(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094700
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】オーブン調理システム、加熱調理器及びオーブン調理容器
(51)【国際特許分類】
F24C 3/02 20210101AFI20230629BHJP
F24C 3/12 20060101ALI20230629BHJP
A47J 37/06 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
F24C3/02 E
F24C3/12 A
A47J37/06 341
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210152
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】梅田 真由子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 宏直
【テーマコード(参考)】
4B040
【Fターム(参考)】
4B040AA03
4B040AB05
4B040AD04
4B040GD01
4B040LA02
4B040LA11
(57)【要約】
【課題】ガスコンロのコンロバーナのような加熱手段を使用してオーブン調理を実現するオーブン調理システム、加熱調理器及びオーブン調理容器を提供する。
【解決手段】オーブン調理システム1は、内部に被調理物Fを収納可能で、本体部材5と蓋体6とを有して内部の密閉度を高めたオーブン調理容器2と、上方にオーブン調理容器2が載置され、載置されたオーブン調理容器2を加熱する加熱手段31と、オーブン調理容器2の本体部材5の底部51の温度である底部温度を検出する底部温度検出手段33と、被調理物Fを加熱する目標温度を入力する温度入力部37と、被調理物Fを加熱する加熱時間を入力する加熱時間入力部38と、加熱手段31の加熱制御を実行する制御部とを備え、制御部は、被調理物Fの温度が目標温度又は目標温度付近に保たれるように温度調節を行う加熱制御を加熱時間に到達するまで実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に被調理物を収納可能で、本体部材と蓋体とを有して内部の密閉度を高めたオーブン調理容器と、
上方に前記オーブン調理容器が載置され、載置された前記オーブン調理容器を加熱する加熱手段と、
前記オーブン調理容器の前記本体部材の底部の温度である底部温度を検出する底部温度検出手段と、
前記被調理物を加熱する目標温度を入力する温度入力部と、
前記被調理物を加熱する加熱時間を入力する加熱時間入力部と、
前記加熱手段の加熱制御を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記温度入力部で入力された前記目標温度と前記底部温度検出手段で検出された前記底部温度とに基づいて、検出された前記底部温度が第1所定条件を満たすと前記加熱手段の出力を減少させる出力減少制御と、前記出力減少制御の実行後において検出された前記底部温度が第2所定条件を満たすと前記加熱手段の出力を増加させる出力増加制御とを繰り返し実行して、前記被調理物の温度が前記目標温度又は前記目標温度付近に保たれるように温度調節を行う加熱制御を、前記加熱時間入力部で入力された前記加熱時間に到達するまで実行する、ことを特徴とするオーブン調理システム。
【請求項2】
請求項1に記載のオーブン調理システムにおいて、
前記オーブン調理容器は、前記本体部材の内部に、前記底部と空隙を介して被調理物を載置することができる被調理物載置手段を有する、オーブン調理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のオーブン調理システムにおいて、
前記本体部材は、前記底部と、前記底部の周囲を囲う側壁部と、上方の開口部とを有し、
前記蓋体は、前記開口部を覆うように形成されており、
前記本体部材は、熱伝導性に優れた金属で形成され、前記底部の肉厚が前記側壁部の肉厚に比べて厚くなるように形成されている、オーブン調理システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のオーブン調理システムにおいて、
前記本体部材の前記底部の上面から前記蓋体の下面までの距離は、650mm以上である、オーブン調理システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のオーブン調理システムにおいて、
前記本体部材の前記底部の形状は、前記加熱手段の前記オーブン調理容器を加熱する加熱部の形状と略同形状である、オーブン調理システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のオーブン調理システムにおいて、
前記オーブン調理容器は、無水調理が実行可能な無水調理容器である、オーブン調理システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のオーブン調理システムに使用される加熱調理器であって、
当該加熱調理器は、前記加熱手段、前記底部温度検出手段、前記温度入力部、前記加熱時間入力部及び前記制御部を備える、ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載のオーブン調理システムに使用されるオーブン調理容器であって、
当該オーブン調理容器は、内部に被調理物を収納可能で、本体部材と蓋体とを有して内部の閉度を高めた構造を備える、ことを特徴とするオーブン調理容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手軽にオーブン調理を行うことができるオーブン調理システム、加熱調理器及びオーブン調理容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被調理物を高温の熱気で全体的に熱を加えて加熱調理するオーブン調理には、本体に被調理物を収納する加熱庫と被調理物を加熱する加熱手段とを備えたオーブンレンジ等の加熱調理器を用いることが知られている(例えば、特許文献1、2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-016056号公報
【特許文献2】特開平6-272864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、オーブンレンジでは、電子レンジを使用している間はオーブン調理を行うことができず、利便性がよいものではない。ところで、被調理物を加熱調理するための加熱調理器としては、ガスコンロやIHコンロ等の加熱調理器が知られているが、ガスコンロの天板上に設置されているコンロバーナでは、焼き物調理や煮物調理や湯沸しに使用されるに過ぎず、オーブン調理を行うことができなかった。
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、ガスコンロのコンロバーナのような加熱手段を使用してオーブン調理を実現することで利便性がよく且つ手軽にオーブン調理を行うことを可能とする、オーブン調理システム、当該システムに使用する加熱調理器及びオーブン調理容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るオーブン調理システムは、
内部に被調理物を収納可能で、本体部材と蓋体とを有して内部の密閉度を高めたオーブン調理容器と、
上方に前記オーブン調理容器が載置され、載置された前記オーブン調理容器を加熱する加熱手段と、
前記オーブン調理容器の前記本体部材の底部の温度である底部温度を検出する底部温度検出手段と、
前記被調理物を加熱する目標温度を入力する温度入力部と、
前記被調理物を加熱する加熱時間を入力する加熱時間入力部と、
前記加熱手段の加熱制御を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記温度入力部で入力された前記目標温度と前記底部温度検出手段で検出された前記底部温度とに基づいて、検出された前記底部温度が第1所定条件を満たすと前記加熱手段の出力を減少させる出力減少制御と、前記出力減少制御の実行後において検出された前記底部温度が第2所定条件を満たすと前記加熱手段の出力を増加させる出力増加制御とを繰り返し実行して、前記被調理物の温度が前記目標温度又は前記目標温度付近に保たれるように温度調節を行う加熱制御を、前記加熱時間入力部で入力された前記加熱時間に到達するまで実行する、構成を備えるものである。
【0007】
前記構成によれば、オーブン調理容器と加熱手段の加熱制御との組み合わせによって、密閉度の高いオーブン調理容器内を高温状態の熱気で満たすことができ、且つ、加熱制御でオーブン調理容器内の熱気を一定温度に保つことができ、これにより、被調理物を高温の熱気で包み込んで全外周から被調理物にじっくり熱を加えてオーブン調理を行うことができる。従って、オーブンレンジ等のような加熱庫を設けた加熱調理器を必要とすることなく、例えば、ガスコンロのコンロバーナのような加熱手段の上方にオーブン調理容器を載置させてオーブン調理を実行することが可能となる。また、オーブン調理容器は、単独で移動可能であるから、簡単に持ち運んで加熱手段の上方に載置させてオーブン調理を行うことができる。従って、本発明によれば、利便性がよく、手軽にオーブン調理を行うことができる。
【0008】
前記オーブン調理システムにおいて、
前記オーブン調理容器は、前記本体部材の内部に、前記底部と空隙を介して被調理物を載置することができる被調理物載置手段を有する構成とすることができる。
【0009】
この構成により、オーブン調理の際、前記空隙によって被調理物をオーブン調理容器の底面と直接接触させないようにして被調理物の下側の焦げ付きを抑制することができ、また、前記空隙に流れ込む熱気によって被調理物の下側をムラなく加熱することができる。従って、被調理物の調理性を向上させることができる。
【0010】
前記オーブン調理システムにおいて、
前記本体部材は、前記底部と、前記底部の周囲を囲う側壁部と、上方の開口部とを有し、
前記蓋体は、前記開口部を覆うように形成されており、
前記本体部材は、熱伝導性に優れた金属で形成され、前記底部の肉厚が前記側壁部の肉厚に比べて厚くなるように形成されている構成とすることができる。
【0011】
この構成によれば、オーブン調理容器の本体部材が熱伝導性に優れた金属で形成されることで底部温度検出手段のセンシングの応答性を向上させることができる。従って、前記加熱制御によりオーブン調理容器の温度を一定に保ち易くすることができる。また、本体部材は、底部の肉厚が側壁部の肉厚に比べて厚く形成されることで加熱手段により加熱された底部の熱が側壁部へ早く熱伝導して側壁部の温度上昇速度を速くできるため、底部の温度と側壁部の温度の温度ムラを低減させることができ、オーブン調理容器の均熱化を有利に達成することができる。従って、オーブン調理容器内の温度を一定に保って被調理物を高温の熱気で加熱するオーブン調理を有利に実現することができ、被調理物の調理性を向上させることができる。
【0012】
前記オーブン調理システムにおいて、
前記本体部材の前記底部の上面から前記蓋体の下面までの距離は、650mm以上である構成とすることができる。
【0013】
この構成により、厚みのある食材(例えば、さつまいも)のオーブン調理も可能となり、オーブン調理の幅を広げることができる。また、オーブン調理容器の高さを高く確保することで、オーブン調理容器内で高温の熱気の対流が円滑に行われ、被調理物の調理性を向上させることができる。
【0014】
前記オーブン調理システムにおいて、
前記本体部材の前記底部の形状は、前記加熱手段の前記オーブン調理容器を加熱する加熱部の形状と略同形状である構成とすることができる。
【0015】
この構成により、本体部材の底部が加熱部によってムラなく全体的に加熱されるため、底部の全周囲から側壁部へ熱伝導することによって底部の温度と側壁部の温度の温度ムラを低減させることができる。従って、オーブン調理容器の均熱化を有利に達成することができ、被調理物の調理性を向上させることができる。
【0016】
前記オーブン調理システムにおいて、
前記オーブン調理容器は、無水調理が実行可能な無水調理容器である構成とすることができる。
【0017】
無水調理容器の特徴である本体部材と蓋体との間のすき間に調理容器内の蒸気が結露して形成されるウォーターシール構造を利用して、調理容器内の熱気が外部流出することを抑制できるため、このような無水調理容器は、熱気で被調理物を加熱するオーブン調理にも使用可能となる。従って、無水調理容器とオーブン調理容器とを兼用することができ、調理の幅を広げることができる。
【0018】
また、本発明に係る加熱調理器は、
前記オーブン調理システムに使用される加熱調理器であって、
当該加熱調理器は、前記加熱手段、前記底部温度検出手段、前記温度入力部、前記加熱時間入力部及び前記制御部を備えるものである。
【0019】
本加熱調理器によれば、上述したオーブン調理システムのように、前記加熱手段の上方に前記オーブン調理容器を載置させてオーブン調理を実行することが可能となる。
【0020】
また、本発明に係るオーブン調理容器は、
前記オーブン調理システムに使用されるオーブン調理容器であって、
当該オーブン調理容器は、内部に被調理物を収納可能で、本体部材と蓋体とを有して内部の閉度を高めた構造を備えるものである。
【0021】
本オーブン調理容器によれば、上述したオーブン調理システムのように、本オーブン調理容器を前記加熱手段の上方に載置させてオーブン調理を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態によるオーブン調理システムの構成を示す正面図である。
【
図2】実施形態によるオーブン調理システムの構成を示す断面図である。
【
図3】オーブン調理容器の蓋体の裏面側を示す斜視図である。
【
図4】オーブン調理容器内に被調理物載置部材を配設した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、実施形態のオーブン調理システム1は、オーブン調理容器2と加熱調理器(3)とで構成され、被調理物Fをオーブン調理容器2内に収納して、このオーブン調理容器2を加熱調理器となるガスコンロ3のコンロバーナ(加熱手段)31で加熱して被調理物Fをオーブン調理するシステムである。ガスコンロ3のコンロバーナ31は、本体上面の天板30に設けられており、天板30には、コンロバーナ31の上方にオーブン調理容器2を載置させる五徳32が配置され、コンロバーナ31の中央部には、オーブン調理容器2の底部51に接触して底部温度を検出する温度センサ(底部温度検出手段)33が上下移動可能に立設されている。また、ガスコンロ3には、コンロバーナ31の加熱量を制御する制御部(図示せず)が備えられている。なお、本発明の加熱調理器としては、ガスコンロ3に限らず、IHコンロ、電気コンロ等のように、上方に載置されたオーブン調理容器2を加熱可能な加熱手段を備える加熱調理器を使用することができる。
【0024】
図2に示すように、オーブン調理容器2は、内部に被調理物Fを収納可能とするものであり、本体部材5と蓋体6とを備える。本体部材5と蓋体6は、熱伝導性に優れたアルミニウムで形成されている。これにより、オーブン調理容器2の底部温度を検出する温度センサ33のセンシングの応答性を向上させることができ、また、オーブン調理の際に加熱制御の温度調節に対する追従性が向上し、オーブン調理容器2の温度を一定に保ち易くすることができる。また、アルミニウム製のオーブン調理容器2は軽量であり、持ち運びが容易となり利便性が向上する。本体部材5と蓋体6の表面には、セラミックコートが施されており、これにより、被調理物Fが焦げ付きにくく、且つ、調理時の汚れ等を容易に清掃することができる。なお、本体部材5には、IHコンロでの使用にも対応できるように底部51等に電磁誘導加熱物体となる金属や磁性体等を設けるようにしてもよい。また、本体部材5と蓋体6の材質は、アルミニウムに限らず、熱伝導性に優れた金属で形成することができる。
【0025】
本体部材5は、有底の円筒形状に形成されており、円形の底部51と、底部51の外周縁から立設して底部51の周囲を囲う側壁部52と、側壁部52の上端で上方が開口された開口部53とを有する。側壁部52の上部外周面には、一対の取っ手4が設けられている。底部51は、平坦な平底状に形成されており、例えば、IHコンロに載置したとき底部51が天板30上に隙間なく接地される。また、底部51の形状が円形であり、コンロバーナ31の炎孔を配設する加熱部311の形状と同形状となっているので、本体部材5の底部51がコンロバーナ31の加熱部311の炎によってムラなく全体的に加熱される。従って、底部51の全周囲から側壁部52へ熱伝導することによって底部51の温度と側壁部52の温度の温度ムラを低減させることができ、オーブン調理容器2の均熱化を有利に達成することができるため、被調理物Fの調理性を向上させることができる。なお、本体部材5は、側壁部52が寸胴な円筒形状とするものに限らず、側壁部52が上方に向かって拡径又は縮径する形状等であってもよい。
【0026】
図2、
図3に示すように、蓋体6は、厚みのある円板形状に形成されており、本体部材5の開口部53を上方から覆うように配置される。この蓋体6は、厚みを有するので蓄熱性がよく、オーブン調理容器2内に輻射熱を発することができる。蓋体6の上面中心部には、ツマミ41が取り付けられている。ツマミ41は、真鍮製、プラスチック製、木製等のような熱くなり難い材質で形成することができる。蓋体6の外周縁には、本体部材5の側壁部52の上端に配置されるフランジ部61と、フランジ部61の内側の下面に下方に突出する環状凸部62とが設けられている。蓋体6の環状凸部62を本体部材5の側壁部52の内周側に配置させ、蓋体6のフランジ部61を本体部材5の側壁部52の上端に配置させることで、蓋体6によって本体部材5の開口部53が塞がれる。この蓋体6には、オーブン調理容器2内の熱気や蒸気等を外に逃がすような貫通孔は一切設けられていない。従って、蓋体6で本体部材5の開口部53を覆うことで蓋体6のフランジ部61および環状凸部62により、オーブン調理容器2内の密閉度が高められ、オーブン調理容器2内で生成される高温の熱気が外部に漏れ出すことを抑制する抑制効果が発揮される。この高温の熱気によって被調理物Fを包み込んで外周囲からじっくり熱を加えて加熱するオーブン調理を有利に実行可能とする。
【0027】
環状凸部62の外径は、本体部材5の開口部53の内径よりも少し小径に形成されており、本体部材5の開口部53に蓋体6を配置すると、蓋体6の環状凸部62の外周面と本体部材5の内周面との間に第1のすき間71として僅かなすき間が形成される。また、フランジ部61の下面には、環状凸部62よりも低い高さで盛り上がった隆起部63が周方向に等間隔に複数(本実施形態では6つ)形成されている。これにより、本体部材5の開口部53に蓋体6を配置すると、蓋体6のフランジ部61の下面と本体部材5の側壁部52上端面との間に第2のすき間72として僅かなすき間が形成される。蓋体6の隆起部63は、オーブン調理容器2内の雰囲気が熱収縮したとき等に蓋体6が本体部材5に強固に密着することを防いで蓋体6を本体部材5から分離し易くすることができる。なお、隆起部63は、蓋体6側ではなく、本体部材5の側壁部52上端に形成してもよい。また、隆起部63は、6つ以外の複数個であってもよい。
【0028】
第1、第2のすき間71,72は、連通されており、これら第1、第2のすき間71,72には、オーブン調理容器2内の蒸気が結露して水封するウォーターシール構造7(
図2中の拡大図を参照)を形成することができる。本実施形態では、内側の第1のすき間71が約1mm、外側の第2のすき間72が約0.5mmとなるように設定されており、外側の第2のすき間72が内側の第1のすき間71よりも狭く形成されており、これにより、蒸気を第1、第2のすき間72に滞留させてウォーターシール構造7を形成し易くすることができる。また、本体部材5と蓋体6の表面にはセラミックコートが施されているため、第1、第2のすき間71,72に表面張力が有効に作用してウォーターシール構造7を形成し易くすることができる。
【0029】
ウォーターシール構造7によってオーブン調理容器2内の密閉度が更に高められるため、オーブン調理容器2内で生成される高温の熱気の外部への漏れ出しの抑制効果が更に高められる。従って、より多くの熱気によって被調理物Fを包み込んで外周囲から加熱することができる。また、ウォーターシール構造7によって蒸気をオーブン調理容器2内に閉じ込めて、この蒸気がオーブン調理容器2内で対流して被調理物Fを包み込むように焼く蒸気焼成のような加熱を行うことができる。これにより、被調理物Fの種類によっては中はやわらかく表面はパリッとした仕上がりとすることができる。
【0030】
ところで、水を入れずに被調理物Fを加熱して素材本来の旨味を逃がさないようにする無水調理に使用される無水調理容器としては、被調理物Fから発生する蒸気を調理容器内に閉じ込めて外部流出させないようすることが必要となる。本オーブン調理容器2は、ウォーターシール構造7によって被調理物Fから発生した蒸気をオーブン調理容器2内に閉じ込めることができるため、本オーブン調理容器2と無水調理容器とを兼用することができ、本オーブン調理容器2により調理の幅を広げることができる。
【0031】
本体部材5は、底部51の肉厚が側壁部52の肉厚に比べて厚くなるように形成されており、コンロバーナ31で加熱される底部51の熱が側壁部52へ早く熱伝導して側壁部52の温度上昇速度を速めることができる。これにより、底部51の温度と側壁部52の温度の温度ムラを低減させることができ、オーブン調理容器2の均熱化を有利に達成することができる。従って、オーブン調理容器2内の温度を一定に保って被調理物Fを高温状態で加熱するオーブン調理を有利に実現することができ、被調理物Fの調理性を向上させることができる。
【0032】
因みに、本発明者は、本発明のオーブン調理容器2の昇温性能を確かめるため、前記構成を備えた本発明のオーブン調理容器2において、底部51の肉厚を5mm、側壁部52の肉厚を4mmとし、材質をアルミニウム製とするものについて、ガスコンロ3のコンロバーナ31で加熱したときの昇温状態(昇温速度)を観測したところ、点火2分後には底部51の全体がムラなく昇温され、点火5分後には側壁部52も全体的にムラなく昇温されていた。比較例として、本発明のオーブン調理容器2と同じ口径サイズの円筒形状を有し、底部と側壁部の肉厚が略同じ厚さ4mmの鉄鋳物鍋について、前記同様に昇温状態を観測したところ、点火2分後では底部は部分的にしか昇温されておらず、点火5分後では底部は全体的にムラなく昇温されていたが、側壁部全体の温度はまだ低い温度状態であった。
【0033】
また、本発明のオーブン調理容器2の降温性能を確かめるため、前記本発明のオーブン調理容器2と前記比較例の鉄鋳物鍋について、2Lの水を入れ、蓋体で蓋をしてコンロバーナ31で水が沸騰(100℃)するまで加熱した後にコンロバーナ31を消火して水温の変化を観測したところ、消火5分後では、本発明のオーブン調理容器2は91.5℃、鉄鋳物鍋は91.4℃であり、消火10分後では、本発明のオーブン調理容器2は82.6℃、鉄鋳物鍋は83.4℃であった。
【0034】
前記各結果より、本発明のオーブン調理容器2は、鉄鋳物鍋と比べて昇温速度が速く且つ高い熱伝導性を有することが確認された。また、降温速度については、本発明のオーブン調理容器2と鉄鋳物鍋とでは温度変化の差は少なくほとんど変わりない結果であったことから、本発明のオーブン調理容器2は鉄鋳物鍋と同等の保温性能を有することが確認された。
【0035】
また、蓋体6には、裏面に蓋体6の輪郭と略同心の環状の突条64が2つ設けられている。これにより、オーブン調理の際、被調理物Fから出た水分が蒸気となって蓋体6の裏面に到達すると、蓋体6の裏面で水滴となり、各突条64の下端に集まってそこから滴下し易くなる。この水滴は、被調理物Fの旨味を含んで被調理物Fに降り注ぐことで被調理物Fをふっくらとジューシーに且つ豊かな香りと味を有するように仕上げることができ、オーブン調理の仕上がり品質を向上させることができる。なお、突条64の形状は、環状でなくてもよい。また、突条64の個数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0036】
オーブン調理容器2は、ガスコンロ3のコンロバーナ31で使用可能とするので、本体部材5の底部51の上面から蓋体6の下面までの距離を、例えば650mm以上とし、オーブン調理容器2内の高さを高くして内部容積を大きくすることができる。これにより、厚みのある食材(例えば、さつまいも、肉のかたまり等)でもオーブン調理が可能となり、オーブン調理の幅を広げることができる。また、オーブン調理容器2の高さを高くすることで、オーブン調理容器2内で高温の熱気の対流が円滑に行われ、被調理物Fの調理性を向上させることができる。
【0037】
また、
図4に示すように、オーブン調理容器2は、本体部材5の内部に、底部51と空隙Kを介して被調理物Fを載置することができる被調理物載置部材(被調理物載置手段)8を配置することができる。被調理物載置部材8は、
図5に示すように、ステンレス等の金属製の線材により本体部材5内の底部51の内径と略一致した大きさを有する円形状に形成されており、被調理物Fを載置させる載置部81と、載置部81を形成する線材の一部を下方に突出させた脚部82とを有する。被調理物載置部材8を本体部材5内の底部51に配設した状態では、脚部82によって載置部81と本体部材5の底部51との間に一定の空隙Kを形成することができる。
【0038】
これにより、オーブン調理の際、空隙Kによって被調理物Fをオーブン調理容器2の底面と直接接触させないようにして、被調理物Fの下側の焦げ付きを抑制することができる。従って、被調理物Fの調理性を向上させることができ、また、底部51に焦げがこびり付くこともなくオーブン調理容器2の清掃性も向上する。また、空隙Kに流れ込む熱気によって被調理物Fの下側をムラなく加熱することができる。従って、被調理物Fを全外周から高温の熱気で包み込んで均一に加熱することができ、被調理物Fの調理性を向上させることができる。調理プレートに被調理物Fを配置してオーブン調理する場合でも、調理プレートの底部を空隙Kに流れ込む熱気によって良好に加熱することができる。また、本体部材5の底部51に被調理物Fを接触させないようにするため、加熱前等の被調理物Fによって本体部材5の底部51が冷却されることなくコンロバーナ31によって本体部材5の底部51が早期に昇温され、オーブン調理容器2内に熱気を早く生成させることが可能となる。
【0039】
一方、加熱調理器であるガスコンロ3には、
図1を参照して、本体前面にコンロ操作部34が設けられており、コンロ操作部34は、加熱量調節部35と、設定部36とを備えている。加熱量調節部35は、押し操作でコンロバーナ31の点火や消火を行うことができ、回転操作によりコンロバーナ31の加熱量を任意に調節できるスイッチ等で構成されている。なお、
図1に示すガスコンロ3の本体前面には、グリル9とグリル操作部91とが設けられている。
【0040】
設定部36は、被調理物Fを加熱する目標温度を入力する温度入力部37と、被調理物Fを加熱する加熱時間を入力する加熱時間入力部38とを備えている。前記目標温度と前記加熱時間は、被調理物Fのオーブン調理を実行可能とするため、調理のレシピ等に従った調理温度と調理時間となる。例えば、グラタン料理の場合は、目標温度が200℃、加熱時間が10分などである。設定部36は、目標温度や加熱時間の入力を行うスイッチと、これら入力値を表示する表示部39とで構成されており、使用者はスイッチの操作によって前記目標温度と前記加熱時間とを任意に設定することができる。なお、設定部36は、スイッチと表示部39を備えたタッチパネルで構成したものでもよい。また、設定部36は、オーブン調理用のボタンを設け、このボタンの操作によってオーブン調理メニューの中から目的の調理を選択して入力することで前記目標温度と前記加熱時間とが同時に自動設定される構成を備えるようにしてもよい。
【0041】
ガスコンロ3は、コンロバーナ31の加熱量を制御する制御部(図示せず)を備えている。コンロバーナ31には、燃料のガスを供給するガス供給路(図示せず)が接続されており、ガス供給路には、コンロバーナ31へのガスの供給量を調節するための流量調節弁(図示せず)、ガス供給路を開閉する開閉弁(図示せず)が設けられている。流量調節弁の開度調節によりコンロバーナ31へのガスの供給量が調節されてコンロバーナ31の加熱量が小火、中火、大火等に調節され、開閉弁を閉じることでコンロバーナ31へのガスの供給が停止されてコンロバーナ31は消火される。制御部は、これら流量調節弁、開閉弁と制御可能に接続されており、また、温度センサ33とも検出値を入手可能に接続され、さらに、コンロ操作部34とも接続されている。
【0042】
この制御部は、オーブン調理容器2を用いてコンロバーナ31でオーブン調理を可能とするための加熱制御を実行する構成を備えている。前記加熱制御は、温度入力部37で入力された目標温度と温度センサ33で検出されたオーブン調理容器2の底部温度とに基づいて、検出された底部温度が第1所定条件を満たすとコンロバーナ31の出力を減少させる出力減少制御と、この出力減少制御の実行後において検出された底部温度が第2所定条件を満たすとコンロバーナ31の出力を増加させる出力増加制御とを繰り返し実行して、オーブン調理容器2内の被調理物Fが目標温度又は目標温度付近に保たれるように温度調節を行う加熱制御を、加熱時間入力部38で入力された加熱時間に到達するまで実行する制御構成を有する。
【0043】
前記第1所定条件は、前記目標温度に対応した所定第1温度まで上昇した場合であり、前記第2所定条件は、前記目標温度に対応した所定第2温度まで下降した場合である。前記所定第1温度は、例えば、前記目標温度よりも高い温度を設定することができ、前記所定第2温度は、例えば、前記目標温度よりも低い温度を設定することができる。前記加熱制御は、例えば、コンロバーナ31を点火すると中火で加熱を開始し、温度センサ33で検出する底部温度が所定第1温度まで上昇すると出力減少制御により中火から小火に切り替えて加熱を行い、次に温度センサ33で検出する底部温度が第2温度まで下降すると出力増加制御により小火から中火に切り替えて加熱を行うというコンロバーナ31の加熱制御を、前記加熱時間に到達するまで繰り返し実行する。これにより、オーブン調理容器2内の被調理物Fは、オーブン調理で必要となる前記目標温度又は前記目標温度付近に保った状態で前記加熱時間の間継続して加熱されることとなり、目的のオーブン調理を好適に実行することができる。
【0044】
なお、前記所定第1温度および前記所定第2温度は、温度センサ33が検出する底部温度の上昇勾配または下降勾配によって変化させるようにしてもよい。例えば、温度センサ33で検出する底部温度の上昇勾配が基準よりも大きい場合は所定第1温度を初期設定の基準温度値よりも低く設定し、また、温度センサ33で検出する底部温度の下降勾配が基準よりも大きい場合は所定第2温度を初期設定の基準温度値よりも高く設定することができる。この場合、所定第1温度は前記目標温度よりも低くなってもよく、また、所定第2温度は前記目標温度よりも高くなってもよい。これにより、被調理物Fの調理の進み具合等に応じてオーブン調理容器2の温度変動が少ない状態で目標温度を保つように加熱制御することができる。
【0045】
また、前記所定第1温度および前記所定第2温度は、コンロバーナ31を点火して最初の出力減少制御および/または出力増加制御を実行する作動温度と、2回目以降の出力減少制御および/または出力増加制御を実行する作動温度とを異なるように設定してもよい。例えば、コンロバーナ31点火後の最初の出力減少制御を実行する作動温度となる所定第1温度は初期設定の基準温度値よりも高く設定するようにし、2回目以降の出力減少制御を実行する作動温度となる所定第1温度は初期設定の基準温度値を設定するようにしてもよい。また、コンロバーナ31点火後の最初の出力増加制御を実行する作動温度となる所定第2温度は初期設定の基準温度値よりも高く設定するようにし、2回目以降の出力増加制御を実行する作動温度となる所定第2温度は初期設定の基準温度値を設定するようにしてもよい。これにより、加熱前の被調理物Fやオーブン調理容器2が冷えているような場合にオーブン調理容器2を早期に昇温させて目標温度にいち早く保持させるようにすることができる。
【0046】
以上の構成の本オーブン調理システム1によってオーブン調理を行う際には、被調理物Fを本体部材5内に収納し本体部材5の開口部53を蓋体6で閉じたオーブン調理容器2を、ガスコンロ3の五徳32上に載置させ、コンロ操作部34でオーブン調理の目標温度と加熱時間を入力して、コンロバーナ31を点火して上方のオーブン調理容器2を加熱する。オーブン調理容器2の内部は、蓋体6によって密閉度が高くなっている。また、ガスコンロ3での加熱制御により、オーブン調理容器2は、目標温度または目標温度付近に保つように温度調節されて加熱時間に到達するまで加熱される。これにより、密閉度の高いオーブン調理容器2内で生成された熱気はオーブン調理容器2外に漏れ出すことなくオーブン調理容器2内が高温の熱気で満たされ、且つ、ガスコンロ3によるコンロバーナ31の加熱制御によりオーブン調理容器2内の温度が一定温度に保たれる。従って、オーブン調理容器2内の被調理物Fを高温の熱気で包み込んで略全外周からじっくり熱を加えてオーブン調理を行うことができる。
【0047】
このように、本実施形態のオーブン調理システム1によれば、オーブン調理容器2とガスコンロ3の加熱制御との組み合わせにより構成するため、オーブンレンジ等のように加熱庫を備えた加熱調理器を必要とすることなく、ガスコンロ3のコンロバーナ31の上方にオーブン調理容器2を載置させてオーブン調理を実行することが可能となる。また、オーブン調理容器2は、単独で移動可能であるから、簡単に持ち運んでガスコンロ3のコンロバーナ31の上方に載置させてオーブン調理を行うことができる。よって、利便性がよく、ガスコンロ3のコンロバーナ31で手軽にオーブン調理を行うことができる。
【0048】
ところで、オーブン調理に使用されるオーブンレンジ等のように加熱庫を備えた加熱調理器は、オーブン調理を行った際、加熱庫内に収納された被調理物Fから脂などが加熱庫内に飛散して、加熱庫の内壁面に付着してしまうと、それを除去するための清掃が行い難く、使用者は、清掃に煩わしさを感じてしまうという課題がある。
【0049】
この点、本実施形態のオーブン調理システム1によれば、オーブン調理を行って被調理物Fから脂などが飛散してしまっても、被調理物Fを収納する前記加熱庫に相当するオーブン調理容器2は、持ち運びが可能であるから、オーブン調理容器2を移動させて流し台で容易に清掃することができるため、使用者は、清掃に対する煩わしさを解消することができ、清掃性にも優れているという有利性がある。
【0050】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で様々な変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 オーブン調理システム
2 オーブン調理容器
3 ガスコンロ(加熱調理器)
4 取っ手
5 本体部材
6 蓋体
7 ウォーターシール構造
8 被調理物載置部材
9 グリル
30 天板
31 コンロバーナ
32 五徳
33 温度センサ(底部温度検出手段)
34 コンロ操作部
35 加熱量調節部
36 設定部
37 温度入力部
38 加熱時間入力部
39 表示部
41 ツマミ
51 底部
52 側壁部
53 開口部
61 フランジ部
62 環状凸部
63 隆起部
64 突条
71 第1のすき間
72 第2のすき間
81 載置部
82 脚部
91 グリル操作部
311 加熱部
F 被調理物
K 空隙