(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094681
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】積層体および液体紙容器
(51)【国際特許分類】
B32B 33/00 20060101AFI20230629BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20230629BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B32B33/00
B32B27/10
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210125
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野一色 泰友
(72)【発明者】
【氏名】若林 美咲
(72)【発明者】
【氏名】社本 裕太
(72)【発明者】
【氏名】浪岡 萌夏
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD02
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BB05
3E086BB51
3E086BB71
3E086CA01
3E086CA11
3E086CA12
3E086CA13
3E086CA40
4F100AA19D
4F100AA20D
4F100AK01A
4F100AK06A
4F100AK06E
4F100AK41E
4F100AK51C
4F100AK53C
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4F100CB00C
4F100DG10B
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4F100JA13B
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4F100JL12A
4F100JL12E
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】酸素バリア性に優れ、液体紙容器等の容器用途に適用でき、かつ環境負荷を低減できる積層体及び液体紙容器を提供すること。
【解決手段】樹脂層、紙基材層、接着剤層、蒸着層およびシーラント層がこの順に積層されてなる積層体であって、前記積層体の坪量が200g/m
2以上1000g/m
2以下であり、前記積層体における前記紙基材層の比率が80.0質量%以上であり、JIS K 7126-2:2006に準拠して、23℃、相対湿度50%で測定した酸素透過度が5.0mL/m
2/day/atm未満である、積層体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層、紙基材層、接着剤層、蒸着層およびシーラント層がこの順に積層されてなる積層体であって、
前記積層体の坪量が200g/m2以上1000g/m2以下であり、
前記積層体における前記紙基材層の比率が80.0質量%以上であり、
JIS K 7126-2:2006に準拠して、23℃、相対湿度50%で測定した酸素透過度が5.0mL/m2/day/atm未満である、積層体。
【請求項2】
前記接着剤層が、ウレタン系接着剤およびエポキシ系接着剤から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記紙基材層の坪量が100g/m2以上1000g/m2以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
液体紙容器用である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体を用いてなる、液体紙容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体および液体紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙基材層を備えるバリア性積層体において、金属等の蒸着層を備えるポリオレフィン系樹脂フィルムをバリア層として備える構成が知られている。このような構成の積層体は、水蒸気バリア性は十分に担保できるものの、酸素バリア性が不十分であるという課題があった。
【0003】
引用文献1には、紙基材層と蒸着層の間に、ポリビニルアルコール等のポリマー結合剤及びベントナイト等の無機粒子を含む誘導融着耐久性被覆層を備える非フォイル系包装用ラミネートが記載されている。
【0004】
引用文献2には、紙基材層と蒸着層の間にバリア性接着剤層を備え、紙基材層の坪量が30g/m2以上100g/m2以下である積層体が記載されている。このような構成の積層体は、水蒸気バリア性及び酸素バリア性の両方に優れ、さらに手切れ性及びデッドホールド性に優れることが記載されている。
【0005】
引用文献3には、第1のシーラント層、第1の紙基材、熱可塑性樹脂層、第2の紙基材、水蒸気バリア層、ガスバリア層及び第2のシーラント層を備える積層体が記載されている。このような構成の積層体は、液体紙容器用材料に適用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2012-532043号公報
【特許文献2】特開2021-70311号公報
【特許文献3】国際公開第2021/182183号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1~3に開示される技術では、酸素バリア性に優れ、液体紙容器等の容器用途に適用できる積層体を提供できないという課題があった。
本開示は、酸素バリア性に優れ、液体紙容器等の容器用途に適用できる積層体及び液体紙容器に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本開示は、以下の[1]~[5]に関する。
[1]樹脂層、紙基材層、接着剤層、蒸着層およびシーラント層がこの順に積層されてなる積層体であって、
前記積層体の坪量が200g/m2以上1000g/m2以下であり、
前記積層体における前記紙基材層の比率が80.0質量%以上であり、
JIS K 7126-2:2006に準拠して、23℃、相対湿度50%で測定した酸素透過度が5.0mL/m2/day/atm未満である、積層体。
[2]前記接着剤層が、ウレタン系接着剤およびエポキシ系接着剤から選択される少なくとも1種を含む、[1]に記載の積層体。
[3]前記紙基材層の坪量が100g/m2以上1000g/m2以下である、[1]または[2]に記載の積層体。
[4]液体紙容器用である、[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5][1]~[3]のいずれかに記載の積層体を用いてなる、液体紙容器。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、酸素バリア性に優れ、液体紙容器等の容器用途に適用できる積層体及び液体紙容器を提供することができる。さらに、紙基材層の比率が低く、環境負荷を低減できる積層体及び液体紙容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本明細書において、数値範囲を表す「X以上Y以下」や「X~Y」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
【0012】
また、本明細書において、「層上」とは、層の直上に存在する形態であってもよいし、層の上に他の層を介して存在していてもよいことを意味する。
【0013】
本発明の一形態である積層体の好ましい様態について、図面を用いて説明する。
図1に示した積層体10は、樹脂層11、紙基材層12、接着剤層13、蒸着層14およびシーラント層15がこの順に積層されてなる。本形態の積層体において、上記の各層の間には、任意で他の層が存在していてもよい。
【0014】
[積層体]
本形態の積層体10は、接着剤層13と、蒸着層14およびシーラント層15を備えるバリアフィルム層とがバリア性を有していることにより、積層体10を透過する酸素や水蒸気を大幅に抑制することができる。
【0015】
本形態の積層体10は、坪量が200g/m2以上1000g/m2以下である。坪量が上記下限値未満であると、積層体の強度が不足するため、容器型に成形した際に直立させることができない。一方、坪量が上記上限値を超えると、加工性や輸送性に影響が生じる場合がある。
積層体10の坪量は、液体紙容器の形状保持の観点から、好ましくは250g/m2以上、より好ましくは300g/m2以上、さらに好ましくは350g/m2以上であり、そして、加工性および輸送性の観点から、好ましくは800g/m2以下、より好ましくは500g/m2以下である。
【0016】
本形態の積層体10は、積層体10における紙基材層12の比率が80.0質量%以上である。紙基材層12の比率が上記下限値未満であると、環境負荷低減の観点から脱プラスチックが求められる用途で適用できない
紙基材層12の比率の下限値は、好ましくは81.0質量%以上であり、より好ましくは83.0質量%以上、さらにより好ましくは85.0質量%以上である。また、紙基材層12の比率の上限値は特に限定されないが、通常99.9質量%以下であり、90.0質量%以下であってもよい。
【0017】
酸素のバリア性をより有効に確保する観点から、本形態の積層体10は、JIS K 7126-2:2006に準拠して、23℃、相対湿度50%で測定される酸素透過度が、5.0mL/m2/day/atm未満である。
酸素透過度の上限値は、好ましくは3.0mL/m2/day/atm未満であり、より好ましくは1.5mL/m2/day/atm未満、さらに好ましくは1.0mL/m2/day/atm未満である。また、酸素透過度の下限値は特に限定されないが、通常0mL/m2/day/atm以上である。
【0018】
水蒸気のバリア性をより有効に確保する観点から、本形態の積層体10はJIS Z 0208:1976に準拠して、40℃、相対湿度90%で測定される水蒸気透過度が、5.0g/m2/day/atm未満であることが好ましく、3.0g/m2/day/atm未満であることがより好ましく、1.0g/m2/day/atm未満であることがさらに好ましい。また、水蒸気透過度の下限値は特に限定されず、低いほど好ましい(下限値0g/m2/day/atm)。
以下、積層体10を構成する各層について説明する。
【0019】
[樹脂層]
本形態の樹脂層11は、例えば液体紙容器を成形する際に液体紙容器の外側の面(印刷面)となる層であり、液体紙容器を成形する際に樹脂層11とシーラント層15とはヒートシールされる。
【0020】
樹脂層11に用いる樹脂は、シーラント層とヒートシール可能なものであれば、特に限定されないが、樹脂自身がヒートシール性を有することが好ましい。具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタアクリレート共重合体、シクロヘキサンジメタノール変性ポリエチレンテフタレート共重合体、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエステル共重合体などのポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアミド樹脂;ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(ブチレンアジペート-co-ブチレンテレフタレート)(PBAT)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)等の生分解性樹脂;およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0021】
樹脂層の形成方法は特に制限されず、前記の樹脂を公知の方法を用いてラミネートして、樹脂層11を形成してもよい。あるいは、前記の樹脂からなるエマルションをコーティングして、樹脂層11を形成してもよい。樹脂層11に用いる樹脂は、好ましくはポリエチレンおよび生分解性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、より好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)および生分解性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、さらに好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる群より選択される少なくとも1種であり、さらにより好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)である。ポリエチレンは、低コストであり、かつ適度な柔軟性を有するため、液体紙容器材料として好ましく用いられる。
【0022】
樹脂層11の厚さは、特に限定されないが、シーラント層との接着性の観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、環境負荷の低減の観点から、好
ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下である。
樹脂層11の坪量は、特に限定されないが、シーラント層との接着性の観点から、好ましくは5g/m2以上、より好ましくは10g/m2以上であり、環境負荷の低減の観点から、好ましくは40g/m2以下、より好ましくは30g/m2以下である。
【0023】
[紙基材層]
本形態の紙基材層12は、積層体10を保持する基材層としての機能を果たすものであり、積層体に液体紙容器材料としての強度を付与できるものが好ましい。紙基材層12の材質は特に限定されないが、コートボール、カード紙、アイボリー紙、マニラボール等の板紙、ミルクカートン原紙、カップ原紙、クラフト紙、上質紙等の公知の紙を用いることができる。
【0024】
紙基材層12の厚さは、特に限定されないが、好ましくは100~1000μmであり、より好ましくは300~800μmである。
紙基材層12の坪量は、好ましくは100g/m2以上、より好ましくは200g/m2以上、さらに好ましくは300g/m2以上であり、そして、好ましくは1000g/m2以下、より好ましくは700g/m2以下、さらに好ましくは400g/m2以下である。紙基材層12の坪量が100g/m2以上であることで、積層体に十分な強度を付与でき、液体紙容器用途に好適に使用できる。さらに積層体10における紙基材層12の比率が高くなるため、脱プラスチックが求められる用途で適用できる。また、紙基材層12の坪量が1000g/m2以下であることで、液体紙容器への加工適性、輸送時の負荷低減が期待できる。
【0025】
[接着剤層]
本形態の接着剤層13は、酸素や、水蒸気の透過を抑制するバリア性を有する接着剤により構成される層であり、紙基材層12及び蒸着層14の間に設けられ、紙基材層12と蒸着層14とを接合する。接着剤層13は、積層体を透過する酸素や、水蒸気のうち上述の蒸着層14で抑制しきれない分を更に抑制するために設けられている。具体的には、蒸着層14の表面には微細な凹凸形状が形成されており、微細レベルでは、蒸着層13の厚みは均一でなく、相対的に薄い部分のバリア性が低くなり、全体としてバリア性が非均一となるが、接着剤層13が、蒸着層14に接することにより、凹凸形状が埋められ平坦化されるため、バリア性を均一にするとともに、酸素や、水蒸気の透過の抑制効果をより高めることができる。
接着剤層13は、ウレタン系接着剤およびエポキシ系接着剤から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0026】
ウレタン系接着剤は、1分子中に水酸基を2個以上有する樹脂(ポリオール)と、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物(ポリイソシアネート)と、を含む樹脂組成物の硬化物である。ウレタン系接着剤は、2液硬化型であることが好ましい。上記樹脂組成物においてバリア性を付与する構成としては、上記樹脂組成物を構成する樹脂にバリア性を有する骨格を導入する方法(バリア性有機接着剤)、上記樹脂組成物にリン酸変性化合物を含有させる方法、上記樹脂組成物に板状無機化合物を含有させる方法(バリア性無機接着剤)、などが挙げられ、これらの1又は2以上を組み合わせることができる。
【0027】
上記樹脂組成物を構成する樹脂にバリア性を有する骨格を導入する方法としては、樹脂(ポリオール)の主骨格がポリエステル又はポリエステルポリウレタンであって、ポリエステル構成モノマー成分としてオルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物を含むものが好ましい。
上記樹脂は、1分子内に水酸基を2個以上有し、主骨格は、ポリエステル構造又はポリ
エステルポリウレタン構造を有する。主骨格構造のポリエステル部分は、多価カルボン酸と多価アルコールとを公知慣用の方法で重縮合反応させて得られたものである。
【0028】
多価カルボン酸としては、脂肪族多価カルボン酸と芳香族多価カルボン酸が挙げられる。具体的な脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
具体的な芳香族多価カルボン酸としては、オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p‘-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物;p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸等の多塩基酸等が挙げられる。多価カルボン酸は、これらを単独で或いは2種以上を併用することができる。
【0029】
バリア性を有する構成として、多価カルボン酸として、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物を含むことが好ましい。オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物は、ポリエステル構成モノマー成分の多価カルボン酸全成分に対して、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の含有率が70~100質量%であることが好ましい。
具体的なオルト配向芳香族ジカルボン酸としては、オルトフタル酸、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、及びこれらジカルボン酸の無水物等が挙げられる。
【0030】
多価アルコールとしては、脂肪族多価アルコールと芳香族多価フェノールが挙げられる。脂肪族多価アルコールとしては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等を例示することができる。
芳香族多価フェノールとしては、具体的には、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらの、エチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族等を例示することができる。
【0031】
イソシアネート化合物(ポリイソシアネート)は、分子内にイソシアネート基を2個以上有し、芳香族または脂肪族のどちらでもよく、低分子化合物または高分子化合物のどちらでもよく、イソシアネート基が2個のジイソシアネート化合物や、3個以上のポリイソシアネート化合物等の公知の化合物が使用できる。イソシアネート化合物としては、公知のイソシアネートブロック化剤を用いて公知慣用の適宜の方法より付加反応させて得られたブロック化イソシアネート化合物であってもよい。
なかでも、接着性や耐レトルト性の観点から、ポリイソシアネート化合物が好まれ、酸素バリア性付与という点では、芳香族環を有するものが好ましく、特に、メタキシレン骨格を含むイソシアネート化合物が好ましい。
【0032】
イソシアネート化合物の具体的な化合物としては、たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート或いはこれらのイソシアネート化合物の3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量
と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、メタキシリレンアルコール、1,3-ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4-ビスヒドロキシエチルベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタキシリレンジアミンなどの低分子活性水素化合物およびそのアルキレンオキシド付加物、各種ポリエステル樹脂類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られるアダクト体、ビュレット体、アロファネート体等が挙げられる。
【0033】
樹脂組成物には、上記の樹脂の他、リン酸変性化合物を含有していてもよい。リン酸変性化合物は、無機系部材に対する接着強度を向上させる効果を有するものであり、公知慣用のものを用いることができる。
具体的には、リン酸、ピロリン酸、トリリン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、イソドデシルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0034】
樹脂組成物には、上記の樹脂の他、板状無機化合物を含有してもよい。板状無機化合物は、バリア性接着剤層14を介した積層体のラミネート強度と酸素バリア性を向上させる効果を有する。
板状無機化合物としては、具体的には、カオリナイト-蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト-タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライ等)等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0035】
エポキシ系接着剤は、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤とを含む樹脂組成物の硬化物である。
エポキシ樹脂は、飽和または不飽和の脂肪族化合物や脂環式化合物、芳香族化合物、あるいは複素環式化合物のいずれであってよいが、高いガスバリア性を発揮するためには芳香環を分子内に含むエポキシ樹脂が好ましい。
【0036】
具体的には、ジアミノジフェニルメタンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、パラアミノフェノールから誘導されたグリシジルアミン部位および/またはグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールAから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラックから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂、レゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂などが使用できる。
なかでもメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂およびレゾルシノールから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0037】
また、ビスフェノールFから誘導されたグリシジルエーテル部位を有するエポキシ樹脂
やメタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することがより好ましく、メタキシリレンジアミンから誘導されたグリシジルアミン部位を有するエポキシ樹脂を主成分として使用することが特に好ましい。
また、柔軟性や耐湿熱性などの諸性能を向上させるために、上記のエポキシ樹脂を混合して使用することもできる。
【0038】
エポキシ樹脂硬化剤は、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物または複素環式化合物のいずれであってもよく、ポリアミン類、フェノール類、酸無水物またはカルボン酸類などの一般に使用され得るエポキシ樹脂硬化剤を使用することができる。
ポリアミン類としてはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの脂肪族アミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香環を有する脂肪族アミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソフォロンジアミン、ノルボルデンジアミンなどの脂環式アミン、ジアミノジフェニルメタン、メタフェニレンジアミンなどの芳香族アミンが挙げられる。
【0039】
また、これらのポリアミン類を原料とするエポキシ樹脂またはモノグリシジル化合物との変性反応物、エピクロルヒドリンとの付加反応物、これらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物、これらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物と、一価のカルボン酸および/またはその誘導体との反応生成物などが使用できる。
【0040】
フェノール類としてはカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどの多置換基モノマー、およびレゾール型フェノール樹脂などが挙げられる。
【0041】
酸無水物またはカルボン酸類としてはドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物などの脂肪族酸無水物、(メチル)テトラヒドロ無水フタル酸、(メチル)ヘキサヒドロ無水フタル酸などの脂環式酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物、およびこれらのカルボン酸などが使用できる。高いガスバリア性を発現できる観点から、芳香族部位を分子内に含むエポキシ樹脂硬化剤が好ましい。
【0042】
具体的にはメタキシリレンジアミンまたはパラキシリレンジアミン、およびこれらを原料とするエポキシ樹脂またはモノグリシジル化合物との変性反応物、エピクロルヒドリンとの付加反応物、これらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応生成物、これらのポリアミン類との反応によりアミド基部位を形成しオリゴマーを形成し得る、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物と、一価のカルボン酸および/またはその誘導体との反応生成物などを使用することが好ましい。
【0043】
接着剤層13は、溶剤系の接着剤により構成されていてもよく、無溶剤系(ノンソルベント系)の接着剤により構成されていてもよい。接着剤層13に溶剤系の接着剤を用いる場合、例えば、ガスバリア性接着剤であるDIC株式会社製のPASLIM VM001/108CPや、三菱ガス化学株式会社製のMAXIVE M-100を適用することができ、紙基材層12と蒸着層14およびシーラント層15を備えるバリアフィルム層とを、ドライラミネート法により接合することができる。接着剤層13に無溶剤系の接着剤を用いる場合、例えば、ガスバリア性接着剤であるDIC株式会社製のPASLIM NSRD011/NSRD006を適用することができ、紙基材層12と蒸着層14およびシーラント層15を備えるバリアフィルム層とを、ノンソルベントラミネート法により接合することができる。
【0044】
接着剤層13の厚さは、特に限定されないが、好ましくは1~10μmであり、より好ましくは2~8μmである。
接着剤層13の坪量は、特に限定されないが、紙基材層と蒸着層の接着性の観点からは、好ましくは0.5g/m2以上、より好ましくは1g/m2以上であり、環境負荷の低減の観点からは、好ましくは20g/m2以下、より好ましくは10g/m2以下である。
【0045】
[蒸着層]
本形態の蒸着層14は、積層体10を通過する酸素や水蒸気の透過を抑制するために設けられたバリア層である。蒸着層14は、シーラント層15の紙基材層12側の面上に設けられ、金属、又は、無機酸化物により形成されている。本発明における蒸着層とは、広義の蒸着法により形成された膜を意味し、真空蒸着法のみならず、スパッタリングなどによって形成された膜も含む。
【0046】
蒸着層14に適用される金属としては、例えば、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、金(Au)、クロム(Cr)等を使用することができる。特に、液体紙容器用としては、アルミニウムの蒸着膜を備えることが好ましい。
【0047】
蒸着層14に適用される無機酸化物としては、上記の金属の金属酸化物である、酸化アルミニウム(アルミナ)や酸化チタン等の他、ケイ素(Si)の酸化物であるシリカが例示できる。
【0048】
蒸着層14の膜厚としては、使用する金属の種類等によって異なるが、例えば50Å以上2000Å以下であり、好ましくは100Å以上1000Å以下の範囲内で任意に選択して形成できる。更に具体的に説明すると、アルミニウムの蒸着膜の場合には、膜厚50Å以上600Å以下が好ましく、100Å以上450Å以下がより好ましい。
【0049】
蒸着層14の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレ-ティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0050】
[シーラント層]
本形態のシーラント層15は、例えば液体紙容器を成形する際に液体紙容器の内側の面(接液面)となる層であり、液体紙容器を成形する際に樹脂層11とシーラント層15とはヒートシールされる。
【0051】
シーラント層15に使用される樹脂は、ヒートシール性を有するものであれば特に限定されるものではない。具体的には、上述した[樹脂層]の項で挙げられた樹脂を使用することができる。
シーラント層の形成方法は特に制限されず、前記の樹脂を公知の方法を用いてラミネートして、シーラント層15を形成してもよい。あるいは、前記の樹脂からなるエマルションをコーティングして、シーラント層15を形成してもよい。シーラント層15に用いる樹脂は、好ましくはポリエチレン、ポリエステル樹脂および生分解性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、より好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリエステル樹脂および生分解性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、さらに好ましくは低密度ポリエチレン(LDP
E)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0052】
シーラント層15の厚さは、特に限定されないが、ヒートシール性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、環境負荷の低減の観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。
シーラント層15の坪量は、特に限定されないが、ヒートシール性の観点から、好ましくは10g/m2以上、より好ましくは15g/m2以上であり、環境負荷の低減の観点から、好ましくは50g/m2以下、より好ましくは30g/m2以下である。
【0053】
蒸着層14は、例えば、上述の金属、又は、無機酸化物をシーラント層15に対して直接、上述の真空蒸着法等を適用することよって形成することができる。
上述のように蒸着層14がシーラント層15の直上に設けられている場合、シーラント層15の表面には、必要に応じて前処理が可能であり、具体的には、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理などの物理的な処理や、化学薬品などを用いて処理する酸化処理などの化学的な処理を施してもよい。蒸着層14がシーラント層15の直上に設けられている場合、蒸着層14およびシーラント層15を備えるバリアフィルム層として、市販品、例えば、三井化学東セロ株式会社製のTUX-F(アルミニウム蒸着L-LDPEフィルム)や、東洋紡株式会社製のエコシアールVE034(シリカ/アルミナ二元蒸着したポリエステルフィルム)を適用することができる。
【0054】
このような蒸着層14およびシーラント層15を備えるバリアフィルム層の厚さは、
特に限定されないが、ヒートシール性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、環境負荷の削減の観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下である。
蒸着層14およびシーラント層15を備えるバリアフィルム層の坪量は、特に限定されないが、ヒートシール性の観点から、好ましくは10g/m2以上、より好ましくは15g/m2以上であり、環境負荷の削減の観点から、好ましくは50g/m2以下であり、より好ましくは30g/m2以下である。
なお、蒸着層14およびシーラント層15を備えるバリアフィルム層は、上記形態に限定されるものでなく、例えば、シーラント層14と蒸着層15との間に、両層の密着性をより強固にするアンカー層となる中間層が更に設けられるようにしてもよい。
【0055】
積層体10において、シーラント層15は1層でもよく、2層以上備えていてもよい。積層体がシーラント層を2層以上備える場合、それぞれのシーラント層に使用される樹脂は同一であってもよく、異なっていてもよい。積層体において最外層となるシーラント層に用いる樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。積層体において最外層となるシーラント層に用いる樹脂が低密度ポリエチレン(LDPE)であることで、シール後の接着力が過剰にならず、液体紙容器において適度な開封性を持たせることができる。
【0056】
本形態の積層体は、上記の層に加えて、顔料塗工層、印刷層、遮光層などの任意の層をさらに有していてもよい。
【0057】
[顔料塗工層]
本形態の積層体は、紙基材層と接着剤層との接着性向上の観点から、紙基材層と接着剤層との間に顔料塗工層を有することが好ましい。また、印刷性を高めるため、紙基材層上に顔料塗工層を設けてもよく、たとえば、樹脂層と紙基材層との間に顔料塗工層を設けてもよい。顔料塗工層は、1層であってもよいし、2層以上であってもよい。
【0058】
顔料塗工層は、無機顔料及びバインダを含むことが好ましく、主に無機顔料およびバインダから構成されることがより好ましい。なお、「顔料塗工層が主に無機顔料およびバインダから構成される」とは、顔料塗工層中の無機顔料およびバインダの合計含有量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上、さらに一層好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である(上限:100質量%以下)。なお、顔料塗工層は、無機顔料およびバインダ以外に、任意の成分をさらに含んでいてもよい。
【0059】
顔料塗工層に含まれる無機顔料としては、特に限定されないが、カオリン、タルク、マイカ、重質炭酸カルシウム、プラスチックピグメントなどが挙げられ、好ましくはカオリンである。無機顔料のアスペクト比は、通常1以上であり、顔料塗工層の平滑性の観点から、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、30以上がさらに好ましい。顔料塗工層の平滑性が高いと、ドライラミネーション時の接着不良(具体的には、接着剤層と蒸着層の界面の接着不良)を低減できる。上限は、特に限定されないが、10000以下が好ましく、塗料の流動性および塗工性の観点から、50以下が好ましく、40以下がより好ましい。アスペクト比は、電子顕微鏡による観察やX線回折測定によって測定することができる。
【0060】
無機顔料の平均粒子径は、顔料塗工層の平滑性および塗料の製膜性の観点から、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。塗料の製膜性が高くなると、顔料塗工層の欠陥が低減し、接着剤が顔料塗工層を抜けて紙基材層に浸透するのを抑制できる。これにより、ドライラミネーション時の接着不良(具体的には、紙基材層と蒸着層の接着不良)を低減できる。下限は、特に限定されないが、0.05μm以上が好ましく、0.10μm以上がより好ましい。平均粒子径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定によって測定されるメジアン径(d50)を意味する。
【0061】
顔料塗工層中の無機顔料の含有量は、顔料塗工層の平滑性の観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、そして、塗料の製膜性の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0062】
顔料塗工層に含まれるバインダとしては、特に限定されないが、澱粉、スチレン-ブタジエン系樹脂;(メタ)アクリル系(共)重合体;スチレン-(メタ)アクリル系樹脂;エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体等のオレフィン-不飽和カルボン酸系共重合体;ポリ乳酸などが挙げられる。バインダは、スチレン-ブタジエン系樹脂、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン-不飽和カルボン酸系共重合、及びポリ乳酸からなる群より選ばれる1種以上を含むこと好ましく、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、ポリ乳酸からなる群より選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。
【0063】
(メタ)アクリル系(共)重合体は、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルから選択される1つ以上の単量体の(共)重合体である。(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸の炭素数1~12のアルキルエステルであることが好ましい。また、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂とは、スチレンと、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1つの単量体との共重合体である。
【0064】
顔料塗工層に含まれるバインダのガラス転移温度は、塗料の製膜性の観点から、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下であり、そして、好ましくは-5℃以上である。バインダのガラス転移温度は、プラスチックの転移温度測定方法(JIS K7121:2012)によって測定される値を採用するものとする。
【0065】
顔料塗工層中のバインダの含有量は、顔料塗工層の平滑性および積層体の製造コストの観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下であり、塗料の製膜性および顔料塗工層の柔軟性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。顔料塗工層の柔軟性が増すと、積層体の加工時に蒸着層が破壊されにくくなり、バリア性を維持することができる。
【0066】
顔料塗工層が含んでいてもよい任意成分としては、分散剤、界面活性剤、酸化防止剤、帯電防止剤、染料、可塑剤、潤滑剤、離型剤などが挙げられる。
【0067】
顔料塗工層の塗工量(固形分)は、紙基材層表面の被覆性の観点から、好ましくは5g/m2以上、より好ましくは10g/m2以上であり、積層体のコストおよびリサイクル性の観点から、好ましくは30g/m2以下、より好ましくは20g/m2以下である。紙基材層表面が顔料塗工層で被覆されると、紙基材層のパルプが露出しないため、接着剤層が紙基材層の全面に塗工されやすくなり、その結果、紙基材層と蒸着層との接着性が向上する。
【0068】
顔料塗工層の形成方法は、特に限定されないが、無機顔料およびバインダを含む分散液を紙基材上に塗工し、乾燥することで形成する方法が好ましい。無機顔料およびバインダを含む分散液としては、水性分散液等の水性媒体を溶媒とするものが好ましい。
【0069】
[液体紙容器]
本形態の積層体は、酸素バリア性に優れ、さらに適度な強度を有することから、日本酒、焼酎、ワインなどのアルコール類、牛乳などの乳飲料、オレンジジュースやお茶などの清涼飲料などの食品、カーワックス、シャンプーや洗剤などの化学製品など液体全般の包装紙容器(液体紙容器)として好適に用いることができる。
【0070】
以下、各物性の測定方法について記載する。
<坪量>
積層体の坪量(g/m2)は、JIS P 8124:2011に準拠して測定する。
なお、紙基材層の坪量は、公知の方法及び下記の手順で樹脂層の材料、厚さ及び密度などを特定したうえで、紙基材の坪量を算出しうる。具体的には、所定の大きさにカットした、積層体の重量(全重量)を測定し、その後、積層体をセルラーゼなどの酵素水溶液や銅エチレンジアミン水溶液に含浸させ、紙基材を完全に溶解させたことを確認の後、紙基材以外の重量を測定し、全重量から紙基材以外の重量を差し引くことで紙基材のみの重量を算出し、紙基材の坪量を測定する。
【0071】
<紙基材層の比率>
積層体中の紙基材層の比率(重量%)は、上述した測定方法により得られた紙基材層の坪量を積層体の坪量で割ることにより算出する。
【0072】
<酸素透過度>
積層体の酸素透過度(mL/m2/day/atm)は、JIS K 7126-2:2006に準拠して、23℃、相対湿度50%における値を測定する。具体的には、酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/22)を使用し、温度23℃、相対湿度50%の条件にて、積層体の酸素透過度を測定する。
【0073】
<水蒸気透過度>
積層体の水蒸気透過度(g/m2/day/atm)は、JIS Z 0208:1976に準拠して、積層体の樹脂層が内側(低湿度側)に来るように配置して、40℃、相
対湿度90%における値を測定する。
【実施例0074】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。また、特にことわりがない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を表す。また、実施例および比較例の操作は、特にことわりがない限り、室温(20~25℃)、常湿(40~50%RH)の条件で行った。
【0075】
[実施例1]
無機顔料として固形分濃度40%になるように水に分散したカオリン(IMERYS社製、Contour Xtreme、アスペクト比:33、平均粒子径:0.26μm)60質量部(固形分)と、バインダとしてスチレン-アクリル系樹脂の水系エマルジョン(BASF社製、ACRONAL S-504、ガラス転移温度5℃)40質量部(固形分)とを混合し、固形分濃度40質量%の顔料塗工層用塗工液を調製した。紙基材(OKピエナス、厚み約505μm、坪量330g/m2、王子マテリア社製)の一方の面に、顔料塗工層用塗工液を固形分が12g/m2となるように塗布し、120℃、1分乾燥させて、紙基材層上に顔料塗工層を形成し、塗工紙を得た。当該塗工紙の顔料塗工層上に、溶剤系のガスバリア性接着剤(ウレタン系、PASLIM VM001/108CP DIC株式会社製)を乾燥重量4g/m2、厚み4μmとなるように塗布して接着剤層を形成した。その後、接着剤層とアルミニウム蒸着L-LDPEフィルム(TUX-F、厚み25μm、坪量約23g/m2、三井化学東セロ株式会社製) の蒸着面とをドライラミ
ネート法によって貼り合せて、40℃で3日間エージングすることで、紙基材の一方の面に、接着剤層、蒸着層およびシーラント層(L-LDPE層)を積層させた。さらに紙基材の他方の面に、低密度ポリエチレン樹脂(ノバテックLD LC600A、日本ポリエチレン株式会社製)を、押出ラミネート法で、厚さ20μm、坪量約18g/m2となるように塗布して樹脂層(LDPE層)を形成し、積層体を得た。
【0076】
[実施例2]
アルミニウム蒸着L-LDPEフィルムの代わりに、下記方法で製造したシリカ蒸着L-LDPEフィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
シリカ蒸着L-LDPEフィルムは、L-LDPEフィルム(TUX FC-S、厚み25μm、坪量約23g/m2、三井化学東セロ株式会社製)の片面にコロナ処理を行った後、コロナ処理面に対して、物理気相成長法によってシリカ蒸着層(厚み20nm)を形成することにより得た。
【0077】
[実施例3]
アルミニウム蒸着L-LDPEフィルムの代わりに、下記方法で製造したアルミニウム蒸着LDPEフィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
アルミニウム蒸着LDPEフィルムは、低密度ポリエチレン樹脂(ノバテックLD LF448K1、日本ポリエチレン株式会社製)を用いてTダイキャスト法によってフィルム成型して得たLDPEフィルム(厚み20μm、坪量約18g/m2)の片面に、コロナ処理を行った後、コロナ処理面に対して、物理気相成長法によってアルミニウム蒸着層(厚み50nm)を形成することにより得た。
【0078】
[実施例4]
実施例1で得た積層体のシーラント層(L-LDPE層)上に、ポリエチレン樹脂(ノバテックLD LC600A、日本ポリエチレン株式会社製)を、押出ラミネート法で、厚さ20μm、坪量約18g/m2となるように塗布して、2層目のシーラント層(LD
PE層)を形成し、積層体を得た。
【0079】
[実施例5]
溶剤系のガスバリア性接着剤の代わりに、ノンソルベント系のガスバリア性接着剤(ウレタン系、PASLIM NSRD011/NSRD006、DIC株式会社製)を用いて接着剤層を形成し、接着剤層と蒸着面とをノンソルベントラミネート法によって貼り合せたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0080】
[実施例6]
溶剤系のガスバリア性接着剤(ウレタン系)の代わりに、溶剤系のガスバリア性接着剤(エポキシ系、MAXIVE M-100/C-93、三菱ガス化学株式会社製)を用いて接着剤層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0081】
[実施例7]
顔料塗工層の塗工量(固形分)を8g/m2に変更し、アルミニウム蒸着L-LDPEフィルムの代わりに、シリカ/アルミナを二元蒸着したポリエステルフィルム(エコシアールVE034、厚み30μm、坪量約40g/m2、東洋紡株式会社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0082】
[比較例1]
実施例1で製造した塗工紙の両面に、ポリエチレン樹脂(ノバテックLD LC600A、日本ポリエチレン株式会社製)を、押出ラミネート法で、厚さ20μm、坪量約18g/m2となるように塗布して、積層体を得た。
【0083】
[比較例2]
アルミニウム蒸着L-LDPEフィルムの代わりに、片面アルミニウム蒸着PETフィルム(ATAC VM-PET NW、厚み12μm、坪量約16g/m2、メイワパックス株式会社製) を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、紙積層体を得た。
【0084】
[比較例3]
片面アルミニウム蒸着PETフィルム(ATAC VM-PET NW、厚み12μm、坪量約16g/m2、メイワパックス株式会社製)のPETフィルム面に、溶剤系の非ガスバリア性接着剤(ウレタン系、ディックドライLX-500/KW-75、DICグラフィックス株式会社製)を乾燥重量4g/m2となるように塗布して接着剤層を形成した。その後、シーラント層として、市販のLDPEフィルム(厚み30μm、坪量約18g/m2)を貼り付けた。得られた積層フィルムの蒸着面と、実施例1で製造した塗工紙の顔料塗工層面とをサンドラミネート法によってポリエチレン樹脂を接着剤として用いて貼り合わせた。更に紙基材の他方の面に、ポリエチレン樹脂(ノバテックLD LC600A、日本ポリエチレン株式会社製)を、押出ラミネート法で厚さ20μm、坪量約18g/m2となるように塗布して樹脂層(LDPE層)を形成し、積層体を得た。
【0085】
[比較例4]
溶剤系のガスバリア性接着剤の代わりに、溶剤系の非ガスバリア性接着剤(ディックドライLX-500/KW-75、DICグラフィックス株式会社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。
【0086】
[比較例5]
紙基材の坪量を100g/m2としたこと以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体を用いた紙容器は直立せず、後述の充填機シール性を評価することができなかった。
【0087】
得られた積層体を用いて以下の評価を実施した。
<加工工程数評価>
ラミネート加工の工程数を計測した。
【0088】
<酸素透過度>
積層体の酸素透過度(mL/m2/day/atm)は、JIS K 7126-2:2006に準拠して、23℃、相対湿度50%における値を測定した。具体的には、酸素透過率測定装置(MOCON社製、OX-TRAN2/22)を使用し、温度23℃、相対湿度50%の条件にて、積層体の酸素透過度を測定した。
【0089】
<水蒸気透過度>
積層体の水蒸気透過度(g/m2/day/atm)は、JIS Z0208:1976に準拠して、積層体の樹脂層(表1の層構成における上側の層)が内側(低湿度側)に来るように配置して、40℃、相対湿度90%における値を測定した。
【0090】
<充填機シール性評価>
積層体の必要箇所に罫線を設け、所定の形状に打ち抜き、ブランク材を得た。次に、フレームシールにより胴部を貼り合わせて、筒状のスリーブを得た。続いて、この筒状スリーブを充填機に供給し、ボトム部を形成した後、水を充填し、トップ部をシールし、ゲーブルトップ型の紙容器を得た。得られた紙容器について、水の漏れが生じるか否かを目視で評価した。また、胴部のシール箇所の端面を目視で観察し、非接着箇所の有無を確認した。
〇:水が漏れず、かつ非接着箇所が見られない
×:水が漏れる、または、非接着箇所が見られる
【0091】
実施例1~7及び比較例1~5の各物性と、評価結果を表1及び表2に示す。
実施例1~7の積層体は、紙基材層比率が高く(すなわち環境負荷が低く)、酸素バリア性に優れていた。また、実施例1~7の積層体は、充填機シール性も良好であり、液体紙容器として適用できることがわかった。
一方、従来のバリアカートンの層構成を有する比較例3の積層体は、実施例の積層体に比べて、紙基材比率が低かった(すなわち環境負荷が高かった)。また、非ガスバリア性接着剤を使用した比較例4の積層体は、酸素バリア性に乏しかった。また、積層体の坪量が200g/m2を下回る比較例5の積層体は、紙基材比率が低く(すなわち環境負荷が高く)、かつ積層体坪量が低く積層体の強度に乏しいため、紙容器が直立せず、充填機シール性を評価することができなかった。
上記結果から、本実施形態の積層体によれば、酸素バリア性に優れ、液体紙容器等の容器用途に適用でき、かつ環境負荷を低減できる。
【0092】
【0093】