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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094664
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】蒸気タービンシステム
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/00 20060101AFI20230629BHJP
   F02C 3/22 20060101ALI20230629BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20230629BHJP
   F02C 3/30 20060101ALI20230629BHJP
   F02C 7/224 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
F01K25/00 B
F02C3/22
F02C7/00 B
F02C3/30 C
F02C7/224
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210096
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】516047175
【氏名又は名称】三菱重工パワーインダストリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳宏
【テーマコード(参考)】
3G081
【Fターム(参考)】
3G081BA02
3G081BB10
3G081BC14
3G081BC18
3G081BD10
3G081DA12
3G081DA22
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素及び窒素酸化物の発生を抑制できる高効率な蒸気タービンシステムを提供する。
【解決手段】蒸気タービンシステムは、水素を供給するように構成された水素供給ラインと、酸素を供給するように構成された酸素供給ラインと、前記水素供給ラインから供給された水素を前記酸素供給ラインから供給された酸素を用いて燃焼させるように構成された燃焼器と、前記燃焼器から排出された水蒸気によって駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンから排出された水蒸気を凝縮させるように構成された復水器と、を備える。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を供給するように構成された水素供給ラインと、
酸素を供給するように構成された酸素供給ラインと、
前記水素供給ラインから供給された水素を前記酸素供給ラインから供給された酸素を用いて燃焼させるように構成された燃焼器と、
前記燃焼器から排出された水蒸気によって駆動する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンから排出された水蒸気を凝縮させるように構成された復水器と、
を備える、蒸気タービンシステム。
【請求項2】
圧縮機と、
前記蒸気タービンの中段と前記圧縮機とを接続し、前記蒸気タービンの中段から抽気した水蒸気を前記圧縮機に供給するように構成された抽気循環ラインと、
を備え、
前記圧縮機は、前記抽気循環ラインから抽気された水蒸気を加圧して前記燃焼器に供給するように構成された、請求項1に記載の蒸気タービンシステム。
【請求項3】
前記圧縮機と前記蒸気タービンとを同軸上に連結する回転軸を更に備える、請求項2に記載の蒸気タービンシステム。
【請求項4】
前記抽気循環ラインを流れる水蒸気と前記水素供給ラインを流れる液体水素との熱交換を行う水素気化器を更に備え、
前記水素供給ラインは、前記水素気化器で気化した水素を前記燃焼器に供給するように構成された、請求項2又は3に記載の蒸気タービンシステム。
【請求項5】
前記蒸気タービンが運転を停止している状態において前記圧縮機に圧縮空気を供給可能な起動用空気ラインを更に備える、請求項2乃至4の何れか1項に記載の蒸気タービンシステム。
【請求項6】
酸素濃縮器を更に備え、
前記酸素供給ラインは、前記酸素濃縮器から酸素を前記燃焼器に供給するように構成された、請求項1乃至5の何れか1項に記載の蒸気タービンシステム。
【請求項7】
前記復水器の内部空間を真空引きするように構成された真空引き装置と、
前記真空引き装置の排気を前記酸素濃縮器に戻すように構成された排気戻しラインと、
を更に備える、請求項6に記載の蒸気タービンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸気タービンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
気体燃料を加圧された空気中で燃焼させ、燃焼後の排ガスの保有エンンタルピーを有効に回転動力に変換するガスタービンシステムが、各種動力源及び発電機駆動源として用いられている。また、ガスタービンシステムの高効率化のために、ガスタービンシステムから排気された排ガスを排熱回収ボイラに導入して蒸気を発生させ、蒸気を熱利用するコジェネレーションシステムや、蒸気タービンで発電機を駆動し発電するコンバインドサイクルと呼ばれる方式が広く用いられている。
【0003】
また、特許文献1には、火力発電ユニットのピークシェービング能力を高めることを目的とした蒸気タービンセットが開示されている。この蒸気タービンセットは、水素を燃焼器で燃焼させることで発生させた蒸気で水素ガスタービンを駆動し、水素ガスタービンを出た蒸気を蒸気タービンの蒸気補充口に供給して蒸気タービンでさらに膨張させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3230557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスタービンシステムの既存技術では、ガスタービンの排ガスは後流の機器の通風を可能にする圧力までしか膨張減圧できず、その温度も一般的に高温(例えば500度以上)であり、その排ガス中に含まれるエネルギーの回収が効率向上の要となる。このため、上述のコジェネレーションシステムやコンバインドサイクル方式では、ガスタービンの下流側に排熱回収ボイラや排気筒等(コンバインドサイクルの場合はこれらに加えて蒸気タービン及び発電機等)の複雑な設備が必要となり、また、各機器でエネルギー損失が生じるため効率向上には限界がある。また、炭化水素系の気体燃料には少なからず炭素分が含まれており、燃焼に伴い二酸化炭素が発生するとともに空気中の窒素分が酸化されて窒素酸化物が発生する。二酸化炭素は地球温暖化物質であり、窒素酸化物は公害発生物質であり、これらを極力少なくすることが望まれる。また、特許文献1に記載の蒸気タービンセットにおいても効率向上には限界がある。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、二酸化炭素及び窒素酸化物の発生を抑制できる高効率な蒸気タービンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る蒸気タービンシステムは、
水素を供給するように構成された水素供給ラインと、
酸素を供給するように構成された酸素供給ラインと、
前記水素供給ラインから供給された水素を前記酸素供給ラインから供給された酸素を用いて燃焼させるように構成された燃焼器と、
前記燃焼器から排出された水蒸気によって駆動する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンから排出された水蒸気を凝縮させるように構成された復水器と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、二酸化炭素及び窒素酸化物の発生を抑制できる高効率な蒸気タービンシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る蒸気タービンシステム2の概略構成図である。
図2】他の実施形態に係る蒸気タービンシステム2(2B)の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0011】
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
【0012】
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
【0013】
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
【0014】
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0015】
図1は、一実施形態に係る蒸気タービンシステム2(2A)の概略構成図である。
図1に示すように、蒸気タービンシステム2は、酸素濃縮器4、酸素供給ライン6、水素供給ライン8、燃焼器10、圧縮機12、蒸気タービン18、発電機20、抽気循環ライン22、起動用空気ライン24、復水器26、排気戻しライン30及び真空引き装置28を備える。
【0016】
酸素濃縮器4は、空気を取り込んで空気中の窒素を取り除き、空気中の酸素を濃縮して高濃度の酸素を酸素供給ライン6に供給する。酸素濃縮器4による酸素濃縮の方式は、特に限定されないが、例えば、空気を極低温(一般に-170度以下)まで冷却し、液化させ蒸留により分離する深冷分離法であってもよいし、ゼオライト等のような吸着剤によって窒素を選択的に吸着して空気を分離する吸着分離法であってもよいし、ポリイミド等の高分子膜における透過速度の違いを利用する膜分離法であってもよい。
【0017】
酸素供給ライン6は、例えば配管により構成され、酸素濃縮器4と燃焼器10とを接続する。酸素供給ライン6は、酸素濃縮器4から酸素(酸素濃縮器4で濃縮された高濃度の酸素)を燃焼器10に供給する。酸素濃縮器4から酸素供給ライン6を介して燃焼器10に供給される酸素の濃度は、空気中の酸素濃度よりも高く、好ましくは70%以上、よりも好ましくは90%以上であってもよい。
【0018】
水素供給ライン8は、例えば配管により構成され、不図示の水素供給源と燃焼器10とを接続する。水素供給ライン8は、水素供給源から水素を燃焼器10に供給する。水素供給ライン8から燃焼器10に供給される水素の濃度は、例えば90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは100%であってもよい。
【0019】
燃焼器10は、水素供給ライン8から供給された水素を酸素供給ライン6から供給された酸素を用いて燃焼させ、水蒸気を発生させる。燃焼器10には炭化水素燃料を供給するための供給ラインは接続されておらず、燃焼器10は水素専焼の燃焼器である。また、燃焼器10には、圧縮機12で圧縮された水蒸気が燃焼温度の調整のために供給される。燃焼器10で水素を燃焼させることで発生した水蒸気は、燃焼器10から排出されて蒸気タービン18に導入される。
【0020】
蒸気タービン18は、燃焼器10から排出された水蒸気によって駆動する。蒸気タービン18は、不図示の複数の蒸気膨張翼を含む段を複数備える。蒸気タービン18は、典型的なガスタービンにおける燃焼ガスの膨張段18aの後流に該膨張段18aと同軸に複数の蒸気膨張翼を含む段18bが1つ又は複数設けられたものに相当し、一般的な復水タービンと同等程度の圧力まで水蒸気の膨張を行い、水蒸気からエネルギーを回収する。蒸気タービン18と圧縮機12とは回転軸9によって同軸上に連結されており、蒸気タービン18の回転力は回転軸9を介して圧縮機12に伝達されて圧縮機12を駆動する。
【0021】
発電機20は、蒸気タービン18に連結されており、蒸気タービン18が回転することによって発電機20が電力を生成する。
【0022】
抽気循環ライン22は、例えば配管により構成され、蒸気タービン18の中段と圧縮機12の入口とを接続する。抽気循環ライン22は、蒸気タービン18の中段から抽気した水蒸気を圧縮機12に供給する。圧縮機12は、抽気循環ライン22から抽気された水蒸気を加圧して燃焼器10に供給する。このように、蒸気タービンシステム2内の蒸気の一部は、燃焼器10、蒸気タービン18、抽気循環ライン22及び圧縮機12を順に通って燃焼器10に戻ることにより、蒸気タービンシステム2内で循環する。なお、蒸気タービン18の中段とは、蒸気タービン18の第1段と最終段の間に位置する段を意味する。
【0023】
起動用空気ライン24は、例えば配管により構成され、不図示の起動用空気供給源と圧縮機12とを接続する。起動用空気ライン24は、蒸気タービン18及び酸素濃縮器4の各々が運転を停止している状態において圧縮機12に起動用空気(圧縮空気)を供給することにより、蒸気タービン18を起動させることができる。蒸気タービン18の運転中には、起動用空気ライン24から圧縮機12へ起動用空気は供給されず、上述のように抽気循環ライン22から圧縮機12に水蒸気が供給される。
【0024】
なお、故障等により酸素濃縮器4の運転継続が出来ない場合でも、抽気循環ライン22を閉止した上で、圧縮機12に対し、起動用空気ライン24から空気、水素供給ライン8から水素をそれぞれ供給することにより、蒸気タービン18の運転を継続することが可能となる。
【0025】
復水器26には、蒸気タービン18から排出された水蒸気(蒸気タービン18の最終段を通過した水蒸気)が供給される。復水器26は、蒸気タービン18から排出された水蒸気を冷却媒体(例えば水等)との熱交換によって凝縮させる。復水器26で凝縮した凝縮水は、適宜任意の用途に使用してもよいし廃棄してもよい。
【0026】
真空引き装置28は、排気戻しライン30に設けられ、例えば真空ポンプによって構成される。真空引き装置28は、復水器26の内部空間を真空引きすることによって、復水器26の内部空間から水蒸気(蒸気タービン18から排出された水蒸気の一部)、酸素(燃焼器10で燃焼に用いられずに燃焼器10及び蒸気タービン18を通過した過剰酸素)及び微量の窒素(酸素供給ライン6から供給されて燃焼器10及び蒸気タービン18を通過した微量の窒素)を吸入する。
【0027】
排気戻しライン30は、例えば配管により構成され、復水器26と酸素濃縮器4とを接続する。排気戻しライン30は、真空引き装置28の排気(水蒸気、酸素及び微量の窒素)を酸素濃縮器4に戻すように構成される。すなわち、排気戻しライン8は、燃焼器10及び蒸気タービン18を経て復水器26に供給された水蒸気、酸素及び微量の窒素を、復水器26から酸素濃縮器4に戻すように構成される。
【0028】
次に、蒸気タービンシステム2が奏する効果について説明する。
蒸気タービンシステム2によれば、水素供給ライン8から供給された水素(燃料水素)を酸素供給ライン6から供給された酸素を用いて燃焼器で燃焼させることにより、炭化水素系の燃料を多量の窒素を含む空気で燃焼させる場合と比較して二酸化炭素と窒素酸化物の発生を抑制しつつ、高温高圧の水蒸気を発生させることができる。また、燃焼器10における燃焼用に多量の窒素を含む空気を用いないため、一般的なガスタービンと比較して、燃焼器10に流入する窒素等に起因する排ガス損失を低減することができる。
【0029】
また、燃焼器10で発生した水蒸気が流入する蒸気タービン18の下流側に復水器26が設けられているため、蒸気タービン18において水蒸気を一般的な復水タービンと同等程度の低い圧力まで膨張させて水蒸気から多くのエネルギーを回収することができる。
【0030】
したがって、二酸化炭素及び窒素酸化物の発生を抑制できる高効率な蒸気タービンシステム2を実現することができる。
【0031】
また、例えば従来のガスタービンシステムでは、燃焼器の燃焼温度を最適化するために空気過剰率を高くする必要があった。この場合、空気中に含まれる窒素分は、窒素酸化物を生成するのみならず、排気に伴う乾ガスの熱損失を増大させる要因となる。
【0032】
これに対し、蒸気タービンシステム2によれば、蒸気タービン18から抽気循環ライン22を介して供給された水蒸気を圧縮機12で加圧し、加圧された水蒸気を燃焼器10に供給することができる。このため、蒸気タービンシステム2内の水蒸気の一部を、燃焼器10、蒸気タービン18、抽気循環ライン22及び圧縮機12を順に通って燃焼器10に戻すことにより、蒸気タービンシステム2内で循環させることができる。このため、抽気循環ライン22を通る水蒸気を用いて燃焼器10の燃焼温度を調節することができ、従来のガスタービンシステムのように燃焼器の燃焼温度の調節を目的として酸素を過剰に燃焼器に供給する必要が無く、より高効率な蒸気タービンシステム2を実現することができる。
【0033】
また、水蒸気の比熱は空気の比熱の2倍程度に高く、少ないガス量で燃焼器10の温度制御を効率的に行うことができるため、蒸気タービンシステム2の出力及び効率を向上することができる。
【0034】
また、蒸気タービン18から抽気された蒸気は、再度加圧された後に燃焼器10で再加熱されて利用されるため、燃焼ボイラを備える蒸気タービン発電システムにおける再熱器と同様の機能が実現され、蒸気タービンシステム2の効率を向上することができる。
【0035】
また、一般的に、高濃度の水素を燃焼する場合、水素の燃焼速度は速いため、酸素との混合状況や火炎の状況によっては逆火現象が発生するリスクがあるが、上記のように抽気循環ライン22を用いて水蒸気を燃焼器10に戻して循環させることにより、逆火現象の発生を抑制することができる。
【0036】
また、圧縮機12と蒸気タービン18とを同軸上に連結する回転軸9を備えることにより、蒸気タービン18の回転力を利用して圧縮機12による蒸気の加圧を行うことができ、蒸気タービンシステム2の効率を高めることができる。
【0037】
また、空気を酸素濃縮器4に取り込むことにより、高濃度の酸素を酸素供給ライン6から燃焼器10に供給することができる。これにより、窒素酸化物の発生を抑制することができ、また、窒素に起因する排ガス損失を低減して高効率な蒸気タービンシステム2を実現することができる。
【0038】
また、一般的なガスタービンシステムでは、燃焼器を通過する過剰空気に含まれる酸素及び窒素は大気に放出されて熱損失を生じるが、蒸気タービンシステム2では、真空引き装置28からの排気は水蒸気、酸素及び微量の窒素であり、該排気の酸素濃度は空気の酸素濃度よりも高いため、真空引き装置28からの排気を酸素濃縮器4に戻すことにより、燃焼器10を出た過剰酸素を回収して有効利用することができる。
【0039】
図2は、他の実施形態に係る蒸気タービンシステム2(2B)の概略構成図である。
図2に示す蒸気タービンシステム2(2B)において、図1に示した蒸気タービンシステム2(2A)の各構成と共通の符号は、特記しない限り蒸気タービンシステム2(2A)の各構成と同様の構成を示すものとし、説明を省略する。
【0040】
図2に示す蒸気タービンシステム2(2B)は、水素供給ライン8に設けられた水素気化器32を備えている。水素供給ライン8は、水素気化器32よりも上流側において液体水素の供給源に接続されており、水素気化器32は、抽気循環ライン22を流れる水蒸気と水素供給ライン8を流れる液体水素との熱交換を行うことにより、抽気循環ライン22を流れる水蒸気の熱を利用して水素供給ライン8を流れる液体水素を気化させるように構成される。水素供給ライン8は、水素気化器32で気化した水素を燃焼器10に供給する。
【0041】
蒸気タービンシステム2(2B)によれば、抽気循環ライン22を流れる水蒸気を液体水素の加熱源とすることにより、該水蒸気から有効な熱回収を行うことができるとともに、圧縮機12に供給される水蒸気の温度を低下させることができ、圧縮機12における水蒸気の圧縮効率を上げることができる。
【0042】
また、蒸気タービンシステム2(2B)においても、蒸気タービンシステム2(2A)が奏する上述の効果を同様に得ることができる。
【0043】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0044】
例えば、上述した蒸気タービンシステム2(2A,2B)は、酸素濃縮器4を備える構成を例示したが、酸素濃縮器4は蒸気タービンシステム2に必須の構成ではなく、蒸気タービンシステム2の外部で生産された酸素を燃焼器10に供給するように酸素供給ライン6が構成されていてもよい。
【0045】
また、例えば、上述した蒸気タービンシステム2(2A,2B)には、起動用空気ライン24が設けられていたが、例えば発電機20で発電する電力とは別の電力を用いて酸素濃縮器4を作動させることができる場合等、蒸気タービン18の起動時に酸素を燃焼器10に供給可能である場合には、起動用空気ライン24は設けられていなくてもよい。
【0046】
また、上述した蒸気タービンシステム2(2A,2B)では、真空引き装置28の排気が排気戻しライン30によって酸素濃縮器4に戻される構成を示したが、排気戻しライン30を設けずに真空引き装置28の排気を大気に放出してもよい。
【0047】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0048】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る蒸気タービンシステムは、
水素を供給するように構成された水素供給ライン(例えば上述の水素供給ライン8)と、
酸素を供給するように構成された酸素供給ライン(例えば上述の酸素供給ライン6)と、
前記水素供給ラインから供給された水素を前記酸素供給ラインから供給された酸素を用いて燃焼させるように構成された燃焼器(例えば上述の燃焼器10)と、
前記燃焼器から排出された水蒸気によって駆動する蒸気タービン(例えば上述の蒸気タービン18)と、
前記蒸気タービンから排出された水蒸気を凝縮させるように構成された復水器(例えば上述の復水器26)と、
を備える。
【0049】
上記(1)に記載の蒸気タービンシステムによれば、水素供給ラインから供給された水素(燃料水素)を酸素供給ラインから供給された酸素を用いて燃焼器で燃焼させることにより、炭化水素系の燃料を多量の窒素を含む空気で燃焼させる場合と比較して二酸化炭素と窒素酸化物の発生を抑制しつつ、高温高圧の水蒸気を発生させることができる。また、燃焼器における燃焼用に多量の窒素を含む空気を用いないため、一般的なガスタービンと比較して、燃焼器に流入する窒素等に起因する排ガス損失を低減することができる。
【0050】
また、燃焼器で発生した水蒸気が流入する蒸気タービンの下流側に復水器が設けられているため、蒸気タービンにおいて蒸気を一般的な復水タービンと同等程度まで膨張させて蒸気から多くのエネルギーを回収することができる。
【0051】
したがって、二酸化炭素及び窒素酸化物の発生を抑制できる高効率な蒸気タービンシステムを実現することができる。
【0052】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の蒸気タービンシステムにおいて、
圧縮機(例えば上述の圧縮機12)と、
前記蒸気タービンの中段と前記圧縮機とを接続し、前記蒸気タービンの中段から抽気した水蒸気を前記圧縮機に供給するように構成された抽気循環ライン(例えば上述の抽気循環ライン22)と、
を備え、
前記圧縮機は、前記抽気循環ラインから供給された水蒸気を加圧して前記燃焼器に供給するように構成される。
【0053】
例えば従来のガスタービンシステムでは、燃焼器の燃焼温度を最適化するために、空気過剰率を高くする必要があった。この場合、空気中に含まれる窒素分は、窒素酸化物を生成するのみならず、排気に伴う乾ガスの熱損失を増大させる要因となる。
【0054】
これに対し、上記(2)に記載の蒸気タービンシステムによれば、蒸気タービンから抽気循環ラインを介して供給された水蒸気を圧縮機で加圧し、加圧された水蒸気を燃焼器に供給することができる。このため、蒸気タービンシステム内の蒸気の一部を、燃焼器、蒸気タービン、抽気循環ライン及び圧縮機を順に通って燃焼器に戻すことにより、蒸気タービンシステム内で循環させることができる。このため、抽気循環ラインを通る蒸気を用いて燃焼器の燃焼温度を調節することができ、従来のガスタービンシステムのように燃焼器の燃焼温度の調節を目的として酸素を過剰に燃焼器に供給する必要が無く、より高効率な蒸気タービンシステムを実現することができる。
【0055】
また、水蒸気の比熱は空気の比熱の2倍程度に高く、少ないガス量で燃焼器の温度制御を効率的に行うことができるため、蒸気タービンシステムの出力及び効率を向上することができる。
【0056】
また、蒸気タービンから抽気された蒸気は、再度加圧された後に燃焼器で再加熱されて利用されるため、燃焼ボイラを備える蒸気タービン発電システムにおける再熱器と同様の機能が実現され、蒸気タービンシステムの効率を向上することができる。
【0057】
また、一般的に、高濃度の水素を燃焼する場合、水素の燃焼速度は速いため、酸素との混合状況や火炎の状況によっては逆火現象が発生するリスクがあるが、上記のように抽気循環ラインを用いて水蒸気を燃焼器に戻して循環させることにより、逆火現象の発生を抑制することができる。
【0058】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)に記載の蒸気タービンシステムにおいて、
前記圧縮機と前記蒸気タービンとを同軸上に連結する回転軸(例えば上述の回転軸9)を更に備える、請求項2に記載の蒸気タービンシステム。
【0059】
上記(3)に記載の蒸気タービンシステムによれば、蒸気タービンの回転力を利用して圧縮機による蒸気の加圧を行うことができ、蒸気タービンシステムの効率を高めることができる。
【0060】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかに記載の蒸気タービンシステムにおいて、
前記抽気循環ラインを流れる水蒸気と前記水素供給ラインを流れる液体水素との熱交換を行う水素気化器(例えば上述の水素気化器32)を更に備え、
前記水素供給ラインは、前記水素気化器で気化した水素を前記燃焼器に供給するように構成される。
【0061】
上記(4)に記載の蒸気タービンシステムによれば、抽気循環ラインを流れる水蒸気を液体水素の加熱源とすることにより、該水蒸気から有効な熱回収を行うことができるとともに、圧縮機に供給される水蒸気の温度を低下させることができ、圧縮機における水蒸気の圧縮効率を上げることができる。
【0062】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(4)の何れかに記載の蒸気タービンシステムにおいて、
前記蒸気タービンが運転を停止している状態において前記圧縮機に圧縮空気を供給可能な起動用空気ラインを更に備える。
【0063】
上記(5)に記載の蒸気タービンシステムによれば、蒸気タービンが運転を停止していて抽気循環ラインを蒸気が流れていない状態であっても、起動用空気ラインから圧縮機に圧縮空気を供給することにより蒸気タービンを起動することができる。
【0064】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかに記載の蒸気タービンシステムにおいて、
酸素濃縮器(例えば上述の酸素濃縮器4)を更に備え、
前記酸素供給ラインは、前記酸素濃縮器から酸素を前記燃焼器に供給するように構成される。
【0065】
上記(6)に記載の蒸気タービンシステムによれば、例えば空気等を酸素濃縮器に取り込むことにより、高濃度の酸素を酸素供給ラインから燃焼器に供給することができる。これにより、窒素酸化物の発生を抑制することができ、また、窒素に起因する排ガス損失を低減して高効率な蒸気タービンシステムを実現することができる。
【0066】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかに記載の蒸気タービンシステムにおいて、
前記復水器の内部空間を真空引きするように構成された真空引き装置(例えば上述の真空引き装置28)と、
前記真空引き装置の排気を前記酸素濃縮器に戻すように構成された排気戻しライン(例えば上述の排気戻しライン30)と、
を更に備える。
【0067】
一般的なガスタービンシステムでは、過剰空気に含まれる酸素及び窒素は大気に放出されて熱損失を生じるが、上記(7)に記載の蒸気タービンシステムでは、真空引き装置からの排気は水蒸気、酸素及び微量の窒素であり、該排気の酸素濃度は空気の酸素濃度よりも高いため、真空引き装置からの排気を酸素濃縮器に戻すことにより、燃焼器を出た過剰酸素を回収して有効利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
2 蒸気タービンシステム
4 酸素濃縮器
6 酸素供給ライン
8 水素供給ライン
9 回転軸
10 燃焼器
12 圧縮機
18 蒸気タービン
20 発電機
22 抽気循環ライン
24 起動用空気ライン
26 復水器
28 真空引き装置
30 排気戻しライン
32 水素気化器
図1
図2