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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094685
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】義歯装着用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/35 20200101AFI20230629BHJP
   A61K 6/15 20200101ALI20230629BHJP
【FI】
A61K6/35
A61K6/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210131
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小幡 佑季
(72)【発明者】
【氏名】北川 千晴
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA02
4C089AA03
4C089CA03
(57)【要約】
【課題】口腔内に義歯装着時に義歯装着者が感じる義歯のなじみにくさが軽減し、義歯のなじみ感に優れ、また、義歯装着中のベタつきが軽減して使用感がよい義歯装着用組成物を提供する。
【解決手段】25℃、角周波数100rad/s、歪み1%における貯蔵弾性率G’が300~1,700Pa及び損失弾性率G”が100~600Paであることを特徴とする義歯装着用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃、角周波数100rad/s、歪み1%における貯蔵弾性率G’が300~1,700Pa及び損失弾性率G”が100~600Paであることを特徴とする義歯装着用組成物。
【請求項2】
貯蔵弾性率G’に対する損失弾性率G”の割合を示す正接損失tanδが1以下である請求項1記載の義歯装着用組成物。
【請求項3】
貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の合計値を示すG’+G”が600~2,200Paである請求項1又は2記載の義歯装着用組成物。
【請求項4】
部分義歯装着用である請求項1~3のいずれか1項記載の義歯装着用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内への義歯装着時に義歯装着者が感じる義歯のなじみにくさを軽減する義歯装着用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、残存歯の増加に伴い部分義歯装着者が増加しており、65歳以上の高齢者では約3人に1人が部分義歯を装着している。義歯(入れ歯)は、人工歯と義歯床を有し、義歯装着時は義歯床が顎堤(義歯を装着する歯茎部位)の口腔粘膜に直接接するため、義歯床の装着性は重要であり、義歯床とその装着部位の床下の粘膜とのなじみがよいと、装着による異物感が緩和され、痛みや違和感もある程度緩和される。義歯は、就寝時に外すことが推奨されているが、特に、部分義歯は、金属製クラスプに代表される固定具(義歯床)により、残存歯へ固定されていることもあり、起床後、部分義歯の装着時に粘膜へのなじみにくさを感じている装着者が多く、部分義歯の装着時においても、装着部位の粘膜とのなじみにくさを軽減するケア剤の開発が望まれていた。
ところで、義歯装着時のケア剤としては、義歯安定剤があるが、従来の義歯安定剤は、総入れ歯の義歯と顎堤の接着を主目的とした製剤であるため、特に部分義歯の装着時のなじみにくさを軽減する効果は期待できず、また、装着時にベタつきを感じて使用感が悪いといった課題があった。
義歯の装着感を改善した義歯装着用組成物は、特許文献1、2(特開2020-105164号公報、特開2021-75505号公報)に提案されているが、装着時における義歯の粘膜とのなじみ具合については十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-105164号公報
【特許文献2】特開2021-75505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、口腔内に義歯装着時に義歯装着者が感じる義歯のなじみにくさが軽減し、義歯の異物感軽減効果に優れ、かつベタつきが軽減して使用感もよい義歯装着用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、義歯装着時の環境を反映する特定の角周波数において測定した粘弾性特性が一定の範囲内にある義歯装着用組成物が、例えば口腔内に装着する前の義歯(人口歯と義歯床を有する入れ歯)、特に部分義歯の義歯床表面に上記組成物を塗布等によって適用し、この義歯を装着部位に装着すると、義歯装着時に装着者が感じる義歯のなじみにくさが軽減して異物感が抑えられ、義歯床が口腔粘膜と適度かつ顕著になじみ、かつ義歯装着中に感じるベタつきが軽減し、使用感がよいことを知見した。
即ち、本発明によれば、25℃、角周波数100rad/s、歪み1%における貯蔵弾性率G’が300~1,700Pa及び損失弾性率G”が100~600Paである義歯装着用組成物とすることによって、口腔内に義歯装着時の義歯のなじみにくさが軽減し、義歯の異物感軽減効果に優れ、これにより、装着時の義歯のなじみやすさ(義歯の義歯床が、装着部位の口腔粘膜に適度かつ均一に広がってなめらかに接触し、異物感が感じられることもなく顎堤に心地よく装着され、適合する感覚)に優れること、また、義歯装着中のベタつきが抑制されて軽減し、使用感もよいことを知見し、本発明をなすに至った。
【0006】
従って、本発明は、下記の義歯装着用組成物を提供する。
〔1〕
25℃、角周波数100rad/s、歪み1%における貯蔵弾性率G’が300~1,700Pa及び損失弾性率G”が100~600Paであることを特徴とする義歯装着用組成物。
〔2〕
貯蔵弾性率G’に対する損失弾性率G”の割合を示す正接損失tanδが1以下である〔1〕記載の義歯装着用組成物。
〔3〕
貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”の合計値を示すG’+G”が600~2,200Paである〔1〕又は〔2〕記載の義歯装着用組成物。
〔4〕
部分義歯装着用である〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の義歯装着用組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、口腔内への義歯装着時に義歯装着者が感じる義歯のなじみにくさが軽減し、義歯の異物感軽減効果に優れ、かつ義歯装着中のベタつきが軽減して使用感がよい義歯装着用組成物を提供できる。この義歯装着用組成物は、口腔内に装着前の義歯、特に部分義歯の義歯床に適用し、義歯の装着感を改善する製剤として有効であり、装着時から装着中においても異物感等を軽減させて心地よい装着感を改善するケアに応用できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明につき更に詳述する。
本発明の義歯装着用組成物は、粘弾性特性として、25℃、角周波数100rad/s、歪み1%における貯蔵弾性率G’が300~1,700Pa及び損失弾性率G”が100~600Paである。上記貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”がそれぞれ特定範囲内において、義歯床の口腔粘膜とのなじみにくさが軽減し、義歯の異物感軽減効果に優れ、また、義歯装着中のベタつきが抑制されて使用感もよい。
【0009】
本発明において、貯蔵弾性率G’とは、正弦的に変化する応力を溶液に加えた場合における、1周期あたりに貯蔵され完全に回復するエネルギーの尺度である。一方、損失弾性率G”とは、特性振動数の正弦波のひずみを加えたときのひずみよりπ/2だけ位相が進んだ応力成分の大きさを意味する。
従来から、工業的な粘着剤の物性を規定する方法として、Dahlquist(C.A.Dahlquist,Adhesion Fundamental&Practice,Mclaren&Sons,Ltd.,London,p143(1969))やChang(E.P.Chang,J.Adhesion,34,189(1991))の経験則が提案されている。Changの提唱したVisco-Elastic Windowsの概念は、粘着剤の貯蔵弾性率及び損失弾性率の角周波数依存性を測定したときに、角周波数が0.01及び100rad/sにおける貯蔵弾性率及び損失弾性率が、その粘着剤の粘着特性を反映しているとされている。
そこで、本発明者らは、上記概念に着目して義歯装着用組成物の粘弾性特性について検討したところ、特に角周波数100rad/sにおける貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”が、義歯装着時の環境を反映し、これらがそれぞれ一定の範囲内にある義歯装着用組成物が、口腔内への義歯装着時に義歯床が口腔粘膜となじみ、義歯の異物感軽減効果に優れ、かつ義歯装着中のベタつき等の使用感の悪さが抑制されることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0010】
貯蔵弾性率G’は、25℃、角周波数100rad/s、歪み1%において、下限は300Pa以上が好ましく、1,000Pa以上がより好ましく、1,200Pa以上が最も好ましい。上限は1,700Pa以下が好ましく、1,600Pa以下がより好ましい。300Pa未満では、ベタつきが抑えられず使用感が悪化し、1,700Paを超えると、義歯の異物感軽減効果が劣る。
損失弾性率G”は、25℃、角周波数100rad/s、歪み1%において、下限は100Pa以上が好ましく、200Pa以上がより好ましく、300Pa以上が最も好ましい。上限は600Pa以下が好ましく、500Pa以下がより好ましく、400Pa以下が最も好ましい。100Pa未満では、ベタつきが抑えられず使用感が悪化し、600Paを超えると、義歯の異物感軽減効果が劣る。
なお、上記貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”は、レオメーター(レオメーターMCR302、アントンパール社製、コーンプレートシステム、直径25mm、コーン角2°)によって測定した値である。
【0011】
また、本発明において、上記貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”の割合を示す正接損失が特定範囲であることが好ましい。
正接損失(以下、tanδとも示す)とは、貯蔵弾性率に対する損失弾性率の割合であり、特定温度条件での粘弾性の指標である。正接損失は以下のよう定義される。
tanδ=G”/G’
正接損失tanδは、下限は特に限定されないが、上限は1以下が好ましく、0.4以下がより好ましく、0.3以下が最も好ましく、0.1以上とすることができる。上記範囲内であると、義歯の異物感軽減効果がより優れ、また、ベタつきが一層抑えられて使用感がよい。1を超えると、ベタつきが抑えられなくなる場合がある。
【0012】
また、貯蔵弾性率と損失弾性率との値の合計を示すG’+G”は、400~2,300Paとすることができるが、下限は600Pa以上が好ましく、1,000Pa以上がより好ましく、1,500Pa以上が最も好ましく、また、上限は2,200Pa以下が好ましく、2,000Pa以下がより好ましく、1,900Pa以下が最も好ましい。上記範囲内であると、義歯の異物感軽減効果がより優れ、また、ベタつきが一層抑えられ、使用感がよい。
【0013】
本発明の義歯装着用組成物は、25℃での粘度が2~25Pa・sであることが好ましく、より好ましくは3~20Pa・sである。粘度が上記範囲内であると、義歯の異物感軽減効果及び使用感(ベタつきのなさ)がより優れる。粘度が25Pa・sを超えると、ベタつきが抑えられず使用感が悪くなる場合がある。
上記粘度は、レオメーターMCR302(アントンパール社製、コーンプレート型回転粘度計(コーンプレートシステム)、直径25mm、コーン角2°、せん断速度100/s)で測定した値である。
【0014】
本発明の義歯装着用組成物には、貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”がそれぞれ上記範囲内において、下記の成分を配合することができる。
本発明において、上記の特定貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”を有する義歯装着用組成物は、下記成分を配合することによって得ることができるが、特に(A)ノニオン性水溶性高分子物質及び/又は(D)アニオン性水溶性高分子物質と(B)水とを配合し、更に湿潤剤として(C)糖アルコール及び/又は多価アルコールを配合することが好ましい。また、(A)成分としては、特に後述のように貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”を満たすノニオン性水溶性高分子を特定量で配合することが好ましく、また更に、後述のように湿潤剤として(C)成分、特に多価アルコールを特定量、かつ(B)成分に対して特定量比で配合することが、より好ましい。とりわけ、後述の好ましい量比で配合することが重要である。このような要件を満たすことが、本発明の義歯装着用組成物を得るためには好適である。なお、義歯装着用組成物の調製方法は、常法を採用することができる。
【0015】
(A)ノニオン性水溶性高分子物質は、義歯の異物感軽減効果の点で、ガラクトマンナン及びその誘導体(A1)並びに水溶性セルロース誘導体(A2)から選ばれる1種以上を使用できる。
(A)成分としては、ガラクトマンナン又はその誘導体(A1)及び/又は水溶性セルロース誘導体(A2)を使用し得る。
【0016】
ガラクトマンナン又はその誘導体(A1)として、ガラクトマンナンは、β-D-マンノースがβ-1,4結合した主鎖と、α-D-ガラクトースがα-1,6結合した側鎖からなる構造を有する多糖類であり、マンノースとガラクトースの構成比率により特性が異なる。例えば、マンノースとガラクトースとの構成比を示すマンノース/ガラクトースが4のものはローカストビーンガムと呼ばれ、3のものはタラガムと呼ばれ、2のものはグァーガムと呼ばれる。マンノース/ガラクトースが2~4のものが好ましく、2が最も好ましい。
ガラクトマンナン又はその誘導体としては、上記ローカストビーンガム、グァーガム、タラガムが好ましく、グァーガムが最も好ましい。
これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせてもよく、また、市販品を使用できる。具体的には、グァーガムは、メイプロガット 90S(デュポン社製)、ローカストビーンガムは、メイプロLBG フレールM-200(デュポン社製)を用いることができる。
【0017】
水溶性セルロース誘導体(A2)としては、セルロースの水酸基の一部をエーテル化した誘導体を用いることができ、下記の置換基を有するものが好ましい。
水溶性セルロース誘導体の水酸基をエーテル化した置換基は、本効果発現の点から、アルキル基又はヒドロキシアルキル基であるものが好ましく、より好ましくは炭素数1~3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、更に好ましくはメトキシ基又はヒドロキシプロポキシ基である。ヒドロキシアルキル基とは、ヒドロキシ基によって置換されたアルキル基及びそれらの異性体基である。
このような水溶性セルロース誘導体として具体的には、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等が挙げられる。中でも、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースが好ましく、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースがより好ましく、特にヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。
これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせてもよく、また、市販品を使用できる。具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、メトローズ90SH-4000SR(信越化学工業社製)、メチルセルロースは、メトローズSM-4000(信越化学工業社製)を用いることができる。
【0018】
(A)ノニオン性水溶性高分子物質は、上記貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”を確保し、義歯の異物感を改善する点で、3質量%水溶液の25℃、角周波数100rad/s、歪み1%における貯蔵弾性率G’が好ましくは100Pa以上、より好ましくは300~600Paであり、3質量%水溶液の25℃、角周波数100rad/s、歪み1%における損失弾性率G”が好ましくは50Pa以上、より好ましくは200~400Paであり、前記貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”を満たす上記の(A1)及び/又は(A2)成分を用いることが好ましい。
なお、(A)成分の貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”の測定条件、測定方法等は、上記と同じである。
【0019】
(A)ノニオン性水溶性高分子物質の配合量は、組成物全体の0.4%(質量%、以下同様)以上が好ましく、より好ましくは1%以上であり、また、8%以下が好ましく、より好ましくは5%以下であり、2%以下が更に好ましい。
(A)成分の配合量が上記範囲内であると、上記貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”を確保するために好適である。
【0020】
本発明の義歯装着用組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、(B)水を配合することができる。
(B)水の配合量は、下限は組成物全体の10%以上が好ましく、より好ましくは30%以上である。上限は80%以下が好ましく、より好ましくは70%以下である。
(B)成分の配合量が上記範囲内であると、上記貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”を確保するために好適である。
【0021】
本発明の義歯装着用組成物には、義歯床への広がりやすさを改善し、かつ義歯装着時のあたり心地を改善すると共に、義歯の異物感を改善することを目的として、湿潤剤として(C)糖アルコール及び/又は多価アルコールを配合することができる。
(C)成分としては、特に多価アルコール、とりわけ25℃で液体の多価アルコールを配合することが好ましい。
糖アルコールとしては、ソルビット、キシリトール、エリスリトール等が挙げられ、これらの1種を単独で、又は効果発現の点から2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、ソルビット、キシリトールが好ましく、より好ましくはソルビットである。
多価アルコールとしては、25℃で液体の多価アルコール、例えばグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられ、これらの1種を単独で、又は効果発現の点から2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましく、より好ましくはグリセリン、プロピレングリコールである。
なお、ポリエチレングリコールは、平均分子量(医薬部外品原料規格2006記載の平均分子量)が300~4,000であるものが好ましく、例えばポリエチレングリコール400(平均分子量380~420)等を用いることができる。
【0022】
(C)糖アルコール及び/又は多価アルコールの配合量は、組成物全体の15~70%が好ましく、より好ましくは30~60%である。
【0023】
また、(B)水と(C)糖アルコール及び/又は多価アルコール、特に多価アルコールとの合計配合量は、本発明の効果発現の点から、70~99%が好ましく、より好ましくは80~98%である。
また、(B)水と(C)糖アルコール及び/又は多価アルコール、特に多価アルコールとの量比を示す(C)/(B)は、本発明の効果発現の点から、質量比として0.2~3が好ましく、より好ましくは0.3~1である。
(C)成分の配合量が上記範囲であり、更には(C)及び(B)成分の合計量、(C)/(B)質量比がそれぞれ上記範囲であると、上記貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”の確保にも一層好適である。
【0024】
本発明の義歯装着用組成物には、更に、義歯の異物感を改善することを目的として、(D)アニオン性水溶性高分子物質を配合することができる。
(D)アニオン性水溶性高分子物質としては、アクリル酸系ポリマー(アクリル酸を含む合成ポリマー)、酸性多糖類又はそれらの塩等が挙げられる。
具体的には、キサンタンガム、カラギーナン、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、ペクチン、ジェランガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー等が挙げられるが、中でもキサンタンガム、カラギーナン、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマーが好ましく、カラギーナン、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムがより好ましく、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウムが更に好ましい。これらは、1種を単独で、又は効果発現の点から2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
(D)アニオン性水溶性高分子物質の配合量は、組成物全体の0.4~10%が好ましく、より好ましくは1~5%、更に好ましくは1~4%である。
【0026】
本発明の義歯装着用組成物は、特にジェル剤として調製することができ、また、必要により、形状や剤型に応じて、上記成分以外の公知成分を、本発明の効果に影響しない範囲で任意成分として配合することができる。例えば、エチレンオキサイド(EO)・プロピレンオキサイド(PO)ブロックポリマー等のノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤等の界面活性剤、キレート剤、香料、着色剤、防腐剤、有効成分(殺菌剤、抗菌剤、抗炎症剤、各種ビタミン等の薬効成分)、粘度調整剤、pH調整剤を配合し得る。
義歯装着用組成物の好ましいpH(25℃)範囲は、pH6~8.5、特に6.5~8である。
【0027】
本発明の義歯装着用組成物は、口腔内に義歯を装着前、特に装着直前に義歯床に適用することが好ましい。義歯への適用方法は、義歯床表面に直接展延する手段を採用できる。詳しくは、義歯装着用組成物を公知のチューブ容器等に充填して収容し、収容容器から適量の義歯装着用組成物を出して義歯床上に塗布して付着させ、この義歯を装着部位に速やかに装着することによって、上記組成物が義歯と装着部位に挟まれて義歯床表面に均一に広がり、スムーズに義歯装着することができる。
なお、義歯装着用組成物を適用後に義歯を一旦外した場合は、再び装着する際に、義歯装着用組成物を再適用することが、義歯の異物感改善の点で好ましい。
また、義歯装着用組成物は、適用した義歯を取り外して洗浄時に、流水下、手で軽く擦るなどして容易に取り除くことができる。
義歯は、部分義歯、総義歯(総入れ歯)のどちらでもよいが、義歯の密着感改善の点で、部分義歯に適用すると有効である。
なお、義歯装着用組成物の義歯(義歯床)への使用量は、義歯1本あたり0.05~0.3g程度がよい。
【実施例0028】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例中の%はいずれも質量百分率を示す。
【0029】
[実施例、比較例]
表1、2に示す組成の義歯装着用組成物(ジェル剤)を常法によって調製し、これらをサンプルとしてチューブ容器に充填して収容した。下記の実験1、2に示す方法で義歯装着用組成物の粘弾性特性、粘度を調べ、また、実験3、4に示す方法で評価した。結果を表に併記した。
表中の各成分の配合量を示す数値は、全て純分量(%)を意味する。
被験者は、部分義歯装着者10名であり、その義歯の内訳は、上顎2本:2名、上顎3本:3名、下顎2本:4名、下顎3本:1名である。
【0030】
<実験1;サンプルの粘弾性特性について>
チューブ容器からサンプルの義歯装着用組成物を出し、その粘弾性特性を、アントンパール社製のレオメーターMCR302を用いた動的粘弾性測定(周波数依存性測定)により得られる貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”を用いて評価した。
測定は、直径25mm、コーン角2°のコーンプレートシステム(レオメーターMCR302、アントンパール社製)を用い、25℃、角周波数0.1~100rad/sの範囲で測定し、義歯装着時のせん断速度を考慮し、100rad/sにおける貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”を代表値とした。
更に、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”の割合を示す正接損失tanδ(G”/G’)を下記式によって求めた。
tanδ=G”/G’
また、貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”の合計値を示すG’+G”を求めた。
【0031】
<実験2;サンプルの粘度について>
サンプルの義歯装着用組成物をチューブ容器から出し、その粘度(25℃における粘度)を調べた。アントンパール社製のレオメーターMCR302を用いた粘度測定(せん断速度依存性測定)により得られる粘度を用いて評価した。
測定は、直径25mm、コーン角2°のコーンプレートシステムを用い、25℃、せん断速度0.1~3,000/sの範囲で測定し、義歯装着時のせん断速度を考慮し、100/sにおける粘度を代表値とした。
【0032】
<実験3;義歯装着時の義歯の異物感軽減効果(なじみやすさ)の評価方法>
部分義歯装着直後になじみにくさを感じている部分義歯装着者10名に対して、試験を実施した。部分義歯の義歯床上に、チューブ容器からサンプルの義歯装着用組成物を押し出し(2歯分の義歯:サンプル量0.1~0.2g、3歯分の義歯:サンプル量0.2~0.3g)、口腔内の所定位置に装着し、装着した時に感じる義歯のなじみやすさ(義歯の義歯床が、装着部位の口腔粘膜に適度かつ均一に広がってなめらかに接触し、異物感が感じられることもなく顎堤に心地よく装着され、適合する感覚)について、サンプルを使用せずに装着した場合と比較し、下記の評点基準にて判定した。10名の平均点を算出し、下記の評価基準にて義歯装着時における義歯のなじみやすさを評価した。〇又は◎のものを義歯の異物感軽減効果に優れ、合格であると判断した。
評点基準
3点:装着後、1分間未満で義歯が粘膜にフィットし、なじんだ
2点:装着後、1~3分間経過後に義歯が粘膜にフィットし、なじんだ
1点:装着後、4分間以上経っても義歯の粘膜へのなじみが感じられなかった
評価基準
◎:2.5点以上3.0点以下
○:2.0点以上2.5点未満
×:2.0点未満
【0033】
<実験4;義歯装着中の使用感(ベタつきのなさ)の評価方法>
部分義歯装着時に違和感を感じている部分義歯装着者10名に対して、試験を実施した。部分義歯の義歯床上に、チューブ容器からサンプルの義歯装着用組成物を押し出し(2歯分の義歯:サンプル量0.1~0.2g、3歯分の義歯:サンプル量0.2~0.3g)、口腔内の所定位置に装着した。装着中(装着直後から1時間経過後まで)に感じる使用感(ベタつきのなさ)について、下記の評点基準にて判定した。10名の平均点を算出し、下記の評価基準にて義歯装着中の使用感(ベタつきのなさ)を評価した。
評点基準
3点:装着直後から装着中もベタつきが感じられず、良い使用感であった
2点:装着直後にはわずかにベタつきが感じられたが、装着中には感じられず、良い
使用感であった
1点:装着直後から強いベタつきが感じられ、使用感が良くなかった
評価基準
◎:2.5点以上3.0点以下
○:2.0点以上2.5点未満
×:2.0点未満
【0034】
使用した主原料の詳細を下記に示す。
なお、(A)成分の貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”は、上記実験1と同じ方法で測定した値である。
(A)ヒドロキシプロピルメチルセルロース:
メトローズ90SH-4000SR(信越化学工業社製)
メトキシ基置換度1.4、ヒドロキシプロポキシ基置換度0.2
3%水溶液の25℃、角周波数100rad/s、歪み1%における貯蔵弾性
率G’400Pa、損失弾性率G”300Pa
(A)メチルセルロース:メトローズSM-4000(信越化学工業社製)
メトキシ基置換度1.8
3%水溶液の25℃、角周波数100rad/s、歪み1%における貯蔵弾性
率G’300Pa、損失弾性率G”300Pa
(C)グリセリン:日本薬局方 濃グリセリン(阪本薬品工業社製)
(D)ポリアクリル酸ナトリウム:レオジック260-H(東亞合成社製)
(D)アルギン酸ナトリウム:キミカアルギン(タイプ:I-3)(キミカ社製)
EO・POブロックポリマー:アデカプルロニックL-62(アデカ社製)
エデト酸二ナトリウム:キレスト2B-SD(キレスト社製)
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】