(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094710
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】エレベーターシステム及び通信エラー解析方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
B66B5/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210171
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 豊和
(72)【発明者】
【氏名】出野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】助川 祐太
(72)【発明者】
【氏名】藪内 達志
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304BA16
3F304BA26
3F304EA24
3F304ED01
(57)【要約】
【課題】号機制御部及び端末間における通信エラーの原因究明を適切に行えるようにする。
【解決手段】本発明の一態様のエレベーターシステム100は、前回の周期における端末3の通信回数と、号機制御部4から送信された、前回の周期における端末3との間の通信回数との不一致の情報を端末3から受信した場合、全端末3に対して前回の周期の通信ログの送信を指示するモード切替指令処理部47と、複数の各端末から送信された前回の周期の通信ログの情報に基づいて、通信回数の不一致を引き起こした通信エラーの解析を行う通信エラー解析部51,設計管理部6と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの号機の動作を制御する号機制御部と、前記エレベーターを構成する複数の各端末とがバス型の接続形態で接続され、所定の周期で互いに通信を行うエレベーターシステムであって、
前回の周期における前記端末の通信回数である第1の通信回数と、前記号機制御部から送信された、前回の周期における前記端末との間の通信回数である第2の通信回数とが一致するか否かを判定する通信回数ずれ判定部と、
前記通信回数ずれ判定部より、前記第1の通信回数及び前記第2の通信回数の不一致の情報を受信した場合、複数の全端末に対して前回の周期の通信ログの送信を指示する通信ログ送信指示部と、
前記通信ログ送信指示部からの指示に従って複数の各端末から送信された前回の周期の前記通信ログの情報に基づいて、前記通信回数の不一致を引き起こした通信エラーの解析を行う通信エラー解析部と、を備える
エレベーターシステム。
【請求項2】
前記第1の通信回数をカウントする通信回数加算部をさらに備え、
前記通信回数加算部は、前記号機制御部との間で通信データが受送信される都度、及び、他の前記端末から送信された前記通信データを受信する都度、前記第1の通信回数のカウンタを加算する
請求項1に記載のエレベーターシステム。
【請求項3】
前記通信回数加算部は、前記通信回数の不一致の情報を送信後、又は、前記第1の通信回数と前記第2の通信回数とが一致していると判定した後に、前記第1の通信回数を加算する処理を行う
請求項2に記載のエレベーターシステム。
【請求項4】
前回の周期の前記通信ログには、前記通信回数加算部によって加算された前記第1の通信回数の情報も含まれる
請求項3に記載のエレベーターシステム。
【請求項5】
利用者による前記号機の利用状況を分析する利用状況分析部をさらに備え、
前記通信エラー解析部は、前記利用状況分析部によって前記号機の利用状況が少ないと分析された期間において、複数の前記各端末に対して前回の周期の前記通信ログの送信を要求する
請求項4に記載のエレベーターシステム。
【請求項6】
前記号機制御部から取得した情報に基づいて、前記エレベーターの保守及び管理を行う保守管理部をさらに備え、
前記保守管理部は、前記通信回数の不一致を引き起こした前記通信エラーを前記号機制御部が検出した場合であり、かつ、該通信エラーの発生頻度が所定の閾値回数以上である場合、エラー種別を前記端末の基板故障に設定したエラー情報を、前記エレベーターの保守を行う保守員に発報する
請求項1~5のいずれか一項に記載のエレベーターシステム。
【請求項7】
エレベーターの号機の動作を制御する号機制御部と、前記エレベーターを構成する複数の各端末とがバス型の接続形態で接続され、所定の周期で互いに通信を行うエレベーターシステムによる通信エラー解析方法であって、
通信回数ずれ判定部が、前回の周期における前記端末の通信回数である第1の通信回数と、前記号機制御部から送信された、前回の周期における前記端末との間の通信回数である第2の通信回数とが一致するか否かを判定する手順と、
通信ログ送信指示部が、前記通信回数ずれ判定部より、前記第1の通信回数及び前記第2の通信回数の不一致の情報を受信した場合、複数の全端末に対して前回の周期の通信ログの送信を指示する手順と、
通信エラー解析部が、前記通信ログ送信指示部からの指示に従って複数の各端末から送信された前回の周期の前記通信ログの情報に基づいて、前記通信回数の不一致を引き起こした通信エラーの解析を行う手順と、を含む
通信エラー解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターシステム及び通信エラー解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の端末と端末制御装置とが通信を行うシステムにおいて通信エラーが発生した場合、端末制御装置、又は、システムの保守を行う保守員等は、端末及び端末制御装置間の通信ログを解析することによって、通信エラーの原因究明を行う。
【0003】
特許文献1には、他の通信装置との間で発生する通信障害を解析するためにログ情報を収集する通信システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エレベーターシステムにおいては、エレベーターの号機の動作を制御する号機制御部と、乗場や乗りかご内に設けられたボタン等の各種端末との間は、バス型の接続形態で接続されている。つまり、号機制御部から送信される各種指令等の通信データは、すべての端末に送信され、各端末から送信される通信データは、バスに接続された他の端末も経由して号機制御装置に送信される。そして、このような接続形態で接続されているために、通信エラーの原因が判明しづらい状況が発生することがある。
【0006】
号機制御部から送信される通信データはすべての端末に送信されるが、宛先が自端末でない通信データは、各端末において破棄される。しかし、ノイズ等の外乱によって通信データの宛先が化けてしまった場合、本来の宛先でない端末に該通信データが受信され、受信した端末から号機制御部に対して、通信データの返信が行われてしまうことがある。この場合、本来の宛先である端末から返信された通信データと、本来の宛先ではない端末から返信された通信データとが通信経路上で衝突してしまうと、号機制御部で通信データを正常に受信できない。
【0007】
このような状況においては、本来の宛先であった端末に異常が発生していると判断されて、該端末の通信ログの解析等が行われることがある。しかし、本来の宛先であった端末には異常がないため、通信ログの分析が行われても原因は究明されない。また、通信ログの解析によっては原因の究明を行えなかった場合、保守員は、現場にオシロスコープを持参して実際の通信の情報を解析することも行う。しかし、通信エラーの再現性が低い場合には、オシロスコープを用いた解析によっても、原因を特定できないことがある。この場合、端末の基板を交換する対策がとられることが多い。
【0008】
しかし、通信エラーの原因がノイズ等の外乱にある場合には、本来行われる必要でない基板の交換が行われることになり、余分な基板の費用、及び、基板の交換工数が発生してしまう。また、基板の交換が必要であると判断された端末ではなく、他の端末に通信エラーの原因がある場合には、通信エラーの原因と診断された端末の基板を交換しても、通信エラーが再び起こってしまうことを防げない。
【0009】
本発明は、上記の状況を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、号機制御部及び端末間における通信エラーの原因究明を適切に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るエレベーターシステムは、エレベーターの号機の動作を制御する号機制御部と、エレベーターを構成する複数の各端末とがバス型の接続形態で接続され、所定の周期で互いに通信を行うエレベーターシステムである。本発明の一態様に係るエレベーターシステムは、前回の周期における端末の通信回数である第1の通信回数と、号機制御部から送信された、前回の周期における端末との間の通信回数である第2の通信回数とが一致するか否かを判定する通信回数ずれ判定部と、通信回数ずれ判定部より、第1の通信回数及び第2通信回数の不一致の情報を受信した場合、複数の全端末に対して前回の周期の通信ログの送信を指示する通信ログ送信指示部と、通信ログ送信指示部からの指示に従って複数の各端末から送信された前回の周期の通信ログの情報に基づいて、通信回数の不一致を引き起こした通信エラーの解析を行う通信エラー解析部と、を備える。
【0011】
また、本発明の一態様に係る通信エラー解析方法は、エレベーターの号機の動作を制御する号機制御部と、エレベーターを構成する複数の各端末とがバス型の接続形態で接続され、所定の周期で互いに通信を行うエレベーターシステムによる通信エラー解析方法である。本発明の一態様に係る通信エラー解析方法は、通信回数ずれ判定部が、前回の周期における端末の通信回数である第1の通信回数と、号機制御部から送信された、前回の周期における端末との間の通信回数である第2の通信回数とが一致するか否かを判定する手順と、通信ログ送信指示部が、通信回数ずれ判定部より、第1の通信回数及び第2通信回数の不一致の情報を受信した場合、複数の全端末に対して前回の周期の通信ログの送信を指示する手順と、通信エラー解析部が、通信ログ送信指示部からの指示に従って複数の各端末から送信された前回の周期の通信ログの情報に基づいて、通信回数の不一致を引き起こした通信エラーの解析を行う手順と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の少なくとも一態様によれば、号機制御部及び端末間における通信エラーの原因究明を適切に行えるようになる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエレベーターシステムの制御系の構成例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る端末の制御系の構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るエレベーターシステムを構成する各部の制御系の機能を実現するためのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る通信データの構成例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る通信回数ずれ判定部による正常時における通信回数ずれ判定処理の概要を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る通信回数ずれ判定部による通信エラー発生時における通信回数ずれ判定処理の概要を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る号機制御部による処理の例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態に係る端末による処理の例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係る保守制御装置による処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)の例について、添付図面を参照しながら説明する。本発明は実施形態に限定されるものではなく、実施形態における種々の数値等は例示である。また、本明細書及び図面において、同一の構成要素又は実質的に同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付することとし、重複する説明は省略する。
【0015】
<エレベーターシステムの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベーターシステムの制御系の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、エレベーターシステム100は、エレベーター1と、巻上機2と、端末3_1~端末3_2と、号機制御部4と、保守管理装置5と、設計管理部6と、を含む。
【0016】
エレベーター1は、乗客が乗り降りする不図示の乗りかごを備え、不図示の昇降路内に設けられる。巻上機2は、号機制御部4によって駆動されることにより、不図示の主ロープを介して接続された乗りかご及び不図示の釣合おもりを、昇降路内で昇降させる。
【0017】
端末3は、不図示のホール(乗場)に設けられた操作盤や、乗りかご内の行き先階ボタン、表示器、スピーカーなどの、エレベーター1を構成する端末であり、号機制御部4による制御に基づいて、その表示又は放音動作等が制御される。
図1においては、端末3として、乗場ボタン3_1及び乗場ボタン3_2が表示されているが、乗場ボタンは3つ以上あるものとする。また、以降の説明では、乗場ボタン3_1及び乗場ボタン3_2を区別する必要がない場合には、これらを乗場ボタン3と総称する。さらに、乗場ボタン3を端末3と称することもある。
【0018】
[号機制御部]
号機制御部4は、例えば、エレベーターの昇降路内や、不図示の機械室内に設けられ、エレベーター1の乗りかごの昇降動作や、各種端末の表示動作などを制御する。号機制御部4及び複数の各端末3間は、バス型のネットワークトポロジ(接続形態)により接続される。つまり、号機制御部4及び複数の各端末3間は、一つの共通の通信路(図示略)に接続され、号機制御部4から特定の端末3への指令は、特定の端末3以外の端末を含むすべての端末3に送信される。また、端末3から号機制御部4への通信データの送信は、号機制御部4から送信された指令等の通信データに対する返信の形態で行われ、一つの端末3から返信された通信データは、通信路に接続された他のすべての端末3でも受信される。
【0019】
号機制御部4は、かご制御部41と、モータ制御部42と、端末制御部43と、通信回数送信部44と、利用状況分析部45と、通信エラー格納部46と、モード切替指令処理部47と、を含む。
【0020】
かご制御部41は、端末制御部43を介して各種端末3から受信した各種情報に基づいて、乗りかごのドアを開閉させたり、乗りかご内の行き先階ボタンや開閉ボタン(いずれも図示略、端末の一例)などを光らせたり、不図示の乗りかご内のスピーカー(端末の一例)から音声を放音させたりする制御を行う。
【0021】
モータ制御部42は、巻上機2のモータ(図示略)を駆動する。これにより、巻上機2の綱車(図示略)に巻きかけられた主ロープが駆動され、該主ロープに接続された乗りかごが、昇降路内を昇降する。
【0022】
端末制御部43は、端末3における表示又は放音動作を制御する機能部である。具体的には、端末制御部43は、端末3としての乗場ボタンより、該ボタンの押下情報が送信されると、該ボタンに対して、ボタンを光らせる指令を送信する。また、端末制御部43は、端末3としての行き先階ボタン(図示略)から送信された行き先階の情報を、かご制御部41及びモータ制御部42に送信する。
【0023】
端末3から送信されるボタンの押下情報等の各種情報は、端末制御部43から送信される通信データに対する返信として、端末制御部43に送信される。したがって、端末制御部43は、各端末3に対して、所定の周期単位で通信データ(指令を含む)を送信する。号機制御部4及び各端末3間で送受信処理が行われる周期の長さは、例えば、10~30μs等に設定される。
【0024】
通信回数送信部44は、各周期における各端末3との送受信処理の開始時に、前回の周期において各端末3との間で行われた通信データの送受信(通信)回数(第1の通信回数の一例)の情報を、端末制御部43を介して各端末3に送信する。
【0025】
端末3では、号機制御部4から送信された通信回数、すなわち、前回の周期における号機制御部4の送受信回数と、前回の周期における自端末での通信(送受信)回数(第2の通信回数の一例)との比較が行われる。そして、両通信回数にずれがある(一致していない)場合、端末3は、号機制御部4に送信する通常データD2(
図4参照)に、通信エラーフラグを付与する処理を行う。そして、通信エラーフラグが付与された通常データD2(通信回数の不一致の情報の一例)は、号機制御部4への返信を行うタイミングにおいて、号機制御部4に送信される。
【0026】
また、通信エラーフラグが付与された通常データD2は、号機制御部4だけでなく、他の端末3にも送信される。そして、通信エラーフラグが付与された通常データD2を受信した場合、端末3は、前回の周期における号機制御部4又は他の端末3との間で送受信した通信データの履歴、すなわち、通信ログを、通信ログ格納部35(
図2参照)に格納する。
【0027】
各端末3において行われる、通信ログの通信ログ格納部35への格納は、通信エラーフラグが付与された通常データD2の受信をトリガとして行われるものである。つまり、各端末3の通信ログ格納部35に格納される通信ログのうちのいずれかには、号機制御部4及び端末3間での通信回数の不一致を起こした通信エラーの情報が含まれていることが想定される。したがって、以下の説明では、通信ログ格納部35に格納された通信ログを、通信エラーログとも称する。
【0028】
通信ログ格納部35に格納された通信ログ(通信エラーログ)は、号機制御部4から後述する通信ログ送信モード切替指令が送信された場合に、号機制御部4への返信を行うタイミングにおいて、各端末3から号機制御部4に送信される。
【0029】
利用状況分析部45は、端末3としての乗場ボタンの押下頻度の情報等に基づいて、曜日又は時間帯等におけるエレベーター1の利用状況を分析する。なお、利用状況分析部45による利用状況の分析方法は、この方法に限定されない。例えば、利用状況分析部45は、乗りかご内に設けられた不図示のカメラによる撮影画像の解析結果に基づいて、利用状況を分析してもよい。
【0030】
通信エラー格納部46は、各端末3から送信された通信エラーログを格納する。また、通信エラー格納部46は、保守管理装置5とネットワークを介して接続されており、格納している通信エラーログの情報を、所定の間隔毎、又は、保守管理装置5からの要求に応じて、保守管理装置5に送信する。
【0031】
モード切替指令処理部47(通信ログ送信指示部の一例)は、各端末3にボタンの押下情報等の各種情報を送信させる「通常モード」と、各端末3が送受信した通信ログを送信させる「通信ログ送信モード」とを切り替える。モード切替指令処理部47は、いずれかの端末3から、通信エラーフラグが付与された通常データD2を受信した場合、利用状況分析部45によって利用状況が小(少ない)と分析された時間帯(期間)になったタイミングにおいて、モードを通常モードから通信ログ送信モードに切り替える。そして、モード切替指令処理部47は、各端末3に対して、通信ログ送信モード切替指令を送信する。
【0032】
この通信ログ送信モード切替指令を受信した端末3では、自端末において格納している通信ログ(通信エラーログ)を、号機制御部4に送信する処理が行われる。
【0033】
[保守管理装置]
保守管理装置5(保守管理部の一例)は、例えば、エレベーターの監視や保守などを行う監視センター内に設けられ、号機制御部4から送信された情報に基づいて、エレベーター1を構成する各装置、端末、機器の保守及び管理を行う。保守管理装置5は、通信エラー解析部51と、エラー情報発報部52と、を含む。
【0034】
通信エラー解析部51は、通信エラーの発生頻度を確認し、通信エラーの発生頻度が所定の間隔未満である場合、号機制御部4の通信エラー格納部46から取得した通信エラーログを解析することにより、通信エラーの原因を究明する。通信エラーの原因が、ノイズ等の外乱によるものではないと判定した場合、又は、通信エラーの発生頻度が所定の閾値以上である場合、通信エラー解析部51は、通信エラーのエラー種別を「基板故障」に設定した上で、該エラー情報を、エラー情報発報部52を介して保守員に発報する。
【0035】
また、通信エラー解析部51は、通信エラーの発生頻度が所定の間隔未満である場合、号機制御部4の通信エラー格納部46から取得した通信エラーログを、設計管理部6に送信し、該通信エラーログの解析を依頼する。
【0036】
エラー情報発報部52は、号機制御部4から号機制御部4から取得したエラーの、エラー種別の情報を保守員に発報する。例えば、エラー情報発報部52は、号機制御部4から号機制御部4から取得したエラーが通常エラーである場合には、そのエラー種別の情報を保守員に発報する。通常エラーには、例えば、基板の故障や、モーター(図示略)の異常などがある。また、エラー情報発報部52は、通信エラー解析部51より「基板故障」のエラー種別の情報を取得した場合には、該エラー種別の情報を保守員に発報する。
【0037】
保守員への発報は、例えば、保守員が所持する保守端末の表示画面(図示略)へのメッセージの表示や、保守端末のスピーカー(図示略)を介した音声通知等によって行われる。
【0038】
[設計管理部]
設計管理部6(通信エラー解析部の一例)は、エレベーター1の設計や管理などを行う部署に設けられ、号機制御部4からの依頼に基づいて通信エラーの解析を行い、解析結果を号機制御部4に送信する。号機制御部4から解析の依頼がある通信エラーには、発生頻度が所定の間隔未満である通信エラー等がある。
【0039】
<端末の構成>
次に、
図2を参照して、端末の構成について説明する。
図2は、端末3の制御系の構成例を示すブロック図である。
【0040】
図2に示すように、端末3は、通信制御部31と、通信回数加算部32と、前回通信回数格納部33と、通信回数ずれ判定部34と、通信ログ格納部35と、モード切替部36と、入出力制御部37と、を含む。
【0041】
通信制御部31は、号機制御部4との間、端末3を構成する各部との間、入出力制御部37との間で行われる通信を制御する。例えば、通信制御部31は、号機制御部4より通信回数データD1を受信する処理や、通常データD2又は通信エラーデータD3を号機制御部4に送信する処理を行う。
【0042】
また、通信制御部31は、他の端末3から、通信エラーフラグが付与された通常データD2(
図4参照)を受信した場合に、後述する通信ログ格納部35より前回の周期の通信ログを取得し、前回通信回数格納部33より、前回の周期における通信回数を取得する。そして、通信制御部31は、取得した通信ログ及び通信回数の情報を格納した通信エラーデータD3(
図4参照)を生成する。
【0043】
通信回数加算部32は、号機制御部4との通信の各周期において、号機制御部4との間で通信データが受送信される都度、また、他の端末3から送信された通信データを受信する都度、通信回数のカウンタ(送信カウンタ、受信カウンタ:いずれも図示略)をインクリメント(加算)する。そして、通信回数加算部32は、その周期において加算された通信回数を、前回通信回数格納部33に格納する。なお、通信回数加算部32は、周期が変わるごとに加算していた通信回数をクリアしてもよく、以前の周期において加算された通信回数を引き継いでもよい。
【0044】
前回通信回数格納部33には、通信回数加算部32によってカウントされた通信回数が格納される。
【0045】
通信回数ずれ判定部34は、号機制御部4から送信された、前回の周期における端末3との通信回数と、前回通信回数格納部33に格納された、前回の周期における自端末での通信回数と、を比較する。通信回数ずれ判定部34は、両通信回数が一致していた場合には、通常通り、通信制御部31に号機制御部4との通信を行わせ、通信回数加算部32に通信回数を加算させる。
【0046】
一方、両通信回数が一致していなかった場合には、通信回数ずれ判定部34は、号機制御部4に送信する通常データD2(
図4参照)に、通信エラーフラグを付与する。通信エラーフラグが付与された通常データD2は、号機制御部4から送信された通信データへの返信のタイミングで、号機制御部4に送信される。
【0047】
通信ログ格納部35には、各周期における号機制御部4との間、及び、他の端末3との間での通信のログの情報が格納される。なお、通信ログ格納部35に格納される通信ログは、各周期の単位でクリアされてもよく、クリアされずに蓄積されてもよい。
【0048】
モード切替部36は、号機制御部4から送信された通信ログ送信モード切替指令を受信した場合、通信のモードを、通常モードから通信ログ送信モードに切り替える処理を行う。
【0049】
入出力制御部37は、号機制御部4の端末制御部43から送信された指令を、端末3を構成するボタン等の機器30に送信したり、機器30への乗客による操作の情報を、通信制御部31を介して号機制御部4に送信したりする制御を行う。
【0050】
<計算機のハードウェア構成例>
次に、
図1に示したエレベーターシステム100を構成する各部の制御系の機能を実現するためのハードウェア構成について、
図3を参照して説明する。
図3は、エレベーターシステム100を構成する各部の制御系の機能を実現するためのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0051】
図3に示すように、計算機50は、CPU(Central Processing Unit)501と、ROM(Read Only Memory)502と、RAM(Random Access Memory)503と、不揮発性ストレージ504と、ネットワークインターフェース505と、を含む。計算機50を構成する各部は、バスBを介して相互に通信可能に接続される。
【0052】
CPU501は、エレベーターシステム100を構成する各部(端末3、号機制御部4、保守管理装置5、設計管理部6)の各機能を実現するソフトウェアのプログラムをROM502から読み出し、該プログラムをRAM503にロードして実行する。エレベーターシステム100を構成する各部の機能は、CPU501がプログラムを実行することにより実現される。なお、CPUに代えて、MPU(Micro Processing Unit)等の他の処理装置が用いられてもよい。
【0053】
ROM502は、計算機50によって実行されるプログラムを格納した、コンピュータ読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。ROM502には、OS(Operating System)、各種のパラメータ、計算機50を機能させるためのプログラム等が記録される。
【0054】
RAM503には、CPU501の演算処理の途中で発生した変数やパラメータなどが一時的に書き込まれる。RAM503に書き込まれた変数やパラメータなどは、CPU501によって適宜読み出される。
【0055】
不揮発性ストレージ504は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリ等で構成される。なお、プログラムは、不揮発性ストレージ504に格納されてもよい。プログラムが不揮発性ストレージ504に格納される場合、不揮発性ストレージ504は、コンピュータによって実行されるプログラムを格納した、コンピュータ読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0056】
ネットワークインターフェース505は、例えば、NIC(Network Interface Card)等で構成される。ネットワークインターフェース505は、NICに接続された回線を介して、エレベーターシステム100を構成する他の部との間で行われる各種通信データの送受信動作を制御する。
【0057】
なお、計算機50は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどで構成される表示装置や、マウスやキーボードなどで構成される操作入力部、又は、表示装置及び操作入力部が一体に形成されたタッチパネル等を備える構成とされてもよい。
【0058】
<通信データの構成>
次に、
図4を参照して、号機制御部4及び端末3の間で送受信される通信データの構成について説明する。
図4は、通信データの構成例を示す図である。
図4Aは、号機制御部4から端末3に対して送信される通信回数データD1の構成例を示し、
図4Bは、端末3から号機制御部4に送信される通常データD2の構成例を示し、
図4Cは、端末3から号機制御部4に送信される通信エラーデータD3の構成例を示す。
【0059】
図4Aに示すように、通信回数データD1は、端末IDフィールドF1及び通信回数フィールドF2を有する。端末IDフィールドには、通信データの送信先の端末3の宛先の情報が格納される。通信回数フィールドF2には、前回の周期における複数の端末3との送受信回数である、通信回数の情報が格納される。
【0060】
図4Bに示すように、通常データD2は、端末IDフィールドF11、通常データフィールドF12及び通信エラーフラグ(1bit)フィールドF13を有する。端末IDフィールドF11には、データの送信先である号機制御部4の宛先の情報が格納される。通常データフィールドF12には、通常モードにおいて端末3から号機制御部4に送信されるデータが格納される。端末3が乗場ボタンである場合であれば、通常データフィールドF12には、エレベーター1の利用者によるボタンの押下情報等が格納される。
【0061】
通信エラーフラグ(1bit)フィールドF13には、1bitで示される通信エラーフラグの値が格納される。通信エラーフラグが付与された場合には、通信エラーフラグの値は“1”となり、通信エラーフラグが立てられていない場合には、通信エラーフラグの値は“0”となる。
【0062】
図4Cに示すように、通信エラーデータD3は、端末IDフィールドF21、通信回数フィールドF22、通信データフィールドF23及びエラー情報フィールドF24を有する。
【0063】
端末IDフィールドF21には、データの送信先である号機制御部4の宛先の情報が格納される。通信回数フィールドF22には、前回通信回数格納部33に格納されている、前回の周期におけるその端末3での通信回数の情報が格納される。
【0064】
通信データフィールドF23には、通信ログ格納部35に格納された、前回の周期において号機制御部4との間で送受信された通信データ(通信ログ)が格納される。エラー情報フィールドF24には、例えば、パリティエラーやプロトコルエラーなど通信に関するエラー情報や、基板に搭載する部品や基板で制御されるモータなどのハードに関する故障情報などが格納される。
【0065】
<通信回数ずれ判定部による判定処理の概要>
次に、
図5及び
図6を参照して、端末3の通信回数ずれ判定部34(
図1参照)による判定処理について説明する。
図5は、通信回数ずれ判定部34による正常時における通信回数ずれ判定処理の概要を示す図であり、
図6は、通信回数ずれ判定部34による通信エラー発生時における通信回数ずれ判定処理の概要を示す図である。
【0066】
[正常時における通信回数ずれ判定処理]
まず、
図5を参照して、通信回数ずれ判定部34による正常時における通信回数ずれ判定処理について説明する。
図5Aは、各周期における、号機制御部4及び3台の端末3(端末(1)、端末(2)及び端末(3))間の送受信動作を時系列に示した図である。
【0067】
図5Aの左端に「通信回数受信」と示すタイミングは、号機制御部4から送信された通信回数データD1(
図4参照)を、各端末3(端末(1)、端末(2)及び端末(3))が受信したタイミングを示す。実際には、端末(1)~端末(3)のそれぞれにおける通信回数データD1の受信タイミングは異なるが、ここでは説明をわかりやすくするために、同一のタイミングとして示している。
【0068】
1周期目のタイミングT1においては、号機制御部4から送信された端末(1)宛の通信データを端末(1)が受信して、タイミングT2においては、端末(1)が号機制御部4に通信データを送信(返信)する。続くタイミングT3では、号機制御部4から送信された端末(2)宛の通信データを端末(2)が受信して、続くタイミングT4において、端末(2)が号機制御部4に通信データを送信する。
【0069】
タイミングT5では、号機制御部4から送信された端末(3)宛の通信データを端末(3)が受信して、続くタイミングT6では、端末(3)が号機制御部4に通信データを送信する。同様の送受信処理が、2周期目以降も行われるものとする。
【0070】
図5Bは、1周期目における端末(1)における通信データの送受信回数の算出例を示す表である。
図5Bにおいて、「親」と記載されているのは号機制御部4のことであり、その右隣に示された「送受信回数」は、送受信動作の開始前に、号機制御部4から送信された通信回数の値を示す。
【0071】
1周期目は、通信の最初の周期であるため、前回の周期は存在せず、それゆえ、前回の周期における端末3との通信回数は“0”となる。よって、号機制御部4から各端末3(端末(1)~端末(3))に対しては、通信回数=“0”の情報が通信回数データD1(
図4参照)によって通知される。
【0072】
「親」の下に記載された「端末」の欄においては、1周期目のタイミングT1~タイミングT6のそれぞれにおける、「受信回数」、「送信回数」及び「送受信回数」の加算の例を示す。「受信回数」は、号機制御部4又は他の端末3から通信データを受信した回数であり、「送信回数」は、号機制御部4に通信データを送信(返信)した回数である。「送受信回数」は、各タイミングTにおける「受信回数」及び「送信回数」の合算回数である。
【0073】
例えば、タイミングT1においては、端末(1)は、号機制御部4より自端末宛に送信された通信データを受信したため、受信回数のカウンタ(図示略)が1つインクリメントされ、「受信回数」の欄は“1”となる。また、タイミングT1は、号機制御部4から端末(1)に対して通信データが送信されるタイミングであるため、このタイミングにおいては、端末(1)から号機制御部4への返信は行われない。したがって、「送信回数」の欄は“0”のままとなる。よって、タイミングT1における「送受信回数」は“1”(受信回数)+“0”(送信回数)=“1”となる。
【0074】
タイミングT2においては、端末(1)は、号機制御部4に対して返信を行っている。したがって、送信回数のカウンタ(図示略)が1つインクリメントされ、「送信回数」の欄は“1”となる。また、タイミングT2は、端末3側から号機制御部4に対して返信が行われるタイミングであるため、号機制御部4から通信データは送信されず、端末(1)における受信動作は行われない。したがって、「受信回数」の欄は、タイミングT1の値を引き継いで“1”のままとなる。よって、タイミングT2における「送受信回数」は“1”(受信回数)+“1”(送信回数)=“2”となる。
【0075】
タイミングT3においては、号機制御部4から端末(2)に対して通信データが送信され、該通信データを端末(1)も受信する。したがって、受信回数のカウンタは1つインクリメントされて、「受信回数」の欄は“2”となる。また、タイミングT3は、号機制御部4から端末3側に対して送信が行われるタイミングであるため、号機制御部4へ返信は行われない。したがって、「送信回数」の欄は、タイミングT2の値を引き継いで“1”のままとなる。よって、タイミングT3における「送受信回数」は“2”(受信回数)+“1”(送信回数)=“3”となる。
【0076】
タイミングT4においては、端末(2)から号機制御部4に対して通信データが送信(返信)され、該通信データを端末(1)も受信する。したがって、受信回数のカウンタは1つインクリメントされて、「受信回数」の欄は“3”となる。また、タイミングT3で受信した通信データは自装置宛のものではないため、タイミングT4においては、端末(1)から号機制御部4への返信は発生しない。したがって、「送信回数」の欄は、タイミングT3の値を引き継いで“1”のままとなる。よって、タイミングT4における「送受信回数」は“3”(受信回数)+“1”(送信回数)=“4”となる。
【0077】
タイミングT5においては、号機制御部4から端末(3)に対して通信データが送信され、該通信データを端末(1)も受信する。したがって、受信回数のカウンタは1つインクリメントされて、「受信回数」の欄は“4”となる。また、タイミングT5は、号機制御部4から端末3側に対して送信が行われるタイミングであるため、号機制御部4へ返信は行われない。したがって、「送信回数」の欄は、タイミングT4の値を引き継いで“1”のままとなる。よって、タイミングT5における「送受信回数」は“4”(受信回数)+“1”(送信回数)=“5”となる。
【0078】
タイミングT6においては、端末(3)から号機制御部4に対して通信データが送信(返信)され、該通信データを端末(1)も受信する。したがって、受信回数のカウンタは1つインクリメントされて、「受信回数」の欄は“5”となる。また、タイミングT5で受信した通信データは自装置宛のものではないため、タイミングT6においては、端末(1)から号機制御部4への返信は発生しない。したがって、「送信回数」の欄は、タイミングT5の値を引き継いで“1”のままとなる。よって、タイミングT6における「送受信回数」は“5”(受信回数)+“1”(送信回数)=“6”となる。
【0079】
1周期目における号機制御部4及び各端末3(端末(1)~端末(3))間の送受信処理は、タイミングT6で終了する。したがって、1周期目における端末(1)での送受信回数、すなわち、通信回数は、“6”となる。通信回数加算部32は、この“6”の値を、前回通信回数格納部33に格納する。
【0080】
2周期目に入ると、号機制御部4から各端末3に対して、前回の周期における通信回数(送受信回数)の情報が送信される。1周期目において、号機制御部4が端末(1)~端末(3)との間で通信データを送受信した数は6回であるため、ここでは“6”の数値が送信される。
【0081】
通信回数の情報を受信した端末(1)では、通信回数ずれ判定部34(
図1参照)が、号機制御部4から受信した通信回数である“6”と、前回通信回数格納部33に格納された通信回数である“6”とを比較する。この場合、両通信回数にずれはないため、通信回数ずれ判定部34は、通常データD2(
図4参照)に通信エラーフラグを付与する処理は行わない。
【0082】
[通信エラー発生時における通信回数ずれ判定処理]
次に、
図6を参照して、通信回数ずれ判定部34による通信エラー発生時における通信回数ずれ判定処理について説明する。
図6Aは、
図5Aと同様に、各周期における、号機制御部4及び3台の端末3(端末(1)、端末(2)及び端末(3))間の送受信動作を時系列に示した図である。
【0083】
1周期目では、タイミングT11において号機制御部4から送信された端末(1)宛の通信データを端末(1)が受信して、続くタイミングT12で端末(1)が号機制御部4に通信データを送信する。タイミングT13では、号機制御部4から送信された端末(2)宛の通信データが送信され、続くタイミングT14では、端末(2)が号機制御部4に通信データを送信する。しかし、
図6に示す例では、ここで、端末(1)から号機制御部4に対しても、通信データが送信されてしまっている。
【0084】
号機制御部4と端末(1)との間の通信経路において、パケットにノイズが乗る等の理由により、通信データの宛先の情報が壊れてしまった場合、端末(1)が通信データは自装置宛であると認識してしまうことがある。この場合、端末(1)は、号機制御部4に通信データを送信(返信)してしまう。そして、端末(1)及び端末(2)の両方から通信データが送信された場合であって、両データが通信経路上でコリジョンを起こした場合、通信データは号機制御部4には送信されず、号機制御部4は返信の通信データを受信しないままとなる。
【0085】
続くタイミングT15では、号機制御部4から送信された端末(3)宛の通信データを端末(3)が受信して、タイミングT16において、端末(3)が号機制御部4に通信データを送信する。
【0086】
図6Bは、1周期目における端末(1)における通信データの送受信回数の算出例を示す表である。
図5Bに示した例と同様に、1周期目は、通信の最初の周期であるため、前回の周期は存在せず、それゆえ、前回の周期における端末3との通信回数も“0”となる。
【0087】
タイミングT11においては、端末(1)は、号機制御部4より自端末宛に送信された通信データを受信したため、受信回数のカウンタ(図示略)が1つインクリメントされ、「受信回数」の欄は“1”となる。また、タイミングT11は、号機制御部4から端末(1)に対して通信データが送信されるタイミングであるため、このタイミングにおいては、端末(1)から号機制御部4への返信は行われない。したがって、「送信回数」の欄は“0”のままとなる。よって、タイミングT11における「送受信回数」は“1”(受信回数)+“0”(送信回数)=“1”となる。
【0088】
タイミングT12においては、端末(1)は、号機制御部4に対して返信を行っている。したがって、送信回数のカウンタ(図示略)が1つインクリメントされ、「送信回数」の欄は“1”となる。また、タイミングT12は、端末3側から号機制御部4に対して返信が行われるタイミングであるため、号機制御部4から通信データは送信されず、端末(1)における受信動作は行われない。したがって、「受信回数」の欄は、タイミングT11の値を引き継いで“1”のままとなる。よって、タイミングT12における「送受信回数」は“1”(受信回数)+“1”(送信回数)=“2”となる。
【0089】
タイミングT13においては、号機制御部4から端末(2)に対して通信データが送信され、該通信データを端末(1)も受信する。したがって、受信回数のカウンタは1つインクリメントされて、「受信回数」の欄は“2”となる。また、タイミングT13は、号機制御部4から端末3側に対して送信が行われるタイミングであるため、号機制御部4へ返信は行われない。したがって、「送信回数」の欄は、タイミングT12の値を引き継いで“1”のままとなる。よって、タイミングT13における「送受信回数」は“2”(受信回数)+“1”(送信回数)=“3”となる。
【0090】
タイミングT14においては、端末(2)から号機制御部4に対して通信データが送信(返信)され、該通信データを端末(1)も受信する。したがって、受信回数のカウンタは1つインクリメントされて、「受信回数」の欄は“3”となる。また、タイミングT14では、端末(1)は、タイミングT13で受信した通信データへの返信として、通信データを号機制御部4に送信する。タイミングT13で号機制御部4から送信された通信データは、端末(2)宛のものであったが、端末(1)は自装置宛であると誤認識したため、このタイミングで号機制御部4への通信データの送信も行ったためである。したがって、送信回数のカウンタ(図示略)が1つインクリメントされ、「送信回数」の欄は“2”となる。よって、タイミングT14における「送受信回数」は“3”(受信回数)+“2”(送信回数)=“5”となる。
【0091】
タイミングT15においては、号機制御部4から端末(3)に対して通信データが送信され、該通信データを端末(1)も受信する。したがって、受信回数のカウンタは1つインクリメントされて、「受信回数」の欄は“4”となる。また、タイミングT15は、号機制御部4から端末3側に対して送信が行われるタイミングであるため、号機制御部4へ返信は行われない。したがって、「送信回数」の欄は、タイミングT14の値を引き継いで“2”のままとなる。よって、タイミングT15における「送受信回数」は“4”(受信回数)+“2”(送信回数)=“6”となる。
【0092】
タイミングT16においては、端末(3)から号機制御部4に対して通信データが送信(返信)され、該通信データを端末(1)も受信する。したがって、受信回数のカウンタは1つインクリメントされて、「受信回数」の欄は“5”となる。また、タイミングT15で受信した通信データは自装置宛のものではないため、タイミングT16においては、端末(1)から号機制御部4への返信は発生しない。したがって、「送信回数」の欄は、タイミングT15の値を引き継いで“2”のままとなる。よって、タイミングT16における「送受信回数」は“5”(受信回数)+“2”(送信回数)=“7”となる。
【0093】
1周期目における号機制御部4及び各端末3(端末(1)~端末(3))間の送受信処理は、タイミングT16で終了する。したがって、1周期目における端末(1)での送受信回数、すなわち、通信回数は、“7”となる。通信回数加算部32は、この“7”の値を、前回通信回数格納部33に格納する。
【0094】
2周期目に入ると、号機制御部4から各端末3(端末(1)~端末(3))に対して、前回の周期における通信回数(送受信回数)の情報が送信される。1周期目において、号機制御部4が端末(1)~端末(3)との間で通信データを送受信した数は6回であるため、ここでは“6”の数値が送信される。
【0095】
通信回数の情報を受信した端末(1)では、通信回数ずれ判定部34(
図1参照)が、号機制御部4から受信した通信回数である“6”と、前回通信回数格納部33に格納された通信回数である“7”とを比較する。この場合、両通信回数にずれがあるため、通信回数ずれ判定部34は、通常データD2(
図4参照)に通信エラーフラグを付与する処理を行う。
【0096】
<エレベーターシステムによる通信エラー解析方法>
次に、
図7~
図9を参照して、本実施形態に係るエレベーターシステム100による通信エラー解析方法について説明する。
図7は、号機制御部4による処理の例を示すフローチャートであり、
図8は、端末3による処理の例を示すフローチャートであり、
図9は、保守管理装置5による処理の例を示すフローチャートである。
【0097】
[号機制御部による処理]
最初に、
図7を参照して、号機制御部4による処理について説明する。
まず、号機制御部4の通信回数送信部44(
図1参照)は、前回の周期における端末3との間における通信回数の情報を、通信回数データD1(
図4)によって複数の各端末3に送信する(ステップS1)。
【0098】
次いで、号機制御部4は、端末3との間の送受信処理を開始する(ステップS2)。次いで、号機制御部4の利用状況分析部45は、端末3から送信された通信データ(通常データD2(
図4参照))に、通信エラーフラグが付与されているか否かを判定する(ステップS3)。
【0099】
ステップS3で、通信エラーフラグは付与されていないと判定された場合(ステップS3がNO判定の場合)、号機制御部4はステップS1に戻って処理を行う。一方、ステップS3で、通信エラーフラグが付与されていると判定された場合(ステップS3がYES判定の場合)、利用状況分析部45は、利用者によるエレベーター1の利用状況は「小」であるか否かを判定する(ステップS4)。
【0100】
ステップS4で、利用状況は小であると判定された場合(ステップS4がYES判定の場合)、号機制御部4のモード切替指令処理部47は、端末3に対して、通信ログ送信モード切替指令を送信する(ステップS5)。次いで、号機制御部4は、端末3との間で送受信処理を行う(ステップS6)。この送受信処理は、通信ログ送信モードへの切り替え後に行われる処理であるため、端末3からは、号機制御部4又は他の端末3との間で前回の周期において送受信された、通信エラーの情報を含む通信データのログ、すなわち、通信エラーログの情報が送信される。
【0101】
次いで、号機制御部4は、ステップS6で端末3から送信された通信エラーログの情報を通信エラー格納部46に格納する(ステップS7)。ステップS7の処理後、号機制御部4は、ステップS1に戻って処理を行う。
【0102】
一方、ステップS4で、利用状況は小ではない(大である)と判定された場合(ステップS4がNO判定の場合)、号機制御部4の通信回数送信部44は、前回の周期における端末3との間における通信回数の情報を、通信回数データD1(
図4参照)によって複数の各端末3に送信する(ステップS8)。前回の周期とは、ステップS2で送受信処理が行われた周期である。次いで、号機制御部4は、端末3との間の送受信処理を開始し(ステップS9)、ステップS4の判定を行う。
【0103】
つまり、本実施形態では、利用者によるエレベーター1の利用状況が「小」ではない、つまり、利用が多い状態においては、通信ログ送信モードへの切り替えは行われない。通信エラーログはデータ量が多いため、通信エラーログの送信時には、号機制御部4及び端末3間の通信の周期の長さを少し長くする必要がある。しかし、このような処理が行われることにより、号機制御部4から端末3に対して階床ボタンの点灯等の指示が行われてから実施に階床ボタンが点灯するまでの応答時間が、人の目には分からない程のわずかな時間ながらも、遅くなってしまう。
【0104】
一方、本実施形態では、通信エラーログの送信は、エレベーター1の利用状況が小である場合にのみ行われるため、エレベーター1の利用者が多いタイミングにおいて、端末3を構成する各機器の応答時間が遅くなってしまうことを、防ぐことができる。
【0105】
[端末による処理]
次に、
図8を参照して、端末3による処理について説明する。
まず、端末3の通信制御部31(
図2参照)は、号機制御部4より、通信ログ送信モード切替指令を受信したか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11で、通信ログ送信モード切替指令を受信したと判定された場合(ステップS11がYES判定の場合)、モード切替部36は、通信モードを、通常モードから通信ログ送信モードに切り替える(ステップS12)。次いで、通信制御部31は、通信ログ格納部35に格納された、前回の周期における通信ログ(通信エラーログ)を、号機制御部4に送信する(ステップS13)。ステップS13の処理後、端末3はステップS11に戻って判定を行う。
【0106】
一方、ステップS11で、通信ログ送信モード切替指令は受信していないと判定された場合(ステップS11がNO判定の場合)、通常モードでの周期が開始され、通信制御部31は、
図7のステップS1で号機制御部4から送信された通信回数の情報を受信する(ステップS14)。
【0107】
次いで、通信回数ずれ判定部34は、前回通信回数格納部33に格納されている、前回の周期における通信回数と、ステップS11で受信したと判定された通信回数とが、一致しているか否かを判定する(ステップS15)。例えば、
図6Bに示した例においては、両通信回数は不一致となる。この場合、ステップS15はNO判定となる。
【0108】
ステップS15がNO判定の場合、通信制御部31は、号機制御部4に送信する通信データ(通常データD2:
図4参照)に、通信エラーフラグを付与する(ステップS16)。ステップS16の処理後、又は、ステップS15がYES判定の場合、通信制御部31は、号機制御部4との受送信処理を行う(ステップS17)。
【0109】
次いで、通信回数加算部32は、送受信処理を行う都度、送受信カウンタ(受信カウンタ及び送信カウンタ)(図示略)をインクリメントする(ステップS18)。次いで、通信制御部31は、ステップS18で加算された受信カウンタ及び送信カウンタの数、すなわち、通信回数を、前回通信回数格納部33に格納する(ステップS19)。
【0110】
次いで、通信制御部31は、受信した通信データに通信エラーフラグが付与されているか否かを判定する(ステップS20)。ステップS16で、いずれかの端末3において通信エラーフラグが付与された通信データが、次のステップS17の受送信処理で送信された場合、該通信データは、通信エラーフラグを付与する処理を行っていない他の端末3においても受信される。この場合、通信エラーフラグが付与された通信データを受信した他の端末3では、ステップS20はYES判定となる。
【0111】
ステップS20がYES判定の場合、通信制御部31は、ステップS17において開始された送受信処理において号機制御部4、他の端末3と送受信された通信ログ(通信エラーログ)を、通信ログ格納部35に格納する(ステップS21)。ステップS21の処理後、又は、ステップS20がNO判定の場合、端末3はステップS11に戻って判定を行う。
【0112】
ステップS21で、通信ログ格納部35が格納した通信ログ(通信エラーログ)は、次に行われるステップS11において通信ログ送信モード切替指令を受信したと判定された場合、その次のステップS12において行われる通信エラーログ送受信時に、号機制御部4に送信される。
【0113】
[保守管理装置による処理]
次に、
図9を参照して、保守管理装置5(
図1参照)による処理について説明する。まず、端末3の通信制御部31(
図2参照)は、号機制御部4から取得した情報に基づいて、エレベーター1において通信エラーが発生しているか否かを判定する(ステップS31)。ステップS31で、通信エラーは発生していないと判定された場合(ステップS31がNO判定の場合)、通信制御部31は、ステップS31の判定を繰り返す。
【0114】
一方、ステップS31で、通信エラーが発生していると判定された場合(ステップS31がYES判定の場合)、通信制御部31は、該通信エラーは通常エラーであるか否かを判定する(ステップS32)。通常エラーには、例えば、端末3の基板故障やモータ異常などに起因する通信エラーがある。一方、通常エラーでないエラーには、上述したような、2つの端末3から送信された通信データ同士が衝突したこと等による、号機制御部4への通信データの未達等がある。
【0115】
ステップS32で、通常エラーであると判定された場合(ステップS32がYES判定の場合)、通信制御部31は、入出力制御部37を介して、エラーの種別の情報を保守員に発報する(ステップS33)。次いで、発報を受けた保守員による保守交換作業が行われる(ステップS34)。ステップS34の処理後、通信制御部31は、ステップS31に戻って判断を行う。
【0116】
一方、ステップS32で、通信エラーは通常エラーではないと判定された場合(ステップS32がNO判定の場合)、通信制御部31は、エラーの発生頻度は一定以上か否かを判定する(ステップS35)。「一定」の回数には、予め所定の閾値回数が設定されているものとする。
【0117】
ステップS35で、エラーの発生頻度は一定以上であると判定された場合(ステップS35がYES判定の場合)、通信制御部31は、エラー種別を「基板故障」とし、エラーの情報を、入出力制御部37を介して保守員に発報する(ステップS36)。ステップS36の処理後、ステップS34の処理が行われる。
【0118】
一方、ステップS35で、エラーの発生頻度は一定以上ではないと判定された場合(ステップS35がNO判定の場合)、通信制御部31は、通信エラー格納部46に格納された全端末3の通信エラーログを、入出力制御部37を介して設計管理部6に転送し、通信エラーログの解析を依頼する(ステップS37)。このような処理が行われることにより、2つの端末3から送信された通信データ同士が衝突したこと等による、号機制御部4への通信データの未達等の、再現性が低い通信エラーの原因も、設計管理部6によって、適切に行われる。なお、設計管理部6による解析結果は、端末3に送信される。
【0119】
次いで、通信制御部31は、設計管理部6による解析の結果に基づいて、通信エラーがノイズ等の外乱によるものであるか否かを判定する(ステップS38)。ステップS38で、外乱によるものであると判定された場合(ステップS38がYES判定の場合)、通信制御部31は、ステップS31に戻って判定を行う。つまり、通信エラーが外乱に起因するものであった場合には、保守員へのエラー種別の発報等も行われない。つまり、本実施形態によれば、外乱による通信エラーも適切に原因が究明されるため、保守員が現地を訪れてオシロスコープ等を用いた解析を行う工数を削減することができる。
【0120】
一方、通信エラーが外乱によるものではないと判定された場合(ステップS38がNO判定の場合)、通信制御部31は、ステップS36の処理を行う。つまり、エラー種別を「基板故障」として、エラーの情報を、入出力制御部37を介して保守員に発報する。すなわち、本当に基板の交換が必要な場合にのみ、保守員に「基板故障」の情報が通知されるため、交換が行われる必要が無い基板が不要に交換されてしまうことを防ぐことができる。
【0121】
上述した実施形態では、端末3は、前回の周期における端末3(自端末)の通信回数と、号機制御部4から送信された、前回の周期における端末3との間の通信回数とが一致するか否かを判定する通信回数ずれ判定部34(
図2参照)を備える。また、号機制御部4は、通信回数ずれ判定部34より、通信回数の不一致の情報を受信した場合、複数の各端末3に対して前回の周期の通信ログの送信を指示するモード切替指令処理部47(
図1参照)を備える。さらに、保守管理装置5は、モード切替指令処理部47からの指示に従って複数の各端末3から送信された前回の周期の通信ログの情報に基づいて、通信回数の不一致を引き起こした通信エラーの解析を行う通信エラー解析部51及び設計管理部6を備える。
【0122】
つまり、本実施形態では、号機制御部4で保持する前回の周期における通信回数と、端末3で保持する前回の周期における通信回数とのずれの検知をトリガとして、前回の周期における全端末3での通信エラーログが収集される。そして、保守管理装置5の通信エラー解析部51又は設計管理部6によって、全端末3での通信エラーログを用いた解析が行われる。
【0123】
したがって、本実施形態によれば、再現性が低い通信エラーであっても、その原因を適切に究明することができる。例えば、特定の端末3を宛先として号機制御部4から送信されたパケットにノイズ等が乗って、宛先の情報が破損したことによって号機制御部4への通信データの未達が発生した場合にも、通信エラーの原因を、従来よりも短い時間で、かつ適切に解明することができる。それゆえ、本実施形態によれば、現場における保守員による保守時間を節減することができる。
【0124】
また、本実施形態では、前回の周期における全端末3での通信エラーログの情報を用いて通信エラーの原因が解析されるため、端末3側において、長期間にわたる通信ログを保存しておく必要がない。それゆえ、本実施形態によれば、通信ログ保持用のメモリの容量を節減することができる。
【0125】
さらに、本実施形態によれば、本来交換が不要である端末3の基板の交換等が行われてしまうことを防げるため、基板の購入に要する費用、及び、基板の交換作業のコストを削減することができる。
【0126】
なお、上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために装置(号機制御部、端末、保守管理装置、設計管理部)及びシステム(エレベーターシステム)の構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0127】
例えば、端末3の通信回数ずれ判定部34は、号機制御部4や、不図示のクラウド上などに設けられてもよい。
【0128】
また、
図1又は
図2中に実線の両矢印で示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0129】
また、本明細書において、時系列的な処理を記述する処理ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)をも含むものである。
【0130】
さらに、上述した本開示の一実施形態にかかるエレベーターシステムの各構成要素は、それぞれのハードウェアがネットワークを介して互いに情報を送受信できるならば、いずれのハードウェアに実装されてもよい。また、ある処理部により実施される処理が、1つのハードウェアにより実現されてもよいし、複数のハードウェアによる分散処理により実現されてもよい。
【符号の説明】
【0131】
1…エレベーター、3…端末、4…号機制御部、5…保守管理装置、6…設計管理部、31…通信制御部、32…通信回数加算部、33…前回通信回数格納部、34…通信回数ずれ判定部、35…通信ログ格納部、36…モード切替部、37…入出力制御部、43…端末制御部、44…通信回数送信部、45…利用状況分析部、46…通信エラー格納部、47…モード切替指令処理部、51…通信エラー解析部、52…エラー情報発報部、100…エレベーターシステム