコシノレート含有植物から
グルコシノレートの抽出効率を高めつつ、グルコシノレート含有組成物の使用適性を高め
ること
【解決手段】当該課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討し発見したのは、グルコ
シノレート含有組成物からのグルコシノレートの回収において、少なくとも、破砕、及び
脱脂工程を備えることである。あわせて、破砕工程の後に、分画工程を備えることである
。
当該破砕工程で破砕されるのは、グルコシノレート含有植物である。当該脱脂工程で脱
脂されるのは、前記破砕されたグルコシノレート含有植物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコシノレート含有組成物の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以
下の工程である:
破砕:ここで破砕されるのは、グルコシノレート含有植物であり、
脱脂:ここで脱脂されるのは、前記破砕されたグルコシノレート含有植物であり、
分画:ここで分画されるのは、前記脱脂されたグルコシノレート含有植物である。
【請求項2】
グルコシノレート含有組成物の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以
下の工程である:
脱脂:ここで脱脂されるのは、グルコシノレート含有植物であり、
破砕:ここで破砕されるのは、前記脱脂されたグルコシノレート含有植物であり、
分画:ここで分画されるのは、前記破砕されたグルコシノレート含有植物である。
【請求項3】
グルコシノレート含有組成物の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、以
下の工程である:
破砕:ここで破砕されるのは、グルコシノレート含有植物であり、
分画:ここで分画されるのは、前記破砕されたグルコシノレート含有植物であり、これ
によって得られるのは、分画物であり、
脱脂:ここで脱脂されるのは、前記分画物である。
【請求項4】
請求項1乃至3の製造方法であって、
前記脱脂は、少なくとも有機溶媒を含有する液体を用いて行われる。
【請求項5】
請求項3の製造方法であって、
前記脱脂は、遠心分離によって行われる。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかの製造方法であって、
前記分画は、溶媒抽出、又は搾りである。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかの製造方法であって、それをさらに構成するのは、以下の工程で
ある:
加熱:ここで加熱されるのは、グルコシノレート含有植物であり、当該加熱は、前記破
砕の前に行われる。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかの製造方法であって、前記グルコシノレート含有植物の形態は、
種子である。
【請求項9】
グルコシノレート含有組成物の乳化を抑制する方法であって、それを構成するのは、少な
くとも、以下の工程である:
破砕:ここで破砕されるのは、グルコシノレート含有植物であり、
脱脂:ここで脱脂されるのは、前記破砕されたグルコシノレート含有植物であり、
分画:ここで分画されるのは、前記脱脂されたグルコシノレート含有植物である。
【請求項10】
グルコシノレート含有組成物の乳化を抑止する方法であって、それを構成するのは、少な
くとも、以下の工程である:
脱脂:ここで脱脂されるのは、グルコシノレート含有植物であり、
破砕:ここで破砕されるのは、前記脱脂されたグルコシノレート含有植物であり、
分画:ここで分画されるのは、前記破砕されたグルコシノレート含有植物である。
【請求項11】
グルコシノレート含有組成物の乳化を抑止する方法であって、それを構成するのは、少な
くとも、以下の工程である:
破砕:ここで破砕されるのは、グルコシノレート含有植物であり、
分画:ここで分画されるのは、前記破砕されたグルコシノレート含有植物であり、これ
によって得られるのは、分画物であり、
脱脂:ここで脱脂されるのは、前記分画物である。
【請求項12】
請求項9乃至11の方法であって、
前記脱脂は、少なくとも有機溶媒を含有する液体を用いて行われる。
【請求項13】
請求項11の方法であって、
前記脱脂は、遠心分離によって行われる。
【請求項14】
請求項9乃至13の何れかの方法であって、
前記分画は、溶媒抽出、又は搾りである。
【請求項15】
請求項9乃至14の何れかの方法であって、それをさらに構成するのは、以下の工程であ
る:
加熱:ここで加熱されるのは、グルコシノレート含有植物であり、当該加熱は、前記破
砕の前に行われる。
【請求項16】
請求項9乃至15の何れかの方法であって、前記グルコシノレート含有植物の形態は、種
子である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関係するのは、グルコシノレート含有組成物の製造方法、グルコシノレート含
有組成物の乳化抑制方法である。
【背景技術】
【0002】
アブラナ科植物に特有の成分として含まれるグルコシノレート類は、植物体やヒトの腸
内菌叢が持つミロシナーゼによってイソチオシアネートに変換された後、体内に吸収され
て多彩な生理作用を示す。特に、ブロッコリースプラウトには、スルフォファラングルコ
シノレート(以下、「SGS」という)が多く含まれる。SGSから変換されるスルフォ
ラファンの生理作用として、解毒作用、肝機能改善効果、抗酸化作用等が報告されている
。
この生理作用に着目し、グルコシノレート、特にSGSを種々の飲食品用途に使用可能
とすることで、多くの消費者の健康に貢献できることが見込まれる。
【0003】
特許文献1が開示するのは、アブラナ科植物由来の搾汁組成物であり、その目的は、グ
ルコシノレート量の増大した搾汁液の製造である。その方法は、特定の加熱条件でケール
を加熱し、搾汁することである。
【0004】
特許文献2が開示するのは、十字花科植物を含む食品の製造方法であり、その目的は、
相当量の第二相誘発ポテンシャルを含有し、インドールグルコシノレートとその分解産物
および甲状腺腫誘発性のヒドロキシブテニルグルコシノレートを無毒性の濃度で含む食品
を提供することである。その方法は、種子の選別、種子の発芽、発芽開始から装用段階ま
での間に前記新芽を収穫して食品を作成することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5726535号公報
【特許文献2】特開2000-502245号公報
【特許文献3】特表2012-500822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
グルコシノレート含有組成物の製造における課題は、グルコシノレート含有植物からグ
ルコシノレートの抽出効率を高めつつ、グルコシノレート含有組成物の使用適性を高める
ことである。グルコシノレートから変換されたイソチオシアネート(化1)は、機能性の
面から有用な成分である反面、揮発性のため不安定であり、経時的に消失する。そのため
、摂取する場合は、摂取する直前、又は体内においてイソチオシアネートに変換されるこ
とが好ましい。そのため、飲食品や、その原料となる組成物中では安定性の高いグルコシ
ノレートの状態であることが好ましい。
【0007】
【0008】
グルコシノレートを含有する組成物を製造するための、一つの方法は、グルコシノレー
ト含有植物からのグルコシノレートの抽出である。しかしながら、グルコシノレート含有
植物は、グルコシノレートを分解するミロシナーゼを同時に含有するものが多い。そのた
め、グルコシノレート抽出時、又は抽出後における、ミロシナーゼによるグルコシノレー
トの分解に留意する必要がある。また、グルコシノレートを抽出後においても、グルコシ
ノレート植物の中にグルコシノレートが残存している場合も多く見られた。そのため、グ
ルコシノレートの抽出方法についても、抽出効率を高めるための、更なる検討の余地があ
る。
【0009】
本願発明者らは、グルコシノレート含有植物からグルコシノレート含有組成物を製造す
る際、グルコシノレート含有植物を破砕し、搾汁、又は抽出することで、グルコシノレー
トの回収効率を高められることに気付いた。一方で、グルコシノレート含有植物、特に種
子を破砕し、搾汁、又は抽出をすると、当該植物に含有される油脂分も液部側に移行して
しまうことに気付いた。当該油脂分により、液部は乳化状態を形成してしまい、使用しづ
らい。あわせて、油脂分にはエルカ酸が含有されるため、食するに際しても好ましくない
。
【0010】
つまり、本願発明における、グルコシノレート含有組成物の製造における課題は、グル
コシノレート含有植物からの、グルコシノレートの抽出効率を高めつつ、含有する油脂分
を除去すること又は乳化状態の形成を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
当該課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討し発見したのは、グルコシノレート
の回収に際して、(1)破砕によりグルコシノレートの回収効率が高まること、(2)破
砕により、抽出物、又は搾汁物が乳化すること、(3)油脂分が、グルコシノレートの回
収効率を低めること、及び乳化状態を形成すること、である。当該観点から、本願発明を
規定すると、以下のとおりである。
【0012】
グルコシノレート含有組成物の製造方法の第一の態様を構成するのは、少なくとも、破砕、脱脂、及び分画工程である。人又は装置によって破砕されるのは、グルコシノレート含有植物である。人又は装置によって脱脂されるのは、前記破砕されたグルコシノレート含有植物である。人又は装置によって分画されるのは、前記脱脂されたグルコシノレート含有植物である。
【0013】
グルコシノレート含有組成物の製造方法の第二の態様を構成するのは、少なくとも、脱脂、破砕、及び分画工程である。人又は装置によって脱脂されるのは、グルコシノレート含有植物である。人又は装置によって破砕されるのは、前記脱脂されたグルコシノレート含有植物である。人又は装置によって分画されるのは、前記破砕されたグルコシノレート含有植物である。
【0014】
グルコシノレート含有組成物の製造方法の第三の態様を構成するのは、少なくとも、破砕、分画、及び脱脂工程である。人又は装置によって破砕されるのは、グルコシノレート含有植物である。人又は装置によって分画されるのは、前記破砕されたグルコシノレート含有植物であり、これによって得られるのは、分画物である。人又は装置によって脱脂されるのは、前記分画物の液部画分である。
【0015】
前記製造方法において、前記脱脂は、少なくとも有機溶媒を含有する液体を用いて行われることが好ましい。または、前記脱脂は、遠心分離によって行われることが好ましい。また、前記分画は、溶媒抽出、又は搾りであることが好ましい。
【0016】
前記製造方法をさらに構成するのは、加熱工程である。人又は装置によって加熱されるのは、グルコシノレート含有植物であり、当該加熱は、前記破砕の前に行われる。前記グルコシノレート含有植物の形態は、種子であることが好ましい。
【0017】
グルコシノレート含有組成物の乳化を抑制する方法の第一の態様を構成するのは、少なくとも、破砕、脱脂、及び分画工程である。人又は装置によって破砕されるのは、グルコシノレート含有植物である。人又は装置によって脱脂されるのは、前記破砕されたグルコシノレート含有植物である。人又は装置によって分画されるのは、前記脱脂されたグルコシノレート含有植物である。
【0018】
グルコシノレート含有組成物の乳化を抑制する方法の第一の態様を構成するのは、少なくとも、脱脂、破砕、及び分画工程である。人又は装置によって脱脂されるのは、グルコシノレート含有植物である。人又は装置によって破砕されるのは、前記脱脂されたグルコシノレート含有植物である。人又は装置によって分画されるのは、前記破砕されたグルコシノレート含有植物である。
【0019】
グルコシノレート含有組成物の乳化を抑制する方法の第二の態様を構成するのは、少なくとも、破砕、分画、及び脱脂工程である。人又は装置によって破砕されるのは、グルコシノレート含有植物である。人又は装置によって分画されるのは、前記破砕されたグルコシノレート含有植物であり、これによって得られるのは、分画物である。人又は装置によって脱脂されるのは、前記分画物の液部画分である。
【0020】
グルコシノレート含有組成物の乳化を抑制する方法の第三の態様を構成するのは、少なくとも、破砕、脱脂、及び分画工程である。人又は装置によって破砕されるのは、グルコシノレート含有植物である。人又は装置によって脱脂されるのは、前記破砕されたグルコシノレート含有植物である。人又は装置によって分画されるのは、前記脱脂されたグルコシノレート含有植物である。
【0021】
前記方法において、前記脱脂は、少なくとも有機溶媒を含有する液体を用いて行われることが好ましい。または、前記脱脂は、遠心分離によって行われることが好ましい。また、前記分画は、溶媒抽出、又は搾りであることが好ましい。
【0022】
前記方法をさらに構成するのは、加熱工程である。人又は装置によって加熱されるのは、グルコシノレート含有植物であり、当該加熱は、前記破砕の前に行われる。前記グルコシノレート含有植物の形態は、種子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明が可能にするのは、グルコシノレート含有植物からの、グルコシノレートの抽出
効率を高めつつ、含有する油脂分を除去すること又は乳化状態の形成を抑制することであ
る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】グルコシノレート含有組成物の製造方法の流れ図
【発明を実施するための形態】
【0025】
<グルコシノレート含有組成物>
本発明の実施に係るグルコシノレート含有組成物とは、(以下、「本組成物」という。
)組成物であって、グルコシノレートを含有することを特徴とするものである。例示する
と、グルコシノレートを含有する搾汁、グルコシノレートを含有する植物抽出物(エキス
)、グルコシノレートを含有する精製物、並びに、それらの濃縮物、乾燥物、及び粉末、
等である。
【0026】
<グルコシノレート>
グルコシノレート類とは、化2の構造式で示される、グルコースおよびアミノ酸の誘導
体であり、硫黄と窒素を含む有機化合物の一群である。本発明におけるグルコシノレート
は、特に限定されないが、例示すると、スルフォラファングルコシノレート(グルコラフ
ァニンとも呼ばれる)、シニグリン、グルコエルシン、グルコブラシシン、グルコラフェ
ニン、グルコラファサティン、フェネチルグルコシノレート等であり、本発明においては
、特にスルフォラファングルコシノレートであることが好ましい。これらのグルコシノレ
ートのうち1種、又は複数種用いてもよい。
【0027】
【0028】
<グルコシノレート含有植物、及びアブラナ科植物>
本発明におけるグルコシノレート含有植物とは、植物であって、グルコシノレートを含
有するものをいう。特に、本発明におけるグルコシノレート含有植物は、アブラナ科植物
であることが好ましい。本発明におけるアブラナ科植物とは、植物であって、アブラナ科
に分類されるものをいう。例示すると、キャベツ、ブロッコリー、ケール、クレソン、コ
マツナ、チンゲンサイ、カイワレダイコン、カリフラワー、ハクサイ、ナバナ、タカナ、
コールラビ、等が含まれる。これらの植物のうち1種、又は複数種用いてもよい。また、
これら植物の部位(花、葉や茎)の全部、又は一部を用いてもよく、スプラウトや種子を
用いても良い。本発明において特に好ましい態様は、ブロッコリースプラウト、又はブロ
ッコリー種子である。
【0029】
植物の搾汁とは、植物を破砕して搾汁し或いは裏ごしして得られる搾汁、これを濃縮し
た濃縮汁、及び、濃縮汁を希釈還元したものを意味する。これらは、さらに他の成分(例
えば、少量の食塩や香辛料、食品添加物等)を含有していてもよい。
【0030】
植物の抽出物とは、植物から溶媒を用い植物に含まれる成分を抽出したもの、及びこれ
を濃縮したものである。溶媒の種類は、既知の物であれば特に限定されず、親水性、又は
親油性であるとを問わないが、飲食品用途に用いられることから、飲食に適した溶媒であ
ることが好ましい。
【0031】
<本グルコシノレート含有組成物の製造方法>
本飲食品の製造方法(以下、「本製法」という。)を主に構成するのは、加熱工程、破
砕工程、脱脂工程、分画工程、濃縮工程、殺菌工程、充填工程、冷却工程である。
【0032】
<加熱(S010)>
加熱の目的の一つは、グルコシノレート含有植物に含まれるミロシナーゼの失活である
。当該加熱を行うことにより、ミロシナーゼが失活し、グルコシノレートの分解が抑制さ
れる。加熱の目的のもう一つは、殺菌である。当該加熱の時期は、特に限定されない。加
熱の時期の一つの態様は、後述する、破砕工程の前である。グルコシノレート含有植物を
直接、又は間接的に加熱することによって、植物に含まれるミロシナーゼを失活すること
ができる。加熱の時期のもう一つの態様は、後述する分画と同時である。また、加熱の時
期のもう一つの態様は、後述する濃縮と同時、又は濃縮の後である。加熱時の温度は、特
に限定されない。ミロシナーゼの失活の観点から、好ましくは、温度の下限は、60℃で
ある。より好ましくは、70℃である。また、好ましくは、温度の上限は、100℃であ
る。
【0033】
<破砕(S020)>
破砕の目的は、グルコシノレート含有植物の表面積の増大である。当該破砕を行うこと
により、後述する分画において、溶媒への当該植物の接触面積が増大し、グルコシノレー
トの溶媒への移行が容易となる。当該観点から、破砕の時期は、後述する分画の前、又は
分画と同時であることが好ましい。。破砕の時期のもう一つの態様は、前記加熱の後であ
る。グルコシノレート植物を加熱後に破砕を行うことによって、破砕後のミロシナーゼに
よる反応を抑制することができる。それにより、グルコシノレートの減少を抑制すること
ができる。
【0034】
破砕は、一段階で行ってもよいし、二段階以上の複数の段階に分けて行ってもよい。破
砕後の植物の大きさは、特に限定されないが、好ましい上限値はは、0.5mmである。
また好ましい、下限値は、10μmである。破砕の方法は、特に限定されない。破砕手段
を例示すると、ハンマーミル、ミクログレーダー、コミトロール、フードプロセッサー、
コロイドミル、等である。
【0035】
<脱脂(S030)>
脱脂の目的は、グルコシノレート含有植物中の油脂分の除去である。当該植物から、油
脂が除去されることによって、グルコシノレートの回収効率が高まる。あわせて、グルコ
シノレートを回収し、得られたグルコシノレート含有組成物における、乳化状態が抑制さ
れる。脱脂の時期は、特に限定されないが、好ましくは、前記破砕の後である。当該破砕
により、グルコシノレート含有植物の表面積が増大するため、脱脂効率が高まる。
【0036】
脱脂の方法は、特に限定されない。脱脂の具体的な方法の一つは、有機溶媒を用いるこ
とである。ここで用いられる有機溶媒は、好ましくは、ヘキサン、又はヘキサン及びエタ
ノールの混合液である。ヘキサン及びエタノールの混合比率は、好ましくは、○○~○○
である。脱脂の別の具体的な方法の一つは、遠心分離である。脱脂の対象となる組成物が
水性媒体及び油性媒体の混合物の場合、当該組成物を遠心分離処理することにより、その
比重の違いにより、水性部と油性部を分離することが可能となる。
【0037】
<分画(S040)>
本発明において、分画の目的は、グルコシノレートの回収である。分画の具体的な態様
は、抽出、搾り、等である。
【0038】
<抽出(S041)>
抽出の目的は、グルコシノレート含有植物から、グルコシノレートを抽出することであ
る。グルコシノレート含有植物が、抽出溶媒に浴することで、グルコシノレートが抽出溶
媒に溶け出す。抽出溶媒の温度を高めることで、抽出時間を短縮できる。当該抽出により
回収するのは、液部である。また、抽出溶媒の温度を高めることで、グルコシノレート含
有植物中のミロシナーゼを失活することができる。そのような観点から、当該植物からグ
ルコシノレートを抽出するときの温度は、60℃以上、かつ95℃以下であり、好ましく
は、70℃以上、かつ95℃以下である。
【0039】
<抽出溶媒>
本発明において、前記抽出時に使用する抽出溶媒は、少なくとも、水を含有する液体で
ある。抽出溶媒として、水以外に含有することを許容するのは、有機溶媒である。当該有
機溶媒は、好ましくは、低級アルコールである。さらに、当該低級アルコールは、好まし
くは、エタノールである。当該抽出溶媒におけるエタノールの重量割合は、好ましくは、
1重量%以上、かつ20重量%以下である。より好ましくは、5重量%以上、かつ、20
重量%以下である。
【0040】
<搾り(S042)>
破砕されたグルコシノレート含有植物を搾って得られるのは、搾汁及び粕である。搾り
は、グルコシノレート含有植物に、水などの水性溶媒を添加した後に行うこともできる。
当該搾りにより回収するのは、液部である。グルコシノレート含有植物を搾る方法は、公
知の方法でよく、例えば、圧搾式、遠心分離式等である。搾汁装置を例示すると、エクス
トルーダー、フィルタープレス、デカンター、ギナー等である。
【0041】
<濃縮(S050)>
濃縮の目的は、本組成物のハンドリングの向上である。液体の組成物を濃縮することで
、液体の容積が減る。つまり、液体の保管コストが下がる。濃縮方法は、公知の方法で良
く、例えば、真空濃縮、膜濃縮、凍結濃縮等である。
【0042】
<殺菌、冷却(S060)、充填(S070)>
以上に加えて、本製法が適宜採用するのは、殺菌、充填及び冷却である。殺菌方法は、
公知の方法で良く、例えば、プレート式殺菌、チューブラー式殺菌方法等がある。冷却方
法は、公知の方法で良い。充填方法は、公知の方法でよい。本飲食品が充填される(詰め
られる)容器は、公知の物で良く、例示すると、缶、瓶、紙容器、ポリエチレン製容器等
である。
【0043】
<グルコシノレート含有飲食品>
本発明に係るグルコシノレート含有飲食品(以下、「本飲食品」という。)とは、グル
コシノレートを含有する飲料又は食品のことを示す。本飲食品は、原料として、本発明に
係るグルコシノレート含有組成物を含有するものであることが好ましい。飲料は、清涼飲
料、スムージー等、一般に飲料と認識されるものであれば、特に限定されない。本飲食品
は、スープ等、一部固形分が含まれるものも含む。
【0044】
<生理活性>
本グルコシノレート含有飲食品は、グルコシノレートの有する機能性が強化されている
。当該観点から、本飲食品は、肝機能改善効果、血糖値改善効果、糖尿病予防効果、ピロ
リ菌除菌効果、肺活量・呼吸機能改善効果、LDLコレステロール低下効果、大気汚染物質
の排泄促進効果、便通改善効果、記憶力や注意力改善効果、統合失調症緩和効果、肥満予
防・改善効果、脂肪肝予防・改善効果、認知症予防効果、認知機能改善効果、腸内菌叢改
善効果、うつ病予防効果、前立腺予防効果、からなる群より選択される少なくとも1つの
機能性を有するものであっても良い。
【実施例0045】
本飲食品を具現化したのは、試験例1乃至5である。ただし、これらの実施例によって
、本発明に係る特許請求の範囲が限定されるものではない。
【0046】
<SGS濃度の測定>
本測定で採用したSGSの測定方法は、HPLC法である。試料は適宜希釈し、フィル
ター濾過したものを検体とした。詳細な測定条件は、以下のとおりである。
【0047】
<HPLC測定条件>
装置:ACQUITY UPLC H-Classシステム(Waters社製)
カラム:ACQUITYCSH C18(Φ2.1×100mm,1.7μm)(Wa
ters社製)
カラム温度:30℃
サンプル注入量:10μL
移動相A:超純水:トリフルオロ酢酸=99.95:0.05(v:v)
移動相B:メタノール:トリフルオロ酢酸=99.95:0.05(v:v)
グラジエント:5分間 移動相B割合0%を維持
10分間で移動相B割合0→10%のリニアグラジエント
5分間で移動相B割合10→100%のリニアグラジエント
5分間 移動相B割合100%を維持
2分間で移動相B割合100→0%のリニアグラジエント
5分間 移動相B割合0%を維持
流速:0.1mL/min
検出波長:235nm
【0048】
<SGS回収率>
本実施例において、SGS回収率とは、比較例1における試料のSGS濃度を100と
したときの、各試験例における試料のSGS濃度の比率を示したものである。表1及び表
2に記載の数値は、いずれもn=2における平均値である。
【0049】
<乳化状態の確認>
本実施例において、各試験例の乳化状態を、660nmの吸光度を測定した値(OD6
60nm)で確認した。OD660nmの値が高いほど、濁度が大きいことを示し、乳化
が生じていることと判断した。
【0050】
[試験1]
試験1では、ブロッコリー種子を破砕することによる、SGS抽出効率への影響、及び
、ヘキサンによる脱脂処理を行うことによる、SGS抽出効率への影響を確認した。
【0051】
<比較例1>
市販のブロッコリーの種子(販売元:プラントライフデザイン.)を、オートクレーブ
により、90℃で10分間加熱処理を行った。オートクレーブ後の種子2gに対して、1
0gの水を混合し、恒温槽を用いて、70℃で60分間、攪拌しながら加温した。加温後
の種子は取り除き、液部を回収し、液部のSGS濃度を測定した。あわせて、当該液部の
SGS濃度、及び回収された液部の量を基に、SGS回収率を算出した。
【0052】
<試験例1>
市販のブロッコリーの種子(販売元:プラントライフデザイン.)を、オートクレーブ
により、90℃で10分間加熱処理を行った。オートクレーブ後の種子2gをフードプロ
セッサーにて破砕し、10gの水を混合し、恒温槽を用いて、70℃で60分間、攪拌し
ながら加温した。加温後の種子は取り除き、液部を回収し、液部のSGS濃度を測定した
。あわせて、当該液部のSGS濃度、及び回収された液部の量を基に、SGS回収率を算
出した。
【0053】
<試験例2>
市販のブロッコリーの種子(販売元:プラントライフデザイン.)を、オートクレーブ
により、90℃で10分間加熱処理を行った。オートクレーブ後の種子2gを、3倍量の
ヘキサンで1時間攪拌することで脱脂処理を行った。脱脂処理を行った種子を乾燥後、1
0gの水を混合し、恒温槽を用いて、70℃で60分間、攪拌しながら加温した。加温後
の種子は取り除き、液部を回収し、液部のSGS濃度を測定した。あわせて、当該液部の
SGS濃度、及び回収された液部の量を基に、SGS回収率を算出した。
【0054】
<試験例3>
市販のブロッコリーの種子(販売元:プラントライフデザイン.)を、オートクレーブ
により、90℃で10分間加熱処理を行った。オートクレーブ後の種子2gを、3倍量の
ヘキサンで1時間攪拌することで脱脂処理を行った。脱脂処理を行った種子を乾燥後、フ
ードプロセッサーで破砕した。破砕後の種子に10gの水を混合し、恒温槽を用いて、7
0℃で60分間、攪拌しながら加温した。加温後の種子は取り除き、液部を回収し、液部
のSGS濃度を測定した。あわせて、当該液部のSGS濃度、及び回収された液部の量を
基に、SGS回収率を算出した。
【0055】
<SGS抽出効率向上評価>
本試験において、比較例1と比較して、SGS回収率が高い区分をSGS抽出効率向上
評価「〇」とした。また、比較例1と比較して、SGS回収率が低い区分を、SGS抽出
効率向上評価「×」とした。
【0056】
【0057】
[試験2]
試験2では、脱脂処理による、抽出試料の乳化状態への影響を確認した。なお、使用し
たブロッコリー種子は、試験1で使用したものとロットが異なる。
【0058】
<試験例4>
市販のブロッコリーの種子(販売元:プラントライフデザイン)を、オートクレーブに
より、90℃で10分間加熱処理を行った。オートクレーブ後の種子2gをフードプロセ
ッサーにて破砕し、10gの水を混合し、恒温槽を用いて、70℃で60分間、攪拌しな
がら加温した。加温後の種子は取り除き、液部を回収し、液部のSGS濃度を測定した。
あわせて、乳化状態を測定するため、OD660nmを測定した。
【0059】
<試験例5>
市販のブロッコリーの種子(販売元:プラントライフデザイン)を、オートクレーブに
より、90℃で10分間加熱処理を行った。オートクレーブ後の種子2gを、フードプロ
セッサーで破砕した。破砕後の種子を、3倍量のヘキサンで1時間攪拌することを1セッ
トとして、これを3セット実施することで脱脂処理を行った。脱脂処理を行った種子を乾
燥後、これに10gの水を混合し、恒温槽を用いて、70℃で60分間、攪拌しながら加
温した。加温後の種子は取り除き、液部を回収し、液部のSGS濃度を測定した。あわせ
て、乳化状態を測定するため、OD660nmを測定した。
【0060】
【0061】
<結果、まとめ>
ブロッコリー種子からSGSを抽出する際、破砕処理、又は脱脂処理を行うことによっ
て、SGSの回収率が向上した。特に、破砕処理によるSGS回収率の向上は顕著であっ
た。一方で、ブロッコリー種子を破砕処理し、SGSを抽出した場合、試料が乳化するこ
とを確認した。ここで、破砕処理を行い、脱脂処理を行うことで、濁度が低下し、乳化状
態を抑制することが出来ることがわかった。
【0062】
以上の試験結果から、グルコシノレート植物からグルコシノレートを抽出する際、グル
コシノレート抽出効率を高めるには、破砕処理、又は脱脂処理が有効であることが分かっ
た。また、破砕処理、及び脱脂処理を行うことによって、グルコシノレートの抽出効率を
高めつつ、乳化状態を抑制することが可能であることがわかった。