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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094690
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】金属加工用耐熱工程シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/24 20060101AFI20230629BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20230629BHJP
   D06M 11/77 20060101ALI20230629BHJP
   D06M 11/72 20060101ALI20230629BHJP
   D06M 101/00 20060101ALN20230629BHJP
【FI】
B32B5/24
B32B9/00 A
D06M11/77
D06M11/72
D06M101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210138
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】重松 俊広
(72)【発明者】
【氏名】森川 貴之
【テーマコード(参考)】
4F100
4L031
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AC03B
4F100AG00A
4F100AK01A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA06
4F100DE01B
4F100DG01A
4F100DG12A
4F100JJ03
4L031AA26
4L031AB33
4L031BA18
4L031BA19
(57)【要約】
【課題】柔軟性を有し、高温使用下での繊維脱落が少なく、繰り返し使用が可能であり、金属表面の傷入りを防止できる金属加工用耐熱工程シートを提供する。
【解決手段】ガラス糸により構成されるガラスクロスと無機粒子層とを含有し、該無機粒子層が少なくとも無機バインダーを含有していることを特徴とする金属加工用耐熱工程シート。好ましくは、該ガラス糸の番手が10~70texであり、該ガラスクロス表面の少なくとも一部に樹脂を含有し、該ガラスクロスの厚さが0.8mm以上である請求項1記載の金属加工用耐熱工程シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス糸により構成されるガラスクロスと無機粒子層とを含有し、該無機粒子層が少なくとも無機バインダーを含有していることを特徴とする金属加工用耐熱工程シート。
【請求項2】
該ガラス糸の番手が10~70texであり、該ガラスクロス表面の少なくとも一部に樹脂を含有し、該ガラスクロスの厚さが0.08mm以上0.20mm以下である請求項1記載の金属加工用耐熱工程シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム押出成形品やコイル、ガラス工場、伸銅などの銅加工工場、製鋼・圧延等の製鉄工場などの鉄鋼、非鉄金属等の製造工程において、高温雰囲気下での製品の傷付きを防止するために製品の下敷き又は受部材料として使用される金属加工用耐熱工程シートに関するものである。以下、本明細書において、「金属加工用耐熱工程シート」を「耐熱工程シート」と略記する場合がある。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼、非鉄金属分野などの製造工程において、高温で圧延されたシート状製品を積み重ねる場合、製品を高温で焼鈍する場合等には、製品の傷入りを防止するために製品の下敷きとして、金属加工用耐熱工程シートが使用される。耐熱工程シートには、耐熱性、耐屈曲性、耐摩耗性、柔軟性、表面平滑性等が要求される。
【0003】
上記耐熱工程シートとして、例えば、特許文献1では耐熱性有機繊維であるポリベンザゾール繊維と芳香族ポリイミド繊維とが重量分率で50%/50%~90%/10%の割合で絡合されてなる耐熱性フェルトが開示されている。しかしながら、有機繊維のみからなる耐熱クッション材は熱や荷重による劣化が大きく、処理温度が450℃を超える場合には強度低下が生じ耐久性が不十分である他、劣化により脱落した繊維が製品を汚染する問題があった。
【0004】
一方、無機繊維を用いる方法として、特許文献2にはセラミックファイバーとアラミド繊維とを混綿した後、ニードルパンチング処理してなる高耐熱性繊維製緩衝材が開示されており、特許文献3には玄武岩繊維を主材とし、無機繊維、金属繊維、耐熱有機繊維の1種類以上を混入してなる耐熱ニードルフェルト製のパッド材料が開示されている。無機繊維は耐熱性に優れる反面、剛直であり、有機繊維のステープルファイバーと比較して繊維間の絡みが生じにくく、脱落した繊維が製品を汚染する問題があった。
【0005】
また、特許文献4には、無機繊維層の両面に耐熱性有機繊維層をウェブの状態で積層して3層以上の構造体とし、ニードルパンチ処理で絡合一体化して成型した耐熱クッション材が開示されている。この方法では最表面が耐熱性有機繊維で覆われることで高温処理後の強度低下や無機繊維の脱落が抑制されるものの、高温処理により劣化して脱落した有機繊維による製品汚染については改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-324267号公報
【特許文献2】特開平7-34367号公報
【特許文献3】特開平11-200211号公報
【特許文献4】特開2017-95840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、柔軟性を有し、高温使用下での繊維脱落が少なく、繰り返し使用が可能であり、金属表面の傷入りを防止できる金属加工用耐熱工程シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために鋭意研究した結果、下記発明を見出した。
【0009】
(1)ガラス糸により構成されるガラスクロスと無機粒子層とを含有し、該無機粒子層が少なくとも無機バインダーを含有していることを特徴とする金属加工用耐熱工程シート。
【0010】
(2)該ガラス糸の番手が10~70texであり、該ガラスクロス表面の少なくとも一部に樹脂を含有し、該ガラスクロスの厚さが0.08mm以上0.20mm以下である(1)記載の金属加工用耐熱工程シート。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金属加工用耐熱工程シートは、ガラス糸により構成されるガラスクロスと無機粒子層とを含有し、該無機粒子層が少なくとも無機バインダーを含有している。ガラスクロスを構成するガラス糸を無機粒子層で被覆することで、高温使用下、特に450℃以上での耐熱性が向上し、ガラス繊維の脱落が少なく、繰り返し使用が可能となる。また、ガラス糸の番手が10~70texであり、ガラスクロス表面の少なくとも一部に樹脂を含有し、ガラスクロスの厚さが0.08mm以上0.20mm以下であることで、金属加工用耐熱工程シートの柔軟性を維持し、金属表面の傷入りを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明における金属加工用耐熱工程シートは、ガラス糸により構成されるガラスクロスと無機粒子層とを含有し、該無機粒子層が少なくとも無機バインダーを含有していることを特徴とする。
【0013】
本発明におけるガラスクロスを構成するガラス糸のガラス材料については、特に制限されず、公知のガラス材料を用いることができる。ガラス材料として、具体的には、無アルカリガラス(Eガラス)、耐酸性の含アルカリガラス(Cガラス)、高強度・高弾性率ガラス(Sガラス、Tガラス等)、耐アルカリ性ガラス(ARガラス)等が挙げられる。これらのガラス材料の中でも、好ましくは汎用性の高い無アルカリガラス(Eガラス)が挙げられる。ガラス糸を構成するガラス繊維は、1種類のガラス材料からなるものであっても良いし、異なるガラス材料からなるガラス繊維を2種類以上組み合わせたものであっても良い。
【0014】
本発明において、ガラスクロスを構成するガラス糸の番手は、10~70texであることが好ましい。番手が10tex以上であることにより、ガラスクロスの厚さを0.08mm以上としやすく、耐熱工程シートの引張強度を高く維持できる。また、番手が70tex以下であることにより、得られるガラスクロスの平滑性が向上し、金属表面の傷入りを防止することができる。平滑性の向上と金属表面の傷入り防止の観点から、番手は10~30texがより好ましく、20~30texがさらに好ましく、20~25texが特に好ましい。なお、番手は、JIS R 3420:2013 7.1に準じ測定及び算出される。
【0015】
ガラス糸を構成するガラス繊維(単繊維)の直径は特に制限されないが、例えば、3~10μmが好ましく、耐熱工程シートの平滑性を向上させ、金属表面の傷入りを防止する観点から3~8μmがより好ましく、6~8μmがさらに好ましく、6.5~7.5μmが特に好ましい。なお、単繊維直径は、JIS R 3420:2013 7.6 A法に準じ、測定、算出する。ガラス糸における単繊維の本数は、特に制限されないが、例えば、30~1000本が好ましい。平滑性を向上させ、金属表面の傷入りを防止する観点から、単繊維の本数は、100~400本がより好ましく、150~250本がさらに好ましい。
【0016】
本発明のガラスクロスにおいて、織組織としては特に制限されないが、例えば、平織、朱子織、綾織、斜子織、畦織などが挙げられる。中でも、均一性を優れたものとする観点から、平織とすることが好ましい。
【0017】
本発明のガラスクロスは、厚さが0.08mm以上0.20mm以下であることが好ましい。これにより、ガラスクロスの柔軟性が優れたものとなる。また、平滑性を向上させ、金属表面の傷入りを防止する観点から、厚さが0.08mm以上0.15mm以下であることがより好ましく、0.08mm以上0.13mm以下であることがさらに好ましい。なお、ガラスクロスの厚さは、JIS R 3420:2013 7.10.1A法に従い、マイクロメーターを用いて0.01mmの桁まで測定し、これを5か所について行い、5か所のその平均値をJIS Z 8401:2019規則Bによって数値を丸め、0.01mmの桁まで算出する。
【0018】
本発明のガラスクロスの織密度は特に制限されないが、例えば、経糸密度は15~120本/25mmであることが好ましく、20~70本/25mmがより好ましく、40~70本/25mmがさらに好ましく、50~70本/25mmが特に好ましい。また、緯糸密度は、15~90本/25mmであることが好ましく、15~70本/25mmがより好ましく、40~70本がさらに好ましく、50~70本/25mmが特に好ましい。
【0019】
また、本発明のガラスクロスの質量(g/m)は、特に制限されないが、例えば70~250g/mであることが好ましく、80~200g/mがより好ましく、100~150g/mがさらに好ましい。なお、上記質量は、JIS R 3420:2013 7.2に従い、測定及び算出する。
【0020】
本発明のガラスクロスは、表面の少なくとも一部に樹脂を含有することが好ましい。これにより、ガラスクロスの平滑性を向上させつつ、無機粒子層を形成する際にガラスクロスを構成するガラス糸が厚さ方向や幅方向に動くことが少ないため、塗工性が向上し、無機粒子層を均一に形成することが可能となり、さらに平滑性を向上させることが可能であり、繰り返し使用しても繊維脱落が少なくなる。
【0021】
本発明のガラスクロス表面の少なくとも一部に含有する樹脂種としては、特に制限されない。例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、アクリル酸-スチレン共重合体、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0022】
上記樹脂からなる樹脂組成物には、他の成分が含有されていても良い。例えば、架橋結合性を有するエチレン・酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合体やモノマー成分(酢酸ビニル系モノマー、リン酸エステル系モノマー、(メタ)アクリル酸モノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、スチレンモノマー等)や、各種添加剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、難燃剤、防虫剤、化学物質吸収剤、吸放湿性物質、香料、顔料、着色剤、触媒、光触媒、蓄光剤、蛍光剤、光輝性顔料、界面活性剤等)を含むことができる。
【0023】
本発明のガラスクロス表面の少なくとも一部に含有する樹脂の質量としては、特に制限されないが、例えば、1~30g/mが好ましく、1~10g/mがより好ましい。
【0024】
本発明のガラスクロスの製造方法としては、特に制限されない。好ましい例として、例えば、(1)ガラスクロスを製織する工程、(2)製織したガラスクロスに必要に応じてヒートクリーニング処理を施すヒートクリーニング工程、(3)ヒートクリーニングしたガラスクロスに必要に応じてシランカップリング剤等を付与する表面処理工程、(4)(1)~(3)のいずれかの工程で得られたガラスクロスを樹脂溶液に含浸させて乾燥させる樹脂含浸・乾燥工程を含む製造方法が挙げられる。
【0025】
本発明において、金属加工用耐熱工程シートは無機粒子層を含有する。この無機粒子層が、ガラスクロスの表面を被覆することによって、耐熱性が格段に向上し、高温下における耐熱工程シートからのガラス繊維脱落やガラスクロスの劣化を抑制すると共に、ガラスクロスの平滑性を向上させ、金属表面の傷入りを防止することができる。
【0026】
本発明の無機粒子としては、鉱物学的分類上の粘土鉱物に属するもので、カオリン、蛇紋石、ハロイサイト、パイロフィライト、タルク、雲母、スメクタイト、ベントナイト、クロライト等の層状粘土鉱物、セピオライト、パリゴルスカイト等の繊維状粘土鉱物、アロフェン、イモゴライト等の非晶質粘土鉱物を用いることができる。中でも、高温下における耐熱工程シートからの繊維脱落抑制の点から、層状粘土鉱物或いは繊維状粘土鉱物が好ましく、無機バインダーとして使用されるベントナイトやセピオライトが特に好ましい。上記無機粒子は、単独で使用しても良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0027】
本発明において、無機粒子の粒子径は、0.08μm以上20.0μm以下であることが好ましく、0.30μm以上15.0μm以下であることがより好ましく、0.40μm以上10.0μm以下であることがさらに好ましい。粒子径が20.0μmを超えると、耐熱工程シートとして用いた際に高温金属製品に傷が付いてしまう場合や、粉落ちが悪化する場合がある。一方、粒子径が0.08μm未満の場合、塗工液粘度が高くなり塗工が難しくなる場合や、得られた耐熱工程シートを高温下で使用した際に亀裂が生じる場合がある。なお、無機粒子の粒子径は、無機粒子を水で希釈し、撹拌機で分散し、これをレーザー散乱タイプの粒度測定機(マイクロトラック社製、商品名:MT3000)によって測定し、得られた中心粒子径(D50、体積平均)を粒子径とした。
【0028】
無機粒子層形成用塗工液を調製するための媒体としては、無機粒子を均一に溶解又は分散できるものであれば特に限定されない。例えば、トルエン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、イソプロピルアルコール等のアルコール類、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水等を必要に応じて用いることができる。
【0029】
無機粒子層の含有率は、「無機粒子層の塗工量(g/m)/ガラスクロスの質量(g/m)×100」で算出される値であり、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。無機粒子層の含有率が20質量%未満の場合、耐熱工程シートが高温下で扱われた場合に、ガラスクロスからのガラス繊維脱落が目立つようになる。一方、無機粒子層の含有率は60質量%未満が好ましい。無機粒子層の含有率が高いほど、耐熱工程シートの耐熱性は高くなるが、60質量%以上の場合、耐熱工程シートの柔軟性が損なわれ、粉落ちが発生する場合や、耐熱工程シートが硬くなり過ぎて、金属製品に傷が付いてしまう場合がある。
【0030】
無機粒子層を形成するために、無機粒子を含む塗工液をガラスクロスに塗工する装置としては、各種の塗工装置を用いることができる。例えば、2ロールサイズプレス、ゲートロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、キスタッチコーター、ディップコーター、コンマコーター(登録商標)等の含浸、又は塗工装置による各種コーターを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0031】
本発明において、無機粒子層には、前記無機粒子の他に、ポリビニルアルコール等のバインダー樹脂、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の各種分散剤、塗工液の液安定性を増すため、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレンオキサイド等の各種増粘剤、各種保水剤、各種の濡れ剤、防腐剤、消泡剤等の各種添加剤を、必要に応じて添加することもできる。一般に、媒体として有機溶剤を使用した非水系塗工液は表面張力が低く、媒体として水を用いた水系塗工液の表面張力は高い。本発明のガラスクロスは、塗工液の受理性が高いため、非水系塗工液も水系塗工液も、両方共に問題無く塗工することができるが、本発明において、媒体として水のみを用いた水系塗工液を使用することが好ましい。
【実施例0032】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において百分率(%)及び部は、断りの無い限り全て質量基準である。また、塗工量は絶乾塗工量である。
【0033】
実施例1
ガラスクロスとして、ユニチカグラスファイバー株式会社製の生機クロス(品番:H105 F 107(経糸番手22.5tex、緯糸番手22.5tex、質量107g/m、厚さ0.10mm))を使用した。
【0034】
<無機粒子層形成用塗工液1の調製>
ベントナイト(商品名:クニピア(登録商標)G、クニミネ工業株式会社製)100部と、ヘキサメタリン酸ナトリウム0.5部を水中に混合し十分撹拌し、固形分濃度6%の無機粒子層形成用塗工液1を調製した。
【0035】
上記生機クロス(品番:H105 F 107)の両面に無機粒子層形成用塗工液1をコンマコーターにて片面毎にWET塗工量を調整し、乾燥して、片面塗工量10g/m、両面塗工量20g/mの無機粒子層を塗布し、総質量127g/m、厚さ0.10mmの耐熱工程シートを作製した。
【0036】
実施例2
ガラスクロスとして、ユニチカグラスファイバー株式会社製の生機クロス(品番:H131 F 120(経糸番手11.2tex、緯糸番手33.7tex、質量128g/m、厚さ0.13mm))を使用した。
【0037】
上記生機クロス(品番:H131 F 120)の両面に無機粒子層形成用塗工液1をコンマコーターにて片面毎にWET塗工量を調整し、乾燥して、片面塗工量10g/m、両面塗工量20g/mの無機粒子層を塗布し、総質量148g/m、厚さ0.13mmの耐熱工程シートを作製した。
【0038】
実施例3
ガラスクロスとして、ユニチカグラスファイバー株式会社製の生機クロス(品番:H201 F 107(経糸番手67.5tex、緯糸番手67.5tex、質量203g/m、厚さ0.17mm))を使用した。
【0039】
上記生機クロス(H201 F 107)の両面に無機粒子層形成用塗工液1をコンマコーターにて片面毎にWET塗工量を調整し、乾燥して、片面塗工量20g/m、両面塗工量40g/mの無機粒子層を塗布し、総質量243g/m、厚さ0.17mmの耐熱工程シートを作製した。
【0040】
実施例4
ガラスクロスとして、ユニチカグラスファイバー株式会社製の目止め処理クロス(品番:H105 MU 106CFK(経糸番手22.5tex、緯糸番手22.5tex、質量110g/m、厚さ0.10mm)、樹脂含有)を使用した。
【0041】
上記目止め処理クロス(品番:H105 MU 106CFK)の両面に無機粒子層形成用塗工液1をコンマコーターにて片面毎にWET塗工量を調整し、乾燥して、片面塗工量10g/m、両面塗工量20g/mの無機粒子層を塗布し、総質量130g/m、厚さ0.10mmの耐熱工程シートを作製した。
【0042】
実施例5
無機粒子層形成用塗工液1を下記の塗工液2に変更した以外、実施例4と同様な方法で、総質量130g/m、厚さ0.10mmの耐熱工程シートを作製した。
【0043】
<無機粒子層形成用塗工液2の調製>
セピオライト(商品名:ミルコン(登録商標)SP-2、昭和KDE株式会社製)100部と水溶性アクリル酸系分散剤(商品名:アロン(登録商標)T-50、東亞合成株式会社製)1.0部を水中に混合し、十分撹拌し、固形分濃度18%の無機粒子層形成用塗工液2を調製した。
【0044】
実施例6
ガラスクロスとして、ユニチカグラスファイバー株式会社製の生機クロス(品番:H320 F 107(経糸番手135.0tex、緯糸番手135.0tex、質量308g/m、厚さ0.25mm))を使用した。
【0045】
上記生機クロス(H320 F 107)の両面に無機粒子層形成用塗工液2をコンマコーターにて片面毎にWET塗工量を調整し、乾燥して、片面塗工量31g/m、両面塗工量62g/mの無機粒子層を塗布し、総質量370g/m、厚さ0.25mmの耐熱工程シートを作製した。
【0046】
実施例7
ガラスクロスとして、ユニチカグラスファイバー株式会社製の生機クロス(品番:H50 F5 110(経糸番手11.2tex、緯糸番手11.2tex、質量48g/m、厚さ0.06mm))を使用した。
【0047】
上記生機クロス(H50 F5 110)の両面に無機粒子層形成用塗工液1をコンマコーターにて片面毎にWET塗工量を調整し、乾燥して、片面塗工量5g/m、両面10g/mの無機粒子層を塗布し、総質量58g/m、厚さ0.06mmの耐熱工程シートを作製した。
【0048】
比較例1
ガラスクロスとして、ユニチカグラスファイバー株式会社製の目止め処理クロス(品番:H105 MU 106CFK(経糸番手22.5tex、緯糸番手22.5tex、質量110g/m、厚さ0.10mm)、樹脂含有)を耐熱工程シートとして使用した。
【0049】
比較例2
無機粒子層形成用塗工液1を下記の塗工液3に変更した以外、実施例4と同様な方法で、総質量130g/m、厚さ0.10mmの耐熱工程シートを作製した。
【0050】
<無機粒子層形成用塗工液3の調製>
無機粒子層形成用塗工液3として、カオリン(商品名:ASP(登録商標) NC X-1、BASF CORPORATION製)100部と、水溶性アクリル酸系分散剤(商品名:アロン(登録商標)T-50、東亞合成株式会社製)0.4部を水中に混合し十分撹拌し、カオリン分散液を調製し、次いで、塩化ビニル系エマルジョン(商品名:ビニブラン(登録商標)278、固形分濃度43%、日信化学工業株式会社製)20部を水中で混合し十分撹拌し、固形分濃度40%の塗工液を調製した。
【0051】
実施例及び比較例のガラスクロス及び耐熱工程シートについて、下記物性の測定と評価を行い、結果を表1に示した。
【0052】
<ガラスクロスの質量及び耐熱工程シートの総質量>
JIS R 3420:2013 7.2に準拠して、ガラスクロスの質量及び耐熱工程シートの総質量を測定した。表面層の絶乾塗工量は耐熱工程シートの総質量からガラスクロスの質量を差し引いて算出した。
【0053】
<ガラスクロス及び耐熱工程シートの厚さ>
JIS R 3420:2013 7.10 1A法に従い外側マイクロメーターを用いて、0.01mmの桁まで測定し、5か所の平均値とした。
【0054】
<無機粒子層の塗工性>
ガラスクロスに無機粒子層を形成する際の塗工し易さを、次の評価基準で評価した。
【0055】
○:塗工液を塗工する際に、ガラスクロスにシワや塗布斑が発生しない場合。
△:塗工液を塗工する際に、ガラスクロスにシワが少し発生する場合がある。
×:塗工液を塗工する際に、ガラスクロスにシワが発生し、塗工液が裏抜けする。
【0056】
<柔軟性>
無機粒子層塗工後の耐熱工程シートにおいて、外周直径10cmの紙管に巻き付けた際の、シートの様子を目視で観察し、次の基準で評価した。
【0057】
○:紙管にきれいに巻き付けることができる。
△:紙管の巻き付け直後、シートが紙管外周から多少浮き気味、もしくはシワが見られるが、しばらくするときれいに巻くことができる。
×:紙管にきれいに巻き付けることができず、大きな浮きや割れやシワが発生する。
【0058】
<ガラス繊維或いは無機粒子の脱落>
各耐熱工程シートを100mm×100mmサイズで3枚切り出し、0.3mm厚の100mm×100mmのアルミ板に挟んで450℃に設定した電気炉にて8時間加熱処理を行った後、アルミ板表面に付着した脱落繊維と無機粒子を目視で観察し、次の基準で評価した。
【0059】
○:ガラス繊維と無機粒子の脱落はほとんど見られない。
△:ガラス繊維或いは無機粒子の脱落が一部に見られる。
×:ガラス繊維或いは無機粒子の脱落が全面に見られる。
【0060】
<金属表面の傷入り>
各耐熱工程シートを100mm×100mmサイズに切り出し、その上に0.3mm厚の100mm×100mmのアルミ板を載せ、その上に500℃に熱した100mm×100mmの質量3.0kgの鉄片を載せ、冷めるまで放置し、耐熱工程シートに接したアルミ板の表面に傷が入っているかどうかを目視で観察し、次の基準で評価した。
【0061】
〇:アルミ板表面に傷が見られない。
△:アルミ板表面にかすかに凹み傷が見られる。
×:アルミ板表面に凹み傷が見られる。
【0062】
<繰り返し使用性>
各耐熱工程シートにおいて、金属表面の傷入り評価を10回繰り返し、各耐熱工程シートを目視で観察し、次の基準で評価した。
【0063】
〇:ガラス糸の解れが無く、シートに劣化が無い。
△:ガラス糸の解れが見られるが、シートには劣化が無い。
×:ガラス糸の解れが見られ、シートに劣化があり、脆く割れやすい。
【0064】
【表1】
【0065】
表1の結果から、本発明の金属加工用耐熱工程シートは、柔軟性を有し、高温使用下での繊維脱落が少なく、繰り返し使用が可能であり、金属表面の傷入りを防止できることが判る。
【0066】
実施例1と実施例4~5の比較により、ガラスクロス表面の少なくとも一部に樹脂が含浸している方が、無機粒子層を塗工する際の塗工性に優れることが判る。
【0067】
実施例1~5と実施例6の比較により、該ガラス糸の番手が10~70texの範囲で、厚さが0.20mm以下の方が、柔軟性、繊維或いは無機粒子の脱落、金属表面の傷入りが良好であり、ガラス糸の解れが少ないことが判る。
【0068】
実施例1~5と実施例7の比較により、ガラスクロスの厚さは0.08mm以上の方が塗工性に優れ、繊維或いは無機粒子の脱落が少なく、繰り返し使用性が高いことが判る。
【0069】
比較例1は無機粒子層を含有しない場合であるが、ガラス繊維の脱落が多く、アルミ板表面にかすかに凹み傷が見られ、繰り返し使用性に劣ることが判る。
【0070】
比較例2は、無機粒子層が少なくとも無機バインダーを含有しない場合であるが、ガラス繊維或いは無機粒子の脱落が多く、繰り返し使用性に劣ることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の金属加工用耐熱工程シートは、アルミニウム押出成形品やコイル、ガラス工場、伸銅などの銅加工工場、製鋼・圧延等の製鉄工場などの鉄鋼、非鉄金属等の製造工程において、高温使用下での製品の傷付きを防止するために製品の下敷き又は受部材料として使用される耐熱工程シートに関するものであり、好適に使用できる。