(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094672
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ペットのための給水器用ノズル機構
(51)【国際特許分類】
A01K 7/06 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
A01K7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210108
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000107066
【氏名又は名称】株式会社リッチェル
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】水野 雅多郎
(72)【発明者】
【氏名】岩井 和弘
【テーマコード(参考)】
2B102
【Fターム(参考)】
2B102AA04
2B102AA15
2B102AB12
2B102AB32
2B102CA02
2B102CA27
2B102CA34
(57)【要約】
【課題】止水パッキンの嵌め込み作業において、止水パッキンの変形量を少なくすることができるような構造のノズル機構を提供する。
【解決手段】キャップ21に設ける開口部40は、非丸穴とする。一対のコーナ53の距離d3は、止水パッキン23の外径Dpとほぼ同じにする。矢印(1)の通りに、正円の止水パッキン23を殆ど変形させることなく、開口部40へ挿入し、パッキン溝32へ嵌め込むことができる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下へ延びる導水管の下端に設けるノズル機構であり、このノズル機構は、キャップと、止水ボールと、止水パッキンとを備え、
前記キャップは、筒部と、この筒部の一端を閉じる共に前記止水ボールの外径に対応した径の開口部が設けられている底部と、前記開口部を囲うようにして前記底部に設けられ前記止水パッキンを嵌めるパッキン溝とを備え、
非給水時は、前記開口部から前記止水ボールの一部が露出しているが、前記止水ボールが前記止水パッキンに接することで、水が前記導水管内に留まり、
給水時は、前記止水ボールをペットが舌で押し上げることで、前記止水ボールが前記止水パッキンから離れて、水が前記導水管から流出するようになっているペットのための給水器用ノズル機構において、
前記キャップは、樹脂製であり、
前記開口部は、第1辺~第6辺を有する六角形をベースとする変形六角穴であって、
前記第1辺及びこの第1辺に対向する前記第4辺は、前記第1辺と前記第4辺の間隔が前記止水ボールの外径より小さく設定され、前記第1辺と前記第4辺の長さが前記第1辺と前記第4辺の間隔より小さく設定され、
前記第1辺の両端から各々延びる前記第2辺及び前記第6辺が、前記第1辺となす内角は95°~100°に設定され、
前記第4辺の両端から各々延びる前記第3辺及び前記第5辺が、前記第4辺となす内角は95°~100°に設定され、
前記第1辺と前記第2辺との交点を第1交点とし、前記第4辺と前記第5辺との交点を第2交点としたときに、前記第1交点と前記第2交点の距離が、前記止水パッキンの外径とほぼ同じに設定され、
前記第2辺及び前記第3辺は、前記第1辺の長さより大きくて前記止水ボールの外径より小さな直径の基準円で切り欠かれ、この切り欠かれた部分が前記基準円と同径の円弧部で繋がれ、
前記第5辺及び前記第6辺も、前記基準円で切り欠かれ、この切り欠かれた部分が前記基準円と同径の円弧部で繋がれ、
前記第1辺及び前記第4辺は、切り欠き状の凹部を有していることを特徴とするペットのための給水器用ノズル機構。
【請求項2】
請求項1記載のペットのための給水器用ノズル機構であって、
前記キャップは、透明又は半透明の樹脂で構成されていることを特徴とするペットのための給水器用ノズル機構。
【請求項3】
下へ延びる導水管の下端に設けるノズル機構であり、このノズル機構は、キャップと、止水ボールと、止水パッキンとを備え、
前記キャップは、筒部と、この筒部の一端を閉じる共に前記止水ボールの外径に対応した径の開口部が設けられている底部と、前記開口部を囲うようにして前記底部に設けられ前記止水パッキンを嵌めるパッキン溝とを備え、
非給水時は、前記開口部から前記止水ボールの一部が露出しているが、前記止水ボールが前記止水パッキンに接することで、水が前記導水管内に留まり、
給水時は、前記止水ボールをペットが舌で押し上げることで、前記止水ボールが前記止水パッキンから離れて、水が前記導水管から流出するようになっているペットのための給水器用ノズル機構において、
前記開口部は、丸穴部と、この丸穴部に連続して形成した切り欠き状の少なくとも一対の張り出し部とからなり、
一方の張り出し部の底と他方の張り出し部の底との距離が、前記止水パッキンの外径とほぼ同じに設定されていることを特徴とするペットのための給水器用ノズル機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット用給水器に好適なノズル機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ペット(愛玩動物)には、随時水を飲ませる必要がある。そのための給水器が各種実用化されてきた(例えば、特許文献1(
図2)参照)。
【0003】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図14は従来の給水器用ノズル機構の分解斜視図である。
図14に示すように、給水器用ノズル機構100は、キャップ101と、止水ボール102と、Oリング状の止水パッキン103とからなる。
【0004】
キャップ101は、基部に雌ねじ部104を有する筒部105と、この筒部105の先端を閉じると共に開口部106を有する底部107と、リング状のパッキン溝108を備えている。
【0005】
パッキン溝108に止水パッキン103を嵌めるが、この嵌め方には次の2つの方法がある。
第1の方法は、雌ねじ部104側から止水パッキン103をキャップ101内へ挿入する。
第2の方法は、開口部106側から止水パッキン103をキャップ101内へ挿入する。
【0006】
キャップ101の軸長が一定程度あるため、及び雌ねじ部104に止水パッキン103が引っかかるため、第1の方法では嵌め込み作業は難しくなる。
対して、開口部106の近傍にパッキン溝108があるため、第2の方法の方が嵌め込み作業は容易となる。
【0007】
そこで、第2の方法に基づく嵌め込み作業の手順を、
図15に基づいて説明する。
図15(a)に止水パッキン103の平面図を示し、
図15(b)にキャップ101の底面図を示す。
嵌め込み作業に当たって、キャップ101は、開口部106が上になるようにして、作業台111に置かれる。
【0008】
図15(c)に示すように、作業員は拇指112と人差し指113で止水パッキン103を挟みつつ、長円にする。長円の短径114が、開口部106の穴径より十分に小さくなるようにする。例えば、長円は、長径:短径=2:1程度とする。
【0009】
この状態で、止水パッキン103を、開口部106からキャップ101へ挿入し(矢印A)、挿入後に長円が正円になるように戻して(矢印B)、パッキン溝108へ嵌め込む。
【0010】
図15(d)に嵌め込み後の形態を示す。
以上に述べた構造のキャップ101には、次に述べる不具合があることが判明した。
第1に、
図15(c)で説明したように、正円の止水パッキン103を、長径:短径=2:1程度の長円に変形するため、作業員の負担が大きくなる。
第2に、長円を正円(矢印B)に戻すため、嵌め込みに時間が掛かる。すなわち、従来の嵌め込み作業は、時間が掛かる。
【0011】
第3に、
図15(d)において、開口部106の穴径と止水パッキン103の内径とが殆ど同じであるため、止水パッキン103の目視確認は簡単ではない。すなわち、止水パッキン103が嵌められていることを、完成品検査で確認する必要があるが、この完成品検査が面倒になる。
【0012】
以上に述べた第1~第3の不具合を解決し得るノズル機構が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、嵌め込み作業においては止水パッキンの変形量を少なくすることができ、嵌め込み後には止水パッキンの有無を容易に目視確認できるような構造のノズル機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に係る発明は、下へ延びる導水管の下端に設けるノズル機構であり、このノズル機構は、キャップと、止水ボールと、止水パッキンとを備え、
前記キャップは、筒部と、この筒部の一端を閉じる共に前記止水ボールの外径に対応した径の開口部が設けられている底部と、前記開口部を囲うようにして前記底部に設けられ前記止水パッキンを嵌めるパッキン溝とを備え、
非給水時は、前記開口部から前記止水ボールの一部が露出しているが、前記止水ボールが前記止水パッキンに接することで、水が前記導水管内に留まり、
給水時は、前記止水ボールをペットが舌で押し上げることで、前記止水ボールが前記止水パッキンから離れて、水が前記導水管から流出するようになっているペットのための給水器用ノズル機構において、
前記キャップは、樹脂製であり、
前記開口部は、第1辺~第6辺を有する六角形をベースとする変形六角穴であって、
前記第1辺及びこの第1辺に対向する前記第4辺は、前記第1辺と前記第4辺の間隔が前記止水ボールの外径より小さく設定され、前記第1辺と前記第4辺の長さが前記第1辺と前記第4辺の間隔より小さく設定され、
前記第1辺の両端から各々延びる前記第2辺及び前記第6辺が、前記第1辺となす内角は95°~100°に設定され、
前記第4辺の両端から各々延びる前記第3辺及び前記第5辺が、前記第4辺となす内角は95°~100°に設定され、
前記第1辺と前記第2辺との交点を第1交点とし、前記第4辺と前記第5辺との交点を第2交点としたときに、前記第1交点と前記第2交点の距離が、前記止水パッキンの外径とほぼ同じに設定され、
前記第2辺及び前記第3辺は、前記第1辺の長さより大きくて前記止水ボールの外径より小さな直径の基準円で切り欠かれ、この切り欠かれた部分が前記基準円と同径の円弧部で繋がれ、
前記第5辺及び前記第6辺も、前記基準円で切り欠かれ、この切り欠かれた部分が前記基準円と同径の円弧部で繋がれ、
前記第1辺及び前記第4辺は、切り欠き状の凹部を有していることを特徴とする。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のペットのための給水器用ノズル機構であって、
前記キャップは、透明又は半透明の樹脂で構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に係る発明は、下へ延びる導水管の下端に設けるノズル機構であり、このノズル機構は、キャップと、止水ボールと、止水パッキンとを備え、
前記キャップは、筒部と、この筒部の一端を閉じる共に前記止水ボールの外径に対応した径の開口部が設けられている底部と、前記開口部を囲うようにして前記底部に設けられ前記止水パッキンを嵌めるパッキン溝とを備え、
非給水時は、前記開口部から前記止水ボールの一部が露出しているが、前記止水ボールが前記止水パッキンに接することで、水が前記導水管内に留まり、
給水時は、前記止水ボールをペットが舌で押し上げることで、前記止水ボールが前記止水パッキンから離れて、水が前記導水管から流出するようになっているペットのための給水器用ノズル機構において、
前記開口部は、丸穴部と、この丸穴部に連続して形成した切り欠き状の少なくとも一対の張り出し部とからなり、
一方の張り出し部の底と他方の張り出し部の底との距離が、前記止水パッキンの外径とほぼ同じに設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、キャップは、樹脂製であるため、金型を用いた射出成形法で量産が可能となる。金属の削り出し品に比較して、樹脂製のキャップは安価となる。
また、開口部が変形六角穴であって、対向する一対の交点の距離が、止水パッキンの外径とほぼ同じに設定されているため、正円の止水パッキンを殆ど長円化することなく、嵌め込み作業が行える。結果、短い時間で容易に嵌め込み作業が行える。
【0019】
また、嵌め込み後には、開口部の4隅のコーナを通して、止水パッキンが見える。
したがって、本発明により、嵌め込み作業においては止水パッキンの変形量を少なくすることができ、嵌め込み後には止水パッキンの有無を容易に目視確認できるような構造のノズル機構が提供される。
【0020】
加えて、請求項1に係る発明では、第2辺及び第4辺は、切り欠き状の凹部を有している。この凹部に対応する部位にて金型にブリッジ部を設けることができ、金型の寿命を延ばすことができる。
【0021】
請求項2に係る発明では、キャップは、透明又は半透明である。
止水ボールは、ペットが舐めるため、餌のカスが止水ボールに付着し勝ちである。このカスでキャップ内部が徐々に汚れる。この汚れは雑菌の繁殖を招く恐れがある。そこで、キャップ内部を適宜清掃することが推奨される。
キャップが半透明又は透明であれば、外から汚れ具合を観察することができ、効率よくキャップを清掃することができる。
【0022】
請求項3に係る発明では、開口部は、丸穴部と、この丸穴部に連続して形成した切り欠き状の少なくとも一対の張り出し部とからなる。一方の張り出し部の底と他方の張り出し部の底との距離が、止水パッキンの外径とほぼ同じに設定されているため、正円の止水パッキンを殆ど長円化することなく、嵌め込み作業が行える。結果、短い時間で容易に嵌め込み作業が行える。
【0023】
また、嵌め込み後には、張り出し部を通して、止水パッキンが見える。
したがって、本発明により、嵌め込み作業においては止水パッキンの変形量を少なくすることができ、嵌め込み後には止水パッキンの有無を容易に目視確認できるような構造のノズル機構が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係るノズル機構を備えるペットのための給水器の斜視図である。
【
図2】本発明に係るノズル機構の分解斜視図である。
【
図5】(a)~(e)は開口部の形態を詳しく説明する図である。
【
図7】(a)、(b)は止水パッキン嵌め込み作業を説明する図である。
【
図8】(a)、(b)は止水パッキンの見え方を比較しつつ説明する図である。
【
図11】(a)~(c)はスライド型の作動を説明する図である。
【
図12】(a)は第2スライド型の斜視図、(b)は(a)のb-b線断面図である。
【
図13】(a)、(b)は開口部の変更例を説明する図である。
【
図14】従来の給水器用ノズル機構の分解斜視図である。
【
図15】(a)~(d)は従来の止水パッキン嵌め込み作業を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例0026】
図1に示すように、ペットのための給水器(以下、給水器と言う。)10は、縦筒部11と、この縦筒部11から水平に延びる腕部12と、この腕部12の先端にねじ込む固定ねじ部材13と、縦筒部11から斜め下へ延びる導水管14と、この導水管14の下端に設けるペットのための給水器用ノズル機構(以下、ノズル機構と言う。)20とからなる。
【0027】
縦筒部11の上部に、水容器16を取付ける。この水容器16は、縦筒部11に着脱可能である他、縦筒部11に一体的に固定されたタンクであってもよい。
飼育ケージ17の外面に腕部12の先端を当て、飼育ケージ17の内側から固定ねじ部材13をねじ込む。以上により、給水器10が飼育ケージ17に取付けられる。
【0028】
導水管14は、縦筒部11から斜め下へ延びているため、下端のノズル機構20は飼育ケージ17内に存在する。
なお、導水管14は、S字状であってもよい。また、水容器16を飼育ケージ17の内側に取付ける形式である場合は、導水管14は鉛直に下へ延ばしてもよい。
よって、導水管14は、水が流れ落ちるように、縦筒部11から下へ延びていればよく、形状は任意である。
【0029】
図2に示すように、ノズル機構20は、キャップ21と、外径がDbである止水ボール22と、キャップ21に嵌められた止水パッキン23と、止水ボール22を止水パッキン23へ押し付ける付勢部材24とからなる。付勢部材24は圧縮コイルばね(スプリング)が好適である。
【0030】
導水管14の下端(先端)に雄ねじ部25が設けられると共にすり割り26が設けられている。
付勢部材24に爪27が設けられており、爪27をすり割り26に嵌めることで、付勢部材24は安定的に導水管14に取付けられる。
キャップ21に止水ボール22を収納した上で、キャップ21を雄ねじ部25にねじ込む。
以上により、止水ボール22が所定の付勢力で止水パッキン23へ押し付けられ、止水作用が維持される。
【0031】
キャップ21は開口部40を有し、この開口部40から止水ボール22の一部が突出(露出)する。ペットは舌で止水ボール22を舐めつつ押す。押すことで止水ボール22と開口部40との間から水が流出する。
すなわち、給水時は、止水ボール22をペットが舌で押し上げることで、止水ボール22が止水パッキン23から離れて、水が導水管14から流出する。
また、非給水時は、開口部40から止水ボール22の一部が露出しているが、止水ボール22が止水パッキン23に接することで、水が導水管14内に留まる。
【0032】
キャップ21は、金属製と樹脂製の何れであってもよい。
樹脂製の場合は、不透明樹脂、半透明樹脂、透明樹脂の何れであってもよいが、半透明樹脂や透明樹脂がより好ましい。
【0033】
止水ボール22は、ペットが舐めるため、餌のカスが止水ボール22に付着しやすい。このカスでキャップ21内部が徐々に汚れる。この汚れは雑菌の繁殖を招く恐れがある。
そこで、キャップ21内部を適宜清掃することが推奨される。
キャップ21が半透明又は透明であれば、外からキャップ21内部の汚れ具合を観察することができ、効率よくキャップ21を清掃することができる。
【0034】
図3に示すように、キャップ21は、基部に雌ねじ部28を有する筒部29と、この筒部29の一端(先端)を閉じる共に止水ボール(
図2、符号22)の外径Dbに対応した径の開口部40が設けられている底部31と、開口部40を囲うようにして底部31に設けられ止水パッキン23を嵌めるパッキン溝32とを備えている。
「止水ボール(
図2、符号22)の外径Dbに対応した径」とは、止水ボール(
図2、符号22)の一部が開口部40から突出し、残部がキャップ21内に残るように定めた穴径である。
【0035】
図4に示すように、キャップ21の底部31に設けられた開口部40は、非円形の穴である。このような開口部40の形状を、
図5に基づいて詳しく説明する。
図5(a)に示すように、時計回りに繋がっている第1辺41、第2辺42、第3辺43、第4辺44、第5辺45及び第6辺46からなる六角形(六辺形)を規定する。
【0036】
この六角形は正六角形ではない。すなわち、第1辺41及びこの第1辺41に対向する第4辺44は、第1辺41と第4辺44の間隔d1が止水ボールの外径(
図2、Db)より小さく設定され、且つ第1辺41の長さL1と第4辺44の長さL1が前記間隔d1より小さく設定される。
【0037】
第1辺41の上端から延びる第2辺42が第1辺41となす内角θは、95°~100°に設定される。
同様に、第1辺41の下端から延びる第6辺46が第1辺41となす内角θは、95°~100°に設定され、第4辺44の両端から各々延びる第3辺43及び第5辺45が、第4辺44となす内角θは95°~100°に設定される。
【0038】
第1辺41と第2辺42との交点を第1交点47とし、第4辺44と第5辺45との交点を第2交点48としたときに、第1交点47と第2交点48の距離d3が、止水パッキンの外径(
図7、Dp)と同じ(ほぼ同じを含む。)に設定される。
ほぼ同じとは、(止水パッキンの外径Dp-止水パッキンの線径)≦距離d3≦止水パッキンの外径Dpの範囲にあることを意味する。線径は
図7(a)に示すdpである。
【0039】
次に、
図5(b)に示すように、第2辺42及び第3辺43は、長さL1より大きくて止水パッキンの外径Dbより小さな直径dsの基準円49で切り欠かれる。同様に、第5辺45及び第6辺46が、基準円49で切り欠かれる。基準円49は、
図15(b)に示す丸穴形状の従来の開口部106と同径の円である。
次に、
図5(c)に示すように、切り欠かれた部分が直径ds(すなわち、基準円49と同径)の円弧部51で繋がれる。
【0040】
また、
図5(d)に示すように、第1辺41及び第4辺44に、切り欠き状の凹部52を設ける。この凹部52の深さは、後で説明する。
ところで、樹脂成形や機械加工では、2つの直線が交わるようなコーナをシャープに形成することは困難である。そこで、コーナを適宜丸めることが、普通に行われている。
図5(e)に示すように、4つのコーナ53を適宜丸める。
以上により、六角形をベースとする変形六角穴状の開口部40が得られる。
【0041】
図6に示すように、キャップ21の底部31に変形六角穴状の開口部40が設けられている。その他の符号は、
図5(a)~(e)で説明済みであるため、説明を省略する。
切り欠き状の凹部52の深さは、破線で示すパッキン溝32の深さの40%~70%に設定する。
【0042】
次に、パッキン溝32へ止水パッキン23を嵌め込む作業を説明する。
図7(a)に示す止水パッキン23は、外径がDpで、線径がdpである。
図7(b)に示すキャップ21は、
図6に示すキャップ21を時計回りに約45°回転させた。対向する一対のコーナ53の間の距離は、距離d3(
図5(a)、第1交点47と第2交点48の距離d3)とほぼ同じであり、且つ止水パッキン23の外径Dpとほぼ同じである。
【0043】
作業員が拇指と人差し指とで、止水パッキン23を挟むと、正円の止水パッキン23は僅かに長円になる。そのまま、止水パッキン23を、矢印(1)のように、開口部40からキャップ21内へ挿入する。挿入後は、僅かに長円化した止水パッキン23が正円に戻る。以上により、パッキン溝32へ止水パッキン23が嵌る。
【0044】
すなわち、
図15で説明した従来の嵌め込み作業に比較して、
図7で説明した本発明の嵌め込み作業は、容易である。その上、止水パッキン23を殆ど変形させないため、嵌め込み作業のための時間は短くなる。
また、パッキンの材質によっては大きく変形させると痛むことがあるが、そのような材質であっても、本発明によれば、止水パッキン23を殆ど変形させないため、止水パッキン23を傷めることはない。
【0045】
次に嵌め込み作業後の形態を、
図8に基づいて説明する。
図8(a)に示すように、実施例のキャップ21では、開口部40の4つのアール53を通して、止水パッキン23が見える。結果、完成品検査の際に、止水パッキン23の有無が目視により容易に確認できる。
【0046】
対して、
図8(b)に示す比較例のキャップ101では、開口部106の穴径と止水パッキン103の内径が殆ど同じであるため、止水パッキン103が見えにくい。又は止水パッキン103が殆ど見えない。結果、完成品検査の際に、止水パッキン103の有無が簡単には確認できない。
確認が難しいため、完成品検査に要する時間が長くなる。この点、実施例であれば完成品検査に要する時間が短くなる。
【0047】
次に、本発明のキャップ21を、樹脂成形法で得るときに使用する金型について、
図9~
図12に基づいて説明する。
図9に示すように、開口部40を形成するために、一対の第1スライド型55と、一対の第2スライド型57とを準備する。
【0048】
図9の10-10線断面図である
図10に示すように、第1スライド型55は下端に、コ字断面を含む鉤状部58を有する。キャビティ59へ樹脂材料を射出することにより、樹脂製のキャップが成形できるが、この際に、鉤状部58でパッキン溝32と開口部40とが形成される。
【0049】
鉤状部58が、いわゆるアンダーになっているため、第1スライド型55は樹脂成形品から簡単には外れない。
そこで、
図11(a)に示すように、一対の第1スライド型55を、互いに接近するように移動する(矢印(2))。次に、一対の第1スライド型55を、図面表裏方向へ移動する(矢印(3))。
結果、
図11(b)に示すように、一対の第2スライド型57だけが残った。
【0050】
図11(c)に示すように、一対の第2スライド型57を、互いに接近するように移動する(矢印(4))。次に、一対の第2スライド型57を、図面表裏方向へ移動する(矢印(5))。
以上により、樹脂成形品から第1スライド型55及び第2スライド型57が外れる。
【0051】
ところで、
図9において、第1スライド型55は、図面上下方向の制約がなく、
図10に示す鉤状部58は十分な剛性を確保することができる。
対して、第2スライド型57は、第1スライド型55で図面左右方向が制約されている。
【0052】
図12(a)のb-b線断面図である
図12(b)に示すように、第2スライド型57の鉤状部58においては、肉厚tを大きくすることができない。このままでは、第2スライド型57の寿命が短くなる。
対策として、
図12(a)に示すように、鉤状部58のコ字断面を横断するようにブリッジ部61を渡す。このブリッジ部61は、
図6に示す凹部52に対応して、形成される。すなわち、凹部52は、ブリッジ部61を設けるために設けた窪みである。
鉤状部58にブリッジ部61を渡したことにより剛性が高まり、第2スライド型57の寿命を延ばすことができる。
【0053】
以上、樹脂製のキャップ21について説明した。射出成形法であれば、金型と射出成形装置と樹脂材料とを準備するだけで、キャップ21を大量生産することができ、安価なキャップ21が提供される。
【0054】
キャップ21は樹脂製の他、金属製であってもよい。
金属製の場合、例えば丸棒から切削加工法により、キャップ21を得ることができる。切削加工法によれば、多様な形態の開口部40が得られる。多様な形態の開口部40の具体例を
図13に基づいて説明する。
【0055】
図13(a)に示すように、底部31に基準円の径dsと同じ穴径の丸穴部62を開ける。
次に、
図13(b)に示すように、丸穴部62の一部を切り欠いて一対の張り出し部63を形成する。一方の張り出し部63の底と他方の張り出し部63の底との距離d4は、止水パッキン23の外径Dpと同等(ほぼ同等を含む。)の大きさに設定する。
ほぼ同等するとは、(止水パッキンの外径Dp-止水パッキンの線径dp)≦距離d4≦止水パッキンの外径Dpの範囲にあることを意味する。
【0056】
張り出し部63は、半円状の張り出しが好ましい。半円状であれば、半円の径は止水パッキン23の線径(外径)より若干大きくすればよい。
ただし、張り出し部63は、止水パッキン23の線径(外径)より大きな幅のコ字状やV字状の張り出しでもよく、形状は任意である。
【0057】
図13(b)の形態であれば、
図7(a)、(b)で説明したように、止水パッキン23の嵌め込み作業が極めて容易になり、
図8(a)と同様に、張り出し部63を通して、止水パッキン23の目視確認が容易に行える。
【0058】
実施例では、張り出し部63を2個(一対)設けたが、4個(二対)や6個(三対)設けることは差し支えない。よって、張り出し部63は、開口部40に少なくとも一対設ければよい。
10…ペットのための給水器(給水器)、14…導水管、20…ペットのための給水器用ノズル機構(ノズル機構)、21…キャップ、22…止水ボール、23…止水パッキン、29…筒部、31…底部、32…パッキン溝、40…開口部、41…第1辺、42…第2辺、43…第3辺、44…第4辺、45…第5辺、46…第6辺、47…第1交点、48…第2交点、49…基準円、51…円弧部、52…凹部、53…コーナ、62…丸穴部、63…張り出し部、Db…止水ボールの外径、Dp…止水パッキンの外径、dp…止水パッキンの線径、ds…基準円の径、d1…第1辺と第4辺の間隔、d3…第1交点と第2交点の距離、d4…一方の張り出し部の底と他方の張り出し部の底との距離、L1…第1辺(第4辺)の長さ、θ…内角。