(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094727
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】コーティング用液状組成物、ハーフミラー層を有する積層体、及びハーフミラー層を有する積層体の形成方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/08 20060101AFI20230629BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20230629BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20230629BHJP
B41M 3/00 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C09D11/08
B32B27/20 A
B41M1/30 D
B41M3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210202
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】392008024
【氏名又は名称】十条ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 賢一
【テーマコード(参考)】
2H113
4F100
4J039
【Fターム(参考)】
2H113AA03
2H113AA04
2H113BA01
2H113BA03
2H113BA09
2H113BB08
2H113BB22
2H113BC02
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2H113DA43
2H113DA54
2H113DA57
2H113DA58
2H113EA08
2H113EA10
2H113FA29
4F100AB01B
4F100AH02B
4F100AJ04B
4F100AK01A
4F100AT00A
4F100BA02
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4F100EH46
4F100EJ42
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4F100JD06B
4F100JN01B
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4J039AB02
4J039BA06
4J039BA39
4J039BC01
4J039BC07
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4J039CA07
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4J039EA33
4J039EA42
4J039EA43
4J039FA02
4J039GA10
(57)【要約】
【課題】スクリーン印刷法等の簡易印刷法を用いて、外観の高級感に優れるとともに、静電容量式タッチパネルに使用されても、誤動作が少ないハーフミラー層が効率的に得られるコーティング用液状組成物等を提供する。
【解決手段】可視光透過率が20~80%であるハーフミラー層を形成するコーティング用液状組成物等であって、配合成分として、下記(A)~(D)を含む。
(A)金属粒子100重量部
(B)セルロース樹脂0.1~50重量部
(C)架橋剤0.1~20重量部
(D)アルコール溶剤等100~2500重量部
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光透過率が20~80%であるハーフミラー層を形成するコーティング用液状組成物であって、
前記コーティング用液状組成物が、配合成分として、下記(A)~(D)の配合成分を含むことを特徴とするコーティング用液状組成物。
(A)金属粒子100重量部
(B)セルロース樹脂0.1~50重量部
(C)架橋剤0.1~20重量部
(D)アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の中から選ばれる少なくとも一種を含む溶剤100~2500重量部
【請求項2】
前記ハーフミラー層において、測定間距離を1cmとし、所定電圧条件下に測定される電気絶縁抵抗値を1×1011Ω以上の値とすることを特徴とする請求項1に記載のコーティング用液状組成物。
【請求項3】
前記配合成分(A)の平均粒径を0.01~90μmの範囲内の値とし、かつ、前記配合成分(A)の平均厚さを25μm以下の値とすることを特徴とする請求項1又は2に記載のコーティング用液状組成物。
【請求項4】
前記配合成分(C)を、3~6官能の多官能アルコキシ基を有するケイ素含有化合物とすることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のコーティング用液状組成物。
【請求項5】
前記配合成分(D)を、3-メトキシ-1-メチル-ブタノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテル、あるいはいずれか一方であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のコーティング用液状組成物。
【請求項6】
前記コーティング用液状組成物の粘度を1~1000mPa・sec(測定温度:25℃)の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティング用液状組成物。
【請求項7】
基材上に、下記(A)~(D)の配合成分を含むコーティング用液状組成物に由来し、かつ、可視光透過率が20~80%であるハーフミラー層を有することを特徴とするハーフミラー層を有する積層体。
(A)金属粒子100重量部
(B)セルロース樹脂0.1~50重量部
(C)架橋剤0.1~20重量部
(D)アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の中から選ばれる少なくとも一種を含む溶剤100~2500重量部
【請求項8】
基材上に、配合成分として、
(A)金属粒子100重量部と、
(B)セルロース樹脂0.1~50重量部と、
(C)架橋剤0.1~20重量部と、
(D)アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の中から選ばれる少なくとも一種を含む溶剤100~2500重量部と、
を含む所定コーティング用液状組成物に由来した、可視光透過率が20~80%であるハーフミラー層を有する積層体の形成方法であって、下記工程(1)~(3)を含むことを特徴とするハーフミラー層を有する積層体の形成方法。
(1)所定コーティング用液状組成物を準備する工程
(2)前記基材上に、所定コーティング用液状組成物をスクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸版印刷法、ロールコート法、ナイフコート法、又は、スピンコート法の少なくとも一つを用いて、塗膜を形成する工程
(3)前記塗膜を80℃以上に加熱し、前記ハーフミラー層を有する積層体とする工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング用液状組成物、ハーフミラー層を有する積層体、及びハーフミラー層を有する積層体の形成方法に関する。
より詳細には、鏡面性に優れるとともに、静電容量式タッチパネルに使用されても、誤動作が少ないハーフミラー層が形成容易なコーティング用液状組成物、そのようなハーフミラー層を有する積層体、及びハーフミラー層を有する積層体の効率的な形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電容量式タッチパネルに使用され、非動作時は、鏡面性に優れた外観が得られるとともに、動作時には、タッチ操作における誤動作が少ないハーフミラー層を有する積層体が求められている。
すなわち、このようなハーフミラー層を有する積層体を備えた静電容量式タッチパネルは、金属光沢に由来する鏡面性と、電磁波透過性とを兼ね備えることから、デジタルサイネージやタブレット等の各種装置に幅広く用いることが期待されている。
【0003】
そこで、簡単かつ低コストで製造することができ、かつ、鏡面状態の優れたハーフミラータッチパネルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、
図8(a)に示すように、透明基板201の上に、スパッタリング成膜により金属膜202を形成し、金属膜202をエッチング加工して網目パターンのスリット205を形成するとともに、酸化防止剤を印刷して保護層206を形成したハーフミラー200を製造し、更に、導電膜210及び絶縁膜211からなる静電センサを積層した、静電容量式タッチパネル212である。
【0004】
又、外観の高級感に優れ、環境負荷物質の使用が抑制された、電磁波透過性ハーフミラー調フィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、
図8(b)に示すように、光源とともに用いられるとともに、透明基材フィルム310と、当該基材フィルムの片面上に形成された金属層311と、を備え、当該金属層を、アルミニウム等からなる、可視光を透過する不連続な層とするハーフミラー調フィルム300である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-86256(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2019-123224(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、金属膜を製造するに際して、金属のスパッタリング処理を用いていることから、真空又は減圧容器中に、被処理物である基材を設置する必要があった。
そのため、大型で、複雑形状等の基材に対して、事実上、適用できないという問題が見られた。
又、スパッタリング処理の場合、相当大型のスパッタリング装置を用意する必要があって、薄膜であっても、相当の製造時間(真空状態とする準備期間を含む。)がかかるばかりか、製造コストが高くなって、経済的に不利になるという問題も見られた。
更に、金属膜に対して、パターン化のためのスリットを設けることが必須であるため、鏡面性や静電容量式タッチパネルに使用した場合の操作性が得られにくいという問題があった。
【0007】
そして、特許文献2においては、金属層の成形に際し、蒸着等を用いていることから、金属層の海島構造を精度よく形成することが困難になり、体積抵抗率が過度に小さくなって、タッチ操作における誤動作が発生しやすいという問題が見られた。
又、金属層を、蒸着等によって形成されたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる不連続な層としていることから、金属光沢が不十分となって、鏡面性に優れた外観が得られにくいという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の発明者らは鋭意検討した結果、少なくとも所定の配合成分(A)~(D)を、所定割合で含むことによって、簡易塗布方法であってもコーティング用液状組成物に由来した所定塗膜が安定的に得られ、ひいては、所定可視光透過率を有し、タッチパネルに使用した場合の操作性や鏡面性に優れたハーフミラー層を効率的に得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、鏡面性に優れるとともに、静電容量式タッチパネルに使用されても、誤動作が少ないハーフミラー層が形成容易なコーティング用液状組成物、そのようなハーフミラー層を有する積層体、及びハーフミラー層を有する積層体の効率的な形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、可視光透過率を20~80%としたハーフミラー層を形成するコーティング用液状組成物であって、コーティング用液状組成物が、配合成分として、下記(A)~(D)の配合成分を含むことを特徴とするコーティング用液状組成物が提供され、上述した問題を解決することができる。
(A)金属粒子100重量部
(B)セルロース樹脂0.1~50重量部
(C)架橋剤0.1~20重量部
(D)アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の中から選ばれる少なくとも一種を含む溶剤100~2500重量部
このように、配合成分(A)の金属粒子や、配合成分(D)の所定溶剤とともに、配合成分(B)の所定樹脂及び、当該配合成分(B)を架橋するための配合成分(C)の架橋剤等を含むことにより、真空蒸着法やスパッタリング等を用いることなく、スクリーン印刷法等の簡易塗布法を用いて、所定のハーフミラー層を効率的かつ安定的に形成することができる。
従って、静電容量式タッチパネルに使用された場合であっても、非動作時は、鏡面性に優れた外観が得られるとともに、動作時には、タッチ操作における誤動作が少ないハーフミラー層を経済的に得ることができる。
なお、(C)架橋剤として、多官能のアルコキシ基(加水分解してなるヒドロキシ基を含む。)を有するケイ素化合物等を用いることによって、配合成分(B)のセルロース樹脂に対する架橋反応をより迅速かつ確実に行わせることができることも判明している。
【0010】
又、本発明のコーティング用液状組成物を構成するにあたり、ハーフミラー層において、測定間距離(例えば、プローブ間距離、以下、同様である。)を1cmとし、所定電圧条件下(例えば、直流電圧1000V、以下、同様である。)に測定される電気絶縁抵抗値(以下、絶縁抵抗値と称する場合がある。)を1×1011Ω以上の値とすることが好ましい。
このように金属粒子による海島構造と相関する絶縁抵抗値を所定値に制御することによって、静電容量式タッチパネルに使用されても、誤動作が少ないハーフミラー層をより効率的に得ることができる。
【0011】
又、本発明のコーティング用液状組成物を構成するにあたり、配合成分(A)の平均粒径を0.01~90μmの範囲内の値とし、かつ、配合成分(A)の平均厚さを25μm以下の値とすることが好ましい。
このように構成することによって、配合成分(A)の分散性や塗布性が更に向上し、より鏡面性に優れるとともに、静電容量式タッチパネルに使用されても、誤動作が少ないハーフミラー層をより効率的に得ることができる。
すなわち、ハーフミラー層を形成した場合において、粒子同士が膜厚方向に重なりにくく、水平方向に配列しやすくなって、いわゆる海島状構造をより容易に形成できる。
従って、良好なハーフミラー層を更に容易に形成し、ひいては、金属粒子の非存在領域である海部を介して、静電容量式タッチパネルにおける電場を安定的に形成することができる。
【0012】
又、本発明のコーティング用液状組成物を構成するにあたり、配合成分(C)が、3~6官能の多官能アルコキシ基を有するケイ素含有化合物とすることが好ましい。
このように配合成分(C)の架橋剤の種類を制限することによって、配合成分(B)のセルロース樹脂に対する架橋反応をより迅速かつ確実に行わせることができ、しかも、密着性等も向上できる。
【0013】
又、本発明のコーティング用液状組成物を構成するにあたり、配合成分(D)が、3-メトキシ-1-メチル-ブタノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテル、あるいはいずれか一方であることが好ましい。
このように所定溶剤を制限することによって、各種印刷法に適用して、均一表面等を有し、高級感に優れるとともに、静電容量式タッチパネルに使用されても、誤動作が少ないハーフミラー層をより効率的かつ安定的に得ることができる。
【0014】
又、本発明のコーティング用液状組成物を構成するにあたり、コーティング用液状組成物の粘度を1~1000mPa・sec(測定温度:25℃)の範囲内の値とすることが好ましい。
このような粘度に制限することによって、例えば、スクリーン印刷法に適用した場合であっても、均一表面等を有し、高級感に優れるとともに、優れた可視光透過性等を有するハーフミラー層を、より効率的かつ安定的に得ることができる。
【0015】
又、本発明の別の態様としては、基材上に、下記(A)~(D)の配合成分を含むコーティング用液状組成物に由来し、かつ、可視光透過率を20~80%であるハーフミラー層を有することを特徴とするハーフミラー層を有する積層体である。
(A)金属粒子100重量部
(B)セルロース樹脂0.1~50重量部
(C)架橋剤0.1~20重量部
(D)アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の中から選ばれる少なくとも一種を含む溶剤100~2500重量部
このように構成することによって、真空蒸着法やスパッタリング等を用いることなく、スクリーン印刷法等の簡易な塗布法を用いて、優れた鏡面性を有するハーフミラー層を、効率的かつ安定的に形成することができる。
従って、静電容量式タッチパネルに使用された場合であっても、非動作時は、鏡面性に優れた外観が得られるとともに、動作時には、タッチ操作における誤動作を防止することができる。
【0016】
又、本発明の更に別の態様としては、基材上に、配合成分として、
(A)金属粒子100重量部と、
(B)セルロース樹脂0.1~50重量部と、
(C)架橋剤0.1~20重量部と、
(D)アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の中から選ばれる少なくとも一種を含む溶剤100~2500重量部と、
を含む所定コーティング用液状組成物に由来した、可視光透過率が20~80%であるハーフミラー層を有する積層体の形成方法であって、下記工程(1)~(3)を含むことを特徴とするハーフミラー層を有する積層体の形成方法である。
(1)所定コーティング用液状組成物を準備する工程
(2)基材上に、所定コーティング用液状組成物をスクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸版印刷法、ロールコート法、ナイフコート法、又は、スピンコート法の少なくとも一つを用いて、塗膜を形成する工程
(3)塗膜を80℃以上に加熱し、ハーフミラー層を有する積層体とする工程
このようにスクリーン印刷法等の簡易塗布法を用いることによって、ハーフミラー層を有する積層体を効率的かつ安定的に形成することができる。
従って、静電容量式タッチパネルに使用した場合に、非動作時は、金属光沢を有する外観が得られるとともに、動作時には、タッチ操作における誤動作を防止することができるハーフミラー層を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(a)~(c)は、本発明のハーフミラー層を有する積層体の概要を説明するために供する図である。
【
図2】
図2(a)~(c)は、本発明のパターン印刷したハーフミラー層を有する積層体の概要を説明するために供する図である。
【
図3】
図3(a)~(c)は、本発明のハーフミラー層のパターン形状を説明するために供する図である。
【
図4】
図4(a)は、配合成分(a)がインジウムによるハーフミラー層のSEM像(倍率:23000)であり、
図4(b)は、配合成分(a)がアルミニウムによるハーフミラー層のSEM像(倍率:500)である。
【
図5】
図5(a)~(b)は、それぞれ、配合成分(A)の配合量に対する、ハーフミラー層における可視光透過率及び絶縁抵抗値への影響を説明するために供する図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明のハーフミラー層を有する積層体を、点灯した光源上に配置した状態の見え方を説明するために供する図であり、
図6(b)は、消灯した光源上に配置した状態の見え方を説明するために供する図である。
【
図7】
図7(a)~(d)は、本発明のハーフミラー層を有する積層体の形成方法を説明するために供する図である。
【
図8】
図8(a)~(b)は、それぞれ、従来のハーフミラー層を有する積層体等を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、可視光透過率を20~80%としたハーフミラー層を形成するコーティング用液状組成物であって、コーティング用液状組成物が、配合成分として、下記(A)~(D)の配合成分を含むことを特徴とするコーティング用液状組成物である。
(A)金属粒子100重量部
(B)セルロース樹脂0.1~50重量部
(C)架橋剤0.1~20重量部
(D)アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の中から選ばれる少なくとも一種を含む溶剤100~2500重量部
以下、第1の実施形態のコーティング用液状組成物につき、適宜図面を参照しつつ、具体的に説明する。
【0019】
1.配合成分(A)
(1)種類
配合成分(A)は、少なくとも一種の金属粒子であることを特徴としている。
この理由は、このような金属粒子であれば、簡易印刷法であるスクリーン印刷法等を用いて、所定の可視光透過率を有するハーフミラー層を、安定的に形成することが容易なためである。
具体的には、金属粒子の種類としては、インジウム、アルミニウム、金、銀、銅、亜鉛、スズ、鉛、半田、ニッケル、アンチモン、ロジウム、又は、白金等の少なくとも一つであることが好ましい。
【0020】
そして、特に、インジウム粒子であれば、塗布した場合であっても、水平方向に配列しやすくなって、平滑な塗膜になるとともに、隣接するインジウム粒子同士が相互に離間しやすくなる。
又、アルミニウム粒子であっても、当該アルミニウム粒子が、塗布した場合に凝集しやすくなって、かかるアルミニウム粒子の凝集体中に、隙間部分やクラック部分が形成されやすくなる。
更に言えば、スクリーン印刷法等を用いれば、所定箇所のみに、アルミニウム粒子間に、任意の形状や大きさの空隙を形成することができる。
従って、アルミニウム粒子を使用した場合であっても、いわゆる海島状構造を形成できることから、静電容量式タッチパネルに使用された場合であっても、非動作時は、鏡面性に優れた外観が得られるとともに、動作時には、タッチ操作における誤動作が少ないハーフミラー層を得ることができる。
【0021】
又、コーティング用液状組成物における金属粒子の配合量は、特に限定されるものではないが、通常、海島状構造の島部の割合や絶縁抵抗値との関係から、当該コーティング用液状組成物の全体量を100重量%(質量%と同義、以下、同様である。)としたときに、1~40重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように配合成分(A)の配合量を制御することによって、コーティング用液状組成物中における配合成分(A)の分散性や塗布性が更に向上するためである。
従って、タッチパネルに使用した場合の操作性や鏡面性に優れたハーフミラー層を効率的に得ることができる。
【0022】
より具体的には、コーティング用液状組成物における金属粒子の配合量が1重量%未満の値になると、鏡面性が、著しく低下する場合があるためである。
一方、配合成分(A)の配合量が40重量%を超えた値になると、金属粒子の均一拡散が困難になり、ひいては、均一に塗布することが困難になったり、あるいは、タッチパネルに使用した場合の操作性が著しく低下する場合があるためである。
従って、配合成分(A)の配合量を5~35重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、10~30重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0023】
(2)平均粒径
又、配合成分(A)の平均粒径(円相当径)は、JIS Z 8819-2(2019)に準拠して測定される値であり、静電容量式タッチパネルに使用した場合の操作性、鏡面性、分散性、更には溶剤との相性等を考慮して決めることが好ましいが、通常、0.01~90μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように配合成分(A)の平均粒径を制御することによって、配合成分(A)の分散性や塗布性が更に向上し、鏡面性に更に優れるとともに、静電容量式タッチパネルに使用した場合に、更に優れた操作性を発揮できるハーフミラー層を効率的に得ることができるためである。
【0024】
より具体的には、配合成分(A)の平均粒径が0.01μm未満の値になると、コーティング用液状組成物における金属粒子が凝集しやすくなって、均一に塗布することが困難になったり、あるいは、形成したハーフミラー層の鏡面性が著しく低下する場合があるためである。
一方、配合成分(A)の平均粒径が90μmを超えた値になると、金属粒子の均一拡散が困難になり、ひいては、均一に塗布することが困難になったり、あるいは、形成したハーフミラー層の鏡面性や静電容量式タッチパネルに使用した場合の操作性が著しく低下する場合があるためである。
従って、配合成分(A)の平均粒径(円相当径)を0.05~70μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.1~50μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、配合成分(A)の平均粒径(円相当径)は、画像処理装置や粒度分布計を用いて、算術平均値や、粒度分布チャートのD50として測定することもできるし、あるいは、配合成分(A)の電子顕微鏡写真から、間接的に測定することもできる。
【0025】
(3)粒子形状
又、配合成分(A)の粒子形状を、フレーク状(鱗片状、又は薄片状と称する場合がある。)とすることが好ましい。
この理由は、このようなフレーク状であれば、ハーフミラー層を形成した場合において、粒子同士が膜厚方向に重なりにくく、水平方向に配列しやすくなって、いわゆる海島状構造をより容易に形成できるためである。
従って、フレーク状である金属粒子によれば、優れた可視光透過率や、絶縁抵抗値が所定範囲のハーフミラー層を更に容易に形成し、ひいては、金属粒子の非存在領域である海部を介して、静電容量式タッチパネルにおける電場を安定的に形成することができるためである。
【0026】
又、配合成分(A)の粒子形状をフレーク状とした場合に、配合成分(A)の平均厚さを25μm以下の値とすることが好ましい。
この理由は、このように配合成分(A)の形状及びその平均厚さをそれぞれ制御することによって、鏡面性に更に優れるとともに、静電容量式タッチパネルに使用した場合に優れた操作性を有するハーフミラー層を効率的に得ることができるためである。
【0027】
より具体的には、配合成分(A)の平均厚さが25μmを超えた値になると、均一な島状構造を形成することが困難になって、ひいては、形成したハーフミラー層の鏡面性や静電容量式タッチパネルに使用した場合の操作性が著しく低下する場合があるためである。
但し、金属粒子の均一拡散、及び、均一塗布をし易くする観点から、配合成分(A)の平均厚さを1nm以上とすることが好ましい。
従って、配合成分(A)の平均厚さを10nm~5μmの範囲内の値とすることがより好ましく、30nm~1μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、配合成分(A)の平均厚さは、ノギスやマイクロメータを用いて直接的に測定することもできるし、あるいは、配合成分(A)の電子顕微鏡写真から、間接的に測定することもできる。
【0028】
(5)海島状構造
図4(a)によると、インジウムによる海島状構造においては、平均粒径(円相当径)0.2μmのインジウム粒子がそれぞれ島部を形成し、インジウム粒子同士の隙間が海部を形成していることが理解される。すなわち、インジウムによる海島状構造は、タッチ操作における誤動作が少なく、優れた外観を有するハーフミラー層の形成を可能にするものである。
一方、
図4(b)によると、アルミニウムによる海島状構造においては、アルミニウム粒子の凝集体が島部を形成し、アルミニウム粒子の凝集体中のクラック部分が海部を形成していることが理解される。すなわち、アルミニウムによる海島状構造は、より汎用性が高いハーフミラー層の形成を可能にするものである。
【0029】
2.配合成分(B)
(1)種類
配合成分(B)は、少なくともセルロース樹脂を含む粘度調整用樹脂である。
すなわち、セルロース樹脂であれば、比較的少量の配合でもって、コーティング用液状組成物における粘度調整を行うことができ、しかも、水溶性やアルコール可溶性に優れている。
又、かかるセルロース樹脂の種類は、特に制限されるものではないが、天然樹脂としてのセルロース樹脂単体はもちろんのこと、エステル化されたセルロース樹脂や、官能基を有するセルロース樹脂等も好適である。
より具体的には、ニトロセルロース樹脂、セルロースアセテート樹脂、セルロースブチレート樹脂、セルロースプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース等の少なくとも一つが挙げられる。
【0030】
特に、配合成分(B)がニトロセルロース樹脂であれば、比較的少量の配合でもって、粘度調整効果を発揮することから好適である。
すなわち、ニトロセルロース樹脂は、天然セルロースと硝酸とを反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものが好ましい。
従って、ニトロセルロース樹脂の平均重合度が20~200、更には30~150の範囲内の値であるものがより好ましい。
そして、かかる平均重合度が20以上の場合であれば、塗膜の強度が向上し、耐擦傷性が向上するため好ましいと言える。又、平均重合度が200以下の場合であれば、溶剤への溶解性、インキの低温安定性、併用樹脂との相溶性が向上するため好ましいと言える。
【0031】
(2)重量平均分子量
又、配合成分(B)のセルロース樹脂の重量平均分子量(Mw)を5,000~100,000の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる重量平均分子量が5,000未満の値になると、粘度調整剤としての機能が低下し、比較的少量の配合では、粘度上昇が著しく低くなる場合があるためである。又、セルロース樹脂の重量平均分子量が、5,000未満の値になると、基材との密着不良を起こしやすくなるとともに、塗膜の平滑性が低下する場合があるためである。
一方、セルロース樹脂の重量平均分子量が100,000を超えると、金属粒子の均一拡散が困難になり、ひいては、均一に塗布することが困難になったり、あるいは、形成したハーフミラー層における鏡面性が著しく低下する場合があるためである。しかも、硬化膜の表面強度が過度に硬くなり、柔軟性が低下する場合があるためである。
従って、セルロース樹脂の重量平均分子量を10,000~80,000の範囲内の値とすることが好ましく、15,000~50,000の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、セルロース樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値として算出することができる。
【0032】
(3)配合量
又、配合成分(B)の配合量を、配合成分(A)100重量部(質量部と同義、以下、同様である。)に対して、0.1~50重量部の範囲内の値とすることを特徴としている。
この理由は、このように配合成分(B)の配合量を制御することによって、配合成分(A)の分散性や塗布性が更に向上し、静電容量式タッチパネルに使用した場合の操作性に更に優れるとともに、優れた耐久性や、高い鏡面性を有するハーフミラー層を効率的に得られるためである。
【0033】
より具体的には、配合成分(B)の配合量が0.1重量部未満の値になると、均一に塗布することが困難になったり、あるいは、形成したハーフミラー層の鏡面性や静電容量式タッチパネルに使用した場合の操作性が著しく低下する場合があるためである。
一方、配合成分(B)の配合量が50重量部を超えた値になると、相対的に、金属粒子の配合量が減少し、ひいては、形成したハーフミラー層の鏡面性や静電容量式タッチパネルに使用した場合の操作性が著しく低下する場合があるためである。
従って、配合成分(B)の配合量を3~25重量部の範囲内の値とすることが好ましく、5~20重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0034】
3.配合成分(C)
(1)種類
配合成分(C)は、所定の架橋剤であって、主として、配合成分(B)であるセルロース樹脂が有する官能基(ヒドロキシ基)と反応して、ハーフミラー層に架橋構造を導入することができる。
従って、このような架橋剤として、多官能アルコキシ基(アルコキシ基が加水分解したヒドロキシ基を含む。以下、同様である)を有するケイ素含有化合物、イソシアネート化合物、ブロック化イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、金属系化合物及びオキサゾリン化合物の少なくとも一つを用いることが好ましい。
【0035】
特に、コーティング用液状組成物が水性であっても、配合成分(C)が、多官能アルコキシ基を有するケイ素含有化合物、より具体的には、3~6官能の多官能アルコキシ基(加水分解したヒドロキシ基を含む)を有するケイ素含有化合物であることが好ましい。
より具体的には、ビス-(3-メトキシシリルプロピル)アミン、ビス-(3-エトキシシリルプロピル)アミン、ビス-(3-プロポキシシリルプロピル)アミン、
ビス-(2-メトキシメチル)アミン、ビス-(2-メトキシエチル)アミン、ビス-(2-メトキシプロピル)アミン、ビス-(3-メトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビス-(3-エトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビス-(3-プロポキシシリルプロピル)イソシアヌレート、ビス-(2-メトキシメチル)イソシアヌレート、ビス-(2-メトキシエチル)イソシアヌレート、ビス-(2-メトキシプロピル)イソシアヌレート、3-メトキシシリルプロピルコハク酸、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミンの加水分解縮合物等の少なくとも一つが挙げられる。
特に、これらのうち、ビス-(3-メトキシシリルプロピル)アミンや、ビス-(3-エトキシシリルプロピル)アミン等は、両末端に複数アルコキシ基を有し、溶液状態では、比較的安定的であるのに、所定温度に加熱すると、架橋剤として、セルロース樹脂等が有するヒドロキシ基と適度に反応しやすいことから好適である。
又、多官能アルコキシ基を有するケイ素含有化合物であれば、分子内、特に、分子末端に電気陰性度の高いケイ素原子(Si)を有することから、得られたハーフミラー層が、各種基材に対して、良好な密着性(接着性)を示すやすくすることもできる。
【0036】
又、配合成分(C)の架橋剤の補強或いは密着性向上のために、上述した多官能アルコキシ基を有するケイ素含有化合物以外のシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を併用することも好ましい。
より具体的には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトメチルジメトキシシラン、3-メルカプトトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシチタン、3-アミノプロピルトリエトキシチタン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシチタン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシチタン、3-ウレイドプロピルトリエトキシチタン、3-ウレイドプロピルトリメトキシチタン及び3-アミノプロピルトリエトキシアルミニウムの少なくとも一つを配合することが好ましい。
この理由は、このような比較的低分子量のシランカップリング剤を、所定量(上述した多官能アルコキシ基を有するケイ素含有化合物等100重量部に対して、通常、1~30重量部)を併用することにより、配合成分(B)であるセルロース樹脂が有する官能基(ヒドロキシ基)と反応を任意に制御できるとともに、各種金属粒子や基材との間の密着性についても、更に強固に制御できる場合があるためである。
【0037】
(2)配合量
又、配合成分(C)の配合量を、通常、配合成分(A)100重量部に対して、0.1~20重量部の範囲内の値とすることを特徴としている。
この理由は、このように配合成分(C)の配合量を制御することによって、得られたハーフミラー層の耐久性や基材に対する密着性等を飛躍的に向上させることができるためである。
【0038】
より具体的には、配合成分(C)の配合量が0.1重量部未満の値になると、得られたハーフミラー層の耐久性や基材に対する密着性等が著しく低下する場合があるためである。
一方、配合成分(C)の配合量が20重量部を超えた値になると、コーティング用液状組成物におけるシェルフライフが著しく低下する場合があるためである。
従って、配合成分(C)の配合量を0.5~15重量部の範囲内の値とすることが好ましく、1~10重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0039】
4.配合成分(D)
(1)種類
配合成分(D)は、有機溶剤であって、主として、配合成分(B)であるセルロース樹脂を溶解させ、配合成分(A)を均一に分散させやすくするための分散剤である。
従って、アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の中から選ばれる少なくとも一種を含む溶剤を用いることが好ましい。
【0040】
例えば、アルコール溶剤である3-メトキシ-1-メチル-ブタノール(以下、MMBと略する場合がある。)や、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノールの少なくとも一つであれば、安全性に優れているばかりか、配合成分(B)のセルロース樹脂を均一かつ迅速に溶解しやすく、ひいては、配合成分(A)の金属粒子を均一に分散させやすいことから、より好ましいと言える。
又、ケトン溶剤のメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の少なくとも一つであれば、配合成分(B)のセルロース樹脂を本発明のコーティング用液状組成物中に均一に分散させやすいことから好ましいと言える。
炭化水素溶剤としては、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、コールタールナフサ等の少なくとも一つがあげられる。
エステル溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等の少なくとも一つが挙げられる。
グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ブチルセロソルブ( エチレングリコールモノブチルエーテル)等の少なくとも一つが挙げられる。
【0041】
又、プロピレングリコール溶剤のエチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルであれば、印刷基材となる三次元成形加工が可能な樹脂フィルムへのダメージがほとんど無い為、得られた積層体が良好な延伸性を示すことができる点から好ましいと言える。
そして、配合成分(D)として、3-メトキシ-1-メチル-ブタノール及びプロピレングリコールモノメチルエーテル、あるいはいずれか一方であることが、最も好ましいと言える。
【0042】
(2)配合量
又、配合成分(D)の配合量を、配合成分(A)100重量部に対して、100~2500重量部の範囲内の値とすることを特徴としている。
この理由は、このように配合成分(D)の配合量を制御することによって、配合成分(A)の分散性やコーティング用液状組成物における塗布性が更に向上し、ひいては、静電容量式タッチパネルに使用した場合の操作性に優れるとともに、優れた耐久性や、高い鏡面性を有するハーフミラー層を効率的に得ることができるためである。
【0043】
より具体的には、配合成分(D)の配合量が100重量部未満の値になると、コーティング用液状組成物を均一に塗布することが困難になったり、あるいは、形成したハーフミラー層の鏡面性や静電容量式タッチパネルに使用した場合の操作性が著しく低下する場合があるためである。
一方、配合成分(D)の配合量が2500重量部を超えた値になると、金属粒子の均一拡散が困難になり、ひいては、スクリーン印刷法等によって、均一に塗布することが困難になったり、あるいは、形成したハーフミラー層の鏡面性や静電容量式タッチパネルに使用した場合の操作性が著しく低下する場合があるためである。
従って、配合成分(D)の配合量を200~1500重量部の範囲内の値とすることが好ましく、300~1000重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0044】
5.配合成分(E)
(1)種類
配合成分(E)は、シリコーン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、及び、オレフィン系表面調整剤の少なくとも一つであって、主として、配合成分(A)を、他の配合成分と、均一に分散させやすくし、更には、コーティング用樹脂組成物の流動性、消泡性、レベリング性等の印刷特性を向上させるための化合物である。
より具体的には、配合成分(E)が、これらシリコーン系表面調整剤等の場合、その重量平均分子量が1000~30000の範囲内の値であることが好ましい。
又、シリコーン系表面調整剤の場合、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アクリル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリメチルアルキルシロキサン等が挙げられるが、市販品を用いることもでき、例えば、BYK302、BYK310、BYK333、BYK392(以上、ビッグケミージャパン製)の少なくとも一つが好適である。
又、フッ素系化合物としては、例えば、BYK-340(ビックケミージャパン製)、DIC株式会社製のメガファックシリーズなどから選ばれる少なくとも一つが好適である。
更に、アクリル系表面調整剤の場合、所定のアクリル系共重合体が挙げられるが、市販品を用いることもでき、BYK350、BYK354、BYK392(以上、ビッグケミージャパン製)、共栄社化学株式会社製のポリフローシリーズの中から選ばれる少なくとも一つが好適である。
オレフィン系表面調整剤としては、共栄社化学株式会社製のフローレンシリーズの中から選ばれる少なくとも一つが好適である。
【0045】
又、配合成分(E)の配合量についても、用途に応じて適否選択できるが、通常、配合成分(A)100重量部に対して、0.1~20重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように配合成分(E)の配合量を制御することによって、コーティング用液状組成物を均一に塗布することが容易になったり、あるいは、形成したハーフミラー層の静電容量式タッチパネルの操作性が、著しく向上する場合があるためである。
【0046】
より具体的には、配合成分(E)の配合量が0.1重量部未満の値になると、得られたハーフミラー層の耐久性や基材に対する密着性等が著しく低下する場合があるためである。
一方、配合成分(E)の配合量が20重量部を超えた値になると、コーティング用液状組成物に由来する塗膜の耐久性や密着性が著しく低下する場合があるためである。
従って、配合成分(E)の配合量を0.5~15重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、1~10重量部の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0047】
6.添加剤
又、コーティング用液状組成物は、各種添加剤として、従来公知のものを適宜含むことが好ましい。
例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料誘導体、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、金属キレート、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、ワックス成分、カップリング剤などの少なくとも一つを、所定量(例えば、コーティング用液状組成物の配合成分(A)100重量部に対して、0.1~20重量部)使用することが好ましい。
【0048】
7.粘度
コーティング用液状組成物の粘度は、コーティング法に適合させて適宜変更することができるが、通常、1~1000mPa・sec(測定温度:25℃、以下、同様である。)の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このようにコーティング用液状組成物の粘度を制御することによって、各種コーティング法に適用した場合に、コーティング用液状組成物を均一に塗布することが容易になったり、あるいは、形成したハーフミラー層の鏡面性や静電容量式タッチパネルに使用した場合の操作性が著しく向上する場合があるためである。
【0049】
より具体的には、コーティング用液状組成物の粘度が1mPa・sec未満の値になると、スクリーン印刷法等に適用した場合に、液だれしたり、あるいは、コーティング用液状組成物における金属粒子の均一拡散が困難になる場合があるためである。
一方、コーティング用液状組成物の粘度が1000mPa・secを超えた値になると、コーティング用液状組成物におけるシェルフライフが著しく低下する場合があるためである。
従って、コーティング用液状組成物の粘度1.5~500mPa・secの範囲内の値とすることが好ましく、2~200mPa・secの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0050】
8.ハーフミラー層
(1)可視光透過率
又、ハーフミラー層は、可視光透過率として、波長400~700nmの可視光に対する可視光透過率(平均値)を20~80%の範囲内の値とすることを特徴とし、便宜的には、代表値である500nmにおいて、可視光透過率を20~80%の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、波長400~700nmの光に対する可視光透過率が20%未満となると、ディスプレイ等から表示光を透過させて画像を表示させた際に、画像が視認しにくくなる場合があるためである。
一方、可視光透過率が80%を超えると、ハーフミラー層における反射光の強度が著しく低下し、鏡としての機能が不十分となる場合があるためである。
従って、可視光透過率を30~75%の範囲内の値とすることがより好ましく、40~70%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、ハーフミラー層における可視光透過率は、後述する実施例1に示すように、例えば、日立ハイテクノロジーズ社製分光光度計U4100を用いて測定することができる。
【0051】
ここで、ハーフミラー層の可視光透過率としては、例えば、
図5(a)に示すように、配合成分(A)の配合量によって制御することができる。
すなわち、
図5(a)は、横軸に、金属粒子(フレーク状インジウム粒子)の配合量がとって示してあり、縦軸に、ハーフミラー層の可視光透過率の値がとって示してある。
かかる
図5(a)中の特性曲線から理解されるように、金属粒子の配合量と、それを含んでなるハーフミラー層の可視光透過率とは、反比例的な関係があって、通常、コーティング用液状組成物100重量%に対して、金属粒子の配合量を好ましくは40重量%以下、より好ましくは35重量%以下、更に好ましくは30重量%以下とすることにより、ハーフミラー層の可視光透過率を20~80%の範囲内の値とすることができる。
【0052】
(2)電気絶縁抵抗値
ハーフミラー層の電気絶縁抵抗値(以下、単に、絶縁抵抗値と称する場合がある。)を1×1011Ω以上の値とすることが好ましい。
この理由は、このように絶縁抵抗値を制御することによって、金属粒子による海島状構造の形成性を、間接的ではあるが、確実に制御するためである。
すなわち、ハーフミラー層の絶縁抵抗値が、1×1011Ω未満の値になると、形成したハーフミラー層における金属粒子による海島状構造が確実に形成されず、鏡面性が著しく低下する場合があるためである。
一方、ハーフミラー層の絶縁抵抗値が過度に高くなると、選択可能な材料種が過度に制限されたり、静電容量式タッチパネルに使用した場合の操作性が過度に低下する場合があるためである。
従って、ハーフミラー層の絶縁抵抗値を1×1012Ω~1×1015Ωの範囲内の値とすることがより好ましく、1×1013Ω~1×1014Ωの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、ハーフミラー層の絶縁抵抗値は、後述する実施例1で示す測定方法で測定することができる。
【0053】
ここで、ハーフミラー層の絶縁抵抗値としては、例えば、
図5(b)に示すように、配合成分(A)の配合量によって制御することができる。
すなわち、
図5(b)は、横軸に、金属粒子(フレーク状インジウム粒子)の配合量がとって示してあり、縦軸に、ハーフミラー層の絶縁抵抗値がとって示してある。
かかる
図5(b)中の特性曲線から理解されるように、金属粒子の配合量と、それを含んでなるハーフミラー層の絶縁抵抗値とは、反比例的な関係があって、通常、コーティング用液状組成物100重量%に対して、金属粒子の配合量を好ましくは40重量%以下、より好ましくは35重量%以下、更に好ましくは30重量%以下とすることにより、ハーフミラー層の絶縁抵抗値を1×10
11Ω以上の値とすることができる。
【0054】
(3)可視光反射率
又、ハーフミラー層は、可視光反射率として、波長400~700nmの可視光に対する可視光反射率を20~80%の範囲内の値とすることが好ましく、便宜的には、代表値である500nmにおいて、可視光反射率が20~80%の範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、可視光反射率が20%未満となると、ハーフミラー層における反射光の強度が著しく低下し、鏡としての機能が不十分となる場合があるためである。
一方、可視光反射率が80%を超えると、ディスプレイ等から表示光が透過しにくくなって、画像を表示させた際に、画像が視認しにくくなる場合があるためである。
従って、可視光反射率を30~70%の範囲内の値とすることがより好ましく、40~60%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0055】
(4)厚さ
ハーフミラー層の厚さは、用途にもよるが、通常、0.1~500μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このようにハーフミラー層の厚さを制御することによって、可視光透過率や、可視光反射率を制御し、更には、均一な塗膜として、ハーフミラー層を形成しやすくするためである。
すなわち、ハーフミラー層の厚さが、0.1μm未満の値になると、均一な厚さのハーフミラー層を形成することが困難となる場合があるばかりか、機械的強度や耐久性が著しく低下する場合があるためである。
一方、ハーフミラー層の厚さが、過度に厚くなり、500μmを超えると、良好な可視光透過率や可視光反射率、更には、静電容量式タッチパネルに使用した場合の良好な操作性を得ることが困難になる場合があるためである。
従って、ハーフミラー層の厚さを1~100μmの範囲内の値とすることがより好ましく、5~50μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0056】
(5)表面粗さ(Ra)
ハーフミラー層の表面粗さ(Ra)は、JIS B 0601(1994)に準拠して測定される値であり、用途にもよるが、通常、1μm以下の値とすることが好ましい。
この理由は、このようにハーフミラー層の表面粗さ(Ra)を制御することによって、可視光透過率や、可視光反射率を制御し、更には、均一な塗膜として、ハーフミラー層を形成しやすくするためである。
すなわち、ハーフミラー層の表面粗さ(Ra)が、過度に大きくなり、1μmを超えると、良好な可視光透過率や可視光反射率、更には、静電容量式タッチパネルに使用した場合の良好な操作性を得ることが困難になる場合があるためである。
但し、海島状構造の境界を明確にして、表面粗さの制御をし易くする観点から、表面粗さを0.01μm以上とすることがより好ましい。
従って、ハーフミラー層の算術平均高さを0.05~0.4μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.1~0.15μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
なお、実施例において、後述するように、かかるハーフミラー透過性層の表面粗さ(Ra)は、非接触式の表面粗さ計を用いて、精度良く測定することができる。
【0057】
(6)海島状構造
海島状構造は、隣接する金属粒子が各々独立し、互いにわずかに離反し、又は一部接触した状態で敷き詰められてなる構造と定義される。
ここで、
図4(a)に、本発明の一実施形態におけるインジウムによる海島状構造のハーフミラー層のSEM像を示し、
図4(b)に、本発明の一実施形態におけるアルミニウムによる海島状構造のハーフミラー層のSEM像を示す。
このような海島状構造のハーフミラー層は、例えば、基材上に、本発明のコーティング用液状組成物を塗布することによって、容易に形成することができる。
【0058】
(7)鏡面光沢度
又、JIS Z 8741(1997)に準拠して測定されるハーフミラー層の60°鏡面光沢度を10%以上とすることが好ましい。
この理由は、60°鏡面光沢度が10%未満となると、優れた鏡面性を得ることが困難になる場合があるためである。
従って、ハーフミラー層の60°鏡面光沢度を20%以上とすることがより好ましく、30%以上とすることが更に好ましい。
【0059】
(8)賦形性
ハーフミラー層を有する積層体を、180°に折り曲げたり、150%に伸張させた場合に、ハーフミラー層にクラックが生じたり、破損したりしないように、賦形性を有することが好ましい。
より具体的には、ハーフミラー層を有する積層体を、立ち上がりとしての曲面部分(R=0.5mm)を有する金型内に収容し、その金型内に、溶融状態の樹脂を注入し、更にそれを室温まで冷却して、所定形状の成形品とする際に、ハーフミラー層にクラックが生じず、破損しないことが好ましい。
すなわち、曲面部分を有する静電容量式タッチパネルに、ハーフミラー層を有する積層体を装着する前に、半径0.5mmの仮想円があることを想定し、その仮想円に沿って立ち上がる曲面部分を有する金型内に、溶融状態の樹脂を注入し、それを室温まで冷却して、予め曲面部分に合わせた形状にすることが好ましいためである。
【0060】
そして、ハーフミラー層に用いられる金属粒子の種類が、フレーク状インジウム単独使用の場合、あるいは、例えば、金属粒子の全体量を100重量%としたとき、フレーク状インジウムを50重量%以上含む場合であれば、一定条件下、180°に折り曲げたり、R=0.5mmで湾曲させたような場合に、クラック等が生じず、比較的良好な賦形性が得られることが判明してる。
又、スクリーン印刷法等を用いて、
図3(a)~(c)に示すように、ハーフミラー層を所定パターン化することは、賦形性を著しく向上させられることから、より好ましい態様である。
【0061】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、基材上に、下記(A)~(D)の配合成分を含むコーティング用液状組成物に由来し、かつ、可視光透過率が20~80%であるハーフミラー層を有することを特徴とするハーフミラー層を有する積層体である。
(A)金属粒子100重量部
(B)セルロース樹脂0.1~50重量部
(C)架橋剤0.1~20重量部
(D)アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の中から選ばれる少なくとも一種を含む溶剤100~2500重量部
以下、本発明を実施するための第2の実施形態につき、適宜図面を参照しつつ、具体的に説明する。
【0062】
1.ハーフミラー層
(1)基本構成
ハーフミラー層の基本構成は、第1の実施形態で説明いた内容と同様であって、可視光透過率が20~80%である、所定の可視光透過率を有する金属粒子含有樹脂層である。
【0063】
例えば、
図2(a)に示すように、基材10上にハーフミラー層12を有し、当該ハーフミラー層が保護層14に覆われ、ハーフミラー層12が島部12aと、海部12bと、を有する積層体100である。
又、
図2(b)~(c)に示すように、基材10上にハーフミラー層12と、装飾層13と、を有する積層体100’や保護層14上に接着剤層16を有する積層体100’’とすることも好ましい。
【0064】
(2)パターン
又、例えば、
図2(a)に示すように、ハーフミラー層について、所定のパターン部18と、スリット部19とを有する、積層体102とすることも好ましい。
更に、
図2(b)~(c)に示すように、装飾層13を有する積層体102’や保護層14上に接着剤層16を有する積層体102’’とすることも好ましい。
すなわち、特に形状は限定されないものの、円又は楕円のドット状、タイル状、ライン状、ハニカム状とすることが好ましい。
【0065】
更には、各パターンについて、島部12aと、海部12bと、を反転させた反転ドット状、反転タイル状、反転ライン状、反転ハニカム状とすることも好ましい。
この理由は、このようにパターン化することにより、賦形等によって基材10が変形した場合であっても、ハーフミラー層12におけるクラックや剥がれを有効に防止することができるためである。
加えて、ハーフミラー層12の海島状構造における、島部12aと、海部12bとの境界を明確にすることによって、可視光透過率や絶縁抵抗値の制御をより容易にすることができるためである。
【0066】
従って、特に、
図3(a)~(c)に示すように、ハニカム状構造、反転ハニカム状構造、又はライン状構造の、パターン部(18a~18c)と、スリット部(19a~19c)とを有する、ハーフミラー層を有する積層体(100a~100c)であることが更に好ましい。
【0067】
2.基材
ハーフミラー層を有する積層体の一部を構成する基材(以下、基材フィルムと称する場合もある。)の種類は、用途によって適宜選択されるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリスチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、ポリウレタン、アクリル(PMMA)、ABSなどの単独重合体や共重合体からなる少なくとも一つの樹脂基材を用いることが好ましい。
これらの樹脂基材であれば、可視光透過率(例えば、90%以上)に優れた透明基材であり、ハーフミラー層との密着性に優れ、かつ、光輝性やタッチパネルに使用した場合の操作性に影響を与えることが少ないためである。
【0068】
但し、上記材料の中でも、透明性、耐久性、耐熱性等と、コストとのバランスが更に良いことから、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマーの少なくとも一つが好ましい。
又、樹脂基材のほかに、無機基材として、透明性が高く、耐熱性、硬度等に優れたガラスを含むセラミック等も好ましい。
更に、基材は、単層フィルムでもよいし、積層フィルムでもよい。そして、加工のし易さ等から、厚さを、通常、5~500μmの範囲内の値とすることが好ましく、10~300μmの範囲内の値とすることがより好ましく、15~100μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
その他、ハーフミラー層との付着力を強くするために、基材の両面又は片面に、プラズマ処理や易接着処理などが施してあることも好ましい。
【0069】
3.装飾層
ハーフミラー層を有する積層体は、基材の表面に、直接的又は間接的に、装飾層を備えることが好ましい。
より具体的には、
図1(b)に示すように、基材10のハーフミラー層12と同一側の面に形成された装飾層13を備えた構成であることが好ましい。
又、装飾層13を設ける位置は特に限定されないが、ハーフミラー層12と基材10との間、又は、基材10のハーフミラー層12と同一側の面に設けることがより好ましい。
この理由は、ハーフミラー層12を有する積層体を介して、反射や透過した光を視認することで、装飾層13を重ねて視認したり、あるいは、ハーフミラー層12を有する積層体の周囲に装飾層13を形成し、装飾効果や、賦形性を向上させることができるためである。
ここで、かかる装飾層13は、例えば、先述の基材10に用いることができる材料に対して、スクリーン印刷、グラビア印刷、凸版印刷、あるいはレーザープリンタ等の公知の印刷法を用いることにより形成することができる。
【0070】
特に、
図6(a)~(b)に示すように、ハーフミラー層12を有する積層体が装飾層13を有している場合には、ハーフミラー層12を有する積層体は、光源2上に配置されていることが好ましい。
この理由は、光源2の点灯時には装飾層13が透けて見え、消灯時には鏡のような外観を表すことができるためである。
具体的には、光源2の点灯時には、光源からの透過光X1の強度が、光源からの反射光X2の強度よりも多い。
この場合、視認者52は、装飾層13や光源からの透過光X1を視認することができるためである。
一方、光源2の消灯時には、視認対象50からの光Y1が、ハーフミラー層12で反射及び透過し、視認者への光Y2の強度が、視認対象からの透過光Y3の強度よりも多い。
この場合、視認者52は、ハーフミラーを有する積層体100’を介して、視認対象50を視認することができるためである。
そして、ハーフミラー層12とともに用いられる光源2の種類は、特に限定はされないが、面光源を用いることが好ましく、更には、LEDと導光板を組み合わせた面光源を用いることがより好ましい。
【0071】
4.接着剤層
又、ハーフミラー層を有する積層体は、接着剤(粘着剤も含む。以下、同様である。)を含んでなる接着剤層を備えることも好ましい。
すなわち、かかる接着剤層を介して、ハーフミラー層は、被着部材に貼付されて用いられることになる。
ここで、接着剤の種類は特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、及びポリエーテル系粘着剤のいずれかを単独で、或いは、2種類以上を組み合わせて使用することができる。
但し、透明性、加工性及び耐久性などが更に良好なことから、アクリル系粘着剤やシリコーン系粘着剤等を用いることが、より好ましい。
【0072】
又、接着剤層は、ハーフミラー層上、又は、後述の保護層上に形成されることが好ましく、透明粘着剤からなることが好ましい。
この場合、ハーフミラー層は、透明な被着部材の視認される側(外側)の面と同一側(内側)の面に貼付されて用いられることが好ましい。
図1(c)に、本発明の一態様による基材10、ハーフミラー層12、装飾層13、保護層14、接着剤層16をこの順に備えるハーフミラー層12が透明な被着部材の内側の面に貼付された状態の概略断面図を示す。
本実施態様では、透明な被着部材と接着剤層を通してハーフミラー層が視認される。すなわち、本態様のハーフミラー層は透明な被着部材を内側から装飾できる。
従って、被着部材にハーフミラー層を貼付して得られる製品においてハーフミラー層は、外部と接触することがなく、傷つきにくい。又、被着部材の質感をそのまま活かしつつ被着部材を装飾することができる。
透明な被着部材としては、例えばガラスやプラスチックからなる被着部材を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
又、透明粘着剤は着色されていてもよい。この場合、ハーフミラー層が着色された接着剤層を通して視認されることとなるので、着色された金属光沢を発現することができる。
通常着色された金属光沢を発現させる場合には、別途着色のための層を設けるため、ハーフミラー層の全体の厚みは増加する。しかし、着色された透明粘着剤を用いることで、厚みの増加を伴わずに着色された金属光沢を発現させることができる。
ハーフミラー層を透明な被着部材の内側に貼付して用いる場合において、被着部材が、例えば、デジタルサイネージ、タブレット、スマートフォン等の精密機器の筐体基板である場合、筐体内部のスペースの圧迫を抑制するために、ハーフミラー層の厚みは小さいことが好ましい。
従って、本実施形態のハーフミラー層を用いて着色された金属光沢を発現する場合には、着色された透明粘着剤を用いることが好ましい。
透明粘着剤を着色する方法は特に限定されないが、例えば色素を微量添加することにより着色することができる。
なお、ハーフミラー層が接着剤層を備える場合には、被着部材に貼付する際まで接着剤層を保護するために、接着剤層の上に剥離ライナーを設けることが好ましい。
【0074】
5.その他の層
(1)保護層
図1(a)~(c)に示すように、基材10のハーフミラー層12が積層してある面と同一側の表面に、保護層14を備えることも好ましい。
このような保護層14を備えることにより、ハーフミラー層の耐久性や長期間にわたる鏡面性等を著しく向上させることができるためである。
従って、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリーレン樹脂(PEEK樹脂)、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、サーリーン樹脂等の少なくとも一つを用いて、保護層とすることが好ましい。
【0075】
(2)紫外線吸収層
ハーフミラー層の所定場所に、直接的又は間接的に、紫外線吸収層を備えることも好ましい。
特に、図示しないものの、基材のハーフミラー層が積層してあると反対側の表面、あるいは、ハーフミラー層と、基材との間、更には、ハーフミラー層上に、紫外線吸収層を備えることも好ましい。
【0076】
6.用途
ハーフミラー層を、基材に対して積層する方法は特に限定されないが、例えば、塗布法により積層することが好ましい。
すなわち、コーティング用液状組成物をスクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸版印刷法、ロールコート法、ナイフコート法、又は、スピンコート法の少なくとも一つを用いて、塗膜を形成することが好ましい。
従って、ハーフミラー層は静電容量式タッチパネルに使用した場合であっても、優れた操作性を有することから、タッチ操作可能な鏡面ディスプレイとして用いることが好適な用途である。
【0077】
例えば、タッチ操作可能な鏡面ディスプレイとして、デジタルサイネージ、タブレット、スマートフォン等の電子機器に使用することが好ましい。
又、本実施形態のハーフミラー層は、基材フィルムのハーフミラー層が設けられる側とは反対側に光源を備える態様で使用することにより、光源の点灯時と消灯時で異なる外観を得ることができる。
【0078】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態は、基材上に、配合成分として、
(A)金属粒子100重量部と、
(B)セルロース樹脂0.1~50重量部と、
(C)架橋剤0.1~20重量部と、
(D)アルコール溶剤、炭化水素溶剤、ケトン溶剤、エステル溶剤、及びグリコールエーテル溶剤の中から選ばれる少なくとも一種を含む溶剤100~2500重量部と、
を含む所定コーティング用液状組成物に由来した、可視光透過率が20~80%であるハーフミラー層を有する積層体の形成方法であって、下記工程(1)~(3)を含むことを特徴とするハーフミラー層を有する積層体の形成方法である。
(1)所定コーティング用液状組成物を準備する工程
(2)基材上に、所定コーティング用液状組成物をスクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸版印刷法、ロールコート法、ナイフコート法、又は、スピンコート法の少なくとも一つを用いて、塗膜を形成する工程
(3)塗膜を80℃以上に加熱し、ハーフミラー層を有する積層体とする工程
このように、所定コーティング用液状組成物に由来した、ハーフミラー層を有する積層体を形成することによって、スクリーン印刷法等の簡易印刷法を用いて、所定のハーフミラー層を均一かつ安定的に形成することができる。そのため、鏡面性に優れるとともに、静電容量式タッチパネルに使用された場合の優れた操作性を示す所定のハーフミラー層を有する積層体を安定的に得ることができる。
以下、第3の実施形態の特徴的な構成を説明するとし、第1の実施形態及び第2の実施形態と重複する部分の説明は、適宜省略するものとする。
【0079】
1.工程(1)
工程(1)は、所定コーティング用液状組成物を準備する工程である。
なお、コーティング用液状組成物の内容については、基本的に第1の実施形態で既に説明したのと同様の内容が好ましいことから、ここでの再度の説明は省略する。
【0080】
2.工程(2)
工程(2)は、所定塗布方法で、基材上に、所定のコーティング用液状組成物に由来した塗膜を形成する工程である。
ここで、工程(2)の所定塗布方法の内容は特に制限されるものでなく、スクリーン印刷法やグラビアコート法、あるいは、簡易なバーコート法等であっても良い。
但し、ハーフミラー層における可視光透過率や絶縁抵抗値を所望値により精度良く制御するためには、
図7(a)~(d)に示すように、スクリーン印刷法を用いることが好ましい。
【0081】
以下、
図7を参照しつつ、スクリーン印刷法を例にとって、工程(2)に関して、より具体的に説明する。
すなわち、
図7(a)に示すように、基材10上に、所望のパターンを有するスクリーン34を準備するとともに、スクレーバー32aが、A1方向に移動することにより、スクリーン34上のコーティング用液状組成物11をスクリーン目に充填する。
次いで、
図7(b)に示すように、コーティング用液状組成物11を充填後に、スクレーバー32aが、B1方向に上昇するとともに、それに同期し、スキージ32bが、B2方向に下降する。
次いで、
図7(c)に示すように、スキージ32bが、A2方向に移動することにより、コーティング用液状組成物11がスクリーン目から押し出され、基材10上に、ハーフミラー層における島部12aと、ハーフミラー層における海部12bと、をパターン印刷することができる。
最後に、
図7(d)に示すように、印刷された基材10に、ヒーター36aから熱風36bを吹き付けることで、後述する工程(3)に準じて、パターン化されたハーフミラー層12を有する基材10を加熱処理して得ることができる。
【0082】
ここで、スクリーン印刷法を用いる場合、ハーフミラー層を有する基材の用途や、外観、可視光透過性等を総合的に考慮して、スクリーンのメッシュを定めることが好ましい。
但し、通常、スクリーンのメッシュを100~1000の範囲内の値とすることが好ましく、200~600の範囲内の値とすることがより好ましく、300~500の範囲内の値とすることが更に好ましい。
又、工程(2)を実施するに際して、所定のコーティング用液状組成物における溶剤種の依存性がより少ないことから、グラビアコート法やバーコート法を用いることも好ましい。
なお、工程(2)で用いる基材や、塗膜等については、基本的に第2の実施形態で既に説明した内容であることから、ここでの再度の説明は省略する。
【0083】
3.工程(3)
工程(3)は、塗膜を所定温度に加熱し、溶剤を飛散させながら、架橋剤を反応させて、塗膜を熱硬化するとともに、所定の可視光透過性を発揮するハーフミラー層を有する積層体とする工程である。
すなわち、塗膜の厚さや、溶剤種等にもよるが、通常、オーブン等を用いて、80~120℃で、10~120分加熱することが好ましく、85~100℃で、15~100分加熱することがより好ましく、88~95℃で、20~80分加熱することが更に好ましい。
なお、ハーフミラー層及びハーフミラー層を有する積層体については、基本的に、第2の実施形態等で既に説明した内容であることから、第3の実施形態における再度の説明は省略する。
【0084】
4.変形例
又、ハーフミラー層を有する積層体の形成方法を実施するに際して、第3の実施形態の変形例として、一旦、剥離部材(第2の基材と称する場合がある。)に、ハーフミラー層を形成し、それを所定基材(第1の基材と称する場合がある。)に対して、転写する方法も好適である。
すなわち、下記工程(1´)~工程(4´)により、ハーフミラー層を有する積層体を製造することも好ましい。
【0085】
(1)工程(1´)
工程(1)と同様に、所定コーティング用液状組成物を準備する。
【0086】
(2)工程(2´)
次いで、工程(2´)において、工程(2)に準じて、第2の基材である剥離部材を準備し、その上に、所定コーティング用液状組成物をスクリーン印刷法等の少なくとも一つを用いて、塗膜を形成する。
なお、第2の基材である剥離部材は、シリコーン系剥離剤やフッ素系剥離剤等によって表面処理された、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂基材や、基材自体に剥離性を備えた低密度ポリプロピレンやポリエチレン等の樹脂基材であることが好ましい。
【0087】
(3)工程(3´)
次いで、工程(3´)において、工程(3)に準じて、塗膜を40℃以上、80℃未満で1~60分加熱し、一部未硬化状態の塗膜とするか、或いは、塗膜を80℃以上で、5~120分加熱し、ほぼ硬化状態の塗膜とすることも好ましい。
すなわち、塗膜の状態を、加熱温度や加熱時間を変えて、溶剤を一部又はほぼ全部飛散乾燥させ、次工程の転写工程における所望状態とすることが好ましい。
【0088】
(4)工程(4´)
最後に、工程(4´)において、第1の基材であるポリカーボネート基材等に対し、塗膜を転写させ、ハーフミラー層を有する積層体とする。
又、必要によって、加熱しながら転写しても良く、あるいは、転写後、80℃以上に加熱し、所定の可視光透過性を発揮するハーフミラー層を有する積層体としても良い。
【0089】
5.その他の形成方法の具体例
又、第3の実施形態の形成方法の具体例として、図示しないものの、グラビアコート法の一例について、説明する。
すなわち、インキパンに溜められたコーティング用液状組成物に対して、回転するシリンダの一部が浸される。
次いで、シリンダがまきあげたコーティング用液状組成物の一部を、ドクターブレードが、シリンダの表面に沿って、余分としてそぎ落とす。すると、シリンダに掘られた版面の窪みに、コーティング用液状組成物が満たされる。
最後に、かかるシリンダと、圧着ローラとの間に通された基材に、コーティング用液状組成物を転写することで、ハーフミラー層における島部と、ハーフミラー層における海部と、を所定パターンとして印刷することができる。
【実施例0090】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、特に理由なく、本発明は実施例の記載に限定されるものではない。
【0091】
[実施例1]
1.コーティング用液状組成物の製造
(1)フレーク状インジウム分散液の作成
所定容器内に、市販のフレーク状インジウム分散液(尾池工業株式会社製、49CJ―1120(主溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGMと称する場合がある。))、平均粒径0.38μm、平均厚さ60nm、固形分濃度20%)を準備し、それを3-メトキシ-1-メチル-ブタノール(以下、MMBと称する場合がある。)に溶剤置換し、86重量%のMMBを含む所定のフレーク状インジウム分散液を作成した。
【0092】
(2)コーティング用液状組成物の作成
次いで、攪拌機付きの容器内に、10gの所定のフレーク状インジウム分散液を収容し、セルロース樹脂と、架橋剤と、アルコール溶剤とを、所定割合となるように、配合した。
すなわち、配合成分(A)のフレーク状金属粒子100重量部に対して、配合成分(B)のニトロセルロース樹脂10重量部と、配合成分(C)の架橋剤としての6官能アルコキシアミノシラン化合物(ビスー(3ーメトキシシリルプロピル)アミン)を5重量部と、配合成分(D)のアルコール溶剤としてのMMBを400重量部と、配合成分(E)のシリコーン系レベリング剤を5重量部の割合となるように均一に配合した。
その際、コーティング用液状組成物の粘度が2mPa・sec(測定温度25℃)であることを確認した。
【0093】
2.コーティング用液状組成物の塗布
次いで、コーティング用液状組成物を、スクリーン印刷法(ポリエステルメッシュ:425、メッシュ厚:40μm、乳剤厚:10μm、開口率:21%)を用いて、厚さ0.5mmのA4版のポリカーボネートフィルム上に、塗布した。
なお、コーティング用液状組成物を塗布する際の印刷性(評価1)を、下記に示す通り、目視観察して評価した。
【0094】
3.塗膜の加熱
次いで、オーブン内で、100℃、60分の条件で、ポリカーボネートフィルム上に形成した塗膜につき、加熱処理を行い、所定厚さ1μmのハーフミラー層を有する積層体としての評価用サンプルとした。
【0095】
4.ハーフミラー層の評価
(1)印刷性(評価1)
ハーフミラー層を有する積層体の外観を目視判断し、下記基準に準拠して、印刷性を評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:コーティングむらが、全く観察されず、均一な塗膜が得られる。
〇:コーティングむらが、ほとんど観察されず、均一な塗膜が得られる。
△:コーティングむらが、少々観察されるが、ほぼ均一な塗膜が得られる。
×:コーティングむらが、顕著に観察され、均一な塗膜が得られない。
【0096】
(2)厚さむら(評価2)
評価1で用いたハーフミラー層の厚さを、マイクロメータを用いて、10か所で測定し、厚さむら(平均値からのばらつき)を算出し、下記基準に準拠して、評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:厚さむらが、平均値の±1%以下である。
〇:厚さむらが、平均値の±5%以下である。
△:厚さむらが、平均値の±10%以下である。
×:厚さむらが、平均値の±10%を超える値である。
【0097】
(3)静電容量式タッチパネルの操作性(評価3)
評価1で用いたハーフミラー層を有する積層体を静電容量式タッチパネル上に積層し、指でタッチ操作及びスライド操作を、それぞれ100回(合計200回)行って、静電容量式タッチパネルの操作性を以下の基準で評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:タッチ操作及びスライド操作において、誤動作は発生しなかった。
○:タッチ操作又はスライド操作において、誤動作が1回/200回発生した。
△:タッチ操作又はスライド操作において、誤動作が2~9回/200回発生した。
×:タッチ操作又はスライド操作において、誤動作が10回以上/200回発生した。
【0098】
(4)可視光透過率の測定(評価4)
評価1で用いたハーフミラー層を有する積層体につき、日立ハイテクノロジーズ社製分光光度計U4100を用い、得られたハーフミラー層の波長400~700nmの可視光に対する可視光透過率(平均値)を測定し、下記基準に準拠して、評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:可視光透過率が、40~70%の範囲内の値である。
○:可視光透過率が、30以上~40未満%、又は、70超~75%以下の値である。
△:可視光透過率が、20以上~30未満%、又は、75超~80%以下の値である。
×:可視光透過率が、20%未満、又は、80%を超える値である。
【0099】
(5)電気絶縁抵抗値の測定(評価5)
評価1で用いたハーフミラー層を有する積層体につき、JIS C1302:2018に準拠した超絶縁計SM-8215(日置電機株式会社製)を用いて、測定端子間としてのプローブ間の距離を1cm、測定電圧が、直流電圧1000Vの条件となるように、測定端子をハーフミラー層の表面に20秒以上、押し当てた。その状態で、電気絶縁抵抗値を測定し、下記基準に準拠して評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:電気絶縁抵抗値が、1×1013Ω以上の値である。
〇:電気絶縁抵抗値が、1×1012Ω以上の値である。
△:電気絶縁抵抗値が、1×1011Ω以上の値である。
×:電気絶縁抵抗値が、1×1011Ω未満の値である。
【0100】
(6)可視光反射率の測定(評価6)
評価1で用いたハーフミラー層を有する積層体につき、日立ハイテクノロジーズ社製分光光度計U4100を用い、得られたハーフミラー層の波長400~700nmの可視光に対する可視光反射率(平均値)を測定し、下記基準に準拠して、評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:可視光反射率が、30~60%の範囲内の値である。
〇:可視光反射率が、25%以上~30%未満、又は、60%超~70%以下の値である。
△:可視光反射率が、20%以上~25%未満、又は、70%超~80%以下の値である。
×:可視光反射率が、20%未満、又は、80%を超える値である。
【0101】
(7)表面粗さ(評価7)
評価1で用いたハーフミラー層を有する積層体における表面粗さ(Ra)を、非接触式レーザー表面粗さ計(LASER TEC社製、OPTELICS HYBRID C3)を用いて、測定し、以下の基準で外観評価を行った。得られた結果を表1に示す。
◎:表面粗さ(Ra)が、0.1~0.15μmの範囲内の値である。
〇:表面粗さ(Ra)が、0.05μm以上~0.1μm未満、又は、0.15μm超~0.4μm以下の値である。
△:表面粗さ(Ra)が、0.01μm以上~0.05μm未満、又は、0.4μm超~1μm以下の範囲内の値である。
×:表面粗さ(Ra)が、0.01μm未満、又は、1μmを超える値である。
【0102】
(8)密着性(評価8)
評価1で用いたハーフミラー層を有する積層体におけるハーフミラー層の密着性を、JIS5400に準拠して、クロスカット法で測定し、以下の基準で密着性を評価した。
すなわち、ハーフミラー層を所定大きさ(1mm角の碁盤目、100個)にカットし、それに対して市販の粘着テープ(3M製、メンディングテープ)を用いて剥離試験を実施し、以下の基準で密着性を評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:剥がれた碁盤目数が、0個/100個である。
〇:剥がれた碁盤目数が、1~5個/100個である。
△:剥がれた碁盤目数が、6~10個/100個である。
×:剥がれた碁盤目数が、11個以上/100個以上である。
【0103】
(9)賦形性(評価9)
評価1で用いたハーフミラー層を有する積層体を、立ち上がりとしての曲面部分(R=0.5mm)を有する金型内に収容した。
次いで、射出成形装置により、曲面部分を有する金型内に、溶融状態のポリカーボネート樹脂を注入し、それを室温まで冷却して、所定形状の成形品を得た。
最後に、得られた成形品の外部表面に積層されたハーフミラー層の外観を観察し、以下の基準で賦形性を評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:ハーフミラー層において、クラックが、全く観察されない。
〇:ハーフミラー層において、クラックが、ほとんど観察されない。
△:ハーフミラー層において、クラックが、少々観察される。
×:ハーフミラー層において、クラックが、顕著に観察される。
【0104】
[実施例2]
実施例2において、配合成分(C)の架橋剤としての6官能アルコキシアミノシラン化合物を(ビス-(3-エトキシシリルプロピル)アミン)とし、その配合量を3重量部とするとともに、アルコール溶剤としてのMMB単独のかわりに、MMB/PGM=8/2(重量比)の混合溶剤に変えた以外は、実施例1と同様に、得られたハーフミラー層を有する積層体を作成し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0105】
[実施例3]
実施例3において、配合成分(C)の架橋剤としての6官能アルコキシアミノシラン化合物を(ビス-(3-エトキシシリルプロピル)アミン)とし、その配合量を3重量部とするとともに、アルコール溶剤としてのMMB単独のかわりに、MMB/PGM=2/8(重量比)の混合溶剤に変えた以外は、実施例1と同様に、ハーフミラー層を有する積層体を作成し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0106】
[実施例4]
実施例4において、スクリーン印刷法に用いるスクリーンにつき、ポリエステルメッシュ:425のかわりに、ポリエステルメッシュ:300(メッシュ厚:57μm、乳剤厚:10μm、開口率:33%)に変えた以外は、実施例1と同様に、ハーフミラー層を有する積層体を作成し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0107】
[実施例5]
実施例5において、スクリーン印刷法(ポリエステルメッシュ:425)のかわりに、バーコート法(No.3)に変えた以外は、実施例1と同様に、ハーフミラー層を有する積層体を作成し、評価した。又、印刷性の評価基準は、実施例1と同様にして、得られた塗膜の外観を目視判断し、バーコート法による印刷性を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0108】
[実施例6]
実施例6において、スクリーン印刷法(ポリエステルメッシュ:425)のかわりに、グラビアロール法のグラビアメッシュ:300/インチに変え、グラビア印刷した以外は、実施例1と同様に、得られたハーフミラー層を有する積層体を作成し、評価した。又、印刷性の評価基準は、実施例1と同様にして、得られた塗膜の外観を目視判断し、グラビアロール法による印刷性を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0109】
[実施例7]
実施例7において、架橋剤としての6官能アルコキシアミノシラン化合物を3重量部と、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を2重量部とからなる、複数の架橋剤の混合物に変えた以外は、実施例1と同様に、得られたハーフミラー層を有する積層体を作成し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0110】
[実施例8]
実施例8において、配合成分(A)の金属粒子の代わりに、平均粒径40μm及び平均厚さ25μmを有するアルミニウムフレークを用いた以外は、実施例1と同様に、得られたハーフミラー層を有する積層体を作成し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0111】
[比較例1]
比較例1において、配合成分(A)の金属粒子の代わりに、同等の平均粒径及び平均厚さを有するアルミニウムフレークを用い、コーティング用液状組成物100重量%に対して、金属粒子の配合量を45重量%とした以外は、実施例1と同様に、得られたハーフミラー層を有する積層体を作成し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0112】
[比較例2]
比較例2において、配合成分(B)のセルロース樹脂のかわりに、アクリル系樹脂(MMA系)を用い、配合量を10重量部とした以外は、実施例1と同様に、得られたハーフミラー層を有する積層体を作成し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0113】
[比較例3]
比較例3において、配合成分(C)の架橋剤を配合しなかった以外は、実施例1と同様に、得られたハーフミラー層を有する積層体を作成し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0114】
[比較例4]
比較例4において、配合成分(C)の架橋剤としての6官能アルコキシアミノシラン化合物(ビス-(3-メトキシシリルプロピル)アミン)の配合量を0.01重量部とするとともに、配合成分(D)の有機溶剤をセロソルブ系有機溶剤のエチレングリコールモノエチルエーテルとし、その配合量を、配合成分(A)のフレーク状インジウム粒子100重量部に対して、2600重量部とした以外は、実施例1と同様に、得られたハーフミラー層を有する積層体を作成し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0115】
【表1】
評価1:印刷性、評価2:厚さむら、評価3:静電容量式タッチパネルの操作性、評価4:可視光透過率、評価5:絶縁抵抗値、評価6:可視光反射率、評価7:表面粗さ、評価8:密着性、評価9:賦形性
詳細に説明したように、本発明のハーフミラー層によれば、配合成分(A)の金属粒子や、配合成分(D)の所定溶剤とともに、配合成分(B)の所定樹脂及び、当該配合成分(B)を架橋するための配合成分(C)の架橋剤等を所定割合で含むことにより、真空蒸着法やスパッタリング等を用いることなく、スクリーン印刷法等の簡易塗布方法を用いて、効率的かつ安定的に形成することができるようになった。
すなわち、ハーフミラー層として、可視光透過率が良好であり、かつ、当該可視光透過率と可視光反射率のバランスに優れ、良好なハーフミラー特性を有することが確認された。
又、本発明のハーフミラー層は、シート抵抗の値が十分に高く、静電容量式タッチパネルの操作性の評価の結果も良好であったことから、タッチパネルとして優れるものであった。
従って、本発明のハーフミラー層は、デジタルサイネージ、タブレット、及びスマートフォン等のタッチディスプレイに好適に使用されることが期待できる。