(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094708
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】電着フォトレジスト塗膜の剥離方法
(51)【国際特許分類】
C25D 13/00 20060101AFI20230629BHJP
C25F 1/00 20060101ALI20230629BHJP
G03F 7/42 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C25D13/00 307F
C25F1/00 Z
G03F7/42
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210168
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000111591
【氏名又は名称】ハニー化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高曲 賢治
(72)【発明者】
【氏名】前田 和文
【テーマコード(参考)】
2H196
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196BA01
2H196GA08
2H196JA04
2H196LA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、電着フォトレジスト塗膜が金属部の表面に形成されている被処理物において、電着フォトレジスト塗膜を金属表面から、短時間で剥離することができ、一旦剥離して電解剥離処理に漂った電着レジスト片が金属表面に再付着することを低減でき、金属表面の変色を抑制することができる、剥離方法を提供することを課題とする。
【解決手段】電着フォトレジスト塗膜が金属部の表面に電着されている被処理物において、該電着フォトレジスト塗膜を該金属部の表面から電解剥離するための、電着フォトレジスト塗膜剥離方法であって、該被処理物を、水を含有する水系の剥離液に浸漬して、該被処理物の該金属部に電流密度が0.5~45A/dm
2になるように電圧を印加し、該剥離液に含有される水を電気分解して、電着フォトレジスト塗膜と該金属部との界面に気体を発生させて、該電着フォトレジスト塗膜を該金属部から剥離することを特徴とする、電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電着フォトレジスト塗膜が金属部の表面に電着されている被処理物において、該電着フォトレジスト塗膜を該金属部の表面から電解剥離するための、電着フォトレジスト塗膜剥離方法であって、
該被処理物を剥離液に浸漬して、該被処理物の該金属部に電圧を印加し、
該印加は、電流密度が0.5~45A/dm2になるように電圧を調整し、
該剥離液は、水を含有する水系の剥離液であり、
該剥離液に含有される水を電気分解して、電着フォトレジスト塗膜と該金属部との界面に気体を発生させて、該電着フォトレジスト塗膜を該金属部から剥離する
ことを特徴とする、電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
【請求項2】
前記剥離液は、少なくとも、水、有機溶剤、水溶性の有機酸、および水溶性の界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
【請求項3】
前記有機溶剤は、少なくとも、1種または2種以上の有機溶剤を含有することを特徴とする、請求項2に記載の電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
【請求項4】
前記有機溶剤は、少なくとも、芳香族アルコール系有機溶剤、グリコール系有機溶剤、グリコールモノエーテル系有機溶剤からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項2または3に記載の電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
【請求項5】
前記有機溶剤は、ベンジルアルコール/エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル、ベンジルアルコール/エチレングリコール、ベンジルアルコール/プロピレングリコールモノプロピルエーテル、またはエチレングリコールモノフェニルエーテル/エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテルの、質量比が20/80~80/20の混合物であることを特徴とする、請求項2~4の何れか1項に記載の電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
【請求項6】
前記有機酸は、少なくとも、1種または2種以上の、炭素数が10以下のカルボン酸類またはジカルボン酸類を含有することを特徴とする、請求項2~5の何れか1項に記載の電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
【請求項7】
前記界面活性剤は、少なくとも、陰イオン系界面活性剤、および/または非イオン系界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載の電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
【請求項8】
該印加は、該被処理物の該金属部を陰極にして行うことを特徴とする、請求項1~7の何れか1項に記載の電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
【請求項9】
前記電着フォトレジスト塗膜が、ポジ型カチオン性電着フォトレジスト、ネガ型カチオン性電着フォトレジスト、ポジ型アニオン性電着フォトレジスト、ネガ型アニオン性電着フォトレジストからなる群から選ばれる1種の電着フォトレジストから形成されていることを特徴とする、請求項1~8の何れか1項に記載の電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電着フォトレジスト塗膜が金属部の表面に電着されている被処理物において、該フォトレジスト塗膜を該金属部の表面から電解剥離するための、電着フォトレジスト塗膜剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リードフレーム、バスバー、電子回路基板などを部分めっきする際には、フォトレジストをめっきマスキング剤として用いることができる。
その中でも、電着フォトレジストを用いた電着法が、めっき漏れを抑えられる点で、他のフォトレジストに比べて、基材への密着性や、基材の表裏および側面に対する付き回り性が有利であり、均一なフォトレジスト塗膜を形成が出来る。
ネガ型電着フォトレジストは電子部品のリードフレームやバスバー用途や水晶デバイス用途などで広く用いられており、使用する用途により様々なタイプのネガ型電着フォトレジストが使い分けられているが、電子回路基板のさらなる微細化に伴い、高耐めっき薬品性、耐エッチング性が求められ金属表面との高密着性への要望が高い。
【0003】
金属表面との高い密着性が要求される一方で、電着フォトレジスト塗料はめっき処理を施した後に電着フォトレジスト塗膜を剥離する工程を含み、良好な剥離性を有することも求められる。従来、この剥離工程では溶剤や酸乃至アルカリを有した水系剥離剤が使用されており、剥離剤への浸漬乃至スプレー処理などで剥離している。しかしながら、電着フォトレジストと金属表面との高い密着性により、これらの処理では完全に剥離されずに金属表面上に電着フォトレジストが残留し、残留した電着フォトレジスト塗膜に起因する不良品が発生する。また、浸漬やスプレーによる処理では、剥離する際に硬化膜が被膜のまま剥離することがあるため、剥離した被膜が剥離液中に漂い、それが再付着することがあり、リードフレーム製品等の品質が損なわれる場合もあった。
【0004】
レジスト剥離に関する従来の技術においては、レジストを構成する樹脂中に基材との離型性に優れるシリコン含有レジストを用いる手法(特許文献1)や、有機溶剤に容易に溶解するポリマーを用いることで、溶解剥離を促進させる方法(特許文献2)が挙げられる。
また、アルカリ金属の水酸化物及びアミンを含有するアルカリ性の剥離液中にて通電を行うことで樹脂の剥離を促進させる手法(特許文献3)や、塗膜と基材との間に電極を挿入させ、挿入した電極に通電することで塗膜を剥離する工具を用いる手法(特許文献4)といった、レジスト組成を変更することなく、塗膜を剥離させる方法も用いられている。
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載のようなレジストの組成に変更すると、耐めっき液耐性や基材との密着性が低下する恐れがある。また、特許文献3に記載のようなアルカリ性の剥離液はカチオン性のネガ型フォトレジスト電着塗膜では剥離性が劣るので用いることが出来ない。更に、特許文献4に記載のような工具は、細い部分を有する金属基材を容易に変形させる恐れがある。
【0005】
以上のように、金属表面との密着性が良好なネガ型電着フォトレジスト塗膜を、レジスト剥離工程において処理基材を変形させることなく良好に電着フォトレジストを剥離する手法はこれまでに提供されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4793791号公報
【特許文献2】特開2014-011297号公報
【特許文献3】特開2001-164400号公報
【特許文献4】特開2020-200385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来技術における問題を解決したものであり、電着フォトレジスト塗膜が金属部の表面に形成されている被処理物において、電着フォトレジスト塗膜を金属表面から、短時間で剥離することができ、一旦剥離して電解剥離処理に漂った電着レジスト片が金属表面に再付着することを低減でき、金属表面の変色を抑制することができる、剥離方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、剥離液に浸漬された被処理物に特定の印加を行って、剥離液に含有される水を電気分解して泡を発生させて電着フォトレジスト塗膜を電解剥離することにより、上記問題を克服できることを見出して、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.電着フォトレジスト塗膜が金属部の表面に電着されている被処理物において、該電着フォトレジスト塗膜を該金属部の表面から電解剥離するための、電着フォトレジスト塗膜剥離方法であって、
該被処理物を剥離液に浸漬して、該被処理物の該金属部に電圧を印加し、
該印加は、電流密度が0.5~45A/dm2になるように電圧を調整し、
該剥離液は、水を含有する水系の剥離液であり、
該剥離液に含有される水を電気分解して、電着フォトレジスト塗膜と該金属部との界面に気体を発生させて、該電着フォトレジスト塗膜を該金属部から剥離する
ことを特徴とする、電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
2.前記剥離液は、少なくとも、水、有機溶剤、水溶性の有機酸、および水溶性の界面活性剤を含むことを特徴とする、上記1に記載の電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
3.前記有機溶剤は、少なくとも、1種または2種以上の有機溶剤を含有することを特徴とする、上記2に記載の電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
4.前記有機溶剤は、少なくとも、芳香族アルコール系有機溶剤、グリコール系有機溶剤、グリコールモノエーテル系有機溶剤からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記2または3に記載の電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
5.前記有機溶剤は、ベンジルアルコール/エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル、ベンジルアルコール/エチレングリコール、ベンジルアルコール/プロピレングリコールモノプロピルエーテル、またはエチレングリコールモノフェニルエーテル/エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテルの、質量比が20/80~80/20の混合物であることを特徴とする、上記2~4の何れかに記載の電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
6.前記有機酸は、少なくとも、1種または2種以上の、炭素数が10以下のカルボン酸類またはジカルボン酸類を含有することを特徴とする、上記2~5の何れかに記載の電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
7.前記界面活性剤は、少なくとも、陰イオン系界面活性剤、および/または非イオン系界面活性剤を含むことを特徴とする、上記1~6の何れかに記載の電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
8.該印加は、該被処理物の該金属部を陰極にして行うことを特徴とする、上記1~7の何れかに記載の電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
9.前記電着フォトレジスト塗膜が、ポジ型カチオン性電着フォトレジスト、ネガ型カチオン性電着フォトレジスト、ポジ型アニオン性電着フォトレジスト、ネガ型アニオン性電着フォトレジストからなる群から選ばれる1種の電着フォトレジストから形成されている
ことを特徴とする、上記1~8の何れかに記載の電着フォトレジスト塗膜剥離方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電着フォトレジスト塗膜が金属部の表面に形成されている被処理物において、電着フォトレジスト塗膜を金属表面から、短時間で剥離することができ、一旦剥離して電解剥離処理に漂った電着レジスト片が金属表面に再付着することを低減でき、金属表面の変色を抑制することができる、電着フォトレジスト塗膜の剥離方法を提供することができる。
また、本発明の電着フォトレジスト塗膜の剥離方法は、ポジ型カチオン性電着フォトレジスト、ネガ型カチオン性電着フォトレジスト、ポジ型アニオン性電着フォトレジスト、ネガ型アニオン性電着フォトレジストからなる電着フォトレジスト塗膜の何れにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の電着フォトレジスト塗膜剥離方法における、電流密度プロファイルの一例である。
【
図2】本発明の電着フォトレジスト塗膜剥離方法における、別態様の電流密度プロファイルの一例である。
【
図3】本発明の実施例で作製された現像済み電着フォトレジスト塗膜のパターンの概略図である。
【
図4】本発明の電着フォトレジスト塗膜の電解剥離装置の概略図である。
【0011】
各図においては、解り易くする為に、部材の大きさや比率を変更または誇張して記載することがある。また、見易さの為に説明上不要な部分や繰り返しとなる符号は省略することがある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<被処理物>
本発明において、電着フォトレジスト塗膜が金属表面から剥離される被処理物は、例えば、金属からなるリードフレームやバスバー、プリント基板、ネクター端子等の微細加工用途の電子部品や、導電性を有する微細加工用途の部品などを形成する部材で、表面に電着フォトレジストの塗膜が形成されているものである。
リードフレームやバスバーの用途には、微細加工部の配線の線幅が15~100μm、解像度がL/S=15μm/15μm~100μm/100μmのものにも、本発明の電解剥離方法を適用することができる。
被処理物の基材は導電性を有し、電着フォトレジスト塗膜の電着、露光、現像、めっき又はエッチング等の工程に耐えられるものが好ましい。
基材の金属部に含有される金属種としては、電着フォトレジスト塗膜を形成し得る金属であれば特に制限は無いが、銅やステンレスが好ましい。
【0013】
<電解剥離条件>
本発明の電解剥離方法は、水の電気分解によるガス発生を利用した、電着フォトレジスト塗膜の剥離方法である。
したがって、該電解剥離方法は、水の電気分解における諸条件を備える。
本発明の電解剥離方法は、例えば、
図4の概略図に示された装置で行われる。
[陰極及び陽極]
本発明の電解剥離方法においては、電着フォトレジストが電着されている基材(被処理物)を剥離液中に浸漬し、電着フォトレジストが電着されている金属部を、陰極または陽極として用いて、電解による電着フォトレジスト塗膜の剥離を行うことが好ましい。
被処理物の金属部の対極には、ステンレス板等を用いることが好ましい。
被処理物の金属部を陽極として用いた場合には該金属部が酸化による変色を生じ易いため、被処理物の金属部を陰極として用いることが好ましい。
但し、金属部の酸化や変色は、後処理で元に戻すことが可能である為、被処理物の用途等に応じて被処理物の金属部の極性を選択することができる。
【0014】
[電流密度]
本発明の電解剥離方法における電圧の印加は、剥離液に含有される水を電気分解して、十分な量のガスを発生する為に、電流密度を十分に高くすることによって大量のガスを発生して、本発明の電解剥離方法による電着フォトレジスト塗膜の剥離時間を短くすることができる。
適切な電流密度は被処理物の大きさや素材、電着フォトレジスト塗膜のパターン等によって異なるが、電流密度は、好ましくは0.3~45A/dm2、より好ましくは0.5~30A/dm2、更に好ましくは0.5~20A/dm2になるように、印加電圧を調節して行うことが好ましい。
【0015】
電流密度の調節操作は、通電と同時に上記電流密度になるように電圧をかける、
図1に示されたプロファイルのようなハードスタート、あるいは徐々に上記電流密度を上げていく、
図2に示されたプロファイルのようなソフトスタートのいずれでもよい。
電着フォトレジスト塗膜のパターンが細く複雑な場合には、ソフトスタートが好ましい場合がある。
【0016】
電流密度が上記範囲よりも小さいと、水の電気分解量が不十分で印加した効果が不十分になり易い。
電流密度の上限は電着フォトレジスト塗膜の種類や被処理物の素材構成等によって異なるが、上記範囲より大きいと、均一な剥離が困難になるおそれや、被処理物が劣化や変色を生じるおそれがある。
但し、ソフトスタートで電流密度を調節して、上記範囲より大きい電流密度で印加する時間を短くすることによって、上記範囲より大きい電流密度でも、剥離の均一化や、被処理物の劣化軽減が可能である。
【0017】
上記の電流密度を得る為の印加電圧は、特に制限は無いが、30V以上、100V以下が好ましい。印加電圧が上記範囲よりも低いと十分な電解剥離を行うこと及び上記の電流密度を安定して得ることが困難な場合があり、印加電圧が上記範囲よりも高いと被処理物が劣化や変色を生じるおそれや、上記の電流密度を安定して得ることが困難になるおそれがある。
【0018】
電圧の印加は電着フォトレジスト塗膜が剥離するまで行われる。
本発明の電解剥離法を用いた電着フォトレジスト塗膜剥離方法によれば、通常の電圧を印加しない場合よりも約2/3~1/2の剥離時間で電着フォトレジスト塗膜を被処理物の金属部から剥離することが可能であり、また、剥離液温度を上昇させなくても短時間で剥離することができる。
電解時間に特に制限は無いが、生産性の面からは、10~60秒が好ましく、10~30秒がより好ましい。
【0019】
<剥離液>
本発明における電解剥離は、水を電気分解して気体の泡を発生させる為に、剥離液は水を含有する水系の剥離液であることが好ましい。電着フォトレジスト塗膜に浸透した水が金属表面で電気分解されて、電着フォトレジスト塗膜と金属表面との間に水素ガスまたは酸素ガスの泡を発生させて、電着フォトレジスト塗膜を金属表面から剥離することができる。
水の電気分解において被処理物の金属部に発生するガスは、該金属部が陰極の場合には水素ガスであり、該金属部が陽極の場合には酸素ガスである。
【0020】
また、本発明における剥離液は、電着フォトレジスト塗膜を膨潤させて剥離し易くするために、有機溶剤を含有することが好ましい。
さらに、剥離液に導電性を付与して水の電気分解を促進し、かつ剥離界面の結合の切断を促進するために、本発明における剥離液は、水溶性の有機酸を含有することが好ましい。
またさらに、剥離し始めた界面の剥離が拡大し易いように、かつ剥離片の再付着を抑制する為に、本発明における剥離液は、水溶性の界面活性剤を含有することが好ましい。
すなわち、本発明における剥離液は電気分解のための水を含有するものであり、さらに、有機溶剤、水溶性の有機酸、水溶性の界面活性剤からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することが好ましい。
【0021】
剥離液は、脱イオン水等の水に、有機溶剤、有機酸、界面活性剤を添加して混合し、均一化することによって得ることができる。混合する順序は、例えば、使用する水を二分し、一方に有機溶剤および界面活性剤を加え、撹拌機などで十分に攪拌し均一化する。もう一方には有機酸を加え、こちらも十分に攪拌し均一化する。その後に、これら2液を混合し、十分に攪拌し均一化することによって得ることができる。
剥離液が有機溶剤を含有する場合の、水1Lに対する有機溶剤の含有量は、100~180質量部が好ましく、120~150質量部がより好ましい。上記範囲よりも少ないと含有した効果が発揮され難い。上記範囲よりも多いと水洗工程での洗浄が不十分になって、被処理物の金属部の変色を引き起こすおそれがある。
剥離液が有機酸を含有する場合の、水1Lに対する有機酸の含有量は、8~20質量部が好ましく、10~15質量部がより好ましい。上記範囲よりも少ないと含有した効果が発揮され難い。上記範囲よりも多いと基材の酸化変色を引き起こすおそれがある。
剥離液が界面活性剤を含有する場合の、水1Lに対する界面活性剤の含有量は、7~25質量部が好ましく、10~20質量部がより好ましい。上記範囲よりも少なくても多くても、界面活性剤の効果が発揮され難い。
【0022】
剥離液は水酸化ナトリウム等の金属水酸化物を含有しないことが好ましい。
金属水酸化物が剥離液に含有されていると、剥離液がアルカリ性になって被処理物に加水分解等の劣化を生じるおそれがある。また、剥離液を電気分解する際に、陰極では、水の電気分解よりも先に、金属の析出による被処理物の金属部の劣化、変色が生じる。
【0023】
[有機溶剤]
剥離液に含まれる有機溶剤としては、脂肪族アルコール系有機溶剤、フェノール系有機溶剤、芳香族アルコール系有機溶剤、グリコール系有機溶剤、グリコールモノエーテル系有機溶剤、アミド系有機溶剤、エステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤等を用いることができるが、これらに限定されない。
本発明においては、有機溶剤は、これらからなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することができる。
上記の中でも、芳香族アルコール系有機溶剤、グリコール系有機溶剤、グリコールモノエーテル系有機溶剤からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することが好ましい。
【0024】
脂肪族アルコール系有機溶剤の具体例としては、2-エチルヘキサノール等が挙げられる。
フェノール系有機溶剤の具体例としては、フェノール等が挙げられる。
芳香族アルコール系有機溶剤の具体例としては、ベンジルアルコール、フェニチルアル
コール等が挙げられる。
グリコール系有機溶剤の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。
【0025】
グリコールモノエーテル系有機溶剤の具体例としては、エチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
【0026】
アミド系有機溶剤の具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、3-メチル-N,N-ジメチルプロパンアミド等が挙げられる。
エステル系有機溶剤の具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピレングリコールメチルエチルアセテート等が挙げられる。
ケトン系有機溶剤の具体例としては、アセチルアセトン等が挙げられる。
【0027】
上記の中でも、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテルからなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することが好ましい。
【0028】
また、上記の有機溶剤を2種以上組み合わせて用いることで、電着フォトレジスト塗膜の剥離時間をさらに短縮したり、電着フォトレジスト塗膜の剥離片の再付着をさらに抑制したりできる。
2種の有機溶剤の好ましい組み合わせとしては、芳香族アルコール系有機溶剤/グリコールモノエーテル系有機溶剤、芳香族アルコール系有機溶剤/グリコール系有機溶剤、グリコールモノエーテル系有機溶剤/グリコールモノエーテル系有機溶剤の組み合わせが好ましく、組み合わせる質量比は、20/80~80/20が好ましく、30/70~70/30がより好ましく、40/60~60/40が更に好ましい。
さらに具体的な組み合わせとしては、ベンジルアルコール/エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル=質量比50/50の組み合わせ、ベンジルアルコール/エチレングリコール=質量比50/50の組み合わせ、ベンジルアルコール/プロピレングリコールモノプロピルエーテル=質量比50/50の組み合わせ、エチレングリコールモノフェニルエーテル/エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル=質量比50/50の組み合わせが好ましい。
【0029】
[有機酸]
剥離液に含まれる好ましい有機酸としては、剥離液が水を多く含有することから、水溶性の有機酸が好ましく、少なくとも、1種または2種以上の、炭素数が10以下のカルボン酸類またはジカルボン酸類を含有することが好ましい。ヒドロキシカルボン酸類、ジヒドロキシカルボン酸類等の、水酸基を有するカルボン酸類またはジカルボン酸類も上記に含まれる。
有機酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、酒石酸、吉草酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの有機酸の2種以上を混合して用いてもよい。
上記の中でも、ギ酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸がより好ましい。
【0030】
[界面活性剤]
界面活性剤は、電着フォトレジスト塗膜への剥離液成分の浸透を促す浸透作用や、電着フォトレジスト塗膜と金属との界面の密着性を低減する作用によって、電着フォトレジスト塗膜の剥離を促進する。
剥離液が多量の水を含有することから、界面活性剤は水溶性のものが好ましく、さらに、電解剥離処理後の被処理物から剥離液を水洗浄除去し易いように、水洗性を付与するものが好ましい。
上記のような、浸透作用、密着性を低減する作用、水溶性、水洗性付与等を有する界面活性剤であるならば、本発明の電着フォトレジスト塗膜における剥離液に含有される界面活性剤として好ましい。
また、界面活性剤は、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤に大別されるが、陰イオン系界面活性剤および非イオン系面活性剤がより好ましく、非イオン系が更に好ましい。
陽イオン系界面活性剤は、陰イオン系界面活性剤または非イオン系界面活性剤よりも、電着フォトレジスト塗膜の剥離を促進する効果が劣る傾向が有り、剥離時間の短縮効果が小さい。また、陽イオン系界面活性剤を用いた場合には、被処理物の金属表面が陽イオン系界面活性剤を吸着して変色を生じるおそれがある。
【0031】
<電着フォトレジスト塗膜>
電着フォトレジスト塗膜は、リードフレームやバスバーなどを部分めっきやパターニングする際の各種リソグラフィー工程において電着形成されるマスキング膜(めっきレジスト膜、エッチングレジスト膜)であり、カチオン性またはアニオン性の感光性樹脂を含有するフォトレジストから形成される。
電着塗装とは、塗装対象基材を、カチオン性またはアニオン性フォトレジストを含有する電着液の中に浸漬し、電気を流して、該電着液中のカチオン性またはアニオン性感光性樹脂を電気泳動によって基材の導電部上に均一に塗装する方法である。
例えば、基材の金属部を陰極にして電気を流すと、陽イオンを有するカチオン性感光性樹脂微粒子は陰極に移動し、陰極から電荷を得ることで電荷を失い、塗膜として析出する。
カチオン性感光性樹脂微粒子間の析出が進行するにつれて、水分は電着液中にはじき出されて、強固な塗膜が形成される。
電着塗装は、スプレー塗装やコーター方式では塗装の難しい場所、複雑な形状や曲面にでも塗膜を形成することができる塗装方法であり、得られる電着塗膜は、膜厚が均一で、密着性、耐腐食性に優れる。
【0032】
感光性樹脂を含有するフォトレジストは、導電性の基材上に塗膜を形成後に光照射(露光)され、次いで現像され、洗浄後に不溶部分が残ることで、フォトレジストの有無パターンを形成することができるが、現像によって露光した部分が残るか溶解するかによって、ネガ型フォトレジストまたはポジ型のフォトレジストに分類される。
ネガ型フォトレジストは、露光された箇所が現像液に対して溶解性が低下し、現像によって露光した部分が残るタイプのフォトレジストであり、ポジ型フォトレジストは露光された箇所が現像液に対して溶解性が増大し、現像によって露光されなかった部分が残るタイプのフォトレジストである。
【0033】
均一で高密着なレジスト塗膜を得る為には、上記の様に、カチオン性またはアニオン性フォトレジストを用いて、電着法によってレジスト塗膜を形成することが好ましいが、得られた電着フォトレジスト塗膜は、塗膜の粘着性に起因して、基材表面からの剥離不良や、剥離した塗膜片が基材表面に再付着する不具合を生じやすく、特に、ネガ型電着フォトレジストは該不具合を生じやすい傾向が有る。
しかしながら、本発明の電着フォトレジスト塗膜剥離方法は、電着フォトレジスト塗膜が、ポジ型カチオン性電着フォトレジスト、ネガ型カチオン性電着フォトレジスト、ポジ
型アニオン性電着フォトレジスト、ネガ型アニオン性電着フォトレジストの何れから形成されたものであっても、電着フォトレジスト塗膜を基材の金属表面から短時間で容易に剥離することができ、且つ剥離した塗膜片が基材表面に再付着することを抑制することができる。
【0034】
電着フォトレジスト塗膜の厚さは、特に制限は無いが、3μm以上、50μm以下が好ましく、5μm以上、25μm以下がより好ましい。上記範囲よりも薄いと照射光の遮断性が不十分になるおそれがある為に電着フォトレジストとして実用的ではない。また、上記範囲よりも厚いとパターニング解像度の低下と均一な塗膜厚を形成することが困難であり、工程上実用的ではない。また、剥離時間が長くなる。
【0035】
≪ネガ型カチオン性電着フォトレジストを用いた工程例≫
[電着フォトレジスト塗膜の形成]
ネガ型カチオン性電着フォトレジスト塗膜の電着条件は、用いるネガ型カチオン性電着フォトレジストに適した電着条件を適用することが好ましい。
例えば、通電工程において、ネガ型カチオン性電着フォトレジスト電着液の温度を25~50℃、好ましくは30~45℃とし、被塗装物の基材の金属部を陰極として該電着液に浸漬して、印加電圧を15~250V、好ましくは60~180V、通電時間を5~180秒、好ましくは10~60秒とした電着条件が挙げられる。
印加電圧は通電と同時に設定電圧をかけるハードスタート、あるいは徐々に設定電圧まで上げていくソフトスタートのいずれでもかまわない。
電着塗装された被塗装物は水洗、次いで乾燥されて、塗膜中の水分や溶剤成分を除去することができる。
【0036】
[露光]
水分や溶剤成分が除去されたネガ型カチオン性電着フォトレジスト塗膜に、例えば紫外線を照射して露光することができる。
紫外線光源としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、波長365nm又は385nm発光のLED等のいずれでもかまわない。露光のための光量は50mJ/cm2~800mJ/cm2が好ましい。生産性向上の観点からは、50~250mJ/cm2が好ましい。
露光はマスクパターン越しに行い、所定のパターンを塗膜に焼き付ける。また、パターンの解像度を上げるために、マスクパターンは直接塗膜に接触させる方が好ましい。
【0037】
[現像]
露光された塗膜は、有機酸系等の現像液により現像され、未露光部分が溶解除去される。現像液は、ギ酸、酢酸、乳酸等の有機酸を1~5%程度の水溶液にしたものを、20℃~50℃の範囲で、好ましくは35~45℃の範囲で使用することが好ましい。
また、現像液に非イオン性界面活性剤を添加して、現像時間を短縮することが出来る。
カチオン性電着フォトレジスト電着液の場合には、上記の様に有機酸系等の現像液が用いられるが、アニオン性電着フォトレジスト電着液の場合には、アミン又は炭酸ナトリウムやメタケイ酸ナトリウムなどの塩基を0.5~3%程度の水溶液した現像液を、20℃~50℃の範囲で、好ましくは25~35℃の範囲で使用することが好ましい。
【0038】
[めっき、エッチング]
現像後に、被塗装物に対して、めっき処理やエッチング処理が行われる。
【0039】
[電着フォトレジスト塗膜の電解剥離]
めっき処理やエッチング処理の終了後に、本発明の電着フォトレジスト塗膜剥離方法によって、電着フォトレジスト塗膜を剥離除去する。
例えば、電解剥離工程において、例えば
図4に示された装置を用いて、剥離液の温度を25~60℃、好ましくは30~55℃とし、被塗装物の金属部を陰極として該剥離液に浸漬して、SUS304ステンレス板を陽極として構成して、電流密度が0.5~45A/dm
2になるように電圧を調節して印加して、7~30秒間通電して、電解剥離処理を行うことができる。
【0040】
[洗浄・乾燥]
電解剥離処理が終了した被塗装物を、脱イオン水等で洗浄し、オーブン等を用いて、40~70℃で乾燥することができる。
【0041】
以下に、本発明の効果を実施例によって説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例0042】
[原料]
本発明の実施例に用いられた主な原料や資材は下記のとおりである。
・銅板1:太佑機材(株)社製、C1100。50mm×50mm×0.2mm厚。
・硫酸水溶液1:濃度100g/Lの硫酸水溶液。
・電着フォトレジスト希釈液1:ハニー化成(株)社製ネガ型カチオン性電着フォトレジスト液のハニレジストE-2000(加熱残分15質量%)に、脱イオン水を加えて、加熱残分を10質量%に調整した希釈液。
・現像液1:ハニー化成(株)社製、ハニレジストDEV-1を4wt%に希釈した現像液。
・銀めっき液1:日本高純度化学製、セレナブライトC。
・非イオン系界面活性剤1:第一工業製薬(株)社製、ノイゲンEAー157。
・陰イオン系界面活性剤1:第一工業製薬(株)社製、ハイテノール18E。
・陽イオン系界面活性剤1:竹本油脂(株)社製、パイオニンB-2211。
【0043】
[めっき済み電着フォトレジスト塗膜付き銅板1の作製]
下記の操作によって、電解剥離処理用試験片の、電着フォトレジスト塗膜厚みが8μmの、めっき済み電着フォトレジスト塗膜付き銅板1を作製した。
【0044】
(電着フォトレジスト塗膜の形成)
銅板1を脱脂洗浄し、硫酸水溶液1に室温で10秒間浸漬して酸化膜を取り除いた。
そして、一部電極との通電部分を残した状態で、下記条件で、銅板1上に、電着フォトレジスト塗膜を形成した。
電着フォトレジスト希釈液1温度:43℃
陰極:銅板1
陽極:SUS304ステンレス板(50mm×50mm×0.2mm厚)
電圧:直流150V
通電時間:10秒
そして、電着フォトレジスト塗膜付き銅板1を、電着フォトレジスト希釈液1から取り出して、脱イオン水で水洗し、63℃に加温したオーブン内で30秒乾燥させた。
【0045】
(露光処理)
オーブンから乾燥した電着フォトレジスト塗膜付き銅板1を取り出して、片面の電着フォトレジスト表面に、
図3に示されたマスク(3×2=6個のマスからなり、6個の電着フォトレジスト塗膜付き銅板1に同時露光可能。)を用いて、1つのマス(50mm×50mm)のパターンを1個の電着フォトレジスト塗膜付き銅板1(50mm×50mm)に当てて、露光波長が365nmのLEDランプを用いて、両面を250mJ/cm
2で
露光した。
このパターンの黒色部分の電着フォトレジスト塗膜が現像液で溶解することになる。
【0046】
(現像処理)
電着フォトレジスト塗膜付き銅板1に、45℃に加温された現像液1をスプレー圧0.15MPaでスプレー噴射して、30秒間現像し、脱イオン水で水洗して、現像済みの、
図3に示された黒色部分にパターニングされた電着フォトレジスト塗膜付銅板1を得た。
【0047】
(めっき処理)
パターニングされた電着フォトレジスト塗膜付銅板1を、めっき液1に30秒間浸漬して電解めっきして、電着フォトレジスト塗膜が無い金属部分にめっきが施された、めっき済み電着フォトレジスト塗膜付き銅板1を得た。
【0048】
[実施例1]
【0049】
(剥離液の調製)
下記原料を撹拌機により混合して均一化して、剥離液aを調製した。
脱イオン水 0.5L
ベンジルアルコール 135g
非イオン系界面活性剤1 15g
下記原料を撹拌機により混合して均一化して、剥離液bを調製した。
脱イオン水 0.5L
乳酸 12.5g
そして、剥離液aと剥離液bとを下記配合で撹拌機により混合し、均一化して、剥離液を得た。
剥離液a 0.5L
剥離液b 0.5L
【0050】
(電着フォトレジスト塗膜の電解剥離)
上記で作製しためっき済み電着フォトレジスト塗膜付き銅板1に対して、上記で得た剥離液を用いて、下記条件で電解剥離処理を行った。
剥離液温度:50℃
陰極:めっき済み電着フォトレジスト塗膜付き銅板1の金属部
陽極:SUS304ステンレス板
電流密度:6.0A/dm2(ハードスタート)
電圧:上記電流密度になるように、直流電圧を調節(50~100V)。
そして、電着フォトレジスト塗膜が剥離するまでの時間を測定した。
電着フォトレジストが剥離したら印加を終了して、銅板1に再付着している電着フォトレジスト片の個数をカウントし、めっき済み電着フォトレジスト塗膜付き銅板1の銅板金属露出部の変色レベルを目視にて判定した。その結果を表1に示す。
【0051】
[実施例2~28、比較例1~7]
剥離液の組成及び電解剥離の条件を表1、表2に示した内容に変更し、それ以外は、実施例1と同様に操作して、電着レジストの印加による剥離処理を行って、同様に評価した。その結果を表1、表2に示す。
但し、剥離液の調製時は、脱イオン水の半量ずつを、剥離液a、剥離液bに用いた。
【0052】
<評価方法>
【0053】
[剥離レジスト片付着数]
電着処理後のめっき済み電着フォトレジスト塗膜付き銅板1を、純水中に浸漬し、手動でわずかに5秒間揺動させた。次いで60℃のオーブン内で60秒間乾燥させた。
そして、銅板部に付着している剥離レジスト片の個数を、実体顕微鏡を用いて数えた。
観察エリア面積:50mm×50mm(電着処理後のめっき済み電着フォトレジスト塗膜付き銅板1の片面全域)
検出対象の剥離レジスト片の大きさ:50μm以上のもの
【0054】
[銅板変色]
電解剥離後のめっき済み電着フォトレジスト塗膜付き銅板1の金属露出部の変色レベルを目視にて、下記判定基準で判定した。
◎:変色なし。
〇:許容範囲の変色有り。
×:顕著な変色あり。
【0055】
[評価結果まとめ]
めっき済み電着フォトレジスト塗膜付き銅板1を陰極にして、電流密度を0.5~45A/dm2の条件で印加して電解剥離を行った全実施例は、短時間で電着フォトレジスト塗膜が剥離し、付着個数が少ない結果を示した。また、銅板の大きな変色も減少した。
そして、2種の有機溶剤を含有する剥離液を用いた実施例7、14~16は、1種の有機溶剤しか含有しない剥離液を用いた実施例1および2と比較して、同条件下で、短時間で電解剥離されて、電着膜の付着数が若干減少し、銅板の変色も無くなった。
また、電流密度が高くなるにつれて剥離時間が短くなり、電着膜の付着数が若干減少し、銅板の変色も無かったが、45A/dm2の付近で電着膜の付着数は変化しなくなり、若干の変色が見られた(実施例3~10)。
剥離液に含有される有機酸として、乳酸、ギ酸、シュウ酸、酒石酸は、何れも良好な短い剥離時間を示した(実施例1、17~19)。
剥離液に陰イオン系活性剤1を含有する実施例20も、非イオン系活性剤1を含む剥離液と同様に良好な結果を示した。
剥離液に界面活性剤を含有しない実施例21も、非イオン系活性剤1または陰イオン系活性剤1を含む剥離液と同様に良好な結果を示した。
電着膜を薄くした実施例22と、厚くした実施例23も、良好な結果を示した。
剥離液の液温を変更した実施例24、25も、良好な結果を示した。
さらに、めっき済み電着フォトレジスト塗膜付き銅板1を陽極にして電解剥離を行った実施例26~28は、めっき済み電着フォトレジスト塗膜付き銅板1陰極にして電解剥離を行った実施例よりも、剥離時間が短くなったが、銅板が若干変色した。
一方、電圧印加を行わなかった、または電流密度が上記範囲よりも小さい比較例1~4は、電着膜の剥離に長時間を要し、電着膜の付着数が多い結果を示した。
また、電流密度が45A/dm2よりも大きい比較例5は、銅板の激しい変色が生じた。
【0056】
【0057】
本発明の電着フォトレジスト塗膜の剥離方法は、従来技術と比較して、再付着片の発生が抑制され、短時間で電着フォトレジスト塗膜を剥離することができ、また、電着フォトレジスト塗膜の組成を変更することなく、多種のフォトレジストからなる電着フォトレジ
スト塗膜に適用することができることから、生産性が向上し、工業上において有用である。