(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094668
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】電池構造
(51)【国際特許分類】
H01M 50/209 20210101AFI20230629BHJP
H01M 50/51 20210101ALI20230629BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20230629BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20230629BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20230629BHJP
【FI】
H01M50/209
H01M50/51
H01M50/505
H01M10/0585
H01M10/0587
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210103
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】大倉 仁寿
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋志
(72)【発明者】
【氏名】水野 雄介
【テーマコード(参考)】
5H029
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK16
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL12
5H029AL16
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029HJ04
5H040AA02
5H040AT01
5H040AT02
5H040AY10
5H040DD05
5H040NN01
5H043AA05
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA08
5H043FA04
5H043FA22
5H043LA02
(57)【要約】
【課題】電池システムを柔軟に構成することができる電池パックおよび電池パック用ラック等からなる電池構造を提供する。
【解決手段】電池構造は、正極樹脂集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層および負極樹脂集電体を有し、前記正極活物質層、前記セパレータおよび前記負極活物質層を封止する枠材を含む、平面状の単電池が複数積層された積層電池と、前記積層電池を収容するラックと、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極樹脂集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層および負極樹脂集電体を有し、前記正極活物質層、前記セパレータおよび前記負極活物質層を封止する枠材を含む、平面状の単電池が複数積層された積層電池と、
前記積層電池を収容するラックと、を備え、
前記単電池は、前記単電池の厚さと、前記単電池の長辺の長さとの比をアスペクト比としたときに、1:100~1:1000のアスペクト比からなり、
前記積層電池は、該積層電池の積層方向両端の平面と、前記単電池の積層方向両端の平面とが略平行、または、そのなす角度が-5°~5°であり、
前記積層電池は、該積層電池の積層方向両端の平面と、前記ラックの設置面とが略平行の状態で設置されている、
電池構造。
【請求項2】
前記積層電池は、扁平なシート状の前記単電池を積み重ねた扁平な形状を呈し、
前記ラックは、互いに略平行な棚板を複数備え、
前記棚板に、前記積層電池がそれぞれ配置され、
隣り合う前記積層電池の積層方向端部の平面と、前記棚板の面とが略平行である、
請求項1に記載の電池構造。
【請求項3】
ケースに収容され独立した1つの巻回型単電池の各軸への投影面積のうち最も大きい面積を、巻回型単電池の底面積と定義したときに、
前記単電池の底面積は、前記巻回型単電池の底面積より大きく、且つ、前記棚板の面積の30%以上を占めており、
前記棚板には、前記単電池を含む前記積層電池が設置されている、
請求項1または2に記載の電池構造。
【請求項4】
前記単電池の底面積は、前記巻回型単電池の底面積より大きく、且つ、前記棚板の面積の50%以上を占めており、
前記棚板には、前記単電池を含む前記積層電池が設置されている、
請求項3に記載の電池構造。
【請求項5】
前記単電池を40個積層したときの積層電池の厚みは、10mm以上60mm以下である、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電池構造。
【請求項6】
複数のリチウムイオン電池モジュールが積層された電池パックにおいて、
第1のリチウムイオン電池モジュールの正極集電体に接続された引出配線と、隣接する第2のリチウムイオン電池モジュールの負極集電体に接続された引出配線とを接続する第1の接続端子と、
前記第1のリチウムイオン電池モジュールの負極集電体に接続された引出配線と、隣接する第3のリチウムイオン電池モジュールの正極集電体に接続された引出配線とを接続する第2の接続端子とを備え、
前記複数のリチウムイオン電池モジュールの直列接続を含む、
電池パック。
【請求項7】
前記リチウムイオン電池モジュールの各々は、
発光部からの光信号を送出する光導波路の端面を含み、
前記第1の接続端子と前記第2の接続端子との間の前記端面と対向する位置に設けられた受光部、および前記受光部からの信号を処理するモジュール管理装置をさらに含む、
請求項6に記載の電池パック。
【請求項8】
前記モジュール管理装置の各々と接続された電池パック管理装置をさらに備えた、
請求項7に記載の電池パック。
【請求項9】
請求項7に記載の電池パックに積層されたリチウムイオン電池モジュールの各々を収容する棚を備えた、
電池パック用ラック。
【請求項10】
前記第1のリチウムイオン電池モジュールの正極集電体に接続された引出配線と接続され、隣接する前記第2のリチウムイオン電池モジュールの負極集電体に接続された引出配線と接続される第1の接続金具と、
前記第1のリチウムイオン電池モジュールの負極集電体に接続された引出配線と接続され、隣接する前記第3のリチウムイオン電池モジュールの正極集電体に接続された引出配線と接続される第2の接続金具とをさらに備えた、
請求項9に記載の電池パック用ラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池モジュールを含む電池構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車およびハイブリッド電気自動車等の電源および携帯型電子機器の電源としてリチウムイオン電池の単電池を複数個積層した組電池が用いられている(例えば、特許文献1参照)。また、組電池を、無停電電源、電力貯蔵システムなどに適用される据置き型電池として用いる場合には、さらに複数の組電池を直列または並列に接続している。このように多数の組電池を接続する際には、接続の容易性、量産性のみならず、安全かつ効率的に使用するための構造が求められている(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/119075号
【特許文献2】特開2003-288883号公報
【特許文献3】特開2015-140952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周知の巻回型電池を用いて、所定の電力容量を満たすように当該巻回型電池を複数接続する場合、当該巻回型電池を平置きで重ねていくと、充填効率および製造プロセスの低下の恐れがある。このため、当該巻回型電池を複数接続する際の設置の仕方および電池用ラックを含む構造には一定の制限がある。電池パック用ラックにおいては、所望の電力容量に応じて電池システムを構成する際に、リチウムイオン電池モジュールおよび電池パックの柔軟な構成が可能なように簡易な構成が求められている。
【0005】
本発明の目的は、電池システムを柔軟に構成することができる電池パックおよび電池パック用ラック等からなる電池構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様の電池構造は、正極樹脂集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層および負極樹脂集電体を有し、前記正極活物質層、前記セパレータおよび前記負極活物質層を封止する枠材を含む、平面状の単電池が複数積層された積層電池と、前記積層電池を収容するラックと、を備え、前記単電池は、前記単電池の厚さと、前記単電池の長辺の長さ、との比をアスペクト比としたときに、1:100~1:1000のアスペクト比からなり、 前記積層電池は、該積層電池の積層方向両端の平面と、前記単電池の積層方向両端の平面とが略平行、または、そのなす角度が-5°~5°であり、前記積層電池は、該積層電池の積層方向両端の平面と、前記ラックの底面と、が略平行の状態で複数設置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数のリチウムイオン電池モジュールを積層した、空間効率の良い電池構造とすることができ、電池システムを柔軟に構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、単電池ユニットの例を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。
【
図2】
図2は、発光部の例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、リチウムイオン電池モジュールの一例を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。
【
図4】
図4は、リチウムイオン電池モジュールを含む電池システムの機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、リチウムイオン電池モジュールと電池モジュール管理装置の構造を示す図である。
【
図6】
図6は、電池パックのラックの構造を示す図である。
【
図7】
図7は、電池パックのラックの電池スロットの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本明細書において、リチウムイオン電池と記載する場合、リチウムイオン二次電池も含む概念とする。
【0010】
[単電池ユニット]
組電池は、単電池ユニットが複数個接続されてなり、単電池ユニットは単電池と発光部とを備えている。単電池ユニットは組電池内で直列に接続されていることが好ましい。まず、単電池および発光部を備える単電池ユニットについて説明する。
【0011】
図1は、単電池ユニットの例を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。
図1にはリチウムイオン電池である単電池10と発光部20を備える単電池ユニット30を示している。単電池10は、略矩形平板状の正極集電体17の表面に正極活物質層15が形成された正極12と、同様に略矩形平板状の負極集電体19の表面に負極活物質層16が形成された負極13とが、同様に略平板状のセパレータ14を介して積層されて構成され、全体として略矩形平板状に形成されている。この正極と負極とがリチウムイオン電池の正極および負極として機能する。一例として、単電池10は、扁平なシート状の形状を有し、厚さと長辺の長さとの比をアスペクト比としたときに、1:100~1:1000のアスペクト比を有している。
【0012】
単電池10は、正極集電体17および負極集電体19の間に配置されて正極集電体17および負極集電体19の間にセパレータ14の周縁部を固定し、かつ正極活物質層15、セパレータ14および負極活物質層16を封止する、環状の枠部材18を有する。
【0013】
正極集電体17および負極集電体19は、枠部材18により所定間隔をもって対向するように位置決めされているとともに、セパレータ14と正極活物質層15および負極活物質層16も枠部材18により所定間隔をもって対向するように位置決めされている。
【0014】
正極集電体17とセパレータ14との間の間隔、および、負極集電体19とセパレータ14との間の間隔はリチウムイオン電池の容量に応じて調整され、これら正極集電体17、負極集電体19およびセパレータ14の位置関係は必要な間隔が得られるように定められている。
【0015】
以下に、単電池を構成する各構成要素の好ましい態様について説明する。正極活物質層には正極活物質が含まれる。正極活物質としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO2、LiNiO2、LiAlMnO4、LiMnO2およびLiMn2O4等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO4、LiNi1-xCoxO2、LiMn1-yCoyO2、LiNi1/3Co1/3Al1/3O2およびLiNi0.8Co0.15Al0.05O2)および金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMaM’bM’’cO2(M、M’およびM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)等]、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO4、LiCoPO4、LiMnPO4およびLiNiPO4)、遷移金属酸化物(例えばMnO2およびV2O5)、遷移金属硫化物(例えばMoS2およびTiS2)および導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレンおよびポリ-p-フェニレンおよびポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0016】
正極活物質は、導電助剤および被覆用樹脂で被覆された被覆正極活物質であることが好ましい。正極活物質の周囲が被覆用樹脂で被覆されていると、電極の体積変化が緩和され、電極の膨張を抑制することができる。
【0017】
導電助剤としては、金属系導電助剤[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅およびチタン等]、炭素系導電助剤[グラファイトおよびカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラックおよびサーマルランプブラック等)等]、およびこれらの混合物等が挙げられる。これらの導電助剤は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金または金属酸化物として用いられてもよい。なかでも、電気的安定性の観点から、より好ましくはアルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、炭素系導電助剤およびこれらの混合物であり、さらに好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレスおよび炭素系導電助剤であり、特に好ましくは炭素系導電助剤である。また、これらの導電助剤としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料[好ましくは、上記した導電助剤のうち金属のもの]をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0018】
導電助剤の形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電助剤として実用化されている形態であってもよい。
【0019】
被覆用樹脂と導電助剤の比率は特に限定されるものではないが、電池の内部抵抗等の観点から、重量比率で被覆用樹脂(樹脂固形分重量):導電助剤が1:0.01~1:50であることが好ましく、1:0.2~1:3.0であることがより好ましい。
【0020】
被覆用樹脂としては、例えば、特許文献2に、非水系二次電池活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
【0021】
また、正極活物質層は、被覆正極活物質に含まれる導電助剤以外にも導電助剤を含んでもよい。導電助剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものを好適に用いることができる。
【0022】
正極活物質層は、正極活物質を含み、正極活物質同士を結着する結着材を含まない非結着体であることが好ましい。ここで、非結着体とは、正極活物質が結着剤(バインダともいう)により位置を固定されておらず、正極活物質同士および正極活物質と集電体が不可逆的に固定されていないことを意味する。
【0023】
正極活物質層には、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、例えば、特許文献2に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調整したもの、および、例えば、特許文献3に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱などを使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着材として用いられる溶液乾燥型の電極バインダーは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。従って、溶液乾燥型の電極バインダー(結着材)と粘着性樹脂とは異なる材料である。
【0024】
正極活物質層の厚みは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0025】
負極活物質層には負極活物質が含まれる。負極活物質としては、公知のリチウムイオン電池用負極活物質が使用でき、炭素系材料[黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂およびフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークスおよび石油コークス等)および炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素および/または炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子または酸化珪素粒子の表面を炭素および/または炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)および珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金および珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレンおよびポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウムおよびチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物およびリチウム・チタン酸化物等)および金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金およびリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等およびこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
【0026】
また、負極活物質は、上述した被覆正極活物質と同様の導電助剤および被覆用樹脂で被覆された被覆負極活物質であってもよい。導電助剤および被覆用樹脂としては、上述した被覆正極活物質と同様の導電助剤および被覆用樹脂を好適に用いることができる。
【0027】
また、負極活物質層は、被覆負極活物質に含まれる導電助剤以外にも導電助剤を含んでもよい。導電助剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものを好適に用いることができる。
【0028】
負極活物質層は、正極活物質層と同様に、負極活物質同士を結着する結着材を含まない非結着体であることが好ましい。また、正極活物質層と同様に、粘着性樹脂が含まれていてもよい。
【0029】
負極活物質層の厚みは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0030】
正極集電体および負極集電体(以下まとめて単に集電体ともいう)を構成する材料としては、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケルおよびこれらの合金等の金属材料、並びに、焼成炭素、導電性高分子材料、導電性ガラス等が挙げられる。これらの材料のうち、軽量化、耐食性、高導電性の観点から、正極集電体としてはアルミニウムであることが好ましく、負極集電体としては銅であることが好ましい。
【0031】
また、集電体は、導電性高分子材料からなる樹脂集電体であることが好ましい。集電体の形状は特に限定されず、上記の材料からなるシート状の集電体、および、上記の材料で構成された微粒子からなる堆積層であってもよい。集電体の厚さは、特に限定されないが、50~500μmであることが好ましい。
【0032】
樹脂集電体を構成する導電性高分子材料としては例えば、導電性高分子や、樹脂に必要に応じて導電剤を添加したものを用いることができる。導電性高分子材料を構成する導電剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものを好適に用いることができる。
【0033】
導電性高分子材料を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂またはこれらの混合物等が挙げられる。電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)およびポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびポリメチルペンテン(PMP)である。
【0034】
セパレータとしては、ポリエチレンまたはポリプロピレン製の多孔性フィルム、多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンとの積層フィルム、合成繊維(ポリエステル繊維およびアラミド繊維等)またはガラス繊維等からなる不織布、およびそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン電池用のセパレータが挙げられる。さらに、セパレータとして、硫化物系、酸化物系の無機系固体電解質、または高分子系の有機系固体電解質などを適用することもできる。固体電解質の適用により、全固体電池を構成することができる。
【0035】
正極活物質層および負極活物質層には電解液が含まれる。電解液としては、公知のリチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質および非水溶媒を含有する公知の電解液を使用することができる。
【0036】
電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiN(FSO2)2、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6およびLiClO4等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2およびLiC(CF3SO2)3等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。これらの内、電池出力および充放電サイクル特性の観点から好ましいのはイミド系電解質[LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2およびLiN(C2F5SO2)2等]およびLiPF6である。
【0037】
非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状または鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状または鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等およびこれらの混合物を用いることができる。
【0038】
電解液の電解質濃度は、1~5mol/Lであることが好ましく、1.5~4mol/Lであることがより好ましく、2~3mol/Lであることがさらに好ましい。電解液の電解質濃度が1mol/L未満であると、電池の充分な入出力特性が得られないことがあり、5mol/Lを超えると、電解質が析出してしまうことがある。なお、電解液の電解質濃度は、リチウムイオン電池用電極またはリチウムイオン電池を構成する電解液を、溶媒などを用いずに抽出して、その濃度を測定することで確認することができる。
【0039】
[発光部]
従来、単電池それぞれの端子間電圧等の監視は、単電池と測定素子との間を金属配線により電気的に接続し、さらに測定素子と監視制御装置との間も電気的に接続していた。単電池それぞれと配線で電気的に接続されていると、単電池間の短絡のリスクがあり、加えて、配線の手間が煩雑となる等の問題が生じていた。
【0040】
このような問題を解決することを意図して、本発明の発明者らは、電気的配線を用いない構成、具体的には、組電池に含まれる単電池それぞれに、単電池の特性を測定して当該特性に基づいて光信号を出力する発光部と、各発光部から出力される光信号をまとめて受信する受光部と、を備える構成を見出した。当該発明者らが見出した構成によれば、受光部で受信した光信号を解析(例えば、受光部に接続したデータ処理部で解析)することにより、従来のように単電池それぞれと配線接続することによる、単電池間の短絡のリスクを回避することができる。加えて、配線の手間が軽減され、組電池の製造コストを低減することができる。
【0041】
図2は、発光部の例を模式的に示す斜視図である。
図2に示す発光部20は、その内部または表面に配線を有する配線基板21と、配線基板21に実装された発光素子22、制御素子23a、23bを備える。また、配線基板の端部には電圧測定端子24、25が設けられている。電圧測定端子24、25は単電池に接続した際に一方の電圧測定端子が正極集電体に接触し、他方の電圧測定端子が負極集電体に接触する位置に設けられている。すなわち、電圧測定端子24、25はそれぞれ単電池の正極集電体と負極集電体の間の電圧を測定する電圧測定端子となる。
【0042】
電圧測定端子24および25は制御素子23a、23bと電気的に接続されており、制御素子23a、23bは発光素子22と電気的に接続されている。発光部20の発光は、単電池の電圧に応じて電力消費量が変化するように制御される。
【0043】
なお、配線基板21の、発光素子22の裏側にあたる面に、測定端子(図示略)が設けられてもよい。この測定端子は、単電池の温度を測定するための温度センサと接続して、温度測定端子として利用したり、ひずみゲージ、圧電素子等と接続して単電池の物理的変化を測定する端子として利用することができる。この測定端子も制御素子23a、23bと電気的に接続されており、制御素子23a、23bは発光素子22と電気的に接続されている。発光部20の発光は、例えば、単電池の温度に応じて電力消費量が変化するように制御される。
【0044】
発光部を構成する配線基板としてはリジッド基板またはフレキシブル基板を使用することができる。
図2に示すような配線基板の形状とする場合はフレキシブル基板とすることが好ましい。制御素子としてはIC、LSI等の任意の半導体素子を使用することができる。また、
図2には制御素子を2つ実装した例を示しているが、制御素子の数は限定されるものではなく、1つでもよく、3つ以上であってもよい。発光素子としてはLED素子、有機EL素子等の、電気信号を光信号に変換することのできる素子を使用することができ、LED素子であることが好ましい。なお、発光部において配線基板を有することは必須ではなく、制御素子および発光素子が基板を介さずに結線されることにより発光部を構成していてもよい。
【0045】
発光部は、単電池の負極集電体および正極集電体と電気的に接続されており、リチウムイオン電池からの電力供給を受けることができるようになっている。発光部が負極集電体および正極集電体と電気的に接続されていると、リチウムイオン電池からの電力供給を受けて発光素子を発光させることができる。
図2には電力供給を受けるための電極は図示していないが、電圧測定端子とは別の電極を発光部に設けておくことが好ましい。
【0046】
また、負極集電体および正極集電体は樹脂集電体であることが好ましく、負極集電体および正極集電体が発光部の電極に直接結合して電気的に接続されていることが好ましい。樹脂集電体を使用する場合、樹脂集電体と発光部の電極を接触させ、樹脂集電体を加熱して樹脂を軟化させることにより、樹脂集電体と発光部の電極を直接結合させることができる。また、半田、導電性テープ、導電性接着剤、異方性導電フィルム(ACF)等の導電性を有する他の接合材を集電体と発光部の間に介して電気的な接続を行うこともできる。
【0047】
[リチウムイオン電池モジュール]
図3は、リチウムイオン電池モジュールの一例を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。リチウムイオン電池モジュール1は、単電池ユニット30が複数個接続されてなる組電池50を有する。組電池50では、隣り合う単電池10の負極集電体19の上面と正極集電体17の下面が隣接するように積層されている。いわゆるバイポーラ型の単電池ユニット30が複数個直列接続されている。
図3は、5つの単電池ユニット30を積層した形態を示しているが、単電池の積層数は5より多くても、または5より少なくてもよい。一実装例では、単電池ユニット30の積層数は20以上であり得る。
【0048】
上述したように、組電池50は、単電池ユニットが複数積層された積層電池である。すなわち、組電池50は、扁平なシート状の単電池10を積み重ねた扁平な形状を有している。このとき、組電池50の積層方向両端の平面と、単電池10の積層方向両端の平面とが略平行、または、そのなす角度が-5°~5°である。また、組電池50の積層方向の厚みは、例えば、単電池ユニットを40層積層した場合、10mm以上60mm以下である。なお、その他の積層電池の構成として、一枚の樹脂集電体の片面に正極層を設け、この樹脂集電体の他方の面に負極層を設けた単電池を、電解質層を介して複数積層した構成としてもよい。
【0049】
組電池50の外表面(側面)には各単電池ユニット30が備える発光部20が一列に並んでいる。
図3には発光部20が一列に並んでいる形態を示しているが、異なる単電池ユニット間における発光部の位置関係は限定されるものではなく、単電池ユニットの異なる側面に発光部が設けられていてもよいし、同じ側面においてその位置がずれていてもよい。さらに、リチウムイオン電池モジュール1は、発光部20の発光面に隣接または近接して配置された光導波路60を有する。
【0050】
リチウムイオン電池モジュール1は、複数の単電池ユニット30および光導波路60を収容する外装体70を有する。
図3においては、組電池の構成を説明するために外装体の一部を除去して示している。外装体としては、金属缶ケース、高分子金属複合フィルム等を使用することができる。
【0051】
組電池50の最上面の負極集電体19の上には導電性シートが設けられ、導電性シートの一部が外装体70から引き出されて引出配線59となる。また、組電池50の最下面の正極集電体17の上には導電性シートが設けられ、導電性シートの一部が外装体70から引き出されて引出配線57となる。導電性シートとしては導電性を有する材料であれば特に限定されず、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケルおよびこれらの合金等の金属材料、並びに、樹脂集電体として記載した材料を適宜選択して用いることができる。引出配線を用いて、組電池への充電および組電池からの放電を行うことができる。
【0052】
光導波路60は、複数の単電池ユニット30の発光部20から出力される光信号の共通の光路を提供する。
図3に示すように、単電池の積層方向に延伸した光導波路60は、発光部20の発光面に隣接または近接して配置される。光導波路60は、発光部20からの光信号を受光するのに十分な幅(単電池の積層方向に直交する方向の長さ)を有する導光板としてもよい。光導波路60を導光板で構成する場合、光導波路60の幅方向寸法を発光部20の発光面の最大寸法(発光面が円形の場合は直径、矩形の場合は対角線)よりも大きくするとよい。
【0053】
光導波路60として導光板を用いる場合、複数の発光部20の発光面(各々が積層された複数の単電池に対応する)のすべてを覆うように光導波路60を配置することができる。また、発光部20の発光方向(発光面の鉛直方向に一致する場合および発光面の鉛直方向にから傾斜している場合を含む)を覆うように光導波路60を配置することができる。
【0054】
また、光導波路60としての導光板に対する発光部20からの光信号の結合効率を高めるために、レンズなどの追加部品を用いてもよく、集光加工を施した導光板を用いてもよい。さらに、単電池の積層方向に直交する方向に延伸した光導波路60を用いることも可能である。この場合、光導波路60としての導光板は、複数の発光部20の発光面のすべてを覆うことが可能で、光出力部に向かうテーパー形状とすることにより、先細りの光出力部から出力される光信号を受光部80で受信することができる。
【0055】
光導波路60は、光ファイバとしてもよく、例えば、複数の心線を束ねたテープ型ファイバを用いてもよい。また、受光部80が外装体70の内部に配置されている場合には、発光部20の発光方向と外装体70の内面との間に空間を設け、受光部80との間に空間光学系を構成してもよい。このとき、発光部20からの光信号の結合効率を高めるために、外装体70の内部に反射板などの追加部品を用いてもよく、外装体70の内面を反射面として加工してもよい。
【0056】
1つの光導波路60に隣接または近接して配置された20個以上の単電池ユニット30の各々に備えられた発光部20からの発光は、光学的に光導波路60に結合され、光出力部から出射される。本実施形態において、光導波路60の一部は、外装体70から引き出されて、各々の発光部20から入射し伝搬した光信号が出射する光出力部となっている。光出力部から出射した光信号は、受光部80により受信される。
【0057】
外装体の外に出た光導波路の一端から出射された光信号は、受光部80により受信される。受光部80は受光素子81を備えており、受光素子81によって光信号を電気信号に逆変換することにより、組電池50に含まれる単電池ユニット30内の状態を示す電気信号を得ることができる。受光素子81としてはフォトダイオード、フォトトランジスタ等を使用することができ、フォトダイオードが好ましい。発光素子であるLED素子を受光素子として用いて受光部80を構成してもよい。
【0058】
なお、光出力部を含む光導波路60の全体が外装体70の内部に収容されている場合には、光出力部から出射した光信号は、外装体70の内部に配置された受光部80により受信される。
【0059】
組電池と離間して配置される受光部80と光導波路60との間は、電気的に接続されておらず、光信号によって受光部80と光導波路60の間の情報伝達がされる。すなわち、受光部80と組電池50とが電気的に絶縁されていることを意味している。
【0060】
外装体70は、組電池50と、光導波路60および引出配線57、59の少なくとも一部を収容する。外装体70は、金属缶ケースまたは高分子金属複合フィルムを用いて構成することができる。外装体70は、内部の減圧を保つように封止される。
【0061】
発光部20の制御素子23a、23bは、対応する単電池10の特性を測定し、測定された特性を表す特性信号を生成する測定回路として機能するように構成されている。例えば、電圧測定端子24,25に入力される電圧に対応するバイナリー信号を特性信号として生成する。特性信号は、電圧範囲と対応する信号パターンを定義した、ルックアップテーブルを使って、電圧測定端子に入力された電圧をバイナリー信号に変換して生成することができる。また、電圧測定端子に入力された電圧を、アナログ/デジタル変換により8ビット(または16ビット)バイナリー信号に変換して生成してもよい。
【0062】
同様に、制御素子23a、23bの測定回路は、上述した測定端子に接続された温度センサの出力をバイナリー信号に変換したり、ひずみゲージ、圧電素子等の出力をバイナリー信号に変換することができる。
【0063】
制御素子23a、23bは、所定の期間毎に特性信号を符号化した制御信号を出力する制御回路として機能するように構成されている。所定のパターンに符号化された制御信号は、発光部20に供給され、制御信号に応じた光信号が、光導波路60に出力される。また、制御素子23a、23bは、特性信号と共に対応する単電池ユニット30に、固有の識別子を符号化して制御信号に付加して出力する。対応する単電池ユニット30の特性信号と共に識別子が符号化された制御信号に基づいて光信号が出力されるので、受信側において、いずれの単電池の状態情報であるかを識別することができる。
【0064】
[電池システム]
図4に、リチウムイオン電池モジュールを含む電池システムを示す。据置き型の高電圧大容量の電池システムを示している。複数のリチウムイオン電池モジュール1a-1nが直列に接続され、電池パック200を構成している。例えば、単電池30を48個積層した組電池50を含むリチウムイオン電池モジュールを、40段直列接続して6600Vを出力する電池パック200とする。複数の電池パック200a-200nを並列接続することにより、商用電源に相当する出力が可能な電池システムを構成する。単電池の積層数、リチウムイオン電池モジュールの接続数、電池パックの接続数を、それぞれ任意に設定することにより、様々な電池システムを構成することができる。
【0065】
リチウムイオン電池モジュール1には、光導波路60を介して、受光部80と信号処理装置100とを含む電池モジュール管理装置201に結合されている。各々の信号処理装置100は、電池パック管理装置202に接続され、複数の電池パック管理装置202a-202nが、電池システム管理装置203に接続されている。
【0066】
電池モジュール管理装置201は、受光部80と信号処理装置100とから構成されている。リチウムイオン電池1モジュールには、引出配線57と引出配線59とに接続された、組電池の入出力電圧を測定するための電圧計、引出配線57に接続された、組電池の入出力電流を測定するための電流計、および組電池50の周囲温度、外装体70の内面または外面などに設置された1または複数の温度センサを備えている。
【0067】
受光部80は、光導波路60と光学的に接続された受光素子を含み、複数の発光部20と受光部80との間の通信方式は、任意の方式を適用することができる。複数の発光部20が光導波路60を共通の光路として使用するので、受光部80において、どの単電池10の発光部20から発光された信号かを識別している。
【0068】
信号処理装置100は、受光部80で受信したリチウムイオン電池1モジュールの単電池ごとの特性信号、電圧計、電流計および温度センサからのデータを取得し、取得したデータから各々の単電池の状態を決定し、各々の単電池の状態を推定する。
【0069】
図5に、リチウムイオン電池モジュールと電池モジュール管理装置の構造を示す。リチウムイオン電池モジュール1の光導波路60および引出配線57,59が引き出された外装体70の側面に、モジュール管理装置基板211が取り付けられている。モジュール管理装置基板211には、電池モジュール管理装置201を構成する受光部80と信号処理装置100とが搭載され、リチウムイオン電池モジュール1と共に筐体212に格納されている。
図5は、モジュール管理装置基板211の格納状態がわかるように、便宜的に、各部材の組み立て前の位置関係を表している。
【0070】
モジュール管理装置基板211には、引出配線57(正極)および引出配線59(負極)と、リチウムイオン電池モジュール1同士を接続するための接続金具とを、それぞれ電気的に接続するための接続端子213(正極)および接続端子214(負極)が取り付けられている。また、信号処理装置100の出力端子と、電池モジュール管理装置201と電池パック管理装置202との間を接続する通信線とを、電気的に接続するための接続端子215が取り付けられている。接続端子213,214,215は、図の簡略化のために直方体で表しているが、用途に応じたコネクタ、プラグ等を適用することができる。
【0071】
モジュール管理装置基板211上の光導波路60の端面と対向する面に受光部80が搭載されているが、基板の反対の面に受光部80を搭載し、光導波路60を延長して、または基板を貫通させて受光部80に結合させてもよい。信号処理装置100も同様に、接続端子215と同一の面に搭載するようにしてもよい。
【0072】
電池パック管理装置202は、プロセッサとメモリ等が集積された汎用の集積回路、またはFPGA,ASIC等が集積された専用の集積回路などを含むオンボードコンピュータなどにより構成することができる。電池パック管理装置202は、電池モジュール管理装置201の通信回路103を介して、リチウムイオン電池モジュール1の状態などの情報を取得する。さらに、電池パック管理装置202は、電池パックの出力電圧、充放電時の電流、電池パックの温度分布などの計測を行う。
【0073】
電池パック管理装置202は、取得した情報や計測した結果から電池パックの状態を解析して、電池パックの監視制御を行う。例えば、信号処理装置100からの情報により異常の発生したリチウムイオン電池モジュールを検知して切り離したり、電池パックの出力を遮断して、電池システムから切り離すことができる。また、上位の管理装置である電池システム管理装置203に、計測した結果や解析した結果を送信することができる。
【0074】
電池システム管理装置203は、いわゆるPCS(Power Conditioning Subsystem)に相当する機能を有し、直流/交流変換、充放電の制御、系統連系機能などを有している。電池システム管理装置203は、複数の電池パック管理装置201と通信回線で接続され、取得した情報から電池パックの状態を解析したり、電池システムの運転状況に応じて、電池システム管理装置203へ指令を送出する。
【0075】
[電池パックのラック]
図6に、電池パックのラックの構造を示す。
図6(a)はラック300の前面から見た内部構造の概略図である。電池パック200は、1つの筐体に収められ、上から順に、複数の冷却ファンが組み込まれたファンスロット301、電池パック管理装置201を収容する管理スロット302、リチウムイオン電池モジュール1を収容する電池スロット303
1-303
nを有している。上述したように、扁平な形状の積層電池である組電池50を含むリチウムイオン電池モジュール1は、ラック300の設置面(底面)と略平行の状態で設置される。すなわち、扁平な形状の積層電池を平置きで、ラック300の内部に、単電池、組電池を密に縦積みすることができ、空間効率の良い電池構造とすることができる。また、ラック300には、リチウムイオン電池モジュール1の放熱のために、複数の整流スロット304
1-304
mを有している。
【0076】
図6(b)はラック300の側面から見た内部構造の概略図である。ラックの前面は、電池パック管理装置202と、リチウムイオン電池モジュール1に結合された電池モジュール管理装置201の通信部103とを接続するケーブルダクト305となる空間が設けられている。ラックの後面は、ラックの前面・下方から吸気した空気が、リチウムイオン電池モジュール1に接し、後面・上方から冷却ファンに吸い上げられるようにした排気ダクト306となる空間が設けられている。
【0077】
複数のリチウムイオン電池モジュール1は、
図3に示したように、正極となる引出配線57と負極となる引出配線59が、外装体70から引き出されている。リチウムイオン電池モジュールの正極を上段のリチウムイオン電池モジュールの負極と接続する接続端子と、負極を下段のリチウムイオン電池モジュールの正極と接続する接続端子とにより、複数のリチウムイオン電池モジュール1を直列に接続する。
【0078】
例えば、代表的な巻回型単電池として18650型電池を用いて電池ジュールを構成する場合、充填密度と製造プロセスとを考慮すると、円筒形の単電池を縦にして、横方向並べることになり、巻回型単電池の間に空間が生じる。本実施形態によれば、このような無駄な空間がなく、効率よく単電池を集積することができる。
【0079】
図7に、電池スロットにおけるリチウムイオン電池モジュールの接続形態を示す。ラック300には、ラックの設置面(底面)と略平行に設置され、互いに略平行な複数の棚板311を備えている。棚板311には、筐体202および筐体212にそれぞれ収容された管理スロット302および電池スロット303
1-303
nが配置されている。電池スロット303
1-303
nの構成は、リチウムイオン電池モジュール1を収容することができれば、どのような構造でもよく、積層電池である組電池50の積層方向両端の平面と、ラックの底面とが略平行の状態で、組電池50を複数設置できればよい。また、積層電池である組電池50の積層方向端部の平面と、棚板311の面とが略平行であればよい。
【0080】
上述した従来の巻回型単電池を複数接続する場合と比較する。ケースに収容され独立した1つの巻回型単電池の各軸への投影面積のうち最も大きい面積を、巻回型単電池の底面積と定義すると、単電池10の底面積は、巻回型単電池の底面積より大きい。単電池10を積層した組電池50を含むリチウムイオン電池モジュール1を棚板311に設置した場合に、単電池10の底面積は、棚板の面積の30%以上を占めている。さらに、単電池10の底面積は、巻回型単電池の底面積より大きく、棚板の面積の50%以上を占める構成とすることもできる。
【0081】
電池スロット3031の筐体212に取り付けられた接続端子214(負極)と、下段の電池スロット3032の接続端子213(正極)とが接続金具312で接続される。電池スロット3032の接続端子214(負極)は、さらに下段の電池スロット3033の接続端子213(正極)と、接続金具313で接続される。このようにして、電池スロットごとに、リチウムイオン電池モジュール1を収容する筐体212を、天地逆さまに戴置していき、上段の負極と下段の正極、下段の負極とさらに下段の正極と順次接続していくことにより、複数のリチウムイオン電池モジュール1を直列に接続することができる。最上部の電池スロット3031の正極と、最下部の電池スロット303nの負極とから電力を取り出すことにより、例えば、40段直列接続、出力6600Vの電池パック200を構成することができる。
【0082】
リチウムイオン電池モジュール1の筐体212に取り付けられた接続端子215は、通信線314に接続され、電池モジュール管理装置201の各々は、管理スロット302の電池パック管理装置202と通信を行うことができる。
【0083】
接続金具312,313は、図の簡略化のために方形で表しているが、板状の金属、線材など、接続端子213,214同士を接続することができれば、形状、材質は問わない。通信線314も、図の簡略化のために方形で表しているが、バス配線、リング配線など通信方式に応じて適宜選択すればよい。
【符号の説明】
【0084】
10 単電池
12 正極
13 負極
14 セパレータ
15 正極活物質層
16 負極活物質層
17 正極集電体
18 枠部材
19 負極集電体
20 発光部
21 配線基板
22 発光素子
23a、23b 制御素子
24、25 測定端子
30 単電池ユニット
50 組電池
57、59 引出配線
60 光導波路
70 外装体
80 受光部
100 信号処理装置
101 マイコン回路
102 メモリ回路
103 通信回路
200 電池パック
201 電池モジュール管理装置
202 電池パック管理装置
203 電池システム管理装置
211 モジュール管理装置基板
212 筐体
213,214,215 接続端子
301 ファンスロット
302 管理スロット
303 電池スロット
304 整流スロット
305 ケーブルダクト
306 排気ダクト
311 棚板
312,313 接続金具
314 通信線