(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094718
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】連結具
(51)【国際特許分類】
F16B 2/18 20060101AFI20230629BHJP
F16B 5/12 20060101ALI20230629BHJP
F16B 2/10 20060101ALI20230629BHJP
E04G 7/06 20060101ALI20230629BHJP
E04G 7/20 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
F16B2/18 F
F16B5/12 H
F16B2/10 A
E04G7/06
E04G7/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210186
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000245830
【氏名又は名称】矢崎化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090114
【弁理士】
【氏名又は名称】山名 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【弁理士】
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】中澤 弘康
【テーマコード(参考)】
3J001
3J022
【Fターム(参考)】
3J001FA19
3J001GC12
3J001JB02
3J001JB15
3J001KA05
3J001KB01
3J022DA17
3J022EA16
3J022EC17
3J022EC22
3J022ED23
3J022FB06
3J022FB12
3J022FB17
3J022GA04
3J022GA17
3J022GB16
3J022GB23
(57)【要約】
【課題】パイプ等の被挟持部材と、平面部分を備える被取付け部材とを低コストで効率よく連結する連結具を提供する。
【解決手段】被挟持部材1を一対の挟持部材2A、2Bの開閉によって連結する連結具であって、一対の挟持部材2A、2Bは、基部4を介した回転軸3に支持され平面部材5上で回動されること、基部4と平面部材5に挿通された結合部材6の締め付けによって、一対の挟持部材2A、2Bは、下端縁21が平面部材5に当接されながら回転軸3周りに閉じて回動して、被挟持部材1が連結自在である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被挟持部材を一対の挟持部材の開閉によって連結する連結具であって、
前記一対の挟持部材は、基部を介した回転軸に支持され平面部材上又は被取付け部材の平面部分上で回動されること、
前記基部と前記平面部材及び/又は前記被取付け部材の平面部分に挿通された結合部材の締め付けによって、前記一対の挟持部材は、下端縁が前記平面部材又は前記被取付け部材の平面部分に当接されながら回転軸周りに閉じて回動し、被挟持部材を連結自在に構成されていることを特徴とする連結具。
【請求項2】
前記一対の挟持部材は、前記回転軸周りに回動して前記基部へ干渉を起こすことによって所定の角度以上には開かない構成であることを特徴とする、請求項1に記載した連結具。
【請求項3】
前記一対の挟持部材は、先端部の合わさり面が平坦なフラット面に形成されていると共に、突条が前記被挟持部材へ接触するように内周面に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載した連結具。
【請求項4】
前記結合部材は、多角ボルトとナットの組み合わせで構成され、前記ナットを螺進させることによって前記一対の挟持部材が閉じ方向に回動することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一に記載した連結具。
【請求項5】
前記結合部材の多角ボルトは、前記一対の挟持部材の一対の回転軸間に配置されており、前記ナットの締め付け時に前記多角ボルトの頭部が前記回転軸に当接して回り止めされる構成であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一に記載した連結具。
【請求項6】
前記一対の挟持部材に挟持される被挟持部材がパイプで成り、前記パイプで組み立てられた搬送台車に連結されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一に記載した連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば合成樹脂被覆接着鋼管などのパイプに連結される連結具に関し、さらに言えば、
図10に示したような平面部分を備える被取付け部材と、前記パイプとを連結するために使用される連結具の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示の締結用金具は、
図11に示したように、1対の挟持片3、3の先端挟持部3d、3dを開閉可能とするようにその中間部においてベース片2に枢着される一方、後部に回転操作部である操作ハンドル4bを有しかつ中間部にねじ部4aを有する締結操作用ボルト4がその先端部においてベース片2の後部に回転自在に止着され、かつ前記挟持片3、3の背後において前記操作用ボルト4のねじ部4aが螺挿された押圧片5が配置され、該押圧片5に、前記操作用4ボルトを押圧片5が螺進する方向に回転することで挟持片3、3の後部に作用し挟持片3、3を先端挟持部3d、3dが閉じる方向に回動せしめる作用部5d、5dが設けられている(同文献1の特許請求の範囲、第1図参照)。
また、
図12に示したような連結具も従来使用されていた。この連結具は、被挟持部材であるパイプ(図示は省略)を断面蟻溝状に切り欠いた2つの半割れ部材a、bにて挟み込み、ボルトdで接合し、連結する。一方の半割れ部材bには楔形の突条cが設けられており、ねじりに対して強度をもたせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の締結用金具は、操作ハンドルを有するボルトを用意する必要があり、汎用性が無い。また、操作ハンドルは手締めのみに対応することから、電動工具の使用ができず、作業効率の向上ができない。押圧片の両側辺部を設けてあることから狭い部分においては使いづらい。先端挟持部で挟持している表面積が少ないことから、挟持力が小さく、強度を確保するために挟持片の上下両側辺部の面積を広げざるを得ず、無駄に大きい。また、ねじりに対しては対策が無いことから安全性が高いとは言えない。
しかも、挟持部にコイルバネを付勢させて、先端挟持部が開いた状態に保持、つまり先端挟持部がコイルバネと従属状態とさせているが、コイルバネを設ける分のコストが増加する。加えて、ベース片にL字状の1対の突起を設けて抜け止め防止としているが、対の突起を成形しづらく、製造コスト及び製造工数がかかる。
また、
図12のような従来の連結具では、位置出しが難しく、蟻溝状の噛み合わせによるボルト接合の為、ボルト締め付け強度による変形が生じ、取り付け精度と作業性が悪くなるだけでなく、2つの半割れ部材とボルトとで分解できるので紛失しやすい。
他部品と組み合わせる場合、平面部分を溶接する必要があり、その都度溶接用の設計図面が必要となることから非効率である。つまり、2つの半割れ部材にて被挟持部材(パイプ)を挟み込んでからボルト接合してパイプを連結し、その後に他部品の平面部分を溶接するという手順となるため取り付け工数がかかる。さらに、精度よく溶接しないと、ボルトが嵌合しない、といった問題点が指摘されており、これらが解決すべき課題となっている。
【0005】
したがって、本発明の目的は、パイプ等の被挟持部材の連結手段として、操作ハンドルが不要な多角ボルト・ナットを使用し、作業効率の向上や製作コストの低減を図り、コイルバネやゴムも不要で部品点数の削減によるコスト低減を図る上、単純構造で多角ボルトの回り止めを可能にすると共に、蟻溝状の噛み合わせではなく単純な挟み込み形状とし、部品の共通化を図って製造コストを抑えた連結具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する手段として、請求項1に記載した発明は、被挟持部材1を一対の挟持部材2A、2Bの開閉によって連結する連結具であって、
前記一対の挟持部材2A、2Bは、基部4を介した回転軸3に支持され平面部材5上又は被取付け部材8の平面部分80上で回動されること、
前記基部4と前記平面部材5及び/又は前記被取付け部材8の平面部分80に前記一対の挟持部材2A、2Bの先端部22方向から挿通された結合部材6の締め付けによって、前記一対の挟持部材2A、2Bは、下端縁21が前記平面部材5又は前記被取付け部材8の平面部分80に当接されながら回転軸3周りに閉じて回動し、被挟持部材1を連結自在に構成されていることを特徴とする連結具である。
【0007】
請求項2に記載した発明は、前記一対の挟持部材2A、2Bが、前記回転軸3周りに回動して前記基部4へ干渉を起こすことによって所定の角度以上には開かない構成であることを特徴とする、請求項1に記載した連結具である。
【0008】
請求項3に記載した発明は、前記一対の挟持部材2A、2Bの先端部22の合わさり面23が平坦なフラット面に形成されていると共に、突条25が前記被挟持部材1へ接触するように内周面24に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載した連結具である。
【0009】
請求項4に記載した発明は、前記結合部材6が、多角ボルト60とナット61の組み合わせで構成され、前記ナット61を螺進させることによって前記一対の挟持部材2A、2Bが閉じ方向に回動することを特徴とする、請求項1~3いずれか一に記載した連結具である。
【0010】
請求項5記載した発明は、前記結合部材6の多角ボルト60が、前記一対の挟持部材2A、2Bの一対の回転軸3、3間に配置されており、前記ナット61の締め付け時に前記多角ボルト60の頭部60aが前記回転軸3に当接して回り止めされる構成であることを特徴とする、請求項1~4いずれか一に記載した連結具である。
【0011】
請求項6記載した発明は、前記一対の挟持部材2A、2Bに挟持される被挟持部材1がパイプで成り、前記パイプ1で組み立てられた搬送台車7に連結されることを特徴とする、請求項1~5いずれか一に記載した連結具である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の連結具によれば、多角ボルト・ナットを使用したことにより汎用性が高くなっただけでなく電動工具を使用することができた結果、作業効率が向上した。また、一対の回転軸によって多角ボルトの回り止めが可能となったことから、特別な形状を設けることなく簡単に多角ボルトとナットとで締結できるため、製造コストの低減や製造工数の削減が実現した。
さらに、コイルバネやゴムといった弾性体を利用することなく一対の挟持部材が互いに独立して開閉自在とすることにより、部品点数を少なくすると共にコスト削減を達成した。また、蟻溝状の噛み合わせではなく挟持部材の単純な挟み込み形状としたことで、多角ボルトの締め付け強度による変形が無くなっただけでなく、取り付け精度や作業性が向上し、位置出しが容易となった上、左右対称の形状としたことにより、部品が共通化できて製造コストの抑制を図り、コンパクトな構成となった。
加えて、一対の挟持部材の内周面に突条を設けたことで被挟持部材であるパイプを食い込ませて挟持力を大きくできただけでなく、軸方向のねじりに対しても強化できたことで、安全性が向上した。また、一対の挟持部材は回転軸周りに回動して基部と干渉を起こし、一対の挟持部材の先端部の開口角度を所定角度以上に開かないようにしたことで、パイプと接合する際に多角ボルト・ナットを僅かなねじ込みで締め込むと一対の挟持部材が自動的に閉じる構成となっているため、スムーズにパイプと連結させることができただけでなく、ナットを多角ボルトから外すことなくパイプとの連結を解除することができたので部品の紛失防止を実現した。
しかも、平面部材とともに被取付け部材を多角ボルト・ナットで接合できるようにしたことで、溶接作業といった特別な技術が無くても簡単に接合できる自在性に優れる。その上、多角ボルトが斜めになったとしても、ナットを締め込むだけで連結することができた。さらにナットを締め込むだけで一対の挟持部材がコイルバネ、ゴムといった弾性体を利用することなく、平面部材上又は被取付け部材の平面部分上で回動して自動的に閉じるシンプル構造を実現した。つまり、被取付け部材を多角ボルト・ナットで接合しながら同時に一対の挟持部材でパイプを挟み込んで連結することとなり、手順が少なくなったことから作業工数の短縮となった。
そして、被取付け部材の平面部分が十分に広ければ平面部材を必要としないことから、更なるコスト削減及び安全性の向上を実現した。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(A)は一対の挟持部材が閉じた連結具を示した斜視図、(B)は一対の挟持部材が開いた連結具を示した斜視図である。
【
図3】(A)は連結具の正面図、(B)は(A)の側面図、(C)は(A)の平面図、(D)は(A)の内部構造を示した底面図である。
【
図4】(A)は
図3(A)のA-A線一部断面図、(B)は
図3(A)で被挟持部材を連結した状態を示した正面図である。
【
図5】(A)(B)は挟持部材の突条の作用を示した説明図である。
【
図6】(A)は一対の挟持部材の開き状態を説明した平面図、(B)は(A)の正面図、(C)は(B)の下方部を一部拡大して示した正面図である。
【
図7】(A)~(G)は連結具の被挟持部材への連結要領を示した正面図である。
【
図8】(A)(B)は結合部材にインサート型ナットの使用例を示した説明図である。
【
図9】連結具の搬送台車への取り付け例を示した斜視図である。
【
図10】
図9における平面部材への連結状況を拡大して示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の連結具は、被挟持部材1を一対の挟持部材2A、2Bの開閉によって連結するものであり、例えば
図9に示したようなパイプ(被挟持部材)1で構築された搬送台車7に連結され、ストッパー等の被取付け部材8が取り付け自在な連結具として好適に実施される。
なお、本実施例の被挟持部材1は合成樹脂被覆鋼管であるが、樹脂被覆の無い鋼管、アルミニウム、合成樹脂その他の材質による軽量構造用管材、更には前記の各種材質による中実の軽量構造用棒材であってもよい。
【0015】
図1~
図6に示した連結具について具体的に説明する。
本連結具は、一対の被挟持部材2A、2Bが、基部4を介した回転軸3に支持され平面部材5の上で回動される。そして、基部4と平面部材5に挿通された結合部材6の締め付けによって、当該一対の挟持部材2A、2Bは、下端縁21が平面部材5に当接されながら回転軸3周りに閉じて回動し、被挟持部材1を連結自在に構成されている。この連結具の材質は、本実施例では鋼材を用いているが、ステンレス材もしくはアルミニウム材であってもよい。前記平面部材5は、図示例のような略円形形状に限ることは無く、平面部材5を略正方形状や略長方形状としても良く、被取付け部材8によって適宜変更が可能である。
一対の挟持部材2A(左側)、2B(右側)は、左右対称のC型半割体の組み合わせで構成され、その内向き開口の平面方向視がコ字状の各底部20に、回転軸3がそれぞれ平行に設けられている(
図3D、
図6A参照)。後述する基部4を介して、回転軸3はボルト30とナット31による接合とされているが、挟持部材2A、2Bに対する溶接止めも実施可能である。各挟持部材2A、2Bは回転軸3回りに回転可能であるが、各挟持部材2A、2Bは互いに独立して回転する構成となっており、一方の挟持部材2A又は2Bが回転軸3回りに回転しても、もう一方の挟持部材2B又2Aは同時に回転するとは限らない。
前記一対の挟持部材2A、2Bの上部の先端部22の合わさり面23は、平坦なフラット面に形成されている。すなわち、
図3Aに示したように、前記合わさり面23から平面部材5へと垂下した垂直面Mで左右対称となっている。また、
図4Bに示したように、挟持部材2A、2Bの内周面24の内径と被挟持部材であるパイプ1の外径とがほぼ同径とされている。
【0016】
また、挟持部材2A、2Bの内周面24には、突条25が内向きに設けられている。被挟持部であるパイプ1の上部を押さえて強固にパイプ1を連結するためで、本実施例の楔形の突条25は軸方向に延びている(
図1B参照)。但し、断続的に設けてもよい。また、この突条25は、本実施例では各挟持部材2A、2Bの上部の内周面24に2か所の合計4か所となっているが、多く設ければパイプ1をさらに強固に連結できる。
詳述すると、
図5Aに示したように、突条25の一対の挟持部材2A、2Bの各先端部22側の辺の延長線Lは、一対の挟持部材2A、2Bの内面の中心軸Oに向かうような構成となっている。また、
図5Bに示したように、突条25の2つの辺における二等分線の内方方向の力Sがパイプ1を押さえる力となっており、さらに、中心軸Oよりも上方に力が集まる構成となっていることから、パイプ1を強固に連結することができるだけでなく外れにくく、ねじれ防止にもなる。
【0017】
基部4は、板状のベース部40と、その前後面に各々垂直に立ち上がる側面部43とで形成されている。前後の側面部43、43の間隔(外寸)は、一対の挟持部材2A、2Bの前記コ字状底部20の内寸より若干短かい長さとされている。
前記ベース部40の中央に大きな通孔42が設けられていると共に、側面部43の両端に回転軸3が挿通される小さな通孔44が設けられている。よって、一対の挟持部材2A、2Bの底部20に設けた通孔20bと位置を同じくする当該基部4の通孔44に、回転軸3を構成する小さなボルト30が挿通され、ナット31で接合されている。
【0018】
結合部材6は、多角ボルト60とナット61から成り、前記ナット61を螺進させることにより一対の挟持部材2A、2Bが閉じ方向に回動する。本実施例では六角ボルトを使用しているが、六角ボルトの代わりに四角ボルトや八角ボルトを使用してもよい。なお、六角ボルト60が通る平面部材5と、位置を共通にする基部4の通孔42、50は各々当該ボルト径より大きな所謂バカ孔に形成されており、当該六角ボルト60は、挟持部材2A、2Bの先端部22方向から通孔42、50に差し込まれる(
図2参照)。
図6Aに示したように、六角ボルト60は一対の回転軸3、3の間に配置され、回転軸3の内幅K1は六角ボルト60の二面幅K2より僅かに大きくしていることから、ナット61の締め付け時に多角ボルト60の頭部60aが回転軸3に当接し、一対の回転軸3、3が六角ボルト60の回り止めの効果を発揮し、六角ボルト60が空回りすることなく基部4と平面部材5とを締め込むことができる。
【0019】
したがって、前記一対の挟持部材2A、2Bは、回転軸3周りに回動してその先端部22が開口するとき、基部4の垂直に立ち上がった側面部43ではない面の下部辺41(
図2)に一対の挟持部材2A、2Bが当接して干渉を起こすことにより(
図6B、C)、一対の挟持部材2A、2Bの先端部22の開口角度θを抑えて所要角度以上には開かない。そして、多角ボルト60とナット61で締め込むと一対の挟持部材2A、2Bが自動的に閉じる方向へと回転することができる。要するに、ナット61を締める方向に回転させると、基部4と平面部材5との距離が縮まろうとしつつ、基部4と共に回転軸3により連結されている一対の挟持部材2A、2Bの下端縁21は平面部材5により押し上げられるような作用が働く。すると、一対の挟持部材2A、2Bは移動せざるを得ない状況となるが、可動方向は回転軸3回りしかなく、一対の挟持部材2A、2Bは回転軸3回りに閉じる方向へと回転する(
図7A~D)。
なお、一対の挟持部材2A、2Bが回転軸3回りに開く方向は基部4と平面部材5との距離が離れるので(
図7F参照)、ナット61を締める方向に回転させても、一対の挟持部材2A、2Bが回転軸3回りに開く方向へと回転することはない。詳述すれば、一対の挟持部材2A、2Bが回転軸3回りに開く方向へ回転させるためには、被挟持部材(パイプ)1を連結具から離して基部4と平面部材5とが離れる方向に動くことで可能となる(
図7E~G)。ナット61を締める方向と逆方向、つまり、ナット61を緩める方向に回転させただけでは一対の挟持部材2A、2Bは回転軸3回りに開く方向へと回転することは無いのである。
よって、ナット61を締める方向に回転させれば一対の挟持部材2A、2Bは回転軸3回りに閉じる方向へと回転し、被挟持部材1を連結具から離したときに一対の挟持部材2A、2Bが回転軸3回りに開く方向へと回転する。
【0020】
本実施例では、一対の挟持部材2A、2Bの最大の開口角度θは、約60°程度となっている。ちなみに、
図6Bの図示例では平面部材5とナット61が接している状態を示しているが、平面部材5とナット61とが離れていても最大の開口角度θ以上に開口することは無く、また、平面部材5と挟持部材2A、2Bとが接していなくても最大の開口角度θ以上に開口することは無い。なお、基部4の大きさを変えることで開口角度θを変えることが可能であるが、少なくともパイプ1が通る程度であることが望ましい。 最大の開口角度θが大きすぎると、多角ボルト60とナット61で締め込む際に一対の挟持部材2A、2Bが自動的に閉じることができないので留意する。
【0021】
図7に示したこの連結具の動作を、パイプ1への連結から離脱させるまでの時系列として説明する。
(1)
図7Aに示すように、予めナット61を緩めて基部4と平面部材5の距離を離れた状態としておき、本連結具を連結させたいパイプ1へ近づける。
(2)
図7Bに示すように、パイプ1に一対の挟持部材2A、2Bの下部のR部を当接させる。
(3)
図7Cに示すように、ナット61を締め込むと、一対の挟持部材2A、2Bが回転軸3回りに閉じる方向へと回転し、突条25の先端がパイプ1と接する。同時に基部4は平面部材5に近づく方向へ動く。ナット61を締め込む際、特殊な工具は必要なく、公知の工具で締めることが可能である。
(4)
図7Dに示すように、ナット61をさらに締め込んで連結具をパイプ1に連結させる。挟持力が増すとともに、突条25がパイプ1に食い込みつつ、パイプ1と連結具が連結される。
(5)
図7Eに示すように、連結具をパイプ1から外すときは、ナット61を工具により緩めて平面部材5から離す。
(6)
図7Fに示すように、パイプ1から連結具を離そうとすると、一対の挟持部材2A、2Bの先端部22から挟持力が失われているので、一対の挟持部材2A、2Bの先端部22はパイプ1の表面を伝うように挟持部材2A、2Bが回転軸3回りに動く。同時に基部4は平面部材5から離れる方向へ動く。
(7)
図7Gに示すように、さらにパイプ1から連結具を離そうとすると、挟持部材2A、2Bは回転軸3回りに動き、ナット61を六角ボルト60から外すことなくやがてパイプ1から連結具を完全に離すことができる。同時に基部4は平面部材5からさらに離れる方向へ動く。
【0022】
図9と
図10は、搬送台車7への連結具の取り付け例を示している。なお、図示した搬送台車7は搬送物積載面を省略している。搬送台車7は、クローラ型を図示しているが、車輪型でも構わない。
搬送台車7に取り付けて連結する場合、特別な工具を必要とすることなく公知の工具により取り付けが可能である。また、溶接を必要とすることが無いので特殊な技術を持たなくても取り付けが可能である。
本取り付け例としては被挟持部材であるパイプ1で組み立てられた搬送台車7と、被取付け部材であるストッパー8とを連結させるために使用される。平面部材5があることにより被取付け部材8(ストッパー)の変形防止及びパイプ1の挟持力の低下防止となる。 六角ボルト60の首下長さが長い場合、被取付け部材8の厚さが変わっても取り付けに影響は出ない。これは六角ボルト60を挟持部材2A、2B側から挿し通しており、挿し通した先に障害物が無いからである(
図2参照)。反対に被取付け部材側8(平面部材側)から六角ボルト60を挿し通そうとすると、パイプ1が障害物となってしまい、確実な取り付けができない。また、六角ボルト60の首下長さを丁度よい長さにしたとしても被取付け部材8の平面部分80が厚くなると十分な取り付けができないのである。
被取付け部材8の平面部分80は、平面部材5とナット61との間に挟むようにして取り付ける。そのとき、挟持部材2A、2Bの底面20aと被取付け部材8の平面部分80とが十分に接していないと、荷重がかかった時に局所的に負荷がかかり破損する恐れがあるため平面部材5を設けている。よって、被取付け部材8の平面部分80が十分広く破損の恐れが無い場合には、平面部材5を用いずに実施することもできる(図示は省略)。そして、六角ボルト60とナット61にて締め込むことで搬送台車7とストッパー8とを同時に取り付けることができる。
[異なる実施形態]
【0023】
結合部材6の異なる実施形態として、
図8に示した如くナット61の代わりに、別のパイプXが差し込まれるインサート型ナット62であってもよい。
これは、前記のナット61を、パイプXが取り付けられたインサート型ナット62とすることにより、パイプXを軸方向に回転させるだけで一対の挟持部材2A、2Bが開閉自在とすることができる。その結果、取り付けるための工具が不要となっただけでなくハンドル形状とするといった特別な形状にする必要なく手締めが可能となり、作業の選択幅が広くなる。
なお、このパイプXの素材は合成樹脂被覆鋼管であるが、樹脂被覆の無い鋼管、アルミニウム、合成樹脂その他の材質による軽量構造用管材でもよい。
【0024】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために申し添える。
【符号の説明】
【0025】
1 被挟持部材(パイプ)
2A 挟持部材(左側)
2B 挟持部材(右側)
20 底部
20a 底面
20b 通孔
21 下端縁
22 先端部
23 合わさり面
24 内周面
25 突条
3 回転軸
4 基部
40 ベース部
41 下部辺
42 通孔
43 側面部
44 通孔
5 平面部材
50 通孔
6 結合部材
60 多角(六角)ボルト
60a 頭部
61 ナット
62 インサート型ナット
7 搬送台車
8 被取付け部材
80 平面部分