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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094675
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】燃料電池システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04828 20160101AFI20230629BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20230629BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20230629BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20230629BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20230629BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20230629BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20230629BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20230629BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20230629BHJP
【FI】
H01M8/04828
H01M8/0606
H01M8/04014
H01M8/0432
H01M8/04313
H01M8/04701
H01M8/0438
H01M8/04746
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210111
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000170130
【氏名又は名称】パーパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】辰己 敏也
(72)【発明者】
【氏名】小池 秀人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 和樹
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA13
5H127BA19
5H127BA33
5H127BA34
5H127BA43
5H127BB02
5H127BB18
5H127BB19
5H127BB23
5H127DB02
5H127DB22
5H127DB86
5H127DB87
5H127DC87
5H127EE23
(57)【要約】
【課題】水自立運転とともに、外部からの改質水の供給手段やドレンの排水処理を不要とする燃料電池システムを提供する。
【解決手段】改質ガスを生成する改質部、改質ガスと空気を用いて発電する燃料電池、および燃焼部を備え、発電および燃焼により生じる排ガスを排出するホットモジュール(4)と、排気流路(12)に設置されており、排ガスと熱交換する熱交換部(14)と、排ガスの温度を検出する排気温センサ(20)と、熱交換部での熱交換により排ガスから凝縮した水を回収して貯留し、改質水としてホットモジュールに供給するタンク(改質水タンク6)と、タンク内の所定水位を検出する水位センサ(レベルセンサ24)と、水位センサおよび排気温センサの検出情報により、タンク内の水位に応じて排ガスが露点温度以上もしくは露点温度未満のいずれかになるように熱交換部の熱交換能力を制御する制御部(22)を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質水と燃料ガスにより改質ガスを生成する改質部、該改質ガスと空気を用いて発電する燃料電池、および燃焼部を備えており、発電および燃焼により生じる排ガスを排出するホットモジュールと、
前記排ガスを流す排気流路に設置されており、前記排ガスと熱交換する熱交換部と、
前記排ガスの温度を検出する排気温センサと、
前記熱交換部での熱交換により前記排ガスから凝縮した水を回収して貯留し、改質水として前記ホットモジュールに供給するタンクと、
前記タンク内の所定水位を検出する水位センサと、
前記水位センサおよび前記排気温センサの検出情報を利用して、前記タンク内の水位に応じて前記排ガスが露点温度以上もしくは露点温度未満のいずれかになるように前記熱交換部の熱交換能力を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記水位センサの検出情報に対して設定された少なくとも低基準値および高基準値に基づき、前記低基準値の場合に前記排ガスの温度が露点温度未満になるように熱交換させ、前記高基準値に達した場合に前記排ガスの温度が露点温度以上になるように前記熱交換部を制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記熱交換部は、前記排気流路に対する送風により前記排ガスを放熱させる冷却ファンを備え、
前記制御部は、少なくとも熱交換後の前記排ガスの検出温度に基づいて前記冷却ファンの回転数を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
さらに、少なくとも前記水位センサの検出情報、前記排気温センサの検出情報、前記熱交換部に対する制御情報を格納する記憶部を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項5】
さらに、前記ホットモジュールに供給される空気量を計測する空気量センサと、
前記燃料ガスの供給量を計測するガス量センサと、
前記タンク内の水を前記ホットモジュールに対して圧送するポンプと、
を備え、
前記制御部は、前記空気量センサおよび前記ガス量センサの検出情報に基づいて前記ポンプの圧送能力を設定するとともに、前記排ガスの露点温度を設定して前記熱交換部の熱交換能力を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記排ガスの露点温度よりも所定温度だけ高い基準温度を設定し、前記タンク内の水位が前記高基準となった後に、前記排ガスの温度が前記基準温度またはこれに近い温度になるように前記熱交換部を制御することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の燃料電池システム。
【請求項7】
改質水と燃料ガスにより改質ガスを生成する改質部、該改質ガスと空気を用いて発電する燃料電池、および燃焼部を備えた、発電および燃焼により生じる排ガスを排出するホットモジュールを含む燃料電池システムの制御方法であって、
前記排ガスの温度を排気温センサで検出し、
前記排ガスを流す排気流路に設置された熱交換部での熱交換により前記排ガスから凝縮した水を回収してタンクに貯留し、改質水として前記ホットモジュールに供給し、
前記タンク内の所定水位を水位センサで検出し、
前記水位センサおよび前記排気温センサの検出情報を利用して、前記タンク内の水位に応じて前記排ガスが露点温度以上もしくは露点温度未満のいずれかになるように制御部が前記熱交換部の熱交換能力を制御する、
処理を含むことを特徴とする燃料電池システムの制御方法。
【請求項8】
前記水位センサの検出情報に対して少なくとも低基準値および高基準値を設定し、
前記水位センサの検出情報が前記低基準値の場合に前記排ガスの温度が露点温度未満になるように熱交換させ、
前記水位センサの検出情報が前記高基準値に達した場合に前記排ガスの温度が露点温度以上になるように前記熱交換部を制御する、
処理を含むことを特徴とする請求項7に記載の燃料電池システムの制御方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、発電および燃焼の排ガスに含まれる水分を回収して発電に利用する、いわゆる水自立運転を行う燃料電池システムの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低環境負荷で高効率の発電手段として燃料電池システムの開発が進められている。この燃料電池システムは、燃料ガスと改質水を反応させた水素リッチの改質ガスを燃料電池本体に供給している。燃料電池システムでは、燃料電池本体において改質ガスの水素と酸素が電気化学反応により発電することで反応生成水が生じる。また燃料電池システムでは、燃料電池本体を通過した排ガスの残存水素と空気の燃焼熱を改質ガスの生成に利用しているが、この燃焼により燃焼生成水が生じる。そして、燃料電池システムでは、燃焼処理後の排ガスを凝縮することで、水蒸気状態で含まれる反応生成水や燃焼生成水を回収して燃料ガスの改質水にする、いわゆる水自立制御が行われている。
【0003】
燃料電池による発電システムにおいて、カソード排気やバーナ排気を流し、内部に配置された排熱回収用の冷媒流路を流れる冷媒と熱交換させることで排気を凝縮し、凝縮水を貯留タンクに貯めることや、この凝縮水を改質水として利用するものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-218353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃料電池システムは、たとえば個人や集合住宅、その他プラントや施設などの設備で利用する電力の一部または全部を発電させる場合や、停電時などに備えて商用電源のバックアップ用として系統連係させる場合などに用いられる。このとき燃料電池システムの導入には、たとえば少なくとも発電電力を電力負荷などに供給する配線のほか、燃料ガスである都市ガスやプロパンガスのガス配管と接続させる工事が必要となる。さらに燃料電池システムでは、発生させた凝縮水を改質水として利用せずに排出する場合、斯かる凝縮水が燃料ガスの成分を含むドレンであることから中和処理などを含む排水設備を設ける必要があり、既存の建物に導入する場合に、設置工事負荷が大きいほか、設備によっては導入が困難となるおそれがあるという課題がある。とくに、燃料電池システムの排気流路において熱媒や水と熱交換させて蓄熱し、その熱を利用して給湯などを行うコージェネレーションシステムを利用する場合は大きな工事が必要であり、かつ、熱回収効率が高いことから常に大量の凝縮水が発生するが、全ての凝縮水を利用できないことから、排水設備が必要となる。
【0006】
斯かる課題について、特許文献1に開示された構成では本開示が提示する課題を解決することはできない。
【0007】
本開示の発明者は、タンク内の貯水状態に応じて熱交換部を動作させて、排ガスの温度を制御することで、発電および燃焼によって生じる水分から水自立に必要な量だけ凝縮して回収すればよいとの知見を得た。
【0008】
そこで、本開示の技術では、排ガスから凝縮水の回収による水自立運転とともに、タンクの検出水位に基づいて排ガスの凝縮処理を制御することで、外部からの改質水の供給手段やドレンなどの排水処理設備を不要とする燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本開示の燃料電池システムの一側面は、改質水と燃料ガスにより改質ガスを生成する改質部、該改質ガスと空気を用いて発電する燃料電池、および燃焼部を備えており、発電および燃焼により生じる排ガスを排出するホットモジュールと、前記排ガスを流す排気流路に設置されており、前記排ガスと熱交換する熱交換部と、前記排ガスの温度を検出する排気温センサと、前記熱交換部での熱交換により前記排ガスから凝縮した水を回収して貯留し、改質水として前記ホットモジュールに供給するタンクと、前記タンク内の所定水位を検出する水位センサと、前記水位センサおよび前記排気温センサの検出情報を利用して、前記タンク内の水位に応じて前記排ガスが露点温度以上もしくは露点温度未満のいずれかになるように前記熱交換部の熱交換能力を制御する制御部とを備える。
【0010】
上記燃料電池システムにおいて、前記制御部は、前記水位センサの検出情報に対して設定された少なくとも低基準値および高基準値に基づき、前記低基準値の場合に前記排ガスの温度が露点温度未満になるように熱交換させ、前記高基準値に達した場合に前記排ガスの温度が露点温度以上になるように前記熱交換部を制御する。
上記燃料電池システムにおいて、前記熱交換部は、前記排気流路に対する送風により前記排ガスを放熱させる冷却ファンを備え、前記制御部は、少なくとも熱交換後の前記排ガスの検出温度に基づいて前記冷却ファンの回転数を制御する。
上記燃料電池システムにおいて、さらに、少なくとも前記水位センサの検出情報、前記排気温センサの検出情報、前記熱交換部に対する制御情報を格納する記憶部を備える。
【0011】
上記燃料電池システムにおいて、さらに、前記ホットモジュールに供給された空気量を計測する空気量センサと、前記燃料ガスの供給量を計測するガス量センサと、前記タンク内の水を前記ホットモジュールに対して圧送するポンプとを備え、前記制御部は、前記空気量センサおよび前記ガス量センサの検出情報に基づいて前記ポンプの圧送能力を設定するとともに、前記排ガスの露点温度を設定して前記熱交換部の熱交換能力を制御する。
上記燃料電池システムにおいて、前記制御部は、前記排ガスの露点温度よりも所定温度だけ高い基準温度を設定し、前記タンク内の水位が前記高基準となった後に、前記排ガスの温度が前記基準温度またはこれに近い温度になるように前記熱交換部を制御する。
【0012】
上記目的を達成するため、本開示の燃料電池システムの制御方法の一側面は、改質水と燃料ガスにより改質ガスを生成する改質部、該改質ガスと空気を用いて発電する燃料電池、および燃焼部を備えた、発電および燃焼により生じる排ガスを排出するホットモジュールを含む燃料電池システムの制御方法であって、前記排ガスの温度を排気温センサで検出し、前記排ガスを流す排気流路に設置された熱交換部での熱交換により前記排ガスから凝縮した水を回収してタンクに貯留し、改質水として前記ホットモジュールに供給し、前記タンク内の所定水位を水位センサで検出し、前記水位センサおよび前記排気温センサの検出情報を利用して、前記タンク内の水位に応じて前記排ガスが露点温度以上もしくは露点温度未満のいずれかになるように制御部が前記熱交換部の熱交換能力を制御する処理を含む。
【0013】
上記燃料電池システムの制御方法において、前記水位センサの検出情報に対して少なくとも低基準値および高基準値を設定し、前記水位センサの検出情報が前記低基準値の場合に前記排ガスの温度が露点温度未満になるように熱交換させ、前記水位センサの検出情報が前記高基準値に達した場合に前記排ガスの温度が露点温度以上になるように前記熱交換部を制御する処理を含む。
【発明の効果】
【0014】
本開示の構成によれば、次のような効果が得られる。
【0015】
(1) 発生した水分を気体状態で排ガスとともに放出可能とし、排水設備の設置が不要となることで、設置工事負荷の軽減が図れる。
【0016】
(2) 排水設備が不要となることで、設備に対する燃料電池システムの設置箇所の自由度が高められる。
【0017】
(3) タンク内の水位状態に基づき、改質水の補充が必要となるときに熱交換部の熱交換能力を高めるように制御することで、省エネ化が図れる。
【0018】
(4) タンク内の改質水の貯留状態を起因として、燃料電池の発電能力を変動させないことで、安定的な電力供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係る燃料電池システムの構成例を示す図である。
図2】凝縮水の回収および改質水の供給機能の構成例を示す図である。
図3】改質水タンクの水位と排気温度に基づく熱交換機能の制御処理を表す図である。
図4】燃料電池システムの制御処理を示すフローチャートである。
図5】第2の実施形態に係る燃料電池システムの構成例を示す図である。
図6】制御部の構成例を示す図である。
図7】燃料電池システムの制御処理を示すフローチャートである。
図8】第3の実施形態に係る燃料電池システムにおける熱交換機能の制御処理を表す図である。
図9】燃料電池システムの制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1の実施形態〕
図1は、第1の実施形態に係る燃料電池システムの構成例を示している。図1に示す構成は一例であり、本開示の技術が斯かる構成に限定されない。
この燃料電池システム2Aには、たとえば図1に示すように、燃料ガスの改質や発電処理を行うユニットであるホットモジュール4や改質水タンク6、改質水流路8、改質水供給部10、排気流路12、熱交換部14、排気部16、凝縮水回収流路18、排気温センサ20、制御部22やレベルセンサ24が含まれる。そして燃料電池システム2Aでは、燃料ガスFGから改質ガスを生成するための改質水としての水Wが改質水タンク6からホットモジュール4に供給されるとともに、発電処理や残留ガスの燃焼処理によって生成された水蒸気を含む排ガスEGがホットモジュール4から排出され、その排ガスEGから水分を回収して改質水タンク6に貯める、いわゆる水自立での発電処理が行われている。
【0021】
ホットモジュール4は、燃料ガスFGの改質処理や発電処理機能を含む機能部の一例であって、たとえば燃料電池スタック26、燃料処理部28、燃焼部30が含まれる。ホットモジュール4は、図示しないガス供給部や空気供給部と接続されており、燃料ガスFGや発電に利用する空気Airが供給される。またホットモジュール4には、改質水流路8が接続されており、改質水タンク6から改質に用いる水Wが供給される。
【0022】
燃料電池スタック26には、たとえば固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)が備えられている。燃料電池スタック26には、燃料処理部28から水素リッチな改質ガスが供給され、この改質ガスの水素がアノード側に入れられて水素イオンH+と電子e-に分離される。また燃料電池スタック26は、カソード側に加熱された空気が流入されて水素イオンH+と空気中の酸素と結びついて水H2Oが生成されるとともに、電子e-はカソード側に移動して発電エネルギーとして取り出される。この発電エネルギーは、給電線32を通じてインバータの一種であるパワーコンディショナ34などに流され、電力負荷側に給電される。
【0023】
燃料処理部28は、燃料改質部の一例であり、燃料ガスFGや改質水Wが供給され、高温下で触媒などを通じて水素H2リッチな改質ガスを生成する。改質ガスの生成では、たとえば燃料ガスFGから水素H2以外の副生成物である二酸化炭素CO2や少量の一酸化炭素COが分離される。
燃焼部30は、燃料改質手段の一例であり、燃料電池スタック26から流入した発電処理後のオフガスを燃焼させて燃料処理部28に対して熱量を供給する。発電処理後のオフガスには未反応の水素や酸素が含まれており、これを燃焼させることで改質に必要な熱量が得られる。また燃焼処理では、たとえば発電処理における化学反応で生成されたH2O、改質処理で未反応な改質水W、燃焼処理において酸素と水素の反応による燃焼生成水などが、水蒸気状態で燃焼による排ガスとともに排気流路12に排出される。
【0024】
改質水タンク6は、熱交換部14において排ガスEGから凝縮された水分を回収して貯留し、貯留した水Wを燃料改質に用いる改質水としてホットモジュール4側に供給する手段の一例である。この改質水タンク6には、たとえばホットモジュール4との間に改質水流路8が設置されるとともに、熱交換部14に対して凝縮水回収流路18が接続されている。改質水流路8には、たとえばホットモジュール4に対して水Wを圧送するためのポンプなどを含む改質水供給部10が備えられており、改質処理に必要な水Wの流量調整や供給タイミングなどが制御可能となっている。また、凝縮水回収流路18には、たとえば凝縮水に含まれる不純物の除去や特定の成分を中和させるための水精製器54(図5)などを備えてもよい。
さらに改質水タンク6には、貯留した水Wの水位を検出するためのレベルセンサ24を備える。このレベルセンサ24で検出した水位情報は、燃料電池システム2Aの凝縮水回収処理に利用する制御情報の一例である。
【0025】
熱交換部14は、排気流路12に流れる高温の排ガスEGを熱交換により冷却させる手段の一例であり、たとえば冷却FANによって発生した冷却風を管路に当てて放熱させるものや、図示しない冷媒などを流す管路と接触させて排ガスEGから吸熱させるものであってもよい。この熱交換部14は、制御部22からの指示に応じて冷却処理をON/OFFするほか、冷却能力の増減調整が可能となっている。
熱交換部14を通過した排ガスEGは、設定温度に調整されて排気部16を通じて外気に放出される。また排ガスEGから凝縮された水Wは、凝縮水回収流路18を通じて改質水タンク6に流入する。この排気部16と凝縮水回収流路18は、熱交換部14の出側に接続された管路において分岐して形成されている。この分岐部分は気液分離手段の一例であり、たとえば液体状態となり水蒸気よりも重くなった水Wを流す凝縮水回収流路18を重力方向に配置させて下方に落下させるとともに、分岐部分に近い位置であって凝縮水回収流路18の上部側から水平方向や上方に向けて分岐させた排気部16に、暖かく軽い排ガスEGを流すようにしてもよい。
【0026】
排気温センサ20は、熱交換部14で熱交換後の排ガスEGの温度を検出する手段の一例であり、たとえば排気部16上に設置されている。この排気温センサ20は、常時、または所定のタイミングごとに、検出した排ガスEGの温度を制御部22に通知している。
【0027】
制御部22は、燃料電池システム2Aの制御手段の一例である。この制御部22は、コンピュータで構成されており、排気温センサ20の検出温度情報やレベルセンサ24による改質水タンク6内の水位情報を取込み、これらの情報に基づいて熱交換部14による熱交換能力の制御指示を出力する。そのほか、制御部22は、燃料ガスFGや空気Air、改質水タンク6からの水Wの供給量を制御することで、燃料ガスの改質処理を含む発電機能を行う。
【0028】
<凝縮水の回収機能について>
図2は、凝縮水の回収および改質水の供給機能の構成例を示す図である。図2に示す構成は一例である。図2において図1と同一部分には同一符号を付している。
【0029】
改質水タンク6には、たとえば図2に示すように、熱交換部14において排ガスから凝縮した水Wが供給されるとともに、改質水タンク6から発電処理に利用する改質水としてホットモジュール4側に水Wが消費される。従って改質水タンク6は、制御部22からの制御指示により貯留する水Wの増加状態または減少状態となる。より具体的には、燃料電池システム2Aでは、機器の異常監視などの処理を行う以外は基本的に発電状態が維持されており、燃料電池スタック26における発電制御に応じて決まる量の水Wが改質水タンク6から消費される。そのためこの燃料電池システム2Aでは、熱交換部14の熱交換能力を上げて排ガスからの凝縮量が発電に必要な水Wの量を超えれば改質水タンク6内の水位は上昇させることができ、熱交換部14において熱交換を停止、もしくは凝縮水を発生させない程度に熱交換を抑えれば、水位が下降状態となる。
【0030】
改質水タンク6内の水位は、レベルセンサ24により監視している。このレベルセンサ24は、たとえば改質水タンク6内に設置された、少なくとも2箇所の異なる高さセンサ部40-1、40-2を備える。センサ部40-1は、たとえば第1の基準水位の一例であって、高位置Hに水Wの水面が達したことを検出する。またセンサ部40-2は、たとえば第2の基準水位の一例であって、低位置Lに水Wの水面が達したことを検出する。この低位置Lの水位は、たとえば通常の発電出力において、最低限ホットモジュール4が必要とする改質水を供給可能な水量が貯留可能な水位に設定されればよい。さらにレベルセンサ24は、各センサ部40-1、40-2に対して電気的に接続されており、給電や抵抗値の検出および水面の監視処理を行う検出回路42を備える。
このレベルセンサ24は、たとえば各センサ部40-1、40-2を電極とし、水Wとの接触による通電の有無を監視するセンサや、センサ部40-1、40-2への通電により電気抵抗によるジュール熱を発生させ、そのときの抵抗値の変化特性に基づく検出電圧値の差分から水中か否かを判断するPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタを用いてもよく、またはセンサ部40-1、40-2がフロートで形成されており、水Wの水面上に浮くことで上下方向への変位を捉えて水位を検出するフロート式センサを利用してもよい。
【0031】
<熱交換部14に対する制御のタイミングについて>
図3は、改質水タンク6の水位と排ガス温度に基づく熱交換機能の制御処理例を示している。図3に示す処理内容のほか、指示の出力タイミングや状態変化を表すタイミングは一例である。
【0032】
制御部22は、燃料電池システム2Aの制御処理として改質水タンク6内の水位情報、排気温センサ20の検出温度情報を取得すると、これらの情報に基づいて熱交換部14に対する指示情報を出力し、排ガスEGから水分を凝縮させて改質水タンク6内の水位を増加させる。制御部22は、たとえば水位が第2の基準水位である低位置Lになった、または第2の基準水位未満になったと判断したタイミングt1で、熱交換部14を動作させる。これにより排ガスEGの排気温度Teが低下し始める。
排ガスEGの排気温度Teが露点温度Xまで低下したタイミングt2を基準に、排ガスEG中の水分が凝縮して水Wが析出し始めて、改質水タンク6に流入する。
制御部22は、排気温度Teが設定温度Y1になるように熱交換部14を制御する。そして、改質水タンク6には、たとえばタイミングt2から排気温度Teが設定温度Y1になるタイミングt3の間に、凝縮水の析出量すなわち水Wの流入量が、改質水として流出する水Wの流量よりも多くなっていく。このとき、熱交換部14では、たとえば排気温度Teが設定温度Y1で一定になるように熱交換能力が制御されるため、排ガスEGの排出量が一定であれば改質水タンク6内に流入する水Wの流量が安定し、またはそれに近い状態となりうる。
【0033】
制御部22は、レベルセンサ24の検出結果により改質水タンク6の水位が第1の基準水位である高位置Hになったと判断したタイミングt4で熱交換部14に対して熱交換のOFF、もしくは排気温度Teが露点温度Xよりも大きな値になるように熱交換能力を設定するように制御指示を出力する。そして、熱交換部14では、排気温度Teが露点温度Xを超えるタイミングt5で排ガスEGからの凝縮がなくなる。これにより発電や燃焼処理などによって生成された水分はほぼ全て気体状態で排ガスEGとともに排気部16から排出される。斯かる制御処理により、この燃料電池システム2Aでは、タイミングt5までが水自立のための水回収処理期間となる。
【0034】
<燃料電池システム2Aの制御処理>
図4は、燃料電池システムの制御処理を示している。図4に示す制御処理は、本開示の制御方法の一例である。ここに示す処理内容や処理手順は一例であって、本開示の技術が斯かる内容に限定されない。
【0035】
この制御処理は、たとえば制御部22で処理される制御プログラムによって実現される。
制御部22は、たとえば燃料電池システム2Aの運転開始時や異常判定などによる停止後の再始動時にイニシャライズを行う(S11)。このイニシャライズ処理は、たとえば燃料電池スタック26による発電能力の設定、電力負荷側との接続状態の確認処理、燃料ガスFGや空気Airの設定供給量の確認処理、改質水供給部10の運転開始処理などの準備処理が含まれる。
制御部22は、燃料電池システム2Aの動作開始後、発電中であるかを判断(S12)し、発電中であれば(S12のYES)、改質水タンク6内の水位状態の監視に移行し、発電中でなければ(S12のNO)、待機状態となる。
制御部22は、改質水タンク6のレベルセンサ24の監視結果に基づいて、貯留した水Wの水位が低基準Lの第2の基準値に達したと判断した場合(S13のYES)、改質水が消費されたことで給水処理に移行するため、熱交換部14に対して排ガスEGの凝縮により水Wを析出させるように制御指示を出力する。この制御指示には、たとえば排気温度Teを露点温度X以下である設定温度Y1になるように熱交換能力を設定させる内容が含まれる。
また、制御部22は、改質水タンク6内の水位が第2の基準値を検出していない場合(S13のNO)、S12に戻り、監視処理を継続する。
【0036】
この給水処理において、制御部22は、排気温センサ20の検出温度を監視し、排気温度Teが露点温度X以上かを判断し(S14)、露点温度X以上であれば(S14のYES)、熱交換部14に対して稼働指示を出力する(S15)。この稼働指示には、熱交換部14を始動させるものや熱交換能力の増加などが含まれる。制御部22は、排気温度Teが露点温度X未満の場合(S14のNO)や、熱交換部14への稼働指示を出力した場合は、改質水タンク6内の水位が第1の基準値である高位置Hに達したか否かを監視する(S16)。
制御部22は、レベルセンサ24の検出結果に基づいて、水位が高位置Hに達していると判断した場合(S16のYES)、給水処理の停止処理に移行する。また制御部22は、改質水タンク6内の水位が高位置Hに達していなければ(S16のNO)、熱交換部14への稼働指示を継続する。
なお、制御部22は、検出水位が高位置Hに達するまでの間に排気温センサ20の検出温度を監視し、排気温度Teが設定温度Y1になるように熱交換部14への稼働指示を出力してよい。
【0037】
制御部22は、給水処理の停止処理として、排気温度Teが露点温度X未満であれば(S17のYES)、熱交換部14に対して熱交換の停止、もしくは動作制限を指示する(S18)。そして制御部22は、熱交換部14への停止指示を出力した場合や、既に排気温度Teが露点温度X以上となっている場合(S17のNO)、再び発電処理の監視処理としてS12に戻る。
【0038】
<第1実施形態の効果>
斯かる構成によれば、次のいずれかの効果が得られる。
【0039】
(1) 発電処理や燃焼処理によって生成された水分に対し、熱交換部14の熱交換能力の調整により水自立に必要な量の水分のみを凝縮して回収し、その他を気体状態で排気させることで、排水処理設備が不要になり、燃料電池システム2Aの設置負荷の軽減が図れる。
【0040】
(2) 排水処理設備が不要になることで、燃料電池システム2Aの設置箇所の自由度が向上する。
【0041】
(3) 化学反応や燃焼反応により発生するドレンである水分を液体状態で流さず、気体状態で大気中に放出させることで、燃料電池システム2Aを設置する設備の壁面や周辺土壌などへの環境負荷を軽減できる。
【0042】
(4) 排ガスEGに含まれる水分を凝縮して水自立させることで、改質水の給水手段の設置が不要となる。
【0043】
(5) 改質水タンク6内の水Wの貯留状態に対して、燃料電池スタック26の発電能力や燃料ガスFGや空気Airの供給量を変動させないことで、安定的な発電反応による電力供給が可能となる。
【0044】
〔第2の実施形態〕
図5は、第2の実施形態に係る燃料電池システムの構成例を示している。図5に示す構成は一例であり、斯かる構成に本開示の技術が限定されない。また、図5において、図1と同一部分には同一符号を付している。
【0045】
この燃料電池システム2Bでは、排ガスEGの熱交換制御を含む水自立を実行するための構成や燃料ガスFGや空気Airの供給手段の構成および熱交換処理における露点温度Xや設定温度Y1の設定処理について特定する。燃料電池システム2Bには、たとえば図5に示すように、熱交換部14として排気流路12上にガスクーラ50や冷却ファン52を備えるほか、凝縮水回収流路18上に水精製器54を備える。また改質水流路8上には、改質水供給部10として改質水ポンプ56を備える。
【0046】
ガスクーラ50は、排気流路12に流れる高温の排ガスEGに対して冷風や冷媒などと熱交換させる装置の一例であり、たとえば熱交換効率を上げるために内部で排気流路12を屈曲させるほか、放熱フィンなどを備えてもよい。
冷却ファン52は、ガスクーラ50に対して冷却風を流す送風手段であり、排気流路12に直接、冷却風を送るほか、排ガスEGと熱交換した冷媒を放熱させるための冷却風を供給してもよい。冷却ファン52は、熱交換部14の熱交換能力を増減させるための手段であり、制御部22からの制御指示に基づいて回転のON/OFFや回転数を増減させる。この冷却ファン52は、たとえばホットモジュール4において発電した直流電力を利用して駆動させればよい。
【0047】
改質水ポンプ56は、改質水タンク6内の水Wを改質水としてホットモジュール4側に圧送する手段の一例である。この改質水ポンプ56は、たとえば発電量の設定値情報や燃料ガスFGの供給量情報などに基づく制御部22から動作指示に基づいて駆動力を制御し、水Wの供給量の調整を行う。
【0048】
そのほか、燃料電池システム2Bには、たとえば燃料ガスFGの供給管側にガス流量計60やガス供給部62を備えるほか、空気Airの供給管側に空気流量計64や空気供給部66が備えられる。
ガス流量計60は、外部のガス供給源から流入するガス流量を計測する手段であり、計測値を制御部22に通知する。
ガス供給部62は、ガス供給源から燃料電池システム2B内に流入する燃料ガスFGの流入調整や不純物の除去などを行う機能部の一例であって、たとえばガス電磁弁や元圧センサ、ガス圧を調整するゼロガバナ、燃料ガスFG内の硫黄成分を分離する脱硫器、ガスポンプなどが含まれる。
空気流量計64は、外部から取込んだ空気Airの流量を計測する手段であり、計測値を制御部22に通知する。空気の供給源は、たとえば大気中の空気を取込むほか、工業用に精製された空気や発電に必要な成分を多く含む空気が供給されてもよい。
空気供給部66は、外部から空気Airを取込む手段や不純物除去などを行う機能部の一例であり、たとえば空気を通すエアフィルタやエアブロアなどが含まれる。
ガス供給部62のガスポンプや空気供給部66のエアブロアは、たとえば制御部22からの動作指示に基づいて、回転数などの動作能力が設定される。
【0049】
<制御部22について>
図6は制御部の構成例を示している。
この制御部22は、たとえば図6のAに示すように、排ガスEGの熱交換処理による水自立および水分の排気処理として、排気温センサ20からの検出温度情報、レベルセンサ24による改質水タンク6内の水位情報を取得するとともに、ガス流量計60による燃料ガスFGの供給量情報や空気流量計64による空気Airの供給量情報を取得する。そして、制御部22は、取得したこれらの計測情報に基づいて、熱交換能力の指示情報を生成して冷却ファン52に対して指示情報を出力するほか、改質処理に必要な水Wの流量情報を生成して改質水ポンプ56に指示情報を出力する。
【0050】
熱交換能力の指示情報の生成では、たとえば供給される燃料ガスFGの成分情報や空気成分情報およびその流量情報、改質により生成される改質ガスの成分や量、発電における理論空気比、図示しない温度センサにより計測したホットモジュール4内の温度情報などの情報を利用して、排ガスEGの露点温度Xを算出してもよい。そのほか、排ガスEGの露点温度Xの設定手法として、取得した計測情報や予め設定された情報に基づいて、記憶部72内に格納したデータベースなどを参照して露点温度Xを割り出してもよい。そして制御部22は、冷却ファン52に対する指示情報として、算出もしくは割り出した露点温度Xに対し、改質水の供給流量よりも多くの流量の水Wが凝縮するように設定温度Y1を設定すればよい。この熱交換処理では、たとえば露点温度Xとの温度差に応じて、凝縮する水Wの流量が設定できる。
このほか、制御部22は、図示しない燃料電池システム2Bにおける発電量の設定情報や燃料ガスFGや空気Airの供給制御などの制御処理を行う。
【0051】
制御部22は、たとえば図6のBに示すように、コンピュータで構成されており、プロセッサ70、記憶部72、表示部74で構成される。また記憶部72は、メモリ76やRAM(Random-Access Memory)78を備える。
プロセッサ70は、記憶部72内のメモリ76に格納された図示しないOS(Operating System)や燃料電池制御プログラムなどの各種プログラムを実行演算処理し、燃料電池システム2Bの発電制御や発電に必要な燃料などの供給制御、水自立および排気処理に必要な熱交換処理制御などを行う。
記憶部72は、燃料電池システム2Bを動作させるためのプログラムや動作情報などを格納する記憶領域の一例である。記憶部72を構成するメモリ76は、各種プログラムが格納されるほか、排気温センサ20やレベルセンサ24、ガス流量計60、空気流量計64から取得した計測情報のほか、制御部22から冷却ファン52や改質水ポンプ56、ガス供給部62や空気供給部66の構成部に対して出力した指示情報、計測情報の取得日時や指示情報の出力日時などの制御ログが格納されている。
記憶部72を構成するRAM78は、OSや燃料電池制御プログラムの演算処理領域として機能する。
表示部74は、たとえばプロセッサ70の制御指示により、発電状態や改質水タンク6内の水位情報、冷却ファン52などへの制御指示情報などを表示すればよい。
【0052】
<燃料電池システム2Bの制御処理>
図7は、燃料電池システムの制御処理を示している。図7に示す制御処理は、本開示の制御方法の一例である。ここに示す処理内容や処理手順は一例であって、本開示の技術が斯かる内容に限定されない。
【0053】
この制御処理は、たとえば制御部22で処理される制御プログラムによって実現される。
制御部22は、たとえば燃料電池システム2Bのイニシャライズを行った(S21)後に、発電中であるかの監視処理(S22)に移行し、発電中であれば(S22のYES)、燃料電池の発電処理に利用する燃料ガスFGや空気Airの供給量を検出する(S23)。そして制御部22は、たとえば燃料ガスFGや空気Airの供給量、その他の情報に基づいて改質処理に必要な水Wの供給量を確認する(S24)。
そして、制御部22は、検出した燃料ガスFGや空気Airの供給量、改質水の供給量情報などを含む発電設定情報から排ガスEGの露点温度Xを設定する(S25)。
また、制御部22は、発電中でなければ(S21のNO)、待機状態となる。
【0054】
制御部22は、排ガスEGの熱交換処理による水自立および発電や燃焼により生成した水分の排出処理として、改質水タンク6内のレベル監視を行う(S26)。このレベル監視では、改質水タンク6のレベルセンサ24の監視結果に基づき、貯留した水Wの水位が低位置Lの第2の基準値に達したかを判断する。制御部22は、この水位判断により改質水タンク6内に給水が必要かを判断する(S27)。そして制御部22は、水位が低位置Lの第2の基準値に達することで改質水タンク6内に給水が必要であると判断した場合(S27のYES)、冷却ファン52の回転数制御を行い(S28)、ガスクーラ50において排ガスEGを冷却し、水Wを凝縮させて改質水タンク6内に回収させる。この回転数制御では、たとえば排気温度Teを露点温度X以下である設定温度Y1になるように冷却ファン52の回転数を設定させる内容が含まれる。
制御部22は、水位が低位置Lの第2の基準値に達していないことで改質水タンク6内の給水が不要と判断した場合(S27のNO)、改質水タンク6内のレベル監視(S26)を継続する。
【0055】
制御部22は、排気温センサ20の検出温度を監視し、排気温度Teが設定温度Y1であれば(S29のYES)、改質水タンク6内の水位が第1の基準値である高位置Hに達したかを判断する(S30)。制御部22は、排気温度Teが設定温度Y1でなければ(S29のNO)、S28に戻って冷却ファン52の回転数を増減させる。
【0056】
制御部22は、改質水タンク6内の水位が第1の基準値に達すると(S30のYES)、冷却ファン52を停止または冷却能力を低下させるように回転数制御を行う(S31)。制御部22は、改質水タンク6内の水位が第1の基準値に達するまで(S30のNO)、改質水タンク6内の水位監視および冷却ファン52の回転数制御を継続する。
そして、制御部22は、各種センサなどから取得した検出情報や各機能部に出力した制御情報を記憶部72に記録する(S32)。
【0057】
<第2の実施形態の効果>
斯かる構成によれば、以下のような効果が得られる。
【0058】
(1) 第1の実施形態と同様の効果が得られる。
(2) 供給される燃料ガスFGや空気Airの供給量、発電制御情報などに基づいて、排ガスEGの露点温度Xを割り出し、熱交換処理に利用することで、改質水の消費量に対応した凝縮処理を行うことができ、改質水の不足などを防止することができる。
(3) 発電情報や燃料ガスFGなどの供給情報により、必要な改質水の消費状態に応じた水Wの給水流量が把握できるので、冷却ファン52の回転数などを精緻に制御し、過剰に増減させないことで、機器の劣化や無駄なエネルギー消費などを回避できる。
【0059】
〔第3の実施形態〕
図8は、第3の実施形態に係る熱交換機能の制御処理状態を示している。図8に示す処理内容やタイミング、温度や水位の状態は一例である。
【0060】
この燃料電池システム2では、図8に示すように、排気温度Teの制御情報として、露点温度Xよりも所定温度高い設定温度Y2が設定される場合を示している。この設定温度Y2は、水自立のための水回収タイミング以外のときに排ガスEGの温度を調整するための閾値である。制御部22は、たとえば燃料電池による発電処理の開始、もしくは任意に設定したタイミングt0から改質水タンク6内の水位が第2の基準値を検出するタイミングt1までの間に、排気温度制御として排気温度Teが設定温度Y2に成るように熱交換部14の冷却ファン52などに対して制御指示を出力する。また制御部22は、水回収処理が完了するタイミングt5以降、排気温度制御を行なえばよい。
【0061】
<燃料電池システム2の制御処理>
図9は、燃料電池システムの制御処理を示している。図9に示す制御処理は、本開示の制御方法の一例である。ここに示す処理内容や処理手順は一例であって、本開示の技術が斯かる内容に限定されない。
【0062】
制御部22は、燃料電池システム2の動作開始後、発電中であるかを判断(S41)し、発電中であれば(S41のYES)、改質水タンク6内の水位状態の監視に移行し、発電中でなければ(S41のNO)、待機状態となる。
制御部22は、改質水タンク6のレベルセンサ24の監視結果に基づいて、貯留した水Wの水位が低位置Lの第2の基準値に達したと判断した場合(S42のYES)、熱交換部14による排ガスEGとの熱交換で水分を凝縮させる水回収処理(S46~S50)に移行する。この水回収処理(S46~S50)では、たとえば第1の実施形態に示すS14~S18(図4)と同様の処理が行われればよく、または第2の実施形態に示すように、供給される燃料ガスFGや空気Airの供給量、発電制御情報などに基づいて、排ガスEGの露点温度Xを割り出して熱交換部14の熱交換能力を制御する処理(S26~S32)を行ってもよく、説明を省略する。
【0063】
制御部22は、改質水タンク6の水位が第2基準値に達していないと判断した場合(S42のNO)、すなわち、改質水タンク6内に十分な水Wが貯留されている場合に排ガスEGの排気温度制御に移行する。この排気温度制御において、制御部22は、排気温センサ20で検出した排気温度Teを取得し(S43)、この排気温度Teが設定温度Y2か否かを判断する(S44)。この設定温度Y2は、予め設定され、または発電設定情報などから算出や割り出した露点温度Xに対し、所定温度としてたとえば+10℃などが設定されればよい。なおこの設定温度Y2は、たとえば燃料電池システム2の設置場所の外気温度などによって設定温度を変えてもよい。すなわち、この設定温度Y2は、たとえば露点温度Xに近い温度であって、かつ排ガスEGを外部に放出したときに凝縮しにくい温度が望ましい。
【0064】
制御部22は、排気温度Teが設定温度Y2であれば(S44のYES)、発電状態の監視処理に戻り、設定温度Y2でなければ(S44のNO)、熱交換部14に対する制御指示を出力する(S45)。
【0065】
なお、この排気温度制御において、制御部22は、たとえば排気温センサ20の検出温度の監視タイミングを大きくとり、すなわち監視頻度を少なくするように設定してもよい。これにより、熱交換部14に対する制御回数を減らすことで、排ガスEGの排気温度Teが設定温度Y2において増減を繰り返す、いわゆるチャタリング状態になるのを回避すればよい。そのほか制御部22は、たとえば設定温度Y2に対し、熱交換部14の熱交換能力によって排気温度Teが増加傾向の場合と、減少傾向の場合とで、熱交換部14に対する制御指示の出力条件やタイミングを変えることで、排気温度Teの温度制御にヒステリシスを設けてもよい。
【0066】
<第3の実施形態の効果>
斯かる構成によれば、以下のような効果が得られる。
(1) 第1の実施形態、第2の実施形態と同様の効果が得られる。
(2) 水自立のための水回収処理を行っていないタイミングにおいて、熱交換部14を動作させ、排ガスEGの温度を設定温度Y2に制御することで、排気部16から低温化した排ガスEGが排出できるので、安全性が高められる。
(3) 排ガスEGを低温排気できるので、燃料電池システム2の設置位置や建物などに対する排気部16の配置位置の自由度が高められる。
(4) 排気温度Teをホットモジュール4から排出された直後の温度よりも低温であって、露点温度Xに近い温度に制御することで、水回収処理に移行したときの温度変化が小さくなり、排ガスEGから水を凝縮させるまでの応答性が高められる。そして、この応答性が高まることで、たとえば改質水タンク6の小形化などに寄与することもできる。
【0067】
〔他の実施形態〕
以上説明した実施形態について、変形例を以下に列挙する。
【0068】
(1) 上記実施の形態では、排気部16に設置した排気温センサ20により、熱交換後の低温化した排ガスEGの温度のみを検出しているがこれに限らない。ホットモジュール4から排出直後もくした熱交換部14に流入直前の高温の排気温度Teも合わせて計測し、その排気温度Teに基づいて熱交換部14の熱交換能力を制御してもよい。また、熱交換前後の排気温度Teの差分情報を利用して熱交換部14に対する制御を行ってもよい。
【0069】
(2) 上記実施の形態では、改質水タンク6内に貯留した水Wの水位を監視する手段として、設定した高さに水面が達したか否かを監視するレベルセンサ24を用いたがこれに限らない。水位レベルを検出する手段は、たとえば改質水タンク6内に貯められた水量を計測するセンサや水面位置を常時計測可能な水位センサを利用してもよい。斯かる水位検出は、たとえば水位自体の計測を目的とした計測や解析処理を行うレベルセンサに限られず、改質水タンク6の重量を計測する重量センサを利用し、その計測重量から貯留している水Wの量を算出し、水位を判断するものを用いてもよい。
【0070】
さらに、この燃料電池システム2では、重量センサなどにより改質水タンク6内の水位を常時監視することで、貯留している水Wの消費傾向、水回収処理において水Wの増加傾向などの水量の変化を監視することが可能となる。そして、斯かる水量の変化を監視することで、制御部22は、たとえば水回収処理において、改質水タンク6内の水量が減少傾向である場合に熱交換能力が不足していると判断し、熱交換部14に対する制御指示を出力してもよい。また制御部22は、改質水タンク6内の水の減少傾向により水回収処理に移行するタイミングの予測処理を行ってもよい。
【0071】
(3) 上記実施の形態では、水回収処理を行うための排気温度Teの設定温度Y1を予め設定しておく場合を示したがこれに限らない。制御部22は、たとえば改質処理に必要な水Wの流量と、露点温度Xを基準にした凝縮によって析出する水Wの量とを対比して、設定温度Y1を設定してもよい。
より具体的には、制御部22は、ホットモジュール4側に供給する流量よりも凝縮水回収流路18に流れる水の流量が多くなるように熱交換部14を制御すればよい。
なお、ここで対比する水Wの流量は、たとえば瞬間的な流量であってもよく、または発電処理を所定の期間で区切り、その期間においてホットモジュール4に対して供給する水Wの流量と熱交換部14で回収される水Wの流量を比較すればよい。
【0072】
(4) 上記実施の形態に示す燃料電池システム2、2A、2Bは、改質水タンク6に対して外部から水Wを補充する補水手段を備えることを妨げない。この補水手段は、たとえば水道水、もしくは図示しない設備などで精製された水Wを供給可能な構成であり、熱交換部14において排ガスEGから十分な水Wが凝縮できない場合などに燃料電池システム2、2A、2Bに必要な改質水を供給してもよい。
【0073】
以上説明したように、本開示の技術の最も好ましい実施形態等について説明した。本開示の技術は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本開示の技術の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本開示の構成によれば、改質水タンク内の水位に応じて、水自立に必要な分の水分を排ガスから凝縮して回収し、それ以外のときは水蒸気状態で外部に排気させるように熱交換部を制御することで、給水手段や排水処理手段を用いずに、既存の建物などに燃料電池システムを導入することができるほか、低温排気による安全性が高められるので、有用である。
【符号の説明】
【0075】
2、2A、2B 燃料電池システム
4 ホットモジュール
6 改質水タンク
8 改質水流路
10 改質水供給部
12 排気流路
14 熱交換部
16 排気部
18 凝縮水回収流路
20 排気温センサ
22 制御部
24 レベルセンサ
26 燃料電池スタック
28 燃料処理部
30 燃焼部
40-1、40-2 センサ部
42 検出回路
50 ガスクーラ
52 冷却ファン
54 水精製器
56 改質水ポンプ
60 ガス流量計
62 ガス供給部
64 空気流量計
66 空気供給部
70 プロセッサ
72 記憶部
74 表示部
76 メモリ
78 RAM

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9