(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094799
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】建築用支持ファスナー
(51)【国際特許分類】
E04F 10/08 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
E04F10/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210313
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】599093524
【氏名又は名称】旭ビルウォール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180415
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 滋人
(72)【発明者】
【氏名】友枝 勝登
【テーマコード(参考)】
2E105
【Fターム(参考)】
2E105DD06
2E105FF04
2E105FF32
2E105GG03
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で被取付体に対する取付体の角度を変更させることができ、その角度変更の際にいわゆる微調整にも対応することができる建築用支持ファスナーを提供する。
【解決手段】建築用支持ファスナー1は、基端部材2と、先端部材3と、連結部材4と、基端部材2から突出している基端側凸部6と、基端側凸部6を係止して受け入れるための連結部材4に設けられている基端側凹部10と、連結部材4から突出している先端側凸部8と、先端側凸部8を係止して受け入れるための先端部材3に設けられている先端側凹部11とを備え、前記基端側凸部6は基端側点7を有し、先端側凸部8は先端側点9を有し、隣り合う基端側点7を結ぶ基端側凸部6の側面は平面又は内側に凹んでいて、隣り合う先端側点9を結ぶ先端側凸部8の側面もまた平面又は内側に凹んでいて、基端側点7の数と先端側点9の数とは互いに素である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付体に固定されるべき基端部材と、
前記被取付体に取り付けられる取付体に固定されるべき先端部材と、
該先端部材と前記基端部材との間に介装されている連結部材と、
前記基端部材から突出している基端側凸部と、
該基端側凸部を周方向に回転不能となるように前記基端側凸部の横断面と同一形状に形成されてこれを係止して受け入れるための前記連結部材に設けられている基端側凹部と、
前記連結部材から突出している先端側凸部と、
該先端側凸部を周方向に回転不能となるように前記先端側凸部の横断面と同一形状に形成されてこれを係止して受け入れるための前記先端部材に設けられている先端側凹部とを備え、
前記基端側凸部は、横断面にて多角形が有している頂点の位置にある基端側点を有し、
前記先端側凸部は、横断面にて多角形が有している頂点の位置にある先端側点を有し、
隣り合う前記基端側点を結ぶ前記基端側凸部の側面は平面又は内側に凹んで形成されていて、隣り合う前記先端側点を結ぶ前記先端側凸部の側面もまた平面又は内側に凹んで形成されていて、
前記基端側点の数と前記先端側点の数とは互いに素であることを特徴とする建築用支持ファスナー。
【請求項2】
前記基端側凸部が前記基端側凹部に受け入れられ、且つ前記先端側凸部が前記先端側凹部に受け入れられた状態で前記基端部材と前記先端部材と前記連結部材とが一体になってファスナー本体となった際に、前記ファスナー本体の外周面に前記ファスナー本体の軸方向に沿った条体が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の建築用支持ファスナー。
【請求項3】
前記基端部材の外周面には、前記基端側点に対応した位置にその頂点を示す個別の目印が表示されていて、
前記連結部材の外周面には、前記先端側点に対応した位置にその頂点を示す個別の目印が表示されていることを特徴とする請求項2に記載の建築用支持ファスナー。
【請求項4】
前記連結部材は複数の分割体により形成されていて、前記分割体のうち前記基端部材に最も近い側の基端側分割体には前記基端側凹部が形成されていて、前記分割体のうち前記先端部材に最も近い側の先端側分割体には前記先端側凸部が形成されていて、それ以外の前記分割体にはこれと隣り合う分割体に挿入すべき横断面にて多角形が有している頂点を有する凸部及びこれを受け入れるための凹部がそれぞれ形成されていて、前記基端側点、前記先端側点、及び前記全ての凸部の前記頂点の数は互いに素であることを特徴とする請求項1に記載の建築用支持ファスナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として建物躯体に対してルーバー等の構造物を取り付けるための建築用支持ファスナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物躯体に庇(ルーバーを含む)を取り付ける際、庇は建物躯体に対して支持ファスナーを介して取り付けられる。そして、この庇の傾斜角度を可変させる技術が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、シリンダを用いて庇に連結されているアームにより庇の傾斜角度を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、駆動アーム材が壁面外に突出するので意匠上の見栄えが良くない。更に、このアームで庇を効率良く支えるには、壁面に対して45度以下にする必要があり、庇の突出長さよりも軸方向に長くなり更に見栄えが悪くなるという問題が有る。また、機構が方立内に内蔵されているのでメンテナンスが十分に行えないという問題がある。
【0005】
また、所望の角度に応じて施工現場にてシリンダを操作して角度調整することは、全体の外観を見ながら行う場合、各々のシリンダを調整することが難しく困難である。意匠性を高めるために建物躯体にルーバーを波うつように取り付ける場合、予め1枚1枚のルーバーの取り付け角度は設計上の計算で定まっているため、その角度に固定できるようになっていれば、現場での作業性も向上するはずである。
【0006】
また、ルーバーの角度を全て一定にする場合でも、ルーバー自体に反りや寸法誤差が生じているときは、角度の微調整を行うことができ、且つ微調整後にそこから角度が不変であることは現場での作業性向上と長期間に亘る角度のメンテナンスが不要になる。
【0007】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであり、簡単な構造で被取付体に対する取付体の角度を変更させることができ、その角度変更の際にいわゆる微調整にも対応することができる建築用支持ファスナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明では、被取付体に固定されるべき基端部材と、前記被取付体に取り付けられる取付体に固定されるべき先端部材と、該先端部材と前記基端部材との間に介装されている連結部材と、前記基端部材から突出している基端側凸部と、該基端側凸部を周方向に回転不能となるように前記基端側凸部の横断面と同一形状に形成されてこれを係止して受け入れるための前記連結部材に設けられている基端側凹部と、前記連結部材から突出している先端側凸部と、該先端側凸部を周方向に回転不能となるように前記先端側凸部の横断面と同一形状に形成されてこれを係止して受け入れるための前記先端部材に設けられている先端側凹部とを備え、前記基端側凸部は、横断面にて多角形が有している頂点の位置にある基端側点を有し、前記先端側凸部は、横断面にて多角形が有している頂点の位置にある先端側点を有し、隣り合う前記基端側点を結ぶ前記基端側凸部の側面は平面又は内側に凹んで形成されていて、隣り合う前記先端側点を結ぶ前記先端側凸部の側面もまた平面又は内側に凹んで形成されていて、前記基端側点の数と前記先端側点の数とは互いに素であることを特徴とする建築用支持ファスナーを提供する。
【0009】
好ましくは、前記基端側凸部が前記基端側凹部に受け入れられ、且つ前記先端側凸部が前記先端側凹部に受け入れられた状態で前記基端部材と前記先端部材と前記連結部材とが一体になってファスナー本体となった際に、前記ファスナー本体の外周面に前記ファスナー本体の軸方向に沿った条体が形成されている。
【0010】
好ましくは、前記基端部材の外周面には、前記基端側点に対応した位置にその頂点を示す個別の目印が表示されていて、前記連結部材の外周面には、前記先端側点に対応した位置にその頂点を示す個別の目印が表示されている。
【0011】
好ましくは、前記連結部材は複数の分割体により形成されていて、前記分割体のうち前記基端部材に最も近い側の基端側分割体には前記基端側凹部が形成されていて、前記分割体のうち前記先端部材に最も近い側の先端側分割体には前記先端側凸部が形成されていて、それ以外の前記分割体にはこれと隣り合う分割体に挿入すべき横断面にて多角形が有している頂点を有する凸部及びこれを受け入れるための凹部がそれぞれ形成されていて、前記基端側点、前記先端側点、及び前記全ての凸部の前記頂点の数は互いに素である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基端側点の数と先端側点の数とが互いに素であるため、先端部材は基端部材に対して「360度/基端側点の数×先端側点の数」の数だけ角度を変更させることができる。すなわち、先端部材は基端側点の位置を固定した際に、先端側点の数だけ回転させて固定することができ、そして基端側点の位置を基端側点の数だけ回転させて固定すれば360度に対して「基端側点の数×先端側点の数」だけ分割した角度で回転して固定させることができるようになる。先端部材の角度を少ない角度で回転させたい、いわゆる微調整させたい場合は、基端側凸部の基端側点の数を多くすればよいが、あまりに多すぎると基端側凸部の横断面形状は円に近くなり、基端側点同士の距離が短くなってしまうため、基端側凹部に差し込んだ際に回転方向に係止させることが困難となってしまう。したがって、これを互いに素となる基端側凸部、先端側凸部として分けることで、これらの横断面形状を少ない頂点の多角形状とすることができ、したがって確実に基端側凸部、先端側凸部の回転を抑制することができる。このため、確実な角度調整が可能となる。
【0013】
また、ファスナー本体に軸方向に沿った条体を設けることで、基端部材、連結部材及び先端部材がどのような角度でずれて連結されているかを目視にて認識することができる。このとき、基端側点、先端側点に対応した位置にその点を示す個別の目印を表示しておくことにより、所望の角度に調整したい場合には条体をどの目印の位置に持っていくかで定めることができるので、現場での作業性が向上する。
【0014】
また、基端側凸部、先端側凸部の側面を内側に凹んで形成することで、基端側点、先端側点の数が多くなって基端側凸部及び先端側凸部の各基端側点、先端側点間の距離が短くなって横断面が円形状に近くなったとしても、基端側凹部及び先端側凹部としっかりと嵌め合わされるので、回転方向に基端側凸部及び先端側凸部が回転してしまうことが防止される。
【0015】
また、連結部材を複数の分割体で形成することで、さらに凸部及び凹部を増やして回転角度の微調整が可能になるとともに、分割体のそれぞれを少ない頂点数の多角形状の凸部を有するものとすることができるので、凹部としっかりと嵌め合わせることができ、凸部が凹部に対して回転してしまうことをさらに防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る建築用支持ファスナーの概略図である。
【
図2】本発明に係る建築用支持ファスナーを別の角度から視たときの概略図である。
【
図4】本発明に係る別の建築用支持ファスナーの概略図である。
【
図5】本発明に係る別の建築用支持ファスナーを別の角度から視たときの概略図である。
【
図7】建築用支持ファスナーの一例を示す概略断面図である。
【
図8】建築用支持ファスナーの別の一例を示す概略断面図である。
【
図9】建築用支持ファスナーのさらに別の一例を示す概略断面図である。
【
図10】本発明が適用される一場面を示す概略図である。
【
図11】本発明が適用される一場面を示す概略図である。
【
図12】方立とルーバーに建築用支持ファスナーを適用したときの概略側面図である。
【
図13】方立とルーバーに建築用支持ファスナーを適用したときの下側から視た概略斜視図である。
【
図14】方立とルーバーに建築用支持ファスナーを適用したときの上側から視た概略側面図である。
【
図15】方立とルーバーに建築用支持ファスナーを適用したときの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1及び
図2に示すように、本発明に係る建築用支持ファスナー1は、後述するような建物躯体等の被取付体に固定されるべき基端部材2と、後述するような被取付体に取り付けられるルーバー等の取付体に固定されるべき先端部材3と、これら基端部材2及び先端部材3の間に介装される連結部材4とで構成されている。基端部材2、先端部材3及び連結部材4は、互いに軸方向に接合され、
図3に示すようなファスナー本体5として形成される。基端部材2からは基端側凸部6が突出して形成されている。図の例でのこの基端側凸部6は、軸方向に垂直な断面である横断面にて多角形が有している頂点からなる基端側点7を有している。すなわち、基端側点7は基端側凸部6の横断面が多角形形状だった場合の頂点の位置にあるが、その頂点同士を結ぶ辺に関しては多角形形状の辺(頂点同士を結ぶ直線)には限定されない。
【0018】
連結部材4からは先端側凸部8が突出して形成されている。この先端側凸部8は、基端側凸部6と同様、軸方向に垂直な断面である横断面にて多角形が有している頂点からなる先端側点9を有している。なお、基端側点7も先端側点9も、正多角形状の頂点の位置に配されている。すなわち、基端側点7及び先端側点9の位置は、360度をその頂点の数で等分した角度の位置に配されている。また、基端側点7及び先端側点9は、2辺が交わる位置での頂点として形成されている必要はなく、丸みをおびて湾曲した辺の途中に存在する一つの点であってもよい。すなわち、多角形の頂点は円弧状であってもよい。
【0019】
連結部材4には、基端側凸部6が挿入されてこれを受け入れるための基端側凹部10が形成されている。基端側凹部10はその横断面が基端側凸部6と同一形状である。
図1及び
図2の例では、隣り合う基端側点7を結ぶ基端側凸部6の側面は内側に凹んで形成されていて、基端側凹部10も同様の形状である。したがって、基端側凸部6が基端側凹部10に挿入された場合、基端側凸部6は基端側凹部10内に固定され、周方向に回転不能となる。一方で、先端部材3には、先端側凸部8が挿入されてこれを受け入れるための先端側凹部11が形成されている。先端側凹部11はその横断面が先端側凸部8と同一形状である。
図1及び
図2の例では、隣り合う先端側点9を結ぶ先端側凸部8の側面は内側に凹んで形成されていて、先端側凹部11も同様の形状である。したがって、先端側凸部8が先端側凹部11に挿入された場合、先端側凸部8は先端側凹部11内に固定され、周方向に回転不能となる。
【0020】
ここで、
図4及び
図5に示すように、隣り合う基端側点7を結ぶ基端側凸部6の側面は平面でもよい。同様に、隣り合う先端側点9を結ぶ先端側凸部8の側面も平面でもよい。すなわち、図の例で基端側凸部6及び先端側凸部8は、横断面形状が多角形状である。このような形状でも基端側凸部6と基端側凹部10とは噛み合うので互いに係止され、回転が抑制される。先端側凸部8と先端側凹部11も同様である。ただし、
図1及び
図2のように、基端側凸部6、先端側凸部8の側面を内側に凹んで形成することで、基端側点7、先端側点9の数が多くなって基端側凸部6及び先端側凸部8の各頂点間の距離が短くなって横断面が円形状に近くなったとしても、基端側凹部10及び先端側凹部11としっかりと嵌め合わされるので、回転方向に基端側凸部6及び先端側凸部8が回転してしまうことが防止される。したがって、基端側凸部6及び先端側凸部8の側面を内側に凹ませた方が、多角形状の頂点数が多くなった場合に有効である。特に回転角度の微調整が必要な場面においては、基端側点7及び先端側点9の数が多くなるので有効である。
【0021】
ここで、基端側点7の数と先端側点9の数とは互いに素となるように形成されている。すなわち、基端側点7の数と先端側点9の数との間の最大公約数は1であるように設定される。これにより、例えば先端部材3を連結部材4ごと基端部材2から取り外し、連結部材4を少し回転させ、基端側凹部10の基端側点7と係合していた頂点の一つ隣の基端側点7側に合わせて基端側凸部6を基端側凹部10内に収めた場合、結果として先端部材3は連結部材4とともに基端部材2に対して基端側凸部6を形成する多角形の頂点からその隣の頂点に回転する分だけ角度が変更される。一方で、基端部材2と連結部材4はそのままにして、先端部材3のみを連結部材4から取り外し、先端部材3を少し回転させ、先端側凹部11の先端側点9と係合していた頂点の一つ隣の先端側点9側に合わせて先端側凸部8を先端側凹部11内に収めた場合、結果として先端部材3は基端部材2に対して先端側凸部8を形成する多角形の頂点からその隣の頂点に回転する分だけ角度が変更される。
【0022】
例えば
図1に示すように、基端部材2には建物躯体に取り付けられるためのフランジ15が形成されていて、先端部材3にはルーバーに取り付けられるためのフランジ16が形成されている。建物躯体に対してルーバーの角度を回転させたい場合は、建物躯体に固定された基端部材2に対して上記要領により先端部材3を回転させれば、ルーバーの角度が回転される。なお、これらフランジ15、16は取り付けるべきものに対して適切な形状が採用されるので、必須ではない。
【0023】
このとき、上述したように基端側点7の数と先端側点9の数とは互いに素となるように形成されているため、連結部材4ごと先端部材3を回転させたときと、先端部材3のみを回転させたときでは、回転角度が異なることになる。互いに素であるため、先端部材3を連結部材4とともに回転させた場合と、先端部材3のみを回転させた場合とでは、同じ角度で回転されることはない。したがってこの場合、先端部材3は基端側点7の数×先端側点9の数だけ角度調整することができる。基端側点7又は先端側点9の数を多くすればするほど、調整できる角度の数は多くなる。例えば、
図1に示すように、基端側点7の数を12、先端側点9の数を11にした場合、360度を132等分、すなわち2.73度の間隔で回転させることができる。
【0024】
なお、基端側点7又は先端側点9のうち一方の数字を4の倍数にしておくと、先端部材3を回転させるための角度として、0度、90度、180度、270度の代表的な角度を得ることができる。(例えば、12×11の組み合わせなら12が4の倍数なので上記代表的な角度を得られる。)
【0025】
このように、基端側点7の数と先端側点9の数とが互いに素であるため、先端部材3は基端部材2に対して「360/基端側点の数×先端側点の数」だけ角度を変更させることができる。すなわち、先端部材3は基端側点7の位置を固定した際に、先端側点7の数だけ回転させることができ、そして基端側点7の位置を基端側点7の数だけ回転させれば360度に対して「基端側点7の数×先端側点9の数」だけ分割した角度で回転させることができるようになる。先端部材3の角度を少ない角度で回転させたい、いわゆる微調整させたい場合は、基端側凸部6の基端側点7の数を多くすればよいが、あまりに多すぎると基端側凸部6の横断面形状は円に近くなり、基端側点7同士の距離が短くなってしまうため、基端側凹部10に差し込んだ際に回転方向に係止させることが困難となってしまう。したがって、これを互いに素となる基端側凸部6、先端側凸部8として分けることで、これらの横断面形状を少ない頂点の多角形状とすることができ、したがって確実に基端側凸部6、先端側凸部8の回転を抑制することができる。このため、確実な角度調整が可能となる。この点に、基端部材2と先端部材3との間に連結部材4を介装させた意味がある。
【0026】
そして、
図3に示すように、基端側凸部6が基端側凹部10に受け入れられ、且つ先端側凸部8が先端側凹部11に受け入れられた状態で基端部材2と先端部材3と連結部材4とが一体になってファスナー本体5となった際に、ファスナー本体5の外周面にファスナー本体5の軸方向に沿った条体12が形成されている。図の例では、条体12は切欠かれた溝として形成されているが、直線をファスナー本体5の側面に直接描いたり、あるいは盛り上げて畦のようにしたりしてもよい。そして、
図1に示すように、基端部材2の外周面には、基端側点7に対応した位置にその頂点を示す個別の目印13が、連結部材4の外周面には、先端側点9に対応した位置にその頂点を示す個別の目印14が表示されている。図の例では、目印13及び目印14はともに数字であり、この数字に対応する位置にそれぞれの頂点7、9が配されている。なお、
図1以外の図ではこの目印13、14は省略している。
【0027】
このような条体12、及び目印13、14があることで、条体12が軸方向につながっている条体を角度0度、すなわち基準角度として設けることができる。この基準角度では、連結部材4の条体12が基端部材2の目印13の数値1にあり、先端部材3の条体12が連結部材4の目印14の数値1にある。すなわち、
図6に示すように、1-1の角度が基準となる。上述したような基端側点7の数を12、先端側点9の数を11にした場合、例えば3-11の角度に調整したいときは、連結部材4の条体12を基端部材2の目印13の数値3に合わせ、先端部材3の条体12を連結部材4の目印14の数値11にすればよい。そうすれば、基端部材2の角度が固定されていたとして、1-1の基準角に対して3-11の角度まで先端部材3を回転させることができる。
【0028】
このように、ファスナー本体5に軸方向に沿った条体12を設けることで、基端部材2、連結部材4及び先端部材3がどのような角度でずれて連結されているかを目視にて認識することができる。このとき、基端側点7、先端側点9に対応した位置にその頂点を示す個別の目印13、14を表示しておくことにより、所望の角度に調整したい場合には条体12をどの目印13、14の位置に持っていくかで定めることができるので、現場での作業性が向上する。
【0029】
なお、さらに細かく角度の微調整を行いたい場合で、基端側点7及び先端側点9の数が多くなりすぎて増やせない場合は、連結部材4を複数の分割体(不図示)により形成してもよい。この場合、分割体のうち基端部材2に最も近い側の基端側分割体には基端側凹部10が形成されていて、分割体のうち先端部材3に最も近い側の先端側分割体には先端側凸部11が形成されている。そして、それ以外の分割体にはこれと隣り合う分割体に挿入すべき横断面にて多角形が有している頂点を有する凸部及びこれを受け入れるための凹部がそれぞれ形成されている。基端側点7、先端側点9、及び分割体の全ての凸部の頂点の数は互いに素であれば、さらに細かい回転角度の調整が可能となる。また、一つ一つの分割体の凸部を少ない頂点数の多角形状の凸部とすることができるので、対向する凹部としっかりと嵌め合わせることができ、凸部が凹部に対して回転してしまうことをさらに防止できる。
【0030】
また、
図7に示すように、基端部材2、先端部材3、連結部材4を嵌め合わせてファスナー本体5とした際にその嵌め合いのがたつきを防止するため、互いに突き合わされる面に面取り加工を施した傾斜部17を形成し、異なる角度の面で突き合うようにしてもよい。あるいは、同様の目的で
図8に示すように、間にワッシャー18を介装させてもよいし、
図9に示すように段差部19を設けてもよい。
【0031】
以下、本発明が適用される一場面を建物躯体とルーバーを例にして説明する。
図10に示すように、建物20の外観向上のため、ルーバー21を建物壁面に取り付け、これらルーバーの角度をそれぞれ異ならせる場合がある。例えば、
図10のようにそれぞれのルーバーの角度を微調整して波うたせるような形にすることがある。このような場合、
図11に示すように、1枚1枚のルーバーは非常に微妙な角度でずれて建物躯体に対して取り付けられる。
【0032】
図12~
図15に示すように、具体的には、建物20には方立22が備わり、この方立22には取付板23がボルト24により固定されている。取付板23の方立22から突出した側には、基端部材2のフランジ15がボルト25により固定されている。したがって、ファスナー本体5は取付板23に固定されている。一方でルーバー21には支持板26が取り付けられていて、この支持板26にフランジ16がボルト27を介して固定されている。これにより、取付板23(建物20又は方立22)と支持板26(ルーバー21)とは、ファスナー本体5を介して互いに固定されることになる。上述したように、ファスナー本体5の基端部材2に対する先端部材3の角度を調整することで、方立22に対するルーバー21の角度調整が可能となる。なお、取付板23と支持板26との固定強度を向上させるため、ファスナー本体5は軸方向に貫通していて、ここにボルト28を挿通させてもよい。取付板23の外側からボルト28を挿通させ、ファスナー本体5を貫通してナット29にて支持板26の外側から固定すればよい。上記の例では建物20とルーバー21の例を示したが、本発明に係る建築用支持ファスナー1は、折りたたみ型パーティション等の角度調整を所望とするものであれば様々なものに適用できる。
【0033】
また、本発明の建築用支持ファスナー1は、複雑形状のパネル(庇)に対しても有効である。パネルを躯体に対して片持ちで取り付ける際に、躯体支持レベルとパネル支持レベルが場所によって異なる場合は、一般的にはその都度異なる形状のファスナーを付けるが、本発明のファスナー1を用いれば、長さ調整可能な束材を介して、単一のもので対応することができる。そしてより複雑な3次元曲面形状や、平面であっても、あるいはパネル自体が複雑な割付をしている場合でも対応することができる。
【符号の説明】
【0034】
1:建築用支持ファスナー、2:基端部材、3:先端部材、4:連結部材、5:ファスナー本体、6:基端側凸部、7:基端側点、8:先端側凸部、9:先端側点、10:基端側凹部、11:先端側凹部、12:条体、13:目印、14:目印、15:フランジ、16:フランジ、17:傾斜部、18:ワッシャー、19:段差部、20:建物、21:ルーバー、22:方立、23:取付板、24:ボルト、25:ボルト、26:支持板、27:ボルト、28:ボルト、29:ナット